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神 戸 外 大 論 叢 ( 神 戸 市 外 国 語 大 学 研 究 会 ) 63 指 示 対 象 のズレと 特 殊 な 語 形 変 化 (2) キツツキ 及 びその 関 連 語 彙 を 対 象 に 太 田 斎 6.1. キツツキ と ヤツガシラ そして ハト キジバト 本 節 で 扱 うのは 戴 胜

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(1)

指示対象のズレと特殊な語形変化(2)--「キツツキ

」及びその関連語彙を対象に--著者

太田 斎

雑誌名

神戸外大論叢

64

4

ページ

63-96

発行年

2014-03-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1085/00001661/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

指示対象のズレと特殊な語形変化(2)

  

「キツツキ」及びその関連語彙を対象に  

太 田   斎 §6.1. 「キツツキ」と「ヤツガシラ」そして「ハト」、「キジバト」 本節で扱うのは“戴胜ヤツガシラ”との混同例である。「ヤツガシラ」とはブッ ポウソウ目の鳥で、カワセミは近縁種らしい。方言語形に幾つかのタイプがあ る。本節ではそのうちの“屎嘣嘣”、“屎咕咕”など“屎”で始まるものをとり 上げる。なお、以下「ヤツガシラ」語形に限らず、議論の対象となる「キツツ キ」等、他の語彙に現れるものも含め、ku ku のような音形を含む語形(他に 例えば“姑姑”、“鸪鸪”などの表記もある)を類型として漢字表記するに当 り、特に区別する必要の無い場合は、“咕咕”という表記で一括する。 “啄木鸟” 四川西昌 :屎嘣嘣 ʂʅ poŋ poŋ 啄木鸟 普通 3713 ←→“戴胜” cf. 云南永胜 :屎绷绷 sɿ42 poŋ434 poŋ434 戴胜,鸟名 省志482、县志 695 cf. 云南吴贡 :屎哱哱       戴胜 462         山西平鲁 :树锛锛 su52 pəɯ0 pəɯ0   啄木鸟 研究152 山西阳高 :树奔奔         啄木鸟 629 内蒙准格尔 :树嘣嘣        啄木鸟 552 河南长垣 :树梆梆         啄木鸟 572 山西天镇 :树锛锛ʂu32 pɤɣ31 pɤɣ31-0   啄木鸟 37 河北涿鹿 :树锛      啄木鸟 595 山西偏关 :树锛子         啄木鸟 669 “戴胜1” 云南巧家 :屎姑姑 sɿ53 ku44 ku44   戴胜 94 ←“鸤鸠鸠”? 云南玉溪 :屎姑姑 ʃʅ51 ʔu44 ʔu44   戴胜 126 ←“鸤鸠鸠”? 云南安宁 :屎咕咕 ʂʅ53 ku44 ku44   戴胜 90 ←“鸤鸠鸠”? 云南保山 :屎鸪鸪ʂʅ53 ku42 ku42   戴胜鸟 110 ←“鸤鸠鸠”? cf. 云南大关 :屎姑姑 sɿ53 ku55 ku55  布谷鸟 150

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四川西昌方言データ所拠文献の「普通」とは《普通话基础方言基本词汇集》 のこと。「キツツキ」を現わす同方言の“屎嘣嘣”は類例としては“树锛锛” (ここでは暫定的に韻母の如何に拘わらず、この漢字表記で第二、三音節が p-p- となっているタイプを一括する)があるが、第一音節が“屎”となってい る例は他に無い。一方、“戴胜”も“屎绷绷”という語形の報告例は管見の及 ぶ限りでは、雲南永勝の1 例のみ。類例の“屎哱哱”も同じ雲南の呉貢の 1 例 のみ。“屎咕咕”という語形は雲南に複数報告例があるから、「キツツキ」を指 す“树锛锛”と「ヤツガシラ」を指す“屎咕咕”が混交を起こして、中間形態 の“屎哱哱ヤツガシラ”が生まれたのであろう。そして更には指示対象の混同も 生じて、方言によっては“屎嘣嘣”で「キツツキ」を、またほとんど同様の語 形である“屎绷绷”で「ヤツガシラ」を指すことになったのであろう。 “屎嘣嘣キツツキ”も“屎绷绷ヤツガシラ”も孤例である。もちろん劣勢方言に 個別に起こった特殊な変化であれば、特殊なのであるから孤例であっても不思 議ではないが、やはりインフォーマント若しくは調査者の単なる個人的な間違 いである可能性も現時点では排除できない。とは言え、以下の記述は「カッコ ウ」と「ヤツガシラ」の混同であるが、このような混同は昔からあったよう で、「キツツキ」と「ヤツガシラ」の間の混同もまた昔からあっても不思議で はない。 戴鳻、戴緘、鶝鴀、澤虞、頂鶝、尸鳩,戴勝也。  [王念孫]……按《爾雅》“鳲鳩”即“布穀”,非“戴勝”也。…… 《廣雅疏證》pp.714-715《尔雅 广雅 释名 方言 清疏四种合刊》上海古籍出 版社,1989.8 cf. 鳲 鳲鳩、鴶脹,今布穀也。…《廣韻》脂韻“尸:式脂切”小韻中 この記述に見える“尸鳩,戴胜也”、“鳲鳩,即“布穀”の“尸”、“鳲”と“屎 姑姑/ 屎咕咕 / 屎鸪鸪”の“屎”、“姑 / 咕 / 鸪”と“鸠”は何らかのつながり があるものであろうか。“姑/ 咕 / 鸪”は“鸠”と中古で同じ見母字であった とはいえ、韻母の形が違いすぎるし、“鸤鸠鸠”のような重ね型の語形の報告 例はおろか、現代方言に“鸤鸠”という語形も見当たらない。“屎姑(姑)/ 屎 咕(咕)/ 屎鸪(鸪)”と“尸鳩 / 鳲鳩”では音声的にかなり隔たりがあるようで あるが、関係する余地もあるので、とりあえずは検討してみるべきだろう。以 下は“鸠”が拗介音を失ったと解釈できそうな例である。

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“鸽子” 山东掖县 :鹁鸽pu55 kɑ0  鸽子 61 山东宁津 :鹁鸽pə53-44 kou0  鸽子 75 山东利津 :鹁鸽pə53-55 kou0  鸽子 97 山东利津 :鹁鸽 pə・kou  鸽子 普通 3712 山东临沂兰山区 :鹁鸽pu53-55 kəu0  鸽子 临沂207 山东临沂河东区 :鹁鸽pu53-55 kou0  鸽子(=临沭)  临沂207 山东烟台 :鹁鸽儿pu・kour  鸽子 普通 3712 河北南皮 :鹁鸪po54-35 kou20  鸽子 917 河北冀县 :补高pu55 kau0  鸽子 719 河北武邑 :补告pu55-213 kau0  鸽子 829 河北安平 :布鸽pu15 kau51  鸽子 570 河南原阳 :鸽鸽kɤ・kao  鸽子 普通 3712 Z 变 ? cf. 山西临汾 :楼鸽 ləu42kɑu0  鸽子 72 不完整的叠韵化(韵尾一致)? “斑鸠” 安徽安庆 :鹁勾pokeu  斑鸠 普通 3711      斑鸠pan tɕieu  斑鸠 普通 3711 cf. 鸽子 ko・tsɿ  鸽子 普通 3712 安徽安庆 :鹁鸠ph u55 kieur31  斑鸠 市志1730 安徽安庆 :鹁钩儿puʔ kiər  斑鸠1 省志158 “鸽子”挙例末尾の臨汾の例以外の“鸽子”は、その語源が“鹁鸽”であると するならば、第二音節がこのような音形へと変化する音声環境にはない。もし 特 殊 な 変 化 でkau,kəu の よ う な 音 形 が 成 立 し た の で あ れ ば、 そ れ は syntagmatic な変化ではなく、paradigmatic な変化によるものだろう。その要因 について今のところ明らかにはし得ない。同様にparadigmatic な変化によるも のであるとしつつも、“鹁鸽”ではなく、“鹁鸠”が語源であって、kau,kəu のような音声形式は“鸠”*kɪəu→kəu のように中古音から拗介音を脱落させて 成立したと見る余地もある。末尾の“斑鸠”の安徽安慶の例は注釈が必要であ る。《普通话寄出方言基本词汇集》pp.1751-1768 の「同音字表」では“勾沟钩” keu(阴平),“揪鸠阄灸纠”tɕieu(阴平)となっており(pp.1761-1762)、市志で も音韻体系の説明部分で“周口抽”の韻母はeu、“刘又九”は ieu となってい るのだが、『市志』の以下の語彙を参照されたい。 1 kiər は原文では kiərʔ とあるが、誤りと見做して訂正した。

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安徽安庆 :八鸠儿pa55 kieur31  八哥 市志1730 cf. 安徽安庆 :八钩子 pa55 kəu31 tsɿ0  八哥 省志158 安徽安庆 :土狗子theu213-35 kieu213 tsɿ0  蝼蛄 市志1730 安徽安庆 :牙狗ia35 kieu213  公狗 市志1730 安徽安庆 :草狗tsh au213-35 kieu213  母狗 市志1730 eu,ieu という二つの異なる韻母が存在するが、中古の開口由来のもののうち、 どうやら牙喉音声母の場合に限り(現在確認できるのはk- の例のみ)、ieu と 結びつくことがあるようである。声調を除外して考えると、『市志』に見える “鸠狗kieu”と『省志』の“钩 kəu”は同一音声を指しているかのようである が、『省志』の“鹁钩儿puʔ kiər 斑鸠”、“八钩子pa55 kəu31 tsɿ0八哥”の音声表記を

見ると、keu とは別に kieu という字音が存在するようにも思える。後者であれkieu は音韻体系の説明で指摘漏れということになる。また、これらの文献 の記述に一貫性が欠けていて、口蓋化の度合いが強く、例えばkeu にも kieu にも聞こえるような音価になっているものが、音韻体系の説明では前者に表記 し、語彙集部分では後者に表記するというように音声表記に矛盾が見られると いうことであろうか? そうであれば厳密にはceu ~ cieu のような表記をす べきところ、keu、kieu のような表記になっているのは音韻論的な配慮による ものと考えるべきだろう。安慶の上掲例を統一的に解釈するならば、kieu と tɕieu は同音ではない。なお不明な点はあるが、ここで『普通』“鹁勾斑鸠”の “勾”は“鸠”が本字である可能性があり、異なる方言層に属するkeu が、特 定の常用語彙の中で保存されて、通常のtɕieu と並存状況にあると考えること ができる。但しそれがkieu のような字音であるならば、拗介音を失った字音 とは見做し難い。 興味深いことに山東では報告例無く、河北でもほとんど例が見当たらないの ではあるが、尤韻及びこれに相配する去声宥韻所属の常用字には以下のような 反映がある。 “休” 河南获嘉 :休~走 xou33(阴平)       研究91 河南洛宁 :休 谓之齁     波多野9/41 甘肃陇西 :把“不要怎样”说“垕(/ hou /)怎样”;…。“垕”即古音“休”的 音转  710 ←休 (阴平调值为 21  704)

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“牛” 河南获嘉 :牛~肉 ou31(阳平)    研究91 河南洛阳 :“牛”ɣɤu42(阳平);niu42(阳平) 志43         河南洛宁 :屎旁牛sɿ21 phɑŋ53 ou53  屎壳郎  601 山西运城 :屎胖牛sɿ53 phɑŋ0 ŋou13  蜣螂  志39 山西临猗 :屎盘牛sɿ53 phӕ˜20 ŋəu20  屎壳螂  638 山西吉县 :粪传牛fei33 phӕ˜13 ŋou13  屎壳郎  志37         山西平陆 :官牛kuan31ŋəu13  蜗牛 131 山西壶关树掌 :□牛mɑŋ31 ou13  蜗牛 96  ←“ 牛” “就” 河南获嘉 :就~是他 tsou13(去)      研究90 河南洛阳 :就~是tsɤu31(sɿ0),在动词前念 tɤu31  志72 河北获鹿 :就是tou31~tsiou31 ʂʅ0    184 これらを見ると、kau に該当する例は未見であるが、「ハト」、「キジバト」 語形の構成要素の“鸠”がkəu のように現れてもおかしくはないことが分か る。 しかし「キジバト」には“斑鸠”と“鸠”の現れる語形が見られるが、「ハ ト」の方言語形は漢字表記すれば、“鹁鸽”、“鹁鸪”、“鸽子”といった語形が ほとんどを占め、“鹁鸠”のような、漢字表記で“鸠”が現れる語形の報告例 は無い2。音声面でもpə/pu tɕiəu のような当て字表記による“鸠”相当音節が拗 介音を持つ形式で現れるといった例もまた無い。そして“斑鸠キジバト”の“鸠” が拗介音の無い音形になっている例もまた北方方言では全く見られない。陝 西、甘粛に以下のような例が見られるが、 “斑鸠” 陕西凤县 :斑鸪31 ku24  斑鸠 589 山西大同 :斑鸽子pӕ kaʔ tsəʔ  斑鸠 普通 3711 内蒙古临河 :斑鸽子pã kεʔ • tsɛ  斑鸠 普通 3711 2 新語と思われる「イエバト」には“家鸠儿”のように“鸠”の現れる例があるが、それも 小論筆者の知る限りでは洛陽の1 例のみ。今議論の対象としない。「ハト」に“鸠”の現れる 例が無いのに対し、逆に「キジバト」に“姑(姑)/咕(咕)/鸪(鸪)”が現れる例は数多い。「ハ ト」と「キジバト」の混同は各地で見られるが、それについては後述。

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これは第二音節の本字が“鸠”というのではなく、“斑鸠キジバト”と“鹁鸪”、 “鹁鸽”が混交を起したと見做すべきだろう。 結局のところ、上掲の“鸽子”諸例の第二音節が何故kau,kəu のようになっ ているのか、現時点では十分に説得力のある解釈を提示し得ない。安徽安慶の “斑鸠キジバト”語形の“鹁勾”の“勾”は“鸠”が本字らしいが、拗介音の有 無についてははっきりしないところがあるので、さて置く。kau をも含めて全 てを統一的に解釈するということができないので、“鸽子”諸例の語形につい ては、一先ず“鸠”が語源である可能性は否定しておきたい。他方、“尸”、 “鳲”は中古同音、これらと“屎”は四声相配(平声―上声)の関係にある。 こちらについては“鳲”が本字で、“尸”はその通用字、“屎”は後に民間語源 で再解釈の結果当てられた字と考えておきたい。「ヤツガシラ」語形を載せる 文献の多くは詳しい語釈を付していないので、どういう鳥かよく分からないの だが、後に挙げる山西万栄の「ヤツガシラ」と思われる語形の語釈に“排泄臭 气”とある。「臭気を放つ」という特性を持っていることから“屎”という字 が用いられたものかも知れないが、逆に先に“尸/ 鳲鸠(鸠)”若しくは“尸 / 鳲咕咕”が“屎咕咕”のように解釈されたことから、後に「臭気を放つ」とい うような辻褄合わせの語釈が附されることになったという可能性もある。 以下は“屎咕咕ヤツガシラ”に似た“斑鸠キジバト”語形及び“布谷鸟”である。 “斑鸠” 河南西峡 :水咕咕  斑鸠 597 山西阳城 :水咕咕ʂuei312 ku53 ku53  斑鸠 425 山西阳城 :水咕咕ʂɛ21 ku11 ku11  斑鸠 研究136 陕西子长 :水鸪鸪ʂui213 ku42 ku0  斑鸠 765 陕西子洲 :水故故ʂui213-21 ku52 ku0  斑鸠 457 陕西绥德 :水故故ʂui213-21 ku51 ku0  斑鸠(=子洲、米脂、佳县、榆林、靖边、 子长)陕北140 陕西甘泉 :水故故ʂui51 ku44 ku0  斑鸠  (=安塞、志丹)陕北140 陕西清涧 :水故故ʂui52 ku44 ku0  斑鸠 陕北140 陕西西安 :水故故ʂui21 ku21 ku53  斑鸠 陕北140 河南内乡 :水姑姑/ shei45 gu0 gu0 /  鸽子 河北高邑 :十蛄嘟    鹁鸪  655 “布谷鸟” 山东崂山 :水古堵ʂue55-434ku0 tu213  布谷鸟 870

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山东掖县 :水谷嘟suei55 ku213 tu0  布谷鸟 研究 45/66 山东莱州 :水谷嘟suei55 ku213 tu55  布谷鸟 120 山东青岛 :水谷堵ʂue55-44 ku0 tu213  布谷鸟 SFC90 第二、三音節部分は恐らくその鳴き声に由来するものであろう。但し第一音 節が何故“水”であるのか今妥当な解釈が思いつかない。或いは以下のような 「キジバト」語形に見られる“山”が関わっているのかも知れない。 “斑鸠”

河北保定 :山咕咕ʂan ku • ku  斑鸠 普通 3711

宁夏中卫 :山斑鸠ʂãi44 pãi44 tɕiou0   106 =“咕咕登鹁鸠”?

云南潞西 :山鸽子sã44 ko31 tsɿ53  斑鸠 省志 482 云南保山 :山鸽子ʂᴀ˜42 kə31 tsɿ53  斑鸠 109 福建建瓯 :山鹁鸽suiŋ54 pa21 kɔ24  斑鸠 词典 176 山东曲阜 :山谷谷sɑ˜213-13 ku213-211 tu0  布谷鸟 63 十分な説得力は持たないが、とりあえずは、“山鹁鸪キジバト”、“屎咕咕ヤツガシ ラ”の混交、それと“山”―“水”の連想が働いて、“水咕咕/ 水姑姑 / 水鸪鸪キ ジバト”のような語形が成立したものと考えておく。恐らくこの語形は「キツ ツキ」語形とは直接関係することはないと考えて良かろう。 結局のところ、冒頭でも触れたが、四川西昌の“屎嘣嘣キツツキ”は“树锛锛 キツツキ”と“屎咕咕ヤツガシラ”の混交によって生まれたもので、同様に「キツ ツキ」と「ヤツガシラ」のそれぞれの語形の構成要素を半分づつ持つところか ら、雲南永勝の方は同じ語形で「ヤツガシラ」を指すようになったものだろう。 なおp- で現われる音節の語源はよく分からない。多く重ね型で現われるの で、木をつつく音を表す擬声語に由来するものと考えるべきかも知れない。と りあえずは“锛树槌子”の“锛”((手斧で)穴をあける)と同じと看做して (cf. グロータース 岩田訳 p.152)、§5.1.“锛啄木(子)”という語形で採った のと同様の措置を採り、以下、この字を語構成のタイプを漢字で表す場合にも 用いることにしたい。つまり、「キツツキ」に現われる“~pa pa”、“~ pau pau”、“~ paŋ paŋ”、“~ pəŋ pəŋ”などの“p- p-”の重ね型音節を漢字表記で 一括して示す場合には“~锛锛”という表記を以て代表させる。この措置は、 来源が異なることが明らかになれば、修正を迫られる暫定的かつ便宜的なもの である。

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§6.2. “啄木鸟”←→“戴胜 2”?“布谷鸟”?“椿象” ? 以下は「キツツキ」が「ヤツガシラ」を意味する“臭咕咕”若しくは「カッ コウ/ ホトトギス」を意味する“春咕咕”と混同されている例である。なお 「カッコウ」は“布谷(鸟)”、“郭公”、「ホトトギス」は“杜鹃”“子规”“杜 宇”などの名称があるが、前者を“大杜鹃”、後者を“小杜鹃”と呼んで区別 する例があることからも分かるように、方言では両者の区別は判然としないこ とが多い。以下では「カッコウ」を以て両者纏めて扱う。 “啄木鸟”

山西新绛 :臭关关 tʂhəu31-51 kuã53-11 kuã53-31  啄木鸟3 35 cf. 陕西宁强 :抓木鹳 tsua55 mu55 kuan02  啄木鸟 608

cf. 陕西凤县 :抓木鹳 tʂua214-31 mu31 kuan02  啄木鸟(瓦房坝) 594

“戴胜2”

山西万荣 :臭鹳鹳 tʂhəu33 kuӕ˜0 kuӕ˜0   一种鸟,比麻雀大,头顶有一撮毛, 毛色黑白相间,叫声“咕咕哧”,排泄 臭气 词典250

山西河津 :臭鹳鹳 tʂhəu44 kuӕ˜0 kuӕ˜0   研究 172  (語釈無し。戴胜 ?) 山东博兴 :臭咕咕 tʃho21 ku53-55 ku0  戴胜(陈户镇) 黄河三角洲 168 吉林通化二道江区 :臭咕咕( / gúgu / ) 戴胜 620 黑龙江哈尔滨 :臭咕鸪tʂhou53 ku24 ku0  戴胜 词典 250 河北滦南 :臭咕咕tʂhəu55-53 ku33 ku0  戴胜 819 河北深泽 :臭咕咕tʂhəu31 ku33 ku0      571 宁夏银川 :臭咕咕tʂhəu13 ku44 ku0   戴胜,一种夏候鸟。嘴细长而弧曲,舌 短呈三角形。头顶具有扇形棕色冠羽,体 羽斑驳,翅宽圆,尾方形,翅和尾均具黄 斑。栖息活动于村庄、田野,性不畏人, 食昆虫 词典206 山西和顺 :臭胡胡tʂhəu41 xu22 xu22-21  鸟名,亦名戴胜  61 ?山西平鲁 :臭叭姑tshəu52 pɑ0 ku0  研究 152  “戴胜”? “布谷鸟” 河北张北 :臭八姑     大杜鹃 659 河北尚义 :臭鹁鸪tshəu24 paʔ21 ku31   布谷鸟 866 内蒙锡林浩特 :臭卜姑   布谷鸟 (太仆寺旗) 1841 3 tʂhəu31-51,原文はtʂəu31-51と誤る。

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新疆乌鲁木齐 :臭包包tʂhɤu44 pɔ21 pɔ24  = 布谷鸟?4 回民98 “斑鸠”

甘肃敦煌 :臭咕咕tʂhoukᴠˌ • kᴠˌ  斑鸠 普通 3711 “椿象カメムシ”

山西大宁 :椿姑姑tɕhy31 ku31 ku21  椿树上的虫 研究 166 山东定陶 :椿娘娘tʂhue˜213 niɑŋ52 niɑŋ0  椿象 148

山东定陶 :臭娘娘tʂhou412-41 niɑŋ52 niɑŋ0  臭大姐 147 河北三河 :臭姑娘     椿象 673 云南巧家 :臭姑娘tshəu213 ku44 niãŋ31-44  椿象 94 山西临汾地区 :臭蛄蝽tʂhou42 ku33 pfhən0  蝽象 临汾方言 182 冒頭、山西万栄、河津の“臭鹳鹳”(“鹳”は普通話では「コウノトリ」)の二 例は直ちには“戴胜”かどうか断定できないが、前者の語釈は後の寧夏銀川の 「ヤツガシラ」の語釈に似ており、万栄、河津いずれの資料でも他に「ヤツガ シラ」の語彙を挙げている訳ではない。一先ずこの2 地点の“臭鹳鹳”もまた 「ヤツガシラ」語形の一つと考えて良かろう。“鹳”は現代においては「コウノ トリ」を意味する。「キツツキ」や「ヤツガシラ」のような小型の鳥にこの字 が用いられるのは些か不自然である。但し『広韻』では去声換韻「貫」小韻 (古玩切)所属で、「雚雚雀鳥,鸛上同」とあるから、本来はもっと小さな鳥を言 う場合に用いられたものかも知れない。成立がかなり古い時代にまで遡るもの なら、この字が用いられていても、特に異とするには及ばない。ところがその 声調に着目すると、山西万栄、河津の「ヤツガシラ」意味すると推測される語 形の“鹳鹳”部分はいずれも軽声になっている。そして類似した山西新絳の 「キツツキ」語形では“关关”と陰平で現れている。こういった点を踏まえる と、新絳の“臭关关キツツキ”は“啄木官キツツキ”(“啄树官”、“鹐木官”のよう な形式は報告例皆無)と“臭咕咕ヤツガシラ”の混交によって成立した可能性も ある。つまり“啄木官キツツキ”+“臭咕咕ヤツガシラ”→“臭关关キツツキ(/ ヤツガシ ラ?)”→“臭鹳鹳キツツキ/ ヤツガシラ”といったような混交である。“关关”→“鹳鹳” 4 “包包鸱”の下に“斑鸠”と共に 1 字下げて並べており、いずれも語釈は無い。声調調値は 異なるが、“包包鸱”は《词典》p.185 に見える“包包吃 一种鸟,羽毛大部为棕色,有羽冠, 嘴细长而稍弯。吃昆虫,对农业有益”とある語と同じものであろう(IPA 省略)。そして新疆 焉耆方言の“抱抱嗤 戴胜鸟”《县志》838 ともまた同じであろう。つまり“包包鸱”は「ヤ ツガシラ」と見做して良さそうなのであるが、他方、哈密方言では“包包鸱 布谷鸟”とあ る(p.137)。指示対象に混乱があるようである。“斑鸠”で「ヤツガシラ」を指すとも思えな いので、“包包鸱”、“臭包包”、“斑鸠”は同義語ではなく、恐らくそれぞれ「ヤツガシラ」、 「カッコウ」、「キジバト」を指すものであり、後二語を一字下げて示しているのは誤りとすべ きだろう。《乌鲁木齐方言词典》には“臭包包”は見えない。

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は鳥の名称ということで、類音の鳥名を意味する“鹳”が当て字として用いら れたということである。このような当て字においては声調の一致は余り重視さ れず、最終的にはその語彙に現れる音声形式の方が当て字の字音に一致すると いうことについては、本稿 (1) の§0. 前言で既に指摘した。 以下の“官”“倌”“鹳”を含む「キツツキ」語形を参照されたい。 “啄木鸟” 河南信阳 :啄木官tsuo24 mu24 kuan24  啄木鸟 省志195 陕西岚皋 :啄木官tsa31 muo31 kuan45  啄木鸟 529 四川长寿 :啄木官儿tsua mu kuər  啄木鸟 1070 湖北五峰 :扎木官tsua213 mu213 kuan55  啄木鸟 612 陕西宁强 :抓木鹳tsua55 mu55 kuan02  啄木鸟 608 陕西凤县 :抓木鹳tʂua214-31 mu31 kuan02  啄木鸟(瓦房坝) 594 陕西宁陕 :啄木官tʂuᴀ21 mu21 kuan34  啄木鸟 715 陕西石泉 :扎(/ zhuǎ /)木倌  啄木鸟 686 本節で取り上げている“臭鹳鹳”、“臭关关”のような第二、三音節部分が k- 声母でかつ -n 韻尾を持つ重ね型を構成要素に持つ例は筆者の知る限りでは、 「キツツキ」、「ヤツガシラ」双方を通じて、上掲の山西新絳、万栄、河津の3 例しか見出せない。或いは“臭关关”つまり第二、三音節部分がk- 声母 -n 韻 尾にして平声となっている語形で、「ヤツガシラ」を指す語形の例は、他にも どこかで存在しているかもしれない。今のところ、「キツツキ」を“树咕咕”、 “臭咕咕”と呼ぶ例は見つかっていない。敦煌の“臭咕咕キジバト”はもしイン フォーマント若しくは調査者の誤解でなければ、「ヤツガシラ」語形を「キジ バト」語形に転用した、指示対象のズレの例と見做すべきものだろう。 “臭鹳鹳”、“臭关关”に類似した語形を捜しても、“臭咕(子/ 儿)”、“臭官(子 / 儿)”といった形式が見当たらないから、これらの形式に、西北、西南方言 特有の末尾音節を重ねることによる「指小形式」が適応されたとは考え難い。 つまり“臭咕(子/ 儿)”→“臭咕咕”、“臭官(子 / 儿)”→“臭官官”といったよう な形成過程は想定できない。しかしながら“咕咕”の部分は擬声語由来である にせよ、これの変異体と思しき“鹳鹳”、“关关”はもはや擬声語とは見做し難 い。“臭鹳鹳”、“臭关关”のような語形はいずれも西北方言の例である。擬声 語とは看做し難いこの重畳形式は、“臭咕(子/ 儿)”、“臭官(子 / 儿)”といっ た語形は存在しないが、西北、西南特有の「指小形式」と同一視されることで 存在が許されたものであろう。

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“春咕咕”と“臭咕咕”について、それが何を指すか見てみると、“春咕咕” は「カッコウ」を指す語としてのみ用いられ、「ヤツガシラ」を指すのに用い られることはなく、「ヤツガシラ」には専ら“臭咕咕”が用いられている。そ して「ヤツガシラ」のこれ以外の“臭~”型語形は上掲例に見るごとく、“臭 鹳鹳”、“臭胡胡”しかなく、従って“臭鹁鸪”という語形も無い(山西平魯方 言の語釈を欠く例が該当する可能性があるが、定かではないので除外してい る)。“臭胡胡”は“臭咕咕”が何らかの原因で変化して成立したものだろう。 その原因は不明。これに対し、「カッコウ」には専ら“春咕咕”が用いられ、 “臭咕咕”と言う語形は見られない。“春鹁鸪”という語形も報告例が無い。た だ「カッコウ」には、管見の及ぶ範囲内では上に示した如く、“臭~”という 語形が3 例見られた(河北尚義、張北、内蒙古シリンホト)。但し後続する成 分は“姑姑/ 咕咕”ではなく、“鹁鸪”に由来するもののようである。つまり この3 例の「カッコウ」はいずれも“臭鹁鸪”由来と解釈できる。 この状況から見ると、「ヤツガシラ」にはもともと“春咕咕”という方言語 形があって、これから“臭咕咕”に変化した(tʂh/tshuən ku ku →* tʂh/tshuəu ku ku→tʂh/tshəu ku ku)と見ることはできない。先の“臭~”の 3 例は指示対象の

混同がまずあって、“春咕咕”が「カッコウ」を示すようになったということ がその成立の前提にあると思われるが、既に指摘したように「カッコウ」に “臭咕咕”と言う語形が見られないということと矛盾する。或いは「ヤツガシ ラ」を示す“臭咕咕”が“鹁鸪ハト”と混交を生じて、“臭鹁鸪ヤツガシラ”と なった後で、指示対象の混乱が起こって、この語が「ヤツガシラ」でも「ハ ト」でもなく、類音の“春咕咕”であった「カッコウ」との間に混乱を来た し、「カッコウ」を指すようになったということであろうか。 ここで何故“臭”が附されるのかについても、少し検討を加えたい。先に取 り上げた“屎咕咕/ 姑姑”、“屎嘣嘣”のような形式の“屎”がそもそも「ヤツ ガシラ」の特性(臭い糞をする?)に由来するものであるならば、また“臭” で形容されることがあってもおかしくはない。山西万栄方言の“臭鹳鹳”の語 釈に“排泄臭气”とあるのは、正にその特性を記したものであって、名前に “臭”が付く所以を明確に表しているということかも知れないが、既に指摘し たように、逆に“臭”が何らかの(特殊な音変化を蒙った)字に対する当て字 であって、その当て字の字面に即した民間語源の語釈を文字化した結果である とも考えられる。ただ、遺憾ながらそれでは本字は何かと問われても、今のと ころそれらしき候補が見当たらない。 以下、上掲例の末尾に挙げた“椿象カメムシ”語形が関わっている可能性につ いて検討してみる。

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“布谷鸟” 山东兖州 :春谷谷tshuə˜213-13 ku312-31 ku0  布谷鸟 848 山东历城 :春谷谷    布谷鸟 449 山东济阳 :春谷儿谷儿  布谷鸟 587 山东曲阜 :春谷谷tshuə˜213-13 ku213-211 ku0  布谷鸟 63 “斑鸠” 甘肃敦煌 :臭咕咕houkᴠˌ• kᴠˌ  斑鸠 普通 3711 山东苍山 :春咕咕 pfhe˜213 ku53-55 ku0  斑鸠 173 河北成安 :春咕咕       斑鸠 777 “咕咕”は恐らくそもそもはその鳴き声を示す擬声語である。“谷谷”は 「カッコウ」が田植え時にやって来て田植えをせかすように鳴くと考えられて いるところから、穀物の“谷”と関連づけられた結果である。“春咕咕/ 谷谷” は本来「カッコウ」を指すと思われるが、「キジバト」もまたは恐らくその鳴 き声から“咕咕/ 姑姑”を構成要素に持つ語形が多く、“春咕咕 / 谷谷”は「キ ジバト」と結び付けられ易い状況にあったのだろう。 “斑鸠” 山东新泰 :咕咕 ku42 ku42  斑鸠 志110 河南濮阳 :咕咕咕/ gūgūgū /  斑鸠 民俗 242

四川长寿 :谷姑姑ku ku ku 1. 斑鸠 2. 喻说话抓不住要领的人 1070

そこで山東蒼山、河北成安に見られるように、“春咕咕/ 谷谷”が「キジバト」 の名称にも転用されることになったと思われる。“春咕咕/ 谷谷”が本来「キ ジバト」の名称で、それが「カッコウ」に転用されたと、逆の見方もあるが、 小論筆者の知る限り、“春咕咕/ 谷谷”で「キジバト」を指すのは極めて稀で、 上の山東蒼山、河北成安の2 例しか見出していない。「キジバト」の意味の “臭咕咕/ 谷谷”も敦煌の 1 例のみ。 「カメムシ」は多くの方言(特に北方方言)では“臭大姐”という語形で現 れることが多いのだが、先に示したように“椿姑姑”“臭姑娘”のような語形 が見られるから、“春咕咕/ 谷谷カッコウ”と“臭姑姑カメムシ”(←“椿姑姑”)の 混交が起こったと考える余地がある。但し仔細に検討してみると、“臭姑姑カメ ムシ”の実例は未見。“椿姑姑”も1 例しか見出していないので、“椿姑姑”→ “臭姑姑”のような変化は想定し難く、なお説得力には乏しい。“臭咕咕”は多

(14)

く「ヤツガシラ」を意味し、「ヤツガシラ」語形には“屎咕咕”、“臭咕咕”は あるが、“春咕咕”、“椿咕咕”のような例は存在しない。また「カメムシ」語 形には“臭咕咕”の報告例が見当たらないから、「カメムシ」語形との混交で 「ヤツガシラ」が“臭咕咕”となったとは考え難い。とりあえずは“臭咕咕” は本来「ヤツガシラ」を意味する語で、敦煌の例はそれが「キジバト」に転用 されたものと見るべきだろう。結局、「ヤツガシラ」語形に現れる“臭”につ いては、やはりとりあえずのところ、その特性を示すものとしておく。本字が 別にあるという見方をとる十分な論拠は見出せない。 以下は「ヤツガシラ」と「ハト」の合体と思しき例である。 “啄木鸟” 陕西延长 :丑卜古 tʂhəu52 pə35 ku0  啄木鸟 598(= 陕北 140) “布谷鸟” 内蒙锡林浩特 :臭卜姑  布谷鸟(太仆寺旗) 1841 内蒙锡林浩特 :臭卜姑  布谷鸟(太仆寺旗) 1841 河北尚义 :臭鹁鸪 tʂhəu24 paʔ21 ku31  布谷鸟 866 河北张北 :臭八姑    大杜鹃 659 河北尚义 :臭鹁鸪 tʂhəu24 paʔ21 ku31  布谷鸟 866 河北张北 :臭八姑    大杜鹃 659 第一音節の声調の違いが気になるところではあるが、当て字の使用では声調 の一致は余り重要ではない。恐らく“臭咕咕ヤツガシラ”と“鹁鸪ハト”の混交 語形“臭鹁鸪”が「カッコウ」を指すようになり、陝西延長ではそれが「キツ ツキ」を指すことになったということだろう。河北方言の例はいずれも第二、 三音節がpaʔ ku のようになっているから、或いは“八哥”も関わっているか も知れない。関係ありそうな音形の“八哥”の例を以下に挙げる。 “八哥” 山东博山 :八哥 pɑ214-22 kuə0-33  研究 124 山东烟台 :八哥 pɑ214-35 kuə31  85 山西运城 :八哥 pa31 kuo0   38 山西永济 :八哥儿 pa21 kuor0   36、县志 485 山西山阴 :八哥儿 paʔ4 kʊər313   32 山西朔州朔城 :八哥儿 pᴀʔ35 kuər312   157

(15)

 以下の例は“鹐锛锛”と“鹁鸪”の混交によって生じた語形であろう。 “啄木鸟”

河北涉县 :鵮巴果hiӕ˜31-33 pa0 kuo53  啄木鸟 7

山西长治 :鵮剥骨tɕhiaŋ paʔ kuəʔ  啄木鸟 普通 3713

山西孝义 :鵮剥蛄 tɕhiaŋ11 paʔ2-53 ku11  啄木鸟 86 cf. 河北井陉 :鵮拔木        啄木鸟 640 山西介休 :□树脖姑hiε˜13-11 sʮ45 pʌʔ423-53 ku13-0  啄木鸟 42 山西平遥 :嵌树剥姑hiɑŋ13-31 sʮ35 pʌʔ423-54 ku13-31  啄木鸟 民俗 71 山西沁源 :鵮树八姑子      啄木鸟 4725 山西灵石 :鵮树鹁鸪鸪tɕhiɑ˜214 su53 paʔ33 ku214 ku214  啄木鸟 605 山西沁县 :秋树□钩钩tɕhiəu213-21 su55 pəʔ4 kəu213-42 kəu213  啄木鸟 27

        河南沁阳 :鵮把把tɕhian33 pa53 pa0  啄木鸟 省志 195 山西晋城 :千巴巴tɕhiɛ33 pɑ33 pɑ33  啄木鸟 38 山西垣曲 :钳巴巴h31 pa0 pa0  啄木鸟 县志 623 山西乡宁 :纤叭叭tɕhiӕ˜53 pa20 pa20  啄木鸟 674 山西吉县 :鵮叭叭tɕhiӕ˜423-42 pa423-42 pa0  啄木鸟 37 山西新绛 :□巴巴tɕhiã53-55 pa53-11 pa53-31  啄木鸟 35 山西浮山 :田巴巴thiãɪ˜13-31 pa33 pa0  啄木鸟 202

河南灵宝 :鵮梆梆tɕhian52 paŋ52 paŋ0  啄木鸟 省志 195 陕西华阴 :鵮梆梆tɕhiã31-42 paŋ31 paŋ02  啄木鸟 755

山西平陆 : 千邦邦 tɕhian31 paŋ33 paŋ33  啄木鸟 研究 131;“邦”paŋ31(阴平)986 山西平陆: 千邦邦 tɕhian31 paŋ33 paŋ0  啄木鸟 方言志 40;“邦”paŋ31(阴平)317         陕西延安 :鵮树锛锛tɕhiӕ˜314-31 ʂu44 pəŋ314-31 pəŋ314-43  啄木鸟 陕西词汇285 陕西子洲 :鵮树锛锛tɕhie213-21 ʂu52 pəŋ33 pəŋ0  啄木鸟 457 陕西绥德 :鵮树锛锛tɕhie213 ʂu52 pəŋ213 pəŋ0  啄木鸟 研究58 陕西绥德 :鵮树奔奔tɕhie213-21 ʂu51 pəŋ213-24 pəŋ0  啄木鸟 陕北140 山西中阳 :鵮树奔奔tɕhiɛ24 ʂu53 pəŋ24 pəŋ0  啄木鸟72 山西石楼 :鵮树钵钵 tɕhiɛŋ413 su52 pəŋ44 pəŋ44  啄木鸟 4698 5 “鵮”原文では“槫”に誤る。 6 paŋ3333 は単字音去声調値。 7 paŋ3333 は単字音去声調値。 8 tɕhiɛŋ413、原文h無し。今補う。

(16)

山西永和 :呛树锛锛 tɕhiɑ˜312 ʂu53 pəŋ33 pəŋ0  一种鸟(打石腰) 研究1359 “鸽子”

山西永济 :蒲鸽 phu24 kuo0  鸽子 36 puə kə→puə kuə→pu kuə 陕西商县 :鹁鸽 phu21 kuo53   64 ←→ 布谷 pu55ku21    64 冒頭の渉県、長治、孝義の例は恐らく“鵮锛锛”語形の内の“鵮把把/ 巴巴 / 叭叭”のような漢字表記のもの、音声表記すれば、tɕhian pa pa のような「キ ツツキ」と“鹁鸪ハト”の混交によって生じたと考えられる。或いは“鹁鸪ハ ト”ではなく“鹁鸽ハト”との混交であるならば、tɕhian p(u)ə kə といった形式 が期待されるところであるが、hian pa kuə と第二、三音節の韻母が、「ハト」 とは一致していないから、これらの例もまた先の例同様、“八哥”も関わって 形成された可能性がある。介休、平遥、沁源、霊石の例は、“鵮树锛锛”と “鹁鸪”の混交によるものであろう。沁県の“秋树□钩钩”もその一異型と思 われるが、ならば何故“鵮”が“秋”のような音形になったのか、その理由は 不明である。“臭关关”のような「キツツキ」語形との混交によるものなら、 先の陝西延長の、“丑卜古”の、“丑”とともに“鵮”と“臭”の中間形態を示 すものと見なすべきなのかも知れない。現在のところ、他に類例は無い。 §6.3. “臭关关 / 鹳鹳”の第二、三音節韻母についての補足 “臭关关/ 鹳鹳”の韻母が何故このようになっているのかについては、「キツ ツキ」でも“啄木官”という語形が見られるので、それへの類推が働いた結果 と見ることが妥当であろう。これについては既に指摘した通りである。 動物名称は擬人化されることが間々あり、「キツツキ」語形の“~官”もそ の一例と言えよう。類例に「トンボ」の例がある。 “蜻蜓” 甘肃兰州 :苍官tshɑ˜ kuε˜  蜻蜓 普通 3752 甘肃兰州 :春官 pfhən53 kuan1  蜻蜓 市志198 甘肃皋兰 :水官官 fei44 kuε˜n31 kuε˜n21  蜻蜓 830 山西原平 :河灌灌 xɤ33 kuε˜53 kuε˜53-21  蜻蜓 74 山东齐河 :蜓蜓官儿 thiŋ213 thiŋ0 kuanr213  蜻蜓 715 cf. 山东寿光 :官蜓 kuã213-55 th213  蜻蜓 131

cf. 山东平邑 :光光蜓 kuaŋ213-22 kuaŋ0 th213  蜻蜓 87

(17)

上掲例中の甘粛方言の“~官(官)”という構成の「トンボ」語形は他の地域で は見られないものである。甘粛皐蘭方言は西北、西南方言で見られる重畳によ る「小称」が加わっている。管見の及ぶ限りで、「トンボ」を意味する方言語 彙に“春官官”、“苍官官”、“臭官官”といったような形式は見られない。この ような「トンボ」語形の分布は極めて限定的であり、山西とはやや離れている ので、先の山西新绛の「キツツキ」語形“臭关关”の成立に関与したかどうか 何とも言えない。但しこの甘粛方言の「トンボ」語形は直接“臭关关/ 鹳鹳” の成立に関与したのではないにしても、同じく~kuan (kuan) という音形であ るから、類推がより容易に働き易くなるというような、いわば触媒のような作 用を果たした可能性は無いではない。 「キツツキ」語形には“~官”の他に、以下のような擬人化の例も見られる。 “啄木鸟” 湖南娄底 :啄木公 tsua35 mo35 kɤŋ0  啄木鸟 研究 144 湖南娄底 :□木公 tsua35 mo35-55 kɤŋ0  啄木鸟 词典 61 cf. □ tsua35①啄(食)②叩击  词典61 湖南沅陵 :啄木公 tshua13 moʔ53 kəɯ55  啄木鸟 研究129 江苏靖江 :锻木公公 tu˜52 məʔ23 koŋ44 koŋ44-31  啄木鸟 词典299 广东雷州 :凿树公 tshak1 tshiu24-33 kɔŋ24  啄木鸟 词典308

        湖北浠水 :啄木姑儿 tʂo mukur    啄木鸟 170

        湖北安陆 : 锻磨佬 tan35 mo55 nau52啄木鸟  FY94-4/311←“啄木佬”/“啄木鸟”?

nau52―鸟         山东荣成 :打木匠 ta213 mˌ0 tsiɑ˜r22  啄木鸟 张卫东 97 山东文登 :打木匠儿 ta213 mu0 tsiaŋr33  啄木鸟 909 山东莱州 :瞎木匠 ɕiɑ55 mu42 tsiɑŋ0  啄木鸟 121 安徽太平 :排工匠tsã32 koŋ32 ʑiɔ˜24   啄木鸟 省志355←“啄木官”+“工匠” cf. 河北鸡泽 :端木鸠儿       啄木鸟 (= 河北肥乡) 河北词汇 118         河北武强 :喯打母   啄木鸟 67210 河北武强 :喯打母子    啄木鸟 67211 10 “喯”は普通話では pèn, bēn の 2 音有り。ここでは後者の音を意図しているのであろう。 11 上に同じ。

(18)

河北深县 :奔打母儿 pəɳ33 tɑ0 mur213  啄木鸟 538 河北肃宁 :锛嘚母子 pən22 tə0 mu214-21 tsɿ0  啄木鸟 162

湖北安陸の語源は恐らく“啄木鸟”である。以下のような変化を辿ったもの だろう。

ȶauk mŏuk teu→tuaʔ moʔ niau→tuam mo niau→tuam mo nau

この方言はn-/l- を区別しないので、“鸟”が擬人化で niau→“佬”nau となっ たものと思われる。 最初の湖南、広東の例に見られる“~公”と湖北浠水の“~姑”は“~官” と共にいずれもk- 声母であるから、これらは同源なのかも知れない。ただ、 そうであればそれが何であるか。今のところ確たる私案は無い。報告例からす ると、“~官”は量的に他の二者を圧倒しているから、“~公”、“~姑”は“~ 官”に由来するとすべきかも知れない。 §6.4. “啄木鸟”←→“戴胜 3” 以下の最初の2 例は「キツツキ」ではなく、「ヤツガシラ」である。これら は“臭咕咕”の“臭”を類義語の“臊”に取り換えたものか? その次の甘粛 方言の2 例も同様であろう。寧夏中衛方言に見える“骚呱呱”が“春咕咕”も しくは“臭咕咕”と混交して生じた可能性無きにしもあらずだが、この字面で 表記される語形は他に報告例を見ない。語釈も具体的に何を指すのかも不明。 「ヤツガシラ」のことなのかも知れないが、孤例につき考慮の対象から除外す る。恐らく、その基になったのは、“臭咕咕”ではあるまい。可能性のあるも のとして新疆ウルムチ方言に見える“臭包包”がある。但しこの形式もまた管 見の及ぶ限りでは孤例であり、些か説得力に乏しい。さはさりながら、有力な 推定成立過程が考案できないので、とりあえずは、一つの可能性として、“鵮 包包”と“臭咕咕”の混交で“臭包包”が生まれ、“臭”を同義語の“臊”に 取り換えることで、“臊包包”が生まれ、更に既存の鳥名と関連付けられるこ とによって“臊鸨鸨”となった、という試案を提示しておきたい。 この甘粛方言の2 例に現われる“鸨鸨”の音声はともに不明。以下の挙例中 の陝西隴県にはpau pau とある。甘粛方言の当該例も概ね pau pau, pɑu pɑu, pɔ pɔ のようなものであろうと推測されるが、実際の音声とズレた類音表記であ る可能性も否定できない。たとえば実際にはpa pa であるのに、鳥の名である からと類音の“鸨鸨”を当てたということかも知れない。そうであれば再検討 の必要が生じる。

(19)

“啄木鸟” 甘肃崇信 :臊鸨鸨    啄木鸟 609 “戴胜” 甘肃平凉 :臊鸨鸨    戴胜鸟 711 河南温县 :臊姑姑    戴胜 645 宁夏中卫 :臊咕咕sɔu44 ku44 ku0  即胜冠,也叫戴胜鸟 106 cf. 宁夏中宁 :骚呱呱 sɔ44 kua13-11 kua0  臭斑鸠 93 cf. 宁夏银川 :骚呱呱 sɔ44 kua13 kua0  臭斑鸠 方言志95 “啄木鸟” 河北深泽 :臭奔打木tʂhəu31 pən33 ta33 mu33  啄木鸟 57112 河北容县 :臭锛打     啄木鸟 501 “布谷鸟”? 新疆乌鲁木齐 :臭包包tʂhɤu44 pɔ21 pɔ24   = 斑鸠? 回民 9813 “啄木鸟” 河南灵宝 :鵮宝宝         啄木鸟 859 山西临猗 :鵮报报tɕhiӕ˜31 pau33 pau20  啄木鸟 638 陕西户县 :鵮报报tɕhiã31 pau31 pau35-31  啄木鸟 287 河南灵宝 :鵮报报tɕhian pau pau  啄木鸟 普通 3713 陕西西安 :鵮报报tɕhiã pɔ pɔ  啄木鸟 普通 3713 甘肃张家川 :鵮报报tshӕ˜213 pao44 pau44  啄木鸟 1413 陕西宝鸡 :鵮刨刨         啄木鸟 1027 山西永济 :鵮刨刨tɕhiӕ˜21 pɑu0 pɑu0  啄木鸟 36

山西万荣 :鵮刨刨tʂhiӕ˜51 pɑu24 pɑu33  啄木鸟 词典280 山西河津 :鵮嚗嚗tʂhaŋ31 pɤ44 pɤ0  啄木鸟 研究192 陕西岐山 :鵮嚗嚗tɕhiã pɔ pɔ  啄木鸟 689

陕西兴平 :鵮包包tɕhiã31 pau31 pau02  啄木鸟 ;枸杞子 359

陕西合阳 :鵮包包/ qian31 bao35 bao35 /  ①啄木鸟②口惠而实不至的人 803 陕西韩城 :鵮包包/qiangbao bao /  啄木鸟 931

陕西扶风 :鵮暴暴tɕhiã31 pau44 pau44  啄木鸟 623(=陕西鳞游 583) 陕西千阳 :鵮爆爆tɕiӕ˜21 pɑu44 pɑu44  啄木鸟 359

陕西陇县 :鵮鸨鸨tɕiӕ˜31 pau44 pau44  啄木鸟 949

12 角川大辞典には“臭喯打木 chòubēndǎmù コアカゲラ”とある(p.440)。 13 注 4 参照。

(20)

山西临汾屯里 :鵮鹁鹁thiai22 pɔ22 pɔ22  啄木鸟 14 河南沁阳 :鵮巴巴tɕhian33 pa53 pa0  啄木鸟 省志195 山西曲沃 :鵮巴巴       啄木鸟 469 河南长葛 :千巴巴/ cian24 ba24 ba24 /  啄木鸟 624 山西晋城 :千巴巴tɕhiɛ33 pɑ33 pɑ33  啄木鸟 38 山西垣曲 :钳巴巴tɕhiã31 pa0 pa0  啄木鸟 县志623 山西乡宁 :纤叭叭tɕhiӕ˜53 pa20 pa20  啄木鸟 674 山西安邑 :嗛剥剥   读为千巴巴,啄木鸟也,食枯木之虫,其声剥剥 47 山西吉县 :鵮叭叭tɕhiiӕ˜423-42 pa423-42 pa0  啄木鸟 37 山西新绛 :□巴巴tɕhiã53-55 pa53-11 pa53-31  啄木鸟 35 “巴巴”で「大便(幼児語。多くは名詞として)」を言う方言は少なくない。 これと“臭”は容易に関連付けられる。ならば、「キツツキ」を現わす語に、 漢字表記で示せば“臭巴巴”というような語形があっても良さそうなのに、該 当例が皆無である。「臭いウンチ」では口にするのも憚られると、忌避の意図 が働いたのかも知れない。しかしそうであるにせよ、漢字の字面だけ変えたよ うな語が存在して然るべきである。“鵮巴巴”という語形が見られるのに“臭 巴巴”という語形の報告例は無いということに対して何らかの説明が必要と なってくる。また“鵮巴巴”と“臭咕咕”の混交で“臭巴巴”が生じて、これ が鳥の名称の“鸨”と関連付けられて“鸨鸨”となったというような想定も、 “臭巴巴”の報告例が無いので説得力に欠ける。 山东济南 :疸疸pa45 pa0  用于对幼儿说屎,粪便或赃物的称呼 市志145 山东沂水 :巴巴44-213 pɑ0  大便(儿语) 91 河北灵寿 :疸疸 pa55 pa0  屎 700 河北乐亭 :巴巴 pa pa   大便,屎 674 河北青龙 :把把    人的粪便 943 天津大港 :拉疸疸la24 pa55-24 pa20  拉屎 890 河南永城 :屙粑粑ɤ31 pa55 pa0  儿童大便 566 陕西子洲 :疸屎 pɑ213-24 sɿ213  大便 459 陕西宜川 :巴      大便 912 湖北通城 :把把pa31 pa31  大便 159 以下の例は先の例に似ているが、語形のやや異なるものである。これらの語 源をどう解釈すべきか今適当な私案は無い。“凿打木子”、“啄打木子”、“凿啄

(21)

木子”、“啄啄木子”等、第二音節の“打”、“大”で表記される字音についても、 §1.1. では説明の便宜上“啄”を本字と仮定した上で検討を加えたが、現実に は全て“啄”に由来すると考えるのは危険である。この第一音節については、 一つに、本字が“凿”(従母字)で、これがdsɑuk>tsɑuʔ>tsɑu→sɑu のような特 殊変化を遂げたと見做す解釈があるが、やや難がある。もう一つに語源が“啄” で、同様にȶauk>tʂɑuʔ>tsɑu→sɑu のような特殊変化を遂げたとする見方がある。 両方に共通するtsɑu→sɑu の変化は声母の弱化と看做すべきか? 無気閉鎖音、 破擦音が弱化して同じ調音点の摩擦音になるという例は先ず見かけないから、 もしこの変化が実際に起こったとすれば、paradigmatic な要因によるものと考 えるべきであろう。語源が“凿啄木子”であれば、第二音節はそり舌音化せず にt- を保っていると考えることになる。当て字が成されることで、t- がよく保 たれたということも考えられる。“啄啄木子”であれば、恐らく異なる二つの 方言語形が融合することで、第一音節と第二音節で異なる層の声母の反映が現 われることになり、一語中に異なる層の反映が同居することになったというこ とになろう。その類例として、上海語の“日本人zəʔ pəŋ ȵiŋ”を挙げておく。 異なる方言層に属する“日”、“人”の字音が一語に同居している。 “啄木鸟” 山东临淄 :臊打抹子sɔ213-31 ta0 mə0 tsɿ0  啄木鸟 564 山东淄博 :鵮(骚)打木(梆)子 tshã213-31(sɔ213-31) ta0 mu0(paŋ0)tsɿ0      啄木鸟 2260 山东潍坊 :骚打毛子sɔ213-31 tɑ0 mɔ53-24 tsɿ0  啄木鸟(寒亭区) 740 山东潍坊 :骚大□子       啄木鸟(寒亭区杨家阜村) 377 山东临朐 :□打□子θɔ21 tɑ0 mə55-213 tθɿ0  啄木鸟 37 山东临朐 :□打□子θɔ21 tɑ0 mo55-213 tθɿ0  啄木鸟 687 山东青州 :索打模子sɔ214-21 ta0 mo44-214 tsɿ0  啄木鸟 山东方言词典90 山东青州 :扫啄木子sɔ214 ta0 mo44 tsɿ0  啄木鸟 950 §6.5. “啄木鸟”←→“鹡鸰” “点水雀”は普通、「セキレイ」を意味する語で、四川、雲南に多く報告例が 見られる。雲南昭通の一地点で「キツツキ」として報告されているが、転用例 というより、誤認の可能性が高い。所拠文献は《普通话基础方言基本词汇集》。 もし間違いでなければ、「セキレイ」が尾羽を上下に振る様が、「キツツキ」の 木をつつく動作を連想させるということで、指示対象の混乱が生じたものか。

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“啄木鸟”

云南昭通 :点水雀tian suei tɕhio  啄木鸟 普通 3713  ←→“鹡鸰”

“鹡鸰”

四川成都 :点水雀儿tiɛn53 suei53hy21  ①喜在水上飞,常用嘴点泼水面的小 鸟 ②[略] 词典281 贵州贵阳 :点水雀tian53 suei53 tɕhio31  一种小鸟 词典220 云南永胜 :点水雀tiӕ˜n42 sueɪ42 tɕhio31  鹡鸰 110 云南维西 :点水雀tiε˜n53 ʂueɪ53 tɕhio31  白鹡鸰 129 云南威信 :点水雀咡tiɛn53 ʂuei53 tɕhio214 4  常在水边溅水的小鸟 177 もし、「キツツキ」の語形と「セキレイ」との間に混交が起こるものならば、 音声的に「キツツキ」に“点树雀”、“点木雀”のような漢字表記が可能な類似 形式が存在することが予想されるが、管見の及ぶ限りで、そのような語形は見 当たらない。これ以外の混交を生じそうな形式を探しても、以下のような例し か見つからない。 河北广平 :端树虫     啄木鸟(=河北肥乡) 河北词汇118 河北魏县 :端树精     啄木鸟 河北词汇118 河北鸡泽 :端木鸠儿     啄木鸟(=河北肥乡) 河北词汇118 山东郯城∶断磨虫tuӕ˜41-43 mə41 tʂhuŋ55  啄木鸟 86、临沂 209 ←“啄木虫” 山东临沂∶煅磨虫tuã312-310 tʂhuŋ53  啄木鸟 山东方言词典90 ←“啄木虫” 甘肃天水 :啄木虫tuən mu tshuən  啄木鸟 普通 3713

河北鸡泽 :端木鸠儿       啄木鸟(=河北肥乡) 河北词汇118 河北鸡泽 :端木丘的      啄木鸟 721 ←“啄木虫子” 重庆:蝌蝌雀儿kho kho tɕhyər  啄木鸟 普通 3713 ←“磕磕雀儿”? 混交については考慮するに及ばないようである。これらの例の第一音節は恐ら く、“啄”が後続する“木”の影響で、陽韻尾化したものであろう。§3.6. 参 照。 §6.6. “啄木鸟”←→“鹡鸰”?“鸧鹒”?“画眉”?“山雀”? “鹡鸰セキレイ”(及び“鸧鹒ウグイス”等)との間での混同と思われるもう一つ のタイプが以下の例である。該当語形の釈義は必ずしも同じではなく、“画眉 ガビチョウ”、“山雀シジュウカラ”を指している場合もある。とりあえず“鹡鸰”等 として一括して挙げている。

(23)

最初に挙げた山東費県の“唧唧棍子”は、「セキレイ」等を意味する“鹡鹡 鹒儿”が「キツツキ」に転用されたものかと考えられる。

“啄木鸟”

山东费县 :唧唧棍子 tɕi213-21 tɕi0 kue˜31-53 tθɿ0  啄木鸟 临沂方言志 209      ←“鵮鵮官”?

“鹡鸰”等

山东平度 :鹡鹡鹒儿 tsi55-214 tsi0 koŋr55  鹡鸰,一说鸧鹒 156

山东枣庄 :叽叽棍儿 tɕi213 tɕi0 kuer51  形体很小,羽毛灰色、善于鸣叫的小鸟。 行踪不定,不易被发现 山东词典91 山东莱州 :哜哜庚儿 tsi213 tsi0 kə˜r55  一种身体瘦小,常发出“哜哜”鸣声的鸟

120

山东威海 :唧唧嘠tsi53 tsi0 ka312  画眉鸟 山东词典91

山东博兴 :叽叽罐儿tsi44-213 tsi0 kuɛr21  灰山雀 黄河三角洲168 山东滨州 :叽叽鹳      小山雀 704 山东成武 :叽叽奎儿         山雀 679 “唧唧/ 叽叽”及び“鹡鹡”はいずれも“哜哜”同様、その鳴き声に由来す る擬声語であろう。もし山東費県の“唧唧棍子”が正しく「キツツキ」を指す のであれば、“唧唧/ 叽叽 / 哜哜”と“鵮鵮官”の“鵮鵮”、「セキレイ」等の 第三音節の“棍儿/ 鹒儿 / 庚儿 / 嘠 / 罐(儿)/”、“奎儿”と“鵮鵮官”の第三 音節の“官”が音声的類似があるところから、このような混同が起こったもの かと考えられるが、“鵮鵮官キツツキ”の報告例は管見の及ぶ限りでは皆無。「キ ツツキ」語形で“鵮鵮~”となっているのは以下のような語形である。 “啄木鸟”

陕西高陵 :鵮鵮棒tɕhiã31-51 tɕhiã31 paŋ55  啄木鸟 694 陕西高陵 :鵮鵮鸨tɕhiã31-51 tɕhiã31 pau55   啄木鸟 694 陕西三原 :鵮鵮抱/ qian31 qian31 bao55 /  啄木鸟 989 河北秦皇岛 :鵮鵮木tɕhian55 tɕhian55 mu51   啄木鸟 117

河北青龙 :鵮鵮木       啄木鸟(=成安、内丘) 河北词汇118 山东临清 :鵮鵮木hiε˜323-44 tɕhiε˜0 mu323  啄木鸟 102

河南开封 :鵮鵮木tɕhian24 tɕhian0 mu24  啄木鸟(=商丘、周口) 省志 195 河南周口地区 :鵮鵮木(子)tɕhian tɕhian mu(tsɿ) 啄木鸟 897

(24)

河南郾城 :千千木tɕhian24 tɕhian0 mu24  啄木鸟 657 河南太康 :千千木/ qian24 qian24 mu24 /  啄木鸟 591

河南开封 :千千木儿tɕhian24 tɕhian24 mur24  啄木鸟 县志 541 山东金乡 :千千木子tɕhiã213-21 tɕhiã0 mu213-21 tsɿ0  啄木鸟 116 河北青龙 :鵮鵮木tɕhian55 tɕhian55 mu51  啄木鸟 945(=天津宝坻 818) 河北抚宁 :鵮鵮儿木         啄木鸟 571 山东鲁西 :天仙目/ tiān hiān mù /  啄木鸟 FPJ3/44(不举具体地名) “鵮鵮~”の形式は、管見の及ぶ限りでは“鵮鵮棒”(“鵮鵮鸨”、“鵮鵮抱” も同類)、“鵮鵮木”しか無い。“鹡鹡棒”のような中間形態の報告例は見られ ないから、混交については考慮するまでもないだろう。先に指摘したように、 費県の例はやはり指示対象の混同で、「セキレイ」語形が「キツツキ」に転用 されたと見るべきだろう。 § 6.7.“啄木鸟”←→“黄莺”?“蜻蜓”? 次の例も他に全く類例が見当たらないから、誤認の可能性が高いが、本来指 すものが「キツツキ」でなければ、一体何を指していたものかよく分からな い。所拠文献は《普通话基础方言基本词汇集》。「ウグイス」の“敲丁丁”にし ても、所拠文献には音声記号が無く、今のところやはり類例が見つからない。 “啄木鸟”

云南昭通 :蒿丁丁xaɔ tin tin  啄木鸟 普通 3713 “黄莺”

四川会理 :敲丁丁        黄莺14 783 “蜻蜓”

河南邓州 :丁丁 tiŋ44 tiŋ0  蜻蜓 91

重庆   :麻虰虰儿ma tin tiər  蜻蜓 方言志 193 重庆   :虰虰麻儿tin tin mər  蜻蜓 方言志 193 四川成都 :虰虰猫儿tin55 tin55 mər55  蜻蜓 词典54 贵州织金 :竹丁丁         蜻蜓 745 贵州纳雍 :绿丁丁 lu21 tin55 tin55  蜻蜓 840 14 原文“黄莺”を“黄鹰”と誤る。“敲丁丁”は「トンボ」語形“丁丁”に“敲”をくっつ けて「(ドアを)ドンドン叩く」というようなダジャレ語形にしたものか? ダジャレ語形に ついては太田2006 参照。他に何らかの「ウグイス」以外の鳥(?)を指す“X 丁丁”(X は 何らかの修飾要素)をX を“敲”に改めて「ウグイス」名称としたというような可能性もあ る。但し“X 丁丁”が何であったか特定できない。

(25)

河南卢氏 :水丁丁sɿ32 tiŋ44 tiŋ0  蜻蜓 民俗志108 陕西宁陕 :杨丁丁iaŋ21 tin34 tin34  蜻蜓 714

山东寿光 :麻蜓蜓mᴀ53-55 thiŋ0 thiŋ0=“麻郎mᴀ53-55 lɑŋ0”  蜻蜓之一种 志131 山东荣成 :蚂蜻蜓ma214 thiŋ42 thiŋ0   一种体大色绿的蜻蜓 志151 河南内黄 :麻蜓蜓/ mátīngting /   蜻蜓 FPJ6/106 河南郑州 :麦蜓蜓mε24 tiŋ24 tiŋ0  蜻蜓 省志197 “斑鸠” 陕西扶风 :咕咕等 ku35 ku02 təŋ53  斑鸠 ;蒲公英 623 “丁丁”という語形ですぐに想起されるのは「トンボ」である。「トンボ」は 普通話では“蜻蜓qīngting”と呼ばれるが、多くの方言では双声化を生じて、 thiəŋ thiəŋ, tɕhiəŋ tɕhiəŋ, tiəŋ tiəŋ(tɕiəŋ tɕiəŋ の例は見当たらない)のような音形

で現れる。うちtiəŋ tiəŋ は河南省一帯で多く見られるが、この前後に他の要素 を付加した~tiəŋ tiəŋ、tiəŋ tiəŋ ~のような語形は上に見るように、他の地域で も散見する。西南部では漢字表記で成都の“虰虰猫儿”(“丁丁猫儿”という表 記もあり。tin tin ~型)という形式が主流を成し、“猫虰虰儿”(つまり~ tin tin 型)という形式は殆ど見られない。“蒿丁丁”という「トンボ」語形は見当 たらないから、「トンボ」語形の転用とするには、“蒿”についての説明が必要 となる。語形との関係も考慮するまでもなかろう。“蒿丁丁”は字面から「タ ンポポ」と何か関係があるのかとも思われるが、タンポポは全国的に見ても “婆婆丁”、“卜卜丁”のような第一、二音節が重ね型の“~丁”という語形し かない上に、この“~丁”の分布域は山東、河北、河南であって、西南、西北 には見られない。 “鵮鵮”と“丁丁”とではそもそも音声的類似は十分とは言い難い。既に §6.6. で見たように、“鵮鵮~”の形式は、“鵮鵮棒”、“鵮鵮木”しか無い上に、 “~鵮鵮”という語形は実例が見当たらないから、“鵮鵮”と“丁丁”の音声的 類似を契機とした混交というような解釈も成り立ちそうもない。 §6.8. “啄木鸟”←→“夜鹰” 以下に挙げる「ヨタカ」語形との混交はこの2 例以外、他に例を見ない。 “啄木鸟” 山东长岛 :贴树皮thie214 ʃu42 phi55  啄木鸟 74 江苏赣榆 :贴树皮thie213 ʃy42 phi55  啄木鸟 133 “夜鹰” 黑龙江哈尔滨 :贴树皮 thiɛ44 ʂu53 phi24  ①一种附在树干上,颜色跟树皮相近的

(26)

毛毛虫②夜鹰 词典154 「ヨタカ」を意味する語形が、「キツツキ」に転用されたと考えられる。《哈 尔滨方言词典》では、同方言の「キツツキ」語形は以下の三通りがある。 黑龙江哈尔滨 :啄木鸟儿tsuo24 mu53 niaur213  啄木鸟 词典145        锛得儿木pən44 tɤr44(或tɤr0)mu53  啄木鸟 词典317        叨木官子tau44 mu53 kuan44 tsɿ0  啄木鸟 词典207 本来「ヨタカ」を意味する語が、「キツツキ」に転用されたという考え方と は逆に“贴树皮”が本来「キツツキ」を意味する語であったとする可能性も検 討すべきであろう。また“夜猫子フクロウ/ ミミズク”15と混同されたと思しき例が あるが(後述)、“贴树皮”という語形は先に述べたように、上掲の2 例しかな い。そもそも「ヨタカ」は語彙調査表に載ることの先ず無い語彙で、かなり詳 しい語彙集でもほとんど取り上げられることが無い16。遺憾ながら、該当例稀 少につき、現時点ではこれ以上追及できない。 §6.9. “啄树鸟キツツキ”←→“斑鸠”?“咕咕猫フクロウ”?“布谷鸟”? 「キジバト」との混同と見るべきか、はたまた「フクロウ」との混同と見る べきか、よく分からない例である。「キツツキ」の語形に“咕咕”が現われる 例は類音の別字の使用を考慮しても、以下に記す四番目の山西霊石方言の“鵮 树鹁鸪鸪”のような混交によって成立したと思われる語形以外には例が無い (§3.2. で詳述)。この霊石方言のような語形が縮約されたという可能性が無い でもないが(“鵮树鹁鸪鸪”→“鸪鸪”→“咕咕”+“头”)、この例もまた孤 例といっても良いようなものである。 “啄木鸟” 甘肃武威 :咕咕头   啄木鸟 76317 cf. 甘肃兰州 :固固头 ku13-11 ku3 thəu1  头上有一撮毛的一种母鸡 市志196 cf. 宁夏同心 :孤孤头儿 ku13-11 ku0 thər53  头顶有一簇毛的鸽子 117-118 15 “夜猫子”、“猫头鹰”はフクロウ科の鳥の中で特に「ミミズク」を指すようであるが、小 論ではこれに関連する語彙の総称の日本語訳としては、以下「フクロウ」を用いる。 16 湖南方言では数地点で「ヨタカ」の報告例があるが、当面の議論とは拘わらない語形であ るので、ここでは取り上げない。 17 並存語形に“啄木虫”がある(p.763)。

(27)

cf. 山东汶上 :咕咕头 ku55 ku0 thəu42  脖子上没毛的鸡 152 湖南吉首 :咕噜头儿ku35 lu0 d11  啄木鸟 研究 120 cf. 湖北襄阳 :黄咕噜       黄莺 643 山西灵石 :鵮树鹁鸪鸪tɕhiɑ˜214 su53 paʔ33 ku214 ku214  啄木鸟 605 “斑鸠” 山东新泰 :咕咕ku42 ku42  斑鸠 志110 河南舞钢 :姑姑儿 斑鸠 731 河南濮阳 :咕咕咕/ gūgūgū / 斑鸠 民俗 242 河南清丰 :咕咕咕 斑鸠 463 河南舞阳 :姑姑口ku53 ku0 khou55  斑鸠 71 山西沁县 :咕咕库ku213-22 ku213 khu55  斑鸠 27 陕西兴平 :鸪鸪等ku31-35 ku31 təŋ52  斑鸠 811 宁夏银川 :鸪鸪登ku44 ku0 təŋ53  斑鸠 方言志95 甘肃张家川 :姑姑等ku24 ku24-21 təŋ42  斑鸠,因其鸣声似“姑姑,等”故名        1413 “布谷鸟” 山西万荣:咕咕鸟ku33 ku0 ȵiɑu55  布谷鸟(县西) 词典75 河南兰考:咕咕鸟ku35 ku0 niau55  大杜鹃,通称布谷鸟 王44 河北故城:古古儿ku55 kur0  布谷鸟 620 河南台前:咕咕       布谷鸟 613 この解釈には他にも難点がある。これまでに紹介したように“咕咕”のよう な要素を持つ名称には「ヤツガシラ」の“屎咕咕”、“臭咕咕”、「カッコウ」の “春咕咕”、「キジバト」の“水咕咕”があった。「キジバト」には他に少数なが ら、“水”ではなく“臭”、“春”、“山”、“野”、“突/ 脱”、“曲”、“鹁”などと いった様々な要素が付加されている例があり、また前ではなく、後ろに“口”、 “鸠”、“虫”などのようなといった要素を伴うものもある。 “斑鸠” 甘肃敦煌 :臭咕咕tʂhou kvˌ • kvˌ  斑鸠 普通 3711 山东苍山 :春咕咕pfhe˜213 ku53-55 ku0  斑鸠 173 河北保定 :山咕咕ʂan ku • ku  斑鸠 普通 3711 山西阳城 :水咕咕ʂuei312 ku53 ku53  斑鸠 425 山东平原 :野咕咕/ ye21 gu55 gu21 /  斑鸠 726

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陕西神木 :脱故故thuəʔ3 ku51 ku0  斑鸠 陕北140 陕西延安 :曲故故tɕhy213-21 ku51 ku0  斑鸠 陕北140 江苏扬州 :鹁鸪鸪pəʔku • ku  斑鸠 普通 3711 江苏南京 :斑咕咕pɑŋ31-33 ku31-33 ku31  斑鸠 词典206

四川长寿 :谷姑姑ku ku ku 1. 斑鸠 2. 喻说话抓不住要领的人 1070

        河南舞阳 :姑姑口ku53 ku0 khou55  斑鸠 71

山西沁县 :咕咕库ku213-22 ku213 khu55  斑鸠 27 山西忻县 :鸪鸪鸠ku31 ku31 tɕiəu53  斑鸠 590 山西文水 :鸪鸪种ku ku tsuəŋ  斑鸠 县志 704 河南濮阳 :咕咕虫ku33-34 ku34 tʂhuŋ452-42  斑鸠 500 河南杞县 :咕咕喵ku55 ku0 miɑu24  斑鸠 854 (フクロウとキジバトの混同) しかしながら、「キジバト」の語形に“咕咕等/ 登”のような語形はあるが、 “咕咕头”は見当たらない。そして「キツツキ」の語形でも“~头”というの は管見の及ぶ限りで、二番目の湖南吉首方言の例とこの甘粛武威の2 例のみ。 大多数は接尾辞を伴わない“~木”型か“~木子”、“~木儿”といったもので ある。擬声語“咕咕”に“头”を附した一種幼児語的性格の語とも考えられる が、実物をよく知っているならば、中国でも「キツツキ」が“咕咕”と鳴くと 認識されているとは考え難い。そのような「キジバト」語形が「キツツキ」に 転用されたものというのが、現在のところ最も蓋然性の高い説と言えようが、 “咕咕头”という「キジバト」語形は見当たらない。甘粛武威方言は接尾辞 “头”を多用する方言とは思えないので、単純に指示対象の混同と考えてはい けないのかもしれない。語源が“咕咕鸟”で、末尾の“鸟[t-]”が声母を [n-] に改めるというようなタブー語回避の方法ではなく18、類音の接尾辞“头”に 取り替えられたということはあろうか? もしそうであれば、“咕咕等/ 登” の“等/ 登”、“咕咕种”の“种”、“咕咕虫”の“虫”はいずれも同様に“鸟 [t-]”が特殊変化して成立したものである可能性がある。 「フクロウ」には“咕咕猫”という語形があり、「キジバト」の“咕咕”と音 声的類似を持つが、やはり“咕咕头”という語形は見られない。甘粛武威の “咕咕头キツツキ”が指示対象の混同でなく、混交を想定するにしても、「フクロ 18 厳密に言えば、「トリ」の名称が「男性性器」の派生義を持つようになったため、正当な 字音diao は専らこの意味に用いられるようになり、「トリ」の意味ではこれと区別すべく、発 音をずらしてniao としたということである。1 語が 2 語に分裂するに至るのにタブー語との 同音忌避が関わったのである。

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