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RIETI - 株式所有構造の多様化とその帰結:株式持ち合いの解消・「復活」と海外投資家の役割

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RIETI Discussion Paper Series 11-J-011

株式所有構造の多様化とその帰結:

株式持ち合いの解消・「復活」と海外投資家の役割

宮島 英昭

経済産業研究所

新田 敬祐

ニッセイ基礎研究所

独立行政法人経済産業研究所 http://www.rieti.go.jp/jp/

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RIETI Discussion Paper Series 11-J-011 2011 年 2 月

株式所有構造の多様化とその帰結:

株式持ち合いの解消・「復活」と海外投資家の役割

宮島英昭(早稲田大学・経済産業研究所・WIAS) 新田敬祐(ニッセイ基礎研究所) 要 旨* 日本企業の株式所有構造は、1997 年の銀行危機以降、かつてのインサイダー優位のそれ からアウトサイダー優位の構造に大きく転換した。本稿では、この所有構造の劇的な変化 の決定要因とその帰結を、株式持ち合いと海外投資家に焦点を合わせて分析する。まず、 2000 年代後半にみられた持ち合い「復活」は、銀行・事業会社間の持ち合いという過去へ の回帰ではなく、事業会社同士の関係強化という新たな動きであり、主としてエントレン チメント動機に基づくものであったこと、しかし、その規模は小さく、アウトサイダー優 位の構造には影響しないことが示される。次に、海外投資家については、その銘柄選択に、 ホームバイアスと関連する特定の偏りがあることに加えて、企業統治要因も考慮されてい たこと、さらに、海外投資家のプレゼンス上昇が、その銘柄選好を考慮しても、企業パフ ォーマンスの引き上げ効果を持ったことが明らかにされる。最後に、1990 年代前半の企業 規模、海外市場での名声、企業業績の差が、機関投資家の銘柄選好や企業の自己選択を介 して株式所有構造の分化を生み、この所有構造の差が、それ自体の規律付け効果や経営組 織改革の促進効果を通じて、パフォーマンス格差をさらに増幅するというダイナミックな 関係が強調される。 キーワード:株式所有構造、株式持ち合い、海外投資家、状態依存型ガバナ ンス、モニタリング、ホームバイアス、同時方程式モデル JEL classification: G30、G32、G34、G11 * 本稿は、RIETI コーポレート・ガバナンスプロジェクトの成果の一部である。本稿を作成するに当たっ ては、研究会メンバーから多くの有益なコメントを頂いた。宮島英昭は、科学研究費(基盤研究A・代表 者宮島英昭、課題番号19203017)の補助を受けた。 RIETI ディスカッション・ペーパーは、専門論文の形式でまとめられた研究成果を公開し、活発な 議論を喚起することを目的としています。論文に述べられている見解は執筆者個人の責任で発表する ものであり、(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

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2 1 . は じ め に 日 本 の 上 場 企 業 の 株 式 所 有 構 造 は 、 長 く 金 融 機 関 や 事 業 会 社 に よ る 安 定 保 有 に よ っ て 特 徴 付 け ら れ て き た 。 こ の 株 式 保 有 は 、 長 期 的 な 取 引 関 係 を 基 礎 と し 、 保 有 先 企 業 の 経 営 に 株 主 と し て 関 与 し な い 、 ま た 、 非 友 好 的 な 第 三 者 に 売 却 し な い と い う 、 経 営 者 間 の 暗 黙 の 契 約 に よ っ て 支 え ら れ て い た 。 こ の 部 分 を イ ン サ イ ダ ー 保 有 と 呼 ぼ う 。 そ の 中 心 は 、 株 式 持 ち 合 い で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 国 内 外 の 機 関 投 資 家 に よ る ポ ー ト フ ォ リ オ 投 資 、 創 業 者 一 族 や 役 員 以 外 の 個 人 の 保 有 分 、 外 国 法 人 の プ ロ ッ ク 所 有 は 、 投 資 収 益 の 最 大 化 を 目 的 と す る 株 主 の 保 有 部 分 で あ り 、 ア ウ ト サ イ ダ ー 保 有 と 呼 ぶ こ と が で き る 。 公 表 デ ー タ を 利 用 し て 株 式 所 有 構 造 の 長 期 的 推 移 を 確 認 し て み る と 、 後 述 す る よ う に 、1960 年代の中頃からインサイダー保有比率が急上昇し、70 年代前半 に 55%を超えた後、90 年まで漸増傾向を示しながら安定的に推移した1 し か し 、 こ う し た イ ン サ イ ダ ー 優 位 の 所 有 構 造 は 1990 年代後半の銀行危機を境と し て 、 劇 的 な 変 化 を 示 し た 。 金 融 機 関 の 保 有 比 率 が 急 速 に 低 下 し 、 逆 に 、 外 国 人 保 有 比 率 が 急 上 昇 し た 。 バ ブ ル 期 (80 年代後半)まで 5%程度にとどまっていた外国人の 保 有 比 率 は 、90 年代に入ると一貫して上昇を続け、06 年度末には 28%に達した。こ の 結 果 、印 象 的 な こ と に 、ア ウ ト サ イ ダ ー の 保 有 比 率 は 、00 年には再びインサイダー の そ れ を 上 回 る に 至 っ た 。 も っ と も 、1990 年代半ばから続いたアウトサイダー保有比率の増加トレンドは、06 年 前 後 に 転 換 点 を 迎 え た か に み え る 。06 年に外国人保有比率がピークを迎える一方、 経 営 支 配 や 企 業 統 治 に 着 目 す る 投 資 フ ァ ン ド ( ア ク テ ィ ビ ス ト ・ フ ァ ン ド ) が 台 頭 し た こ と を 背 景 に 、 一 部 の 企 業 の 間 で 試 み ら れ た 株 式 持 ち 合 い の 「 復 活 」 が 注 目 さ れ る よ う に な っ た 。し か も 、07 年夏からのサブプライム問題に端を発する世界金融危機を 契 機 に 、 海 外 か ら の 投 資 資 金 が 大 規 模 に 国 外 へ 逃 避 し 、 外 国 人 保 有 比 率 の 大 幅 な 低 下 が み ら れ た 。 本 稿 の 課 題 は 、1997 年の銀行危機から 08 年にかけて発生した株式所有構造の劇的 な 変 化 を 追 跡 し 、 そ の 変 化 を も た ら し た メ カ ニ ズ ム と 帰 結 を 可 能 な 限 り 包 括 的 に 明 ら か に す る 点 に あ る 。 具 体 的 に は 以 下 の 諸 点 が 解 明 さ れ る 。

1 インサイダー保有の形成に関しては、Franks, Mayer and Miyajima (2010、以下、FMM

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3 第 1 に 、1990 年以降の日本企業の株式所有構造の変化を可能な限り厳密に確認する こ と で あ る 。 企 業 の 所 有 構 造 の 把 握 に あ た っ て 、 通 常 、 証 券 取 引 所 が 集 計 し た 『 株 式 分 布 状 況 調 査 』 が 利 用 さ れ る 。 し か し 、 同 調 査 で 利 用 可 能 な の は 市 場 ベ ー ス の 集 計 値 の み で あ り 、 個 別 企 業 の 株 式 所 有 構 造 や 企 業 相 互 間 の 株 式 保 有 関 係 が 識 別 で き ず 、 株 式 の 保 有 主 体 の 分 類 も 形 式 的 で あ る 。 そ の た め 、 株 主 と 投 資 先 企 業 と の 関 係 を 捉 え た 詳 細 な 実 証 分 析 に 利 用 す る こ と は 不 可 能 で あ る 。 そ こ で 、 主 要 市 場 に 上 場 す る 企 業 を 対 象 に 、 大 株 主 の 属 性 や 企 業 間 の 株 式 の 相 互 保 有 関 係 を 識 別 し た デ ー タ ベ ー ス を 作 成 し て 、 近 年 の 所 有 構 造 の 進 化 に つ い て の 事 実 を 様 式 化 す る 。 こ の 作 業 に よ っ て 、 イ ン サ イ ダ ー 保 有 の 解 体 と ア ウ ト サ イ ダ ー 優 位 の 構 造 へ の シ フ ト が 急 速 に 生 じ た こ と 、 及 び 、 こ の 変 化 は 上 場 企 業 間 で 一 様 に 生 じ た も の で は な か っ た こ と が 明 ら か と な る 。 第 2 の 課 題 は 、 株 式 持 ち 合 い の 解 消 と 「 復 活 」 に 関 し て 事 実 を 様 式 化 し 、 そ の 決 定 要 因 を 企 業 の マ イ ク ロ デ ー タ に 基 づ い て 解 明 す る 点 に あ る 。1997 年から 02 年の持ち 合 い 解 消 に つ い て は 、 銀 行 と 事 業 会 社 の 個 々 の 相 互 保 有 関 係 を 分 析 単 位 と し た Miyajima and Kuroki (2007) で、すでに明らかにされている。そこで本稿では、こ の 見 方 を 前 提 と し た 上 で 、 銀 行 危 機 以 降 の 銀 行 部 門 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ の 変 化 を 追 跡 し 、 銀 行 ・ 事 業 会 社 間 の 持 ち 合 い 解 消 の メ カ ニ ズ ム に 関 す る こ れ ま で の 理 解 と 整 合 的 に 、銀 行 部 門 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ が 、主 要 市 場 の 銘 柄 構 成 と 比 べ て 成 長 性 が 低 く 、 リ ス ク の 高 い 企 業 に 大 き く 偏 っ た こ と を 明 ら か に す る 。 他 方 、 本 稿 で は 、 こ れ ま で 十 分 に は 解 明 さ れ て こ な か っ た 05 年以降の持ち合い「復活」の実態分析を試みる2。 ま ず 、 取 引 レ ベ ル の デ ー タ を 用 い て 、 持 ち 合 い 強 化 が 主 と し て 事 業 会 社 間 で 観 察 さ れ 、 銀 行 ・ 事 業 会 社 間 の 相 互 持 ち 合 い は 増 加 し て い な い こ と 、 そ の 規 模 は 市 場 か ら の モ ニ タ リ ン グ を 遮 断 す る ほ ど 大 き く な い こ と を 指 摘 す る 。 さ ら に 、 企 業 レ ベ ル の 持 ち 合 い 比 率 の 決 定 要 因 の 分 析 を 通 じ て 、 期 初 の 機 関 投 資 家 の 保 有 比 率 が 高 く 、 過 去 に 敵 対 的 な 大 株 主 の 脅 威 に 直 面 し た 経 験 が あ り 、 ま た 、 経 営 者 の 私 的 便 益 の 大 き い 企 業 が 、 持 ち 合 い を 増 加 さ せ る 傾 向 が 強 い こ と 、 つ ま り 、 持 ち 合 い 「 復 活 」 は 経 営 者 の エ ン ト レ ン チ メ ン ト 動 機 に 基 づ く も の で あ っ た こ と を 明 ら か に す る 。 第 3 に 、1990 年から 07 年までの海外投資家の増加の決定要因とそのインパクトを 考 察 す る 。 海 外 投 資 家 に よ る 日 本 株 買 い に つ い て は 、 従 来 か ら ホ ー ム バ イ ア ス 問 題 に

関 連 す る 選 択 銘 柄 の 偏 り が 指 摘 さ れ て き た(Kang and Stulz 1997、Hiraki et al. 2003)。

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4 こ こ で は 、海 外 投 資 家 の 保 有 比 率 が 、企 業 規 模 や 海 外 市 場 で の 知 名 度 、業 績 、信 用 度 、 取 締 役 会 の 構 成 な ど か ら 決 定 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ る 。 し か し 、 他 方 で 、 海 外 投 資 家 の モ ニ タ リ ン ン グ が 経 営 の 効 率 化 に 寄 与 し た と の 評 価 も あ り 、 海 外 投 資 家 が 、 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス の 良 い 銘 柄 を 選 好 し た の か 、 そ れ と も 、 自 ら の モ ニ タ リ ン グ 行 動 に よ っ て 投 資 先 企 業 の パ フ ォ ー マ ン ス を 引 き 上 げ た の か と い う 2 つ の 側 面 を 同 時 に 扱 う こ と が 必 要 に な る 。 本 稿 で は 、 こ の 2 つ の 相 関 す る 問 題 を 、 そ れ ぞ れ に 最 適 な 同 時 方 程 式 を 解 く こ と に よ っ て 明 ら か に す る 。 そ の 結 果 、 海 外 投 資 家 は 、 企 業 規 模 が 大 き く 、 海 外 依 存 度 が 高 く 、 業 績 が 良 く 、 負 債 比 率 が 低 い と い っ た 特 徴 を 持 つ 企 業 を 選 好 す る と い う 、 従 来 か ら 指 摘 さ れ て き た ホ ー ム バ イ ア ス 傾 向 が 確 認 さ れ る 。 こ れ に 加 え て 、 株 主 重 視 の 姿 勢 を 示 す 取 締 役 会 の 構 成 も 重 要 な 銘 柄 選 択 要 因 で あ っ た 。 さ ら に 、 海 外 投 資 家 の 銘 柄 選 好 に よ る 内 生 性 を 慎 重 に 考 慮 し た う え で も 、 海 外 投 資 家 の プ レ ゼ ン ス 上 昇 が 、 経 営 の 規 律 付 け 効 果 を 発 揮 し 、 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス を 引 き 上 げ る こ と が 示 さ れ る 。 最 後 に 、 銀 行 危 機 以 降 の 株 式 所 有 構 造 の 分 化 と 、 企 業 間 の パ フ ォ ー マ ン ス 格 差 の 拡 大 と い う ダ イ ナ ミ ッ ク な 過 程 を 描 く 。 所 有 構 造 の 分 化 が 明 確 化 す る 以 前 の 1996 年、 分 化 が 明 確 に な っ た 02 年、海外機関投資家保有比率が頂点に達した 05 年の 3 時点の 所 有 構 造 を 基 準 と し た 分 析 を 通 じ て 、 銀 行 危 機 直 前 の 企 業 規 模 、 資 本 市 場 に お け る 名 声 、 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス の 差 が 、 海 外 投 資 家 の 銘 柄 選 好 や 企 業 の 自 己 選 択 を 介 し て 、 株 式 所 有 構 造 の 分 化 を 生 み 、 こ の 所 有 構 造 の 差 が 、 そ れ 自 体 の 規 律 付 け 効 果 や 取 締 役 会 の 規 模 縮 小 、 外 部 役 員 の 導 入 な ど の 内 部 ガ バ ナ ン ス の 改 革 促 進 効 果 を 通 じ て パ フ ォ ー マ ン ス の 格 差 を 増 幅 、 な い し 固 定 化 す る と い う ダ イ ナ ミ ッ ク な 関 係 が 作 用 し た 点 を 明 ら か に す る 。 本 稿 は 、 次 の よ う に 構 成 さ れ る 。 続 く 2 節 で は 、 株 式 所 有 構 造 の 動 向 を 長 期 的 な 観 点 か ら 概 観 す る 。 3 節 で は 、 持 ち 合 い 解 消 と そ の 後 の 増 加 の 過 程 を 、 売 買 動 向 を 詳 細 に 追 跡 し た デ ー タ か ら 明 ら か に す る 。 4 節 で は 、 海 外 投 資 家 の 銘 柄 選 択 の 決 定 要 因 を 分 析 す る 。 5 節 で は 、 海 外 投 資 家 の 銘 柄 選 好 に と も な う 内 生 性 を 考 慮 し た 上 で 、 そ の プ レ ゼ ン ス 上 昇 が も た ら す パ フ ォ ー マ ン ス 引 き 上 げ 効 果 を 分 析 す る 。最 後 の 6 節 で は 、 以 上 の 分 析 結 果 を 総 括 し 、企 業 統 治 に お け る 株 式 所 有 構 造 の 位 置 づ け の 考 察 を 試 み る 。 2 . 日 本 企 業 の 株 式 所 有 構 造 の 進 化 : 概 観

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5 2.1 インサイダーの優位:1970~90 年 ま ず 、1955 年から 90 年までの、株式所有構造の長期的な変化を概観しておこう。 図 1 は、証券取引所が集計した『株式分布状況調査』に基づき、インサイダーとアウ ト サ イ ダ ー の 保 有 比 率 の 長 期 時 系 列 推 移 を 示 し た も の で あ る 。 こ こ で イ ン サ イ ダ ー と は 、 都 銀 ・ 地 銀 等 、 生 損 保 、 そ の 他 金 融 機 関 、 事 業 法 人 等 の 保 有 比 率 合 計 で あ る 。 こ う し た 株 主 は 、 一 般 に 、 投 資 先 企 業 と の 間 で 長 期 的 な 取 引 関 係 を 有 し て お り 、 そ の 株 式 保 有 の イ ン セ ン テ ィ ブ は 、 投 資 収 益 の 最 大 化 で は な く 、 企 業 間 関 係 の 維 持 に あ る と み ら れ て い る3。そ こ で 、こ の 部 分 を イ ン サ イ ダ ー 保 有 と 呼 ぶ 。他 方 、ア ウ ト サ イ ダ ー は 、 外 国 人 、 個 人 、 投 資 信 託 、 年 金 信 託 の 保 有 比 率 合 計 で あ り 、 そ の 保 有 目 的 は 投 資 収 益 の 最 大 化 に あ る 。図 1 の保有比率は市場価格ベースで集計されたものを表示して い る が 、 デ ー タ が 取 得 で き な い 69 年以前については、株数ベースの保有比率に基づ き 、 そ の 変 化 幅 の 情 報 を 失 わ な い よ う に 補 完 し て い る 。 ま た 、 保 有 主 体 の 内 訳 に 関 す る デ ー タ が 取 得 で き な い 場 合 は 、 取 得 可 能 な 情 報 に 基 づ い て 試 算 し た も の で 補 完 し て あ る ( 図 1 の 注 記 参 照 )。 戦 後 改 革 に よ っ て い っ た ん 高 度 に 分 散 し 、 個 人 株 主 が 中 心 と な っ た 日 本 の 上 場 企 業 の 株 式 所 有 構 造 は 、1965 年の証券不況を画期として急速に安定化が進み、70 年代初 頭 ま で に 、銀 行 、事 業 会 社 な ど の イ ン サ イ ダ ー を 中 心 と す る 所 有 構 造 に 変 化 し た4。70 年 代 の 半 ば に は 、こ の イ ン サ イ ダ ー の 保 有 比 率 が 55%を超え、これに対して、個人や 機 関 投 資 家 の 保 有 株 式 を 合 計 し た ア ウ ト サ イ ダ ー の 保 有 比 率 は 平 均 し て 35% 前後に と ど ま っ た 。 = = 図 1 株式所有構造の長期時系列推移 == こ の イ ン サ イ ダ ー 優 位 の 所 有 構 造 は 、1990 年に至るまで大きな変化を示さなかった。 バ ブ ル 期(80 年代後半)には、資金調達が銀行借り入れからエクイティ関連債へと大 き く シ フ ト し た が 、 こ の 間 も 金 融 機 関 は 大 き く 買 い 越 し て お り 、 そ の 保 有 比 率 は や や 増 加 し た 。 3 このインサイダー保有は、これまで利用されてきた「相互持ち合い」や「安定保有」と オ ー バ ー ラ ッ プ す る が 、よ り 広 い 概 念 で あ る 。FMM (2010) はこの視角から、日本所有構 造 の 進 化 と そ の 国 際 的 特 徴 を 分 析 し て い る 。 4 詳しくは、川北 (1995) 、宮島・原村・江南 (2003) 、FMM (2010) を参照。

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6 以 上 の 集 計 レ ベ ル の 動 き を 、 本 稿 で 新 た に 作 成 し た デ ー タ を 用 い て 再 確 認 し て お こ う 。 こ こ で は 、 日 本 の 主 要 市 場 で あ る 東 京 証 券 取 引 所 、 大 阪 証 券 取 引 所 、 名 古 屋 証 券 取 引 所 の 1 部 市 場 ( 以 下 、 三 市 場 1 部 ) に 上 場 す る 非 金 融 事 業 法 人 を 対 象 に 、 大 株 主 デ ー タ( 東 洋 経 済 新 報 社 )、及 び 有 価 証 券 報 告 書 に 記 載 さ れ て い る 有 価 証 券 明 細 表 と 所 有 者 別 状 況 ( 日 経 NEEDS)を組合せ、各企業のより詳細な株主名簿を再構成し、株 式 の 相 互 保 有 関 係 の 識 別 や 、3% 以上 保 有 す る大 株 主 の 属性 判 定 を 行っ た 上 で 、可 能 な 限 り 株 主 を イ ン サ イ ダ ー と ア ウ ト サ イ ダ ー に 分 類 し て い る 。 図 2 は 、 主 要 企 業 の イ ン サ イ ダ ー と ア ウ ト サ イ ダ ー の 保 有 比 率 を 単 純 平 均 し た も の だ が 、 そ の 推 移 は 図 1 と ほ ぼ 一 致 す る こ と が 確 認 で き る 。 ま た 、 こ の デ ー タ に 基 づ き 、1987 年以降 6 時点の 記 述 統 計 量 を 要 約 し た 表 1 に よ れ ば 、87 年から 91 年の株式所有構造の変化は少なく、 し か も 両 期 の 所 有 構 造 に お け る 企 業 間 の 分 散 は 小 さ い 。イ ン サ イ ダ ー 保 有 比 率 は 45% を 超 え る も の の 、 標 準 偏 差 は 13%に とど ま った 。他 方 、ア ウト サ イダ ー保 有 比率は 30%程度でインサイダー保有比率を大きく下回り、その標準偏差も 10%程度と小さか っ た 。 こ の 時 点 ま で 日 本 の 上 場 企 業 は 、 イ ン サ イ ダ ー 優 位 と い う 特 徴 に お い て 同 質 的 で あ っ た 。 し か し 、1990 年代初頭のバブル崩壊後、アウトサイダー保有比率が徐々に増加した の に 対 し て 、 強 固 だ っ た イ ン サ イ ダ ー 保 有 は 、97 年以降、急速に崩れていく。以下、 90 年以降の株式所有構造の変化についてはより具体的に、アウトサイダーの中心であ る 海 外 投 資 家 と 、 イ ン サ イ ダ ー の 中 心 で あ る 株 式 持 ち 合 い に 焦 点 を 当 て て 議 論 を 進 め る こ と と す る 。 = = 図 2 近 年 の イ ン サ イ ダ ー ・ ア ウ ト サ イ ダ ー 保 有 比 率 = = = = 表 1 近 年 の 株 式 所 有 構 造 の 変 遷 = = 2.2 海外投資家の端緒的増加:1990~1996 年 1990 年代に入ると、海外投資家の保有比率が徐々に増加した。運用資産が増加すれ ば 、 投 資 ウ エ イ ト が 一 定 で あ っ て も 、 日 本 市 場 に お け る 海 外 投 資 家 の 保 有 比 率 は 上 昇 す る 。実 際 、米 国 を 中 心 に 海 外 の 機 関 投 資 家 の 国 外 投 資 は 90 年以降に急増しており、 こ の 局 面 で は 経 済 活 動 の グ ロ ー バ ル 化 に と も な っ て 、 海 外 投 資 家 の 国 際 分 散 投 資 が 進 展 し た と み ら れ る 。 例 え ば 、 米 国 の 海 外 株 式 投 資 残 高 は 、90 年の 1,976 億ドルから

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7 95 年には 7,768 億ドル、00 年には 18,304 億ドルに達した(Ahmadjian 2007: p.127)。 こ う し た 国 際 分 散 投 資 の 世 界 的 な 拡 大 の 一 環 と し て 、 日 本 の 主 要 企 業 に お け る 海 外 投 資 家 の 保 有 比 率 は 、91 年の 4.1%から 96 年には 7.1%へと拡大した(図3)。 し か も 、 海 外 投 資 家 の 市 場 に お け る プ レ ゼ ン ス の 上 昇 は 、 株 式 の 保 有 比 率 に 表 れ る 以 上 に 大 き か っ た 。 第 1 に 、 海 外 投 資 家 は 、 こ の 時 期 の 唯 一 の 買 い 越 し 主 体 で あ り 、 東 証 1 部 市 場 に 占 め る 外 国 人 の 売 買 シ ェ ア5は 、1988 年の 10%程度から 96 年には 40%弱にまで増加していた。株価形成における海外投資家の売買の影響が上昇し、彼 ら に 高 く 評 価 さ れ る こ と が 、経 営 上 、重 要 な 意 味 を 持 つ よ う に な っ た の で あ る 。ま た 、 こ の 間 に は 、 外 資 系 金 融 機 関 の 日 本 へ の 進 出 や 証 券 ア ナ リ ス ト の 増 加 が み ら れ 、 市 場 の イ ン フ ラ 整 備 が 進 展 す る な ど の 不 可 逆 的 な 変 化 が 生 じ た6 第 2 に 、 上 述 の 海 外 投 資 家 の 増 加 が 選 択 的 に 発 生 し た こ と が 重 要 で あ る 。 こ の 時 期 の 海 外 投 資 家 の 銘 柄 選 択 に は 強 い バ イ ア ス が あ り 、 規 模 が 大 き く 、 海 外 売 上 高 比 率 が 高 く 、 収 益 性 が 高 く 、 高 い 格 付 け を 取 得 す る な ど 、 既 に 市 場 で の 名 声 を 確 立 し た 企 業

が 選 好 さ れ た(Miyajima and Kuroki 2007: pp.86-88)。例えば、輸出企業として知ら

れ る キ ヤ ノ ン の 海 外 投 資 家 保 有 比 率 は 、1991 年の 21.5%から 96 年には 39.0%に上昇 し 、同 様 に ソ ニ ー の 海 外 投 資 家 保 有 比 率 も 同 期 に 、21.6%から 39.0%に上昇した(表 2 )。 か つ て メ イ ン バ ン ク と の 密 接 な 関 係 、 借 り 入 れ 中 心 の 資 金 調 達 、 低 い 外 国 人 保 有 比 率 に よ っ て 特 徴 付 け ら れ た 日 本 企 業 は 、90 年代半ばまでに、その銀行・事業会社 間7の 関 係 、所 有 構 造 に お い て 静 か に 多 様 化 し 、こ の 企 業 間 の 差 が 、そ の 後 の 進 化 の 経 路 に 重 要 な 意 味 を 持 つ よ う に な る 。 2.3 株式持ち合いの解消:1997~2004 年 1990 年代半ばまで、驚くほどの安定性を示した金融機関、事業会社などのインサイ 5 売買シェア=(海外投資家の委託売買金額の合計/全委託売買金額の合計)。なお、資 本 関 係 が あ る 外 国 法 人 や 海 外 居 住 の 個 人 大 株 主 は 、大 規 模 、あ る い は 高 頻 度 の 取 引 を 実 行 す る こ と は な い か ら 、 こ の 取 引 の 大 部 分 は 、 海 外 の 機 関 投 資 家 に よ る も の と み な せ る 。 6 外資系証券会社の進出はバブル期に一巡していた。進出企業現在数は 1985 年の 14 社か ら 90 年に 52 社に急増した。その後は安定し、97 年では 57 社となった(年末、日本証券 業 協 会 調 べ )。90 年代は日本への進出を終えた外資系証券会社が事業活動を拡大した時期 と 位 置 付 け ら れ る 。 他 方 、 ア ナ リ ス ト は 90 年代に入って増加した。例えば、証券アナリ ス ト 協 会 の 検 定 会 員 数 は 、90 年の 22 百人から 96 年には 94 百人に増加した。 7 原則として、以下における「銀行」は信託銀行以外の銀行を、「事業会社」は銀行、信 託 銀 行 、 生 損 保 、 証 券 会 社 、 証 券 金 融 会 社 を 除 く 上 場 会 社 を 表 す も の と す る 。

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8 ダ ー 中 心 の 株 式 所 有 構 造 は 、97 年の銀行危機を境に大きく変容した8。 そ の 中 心 で あ る 持 ち 合 い 比 率9は 、96 年度末の 15.3%から 04 年度末には 9.4%へと急速に縮小した ( 図 3 )。 こ の 変 化 の 中 心 は 、 銀 行 ・ 事 業 会 社 間 の 持 ち 合 い 解 消 で あ っ た 。 一 方 で は 、1997 年以降、事業会社による銀行株の売却が進展した。住専問題の顕在 化(95 年)とともに、その設立母体である銀行株の価格の下方修正が始まり、銀行の 経 営 破 た ん が 発 生 し た 97 年以降、その株価下落が加速し、銀行株の保有リスクは明 ら か に 上 昇 し た 。 事 業 会 社 は 、 戦 後 初 め て 銀 行 株 を 保 有 し 続 け る か 売 却 す る か の 選 択 問 題 に 直 面 し た の で あ る 。 こ の 市 場 環 境 の 変 化 と 並 行 し て 、 後 述 す る よ う に 海 外 投 資 家 の プ レ ゼ ン ス が 上 昇 し た 。 こ れ に と も な い 、 株 式 持 ち 合 い は 投 資 家 か ら の 強 い 批 判 に さ ら さ れ 、説 明 責 任 が 求 め ら れ る よ う に な っ た 。加 え て 、00 年代初頭の会計制度の 大 幅 見 直 し に よ り 、 連 結 決 算 制 度 (00 年 3 月)や持ち合い株式の時価評価(02 年 3 月 ) が 導 入 さ れ 、 事 業 会 社 は 株 式 持 ち 合 い の リ ス ク を 強 く 意 識 す る よ う に な っ た 。 他 方 、 不 良 債 権 問 題 が 深 刻 化 す る と 同 時 に 、 バ ブ ル 崩 壊 後 の 株 価 低 迷 に よ る 含 み 益 の 枯 渇 で 株 式 保 有 リ ス ク の 上 昇 に 直 面 し た 銀 行 は 、1997 年頃から保有株式の売却を開 始 し た 。 そ の 後 の 01 年に、銀行による株式保有の規模を BIS 規制の中核的自己資本 (Tier1)10の 範 囲 内 に 抑 え る 銀 行 等 株 式 保 有 制 限 法 が 制 定 さ れ る と(02 年 1 月施行)、 そ の 売 却 は さ ら に 加 速 し た 。 銀 行 部 門 の 01 年の売越額は 2.3 兆円に達し、以降、05 年 ま で 1~2.5 兆円の保有株売却が続いた。その結果、『株式分布状況調査』でみる銀 行 の 保 有 比 率 は 、96 年から 01 年までに 6.4%低下し、さらに 01 年から 04 年までに 3.4%低下した。 8 1970 年代から 90 年代半ばまでの日本の上場企業の所有構造の安定性を、多くの観察者 は 驚 き を 持 っ て 指 摘 し て い る (Flath 1993、川北 1995)。 9 この持ち合い比率は、発行済株式数のうち、上場会社間の相互持ち合いが確認されたも の の 割 合 と し て 企 業 毎 に 算 出 し 、そ の 上 で 、各 年 度 末 時 点 に お け る 三 市 場 1 部 上 場 企 業 を 対 象 に 企 業 単 位 で 単 純 平 均 し た も の で あ る 。持 ち 合 い 関 係 は 、2 社 間 の 同 時 点 で の 相 互 保 有 関 係 が 確 認 さ れ た 場 合 に の み 認 識 で き る の で 、こ の 比 率 は 情 報 の 開 示 範 囲 の 制 約 を 強 く 受 け る 。 本 稿 で 提 示 す る 持 ち 合 い 比 率 は 、 確 認 で き た も の に 限 っ て 集 計 し た も の で あ り 、 実 際 の も の と 比 べ て 過 少 な 値 に な っ て い る こ と に 注 意 さ れ た い 。 ま た 、2000 年 3 月期決 算 か ら 有 価 証 券 報 告 書 の 有 価 証 券 明 細 表 の 開 示 範 囲 が 縮 小 さ れ た た め 、時 系 列 ト レ ン ド に ジ ャ ン プ が 生 じ な い よ う に 、 そ れ 以 前 の デ ー タ に つ い て も 現 行 基 準 を 遡 及 適 用 し て あ る 。 こ の 結 果 、1999 年以前のデータは、利用可能なデータから確認できるものよりも、持ち 合 い 比 率 が 3%程度小さくなっている。 10 自己資本から、有価証券含み益などを控除したもの。

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9 2.4 海外投資家の急増:1997~2006 年 こ の 持 ち 合 い 解 消 と 並 行 し て 、 国 内 外 の 機 関 投 資 家 、 特 に 海 外 投 資 家 の 保 有 比 率 が 上 昇 し た 。1996 年には 7.1%であった海外投資家保有比率は、02 年から急上昇を示し、 06 年には 14.2%へとほぼ倍増した(図3)。個別の動きでは、まず 99 年頃に IT 関連 企 業 が 主 要 な 投 資 対 象 と な っ た 。 例 え ば 、NEC の海外投資家保有比率は、96 年度末 の 16.9%から 01 年度末の 28.3%へと急上昇した。さらに、03 年以降は、世界経済、 特 に 中 国 経 済 の 成 長 の 恩 恵 を 受 け た 素 材 部 門 の 大 企 業 が 広 く 投 資 対 象 と な っ た 。 例 え ば 、06 年度末の新日本製鉄の海外投資家保有比率は 21.9%、アウトサイダー保有比 率 は 53.6%に達した(表2)。 = = 図 3 海 外 投 資 家 保 有 比 率 と 持 ち 合 い 比 率 の 推 移 = = = = 表 2 主 要 企 業 の 株 式 所 有 構 造 の 変 化 = = そ の 結 果 、 日 本 企 業 の 株 式 所 有 構 造 は 大 き く 変 化 し 、2000 年には印象的なことに、 イ ン サ イ ダ ー と ア ウ ト サ イ ダ ー の 保 有 比 率 が 再 び 逆 転 し た ( 図 1 、 図 2 )。 わ が 国 上 場 企 業 の 所 有 構 造 は 、 安 定 株 主 作 り が 進 展 す る 以 前 の 60 年代前半の水準に戻ったの で あ る 。 も っ と も 、 復 活 し た ア ウ ト サ イ ダ ー 優 位 の 所 有 構 造 の 中 心 は 、 以 前 の 個 人 か ら 国 内 外 の 機 関 投 資 家 に 移 動 し て い た 。 し か も 、 市 場 取 引 に お け る 外 国 人 の プ レ ゼ ン ス 上 昇 は さ ら に 著 し い 。1997 年には、 東 証 1 部 に お け る 外 国 人 の 売 買 シ ェ ア が 40%を超え、00 年には 50%、06 年には 60% を 超 え た 。 投 資 主 体 の 中 心 が 海 外 投 資 家 に シ フ ト し た こ と は 、 日 本 の 株 式 市 場 の 株 価 形 成 に お い て 、 海 外 投 資 家 の 影 響 力 が 飛 躍 的 に 高 ま っ た こ と を 意 味 す る 。 こ の 点 は 、 外 国 人 の 買 越 額 と 日 経 平 均 と の 関 係 を 示 し た 図 4 か ら も 明 確 で あ ろ う11。 例 え ば 、03 年 、 及 び 05 年半ばにみられた海外投資家の大幅な買い越しが相場の上昇をリードし た 。ま た 、00 年前後から国内外のアクティビスト・ファンドが台頭し、次第にその活 動 を 活 発 化 さ せ て い っ た こ と も 重 要 な 変 化 で あ っ た12。 さ ら に 、00 年代半ばからは、 11 株価指数を、買い越し圧力((買付金額―売付金額)/東証 1 部時価総額×100)で回 帰 し た 簡 単 な 分 析 に よ れ ば 、 買 い 越 し 圧 力 の 係 数 は 、1980 年 1 月~89 年 12 月の 10.19 か ら 、90 年 1 月~99 年 12 月には、24.67 に上昇し、00 年 1 月~09 年 10 月も 17.5 と高 い 。 12 アクティビスト・ファンドの明確な定義は存在しないが、一般に、大株主としての発

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ラ イ ブ ド ア に よ る 日 本 放 送(05 年)、王子製紙による北越製紙(06 年)、スティール・

パ ー ト ナ ー ズ に よ る ブ ル ド ッ ク ソ ー ス(07 年)など敵対的買収の事案も相次ぐように

な っ た 。 わ が 国 で も 徐 々 に 経 営 権 市 場 (market for corporate control)が形成されは

じ め た の で あ る 。 海 外 投 資 家 の プ レ ゼ ン ス 上 昇 に 端 を 発 し た 株 主 意 識 の 変 化 は 、 次 第 に 国 内 の 機 関 投 資 家 に も 波 及 し て い っ た 。2000 年代に入ると厚生年金基金連合会(現、企業年金連合 会 )や 顧 客 の 資 産 を 運 用 す る 国 内 の 投 資 顧 問 会 社 な ど も 議 決 権 行 使 に 積 極 的 と な り13 ま た 、 こ れ ま で 「 も の 言 わ ぬ 株 主 」 と 呼 ば れ た 生 命 保 険 会 社 も 、 独 自 の 議 決 権 行 使 の 手 続 き を 整 備 す る よ う に な っ た 。00 年代後半になると、上場企業はアウトサイダーの 利 害 を 考 慮 し た 経 営 、す な わ ち 株 主 価 値 最 大 化 を 意 識 せ ざ る を 得 な く な っ た の で あ る 。 = = 図 4 外 国 人 投 資 家 の 売 買 動 向 と 日 経 平 均 株 価 の 推 移 = = 2.5 海外投資家の停滞と持ち合いの「復活」:2005 年から 2008 年 銀 行 危 機 以 降 、単 線 的 に 進 展 し た ア ウ ト サ イ ダ ー 保 有 比 率 の 上 昇 傾 向 は 、2006 年頃 を ピ ー ク に 反 転 の 兆 し を み せ て い る ( 図 1 、 図 2 )。 他 方 、 こ の 動 き と 対 照 的 に イ ン サ イ ダ ー 保 有 比 率 も 反 転 し 、上 昇 傾 向 を 示 す よ う に な っ た 。04 年度末には銀行による 保 有 株 の 売 却 が 一 段 落 す る 一 方 、 一 部 の 企 業 に よ る 「 戦 略 的 提 携 」 の た め の 資 本 関 係 強 化 の 動 き が 、株 式 持 ち 合 い の「 復 活 」と し て 社 会 的 注 目 を 集 め た14。そ の 背 景 に は 、 ア ウ ト サ イ ダ ー 保 有 や 敵 対 買 収 事 案 の 増 加 、三 角 合 併 の 解 禁(07 年5月)などがあっ た 。 例 え ば 、M&A に積極的な海外の競争相手による買収の脅威に直面した新日本製鉄 は 、 住 友 金 属 工 業 、 神 戸 製 鋼 所 と の 「 戦 略 的 提 携 」 を 進 め 、2005 年から段階的に 3 社 間 で の 株 式 持 ち 合 い を 拡 大 し た 。 そ の 結 果 、 同 社 の 発 行 済 株 式 数 に 占 め る 事 業 会 社 言 力 を 背 景 に 、企 業 行 動 に 影 響 を 与 え る こ と で 運 用 収 益 の 向 上 を 狙 う 、法 制 面 の 制 約 か ら 比 較 的 自 由 な 、 私 的 な 運 用 機 関 と 考 え ら れ て い る 。 13 同連合会は、2000 年に「受託者責任ハンドブック(運用機関編)」を作成し、01 年に は 、「 議 決 権 行 使 に 関 す る 実 務 ガ イ ド ラ イ ン 」 を 公 表 す る な ど 運 用 面 の 整 備 を 進 め た 。 14 例えば、週刊エコノミスト 2005 年 5 月 17 日号掲載の「企業の「防衛本能」が生んだ 増 配 ラ ッ シ ュ と 持 ち 合 い 復 活 」 や 週 刊 東 洋 経 済 06 年 7 月 22 日号掲載の「水面下で再び 進 む 株 式 持 ち 合 い 」、06 年 12 月 29 日付け日経金融新聞掲載の「キーワードで振り返る 06 年の企業財務」、などを参照。

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11 に よ る 持 ち 合 い 保 有 分 は 、01 年度末の 1.2%から 08 年度末には 8.4%に上昇した(表 2 )15。ま た 、06 年 3 月、日立金属と大同特殊鋼が、資本・業務提携することで合意 し た 。 両 者 は 、 自 動 車 部 品 な ど に 使 う 特 殊 鋼 の 原 料 の 共 同 購 入 や 共 同 開 発 を 進 め る 一 方 、 株 式 の 1%程度をそれぞれ主に市場から購入し、段階的に株式の保有比率を上げ て い く こ と を 決 め た 。 こ の 資 本 提 携 に つ い て も 買 収 リ ス ク に 対 す る 危 機 感 が き っ か け の ひ と つ と さ れ た 。 一 方 、 ア ク テ ィ ビ ス ト ・ フ ァ ン ド に 直 面 し た 企 業 も 安 定 株 主 作 り に 取 り 組 ん だ16。例 え ば 、05 年以降には、東映などの中規模の成熟企業で持ち合い強 化 が 相 次 い だ 。 他 方 、 海 外 投 資 家 は 、 サ ブ プ ラ イ ム 問 題 を 背 景 に 2007 年から売り越しに転じ、リ ー マ ン ・ シ ョ ッ ク が 発 生 し た 08 年 9 月以降、大規模な売却を実行した(図 4)。東証 1 部市場における 08 年 9 月から 09 年 3 月末までの外国人の売り越し額は 5.8 兆円に 達 し 、 そ の 結 果 、 海 外 投 資 家 の 保 有 比 率 は 13.9%(08 年 3 月)から 11.7%(09 年 3 月 ) へ と 低 下 し た 。 日 経 平 均 株 価 は 、 こ の 間 、13,072 円(08 年 8 月末)から 8,109 円 (09 年 3 月末)へと 38%の大幅下落を示したが、この急落は主として海外投資家 の 売 却 に よ っ て も た ら さ れ た も の と 考 え ら れ る 。 日 本 株 の 市 場 価 格 は 、 海 外 投 資 家 の プ レ ゼ ン ス が 上 昇 し た 結 果 、そ の 売 買 行 動 の 影 響 を 強 く 受 け る よ う に な っ た の で あ る 。 以 上 の よ う に 、1997 年以降の所有構造の変化は、インサイダー優位からアウトサイ ダ ー 優 位 へ の 急 激 な 変 化 と 、05 年以降のその停滞と要約できる。もっとも重要な点は、 こ う し た 変 化 が す べ て の 上 場 企 業 で 一 様 に 進 展 し た わ け で は な い こ と で あ る 。 表 1 の 標 準 偏 差 の 動 向 が 示 す よ う に 、 例 え ば 08 年のインサイダーの保有比率 38.3%は、91 年 の 46.6%に比べて 8.3%ポイント低下したが、その標準偏差は逆に 91 年の 13.5% か ら 08 年の 16.4%へと上昇した。また、アウトサイダー保有の中心である国内外の 機 関 投 資 家 の 保 有 比 率 は 、91 年の 9.2%から 08 年の 19%に急増したが、それと並行 15 日本経済新聞掲載(2007 年 09 月 28 日)の「持ち合い復活の実像(中)」は、この戦 略 的 提 携 に よ っ て「 三 割 ほ ど だ っ た 新 日 鉄 の 安 定 株 主 比 率 は い ま や 五 割 近 く に な っ た 」と の 観 測 を 示 し て い る 。 16 早期の事例としては、2003 年にスティール・パートナーズの大量買い付けを受けたソ ト ー の 事 例 が あ る 。同 社 は 、大 量 買 い 付 け を 受 け た 後 、筆 頭 株 主 で あ る ダ イ ド ー リ ミ テ ッ ド と 持 ち 合 い 関 係 を 強 化 し た 。04 年 3 月末の株主情報を1年前のものと比較すると、ソ ト ー が ダ イ ド ー リ ミ テ ッ ド の 保 有 比 率 を 2.0%から 3.5%に増加させる一方で、ダイドーリ ミ テ ッ ド が ソ ト ー の 保 有 比 率 を 8.6%から 10.5%に引き上げたことがわかる。そのダイド ー リ ミ テ ッ ド も 、 ア ク テ ィ ビ ス ト で あ る 村 上 フ ァ ン ド の 脅 威 に さ ら さ れ て お り 、04 年に オ ン ワ ー ド 樫 山 と の 相 互 持 ち 合 い を 新 た に 開 始 し た 。

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12 し て 標 準 偏 差 も 7.4%から 13.9%に増加した。 そ こ で 、 次 の 諸 点 が 自 然 な 疑 問 と し て 浮 上 す る 。 第 1 に 、 銀 行 危 機 以 降 の 持 ち 合 い 解 消 は 、ど の よ う な メ カ ニ ズ ム で 進 行 し た の か 。ま た 、2005 年以降の持ち合い「復活」 の 規 模 は ど の 程 度 か 、 い か な る 特 徴 を 持 つ 企 業 が 持 ち 合 い を 強 化 し た の か 、 こ の 強 化 は イ ン サ イ ダ ー 優 位 の 所 有 構 造 へ の 回 帰 を 意 味 す る の か 。第 2 に 、90 年代後半から加 速 し た 海 外 投 資 家 の 増 加 は い か に 理 解 で き る の か 、 海 外 投 資 家 の 銘 柄 選 好 に は バ イ ア ス が あ る の か 、 し ば し ば 指 摘 さ れ る よ う に 取 締 役 会 組 織 の 改 革 に は プ レ ミ ア ム が 付 与 さ れ て い る の か 。 第 3 に 、 こ の 株 式 所 有 構 造 の 変 化 は 、 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス に ど の よ う な 影 響 を 与 え た の か 。 海 外 投 資 家 の プ レ ゼ ン ス 上 昇 は 企 業 経 営 に 対 し て 規 律 付 け 効 果 を 持 っ た の か 。 以 下 で は 、 こ れ ら の 諸 点 を 独 自 の デ ー タ ベ ー ス を 構 築 す る こ と に よ っ て 解 明 し て ゆ く 。 3 . 株 式 持 ち 合 い の 解 消 と 「 復 活 」 企 業 経 営 者 が 自 社 の 株 主 を 自 ら 選 択 す る 点 に イ ン サ イ ダ ー 保 有 の 本 質 が あ る と す れ ば 、そ の イ ン サ イ ダ ー 保 有 の 中 核 は 株 式 相 互 持 ち 合 い に あ る 。そ こ で 、本 節 で は 、1997 年 以 降 の 、 こ の 株 式 持 ち 合 い の 実 態 と そ の 決 定 要 因 を 解 明 す る 。 ま ず 、 図 3 か ら 持 ち 合 い 比 率 の 長 期 的 な ト レ ン ド を 、 簡 単 に 振 り 返 っ て お こ う 。 同 比 率 は 、96 年 までは 15%前後で安定的に推移してきたが、97 年から 04 年にかけて、銀行の保有株売却を 中 心 と す る 持 ち 合 い 解 消 売 り に よ り 、大 幅 に 低 下 し た 。05 年以降は、持ち合い「復活」 へ の 懸 念 が 台 頭 し て き た も の の 、同 比 率 は 9%近辺で横ばいとなっている。すなわち、 集 計 的 な デ ー タ か ら み る 限 り 、90 年代終盤から 00 年代半ばにかけての持ち合い解消 は 明 確 で あ る の に 対 し て 、 そ の 後 の 持 ち 合 い の 増 加 は ほ と ん ど 確 認 で き な い 。 3.1 持ち合い解消のメカニズムとその帰結 持 ち 合 い 解 消 の 実 態 も っ と も 、 以 上 の 概 観 は 集 計 量 に と ど ま る 。 そ こ で 次 に 、 利 用 可 能 な デ ー タ か ら 、 相 互 保 有 さ れ て い る 株 式 の 売 買 動 向 を 一 件 ず つ 確 認 し た デ ー タ ベ ー ス を 構 築 し て 、 持 ち 合 い ネ ッ ト ワ ー ク が 銀 行 危 機 以 降 ど の よ う に 変 遷 し て き た の か を 分 析 す る 。 売 買 の 有 無 は 、 資 本 移 動 や 組 織 再 編 を 考 慮 し た 上 で 、 持 ち 合 い 株 式 に 2 単 元 以 上 の 変 動 が あ っ た か ど う か に よ っ て 識 別 す る 。 前 年 度 か ら の 保 有 に 変 化 が な い 場 合 は 「 現 状 維 持 」、

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13 売 買 が 確 認 で き る 場 合 は「 売 り 」ま た は「 買 い 」、開 示 情 報 の 制 約 な ど の た め 、収 集 し た 情 報 か ら は 売 買 が あ っ た か ど う か 合 理 的 判 断 が で き な い 場 合 は「 不 明 」と 認 識 す る 。 そ の 上 で 、 企 業 単 位 で 売 買 件 数 を 集 計 し 、 各 企 業 の 「 買 い 」 の 件 数 が 「 売 り 」 の 件 数 を 上 回 っ て い れ ば 、持 ち 合 い ネ ッ ト ワ ー ク を「 純 増 」さ せ た 企 業 、下 回 っ て い れ ば「 純 減 」 さ せ た 企 業 と 認 識 す る 。 な お 、 集 計 対 象 は 、 図 3 と 同 様 に 三 市 場 1 部 市 場 上 場 企 業 ( 除 く 金 融 ) と す る 。 ま ず 、 持 ち 合 い 株 式 に 関 す る 売 買 動 向 を 企 業 単 位 で 集 計 し た 表 3 か ら 、 持 ち 合 い 解 消 に 関 す る 企 業 行 動 を 確 認 し て お こ う 。同 表 に よ れ ば 、持 ち 合 い 解 消 は 、1998 年から 04 年に生じており、この局面の持ち合い株式に対する企業の売買行動は、それ以前の 局 面 と は 明 ら か に 異 な っ て い る 。 解 消 の 第 1 のピークは 99 年にあり、その後も高水 準 を 保 っ た の ち 03 年に2度目のピークを迎えた。この両年には、持ち合い解消を進 め た 企 業( 純 減 )が 三 市 場 1 部 上 場 企 業 の 50%を超え、持ち合いを増やした企業(純 増 、15%程度)との差は 35%以上に広がった。しかし他方で、この局面においても、 主 要 企 業 の 3 割 強 が 持 ち 合 い を 基 本 的 に 変 化 さ せ て い な か っ た と い う 事 実 も 注 目 に 値 す る 。 = = 表 3 持 ち 合 い ネ ッ ト ワ ー ク に 関 す る 企 業 行 動 = = こ の 企 業 単 位 で 集 計 し た 売 買 動 向 を 、 主 体 別 の 個 々 の 持 ち 合 い 株 式 の 売 買 取 引 に 分 解 し た も の が 表 4 で あ る17。 同 表 で は 、 持 ち 合 い 株 式 の 売 買 を 主 体 別 に 銀 行 に よ る も の ( パ ネ ル 1 )、 事 業 会 社 に よ る も の ( パ ネ ル 2 )、 事業会社同士のもの(パネル3) に 整 理 し て い る 。 こ こ か ら 明 ら か な よ う に 、 持 ち 合 い 解 消 の 中 心 は 、 銀 行 ・ 事 業 会 社 間 の 関 係 解 消 で あ り 、 と く に 銀 行 が 持 ち 合 い の 形 で 保 有 す る 株 式 の 売 却 で あ っ た 。 1996 年まで 3%程度にとどまっていた銀行による持ち合い株式の売却比率(持ち合い 総 件 数 に 対 す る 売 却 件 数 )は 98 年には 10%を超え、銀行等株式保有制限法の施行(02 17 持ち合いネットワークの件数は、A社によるB社株の保有と、B社によるA社株の保 有 の 双 方 を カ ウ ン ト し て い る の で 、原 則 と し て 、ひ と つ の ネ ッ ト ワ ー ク に つ き 2 件 の カ ウ ン ト と な る 。た だ し 、持 ち 合 い 関 係 の 認 識 は 、本 稿 の 分 析 対 象 で あ る 主 要 三 市 場 に 限 ら ず 、 全 上 場 市 場 で 行 っ て い る の で 、そ の 総 件 数 は 必 ず し も 偶 数 に は な ら な い 。ま た 、持 ち 合 い 総 件 数 は 、当 年 ま た は 前 年 に 、持 ち 合 い 関 係 が 確 認 で き れ ば カ ウ ン ト す る の で 、当 年 に 持 ち 合 い 関 係 が 完 全 に 解 消 さ れ る ケ ー ス も 、新 た に 持 ち 合 い 関 係 を 構 築 す る ケ ー ス も 、総 件 数 に は 含 ま れ て い る 。

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14 年 1 月)にともなって急上昇した。02 年にはこれと並行して、銀行等保有株式取得機 構 、及 び 日 本 銀 行 の 株 式 買 取 り が 始 ま っ た が 、銀 行 の 売 却 比 率 は 40%を超え、同法の 目 標 年 次 で あ っ た 04 年まで売却が継続した18 他 方 、 事 業 会 社 に よ る 持 ち 合 い 株 式 の 売 却 比 率 は 、 持 ち 合 い 株 式 の 時 価 評 価 を 求 め る 会 計 基 準 の 変 更 を 受 け て 、1999 年から 00 年にかけて上昇した後、さらに 03 年か ら 04 年にかけて売却が進展した。しかし、表4パネル3によれば、03 年から 04 年 に か け て の 事 業 会 社 に よ る 持 ち 合 い 株 式 の 売 却 は 、 主 と し て 持 ち 合 い 関 係 に あ る 銀 行 株 の 売 却 、 つ ま り 銀 行 に よ る 持 ち 合 い 解 消 売 り に 対 応 し た 売 却 で あ り 、 事 業 会 社 間 の 持 ち 合 い 解 消 は 著 し く 少 な か っ た 。 = = 表 4 持 ち 合 い 株 式 の 主 体 別 売 買 動 向 = = 持 ち 合 い 解 消 の メ カ ニ ズ ム こ の よ う に 持 ち 合 い 解 消 の 中 心 は 銀 行 ・ 事 業 会 社 間 の 関 係 解 消 に あ っ た が 、 こ の 売 却 は す べ て の 銀 行 ・ 事 業 会 社 の 間 で 均 一 に 進 展 し た わ け で は な か っ た 。1995 年か ら

02 年までの銀行・事業会社双方の売却要因を分析した Miyajima and Kuroki (2007) で は 、 次 の 諸 点 が 明 ら か に さ れ て い る 。 第 1 に 、 事 業 会 社 が 持 ち 合 い 保 有 す る 銀 行 株 の 各 年 の 売 却 の 選 択 を 、 ① 売 却 の 必 要 性 、 ② 保 有 す る 銀 行 の 財 務 健 全 性 、 ③ 事 業 会 社 に 対 す る 資 本 市 場 か ら の 圧 力 、 ④ 買 収 の 潜 在 的 可 能 性 、 ⑤ 保 有 銀 行 と の 融 資 ・ 株 式 保 有 関 係 に 回 帰 し た 結 果 に よ れ ば 、 事 業 会 社 に よ る 持 ち 合 い 解 消 は 、 パ フ ォ ー マ ン ス が 高 く 、 資 本 市 場 へ の 接 近 の 容 易 な 事 業 会 社 が 、 持 ち 合 い 関 係 に あ る 銀 行 の 株 式 を 売 却 す る 傾 向 が 強 く 、 逆 に 、 い ぜ ん 銀 行 借 り 入 れ に 依 存 し 、 メ イ ン バ ン ク と の 間 の 関 係 を 維 持 し て い る 事 業 会 社 で は 、 銀 行 株 の 保 有 リ ス ク が 上 昇 し た 環 境 の 下 で も 、 売 却 率 が 低 い 傾 向 が み ら れ た 。 第 2 に 、 各 年 に お い て 銀 行 が 保 有 す る 事 業 会 社 株 の 売 却 の 選 択 を 、 ① 銀 行 の 株 式 投 資 行 動 、② 銀 行 に 対 す る 資 本 市 場 か ら の 圧 力 、③ 持 ち 合 い 保 有 す る 事 業 会 社 の 特 性( 成 長 可 能 性 、デ フ ォ ル ト・リ ス ク )、④ 銀 行 と 事 業 会 社 と の 長 期 的 関 係 を 示 す 変 数 に 回 帰 18 銀行等保有株式取得機構は銀行等が保有する株式を、2002 年 2 月から 06 年 4 月まで に 1.6 兆円を購入した。他方、日本銀行は 02 年 11 月から 04 年 9 月までに 2 兆円を購入 し た 。

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15 し た 結 果 に よ れ ば 、 銀 行 は 、 パ フ ォ ー マ ン ス ( 成 長 可 能 性 ) が 高 く 、 資 本 市 場 へ の ア ク セ ス が 容 易 な 事 業 会 社 を 選 択 的 に 売 却 し19、 他 方 で 、 借 入 依 存 度 が 高 く 、 自 行 が メ イ ン バ ン ク と な っ て い る 事 業 会 社 株 の 売 却 確 率 は 低 か っ た 。 相 互 に 依 存 関 係 に あ る 事 業 会 社 の 持 ち 合 い 株 式 を 売 却 す れ ば 、「 メ イ ン バ ン ク が 見 放 し た 」こ と を 示 す シ グ ナ ル と な り 、 貸 し 出 し と 株 式 保 有 の 両 面 で コ ミ ッ ト す る 顧 客 企 業 が 財 務 危 機 に 陥 る 可 能 性 が あ っ た か ら で あ る 。

第 3 に、Miyajima and Kuroki (2007) は、推計モデルの変数に、持ち合いの相手

先( 銀 行 、事 業 会 社 )の 当 年 、ま た は 前 年 の 保 有 株 式 の 売 却 の 有 無 を 追 加 す る こ と で 、 こ の 持 ち 合 い 解 消 が 協 調 的 に 行 わ れ た の か 、 非 協 調 的 に 行 わ れ た の か に 接 近 し た 。 そ の 結 果 、 持 ち 合 い 解 消 が 同 時 期 に 行 わ れ る 傾 向 が 強 い こ と が 示 さ れ た 。 例 え ば 、 事 業 会 社 の 1999 年から 01 年にかけての保有銀行株の売却確率は、持ち合い相手である銀 行 の 同 年 の 売 却 に よ っ て 5%程度引き上げられるが、これに対して前年の売却の効果 は 1 % で あ る 。こ の 時 期 の 事 業 会 社 の 保 有 銀 行 株 の 売 却 確 率 19%のうち 4 分の 1 が協 調 的 な 売 却 よ っ て 説 明 さ れ る 。 他 方 、 銀 行 に よ る 持 ち 合 い 株 式 の 売 却 に つ い て は 、 そ れ に 先 行 す る 事 業 会 社 の 売 却 が 、 次 期 の 銀 行 の 売 却 確 率 を 引 き 上 げ る 効 果 が 6%であ る の に 対 し て 、 ラ グ の 効 果 は 3.5%であった。つまり、銀行による持ち合い解消売り で は 、 事 業 会 社 に よ る 先 行 売 却 が 、 銀 行 の 売 却 を 誘 発 す る 面 が や や 強 か っ た と い え る が 、同 期 の 銀 行 の 売 却 確 率 25.4%のうち 4 分の1は、事業会社の保有銀行株の売却と 同 様 に 協 調 的 な 解 消 に よ っ て 説 明 で き る 。 持 ち 合 い 解 消 は 、 基 本 的 に 相 互 に 協 調 的 に 進 め ら れ た と み て よ か ろ う 。 銀 行 ポ ー ト フ ォ リ オ の 劣 化 以 上 の 通 り 、 保 有 株 式 の 早 急 な 処 分 を 迫 ら れ た 銀 行 は 、 流 動 化 が 容 易 で 、 自 行 へ の 借 入 依 存 度 が 低 い 事 業 会 社 の 株 式 を 売 却 し 、 他 方 で 事 業 会 社 側 も 、 資 本 市 場 へ の ア ク セ ス が 容 易 と な っ た グ ル ー プ か ら 銀 行 と の 持 ち 合 い 関 係 を 解 消 し た 。 こ う し た 銀 行 ・ 事 業 会 社 双 方 の 行 動 は 、 銀 行 の 株 式 保 有 の 減 少 だ け で な く 、 そ の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ が 劣 化 し た こ と を 予 想 さ せ る 。 そ こ で こ の 点 を 、主 要 銀 行 全 体 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ の 特 徴 を 三 市 場 1 部の市場構 19 銀行等保有株式取得機構、日本銀行の株式買い取りの条件が、トリプル B 以上の格付 け を 取 得 し た 企 業 で あ っ た こ と も こ の 選 択 を 促 進 し た 。

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16 成 と 比 較 し た 表 5 か ら 確 認 し て お こ う 。 こ こ で は 、 都 市 銀 行 と 長 期 信 用 銀 行 ( 以 下 、 主 要 銀 行 部 門 ) の 保 有 銘 柄 の う ち 三 市 場 1 部 上 場 企 業 ( 除 く 金 融 ) を 対 象 と し て 、 各 銘 柄 の 企 業 特 性 を 表 す 諸 指 標 を 、 主 要 銀 行 部 門 の 保 有 金 額 に 基 づ い て 加 重 平 均 し た も の と 、 そ の 市 場 時 価 総 額 に 基 づ く 加 重 平 均 値 と 比 較 し た ( 各 指 標 の 定 義 に つ い て は 表 5 の 注 記 参 照 )。 銀 行 危 機 直 前 の 1996 年度末までは、主要市場に上場する企業のほぼ全てに銀行が 大 株 主 と し て 存 在 し 、 強 固 な 持 ち 合 い 関 係 を 維 持 し て い た 。 対 象 企 業 の 30 大株主に 平 均 し て 4 社弱の銀行が確認でき、各種資料から捕捉できるだけでも、発行済株式数 の 約 10%が銀行部門によって保有されていた。しかし、銀行危機以降には、主要銀行 部 門 に よ る 持 ち 合 い 解 消 売 り が 大 き く 進 展 し 、 銀 行 等 株 式 保 有 制 限 法 の シ ョ ッ ク が 一 巡 し た 04 年度末には、30 大株主にとどまる銀行は平均して 2 社弱に低下し、銀行部 門 の 保 有 比 率 は 4%弱にまで減少した20 こ の 売 却 行 動 は 、銀 行 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ の 劣 化 を と も な っ た 。1996 年以前の主 要 銀 行 部 門 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ は 、ト ー ビ ン の q 、ROA、負債比率のいずれでみて も 、 三 市 場 1 部の市場構成とほぼ同様であったが、銀行危機後の 97 年以降には市場 構 成 か ら 大 き く 乖 離 し た 。04 年の銀行ポートフォリオにおけるトービンのqの平均は 1.22 となり、市場平均の 1.73 よりも 3 割程度低くなった。同様な傾向は、ROA につ い て も 確 認 で き 、 銀 行 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ の 平 均 的 な ROA 水準である 6.37%は、 市 場 平 均 の 8.24%を 1.87%ポイント下回った。この結果は、不良債権処理原資の捻出、

保 有 株 式 の 圧 縮 の た め に 、 ま ず は 優 良 株 か ら 売 却 し た と い う Miyajima and Kuroki

(2007) の見方と整合的である。他方、負債比率については、市場全体で 97 年以降に 低 下 傾 向 が 確 認 で き る が 、そ の 低 下 幅 は 銀 行 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ の 方 が 鈍 い 。97 年 に は 三 市 場 1 部 の 市 場 構 成 と ほ ぼ 同 様 で あ っ た 負 債 比 率 も 、02 年には 4%ポイント、 05 年には 5%ポイント、三市場1部の市場構成を上回った。銀行危機後の局面で流動 化 の 容 易 な 銘 柄 の 売 却 を 進 め た 結 果 、99~01 年には売却・保有継続の選択にあたって デ フ ォ ル ト ・ リ ス ク に 対 す る 考 慮 が 後 退 し 、 む し ろ デ フ ォ ル ト ・ リ ス ク の 低 い 企 業 の

売 却 を 優 先 し た と い う Miyajima and Kuroki (2007: p.104) の結果と整合的である。

20 大株主として登場する銀行数の減少は、2000 年以降の主要銀行の経営統合の影響を強

く 受 け て い る 。さ ら に 、統 合 後 の 保 有 株 式 に 5%ルールが適用されるので、銀行の経営統

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17 以 上 要 す る に 、銀 行 危 機 後 の 持 ち 合 い 解 消 局 面 で は 、銀 行 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ も 、 成 長 可 能 性 が 低 く 、業 績 が 悪 く 、デ フ ォ ル ト・リ ス ク の 高 い 企 業 に 偏 っ た の で あ る21 == 表5 銀行ポートフォリオの劣化 == 3.2 株式持ち合いの「復活」とその要因 持 ち 合 い 「 復 活 」 の 実 態 既 述 の 通 り 、 集 計 的 な デ ー タ か ら は 、 し ば し ば 批 判 さ れ る 2000 年代後半の持ち合 い の 増 加 は 確 認 で き な い 。 で は 、 注 目 さ れ た 持 ち 合 い 「 復 活 」 は 、 規 模 が 小 さ く 、 無 視 し う る 現 象 な の だ ろ う か 。00 年代に入ると、敵対的買収やアクティビスト・ファン ド が 台 頭 す る が 、 こ う し た 敵 対 的 な 大 株 主 の 影 響 力 を 排 除 す る た め の 手 段 と し て 、 持 ち 合 い が 企 業 経 営 者 の 間 で 再 び 見 直 さ れ る よ う に な っ た 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る22 も し そ う で あ れ ば 、 持 ち 合 い 強 化 は 、 現 経 営 陣 の 保 身 を 目 的 と し た も の で あ り 、 そ の コ ス ト を 負 担 す る こ と は 、 投 資 家 に 受 け 入 れ ら れ な い ば か り か 、 資 源 配 分 効 率 の 面 か ら も 問 題 を 含 む 。 こ の 意 味 で 、 持 ち 合 い 「 復 活 」 の 実 態 や そ の 要 因 を 理 解 す る こ と は 極 め て 重 要 で あ る 。 そ こ で 、 持 ち 合 い 株 式 の 個 々 の 売 買 行 動 を 企 業 単 位 で 集 計 し た 表 3 を 用 い て 、 持 ち 合 い 「 復 活 」 の 実 態 を 確 認 し て お こ う 。 同 表 か ら 、 企 業 の 持 ち 合 い に 対 す る 姿 勢 は 、 2005 年を境に明確に反転したことがわかる。05 年以降の局面では、持ち合いを強化 し た 企 業( 純 増 )の 割 合 が 三 市 場 1 部上場企業の 35%程度に上昇し、逆に、持ち合い 解 消 を 進 め た 企 業 ( 純 減 ) の 割 合 が 10%程度に低下したため、その差は 20%を超え た 。持 ち 合 い 強 化 へ の 取 り 組 み が 、主 要 企 業 の 多 く で み ら れ る よ う に な っ た の で あ る 。 こ れ を 主 体 別 に み る と 、2005 年以降の持ち合い強化の多くが、事業会社間で生じた こ と が わ か る 。 こ の 間 の 銀 行 の 持 ち 合 い ネ ッ ト ワ ー ク は 売 り と 買 い が ほ ぼ 拮 抗 し 、 ネ ッ ト で は む し ろ や や 減 少 し て い る か ら 、 持 ち 合 い の 増 加 に は 寄 与 し て い な い ( 表 4 パ ネ ル 1 )。銀 行 が 株 式 持 ち 合 い の 中 心 に 位 置 す る 、銀 行 危 機 以 前 の 状 況 に 復 帰 す る 兆 候 21 宮島・蟻川 (1999) は、1980 年代の社債規制緩和以降、銀行の貸出ポートフォリオが リ ス ク の 高 い 企 業 に 偏 っ た こ と を 指 摘 し て い る 。な お 、銀 行 の 株 式 ポ ー ト フ ォ リ オ と 市 場 ポ ー ト フ ォ リ オ の 乖 離 は 、05 年 3 月末をピークに徐々に縮小した。 22 この傾向は、ブルドックソース事件最高裁決定(2007 年 8 月 7 日)以降、買収防衛策 の 有 効 性・正 当 性 が 、株 主 総 会 決 議 に 依 存 す る と い う 理 解 が 広 ま っ た こ と に よ っ て 強 化 さ れ た と み ら れ る 。

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18 を 見 出 す こ と は で き な い 。 こ れ に 対 し て 、98 年から 04 年の解消局面でも、持ち合い 解 消 に 消 極 的 だ っ た 事 業 会 社 は 、05 年から株式持ち合いの積み増し姿勢を鮮明にし、 07 年には純増が 11.7%に達した(表4パネル2)。しかし、この持ち合い強化は、も っ ぱ ら 事 業 会 社 に よ る 銀 行 株 の 購 入 で は な く 、 他 の 事 業 会 社 株 の 購 入 と い う 形 で 進 展 し た 。 事 業 会 社 同 士 の 株 式 持 ち 合 い は 、 新 会 計 基 準 導 入 前 の 99 年を除けば、基本的 に 強 化 さ れ る 方 向 に あ り 、 特 に 05 年以降の持ち合い強化は、それまでのトレンドを 大 き く 上 回 る 水 準 と な っ て い る ( 表 4 パ ネ ル 3 )。 ま た 、 こ の 事 実 と 整 合 的 に 、 デ ー タ か ら 確 認 で き る 相 互 持 ち 合 い の 総 件 数 も 、05 年以降は、それ以前と比較して大幅に 増 加 し て い る 。 持 ち 合 い 「 復 活 」 の 要 因 分 析 で は 、2005 年以降の持ち合い強化は、いかなる要因に基づくのか。ここでは、持ち 合 い 比 率 の 変 化 に 着 目 し て 、 ど の よ う な 特 性 を 持 つ 企 業 が 持 ち 合 い 比 率 を 増 加 さ せ た か を 分 析 す る 。サ ン プ ル と し て 三 市 場 1 部上場の非金融事業法人をとり、持ち合いの 「 復 活 」が 注 目 さ れ た 05 年 3 月末から 08 年 3 月末まで(以下、再強化期)を 1 期間 と 捉 え て 、 持 ち 合 い 比 率 の 変 化 の 決 定 要 因 を 02 年 3 月末から 05 年 03 月末の解消期 と 比 較 す る 。 推 計 方 法 は 、 以 下 の (1) 式に示されるクロスセクション回帰である。 (1) ⊿CROSS = F ( X1, X2, X3 ) こ こ で 、 被 説 明 変 数 の ⊿CROSS は、3年間の持ち合い比率の変化幅である。さら に 、 持 ち 合 い の 強 化 が 顕 著 で あ っ た 非 金 融 事 業 法 人 の 行 動 や 、 よ り 広 義 の 株 式 安 定 工 作 の 決 定 要 因 を 詳 細 に 検 討 す る た め 、 こ の 被 説 明 変 数 を 、 持 ち 合 い 比 率 の う ち 非 金 融 事 業 法 人 に よ っ て 保 有 さ れ る 部 分 の 変 化 幅 と し て 定 義 さ れ る ⊿CROSS’、 及び 、銀行 や 事 業 会 社 、 持 株 会 、 役 員 、 創 業 者 一 族 な ど で 構 成 さ れ る イ ン サ イ ダ ー 保 有 比 率 の 同 期 間 の 変 化 幅 で 定 義 さ れ る ⊿INSIDER に置き換えて(1)式を推計した。 他 方 、説 明 変 数 の う ち X1は 、株 主 か ら の 圧 力 の 代 理 変 数 で あ る 。ひ と つ は 、期 初 の ア ウ ト サ イ ダ ー の 保 有 比 率 で あ る23。 い ま ひ と つ は 、 ア ク テ ィ ビ ス ト ・ フ ァ ン ド の 標 23 各変数の定義については、表1下段を参照。また、アウトサイダー保有比率に代えて、 国 内 外 の 機 関 投 資 家 保 有 比 率 を 導 入 し た 推 計 も 試 み た 。

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19 的 ダ ミ ー で あ り 、 観 察 期 間 の 期 初 時 点 で 既 に 標 的 で あ っ た こ と を 示 す も の と 、 期 間 中 に 新 た に 標 的 に な っ た こ と を 示 す ダ ミ ー 変 数 を 、 そ れ ぞ れ 導 入 し た24。 こ の フ ァ ン ド 標 的 ダ ミ ー は 、 解 消 期 の 期 初 で あ る 2001 年度末には 31 社と少なかったが、期中の 01~04 年度に 65 社が新たに標的となった。また、再強化期の期初である 04 年度末 時 点 で は 標 的 と な る 経 験 を し た 企 業 が 89 社あり、期中の 04~07 年度には 116 社が新 た に 標 的 に な っ た 。 X2は 、経 営 者 の 私 的 便 益 を 示 す 変 数 で あ り 、2 つ の タ イ プ か ら な る 。ひ と つ は 、取 締 役 会 に お け る 内 部 昇 進 者 の ポ ス ト 数 で あ り 、 取 締 役 の 人 数 か ら 社 外 出 身 者 を 除 外 し た 内 部 取 締 役 人 数 を 用 い る 。 い ま ひ と つ は 余 剰 資 金 の 水 準 で あ る 。 胥 (2007) や新田 (2008b) が示したように、余剰資金が豊富な企業は、アクティビスト・ファンドの標 的 に な り や す い 。そ こ で 、「( 現 金+有価証券+投資有価証券)/総資産簿価」で定義さ れ る 余 剰 資 金 比 率 を 導 入 し 、 そ の 水 準 が 持 ち 合 い 比 率 の 決 定 に 影 響 を 与 え る と い う 見 方 を テ ス ト す る 。 さ ら に 、企 業 の 収 益 性 や 企 業 規 模 を コ ン ト ロ ー ル す る た め に X3と し て 、ト ー ビ ン の q が 1 以 上 の 場 合 に 1 を 与 え る Hiq ダミー、及び、インタレスト・カバレッジ・レシ オ ( 営 業 利 益 / 支 払 利 息 ) が 1.5 を下回る場合に1を与える財務危機ダミー、総資産 の 対 数 値 を 導 入 し た25 再 強 化 期 の ⊿CROSS の平均値は 0.33%と解消期のマイナス2%に対してわずかな が ら 正 の 値 を と り 、そ の 標 準 偏 差 は 4%弱であった。また、この⊿CROSS の内数であ る ⊿CROSS’の平均値は、再強化期で 0.8%と⊿CROSS よりやや高く、事業会社間の 持 ち 合 い が 増 加 し て い る こ と が う か が え る 。 他 方 、 持 ち 合 い 関 係 に 限 定 し な い 、 広 義 の 安 定 株 主 の 変 化 を 示 す ⊿INSIDER は、再強化期において平均値では負であるもの の 、 そ の 標 準 偏 差 は 7.8%と大きく、この時期に一部の企業でインサイダーの保有比 率 が 上 昇 し た こ と が 示 唆 さ れ る 。 (1)式の推計結果は、表6に要約されている。ここでは次の2点が注目されよう。 24 標的ダミーは、新聞報道等に基づき、15 のアクティビスト・ファンド(村上ファンド、 ス テ ィ ー ル 、 ザ ・ チ ル ド レ ン ズ 、 ペ リ ー 、 ダ ル ト ン 、 ブ ラ ン デ ス な ど ) を 特 定 し 、1997 年 以 降 の 彼 ら の 投 資 行 動 を 、大 量 保 有 報 告 書 、変 更 報 告 書 、及 び 大 株 主 名 簿( 東 洋 経 済 新 報 社 ) か ら 追 跡 調 査 し た 。 詳 し く は 、 新 田 (2008b) を参照。 25 Hiq ダミーが1をとるのは、再強化期では全サンプルの 69.2%、解消期では 46.3%で あ っ た 。 一 方 、 財 務 危 機 ダ ミ ー が 1 を と る の は 、 再 強 化 期 で は 全 サ ン プ ル の 5.9%、解消 期 で は 22.3%であった。

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20 第 1 に 、 再 強 化 期 で は 、 株 主 か ら の 圧 力 が 安 定 株 主 作 り を 促 し た こ と が 鮮 明 に 確 認 で き る 。X1 の ア ウ ト サ イ ダ ー の 係 数 は 、 再 強 化 期 の み で 有 意 に 正 で あ り 、2004 年度末 に ア ウ ト サ イ ダ ー 保 有 比 率 が 著 し く 上 昇 し た 企 業 は 、 株 式 安 定 工 作 を 試 み る 傾 向 が あ っ た 。そ の 規 模 は 、保 有 比 率 が 平 均 の 46.4%から1標準偏差(13.5%)高まると、持 ち 合 い 比 率 を 0.3%、インサイダー保有比率を 1.1%引き上げる効果を持つ26。 他 方 、 株 式 持 ち 合 い に 対 す る フ ァ ン ド 標 的 ダ ミ ー の 係 数 は 、再 強 化 期 の み で 有 意 に 正 と な り 、 当 期 よ り も 期 初 の 方 が 安 定 的 な 効 果 を 持 つ 。 敵 対 的 な 大 株 主 の 脅 威 に さ ら さ れ た 企 業 は 、 平 均 し て 持 ち 合 い 比 率 を 1%程度引き上げた。 = = 表 6 持 ち 合 い 「 復 活 」 の 要 因 分 析 = = 第 2 に 、経 営 者 の エ ン ト レ ン チ メ ン ト 行 動 は 再 強 化 期 で よ り 鮮 明 と な る 。⊿CROSS、 ⊿CROSS’を被説明変数とした推計をみると、X2 の 内 部 取 締 役 人 数 、 余 剰 資 金 比 率 の 係 数 は い ず れ も 有 意 に 正 で あ る 。 再 強 化 期 に は 、 内 部 取 締 役 人 数 の 係 数 、 及 び 有 意 水 準 が 高 く 、 他 方 、 余 剰 資 金 は 解 消 期 で も 持 ち 合 い を 引 き 上 げ る 作 用 を 果 た し て い た 。 再 強 化 期 に は 、 内 部 取 締 役 人 数 、 余 剰 資 金 比 率 の 1 標 準 偏 差 の 上 昇 は 、 持 ち 合 い 比 率 を そ れ ぞ れ 0.3%、0.2%程度上昇させる効果を持ったと試算される。以上の結果は、 経 営 者 の 私 的 便 益 が 、 持 ち 合 い 強 化 を 促 進 し た と い う 見 方 と 整 合 的 で あ る 。 経 営 者 の 私 的 便 益 が 大 き い 企 業 で は 、 銀 行 に よ る 持 ち 合 い 株 式 の 買 い 増 し や 新 た な イ ン サ イ ダ ー 株 主 の 確 保 が 困 難 な 状 況 の 下 で 、 取 引 先 や 歴 史 的 に 親 密 な 事 業 会 社 、 あ る い は 、 敵 対 的 な 大 株 主 と い う 共 通 の 脅 威 に 直 面 す る 他 の 事 業 会 社 と の 間 で 、 持 ち 合 い 強 化 を 図 っ た と み る こ と が で き る 。 3.3 持ち合いは「復活」したのか 既 述 の 通 り 、2000 年代後半には持ち合いの「復活」が注目されたが、集計レベルで は 持 ち 合 い 比 率 の 上 昇 は 確 認 で き ず 、 そ の 変 化 の 規 模 は 解 消 局 面 と 比 べ て は る か に 小 26 この結果は、アウトサイダーを国内外の機関投資家保有比率に代えても、ほぼ同じで あ り 、そ の 規 模 は 、機 関 投 資 家 保 有 比 率 が 平 均 の 19.1%から1標準偏差(13.6%)高まる と 、 持 ち 合 い 比 率 を 0.3%、インサイダー保有比率を 1.0%引き上げる効果を持つ。さら に 、機 関 投 資 家 保 有 比 率 を 、そ の 内 訳 で あ る 海 外 投 資 家 保 有 比 率 に 代 え て も 、有 意 性 は 下 が る が 基 本 的 に 同 じ で あ る 。

参照

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