解析
I・講義ノート
第9回
(2020年7月14日(火)配信分)
第9回本題
関数
f(x)を微分することにより得られる関数を
f(x)の導関
数と呼び、
f′(x)と表しました。逆に、導関数が
f(x)であるよう
な
(つまり微分すると
f(x)が得られるような
)関数を
f(x)の原
始関数と呼び、通常は大文字を使って
F(x)で表したり
(従って
F′(x) = f(x) )、
∫
f(x)dx
と表して、不定積分とも呼んだりしました。また、この原始関数 を求めることを、積分すると言いました。
なぜ積分の方が記号が複雑なのかと言うと、元々は別のことに 由来するものが、ちょうど逆の操作になっていたと言うのが理由 のようです。微分が瞬間の速さ
(や変化率
)から来たのに対して、
積分は面積から来ています。
線分で囲まれた図形
(多角形
)は、三角形に切り分けることで、
面積を求めることができますが、曲線で囲まれた図形では、そう は簡単にはいきません。でも、その曲線をいくつかに分けて、関 数のグラフとして表しておけば、後はその関数の原始関数を用い て、面積を求めることができると言うのが、定積分でした。でも 実は、面積の求め方
(と言うか定積分の定義
)が先にあって、この
面積を求める範囲を少しずつずらして変化させることにより、得 られる関数を不定積分と呼んだところ、じつはこれが原始関数
だったと言う流れです。従って、由緒正しい積分の導入としては、
不定積分ではなく定積分から入る方がよいようです。
積分に関する基本的な公式については、高校でも学んでいるこ とですから、教科書で復習しておいていただくことにして、この 講義ノートでは今回、リーマン積分と呼ばれる定積分の定義につ いて、お話しておこうと思います。と言っても、あまり一般的に すると、関数の連続性や微分のとき同様、極限に関する議論が大 変になりますから、ここでは、主に
(有限な
)閉区間上の連続関数
に対象を絞って、直観的な説明も交えながらのお話にしようと思
います。
f(x)
は閉区間
[a, b]上で定義された関数で、その値は
0以上と
しておきます。負の面積を導入しさえすれば、この仮定は特に必 要ではないのですが、記述が複雑になるので、とりあえず仮定し ておきます。
今、この関数のグラフと
x軸
(直線
y = 0 )、及び縦の2直線
x = a, x = bで挟まれた図形の面積を求めることを考えます。
0 -
x 6
y
y =f(x)
a b
いきなり正確な面積は見当がつかないので、とりあえずは、面 積がはっきりわかる図形で近似することを考えます。
円の面積を求めるために、限りなく細かく、たくさんの扇形に 切り分け、各扇形を今度は二等辺三角形で近似して…と言うのを、
高校よりずっと前に、習ったことがあるのではないでしょうか?
でも今回は三角形ではなく、座標軸に平行な辺からなる長方形 で近似します。そのためにまず、閉区間
[a, b]を
n個の閉区間に
切り分けます。
∆ : a = x0 < x1 < x2 < · · · < xn−1 < xn = b
この
∆を閉区間
[a, b]の分割と呼びます。この分割は
n等分であ
る必要は全くありません。
得られた小区間
Ii = [xi−1, xi] (i = 1, 2, . . . , n)の中で、最大の
ものの幅を、分割の大きさと呼び
|∆|で表します。
|∆| := max
1≤i≤n(xi − xi−1)
|∆| ≥ b − a
n
が常に成り立ちます。
(等号成立はもちろん
n等分の
ときに限ります。
)f(x)
が
[a, b]で連続のときは、各
Ii = [xi−1, xi]でも連続です
から、ワイエルシュトラスの定理より、
Ii上での最大値と最小値
をとります。その値をそれぞれ
Mi, miと表すことにします。
今、
x軸上の線分
Iiを底辺とし、関数
f(x)のグラフを、ぎり
ぎり上から抑え込んで覆う長方形たちの面積の和を
S∆で表しま
す。
f(x)が連続のときは、
S∆ = ∑n
i=1
Mi(xi − xi−1)
で与えられます。この値によって、求めたい面積を近似したいの ですが、一般にその値は、グラフが水平
( f(x)が定数関数
)でな
い限り、求めたい面積より大きくなります。
0 -
x 6
y
y =f(x)
a= x0 x1 x2 x3 =b
S∆
と目標との差は、分割が粗い
( |∆|が大きい
)と結構大きい
ものになりますが、各
Iiをさらに分割することによって、分割を 細かい
( |∆|が小さい
)ものに取り換えれば、
S∆の値は減少し、
近似の度合いが改善されていくことが期待されます。
0
- x 6
y
y =f(x)
a b
||
x0
x1 x2 x3 x4 x5
||
x6
そして分割の大きさ
|∆|を、限りなく
0に近付けたときの極
限値
|∆lim|→0 S∆
を、関数
f(x)の閉区間
[a, b]における上積分と呼び、
∫ b
af(x)dx
と表します。
一方、各
Iiを底辺とし、関数
f(x)のグラフを、ぎりぎり下か ら支えるような長方形たちの面積の和を
s∆で表します。
f(x)が
連続のときは、
s∆ = ∑n
i=1
mi(xi − xi−1)
で与えられます。この値も、求めたい面積の近似に役立てたいの ですが、一般にその値は、グラフが水平でない限り、求めたい面 積より小さくなります。
0
- x 6
y
y =f(x)
a= x0 x1 x2 x3 =b
s∆
と目標との差も、分割が粗いとやはり結構大きいものにな りますが、この場合も、各
Iiをさらに分割することによって、
s∆の値は今度は増加し、近似の度合いが改善されていくことが期待 されます。
0
- x 6
y
y =f(x)
a b
||
x0
x1 x2 x3 x4 x5
||
x6
そして
|∆|を、限りなく
0に近付けたときの極限値
|∆lim|→0 s∆
を、関数
f(x)の閉区間
[a, b]における下積分と呼び、
∫ b
af(x)dx
と表します。
一般の関数においては、
|∆|を限りなく
0に近付くように、分
割
∆を細かいものに取り替えていっても、
S∆と
s∆の差は解消
されるとは限らず、その場合、それらの極限
(値
)である上積分と
下積分は一致しません。しかし、
f(x)が連続であるときには、
S∆ − s∆ = ∑n
i=1
(Mi − mi)(xi − xi−1)
が
0に収束し、上積分と下積分が一致することが示されます。
いくらでも小さい任意の ϵ > 0 に対して、十分小さい δ > 0 をとってくれ
ば、|∆| < δ である分割 ∆ に対しては、全ての i = 1, . . . , n について
Mi − mi < ϵ が成り立つことが、閉区間で連続と言う条件から導かれます。
0 -
x 6
y
y =f(x)
a= x0 x1 x2 x3 =b
0
- x 6
y
y =f(x)
a b
x||0
x1 x2 x3 x4 x5 x||6
そしてその値こそが、求めたかった面積そのものであると考え るのは極めて自然です。
一般に、上積分と下積分が一致するとき、その値を、関数
f(x)の閉区間
[a, b]における
(リーマン
)積分
(定積分
)と呼び、
∫ b
a f(x)dx
と表します。また、このとき、関数
f(x)は閉区間
[a, b]で
(リー
マン
)積分可能であると言います。
関数
x, x2, x3それぞれについて、閉区間
[0, 1]を
n等分した分
割
∆に対し、
S∆, s∆, nlim→∞ S∆, nlim→∞ s∆
を計算してみましょう。
連続でなくても、積分可能な場合は多くありますが、いつでも 積分可能とは限りません。たとえば教科書
98頁にもある例
f(x) =
1 (x
は有理数
)0 (x
は無理数
)では、どんなに小さな区間
Iiの中にも有理数と無理数の両方が含 まれているので、
Mi = 1, mi = 0となり、閉区間
[a, b]上の上積
分は
b − a (教科書では
1 − 0 = 1 ),下積分は
0となって、一致し
ません。
閉区間
[a, b]で連続な
f(x)に対し、
n = 1のとき、つまり分割
していないときを考えると、
m1(b − a) ≤ ∫ab f(x)dx ≤ M1(b − a)
が成り立っています。
0
- x 6
y
y =f(x)
a b
最大値
最小値
今、最小値
m1と最大値
M1を実現する
xを、それぞれ一つず
つ選び、
a1, b1とすると、
f(a1)(b − a) ≤ ∫ab f(x)dx ≤ f(b1)(b − a)
より
f(a1) ≤ 1 (b − a)
∫ b
a f(x)dx ≤ f(b1)
が成り立ちます。従って、中間値の定理より、
a1と
b1の間に、
f(c) = 1 (b − a)
∫ b
a f(x)dx
を満たす
x = cが存在します。
0
- x 6
y
y =f(x)
a b
最大値
最小値
! 平均値
この事実を積分の平均値の定理と呼びます
(教科書
115頁参照
)。
今、閉区間
[a, b]上の任意の
xに対し、
F(x) = ∫ x
a f(x)dx
により定義される関数を
(定積分に対して
)不定積分と呼びます
(こちらが本来の不定積分の定義です
)。
さらに、開区間
(a, b)上の任意の
xと
x + h (h ̸= 0)に対し、
0
- x 6
y
y =f(x)
a x b
F(x)
... x +h
F(x + h)
積分の平均値の定理より、
F(x + h) − F(x)
h = 1
h
(∫ x+h
a f(x)dx − ∫ax f(x)dx
)
= 1 h
∫ x+h
x f(x)dx
= f(c)
を満たす
cが、
xと
x + hの間
( h > 0のとき
x < c < x + h, h < 0のとき
x + h < c < x )に存在します。
0 -
x 6
y
y =f(x)
a x b
F(x)
... x +h
F(x + h)
c
f(c)h
h → 0
のとき、
x + hは
xに近付きますから、間にある
cもまた
xに近付きます。今、
f(x)は連続ですから、
hlim→0
F(x + h) − F(x)
h = limc→x f(c) = f(x)
すなわち、
F′(x) = f(x)
が成り立ち、不定積分
F(x)が
f(x)の原始関数
(の一つ
)であるこ
とがわかります。
この事実を微積分学の基本定理と呼びます
(教科書
98頁参照
)。
第8回練習課題の解答
対数関数
log xの
x = 1におけるテイラー級数展開
∑∞ n=1
(−1)n−1
n (x − 1)n
に
x = 2を代入すると、
∑∞ n=1
(−1)n−1
n = 1 − 1
2 + 1
3 − 1
4 + · · ·
となりますが、これは典型的な交項級数
(符号が交互に入れ替わ
り、絶対値は単調減少で
0に収束するような数列の級数
)で、収
束することが知られています。
三角関数
sinx, cos xの
x = 0におけるテイラー級数展開はそ れぞれ
∑∞ k=0
(−1)k
(2k + 1)!x2k+1 = x ∑∞
k=0
(−1)k
(2k + 1)!(x2)k
∑∞ k=0
(−1)k
(2k)! x2k = ∑∞
k=0
(−1)k
(2k)! (x2)k
なので、とりあえず別のべき級数
∑∞ k=0
(−1)k
(2k + 1)!yk, ∑∞
k=0
(−1)k (2k)! yk
を考えます。
それぞれの収束半径を
r′′, r′とすれば、ダランベールの判定条 件より、
1
r′′ = lim
k→∞
|(−1)k+1/(2k + 3)!|
|(−1)k/(2k + 1)!| = lim
k→∞
1
(2k + 3)(2k + 2) = 0 1
r′ = lim
k→∞
|(−1)k+1/(2k + 2)!|
|(−1)k/(2k)!| = lim
k→∞
1
(2k + 2)(2k + 1) = 0