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レファレンスコーナー -- 児童労働について知る ( ブックシェルフ)

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レファレンスコーナー ‑‑ 児童労働について知る ( ブックシェルフ)

著者 坂井 華奈子

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 166

発行年 2009‑07

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://hdl.handle.net/2344/00004729

(2)

BOOK SHELF

7 ―アジ研ワールド・トレンド No.66(2009. 7)

 児童労働とは、ILO(国際労働機関)の定義によると原則一五歳未満の子どもの健全な成長を妨げるような労働とされている。昨年一一月、アジア経済研究所図書館のフォトアーカイブス(http://d-arch.ide.go.jp/photo_archive/)に「一九九〇年代のインド社会と子どもたち」と題した特集を公開し、当研究所元理事の田部昇氏から寄贈を受けたインドの不就学児童労働に関する現地調査の記録写真とともにフォトエッセイを掲載した。そこでは、農作業、カーペット織り、サーカス、花火工場などさまざまな形で働く子どもたち、親子三代続くマッチ工女たち、そして青空教室やスラムの学校で学ぶ子どもたちの姿が映し出され、一九九〇年代のインドの様子を垣間見ることができる。しかし、ILOの推計によると児童労働に従事している子どもは二〇〇四年 時点でも二億一七〇〇万人以上とされている(FrankHagemannetal.『Globalchildlabourtrends2000-2004』InternationalLa-bourOffice, 2006)。 なぜこのように将来を担うべき子どもたちが教育を受けることもできず、心身の健全な成長を妨げるような苛酷で搾取的な労働に従事しなければならないのだろうか。この問題について知るための資料を日本語のものを中心に紹介してみたい。 平易な言葉で書かれ、児童労働を包括的に扱っているものとして、岩附由香・白木朋子・水寄僚子著『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。』(合同出版二〇〇七年)がある。冒頭では五歳から家計を支えるためにサッカーボールを縫っていて失明してしまったインドの少女をはじめ、炎天下の農園、路上での物売り、売春、借金の形として奴隷のように働かされた少年など、実体験に基づく子どもたちの声が紹介されており、その悲惨さ、深刻さが伝わってくる。そして、背景にある問題や廃絶のための取り組みがポイントごとに整理されており、この問題への入り口として読みやすい。 ミシェル・ボネ著・堀田一陽訳『働く子どもたちへのまなざし 現代世界における子どもの就労 その分析と事例研究』(社会評論社 二〇〇〇年)では著者が実際に出会った働く子どもたち、彼らを取り巻く家族や企業の論理、各国政府の政策、世論 やメディアなど様々な視点からこの問題を描き出している。著者はILOで児童労働撤廃国際計画(IPEC)を担当するなど、児童労働に深く関わってきた人物であり、実例が豊富で考察も深い。 OECD編著・豊田英子訳『世界の児童労働 実態と根絶のための取り組み』(明石書店 二〇〇五年)では、児童労働と経済発展の関係を主に政策的観点から論じており、巻末には用語集も収録されている。 児童労働による生産物が市場に流通する背景に「企業」が存在することは無視できない。アジア・太平洋人権情報センター編『アジア・太平洋人権レビュー』の二〇〇四年版では「児童労働と企業の社会的責任」として一章を設け、カーペット産業においての「ラグマーク」やココア産業における児童労働防止の取り組みを紹介するとともに、企業側の取り組みとしてメーカーと業界団体の共同出資による監視システムを持つサッカーボール産業を取り上げ、その経緯と内容を紹介し、課題や他の産業への適用可能性について論じている。 近年注目をあびている「フェアトレード」と児童労働も深い関わりがあるが、本誌二〇〇九年四月号で特集されているのでそちらを参照されたい。 藤野敦子著『発展途上国の児童労働子だくさんは結果なのか原因なのか』(明石書店 一九九七年)は、 インドの人口センサス(CensusofIndia)のデータを元に児童労働と出生率、教育、健康の関係を実証的に分析したものである。 しかし、児童労働に関する信頼できる数的データを得ることは容易ではない。なぜならば法的に認められていない、存在しているはずのないものであるため、公式な統計がないか、あっても得られるデータは限定的なことが多い。日本語で参照可能なデータでは、ユニセフ(国際連合児童基金)のMICS(複数指標クラスター調査)の結果がユニセフ著『世界子供白書』の統計に収録されており、日本ユニセフ協会のウェブサイト(http://www.unicef.or.jp)から一部ダウンロード可能だ。また、同書の一九九七年版は児童労働の特集である。 児童労働に特化したデータとしてILOのSIMPOC(児童労働統計情報・監視計画)の調査結果がある。ILO駐日事務所のサイト(http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/)に一部日本語訳が掲載されている。 英語ではあるが、ILO、ユニセフ、世界銀行の共同研究プロジェクトであるUCW(UnderstandingChil-dren'sWork)プロジェクトのサイト(http://www.ucw-project.org/)にも児童労働に関する様々な情報が掲載されている。(さかい かなこ/アジア経済研究所図書館)

レファレンス コーナー 児 童 労 働 に つ い て 知 る

坂井華奈子

参照

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