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不要電波の広帯域化に対応した電波環境計測技術と改善技術

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(1)

招待論文

不要電波の広帯域化に対応した電波環境計測技術と改善技術

山口 正洋

†,††a)

田中 聡

††

吉田 栄吉

†††

石山 和志

††††

永田 真

†††††

近藤 幸一

††††††

沖米田恭之

†††††††

佐藤 光晴

††

宮澤 安範

††

畠山 賢介

††

Measurement and Countermeasure Methodologies to Deal with Broadening Unnecessary Radio Wave

Masahiro YAMAGUCHI

†,††a)

, Satoshi TANAKA

††

, Shigeyoshi YOSHIDA

†††

, Kazushi ISHIYAMA

††††

, Makoto NAGATA

†††††

, Koichi KONDO

††††††

, Yasuyuki OKIYONEDA

†††††††

, Mitsuharu SATO

††

, Yasunori MIYAZAWA

††

, and Kensuke HATAKEYAMA

††

あらまし 第5世代移動通信システムなどの無線システムとSiCやGaN等を用いたスイッチング機器が稠密 に設置され,不要電波と利用帯域がともに広帯域化している.特に電波利用の集中する700 MHzから6 GHz までの周波数において,これらの異なるシステムを確実に共用するための技術に資するため,本論文では,受信 部での不要電波の影響を抑制する技術,ノイズ発生源での高調波ノイズの発生と伝搬を抑制する技術及びこれら を効率的かつ効果的に実施するためのノイズ発生源の特定や対策による効果を定量的かつ高精度に測定・評価す る技術について,著者らの研究開発の成果を報告する.

キーワード 不要電波,移動通信,スイッチング機器,非接触給電,磁性体,光磁気プローブ,HILS方式移 動通信性能評価システム

東北大学大学院工学研究科,仙台市

School of Engineering, Tohoku University, 6–6–05 Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8579 Japan

††東北大学未来科学技術共同研究センター,仙台市

New Industry Creation Hatchery Center, Tohoku Uni- versity, 6–6–10 Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8579 Japan

†††東北大学産学連携先端材料研究開発センター,仙台市 Material Solutions Center, Tohoku University, 2–1–1 Katahira, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8577 Japan

††††東北大学電気通信研究所,仙台市

Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University, 2–1–1 Katahira, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–

8577 Japan

†††††神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科,神戸市

Graduate School of Science, Technology and Innovation, 1–1 Rokkodai, Nada, Kobe-shi, 657–8501 Japan

††††††(株)トーキン材料研究開発本部,仙台市

Advanced Materials Research & Development Division, TOKIN Corporation, 7–1 Koriyama 6-Chome, Taihaku- ku, Sendai-shi, 982–8510 Japan

†††††††昭和飛行機工業株式会社輸送・機器事業部,昭島市

Transportation & Equipments Div., Showa Aircraft In- dustry Co., LTD., 600 Tanaka-cho, Akishima-shi, 196–

8522 Japan

a) E-mail: [email protected] DOI: 10.14923/transcomj.2017PEI0001

1.

ま え が き

移動体通信のトラヒックは今後も急速な拡大が予測 され,広帯域の周波数を確保するため,

2020

年頃に は,第

5

世代携帯電話システムなどで

SHF

帯までの 高い周波数への拡張と移行が見込まれている.一方で,

2020

年前後には,

SiC

GaN

等の高速パワーデバイ スとそれを用いたインバータ機器やワイヤレス電力伝 送システム(

WPT

)等の新たな電波利用機器の普及 が見込まれる等,外来ノイズの増加が懸念されている.

家庭や車内のように家電製品や電子機器等が稠密に設 置された環境では,スイッチングノイズが

SHF

帯ま で及ぶ恐れがあり,これが将来の移動通信システムの 安定な運用を阻害する大きな脅威となり得るのは明ら かである

[1]

このように不要電波,利用帯域ともに広帯域化する 中で,特に電波利用の集中する

700 MHz

から

6 GHz

までの周波数において,通信品質の安定化や周波数利 用効率の高い移動体通信システムの構築に必要な電波

(2)

環境改善技術を総合的に確立することが急務と思われ る.これにより,移動体無線局の受信感度向上や周波 数の有効利用を促進するとともに,移動体通信システ ムの周波数逼迫の解消に資することが期待される.

この目的に資するため本論文では,受信部での不要 電波の影響を抑制する技術,ノイズ発生源での高調波 ノイズの発生と伝搬を抑制する技術及びこれらを効率 的かつ効果的に実施するためのノイズ発生源の特定や 対策による効果を定量的かつ高精度に測定・評価する 技術について,著者らの研究開発の成果の概要を報告 する.

2.

次世代無線システムとインバータ機器 との共用

1

は車や家庭内で,多くの無線機がインバータ装 置と稠密配置して使用される様子を表している.

2020

年以降に使用開始が見込まれる第

5

世代携帯電話シス

1 稠密配置される無線機とインバータ装置 Fig. 1 Densely placed radio equipment and inverter

equipment.

2 高速スイッチングデバイスによる高調波の広帯域化 Fig. 2 Broadband harmonics by high-speed switching

equipment.

テムは,

SiC

GaN

などの高速スイッチングデバイ スを内蔵したインバータ機器と近接配置される.高速 スイッチングのためインバータ回路から発生する高調 波はより広帯域に及び,これが原因となって不要電波 も広帯域化し,その強度は増加すると考えられる.

良く知られるように,インバータ回路の電流波形は 図

2

のような台形波となる.同図は一定の繰返し周期

T

のインバータ回路において,オン時間が

τ

,立上り 時間及び立下り時間がともに

τ

r であると想定し,そ の周波数スペクトルを下部に記したものである

[2]

.高 速スイッチングデバイスによって立上り及び立下り時 間

τ

r が短くなると,赤線で示したように,広域側の 高調波レベルが上がり,無線機の最小受信感度を劣化 させる可能性がある.

その現実性を調べ,磁性体による新しい材料・部品 技術を提案することを中期的な目標とし,本論文で は以下の各章で述べるように,受信側材料開発,送 信側材料開発,高速スイッチングデバイスを用いたテ ストベンチ開発,及び

HILS

Hardware-on-the-Loop Simulation

)方式

[3]

の移動通信性能評価システムの 開発を並行して行った.

3.

受信回路用ノイズ抑制磁性材料

3. 1

概 要

不要電波の受信回路への混入経路にはアンテナを介 した主経路と,きょう体や実装ボードなどを介した側 路がある.主経路にノイズが混入した場合には対策が 困難であるため,これを低減する材料・部品技術の適 用先は,送信側のインバータ機器である.これは次章 で述べる.その一方で,側路へのノイズ結合の場合は,

電源・グラウンド配線等を介した伝導結合を低減し,

一般にノイズに敏感と言われる低雑音増幅(

LNA

)や 局部発振器(

VCO

)へのノイズ混入を低減することが 有効と思われる.

これに関して,

LTE

受信実回路(

Band1

2110

2170 MHz

)を実装した

RF IC

チップのパッシベー ション上に

CoZrNb

磁性薄膜をスパッタ成膜し,強磁 性共鳴に伴う磁気損失によってノイズを低減すること により,受信感度を

10 dB

向上可能であることが報告 されている

[4]

.これは磁性体を

IC

製造工程の一環と して実装する技術である.これに対して本研究では,

磁性体の実装先をインタポーザ上とし,磁性体をペー スト化してチップ実装工程の一部としてノイズ抑制に 適用した.これにより,真空装置が不要で,短時間に

(3)

大面積に磁性体を実装できる.また様々な磁性微粒子 を開発・選定してペースト化することより,より広帯 域に磁気損失を発生可能となり,

IC

チップレべルのノ イズ抑制技術を大きく進展させうると考えられる.

以下,

IC

チップのインタポーザに適用可能な六方晶 フェライト微粒子材料を実現した上で磁性ペースト化 し,

PCB

インタポーザにおける実装工程評価を行っ た結果について述べる.

3. 2

複合磁性シートの諸特性

六方晶フェライト材料は,ノイズ抑制の中心周波数に あたる強磁性共鳴(

FMR

)周波数が

20 GHz

を超す高 周波材料として知られ,

Sr

系フェライト(

SrFe

12

O

19 はその代表的材料である.この

FMR

周波数を目標と する

6 GHz

以下の周波数帯にチューニングするため には,基本組成の

Sr

2+及び

Fe

3+イオンを

Co-Ti

等 の金属イオンに微量置換することが有効で,わずか

0

1.5

原子

%

の置換で

FMR

周波数を

50 GHz

から

1 GHz

程度まで広範にチューニング可能との報告があ る

[5]

.材料科学的には結晶磁気異方性を低減させて いる.

工業応用上の課題は,

Co-Ti

金属イオンを

0.1

原子

%

の精度で正確に制御し,微粒子化の上バインダー樹 脂と混合して複合磁性シートを形成し,インタポー ザ基板と

IC

チップとの空隙に塗布可能とすること である.空隙の高さは高々数

10 μm

でありこれが 塗布厚の目安となるから,微粒子の粒径を数

μm

以 下に細かくして均一塗布する必要がある.以上の考 えに基づき,

SrFe

12

O

19 の一部を

Co-Ti

で置換した

SrCo

X

Ti

X

Fe

122X

O

19

X

は,

1.0

1.2

,及び

1.4

%

)について,それぞれ

1200

1300

C

で焼成後,

ボールミルで粉砕し平均粒径

2.0 μm

0.5 μm

の微 粒子を作製した

[6]

.これをポリウレタン樹脂と混合 し,混合液全体に対する微粒子の体積比率を

65%

した(以下,

65 vol%

.次に混合液をポリイミドシー ト上に滴下し,スチール製の薄い板状の刃(ドクター ブレードと呼ばれる)で一定厚以上の余分な混合液を かき取り,これを数回繰り返して重ね合わせ複合磁性 シートを得た.図

3

に,複合磁性シート表面の走査電 子顕微鏡(

SEM

)写真を示す.空隙は少なく成形され ているが,粒子はランダムに配向している様子がわか る.比透磁率を高めるには面内に配向配列することが 望ましいので,磁場中での成膜等と更なる高充てん化 を課題としている.

これらの試料の

FMR

周波数をシールド短絡

MSL

3 複合磁性シートのSEM写真 Fig. 3 SEM image of composite magnetic sheet.

4 複合磁性シートの比透磁率

Fig. 4 Complex permeability of magnetic composite sheets.

[7]

で測定した結果を図

4

に示す.置換量

X = 1.4

において,

FMR

周波数は

2.5 GHz

まで低下している.

すなわち,

2.5 GHz

17 GHz

X = 1.0

)の広い周波 数範囲でノイズ抑制の中心周波数のチューニングが可 能であることを確認できた.

上記微粒子ペーストをメタルマスク方式でガラスエ ポキシ製

PCB

インタポーザに

50 μm

及び

80 μm

厚と して塗布し,

IC

チップの実装(接着)を行った.

IC

チッ プに割れ等の異常は認められず物理的に接着している 事を確認した.今後,ノイズ抑制効果の検証を進める.

4.

ノイズ抑制シートによるインバータ機 器の

GHz

帯までの放射ノイズ抑制

4. 1

概 要

スイッチング素子として

SiC

を搭載するインバータ 機器から放射される電磁ノイズの発生源と伝搬経路を 明らかにするとともに,ノイズ抑制シート(

NSS

)に

(4)

5 インバータシステムの放射測定 Fig. 5 Measurement of radiated emission from the

inverter system.

よる不要電波抑制効果の検証を行った.

4. 2

実験及び解析方法

5

に示すインバータシステム(スイッチング周波 数

200 kHz (MAX)

,定格出力

6 kW

)を,電波暗室内 のターンテーブル上に設置し,ターンテーブルを回転 させながら放射レベルを測定した.測定にはホーンア ンテナを用い,本章の測定周波数下限である

500 MHz

(自由空間における波長

λ =

0.6 m

)においても遠 方界とみなせる距離(

λ/(2π) =

0.1 m

以上)とな るように,測定対象装置から

0.2 m

の位置に設置した.

4. 3

実 験 結 果

3 GHz

程度までの周波数帯域において放射ノイズが 観測された.また,制御ユニットとメインユニット間 を繋ぐフレキシブルフラットケーブル(

FFC

)がアン テナに近づいた位置において放射レベルが最大となっ た.つまり,この

FFC

が主要なノイズ伝搬経路

/

放射 源であると推定された.

FFC

の 両 面 に ,本 章 の 測 定 周 波 数 範 囲 で あ る

500 MHz

から

2.1 GHz

で比透磁率虚部

μ

r

が比較的 高く(同帯域で

μ

r

” = 15

30

),損失によるノイズ抑 制効果が期待できる

NSS

(厚さ

300 μm

)を敷設した ところ,放射ノイズの低減が観測された.

NSS

敷設前 後の放射レベルの差分を図

6

に示す.

0.6

2 GHz

の 帯域において最大約

10 dB

の抑制効果が確認できた.

一方,一部の周波数で

NSS

敷設によりノイズレベ ルが逆に上がっているのは,

NSS

の比透磁率実部

μ

r

により

FFC

(ノイズを放射するアンテナとして振舞 う)の共振周波数がシフトしたことによる見かけ上の ものである.また,ノイズ抑制効果の周波数特性が目

6 フレキシブルフラットケーブルに取り付けた300µm 厚のNSSによる放射雑音の抑制効果

Fig. 6 Radiated noise suppression effect attained by 300µm-thick NSS attached on flexible flat ca- bles.

論見通り(

μ

r

と角周波数(

ω

)の積に比例し,測定 周波数範囲では効果の度合いが単調増加する)になっ ていないのは,

FFC

以外のユニットから放射されるノ イズも検出しており,

FFC

における

NSS

の効果のみ を評価することができていないためであると考える.

以上のように,インバータ機器から放射される不要 電波の抑制方法として,

NSS

をケーブル等のノイズ伝 搬経路へ適用することで一定の効果が得られることが 確認できた.

5.

非侵襲光磁気プローブ

5. 1

概 要

不要電波対策のために必要不可欠な近傍磁界測定手 法として,シールディドループコイルのような金属プ ローブを用いた方法

[8], [9]

がある.しかし,金属製の プローブは本来の磁界分布を乱してしまう

[10]

ため,

磁気光学効果を用いることで金属を排した侵襲性の極 めて低い測定方法が提案されている

[11]

.筆者らはこ れまでに磁気光学効果とパルスレーザを用いたストロ ボ法により,

1 MHz

から

1 GHz

の周波数範囲におい て位相を含んだ磁界波形の測定を行うとともに,マイ クロストリップ線路から発生する微弱な磁界が測定で きることを示した

[12]

.本報告ではその基本的原理,

並びに

6 GHz

までの高周波磁界計測装置開発に関す る現時点での主な成果について概説する.

5. 2

基 本 原 理

磁気光学材料にレーザ光を入射すると,内部の磁化 状態に応じて光の偏光面が回転する(ファラデー効果). そのため,磁気光学材料周辺の磁界により材料内部の 磁化状態が変化すれば,それを光の変更面の回転とし

(5)

7 可搬型装置でのMSL近傍磁界計測例 Fig. 7 Near field measurement of MSL by the

mobile-type system.

て検知することができる.本開発においては,

6 GHz

までの高周波磁界計測を目指して磁気光学材料の異方 性を含めた特性を検討し,本計測に適した材料として ビスマス置換イットリウム鉄ガーネットを選択した.

光学定盤上に光学系を構築し,対物レンズを通して 測定対象物近傍に設置したガーネットに光を照射し,

反射光を光ディテクタにより検知した.感度向上のた めに,バースト変調を利用してロックインアンプによ る増幅を行った.

5. 3

主 な 成 果

前述の基本原理に基づく測定感度の向上並びに広帯 域化に関する検討を行い,

6 GHz

までの近傍磁界計 測が可能であることをマイクロストリップライン近傍 の磁界分布計測から明らかにした.空間分解能はレー ザのスポットサイズで決まり,最小で

1 μm

まで小さ くできた.レーザ照射位置を

2

次元スキャンするこ とで近傍磁界強度の分布を可視化できることを示し た.加えて,この原理に基づく磁界計測装置の実用化 を目指して可搬型装置の試作に注力した.現時点で

245 ×100 ×50 mm

のボディーに

10 mmϕ × 150 mm

のガラスチューブを接続し,そのチューブ先端部に磁 気光学材料を取り付けた可搬型装置を試作した.それ を用いて電子回路基板上の配線を横断する向きに近傍 磁界分布を測定した例を図

7

に示す.配線幅端部で出 力が得られており,近傍磁界を検出できることが明ら かとなった.小型化と高感度化が課題である.

6. SiC

GaN

パ ワ ー デ バ イ ス に よ る

WPT

共通テストベンチ

6. 1

概 要

近年社会普及が進む電気自動車

(EV)

向けの給電

1 電気自動車用WPTの仕様の概要 Table 1 Outline of automobile WPT specifications.

8 WPT装着予定の電気自動車

Fig. 8 An electric vehicle to be equipped with WPT.

システムとしてワイヤレス電力伝送システム

(

以下

WPT)

が規格化されようとしており,今後電波環境が 大きく変化することが想定される.本研究では

WPT

を雑音発生源の代表のテストベンチとした電波環境の 構築を実施するとともにスイッチング素子の高速化に ともなった技術課題の抽出を実施した.

6. 2

実 施 内 容

IEC

ISO

において規格化が進められている

EV

WPT

の情報

(

1

参照

)

をもとに仕様検討を行い,

SiC

GaN

等の高速パワーデバイスを搭載したイン バータによる

WPT

テストベンチの設計・製作を実施 した.また,出力性能確認と,伝導妨害波及び

10 m

法の放射測定による国際規格

(CISPR11)

適合評価を 実施した.

SiC

及び

GaN

インバータを搭載した

WPT

テスト ベンチによる出力性能評価試験の結果,それぞれ

3 kW

の目標を達成した.また国際規格

(CISPR11)

適合評 価において現状のノイズレベルを把握し,高調波電流 測定による対策箇所の特定を実施した結果,ノーマル モードにおいてはインバータ部のノイズが主であるが,

コモンモードについてはコイル部にも高調波ノイズが 観測されたため,インバータ出力部にもコモンモード チョークコイル等の対策が必要であることが明らかと なった.それらの対策を実施し,

47 MHz

68 MHz

においてアンテナ垂直時に最大

14.1 dB

オーバーし ていたが,その他の周波数帯では全て満足することを 確認できた.更に

GaN

素子を用いたインバータでは

(6)

30 MHz

以上に広帯域化したノイズが確認され,今後 の出力拡大に向けた技術課題を抽出することができた.

この技術課題を解決しつつ,図

8

のような電気自動 車に

WPT

装置を装着し,モビリティの高い共通テス トベンチとして今後の研究開発に供する予定である.

7.

スイッチング機器による不要電波と移動 通信へのインパクト

7. 1

概 要

AC-DC

コンバータやインバータあるいは

DC-DC

コンバータなどのスイッチング機器は身近な

LED

照明 から産業装置に幅広く使用され,その市場規模と出力 電力範囲が拡大している.ここで大出力のスイッチン グ機器から発生する不要電波が,広く無線通信(

kHz

MHz

帯域)に影響を及ぼすことが知られている.

本研究では,無線通信の代表的な存在である移動通 信における周波数利用の拡大と周波数資源の有効活 用を目的として,

700 MHz

6 GHz

の周波数帯域に おけるスイッチング機器からの不要電波に着目し,極 めて高感度な移動通信に対する影響を評価するため,

−170 dBm/Hz

以下の測定分解能を有する不要電波環 境評価システムを確立する.更に,不要電波が移動通 信に及ぼす影響について,通信システムシミュレーショ ン及び

LTE

級の実受信機(受信回路)を含む

HILS

を駆使して明らかにする.

7. 2

実施内容と主な成果

(1)

不要電波の高分解能評価

大出力スイッチング電源機器の一つであるワイヤレス 電力伝送システムを模擬送信設備とみなし,

3 kW

級の

WPT

試作器を例題として,移動通信端末の最小受信 感度に影響する微弱な近傍不要電波(

−170 dBm/Hz

以下)について,ループコイル型プローブや狭帯域ア ンテナで捕捉し,スペクトラムアナライザでレベル検 出した.不要電波の発生メカニズム解析には,電磁界 の攪乱が少ない,光プローブを配線等の近傍磁界評価 に活用し今後評価を実施していく.

狭帯域測定により低域の強い信号を除去することは 最小受信感度の評価に必要である.本研究による不要 電波環境評価システムでは,スペクトラムアナライザ に固有のノイズフロア及びダイナミックレンジ等によ る測定感度の制限を外付けのフィルタ及び低ノイズ高 周波アンプを用いて抑制し,

−177 dBm/Hz

の高分解 能測定を実現している.

試作した模擬送信設備から発生する不要電波を分

析した結果,基本スイッチング周波数

86 kHz

のおよ

12,000

倍にあたる高調波成分の存在を

1 GHz

域で確認した.また,被測定物の近くで携帯端末を使 用するケースを想定したとき,被測定物から

530 mm

離れた距離での不要電波レベルが

830 MHz

帯域で

−163 dBm/Hz

の大きさであり,移動通信性能に影響 を及ぼす可能性のある電力であることを確認した.

(2)

不要電波による移動通信へのインパクトの評価

LTE

級受信端末と移動通信システムシミュレータ を組み合わせた

HILS

方式の評価システムを用い,不 要電波による移動通信性能への影響を評価した.

LTE

通信方式として,

5 MHz

周波数帯域,

QPSK

変調

Band1

Down Link

周波数:

2110

2170 MHz

)を選 択し,トランシーバチップとベースバンド信号処理を ソフトウェアで構成した.携帯電話に使用されている アンテナと同様な特性をもつダイポールアンテナを 使用してスイッチング機器から発生する不要電波を捕 捉するとともに,

LTE

受信信号

(Down Link)

と混合 器により合成し,

LTE

級受信端末のスループットを

HILS

により解析した.これにより,図

9

に示す不要 電波のインパクトを移動通信端末の最小受信感度を指 標値として評価した.

無線機器の国際規格である

3GPP

規格では,

LTE

方式

Band1

5MHz

周波数帯域における最小受信感度 は

−100 dBm

と定められている.本研究による

LTE

級受信端末では,不要電波がない場合の最小受信感度 は

−102 dBm

であるが,スイッチング機器

(AC-DC

コンバータ,スイッチング周波数

750 kHz)

の発生す

2.12 GHz

付近の不要電波により

10 dBm

程度の劣

9 不要電波の影響によるスループットの劣化例 Fig. 9 Example of throughput deterioration by the

effect of undesired radio wave.

(7)

化が生ずることを確認した.

8.

む す び

(ア)受信感度の低下防護のための広帯域フィルタ リング技術の開発

受信側微小電力対応材料として

Sr

系六方晶フェライ ト材料でノイズ抑制の中心周波数を基材固有の

20 GHz

から

2.8 GHz

へ約

1

桁の広範囲で変化させることに 成功し,最終目標とする

700 MHz

6 GHz

の広帯域 対応に向けて確実にマイルストーンを達成している.

受信回路用インタポーザへの実装法を具体化させつつ ある.

(イ)送信設備等の高調波雑音抑制のためのフィル タリング技術の開発

低周波大電力下における送信側対策用新磁性体とし て,ノイズ抑制シート(

NSS

)の材料特性を飛躍的に 改善する材料設計指針を見出し,エ項のテストベンチ を構築するインバータ機器に試験実装され,ノイズ抑 制効果が実証されている.

(ウ)近傍磁界測定技術の開発

先駆的な可搬型光磁界プローブがノイズ発生源の特 定に有用であることが実証されつつある.測定周波数

6GHz

を実現している.

(エ

–1

)模擬送信設備共通テストベンチの開発

SiC

及び

GaN

スイッチング素子による試作模擬送 信設備(

3 kW

WPT

を想定)が

CISPR11

を満た すことを確認し,他項の研究開発に供した.本設備と 電気自動車との接続準備に入った.

(エ

–2

)電波環境評価システムの開発

無線通信性能評価に充分な

−177 dBm/Hz

の計測 感度を実現した.これは

CISPR11

等の技術基準の定 める基準値に比べて充分高感度である.

(エ

–3

)不要電波のデータ化及び無線通信性能の評 価手法の開発

高速スイッチング素子を用いたインバータ機器から 発射される電磁妨害波は,

CISPR11

等で規定された 許容値を満足する一方で,インバータ機器と無線通信 機器が稠密に配置された電波環境においては,無線通 信性能を劣化させる場合があることを明らかにできた.

謝辞 日頃ともに研究開発を推進する共同研究者各 位に感謝します.有識者としてご指導賜る和田修己教 授(京都大学)をはじめとする総務省電波資源拡大の ための研究開発「不要電波の広帯域化に対応した電波 環境改善技術の研究開発」運営委員会委員各位に感謝

します.

WPT

装置を装着予定の電気自動車を開発さ れた東北大学未来科学技術共同研究センター次世代移 動体システム研究会の長谷川史彦教授(センター長)及 び松木英敏教授(研究会代表)に感謝します.実験にご 協力頂いたキーサイト・テクノロジー(合),ネオアー ク(株),宮城県産業技術総合センターに感謝します.

本研究の一部は,総務省電波資源拡大のための研究 開発,日本学術振興会二国間共同研究事業(日本

ンド),東北大学電気通信研究所共同プロジェクト研 究会

H27-B05

の補助を受けた.

文 献

[1] 電波有効利用の促進に関する検討会報告書,第2 利用 者視点に立った電波の有効利用の促進,総務省(平成24 1225日),Dec. 2013.

[2] Clayton R. Paul(著),佐藤利三郎(監修),櫻井秋久

(監訳),EMC概論,7.2節,pp.383–403,三松,東京,

1996.

[3] N. Azuma, T. Makita, S. Ueyama, M. Nagata, S.

Takahashiz, M. Murakamiy, K. Horiy, S. Tanaka, and M. Yamaguchi, “In-system diagnosis of RF ICs for tolerance against on-chip in-band interferers,” Proc.

IEEE Int’l Test Conf., pp.12.3.1–12.3.9, Nov. 2013.

[4] M. Yamaguchi, S. Tanaka, Y. Endo, S. Muroga, and M. Nagata, “On-chip integrated magnetic thin-film solution to countermeasure digital noise on RF IC,”

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[5] S. Thompson, N.J. Shirtcliffe, E.S. O’Keefe, S. Appleton, and C.C. Perry, “Synthesis of SrCoxTixFe(12-2x)O19 through sol–gel auto-ignition and its characterisation,” J. Magnetism and Mag- netic Materials, vol.292, pp.100–107, Nov. 2005.

[6] R. Sai, M. Yamaguchi, S. Takeda, S. Yabukami, and S. Shivashankar, “Co- and Ti-substituted M-type hexaferrites for high frequency applications,”40 日本磁気学会学術講演会,6aB-1, Sept. 2016.

[7] S. Takeda, T. Hotchi, S. Motomura, and H. Suzuki,

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Magnetics Society of Jpn., vol.39, no.6, pp.227–231, Nov. 2015.

[8] J. Dyson, “Measurement of near fields of anten- nas and scatters,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.AP-21, no.4, pp.446–460, July 1973.

[9] 玉置尚哉,増田則夫,栗山敏秀,ト 金清,山口正洋,荒井 賢一,“フリップチップ接続を有する近傍磁界計測用薄膜微 小シールディドループプローブ,信学論(C),vol.J87-C, no.3, pp.335–342, March 2004.

[10] M. Takahashi, H. Ota, K.I. Arai, and R. Sato, “Mag- netic near-field distribution measurements above a patch antenna by using an optical waveguide probe,”

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(8)

[11] M. Takahashi, K. Kawasaki, H. Ohba, T. Ikenaga, H.

Ota, T. Orikasa, N. Adachi, K. Ishiyama, and K.I.

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[12] H. Nasuno, S. Hashi, and K. Ishiyama, “Strobo- scopic technique for measuring magnetic-field wave- forms utilizing magneto-optical effect,” IEEE Trans.

Magn., vol.47, pp.4011–4013, Oct. 2011.

(平成291018日受付,1114日再受付,

1127日早期公開)

山口 正洋 (正員)

1979東北大学・工卒.1984同大大学院 博士課程了(工学博士).2003同大大学院 工学研究科教授,2010同大未来科学技術 共同研究センター兼務,現在に至る.高周 波ナノ磁性体とその応用,EMCにおける 磁気技術,及び磁気計測・EMC計測など の研究に従事.

田中 聡

1977日本大学・工卒.2000ルネサスエ レクトロニクスマルチメディア事業部エグ ゼクティブ.2013東北大学未来科学技術共 同研究センター特任教授.現在,通信分野 の研究に従事.

吉田 栄吉

1982青山学院大大学院化学専攻修士課 程了.2002東北大大学院材料物性学専攻 博士課程了.2010 NECトーキン執行役員 材料研究開発本部長.2016同社フェロー.

2017東北大学産学連携先端材料研究開発 センター特任教授.博士(工学).現在,磁 性材料と環境電磁工学に関する研究開発と産学連携業務に従事.

石山 和志

63東北大大学院工学研究科電子工学 専攻修士課程了.同年東北大学電気通信研 究所助手.平15同助教授,平19同教授.

博士(工学).磁気工学に関する研究開発に

従事.

永田 真 (正員:シニア会員)

5学習院大大学院物理学専攻修士課程 了.平7広島大大学院材料工学専攻博士課 程退学.同年,広島大助手,平14神戸大 助教授,平21同教授.現在同大学院科学 技術イノベーション研究科教授.博士(工 学).VLSIにおける雑音とセキュリティに 関する研究開発に従事.

近藤 幸一

1996東北大学大学院工学研究科博士前 期課程了.同年,株式会社トーキン入社.

2005東京工業大学大学院理工学研究科博 士後期課程了.2013株式会社トーキン材料 研究開発本部マネージャー.博士(工学).

現在,高周波磁性材料及びそのEMC応用 に関する研究開発に従事.

沖米田恭之

1999秋田大学鉱山学部物質工学科卒.

2006昭和飛行機テクノサービス入社.非 接触給電装置の開発に従事.2012昭和飛 行機工業株式会社入社.現在,非接触給電 装置の開発に従事.

佐藤 光晴

1986東北学院大学・工卒.2004 NEC トーキンEMC事業部部長職.2015東北 大学電気通信研究所入所.2016東北大学 未来科学技術共同研究センター産学官連携 研究員.現在,磁性材料の研究に従事.

宮澤 安範

1992東北学院大学大学院工学研究科電気 工学専攻修士課程了.1998凌和電子(株)

入社.2008(株)東栄科学産業入社.2015 東北大学未来科学技術共同研究センター産 学連携研究員.現在,高周波磁気計測装置 の設計開発,環境電磁雑音計測技術の研究 に従事.

畠山 賢介

1977宮城高専電気工学科卒.1981 ニー(株)入社.2013東北大学未来科学技 術共同研究センター産学連携研究員.2015 同センター特任准教授.現在,ワイヤレス 給電技術及び,Li-ionバッテリーモジュー ル設計試作・応用技術研究に従事.

図 2 高速スイッチングデバイスによる高調波の広帯域化 Fig. 2 Broadband harmonics by high-speed switching
図 4 複合磁性シートの比透磁率
Fig. 6 Radiated noise suppression effect attained by 300 µ m-thick NSS attached on flexible flat  ca-bles
図 8 WPT 装着予定の電気自動車

参照

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