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ソシオン : システム論的接近

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ソシオン : システム論的接近

その他のタイトル Socion : System Approach

著者 藤澤 等

雑誌名 関西大学社会学部紀要

26

1

ページ 85‑132

発行年 1994‑09‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00022545

(2)

関西大学「社会学部紀要」第26巻第1 1994,pp. 85132.  ISSN 02876817 

ーシステム論的接近――‑

SOCION : System approach 

Hitoshi FUJISAWA 

Abstract 

Socion  theory  is  a selforganizing  network theory about  inter

dependencies  (weights)̲  among  individuals  and  society  from the view of  a  relational  paradigm.  It  is  based on general  open systems theory  (life  system theory).  A life  system is  composed of  similar  relational  elements,  each  of  which  is  fractal,  containing  the part  of network within  itself,  and  selforganizing  the  relationships of  the  parts and the whole. 

The core of  theory is  lies  in  the  operation of  its  weights between  individuals  and others.  The  theory  is  explained on  the  basis  of  2 passons,  2persons, 3 persons,  and network  relationships. 

Weight~ope rations  fol low  a set  of  learning  rules.  The fractal  structure  of  an  open  system  requires  certain  symmetries,  which  occur  in  weights,  elements,  and network  channels.  Asymmetry  is  detected  in  the discrepancy  of the weights,  and is  revised by diminishing  the discrepancy. 

A 2 person  relationship  is  a closed network  loop  based upon the action  media.  In  this  domain,  the  network  is  explained  in  terms of  2 types of  self,  equivalence versus differentiation,  and  the discrepancy of  weights.  Depending on  these factors,  the  social  emotion,  weight‑game,  and scenario  re  determined. 

2i relationship  is  a network which  has  two  socions  and one unique  issue  socion or a personified  socion.  In  this  domain,  meaning,  sign,  and  group processes  are  clarified  in  terms of  weight‑transfer and  inter sublectivity. 

A 3 person  relationship  is  an  open network  system besed upon the  communication  among the three persons.  Strategies  of  the weight  control  and amplification  function by  the  third  socion  are discussed  in  terms of  the degrees of freedom of the weights. 

The Network domain  is  deals  with  the behavior of  "network  channel‑

fields".  Network energy,  temperature,  and visibility  are  the main  terms  in  this  domain. It is  argued that  the  process of  order formation of  a  network  is  selforganized by  chaotic  self  organization.  Topics  in  this  field  are  related  to  the  social  norm,  social  institution,  and culture. 

Finally,  a comparison of  socion theory  is  made with  meta‑theories of  other fields. 

Key words: life system, self organization, symmetry, social emotion, game, scenario, mean‑

ing, sign, intersubjectivity, group process, amplification, social  norm,  order  fomation, socion 

‑ 85 ‑

(3)

関西大学『社会学部紀要』第26巻第1 抄 録

ソシオン理論は個人と社会の相互依存性(荷重)についての関係論的な自己組織的ネットワーク理 論である。ソシオン理論は一般開放システム理論(生命システム理論)を基礎にしている。生命シス テムは相似的関係要素によって構成される。各要素はネットワークが畳み込まれたフラクタル構造を もつ。それは部分と全体の有機的関連を自己組織する。

ソシオン理論は荷重オペレーションによって成立しており,二者関係論, 2½関係論,三者関係論,

ネットワーク論の分野から成立している。

荷重オペレーションとは,荷重の変化ルールである。開放システムの相似構造はさまざまな対称性 を要求する。つまり,要素の対称性や荷重の対称性やチャンネルの対称性である。対称性の破れは差 異によって検出され,これを縮小することで対称化が達成される。

二者関係は,アクションを基礎とした閉ループネットワークである。この領域では, 2つの自己と 平等化一差異化と荷重差が二者関係理論の中心である。そこから社会的情緒,荷重ゲーム,シナリオ が演繹される。

2を関係は, 2つのソシオンと1つの特殊ソシオンからなるネットワークである。 ここでは間主観 性と荷重転移が中心的問題で,意味・記号論や集団過程が題材となる。

三者関係はコミュニケーションを基礎とした開ループネットワークである。ここでは荷重の自由度 が理論の中心であり,荷重方略,第三者による増幅などがとりあげられる。

ネットワーク論は,ネットワーク・チャンネル場におけるネットワークの挙動を検討する領域であ る。この領域の中心的概念はエネルギーと温度と視界である。ここでは荷重の自己組織化がネットワ ークの自己組織化をつくりだし,秩序が生成される過程がとりあげられる。規範や制度や文化などが

トビックスである。

最後に,ソシオン理論と他のメタ理論が比較検討された。

キーワード:生命システム,自己組織化,対称性,社会的情緒, ゲーム, シナリオ, 意味論, 記号 論,間主観性,集団過程,増幅,社会的規範,秩序生成, ソシオン。

(4)

ソシオン(藤澤)

I 導 入

11 目 的

本稿は「ソシオン理論」についての,大まかな理論の方向性と位置,および,理論の全体的構 図を提示し,すみやかな理論の理解をうながすことを目的としている。

ソシオン理論の根幹は関係論的な荷重ネットワークの自己組織化にある。しかし,理論の前提 となる枠組みや,理論によって構築される多くの仮説群が複雑に入り組んでいるため,理論の全 体的理解が容易ではない。

そこで,できるかぎり簡潔に理論を概観し,未だに残る多くの未解決領域への道筋を探索し,

すでに構想された理論に潜む欠点を見つけ出す作業を試みる。

12  理論の構図

ソシオン理論は,開放的情報システムの入れ子構造と,自己組織化するネットワークに社会関 係性の基礎となる荷重概念を導入し,荷重のオペレーション論,二者関係論, 関係論,三者

関係論,ネットクーク論,文化記号論へと展開されたものである (fig.1)

システム 理論

二者関係論 2½ 関係論 三者関係論 ネットワーク アクション 間主観性 コミュニケ

ーション 熱・温度

  .  ・  . 交換ゲーム 意味論 方略 自己組織系 社会的情緒 擬人論 増幅 制御論 生命システム論 荷重論 オペレーション論

人間の社会性とネットワーク・モデル fig. ソシオン理論の構成

ネットワーク 理論

理論がカバーする領域は,対人的相互依存関係を中心とする社会心理学から,ミクロ・マクロ 問題を中心とした社会基礎理論までにある。ただし,他分野への応用範囲は広く,コネクショニ スティックなアプローチをとる神経回路網理論や,その生物学的基盤としての脳理論,または進 化論に至る生物生態学などの自然科学分野から,財の社会性に関わる貨幣経済論や,法哲学,ぁ るいは,意味論を基盤とする言語学,記憶と認知のメカニズムなど社会のソシオニックな自己組 織性に連携する全ての問題に適切な視点を提供できるものと確信している (fig.2)

しかし,もちろん,社会心理学への有用性が最も期待される。ソシオンは他律的な社会性,す なわち, 荷重によって成立する人間と社会ネットワークのモデルである。「荷重」というキーコ ンセプトは,人間行動を個人の意識や内観による暗黙の合意からではなく,社会やネットワーク

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(5)

関西大学「社会学部紀要」第26号第1

fig. 2理 論 の 周 辺

からの必然として説明することを要求する。この銀点は,紙の裏表のように一体となっているも のだが,人間行動の説明と予測に決定的な相違をもたらす (fig.3)

個人から見た 関係的側面

fig. 社会と個人から見た関係的側面

社会から見た 関係的側面

理論が, 人間とその関係性の全体を扱い, 関係論的枠組みを与えようとするものであること から,抽象度が高く,直接的に日常行動を予測するためには付加的な条件設定が必要である。理 論は充分実証検証に耐えるものであるし,何よりも現実妥当性があると考えているが,現実は複 雑さを極めており,もし,理論に欠陥や麒顧が生じたなら唾棄することさえやぶさかではない。

たとえ,実証デークによって微視的な行動が予測可能であったとしても,全体との関係が不明な 仮説ー検証は不毛だと考えるからである (fig.4)

‑ 88 ‑

(6)

ソ シ オ ン ( 藤 瀾 )

アシミュレーション

思考実験

調査・実験

,,,ミュレーション

fig. 理論の実証性と研究のループ

II  ソシオン理論の中核

21  開放システム(生命システム)

理論の土台は開放システム論にある。開放システム(生命システム)は相互依存的要素のネッ トワークによって構成される自己組織的全体であり,差異の情報によってのみ駆動される多重多 層安定機構で,情報の写像,蓄積,創造によって秩序を生成する。

システムは,自己組織的秩序の創造・維持•安定が目的であり,システムの境界は自己組織性 に直接影響を与える範囲を指している。したがって,開放システムは要素に柔軟であり,システ ム自体は,秩序が安定である限りにおいて,要素に依存していない。このことは,開放システム が,要素に対してそれが再び開放システムであることを要求する。つまり,開放システムの入れ 子構造が必然的帰結となるのである。ソシオニックな開放システムは,近似したルールに貫かれ たフラクタル(相似)な階層構造をもっている (fig.5)。 フラクタルなシステムの第一のルー ルは,同一レペルでの対称性であり,第二のルールは異なるレペル間の対称性である。

対称性

対称性

fig. フラクタルな対称性

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関西大学『社会学部紀要」第26巻第1

フラククルな社会開放システムを明確に解釈するためには,従来のような「集団」「個人」「細 胞」などの物理的,実在的対象をシステムの要素とするのではなく,相互依存性そのものを要素 とし,ネットワークそのものをシステムとしなければならない。したがって,ソシオニックなシ ステムは個人という物理的境界を越え,相互依存の全体に広がる。このことは,眼に見えるもの が実在であり,見えないものは虚像であるとする一般的常識から離れ,見えないものが実在であ り,見えるものは虚像で,うつろいやす<. 代替可能な乗物でしかないというベルグソンと同じ 結論を導き出す。 しかも, 要素とネットワークは開放システムの相似的入れ子状態となってお り,いま,どの開放システムを取り扱っているのかの区別さえ恣意的であり得る。だからこそ.

相似的入れ子状態にある客観的世界と主観的世界の混同が日常的に発生するのである (fig.6)

fig. 実体の交替による永遠の秩序

ソシオン理論では開放システムの要素を,そのシステムの相互依存性そのもの,つまり,人間 関係を成立させている相互依存性自体を「荷重」と呼んだ。荷重は他の荷重と作用し, 変化す る。この変動についての一組のルールがソシオン理論(オペレーション)である。

22  入れ子構造

要素に依存しない開放システムは,要素間に機能的相似性を仮定することでもある。細胞の相 似性からなる生物.ニューロンの相似性からなる脳,個体の相似性からなる種,などは実在の要 素の相似性であり,これらは全て開放システムである。機能的相似性をもつ要素は,関係ネット

ワークによってシステムを形成する。システムの振舞いは,微視的な要素間の関係の巨視的なパ クーンであり,システムの目的は巨視的パクーンの安定化にある。

そこで,個々の要素はシステムの動向によって機能が決定されるので,要素はシステム全体,

あるいは少なくとも要素と関係するシステムの一部分を組み込んでいなければならない。でなけ れば.システムは目的を達成できず,個々の要素だけでは全体として機能しない。個々の細胞や 個々のニューロンだけでは人や脳として機能しないのと同じである。したがって,開放システム は必然的に入れ子構造を持たねばならないのである (fig.7)

細胞はDNAという形で全体を畳み込んでいるし,ニューロンはシナップス結合という形で脳 全体ではないが,その一部を畳み込んでいる。これらと同様に,個人は荷重のネットワークとい

う形で全体としての社会や文化の一部分を畳み込んでいると考えられる。

ソシオンは自らと結合する荷重ネットワークの一部を畳み込んでおり,これをサプネットと呼

‑ 90 ‑

(8)

ソシオン(藤澤)

サプネット ソシオン ソシオス ソシオネット

fig. フラクタルでホロニックな三者関係

ぶ。サプネットは自由に操作できるが, 現実のソシオネットによって, 不断に修正・規定され る。したがって, サプネットとソシオネットは部分的に相似となるはずである (fig.10)。 しか し,だからといって,サプネット(認知)とソシオネット(相互依存関係)が同じだと言うわけ ではない。この2つのレベル間の差異がサプネットとソシオネット双方のダイナミズムを生むの である。

23  自己組織化

開放システムにとって,今1つの重要な機能として,自己組織化をあげることができる。自己 組織化とは,ある状態が,それ自身の以前の状態と,それと関係する他の状態によって決定され ることである。

自己組織化は Wolfram(1988)によるセルオートマクの4つのタイプに見るように, 1)  消滅する, 2) n個の値に収束する, 3)フラククルなカオスとなる, 4)ランダムになる,に 分かれる (fig.8)。しかし,生物なり,社会なり,現実の開放システムでは一時的な (1), (2),  (4) 

(4)  (3) 

'"... ·-·---··-~ ,..̲..,・マ•一•一、ァ

(2)  (1) 

fig. セルオートマタの4タイプ

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関西大学『社会学部紀要』第26号第1

の状態はあるが,常に(3)に帰りつく習性を持っているようである。これは開放システムが入れ子 構造をしており,多重の自己組織化によってカオスの淵とよばれる (3)の状態に収束しようとして いると考えるのが最も適当である。なぜなら, (3)の状態にのみフラクタルなパクーンが出現する からである。

つまり,全体がより複雑になろうとするときには,部分が全体の複雑さのゆえに,全体を単純 化させるように働き,全体が単純化しようとするときには,部分が全体を複雑化させようとする という,いわば,全体と部分とのフィードパックループが存在し,ここにも複雑さという要因に ついての自己絹織化が存在するすると考えねばならない (fig.9)

部分(ソシオン) 全体(ネットワーク)

fig. 全体と部分の相互依存関係

このような多重自己組織化は,要素が全体を畳み込んでいるときには生じず,要素が全体の一 部分のみを畳み込んでいるときに生じる。つまり,細胞とDNAのように,全体を畳み込んでい る要素は,全体の複雑さを簡単には制御できないのに対して,ニューロンと脳のように全体の一部 分を畳み込んでいる要素は,シナップス結合強度を変更することで,全体の複雑さを制御できる。

個人と社会においても同様で,個人に畳み込まれたネットワークはネットワーク全体の一部分 である。もし,ネットワークが複雑になりすぎると,個人はこれを整理し,より単純なものへ自 己組織するし,逆に,もし,ネットワークが単純に過ぎると,個人はネットワークを増やし,ょ り複雑なネットワークを形成しようとする。その結果として,全体としてのネットワークとその 振舞いは,常にカオスの淵に立たされることになるのである。

24  ソシオン (SOCOIN)

ソシオンとは荷重ネットワークのユニットであり,個人(あるいは,自分や私)に対応する。

ソシオンの外円は個人の物理的境界を表すものではあるが,それ以上に,ネットワークを畳み込 んだ階層性の表現である。このような階層的境界としてのソシオンは,外には,それ自身を含む ネットワークと連結し,内には,入れ子状態となったネットワークを含んでいる。ソシオンの外 的ネットワークをソシオネット,内的ネットワークをサブネットと呼んで区別する。また,ソシ オネットの全体,あるいは一塊となったソシオネットをソシオスと呼ぶ (fig.7, fig. 10)

25  荷重 (WEIGHT)

荷重とは, ソシオン間の結合強度である。 この結合強度は, 結合する側によって決定される

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(10)

ソ シ オ ン ( 藤 澤 )

A,B,C,Dはソシオン

Issue  2  fig. 10 ソ シ オ ネ ッ ト

が,それは結合した側より,結合された側の強度として作用する。つまり,当該ソシオンの結合 強度は他律的である。

人間にとって荷重のもつ意味は重大である。個人間の結合強度,つまり荷重は他者によって送 り込まれてくる他者との社会的関係性であり,個人の社会性である (fig.11)

種の保存が,異性による社会的選択によって成立し,人間にとっての適応の大部分が社会的適 応であるとすれば,他者からの受容一拒否は,個人の社会的存在理由に直結する。なぜなら,他 者から受容されることによってのみ, 他者に対して有効な働きかけができるからである。つま

り,自律は他律の関数であり,他者からの受容一拒否が他者への受容一拒否を規定する。

fig. 11  荷重概念の構図

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関西大学「社会学部紀要」第26巻第1

他者からの受容一拒否に代表されるように荷重は二次的帰納概念である。荷重の他律性は,社 会関係が相互依存的であることを意味する。 ここで注意したいことは, 「依存」が個人の側から の言及であるのに対して,「依存性」は社会の側からの要請だということである (fig.3)

好悪や愛憎,評価などの一次的帰納概念は,個人の側からの能動的言及であるが,好かれる一 嫌われる,愛される一憎まれる,ポジティプな評価を受けるーネガティプな評価を受ける,など は社会の側からの言及であり,個人にとっては受動的社会状況となる。このことは表裏一体のよ うに見えていて,人間関係が社会によって結ばれるか,それとも個人によって結ばれるか,とい う決定的な視点の相違を生みだす (fig.12)。だが,同時に操作的な困難をも抱くことになる。

受 動

社会的影響 fig. 12  依存と依存性

荷重は相互依存的社会性であり,ポジティブからネガティブまで,両極一次元性をもつ,と仮 定する。すなわち,荷重は群体としての性質を持ち,関係性の方向と量をもつベクトルである。

しかし, これには異論があるかも知れない。一次的帰納概念の受動表現対からなる尺度を構成 し,関係の評定を行った結果では,明確な一次元因子構造が得られたが,能動表現対では多次元 因子構造が得られている。このことは荷重の一次元性を確認したとも言えるが,認知の不明確さ が原因だとも言えよう。

26  荷重I(I),荷重nc私直),荷重直(私直)

ソシオンAの荷重はソシオンBからの他律的な関係性である。これは逆に,ソシオンBの荷重 がソシオンAからの関係性であることを示している。そこで,いまAにとって, BからAへの荷 重を荷重new如), AからBへの荷重を荷重I (Wab)とし, また, AからA自身への荷重を 荷重直 (Waa)とする (fig.13)

ソシオンというモデルではなく,個人を問題にするときには,荷重Iを私I,荷重Ilを私Il'

A( B(他者)

fig. 13荷重を入れたソシオン

(12)

ソシオン(藤澤)

荷重皿を私皿と表現する。二者関係では,自分の私IIは相手の私Iであり,相手の私IIは自分の

I :tごということになる。

ここで問題となることは,私Iと私IIが,自分と相手双方に同じかどうかという疑問が生じる ことである。当然のように,各個人の認知は異なるはずである。したがって,個人のサプネット における荷重は同一ではないが, ソシオネットでは間主観的な同一性は保持されると考える。

Taguri (1958)のソシオメトリックテストの結果からも, 確証とは言えないまでも充分な相関 のあることが確かめられている。

Freud (1940) Mead(1938)の自己概念と私I, II,  illの関係について,詳細な検討が必 要ではあるが,ここでは私IIが他者の側にあり, しかも自己の一部分であるという開放システム

に特有の境界を指摘するにとどめる。

27  イシューソシオン

イシューソシオンとは荷重11しか持たない特殊ソシオンで,対象は何であってもよい。イシュ ーはソシオネットにも,サプネットにも存在する (fig.14)

イシューとは事柄であり,個人が認識できる全ての対象である。知覚可能な物理的対象はもち ろんのこと,いわゆる,態度対象となり得るものの全てである。 たとえば, 「木」や「水」は個 人に対して何らかの関係を結ぼうとしない(荷重Iをもたない)が, 個人は他者との関係から

「木」や「水」と関係をもとうとする(荷重IIをもつ)。 これは個人の側からいえば, イシュー に対して荷重Iをもつが,イシューが個人に対して荷重IIをもたないことに等しい。したがって 一般に,個人のソシオネットには,他者よりもイシューの方が多く含まれている。

イシューを挟んだ他者とのネットワークのパターンは,個人に畳み込まれ,意味や記号や,そ れらの知識として認識される。 Tajfei(1972)のいう社会的カテゴリーはイシューソシオンであ

ると考えられる。

28  擬人ソシオン

擬人ソシオンとは荷重Iしか持たない特殊ソシオンで,架空ソシオンである (fig.15)

Issue 

fig. 14  イシューソシオン

擬人 fig. 15擬人ソシオン

‑ 95 ‑

(13)

関西大学「社会学部紀要」第26号第1

集団は,境界の明らかでないネットワークシステムの振舞いを指しているのに対して,いわゆ る,「みんな」「われわれ」「かれら」は実在の個人や集合を指しているのではない。その意味で,

Turner (1984)のいうプロトタイプとしての, 集団人やムラ人や国家人や民族人なども擬人ソ シオンである。それらは, まるで個人のように振舞い,個人を評価し, 荷重を制御する。 しか , 実在ではないので,これに対して荷重を与えることはできない(私Iをもてない)。 ところ が,「みんな」は「私」を評価し,好きであったり,嫌っていたりする(私IIをもっている)。

擬人ソシオンは誤解を招きやすい。なぜなら,「私は彼らが嫌いだ」というように, 集団人に 対して私Iをもてるように思えるからである。しかし,現実の集団人は物理的・現実的実在では ない。したがって,「私は彼らが嫌いだ」というのは, 集団人に対してというより, 集団人を1 つのカテゴリーや集団イシューとして扱っているのである。

ソシオンは,サプネットに擬人ソシオンを持っている。意識や記憶としてのネットワークの中 で,擬人は個人に対して関係性を持ち,個人を評価し,個人のサプネットを変えてゆく。

擬人ソシオンは集団人に限らず,架空の人物としても,神としても,権威としても出現する。

すなわち, 擬人化され, 個人化され,個人を評価する架空の対象は擬人ソシオンとなるのであ る。「……になりかわって」と言える対象はすべて擬人ソシオンである。

29  荷重ネットワーク

ソシオンを結ぶ荷重ネットワークを社会ネットワークとも,単にソシオネットともいう。荷重 ネットワークとは,互いの荷重結合によるループによって結び付いたソシオン同士の荷重関係ネ ットワークのことである。公文 (1993)の言うように,ネットワークの本質は「なんらかの変項 が対応させられているもの」である。荷重ネットワークは荷重が関係であり, 荷重が変項であ

荷重ネットワークの中でも,一塊となったものをソシオスと呼ぶ。また,ソシオンの内部も,

ソシオネットを畳み込んでいるから,それもソシオネットと同様,荷重ネットワークである。

一般に,ソシオネットの荷重結合はアクションやコミュニケーションによって成立している双 方向ネットワークである。しかし,アクションやコミュケーションは常時作用しているとは限ら これらの行為によって荷重ネットワークが成立・活性化されるものと考えなければならな い。同様に,個人に畳み込まれている荷重ネットワークは,ソシオネットの活性化に伴って活性 化するだけではなく,他者やイシュー,あるいは擬人を意識することで活性化する。ここで「意 識」という言葉を使うことには大いに疑問が残るが,現時点では致し方のない表現ある。

ソシオンとイシューと擬人からなる荷重ネットワークは,荷重マトリックスとして表現できる (fig. 16)。マトリックスの対角項には自己荷重(荷重皿),行には荷重I,列には荷重1Iが示さ れている。また,イシューは行にしかない。擬人はサプネットの列にしかなく,それがソシオネ

ットのときにはイシューの1つとなる。

(14)

ソシオン(藤澤)

自己荷重 ソシオン イ シ ュ ー

r.. 

a Wab  Wad  i Ala W.b  W,,d  i

Wba  Wbb  Wbc  Wbd  Wbi 

Web  c

Wb; 

Wda  Wdb  Wdd  Wdi  Wd; 

擬人 Wgb  Wgd  Wg;  GI  Wgb  Wgd  Wg; 

` 

Bのサプネット 世 論 対称化

fig. 16  荷重マトリックス

210  荷重関係(チャンネル=相互荷重結合)

いま, 2つのソシオンA, Bの関係は,相互に荷重依存していなければ,社会的な意味を持た ない。一方的な荷重は,相手が特殊化(イシュー,疑人)されているのであって,相互関係が存 在するわけではない。片思いは,片思いであることを他者に表明しなければ社会的に機能しない のである。つまり, 2つのソシオン間の荷重関係の強さは,互いの荷重差に反比例し,荷重の積 に比例する。 A, B間の関係とは,互いの結合強度の単純和ではなく,

晶 =WWba‑W.X Wba  or  a品=(Wba‑W.WabX Wba 

として表すことができる。この式は,関係が一方的であればゼロ,荷重差がゼロであればoo, ‑

方が負であれば負,双方が負であれば正であることを示している。個人の側から見た荷重関係で は分母の絶対値や2乗がとれる。

荷重関係はネットワークのチャンネルであり,このことからも,特殊ソシオンが媒介的関係し か持てないことが分かる。特殊 ノシオンが,一般的に,主観的対象であると考えられているゆえ んである (fig.17)

客観的対象

fig. 11  主観的対象と客観的対象

‑ 97  ‑

(15)

関西大学「社会学部紀要』第26巻第1

III  ソシオンの荷重オペレーション

31 荷 重 差

ソシオニックな開放システムは相似性を保った,入れ子構造のある要素のネットワークからな り,変項となる関係性としての荷重の変化は荷重間の差によって駆動される。

この仮定は,いわば,変動する外的・内的環境の一次差分として荷重が変化するということに 等しい。開放システムの要素は相似的であるので,本来同じはずのものであり,差をもって認識 することしかできないのである。

fig. 18  荷重オペレーションの見取図

一般に,個人において荷重差は .ds/S.2で認識される。また,荷重変化率(変化速度)は荷 重差間の差,すなわち,荷重の二次差分として認識される。

ソシオン理論における荷重オペーション仮説は, 「ソシオンは荷重差を縮小しようとする(対 称化)」ということである。つまり,

Wa=mini(Wb‑Wa) or  lim(Wb‑Wa) =O  である。

もちろん,どのような荷重間の差をも考慮することが前提になるが,注目しなければならない のは, 自他で構造的・機能的に対応する要素間の荷重差(不均衡), 同一荷重の時間的変異(不 整合),ソシオネットとそれが畳み込まれたサプネット間の荷重差(はがれ),および,第三者間

table レベルによる対称化の種類

対称化 I レ ベ ル

対 象

l

荷 重

ソシオン 認:*t~

ネットワーク・チャンネル 範 囲 1共時的1通時的廿腐蓋

i

↑荷重直 1塁 霧 IIチャンネル場Iソシオス 状 態 1不均衡1不整合 1不均衡1不整合1はがれ1不一致 1場の非平衡 1非 平 衡

:IJ届 叫 』 届 叶 塁 謡I縮約化1 I最噂叫視界適合化 1 T

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