様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 北野 雄大
本研究はスポーツなど運動の教示訓練を行う装着型訓練装置の開発を目的とした研究である.
既存の教示訓練手法の多くでは,人体の手先や足先の動きを教示することを目的としており,手 先や足先に繋がる関節の姿勢や運動を教示することが出来ない.その為,各関節に動作教示を行 うことが可能な,装着型の訓練装置がより有効であると考えられるようになり,近年研究開発が 行われるようになってきた.しかしこれまでの装着型訓練装置では,人体の関節構造を簡略化し てモデル化しており,装着者の怪我や障害に繋がる可能性があるため,高自由度な訓練装置の開 発が必要である.本研究では,そのような特徴を持った教示訓練手法の基礎技術として,人体の 複雑な関節運動の計測が可能な装着型装置を用いた計測手法を開発した.
人体の関節運動を計測する為には,関節を構成する骨格同士の姿勢の3自由度と位置の3自由 度の関係を計測する必要があり,本研究ではパラレルリンクを利用した装着型装置によってこれ を実現した.さらに,開発した計測手法を用いて,実際に手関節運動の計測,肘関節運動の計測 を行った.また,提案手法の応用として,肩甲骨運動計測手法を提案し,実際に被験者に対して 計測実験を行った.実験により得られた計測結果と解剖学的な計測手法などの既存の計測結果と の比較を行い,本手法が有効であることを示した.最後に提案した計測手法を利用した手関節運 動教示訓練装置の提案を行い,教示訓練への応用を検討した.
本論文は全8章により構成されており,各章の概要は以下の通りである.
第2章では,関節運動の計測に姿勢と位置の6自由度計測が必要であることを説明するため,
人体腕部の関節構造について述べた.また,従来の関節運動計測手法について論じ,教示訓練に 利用する上での必要となる特性について述べた.人体の関節は位置と姿勢の6自由度を持ってい るため,関節運動の計測には,一関節に対して6自由度の計測が必要である.従来の関節運動の 計測手法の中には6自由度計測が可能な計測手法も存在するが,それらの手法は周辺環境の影響 を受けやすいこと,計測範囲が限られること、一般的なトレーナには使用が難しいことから教示 訓練への利用には適していない.本研究では,工学的な知識のない一般的なトレーナでも運用が 容易なエンコーダを用いて,6自由度の計測が可能な計測手法の提案を目指すことを述べた.
第3章では本研究にて提案する関節運動計測手法について示した.前章にて論じた要求仕様を 実現するため,本研究ではリニアエンコーダを利用した装着型パラレルリンク式計測機構を提案 した.リニアエンコーダと装具によってパラレルリンクを形成することで,一関節に対する6自 由度計測が可能である.本研究にて利用するパラレルリンクのモデルについて示し,位置と姿勢 の変化を求める手法について示した.
第4章では装着型パラレルリンク機構を利用して実際の手関節の運動計測を行った.計測は手
関節の橈・尺屈運動に対して行った.既存の教示訓練装置においては,人体の手関節のモデルは 回転の3自由度を持つ球関節として扱われている.本研究により得られた計測結果と従来の球関 節モデルでの橈・尺屈動作との比較を行い,差があることを示した.この差は本手法のような高 自由度計測手法においてのみ計測が可能であり,このことから本手法が有効であることを示した.
第5章では装着型パラレルリンク機構を利用して実際の肘関節の運動計測を行った.計測は肘 関節の屈曲伸展動作に対して行った.人体の肘関節は従来の教示訓練手法において,回転の1自 由度として扱われるが,解剖学的には,屈曲伸展時の内外方向の回転と回転軸の移動が報告され ている.これらの変化は個人差が大きく,教示訓練の際に予め計測する必要がある.実験から本 手法を用いて肘関節の内外方向の運動と回転軸の移動を計測することが可能であることを示し,
計測結果と従来の解剖学的知見を比較することで本手法の有効性を示した.
第6章では装着型パラレルリンク機構を利用して実際の肩甲骨の運動計測を行った.計測は上 肢挙上動作の際の肩甲骨の運動に対して行った.人体の肩甲骨は人体内部で動くため,透過画像 を用いた計測が一般的であるが,本研究では肩甲骨の動きを模したフレーム構造を用いることで 肩甲骨の運動に追従するパラレルリンク式の装着型計測装置を開発した.本手法の計測結果を従 来の透過画像を用いた計測結果と比較を行い,本手法の有効性を示した.
第7章では装着型パラレルリンク機構を利用した装着型手関節運動訓練装置の提案を行った.
また,今後の課題となる装着機構や訓練用データ,評価方法の検討の必要性についての考察を示 した.
最後に第8章において,本論文についてまとめるとともに,今後の展望について述べている.