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実務的手法による津波波力の評価

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Academic year: 2022

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第30回土木学会地震工学研究発表会論文集

実務的手法による津波波力の評価

-直立構造物に作用する波力の数値計算-

鴫原良典

1

・岩瀬浩之

2

・藤間功司

3

・小竹康夫

4

1防衛大学校システム工学群建設環境工学科助教

(〒239-8686 横須賀市走水1-10-20)

E-mail:[email protected]

3株式会社エコー防災・水工部 (〒110-0014 東京都台東区北上野2-6-4)

E-mail: [email protected]

3防衛大学校システム工学群建設環境工学科教授 (〒239-8686 横須賀市走水1-10-20)

E-mail:[email protected]

4東洋建設(株)鳴尾研究所 (〒663-8142 兵庫県西宮市鳴尾浜1-25-1)

E-mail:[email protected]

直立構造物に対して作用する津波波力の評価方法に係る検討として,建物群に作用する津波の水理実 験に対して数値計算を実施し,実務的手法として提案されている既往の波力推定手法の適用性について 検討した.浅水理論計算に基づく2次元平面モデルでは陸上遡上津波の再現性に問題があり,提案されて いる波力推定式を利用するとほとんどの場合において過小評価となることがわかった.

Key Words : tsunami wave force, structures, numerical simulation

1.はじめに

陸上構造物に作用する津波波力を推定し,安全性 を評価することは我が国の津波防災対策として非常 に重要であり,これまで水理実験や数値計算を利用 した研究が報告されている.例えば水理実験を通じ て波力や波圧の特性を調べ,陸上の通過波水深や流 速などの諸量と波力との関係から構造物に働く津波 波力の推定式が提案されている 1).また,直接的に 波力を推定する方法として一般的には数値計算が実 施されており,水理実験結果と計算結果の比較から 妥当な数値モデルとして提案されている.

このように津波波力に関する知見は数多く得られ ているものの,各々が限られた実験条件下において 評価しており,提案されている波力推定式や数値モ デルを総合的に評価した例はない.そこで本研究で は,ビルなどを代表する直立構造物に対して作用す る津波波力の評価方法に係る検討として,既往の水 理実験に対して数値計算を実施し,実務的手法とし て提案されている既往の波力推定手法の適用性につ いて検討した.

なお,本文は土木学会「地震工学委員会・海岸工 学委員会・津波被害推定ならびに軽減技術研究小 委員会」の関係者によって作成されたものである.

2. 水理実験の概要

数値計算による波力推定手法を比較するために,

シマモラら(2007)2)による水理実験の再現計算を実 施した.シマモラらは図-1に示すような平面水槽 を用い,護岸背後に設置した建物群に作用する津 波段波波力と陸上での浸水深を測定し,構造物の 配置および護岸からの距離と波力減衰の関係につ いて明らかにしている.本研究では数多くある実 験ケースの中から,図-2に示すCase AからCase F までの6ケースについて計算を実施した.

Wave paddle

Sea

60 1:3

3 2

383 175 181 370

695 585

Land

Unit:cm 55

45 257

80

図-1 実験装置の概要(シマモラ,2007)

(2)

3. 数値モデル

本研究では2次元平面モデルと3次元モデルの数 値計算を実施し,両者の再現性の比較を行った.2 次元平面計算には支配方程式に水深方向を積分し た 浅 水 理 論 ( 非 線 形 長 波 理 論 ) を 採 用 し , Staggered leap-frog差分法により数値解を求めた.

また,3次元計算には3次元数値波動水槽(CADMAS- SURF/3D ) を 使 用 し た . こ れ は 支 配 方 程 式 に Navier-Stokes方程式をポーラスモデルに基づいて 拡張したものであり,自由表面解析モデルにVOF法 を採用している.詳細な計算方法については,前 者は後藤ら(1982) 3)が,後者は有川ら(2005) 4)が詳 しい.本研究は以下の説明において,浅水理論に 基づく計算を2次元平面モデル,Navier-Stokes方 程式に基づく計算を3次元モデルと称する.

4.計算条件

(1)計算領域

計算領域は図-3 に示すように浅海域を含めた構 造物模型付近の領域とし,境界条件として,護岸 から 75cm 沖側で水理実験により計測された水位の 時系列を入力する.2 次元平面モデルと 3 次元モデ ルの格子間隔の条件を表-1 に示す.実験のスケー ルが 1/200 であるので,2 次元平面モデルでは実ス ケールで 2m 格子と設定していることに相当する.

なお,3 次元モデルによる計算では MPI(Message Passing Interface)を利用した 8CPU の並列計算

を行っている.

(2)津波波力の計算方法

波力の計算方法として,2 平面次元モデルの場合 は 3 種類の推定式を,また 3 次元モデルでは 1 種 類の方法について検討した.

a)抗力(2 次元平面モデル)

建物位置での通過波の水位と流速を算出し,抗 力として以下の式で求めた.

F=

ρ

2CdBWhiui2 (1)

ここで F は建物に作用する水平波力,ρは水の密 度,Cdは抗力係数,B は建物幅,W は建物の奥行き,

hiは最大通過波水深(図-4 参照),uiは最大通過 波流速,である.抗力係数は Cd =3.0 とした5). b)朝倉式(2 次元平面モデル)

朝倉ら(2000)は,水理実験から陸上での段波津 波(非分裂波)の水平波力を推定する式として以下 を提案した.

F=4.5

ρ

ghi2B (2)

ここで g は重力加速度である.すなわち構造物に 作用する波圧分布は通過波の最大水深のみで評価 することが可能であることを意味する.

h

f

Building

ρghf

h

i

図-4 hiと hf sea land

Load cell Resistant

20cm 40cm

60cm Case A

Case B

Case C

Case D

Case E

Case F

図-2 建物群の配置条件

1,156,000 0.25

0.5 3D(CADMAS- 0.5

SURF/3D)

304,848 -

1 2D(Shalow water) 1

total grid dz

dy dx(cm) model

1,156,000 0.25

0.5 3D(CADMAS- 0.5

SURF/3D)

304,848 -

1 2D(Shalow water) 1

total grid dz

dy dx(cm) model

表-1 計算条件

Input Water level

75cm x3cm

z

170cm

17cm

図-3 計算領域

(3)

c)建物前面での静水圧分布(2 次元平面モデル) シマモラら(2007)は,建物前面での水深 hf(図- 4 参照)に基づく静水圧分布の合力として,式(3) において構造物に作用する水平波力を評価してい る.

F = ρ gh

f2

B

(3)

2 次元平面モデルの計算で波力を推定する場合,

抗力と朝倉式を使用する場合は水深は通過波であ るため,波力を評価する建物は取り除いた状態で 計算を行う.また式(3)を使用する場合においては,

波力を評価する建物は不透過グリッドとして考慮 しなければならない.

d)3 次元モデルでの波力の計算方法

3 次元モデルでの津波波力は,受圧面に相当する 領域に含まれるグリッドを指定し,圧力の面積積 分値を出力することにより,受圧面に作用する全 圧力を津波波力として算定した.

5.計算結果および考察

全ケースの波力最大値について,実験値に対す る計算値の誤差を表-2 に示す.表中,正値であれ ば計算波力が実験より過大評価であり,負値であ れば過小評価であることを意味する.この結果か ら,3 次元モデルに比べ 2 次元平面モデルでは全ケ ースについて計算値が過小評価となっている.

次に前面に障害物がある CaseC,D,E における波 力に関する時系列の比較を図-5 に示す.この図か ら,3 次元モデルは波力の大きさとともに時間変化 についても実験値に良好に一致しているのに対し,

2 次元平面モデルでは波力はほとんど評価できず,

また到達が遅れることによる位相ずれも確認でき る.これは図-6 に示すように,浅水理論計算の陸 上での遡上津波の再現性(過小評価)が問題とな っているためである.特に前面に障害物がある場 合,図-7 で示すような背後に回り込むような挙動 が再現できず,ごくわずかな水深のみが到達する

ためほとんど波力が発生しないことになる.3 次元 モデルでは上記の現象を再現でき良好な結果を得 ることができたが,計算時間は 10 倍以上かかるこ とに注意する必要がある.

6.結論

直立構造物に対して作用する津波波力の評価方 法に係る検討として,建物群に作用する津波の水 理実験に対して数値計算を実施し,実務的手法と して提案されている既往の波力推定手法の適用性

Model (CADMAS-SURF/3D)3D model

Case A -28 -34 -39 11

Case B -30 -49 -37 14

Case C -97 -62 -69 -9

Case D -100 -100 -95 -37

Case E -78 -74 -84 34

Case F -26 -54 -66 25

Eq.(3) (Hydrostatic eq)

Integration of pressure Eq. of

tsunami force Eq.(1) (Drag force)

With obstacle No obstacle

2D model (shallow water)

Case

Eq.(2) (Asakura eq)

表-2 計算結果一覧

実験値に対する推定値の誤差(単位:%)

1.0 0.8 0.6

0.4 0.2 0.0

Force (N)

13 12 11 10 9 8

7 Time(sec)

1.0 0.8

0.6 0.4 0.2

0.0

Force (N)

13 12 11 10 9 8

7 Time(sec)

図-6 波力の時系列分布

1.0

0.8 0.6 0.4

0.2 0.0

Force (N)

13 12 11 10 9 8

7 Time(sec)

Exp.

3D model

2D plane model by Eq.(3) Case C

Case D

Case E

(4)

について検討した.浅水理論計算に基づく 2 次元 平面モデルでは陸上遡上津波の再現性に問題があ り,提案されている波力推定式を利用するとほと んどの場合において過小評価となることがわかっ た.今後,他の機関の水理実験の再現計算なども 検討することで総合的な評価を行う予定である.

参考文献

1) 朝倉良介・岩瀬浩二・池谷毅・高尾誠・金戸俊道・藤 井直樹・大森政則:護岸を越流した津波による波力に 関する実験的研究,海岸工学論文集, 第47巻,pp.

911-915,2000.

2) チャルレス・シマモラ,鴫原良典,藤間功司:建物群 に作用する津波波力に関する水理実験, 海岸工学論 文集,第54巻,pp.831-835,2007.

3) 後藤智明,小川由信:Leap-frog法を用いた津波の数 値計算法,東北大学工学部土木工学科,1982.

4) 有川太郎,山田文則,秋山実:3次元数値波動水槽に おける津波波力に関する適用性の検討,海岸工学論文 集,第52巻,pp.46-50,2005.

5) H. Yeh : Design Tsunami Forces for Onshore Structures, Journal of Disaster Research, Vol.2, No.6, pp.531-536, 2007.

EVALUATION OF TSUNAMI WAVE FORCE BY PRACTICAL TECHNIQUE - NUMERICAL SIMULATION OF WAVE FORCE TO ACT ON STANDING

STRUCTURES -

Yoshinori SHIGIHARA, Hiroyuki IWASE, Kouji FUJIMA and Yasuo KOTAKE

Numerical computation was carried out for the experiment of a tsunami to act on standing structures, and application characteristics of tsunami wave force equations proposed as the practical technique were examined.

Because reproduction of runup tsunami by the calculation of 2 dimensional plane models on the basis of shallow water equation becomes poor precision, the wave force is underestimated when proposed wave force equation is used.

図-6 通過波水深の時系列分布

(赤:2 次元平面モデルの計算値,黒:実験値)

9.80s 9.60s

9.50s 9.70s

図-7 実験と 3 次元モデル計算の津波氾濫過程の 比較(左:実験,右:計算)

参照

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