中学校における書写指導
一日常に生きる書写カを養うためにー
教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース 都築昌代
1 研究の目的と方法
日常に生きる書写力を見つめ直すとともに,
書写指導の先行の理論や実践を考察することに よって, 日常に生きて働く書写力を養うための 学習指導を構想することが,本研究の目的であ
る。
そこで,生活の中で必要とされる書写力を,
具 体 的 な 書 く 場 面 か ら 改 め て 聞 い 直 す と と も に,先人の理論や実銭の考察を行い,実の場を 生かした学習指導の試案を実践することによっ て,研究をすすめた。
2 論文の構成
本論文は,序章・結章のほか,次の四章で構 成する。
第一章 日常に生きる書写カとは 第一節 生活の中の書く場面の分析 第二節 日常に生きる書写力とは
第二章 国語科学習指導要領にみる書写指導観 第一節 国語科学習指導要領の内容構造の
変遷
第二節 書写の位置づけの変遷 第 三 節 ま と め
第三章 日常に生きる書写力を養う視点からみ た先行理論と実践
第一節 大村はまの氏場合
第一項 単元学習に組み込まれた書写指導 第二項「国語教室通信jからうかがえる書
指導教官 蓑 毛 政 雄
写指導の実際と考察 第二節 上俊信山氏の場合 第 三 節 久 米 公 氏 の 場 合
第四章 日常に生きる書写力を養うための書写 指導の構想
第一節 学習指導構想のための試案の実践 第二節 実践から導かれる課題
3 論文の内容
第一章では, 日常に生きる書写力とはどのよ うなカなのかを,生活の中での「書くJ場面を 具体的に見つめ直すことによって明らかにしよ
うとした。
ま ず , 第 一 節 に お い て 書 く j生活を具体 的に見つめ直し,それを三つの視点,書く目的,
書く道具(筆記用具),書く場所 から分類し た。
さらに第二節では,生活の中での「書くj場 面で必要とされるカを具体的に考え,それを一 般的な書写の指導内容の項目に分類し,分析し た。
第二章では,国語科の学習指導要領において 書写指導がどのようにとらえられてきたのかに ついて,内容構造における書写の位置づけの変 遷を追いながら明らかにしようとした。
第一節でまず,国語科学習指導要領の内容構 造の変遷を概観した。
そして,第二節において,改めて書写の位置
づけを振り返り,それぞれの位置づけにおいて どのようにとらえられていたのかを明らかにし た。
さらに第三節では,位置づけの流れをまとめ ていく中で,指導要領における書写指導観をつ かもうとした。
第三章では,書写指導における先人の理論や 実践を,日常に生きる書写力を養うという視点 から考察した。
第一節では大村はま氏の実践を考察した。昭 和 20年代の二つの実践 f実用的な手紙の書き 方J(昭和24年)
r
古典入門一古典に親しむ‑J (昭和25年)と,昭和40年代以降の教科通信「国語教室通信J を,書写指導の視点から分析 .考察した。
その結果,大村氏の書写指導は,実の場を生 かした指導が中心であることがわかった。昭和 20年代は当時の学習指導要領に沿って
r
書くことj と一体となった書写指導を提案し,実践 していたことがわかった。また
r
国語教室通 信jの分析を通じて,昭和 40年代以降は,生 活の中の f書くJ場面を,確実にとらえて的確な指導をしていたということがわかった。
第二節では,上保信山氏の「書写の学習指導 の原理jの論考や「書道単元学習」についての 提案を考察した。
戦後,初めて書道教育に単元学習を導入しよ うとするなど,上僚氏は,積極的に改革に取り 組んでいた。生活に密着した単元の学習指導計 画例や,技術面での系統的指導にも配慮した中 学校習字教育の年間単元計画表例などを示して いることがわかった。
第三節では,久米公氏の「書写力未熟化への 構造j観をまとめた上で,久米氏が日常に生き る書写力育成のために提案している書き方の指
導と硬筆・毛筆の関連指導について考察した。
久米氏は「文字の書き方Jの指導,すなわち,
書いている最中の指導と,硬筆・毛筆の関連指 導の重要性を主張しており,筆記用具の持ち方
・扱い方や,書くときの姿勢の指導が日常に生 きる書写力を養う上で欠かせないものであるこ
とがわかった。
第四章では,日常に生きる書写力を養うため の一つの方策として,実の場を生かすというこ とに着目した書写の学習指導の試案を実践,分 析・考察を行い 書写指導の構想のための課題
を導き出そうとした。
第一節では学習指導構想、のための試案とし て
r
手紙を書く Jという実の場(職場体験学 習のための依頼の手紙とお礼の手紙)を生かし た学習指導を計画,中学校の第二学年において 実践し,結果を分析・考察した。第二節ではこの実践から導き出される課題の ーっとして,日常に生きる書写力を養うために は,系統的な指導の柱と実の場を生かした指導 の柱の二つが必要であることを取り上げた。そ の一つの方法として,年間学習指導計画の作成 に着目した。国語科の中での書く場面と連関し つつ、書写独自の系統的な指導を実践していく ための年間指導計画(枠組み)の試案を示した。
4 今後の課題
① 国語科の年間学習計画の中に書写の授業を 確実に位置づけ,実の場を生かしながら,系統 的な指導を計画し,その実践に務める。
② 発達段階に応じて,身につけさせたい力を 具体的にとらえる。
③ 「書くj ということを生活の中で意識させ るための書写の常時指導を定着させる。
④ 教師自身の書写に対する意識を改革する。