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本邦新生代層の花粉層序学的研究? 地獄谷累層
著者 島倉 巳三郎
雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学
巻 11
ページ 13‑24
発行年 1963‑02‑28
その他のタイトル Pollenstratigraphic Studies of Japanese Cenozoic Formations VII. The Jigokudani Formation
URL http://hdl.handle.net/10105/3477
奈良学芸大学紀要 自然科学 第11巻 昭和38年3月 Journ. NaraGakugei Univ., Nat. Sci., Vol.ll. Mar. 1963
本邦新生代屑の花粉層序学的研究11丑 地獄谷 累 層
島 倉 巳 三 郎 (奈良学芸大学地学教室) (昭和37年9月29日受理)
Pollenstratigraphic Studies of Japanese Cenozoic Formations VTI.
The Jigokudani.Formatio工1.
Misaburo SHIMAKURA (Department of Earth Science)
Abstract
The Jigokudani formation, considered to be late Miocene to early Pliocene in age, developed in the Nara City and its environs is divided into five mem‑
bers in descending order as follows: (1) basal conglomerate, (2) Onigatsuji mud‑and sandstone, (3) Yadahara gravel, (4) Sekibutsu tuff and (5) Naka‑
nogawa sandy tuff.
About 70 samples consisting of carbonaceous mudstone, grey shale and sandstone are collected from the Onigatsuji mud‑ and sandstone bed. Pollen analytical results of these samples are shown in the Table 2 and 3. They are characterized by the predominace of pollen grains of Carya‑Liquidambar‑
Nyssa, and rare occurrence of Taxodiaceae‑pollen. The presence of pollen grains of Caesalpinia, Albizzia and Hemitrapa (?) are new to Japanese Cenozoic formations.
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地獄谷累層は姦良市南方に分布する新第三系で、瀬戸内地質区のいわゆる第一瀬戸内期に属
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し、動物化石に乏しい、火山性淡水堆積型の地層群の一つである。ばじめ横山・中村その他の諸
し1)
氏により、ぱくぜんと H地獄谷層''とよばれてきたが、のち藤EElにより累層(Zigokudani For‑
m
mation)として取扱われ、粉川により再定義された。しかし同氏はこの地層の単位が不明である との理由でもと通り"地獄谷層"とした。この定義に含まれる地層はあきらかにいくつかの整合 する部層から構成されており、上下の地層群とは不整合で境されているから、累層かまたは層群 とすべきであるが、ここでは‑とまず累層として取扱うことにする。
この地層の地質時代についてもいろいろの見解があり、その変遷は粉川により報告されたが、
主な説を示すと次のようになる。
14 島 倉 巳 三 郎
(7)
横山 次郎(1926)………地獄谷層………白川池累層に対比される可能性がある 中村新太郎 ︵ 1 9 2 7 (8)
上治寅次郎(1947 鹿間 時夫(1951
6 −1
1 1
︶
︵
\ ノ ノ
︵
︶
古期洪積層
………地獄谷層………古豪琶湖層に対比される
ヽ
‥・…‥・地獄谷層‥‥‥・‥洪積統最下部
(1)
藤田 和夫(1954)………地獄谷累層………二上層群上部からややその上までに対比 坂本 亨(1955)‥‥‥…田原累層………藤原層群と白川池層との間 (10)
(6)
粉川 昭平(1956)……‥・地獄谷層………上部中新世〜下部鮮新世
(13)
志井田 功(1961)……=・地獄谷層………鮮新世
一般に高等植物化石は個体の一部分がバラバラに産出する関係上、メガフォッシル殊に枝葉の 印痕化石群集は当時のフロラのごく一部分を示すにすぎず、種子毯果化石群集あるいは花粉胞子 化石群集は、それぞれ種の構成において一致しないこともある。したがって化石フロラ構成要素 としてはすべての植物性遺体を考慮する必要がある。地獄谷累層車の種子・毯果・枝葉化石につ
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いては粉川の研究があり、それに基くフロラの考察も発表された。筆者は地獄谷フロラの性質を より明かにするために、また互に離れて分布する本累層をくわしく対比するために、花粉分析に よる研究を行った。期日の都合で十分しらべることができなかったが、それでもいくつかの知見 を得たのでここに報告する。
この研究に当り、大阪市大の粉川昭平氏から試料その他について御援助をうけ、曽って本学々 生であった中山欽文・吉田勝志両氏の資料も利用した。またこの研究に要した費用の一部は文部 省科学研究費によった。これらに対しここに謝意を表する。
地 質
(3,4ふ6) (10) (12) (9)
奈良市近傍の地獄谷累層および相当層については粉川、坂本、志井田および中山の諸氏によっ てある程度しらべられているが、詳しい層序区分は未発表であったり、筆者のみるところと違っ たりしている。
地獄谷累層の分布する地域を大別すると北から、(1)奈良市街地の東北方の中ノ川から鬼ケ辻 附近、(2)三笠山・春日山」周辺から水谷川、(3)高円山北方から地獄谷一帯、(4)鉢伏町東方か ら田原盆地一帯、(5)米谷・中畑町方面の五ケ谷盆地、(6)天理市福住盆地とくに入田および南田 附近、(7)山辺郡都祁村南方の都介野盆地等になる。これら各地に発達する本累層の層序は、次 のようにまとめることができよう。
綜 合 層 序 曹鬼雪是川皆ノ水責肘匝地獄谷  ̄姦盆地匝福住盆地l(7ノ霊介芸
佐 保 男 層 三 ノバ礫 層 蘭 砂 礫 凝 漂 鮎 戸 凝 灰 質 砂 岩層
凝 灰 岩
礫 層
癖 層 地 中 ノ川 凝 灰 質 砂 岩 層
凝 灰 岩 獄 石 仏 凝 灰 岩 凝 灰 岩 凝 灰 患 凝 灰 岩
谷 矢 田 原 礫 層 [ 礫 層 (礫 層 )
累 鬼 ケ 辻 泥 岩 砂 岩 砂 岩 泥 岩 層 砂 岩 泥 岩 層 砂 岩 泥 岩 層
層 基 底 礫 岩 層 礫 岩 層 礫 岩 層 l礫 岩 層
藤 原 層 群 また は 基 盤 花 崗 岩 類
藤 原 層群 ま
花 闇 岩 類 た は 花 崗 岩 翠 山辺 層 群 ま
た は
花 崗 岩 類
本邦新生代層の:花粉層序学的研究Ⅶ 15
1.基底礫岩:模式地は地獄谷南方の峡谷から県道東山線に沿う崖、厚さ5〜20m土、粉川の り巨礫岩 の一部に相当する。かなり硬いが風化した露頭ではくずれ易くなる。花崗岩質の比較 的大きな円礫亜円礫を主するもチャートその他の礫をも含み、小礫を増すこともある。地獄谷新 池の西、鉢伏町の西、田原盆地和田町南方の川底、都介野盆地井ノ市・一本松・針西方の県道沿 い等にも露出する。
2.鬼ケ辻泥岩砂岩層:模式地は鬼ケ辻東北方の月ヶ瀬街道に沿う崖、厚さ最大30m、アーコ
′ズ砂岩、泥岩、炭質泥岩、礫質砂岩等から成り、しばしば凝灰質のこともある。炭質物が多く なって厚さ数cmから数10cmの炭層を形成していることもあり、厚いものは曽って稼行された。
広く各地に分布し、鍵層として重要であり、花粉化石も1〜2例を除けばすべてこの層にのみ含ま れている。
3.矢田原礫層:模式地は田原盆地矢田原町西方の丘陵一帯、厚さ10〜60m、径1〜20cmく らいの、主にチャートの円礫でから成り礫質砂層をはさみ、下位の泥岩砂岩層より漸移する。所 により細礫質となることもあるが、基磐岩に直接するところでは大礫が多くなる。模式地のほか 東金坊東方、八伏峠附近、水谷川、福住盆地等にも分布する。粉川は本層の一部を佐保累層中の
(17) (6)
礫層と同じに取扱ったり、地獄谷層の基底巨礫岩層として取扱ったりしている。
4.石仏凝灰岩:模式地は地獄谷石仏附近一帯、厚さ5〜30m、粉川の 石英安山岩質凝灰岩 に当り、主に流紋岩質凝灰岩から成り、小円礫や砂質層のレンズを含むこともある。有名な仏像 の岩壁彫刻もこの岩石でなされ、中ノ川鬼ケ辻附近では 磨き砂 として採掘されたことがあっ た。そのはか田原盆地着荷町南方や福住盆地上人田等にも露出している。矢田原礫層との関係は 水谷川や福住盆地で認められるが、前者においては礫層と凝灰岩の問に厚さ数10cmの凝灰質泥 岩の薄互層があり、花粉化石を含む。その他の地域では両者の直接する場合に乏しく、礫層の発 達しているところでは凝灰岩を欠き(矢田原)、凝灰岩の発達しているところでは礫層が不顕著と なっている(地獄谷・春日山・鬼ケ辻等)
5.中ノ川凝灰質砂岩層:模式地は中ノ川新通の崖、厚さ10m士、青灰色軟質の凝灰質砂岩・
シルト岩の互層から成り、偽層の発達することもある。現在この地域にのみ見られるので、石仏 凝灰岩の一部と見なすこともできる。
試料と分析方法
約10年前から筆者および粉川によって時折り採集された試料数10点に、今回あらたに集めもの 合せて70点ばかりの試料を用いた、これらの大部分は鬼ケ辻泥岩砂岩層中の炭質泥岩、炭質砂 岩、灰色貢岩等であるが、比較のため近接する佐保累層又は山辺層群のものもしらべた。採集地 点は第1図に示した通りである。
試料は風化して軟かくなったものを除けば一般に硬く、アルカリ→硝酸→アルカリ→弟化水素
酸→アセトリシスによる処理方法は通用できないので、次のように取扱った。まず試料の表面を
水道水でよく洗って水をきり、約100〜150gを大豆大に砕いて100cc入三角フラスコに入れ、更に
数回水洗した後水をきって17貢の表のように操作した。
本邦新生代層の花粉層序学的研究Ⅶ 19
分 析 結 果
大多数の試料から花粉・胞子化石を抽出することができたが、識別した主な種類を示すと第1表 のようになり、出現率のやや高い主要花粉種についてその百分率を示すと第1図のようになる。
Table 1. Pollen Fossils from the Jigokudami Formation.
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