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世界に先駆けて高ひずみ分子の合成と化学的性質の 解明に成功

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Academic year: 2022

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世界に先駆けて高ひずみ分子の合成と化学的性質の 解明に成功

著者 羽村 季之

雑誌名 K.G.TODAY

発行年 2012‑06

URL http://hdl.handle.net/10236/10280

(2)

11 2012.06

世界初の達成

 多くの失敗の実験を繰り返し、その 原因を考察する過程で「これならでき そうだ」という直感と実践の積み上げ によって独自の新しい合成手法を開 発。高ひずみ芳香族分子の世界 初の 合成を達成し、これらを効率よく供給 する方法を見出すことにも成功。高ひ ずみ化合物を初めて手にし、目を輝か せる研究生とともに達成感に浸った。

この 成 果 は 論 文として 発 表され 、

「Angew. Chemie誌」にHighlightとし ても紹介された。

 羽村准教授によると、合成した分子 は正六角形をしたベンゼン環に複数 の四角形を組み合わせた非常におもし ろい形をしている。今回、その合成を達 成し、高ひずみ化合物特有の潜在的反 応性や構造的特徴を世界に先駆けて 明らかにした。「高ひずみ化合物の合成 を達成した瞬間は鮮明に覚えていて何 ものにも代えがたい大きな喜びであっ た。若手科学者賞の受賞は私ひとりで はなく、この研究に携わった研究室の 全員に送られるもの。皆で喜びを分か ち合いたい」と笑顔を見せた。

新たな発見は予期しない結果から

 趣味の一つである温泉で「ぼーっ」

とつかりながら、「こんなことができる かも」とあれこれ考え実験で試してい る。「おもしろいことに、当初予想して いたこととは異なる結果が 得られて

研究室通信

理工学部 羽村季之研究室

世界に先駆けて

高ひずみ分子の合成と 化学的性質の

解明に成功

K.G.RESEARCH

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羽村 季之 

ɉɚɣ!ɂȱɠȧ 1996年慶應義塾大学理工学部化学 科卒。1998年慶應義塾大学大学院 理工学研究科化学専攻修士課程修 了。2000年東京工業大学大学院理 工学研究科化学専攻博士後期課程

中退。東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻助教などを経 て、2008年から現職。高ひずみ化合物の新規合成法の開発、構造 論的に興味深い新奇芳香族分子の創製、巨大π共役系分子の合 成と機能開拓の研究に従事。趣味はテニス、温泉、映画鑑賞。

新しい発見につながる 」と羽村准教 授。新しい発見の多くはこのような予 期しない結果から生まれてくる。だから こそ結果を頭で考えるだけではなく、

実験を何よりも大切にしている。「実験 中は普段の優しい表情が消えて、厳し い先生になります」というのが研究生 らの先生評。今回の研究の達成後に は研究生らと祝杯をあげるなどチーム ワークは良い。

世の中に役立つものへ

 高ひずみ化合物独特の性質を引き 出し、新しい有機機能性材料の創製 に向けた応用を展開する。有機トラン ジスタ、有機薄膜太陽電池、有機EL素 子などの次世代の有機エレクトロニク スの中核を担う基盤材料の創出に高 ひずみ化合物をうまく活用する。またラ イフワークとして行っている研究の一 環が今回の高ひずみ化合物の合成だ。

今回の受賞を励みに、今後は一層研究 の幅を広げていき世の中の役に立つも のにつなげていくことを目指していく。

未解明への挑戦

 分子は平らな形、丸い形、いびつな 形など様々であり、その形に特有の化 学的性質を示す。レゴブロックのよう に色々な形の分子をいとも簡単に作れ ると思いがちであるが、分子の世界で は合成しやすい形がある。三角形や四 角形の分子は、その大きなひずみのた め、安定な形から大きく逸脱しており、

その合成は容易ではない。こうした高 ひずみ分子は化学的性質が未解明な ものが多く、その研究は未開拓であ る。羽村准教授は、この研究に取り掛 かるにあたり、これまで多くの研究者 の関心を集めながらも合成が達成され ていない高ひずみ芳香族分子に着目 し、独自のアプローチによる合成と化 学的性質の解明を目指した。さらに、

高ひずみ分子特有の性質を活かした 各種有用物質創製への展開を図った。

トライアンドエラーの連続

 「実験は困難の連続だった」と振り 返る。高ひずみ分子はエネルギー状態 が非常に高く、その取り扱いが難しい ため、反応中に壊れてしまうことが頻 繁であった。そのため、壊れやすい分子 をそっと組み立てる戦 略が重要とな り、その場面に適した独自の反応を見 つけ出すため、様々な方法を実践した。

それらの多くは失敗に終わったが、決し て諦めなかった。「トライアンドエラー を繰り返した」とその苦労を語った。

羽村季之理工学部准教授が平成24年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞した。関学大の教員としては初の快挙。

有機化学の分野で新進気鋭の羽村准教授の研究内容をレポートする。

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