「課程博士用」
学 位 論 文 の 要 約
専 攻 名 材 料 科 学 専 攻 氏 名
ふ り が な
土屋つ ち や 公こう亮すけ 学位論文題目 シリコンウェーハ研磨におけるヒドロキシエチルセルロース(HEC)の
界面吸着挙動に関する研究と応用
(英訳Investigation and Application of Adsorbing Behavior of Hydroxyethyl Cellulose on the Surfaces during Si Wafer Polishing) 主論文の要約(図表・写真は除く)
導入(Introduction)
半 導 体 デバイスの微 細 化に伴 い、半 導 体 基 板 として用 いられるシリコンウェーハ表 面 にはより 高 い 品 質 が 要 求 さ れ る 。 ウ ェ ー ハ の 加 工 に は 、 研 磨 ス ラ リ ー を 用 い た Chemical-mechanical-polishing(CMP)技 術が採 用 されており、その仕上 げ工 程 で使 用 され るファイナル研磨スラリーがウェーハ表面の品質に大きな影響 を与える。
背景(Background)
ファイナル研磨スラリーには、ウェーハ表面への異物の吸着を抑制すべく、親水化剤としてヒ ドロキシエチルセルロース(HEC)が用いられる。HECのウェーハ表面品質に与える影響について はこれまでに多くの研究がなされているが、HECが研磨によりウェーハ表面へ親水性を付与する 挙動については、詳 細が理解 されていない。
目的(Objectives)
本研究は、HEC、シリカを含むファイナル研磨 スラリーについて、スラリー中及 び研磨時における HECの挙動や研磨後のウェーハ表面の親水性とその表面状態を調査することにより、ファイナル 研磨スラリーによるウェーハ表面 の親 水性発現機構を解明することを目的とした。
方法(Methods)
HEC、シリカ、アンモニアから成るファイナル研磨スラリーを用いて、次の評価を実施した。
1)スラリー中 でのHECのシリカ表面への吸着性評価:動的光散乱法 による粒度測 定、シリカ吸着 炭素濃度測定
2)研磨時の摩擦抵抗評価:研磨定盤電流 値測定
3)研磨後ウェーハの表面状態評 価:液滴接触角による親水性評 価、Scanning Electron Microscope (SEM)観察によるシリカのウェーハ表面吸着 性評価
またウェーハ表面に吸 着したシリカが親水性に与える影響を検証すべく、フッ化水素酸(HF)にて シリカを溶解したウェーハについても接触角測定及びSEM観察を行った。
結果と考察(Results & Consideration)
HEC濃度の異なるファイナル研磨スラリーについて、粒度及びシリカへのHECの吸着量を評 価した結果、スラリー中の粒子の粒度はHEC濃度の増加に伴い粗大化する結果であった。また HECのシリカ表面への吸着量については、HEC低濃度領域でのシリカ表面への吸着量の増加
続紙 有☑ 無□
(続紙)「課程博士用」
氏 名
ふ り が な
土屋つ ち や 公こう亮すけ
率が高く、HECがシリカ表面に高い吸着性を示すことが確認された。また更なるHEC濃度増加に 伴い、吸着量の増加率は鈍化し、一定 量以上で飽和する結果が得られた。これは、シリカ表面に 吸着したHECとの立体反発により、更なるHECの吸着が阻害されるためであると考えられる。一方 で、上述したHECのシリカ表面への吸着性低下に伴い、液相 部に存在する遊離 HEC 濃度も増 加していることより、HECはシリカ表面 に吸 着した状態のみならず遊離した状態でも存在しているこ とが確認された。HEC 吸着量が飽和している領域では、遊離 HEC濃度が過多となっていることが 分かった。
遊離 HECの研磨時の作用を把握すべく研磨 摩擦抵抗を評価した結果、研磨スラリー中の遊離 HEC濃度の増加に伴う研磨摩擦の低下が見られた。また遊離 HEC濃度 0.029 g/L以上では研 磨摩擦が一定値に安定した。
続いて、HEC水溶液及び研磨スラリーにて研磨したウェーハ表面の親水性を評価した結果、両 水準とも遊離HEC濃度0.029 g/Lまでは濃度増加に伴い親水性が顕著に改善し、それ以上の濃度 では大きな改善効果は見られなかった。本遊離HEC濃度は、上述の研磨摩擦が安定化する濃度と 一致しており、遊離HECによるウェーハ表面の親水化が、研磨摩擦の安定化をもたらしていると いえる。これは遊離HECが研磨時に早期にウェーハ表面に吸着して親水性を付与することで、親 水性の研磨スラリーのウェーハ表面への作用が促進され、ウェーハの研磨パッドとの擦れ合いや シリカとの不均一接触が抑制されるためと考えられる。またHEC水溶液と比較して研磨スラリー の親水性が高いことより、シリカがウェーハ表面の親水性に寄与している可能性が示唆された。
次に研磨後ウェーハのSEM観察を行った結果、一定濃度以上の遊離HECを有することで、ウ ェーハ表面にシリカが吸着することが確認された。これより、遊離HECはウェーハとシリカの吸 着媒体として作用しているといえる。またウェーハ表面に対するシリカ吸着量と親水性に相関関 係が確認された。
シリカの親水性に与える影響を検証するため、HF処理にてウェーハ表面に吸着したシリカを溶 解した際の親水性変化を調査した結果、その溶解度合いに伴ってウェーハ表面の親水性が悪化す る結果が得られた。本結果より、ウェーハ表面の親水性発現にはHECのみならずシリカも大きく 寄与していることが確認された。
結論(Conclusion)
研磨後ウェーハ表面への親水性発現機構について調査した結果、研磨後ウェーハ表面の親水性 発現には、研磨スラリーの液相部に遊離するHECが大きく寄与していることがわかった。この遊 離HECの役割は、ウェーハ表面に吸着して親水性を付与すること、その結果スラリーとウェーハ の親和性を向上させて研磨摩擦を安定化させること、ウェーハ表面とシリカの吸着媒体となるこ とであると見出した。更には、遊離HECによりウェーハ表面に吸着したシリカが、第2の親水化 材として、研磨後ウェーハ表面の親水性発現に大きく寄与していることを見出した。