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ラサピエンツア滞在記

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Academic year: 2021

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海外レポート

ラサピエンツア滞在記

理学部教授 山 田 直 記

緑の巻 行く先は羅馬だ!

「君にも、もう権利があるのですよ。」西郷 学部長(当時)が声をかけてくださった。以前 に、アメリカに滞在したことがあり、今度機会 があったらヨーロッパに行きたいと考えていた ので、夢が現実に近づいた瞬間であった。パリ のL先生、マドリッドのD先生などの顔が思い 浮かぶ。

その年の秋、京都でのシンポジウムの懇親会 でビールを片手に、ローマ大学のC先生と話を していたとき、「1年間のサバティカルがもら えそうなのだけれど、、、」と話題を持ちかけ てみた。「それなら、俺のところに来るかい?」

話は決まった。「行く先は羅馬だ!」

白の巻 滞在許可証顛末

2003年9月からの在外研究が認められ、家内 と2人での滞在を計画した。まず、ビザを取得 しなければならない。東京の在日イタリア大使 館との交渉を開始する。

「あなたのビザ発給には問題ありません。し かし、奥さんのビザのためには、戸籍謄本とそ れを示す外務省の証明書それに、権威づけられ たイタリア語訳、居住先を保証するローマの内 務警察(Questura)の証明書が必要です。」ロー マに初めて行く人間に、当地での居住証明など 矛盾しているではないですか、などという論理 的な話はイタリア人には通用しないらしい。C 先生に頼んで警察に行ってもらったが、返事は、

「ローマの警察ではそんな話は聞いたことがな いと言っている。」

何度も、何度も、やりとりし、やっとのこと

で大使館から警察に、C先生が私の代理で出頭 するから居住証明書を交付してくれるように、

という依頼証明書を発行してもらえることにな り、わざわざ東京の大使館に受け取りに出かけ て、勇躍ローマに向けて発送した。待ち受けた C先生からの返事は、「書類にある私の生年月 日などのデータが違っている。大使館にはきち んと伝えたのに、、、」。あぁー、もう時間切れ。

結局、家内は観光ビザで過ごすことになった。

イタリアに長期滞在を希望する外国人は、入 国後8日以内に内務警察に滞在許可を申請しな ければならない。アパートの大家さんから居住 証明をもらい、指示された内務警察中央署に出 頭する。探し当てて着いたのは11時45分。入り 口で警官が、「今日の窓口はもう閉まった。」翌 日8時半に出かけると、すでに大勢の人が中庭 にあふれている。番号札が呼ばれたのは11時30 分。「君のような留学ビザの申請は本署ではな く、地元の警察署で取り扱うことになってい る。」アァー。気を取り直し、市街図を眺めて 場所を確認し、近くの警察署に出頭すると、「そ んな事案は扱ったことがない。」「だって、中央 警察で指示されたのですよ。」押し問答を続け ていると、奥の方から声がして、「それは別の ナントカ署で扱っているのじゃないか?」

バスを乗り継いで、ようやく、郊外の教えら れた警察署に着いたら、またもや時間切れ。翌 日、再び出頭してやっと手続きが進んだ。「こ れで受付は済んだ。3ヶ月後に再び出頭するよ うに。」

3ヶ月後、朝靄の旧アッピア街道を2時間歩 いて、件の警察署を再訪する。書類を交付され、

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署名を終えて、「これで、君は2004年の8月ま で滞在できる。」

あァくたびれた。これがイタリアなのだと実 感する。

赤の巻 ラサピエンツア数学教室

ローマ大学は14世紀、ルネサンス期に開かれ たという。近年まで旧市街のラサピエンツア宮 にあったので、現在の位置に移動した後もUni- versita di Roma, La Sapienzaと呼ばれている。主 キャンパスは、ローマ中央駅テルミニから徒歩 約10分、市内を囲む城壁のすぐ外側に位置して いる。学問の女神ミューズ像の立つ中央広場に 面して数学教室がある。

正面の3階は図書室である。メーンルームは 天窓からの採光も明るく、落ち着いた雰囲気を 醸している。両側の高い壁には天井まで4層分 の本棚が据え付けられ、別室の書庫にも2層に 亘って、ぎっしりと雑誌と単行本が並んでいる。

スタッフが自慢する世界有数の数学図書室を堪 能することができた。1600年代のケプラーの著 書がさりげなく展示してあったりするから、興 奮と発見の連続であった。

数学教室の建物は円い中庭を囲む馬蹄形をし ている。大小様々の教室とスタッフの研究室、

それに国立高等数学研究所(INdAM)が同居 している。狭隘なスペースが悩みの種で、各研 究室に2〜3人が机を並べている。学生が頻繁 に先生を訪れ、机を挟んで議論をするから部屋 はいつもにぎやかである。昼食時には仲間が連 れ立って近くのバールに出かける。サッカーの 話、政治論議、にぎやかさはここでも変わらな い。

C教授は、フルネームをItalo Capuzzo Dolcetta という。同僚にならって、イタローさんと呼ぶ ことにする。数学の研究では、テーマを絞った 個人やグループでの研究だけでなく、定期的な セミナーでの情報交換が重要である。イタロー

さん主催のセミナーは、HaM(Hamiltonian and Metric)セミナーと呼ばれ、ほぼ毎週開かれて いる。「外国からの客人がいるから、英語で」

と気を遣ってくれたのは最初のうちだけで、そ のうち気がつくとイタリア語になっていた。そ のほかにも多くのセミナーが定期的に開かれて いた。印象的だったのはCaccioppoliの記念セ ミナーである。生誕100年記念とのことで数学 の業績を顕彰する前半の進行に続いて、彼の生 涯を恩師との往復書簡の朗読劇でドラマチック に再現する後半の演出には驚かされた。

イタリアの学士院は「山猫アカデミア」とい う。創設は1600年にさかのぼるらしい。ある日、

「アカデミアで講演会があるから出席しない か?」と誘われ、出かけた。宮殿を思わせる、

古く典雅な大広間で聴く数学の講演は、大きな 歴史の流れを感じさせるものであった。

Grazie

和辻哲郎「イタリア古寺巡礼」、モンタネッ リ「ローマの歴史」などを笈底にローマ滞在を 楽しむことができたのは、1年間の不在を許し てくださった応用数学教室の皆様の寛容のおか げである。感謝に堪えない思いとともに、今度 は若い人たちが出かけられるようバックアップ をしなければならないと思う。権利のある人々、

どんどん出かけてください。

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海外レポート

ドイツ連邦共和国(カイザースラウテルン)滞在記

工学部助教授 山 本 俊 浩

平成15年9月から1年間、長期在外研究員と してドイツ連邦共和国カイザースラウテルン大 学複合材料研究所に滞在する機会に恵まれた。

カイザースラウテルンという町

今、日本でこの町の名を知っている人は少な いが、来年(2006年)は多くの日本人が訪れる ほど有名になっているかもしれない(?)。

この町にはブンデスリーグの一部リーグに所 属するサッカーチームがあり、2006年ワールド カップの開催地として、滞在中、駅やサッカー 競技場の改修工事等の準備が進められていた。

カイザースラウテルンは、人口約10万人、面

積約139"、ドイツ南西部ラインラント・プファ

ルツ州にあり、フランクフルトから南西に約120

!、フランス国境から約60!に位置する。アク セスとしては、アウトバーンの出入路が2カ所 あり、国際線の特急列車も停車する。

町は21階建ての市庁舎を中心に約4"の範囲 に、いくつかの教会以外は低層(4階建て程度)

の商店街や住宅が建ち並び、四方を森に囲まれ ている。町の8割以上を占める広い森林では、

市民のレクレーションの場として家族や犬の散 歩、ランニングをする多くの人を見かけた。町 の中心から約2!にある大学は、森に隣接し、

9月や春先には学内で野生のリスを見ることも できる。

この町は、皇帝バルバロッサ(カイザーは「皇 帝」の意味)が約850年前に居城を構えたこと から始まる。第二次大戦後はアメリカ軍の基地

がおかれ、滞在中ドイツはイラクに参戦してい なかったにもかかわらず、イラクでの負傷兵を 搬送しているという軍用機が頻繁に離着陸して いた。

日本との関係を紹介すると、この町は東京都 の文京区と姉妹都市で、市内にはドイツ最大の 日本庭園があり、庭園内の池には日本から贈ら れた宇宙メダカが泳いでいるとのことだ。

大学・複合材料研究所

カイザースラウテルン大学は、約9000人の学 生を擁し、その多くは技術系の学生である。

複合材料研究所(IVW)は、同じ敷地内にあ り、特にポリマーをマトリックスとする複合材 料(FRP)の研究所として1990年に設立された。

チーフディレクター(教授)と3部門(Design and Analysis、Materials Science、Manufacturing Sci- ence)のディレクター(教授)および各部門1

〜2名のグループリーダのもと100人以上のス タッフ、約70人の学生アシスタント、10人程度 の客員研究員で構成されていた。20カ国以上の 人がおり、外国人の割合は約35%ということで あった。

FRPは、比強度・比剛性等の優れた特 性 を 利用し、燃料電池自動車の水素貯蔵タンクや風 力発電のブレード等、資源循環・環境分野での 貢献が期待される材料である。しかし、一方で は多くの分野で使用されているそれらの材料を 廃棄する際、その処理処分に多大な費用とエネ ルギを必要とすることが問題となっている。

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この研究所では、上記3部門が連携をとりな がら、国内外の大学、企業と多岐にわたる研究 テーマについて共同研究を行い、さらに高付加 価値をもつ先進材料の開発と、これまでの材料 とほぼ同じ機能を持ち処理処分しやすい代替材 料の開発とが行われていた。

大学・研究所での生活

私はManufacturing Science部門に所属し、植 物繊維強化複合材料の成形について研究を行っ た。この材料は、安価で処理処分が簡単なこと からガラス繊維強化複合材料(GFRP)の代替 材料として期待されているが、十分な強度を有 する製品の成形条件等は確立されていない。

滞在中、環境への負荷を低減する材料の開発 を目的に、数種類のマトリックス材料と植物繊 維を用いて、種々の成形条件のもとプレス成形 で作成した試験片の強度試験を行い、ある種の GFRPと同程度の強度を有する植物繊維強化複 合材料が成形可能であること、さらに破面観察 より複合材料の強度を向上させるためには界面 強度の影響が重要であることを報告した。

この研究は、所内の多くのスタッフおよびド イツ企業との共同研究である。使用機器はテク ニシャンと呼ばれる人が管理しており、特に大 型機器を使用するには彼らの勤務時間内に暖機 運転も含めた使用時間の予約を入れなければな らない。数台の機械を管理する彼らの勤務時間 は週39時間程度であり、使用頻度の多い機械を 多く管理している人への予約は1ヶ月以上かか ることもある。また、研究所内のスタッフとの 打ち合わせや研究手法の議論で、頻繁に「クラ イアントの要望」という言葉を耳にし、共同研 究の難しさも感じた。

この研究所では、前述したように多岐にわた る研究プロジェクトが行われ、月に一度のス タッフによる報告会、不定期に行われる来訪者 の講演会、研究所主催の国際会議や学外の人を

対象にした研修会が催され、それに参加するこ とにより、上記研究テーマ以外にも多くのこと を学ぶことができた。また、研究所内および共 同研究先の工場見学では貴重な体験ができた。

教育面では、学内以外に国外(私のグループ にはスペインからが多かった)からも学生を3 ヶ月あるいは6ヶ月間受け入れ、卒業論文の指 導が行われていた。

短期間滞在する彼らのためかどうかはわから ないが、学内で頻繁に蚤の市が開かれ、図書館 では彼らが持ち込んだ種々の言語の新聞や雑誌 が整理され、閲覧できるコーナーもあった。

環境先進国と呼ばれるドイツでの生活

ドイツには多くの規制があり、日本のような 過剰なサービスはない。人々は多少不便を感じ ても決められたルールに従って生活している。

このことが多くの環境政策が実施できる基本で はないかとも感じた。

例えばドイツではいわゆる「閉店法」のため、

商店の営業は朝8時頃から最大20時頃、土曜日 は16時頃まで、日曜・休日は閉店である。日本 では利用者へのサービス向上の名のもと、24時 間営業のコンビニや自販機があり、スーパーに は季節感のない野菜や果物が深夜まで販売され ているが、ドイツにはそのようなものはない。

ドイツでの生活で心がけることは、できるこ とは自分でする。他に依頼しなければならない ことは、時間的に余裕を持つということかもし れない。当然のようにも聞こえるが、自ら我が 家を建てる日本人は少ない。今となっては懐か しく、このように感じた種々のエピソードや生 活に根づいていると感じた環境政策の数々につ いては、紙幅の関係でここでは割愛する。

最後に、長期在外研究という貴重な機会を与 えていただきました福岡大学の皆様に深く感謝 申し上げます。

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参照

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