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尾池工業株式会社(京都府)

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Academic year: 2021

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株式会社出口織ネーム(石川県)

~自社商品の拡大に向けて、知財活動の実践的な体制を整える~

従業員数 11 名 設立年 1950 年 代表者名 出口勉 (代表取締役社長) 企業概要 事業内容 ジャガード織物、織ネーム、織テープ、織ワッペン、のぼり旗、日除け暖 簾、お守り、ミサンガ、ストラップ、袋物、バッグ、織生地等のジャガー ド織物の製造販売 支援年 2006 年(補助) 支援した専門家 弁理士 1 名、特許流通アドバイザー1 名、特許情報アドバイザー1 名、支 援機関の担当者 1 名 支援の内容 特許電子図書館を利用した検索・調査、特許マップの作成と分析、特許流 通(ライセンス)の検討・実行、経営に効果的な知的財産の戦略推進、知 的財産の管理体制(規定など)の制度 支援の成果・課題 特許電子図書館を利用する頻度が高まった 研究開発に関する他の支援策を活用することになった 新規事業が立ち上がった 新しい顧客を開拓することができた 支援概要 知的財産の取り組み体制 兼務担当者 1 名 ■企業の概要と知的財産の経営上の目的・位置づけ ~下請け体質の改善策として知財活動に励むも、効果が見えずに方針転換~ 株式会社出口織ネームは、1950 年に設立されたジャガ ード織物の製造及び販売を手掛ける織物メーカーである。 織物技術を強みに、織ネーム、織ワッペン、紐などの細 巾ジャガード織物の受注生産や、暖簾やタペストリーな どの自社製品の製造・販売を行っている。 現在の出口社長が創業者から経営を引き継いだ 1978 年 当時は、販売先が事実上 1 社に限られていた状態で、価 格決定やデザインの主導権を販売先に握られていた状態 だった。 当時より知財への関心が高かった社長は、下請け体質 からの脱出を画策する中で、特許や実用新案の必要性を 感じて知財活動に取り組み始めた。独自のアイデアやデザインを権利化することによって、自社製品 の展開や価格交渉力において主導権を握ることが容易になると考えたのである。 株式会社出口織ネーム 本社 ところが、製造機械の改造や新商品で特許や実用新案の出願・取得を試みるものの、出願や権利維 持などに費用がかさむばかりで、結果としてほとんど利益に結びつかないという状況が続いた。審査 の途中で権利化をあきらめたアイデアが、後に他社製品に採用されていたという経験もあり、出願対 象の選択や出願するタイミングの難しさから、特許や実用新案の実効性に疑問を持つようになったと いう。

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きと考えるようになり、自社からの新製品等の提案や価格交渉が可能な新規顧客の発掘に力を入れて、 多数の取引先から受注できるようなビジネスモデルへと方針転換を図った(いわゆる「プロダクトアウ トからマーケットインへの転換」ともいえよう)。このようにして同社は、販売先の拡大を実現するこ とができたのである。 ~知財制度とビジネスの時間軸が合わず、知財活動を断念~ ところが、新たな取引先との関係において、最初の段階では同社の企画提案力や商品のアイデアで 勝負できるものの、しばらくすると他社に模倣され、最終的には価格競争に落ち入るという悩みが生 じるようになった。また、社長が新たなアイデアを思い付いて特許や実用新案を出願しても、権利化 されるまでに時間がかかりすぎ、その間に商品の寿命が尽きてしまって出願した意味が失われるケー スもあった。商品のライフサイクルが短いものが多いこの業界では、知財制度の時間軸がビジネスの 時間軸と合わなかったのである。そのような経験が連続したこともあって、社長は差別化戦略として の知財活動を見合わせるようになっていった。 ~支援事業がきっかけとなって、知財活動を再開~ その後、同社は長らく特許や実用新案の出願を行わなかったが、 石川県の関連支援制度が整ってきたこともあって再び知財活動に チャレンジする意欲が甦り、2006 年度の支援事業に応募すること になった。 その支援の中で特許を出願した「昇運凧」というネーミングの 飾り凧は、早期審査によって 2009 年 12 月に特許として登録され た。早期審査制度を利用することによって、ビジネス展開に必要 なタイミングで速やかに権利を取得することができたため、ライ バル企業を牽制することができる、と社長はこれまでとの違いを 実感している。 この「昇運凧」は、まだ事業としては立ち上がり段階にあるも のの、既に近隣の神社への納品が始まる等、ビジネスベースで動 き出している。関東の営業会社での取扱いも決まり、同社は新た な販路として期待を寄せている。 「昇運凧」 干支をあしらった縁起物の凧という商品コンセプトのユニークさや織物としての高級感が、営業先 の神社・仏閣の関心を集めている。その上、特許を取得しているということが、商品の独自性をPR するのに効果を発揮しており、知財の営業面でのメリットも実感するようになっている。なお、この 商品には、製法に工夫をして細やかな風合いを出すなど、特許以外にも様々なノウハウが凝縮されて いるとのことである。 その他、同社では同時期にベンチャー企業と共同研究を行っていた「カラービットコード」という 自動認識コードについても特許出願を行うなど、近年、知財活動を活発化させている。 ■支援内容と成果の関係 ~出願作業を通じて、弁理士との信頼関係を構築~ 前述のとおり、同社が支援テーマとして選択したのは、「神社・仏閣」向けの飾り凧である。

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弁理士、特許流通アドバイザー、特許情報アドバイザー、支援機関の担当者の計 4 名のチーム編成 で、社長と担当者が応対する形で計 7 回行われた。支援の内容は、知財制度の一般論から飾り凧に関 する特許情報の収集、特許マップを使った分析、出願手続き、特許の活用方法など総合的なものであ る。この支援の過程において、先行技術調査や効果的な出願方法など実践的なノウハウについてアド バイスを受けることができたので、同社の担当者は大変参考になったと評価している。 また、長らく特許等の出願を行わなかった同社が知財活動を再開したのは、支援チームの細やかな 支援・助言の影響が大きい。現在、支援チームのメンバーであった弁理士が、同社の知財に関するア ドバイザーとなっている事実から、支援に対する評価が伺えるであろう。 ■支援後の実践・継続状況 ~商品開発の際には事前チェックを行い、出願の判断は市場性を重視~ 支援を機会にして、営業企画の社員 1 名が知財担当(兼務)として任命された。このように、営業 企画という新商品の企画・開発の現場に知財制度を理解した担当者を配置することによって、新商品 のアイデアが生まれた際には知財担当の目を通し、先行技術調査を行うなど、知財面にも配慮した業 務フローが無理なく実践できるようになった。 なお、新たなアイデアや新商品を権利化するかの最終判断は社長自らが行っている。その基準は、 具体的な顧客が想定できるか、リピートオーダーを得られる種類の商品か、一時的な流行ものの商品 ではないかといった、市場性を特に重要な要素としている。 ■事例からの示唆(定着の成功要因) 同社は、40 年以上も前から特許出願等の知財活動に取り組んできたものの、商品のライフサイクル との整合性の問題、特許制度を使いこなし得る体制面の問題などから、自社が主導権を確保できる取 引の拡大という目的に対して、十分な効果を実感することができず、知財活動が定着するには至らな かった。 一方で、新規取引先の拡大、新製品の企画・開発という取り組みを継続することによって、自社主 導の取引を拡大するための基盤形成が進められてきて、2006 年度の支援制度の利用から、改めて特許 出願等の知財活動への取り組みを始めることとなった。支援制度の利用以降は、営業企画の担当者に 知財担当を兼務させ、新商品の企画・開発において知財面にも配慮した業務フローを無理なく実践で きる体制が整備されることとなり、新商品の営業強化のタイミングで関連する特許権の取得を実現す るなど、知財活動の定着に向けた取り組みが身を結びつつある事例と評価できる。

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知財活動の経営戦略上の目的・位置付け ①自社が主導権を確保できる取引の拡大 知財活動を実践する仕組み ①営業企画の担当者が知財担当を兼務 ②新商品の企画・開発に近い位置で先行技術 調査などを行える業務体制を整備 知財戦略・知財経営の知識 過去の経験から業態にあった活かし方を模索 法制度や実務の知識 ①支援事業、社外の専門家(弁理士)から実 践的なテクニックを習得 下請け体質の改善 自社商品の開発 行動 知財で 営業活動を 強化 先行技術調査 知財戦略の考え方 目的 行動 支援事業 権利化 行動 行動 知財活動 知財に配慮した 業務フロー 新規取引先の 開拓 行動 効果を実感できず 一時断念 知財 活 動 の 定 着 に 向 け た 取 組 制度やテクニック 特許の活かし方 気付き 気付き 気付き マーケット・インに方針転換 新規取引先の拡大、新製品の企画・開発 他社の模倣 価格競争の激化

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株式会社岐阜多田精機(岐阜県)

~海外勢の模倣に対抗するため技術のブラックボックス化を志向~

従業員数 91 名 設立年 1980 年 代表者名とプロフィール 多田敏雄 企業概要 事業内容 プラスチック射出成形金型、ダイカスト金型 支援年 2008 年(補助) 支援した専門家 技術士、特許情報アドバイザー 支援の内容 特許電子図書館等を利用した検索・調査 経営に効果的な知的財産の戦略推進 知的財産の管理体制(規定など)の整備 支援の成果 知的財産制度や手続きに対する社長や社員の理解が深まった 特許電子図書館を利用する頻度が高まった 支援概要 知的財産の取り組み体制 4 名 取り組みの主導者:統括部長 ■企業の概要と知的財産の経営上の目的・位置づけ ~若手二代目のグループに所属し金型メーカーとして先進的な取り組みを実践~ 岐阜多田精機は、プラスチック射出成形金型、 ダイカスト金型の設計製作を行う従業員 91 名の 中堅金型メーカーである。複雑形状品の成形を実 現する同社の高度な金型技術は、ユーザーである 自動車部品メーカーなどから高く評価されており、 同社の金型によって成形された部品の中には樹脂 部品としては画期的な形状・機能を有するものも 少なくない。 これまで自動車部品関係の金型製作の比率が上 昇し続け、一次は総売上高の 8 割を占めるに至っ たが、昨年秋以降の不況の影響を受けている。現 在はトイレタリー製品業界からの受注が増えている。 また、国内での操業にこだわる同社は、中国、韓国へのアジア輸出も見据え近く福岡に本社工場と同 規模の工場を立ち上げる予定である。 岐阜多田精機 本社工場 経営者の子息である統括部長は、7 社の金型メーカーの若手二代目から構成されるグループのメンバ ーであり、この会合を通じて知的財産問題を含め様々な情報交換を行っていた。グループのメンバー 企業はいずれも金型業界でも高い技術力を誇るほか、知的財産やマーケティングについて高い意識を 有しており、金型の共同受注や冶工具の販売、特許情報提供サービスを行うなど、金型メーカーとし て先進的な取り組みを実践している。ちなみに同社では経営者は知的財産活動についてはこの統括部 長に全面的に任せている。

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~「ユーザーに迷惑をかけない」が知的財産に関心を持ったきっかけ~ 岐阜多田精機が知的財産に関心を持ち始めたきっかけは、コンプライアンスが厳しくなる中、「知的 財産の侵害問題の発生によりユーザーにおける生産に支障が生じてはならない」と感じたことである。 このため同社は公証役場に図面を持参し、確定日付付与の依頼を行い始めた(後に電子公証に移行)。 ~「特許電子図書館(IPDL)への登録が営業につながる」と気づく~ 大手ユーザーとの雑談の中で、彼らが特許検 索をして金型技術についての情報収集している ことを知った統括部長は「IPDL に当社の特許情 報を登録しておけば、彼らの検索にヒットする ことで営業に使えるかもしれない」と考え、特 殊な構造体の金型について特許出願に力を入れ るほか、他社の特許を調査してそれらに抵触し ないよう特許検索を活用しようとした。 しかしながらそれらのノウハウは社内になか ったため、岐阜県産業経済振興センターからの 薦めもあり、支援を受けることとなった。なお 岐阜県産業経済振興センターは県内の中小企業育 成に非常に熱心であり、知的財産支援の制度につ いても、親身になって相談に対応してくれることに同社は好感を抱いている。中小企業同士のマッチ ングにも彼らは熱心であり、中小企業を集めた交流会などもコーディネートしてくれるという。こう した支援は中小企業にとっては非常に有難いという。 同社の金型によって成形された部品のサンプル ■支援内容と成果の実感 ~特許検索、特許マップ作成の支援を受ける~ 同社が受けた支援内容は、特許検索、特許マップ作成のサポートで、技術士が 15 回ほど来社しても らい講習を受けるというものであった。支援を受けたのは統括部長と設計担当のリーダーとサブリー ダー、そして総務の実務担当者であった。支援の内容は同社にとって適切なものでわかりやすいもの であったという。支援終了後はこの技術士との付き合いはない。 ~特許出願は弁理士に全面的に依頼~ 特許出願については現在 4 件の特許を出願済みであり、うち登録に至ったのは 1 件である。特許出 願はやみくもには行わずに出願の価値があると思われるものを厳選したが、出願の手続き自体は弁理 士に依頼している。 同社としては、大企業のユーザーとの共同出願の方が営業効果が期待できるものと考えている。し かし、同社のユーザーは金型によって成形される製品の特許にしか関心がなく、金型の特許について は関心を示していない。そのため金型に関する特許については同社の単独出願で行っている。

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■支援後の実践・継続状況 ~IPDL はアイデアを生み出す一種の「教科書」~ 同社が手がけている複雑構造の金型は、今までにない世界初の技術が多く盛り込まれている。この ため教科書というものがなく、従来の開発作業は試行錯誤の連続であった。しかし IPDL が活用できる ようになったことから、今ではこれを開発のアイデアを生み出す一種の教科書として活用するに至っ ている。 今回の支援によって知的財産の有用性を実感した同社は、知的財産活用のメリットを知ったからこ そ特許情報に対する対価の必要性を認識した、と述懐し、金型技術のセミナーなども有料であっても 積極的に参加する意思を示す。また統括部長は「小さい企業ほど知的財産を活かしていくべきである のに、小規模な金型メーカーはなかなか知的財産の価値を理解しようとはしない」と述べ、特許情報 に対する対価の支払いを渋りがちの金型業界の体質の改革の必要性を指摘している。 ~特許出願に対する考え方の見直し~ 特許出願については同社は慎重な姿勢を示している。 理由の一つに、金型は知的財産の侵害を受けたとしてもそれを立証することは難しい点が挙げられ る。金型は一種の工具であり、実際に工場に乗り込んで成形機械に取り付けられた金型を見ないこと には侵害の有無を立証できないのである。また、とりわけ中国などアジア諸国では模倣品の生産が横 行しているため、特許を取得して情報を公開することに対する不安もあった。 海外との競争が激しさを増す中、徹底した模倣を仕掛けてくるような海外の同業者に勝つためには、 特許を出願するのではなくむしろ出願せずにブラックボックス化したほうがよいのではないかと同社 は感じている。 ~独自商品の開発~ 一方、同社は 3 年ほど前から、金型のような下 請けではない独自に開発した商品を市場に投入し ていくことを目指している。その一つが、金型製 作で使用する冶工具である。これらを内製化する ことによりコストダウンを図るだけでなく、さら に市場販売を目指している。そしてもう一つは樹 脂製の玩具(ブロック)作りである。百円ショッ プで販売されているような単純形状のものではな く、同社の高度な金型技術を活用した、複雑かつ 精密な構造を備えたブロックは容易に他社には模 倣できないものである。現在実用新案出願中であ り、日本玩具協会の玩具安全(ST)マーク取得 も目指している。 同社による六方精密構造のブロック玩具のサンプル なお、同社はこうした独自商品のアイデアを全社員から求めており、今年も正月休暇明けに社員か らアイデアを募る予定である。これらが実際に市場に投入され利益を上げるようになれば、利益の 20% を発案者に還元しようと同社は考えている(現在のところ特に規定は設けていない)。

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■事例からの示唆(定着の成功要因) 当初、同社は知的財産でトラブルを起こさないことを知的財産活動の目的としていたが、営業に活 用することで自社の技術アピールにつなげるという、経営戦略上の位置づけは前向きなものに移行し ている。また、同社は IPDL を開発のための一種の教科書として活用することで知的財産活動を実践し ているが、そこに至るまでに支援での研修が役立ったものと見られる。汎用的な知識の習得は、統括 部長自身の体験と同業者の仲間や支援で得た情報から会得している。 知的財産活動の経営戦略上の目的・位置付け ①知的財産でトラブルを起こさない ②営業に活用(自社の技術アピール) ←同業者の若手二代目同士の情報交換の中で二代 目(統括部長)が理解 知的財産活動を実践する仕組み ①統括部長+3名で実践 ●経営者は統括部長に一任 ●IPDL は開発のための教科書の位置づけ ←支援で教えられた IPDL 検索、パテントマップ作 成は参考になった 知財戦略・知財経営 ←統括部長自身の体験と同業者の仲間、支援で得 た情報から統括部長自らが体得 法制度・実務 ←支援は参考になった 知的財産に関する情報交換 共同受注のための商社、工業デ ザイン会社の設立 支援 金型メーカーの 二代目グループ の活動 ユーザーに知財問 題で迷惑をかけたく ない 気づき 行動 コンプライアンス の厳格化 海外での特許侵 害例 ユーザーがIPDL を活用 IPDLは営業に活用 できるのではないか 気づき 行動 パテントマップ作成 IPDL活用 経営者は知的財産 について統括部長 に一任 特殊構造の金型につい て特許出願 IPDLを開発に積極的に 活用 金を払っても知的財 産の情報を得たい 気づき

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株式会社岩田製作所(岐阜県)

~支援によって製品開発効率が向上、行政のきめ細かいアフターフォローも寄与~

従業員数 86 名 設立年 1966 年 代表者名とプロフィール 岩田修造 企業概要 事業内容 一般産業用機械(産業ロボット、食品機器等)の構成部品を開発・製 造及び販売 支援年 2007 年(補助) 支援した専門家 技術士、特許流通アドバイザー 支援の内容 特許電子図書館を利用した検索・調査 中小企業向けの知的財産支援策の活用検討 特許マップの作成と分析 知的財産の管理体制(規定など)の整備 支援の成果 社員のモチベーションが高まり、社内が活性化した 特許電子図書館を利用する頻度が高まった 支援概要 知的財産の取り組み体制 兼任者 5 名 取り組みの主導者:開発部長 ■企業の概要と知的財産の経営上の目的・位置づけ ~FA 機器向けの標準部品のカタログ販売で高い競争力~ 岩田製作所は主に FA 機器向けの標準部品を生 産し、カタログ販売を行っているメーカーであ る。 コンベア、ロボット、半導体製造装置などの メーカーがユーザーであり、直接取引きがある ユーザーは約 100 社、間接的に同社の標準部品 を購入している企業は 1 万社以上に達し、同社 が生産、販売している標準部品のアイテム数は 1 万 2000 アイテムに及ぶ。これらを見込み生産 し、在庫として保有してユーザーからの注文に 応じて即日発送するほか、特殊な部品の注文に も応じる受注生産も行っている。受注生産の割合 は全体の 3 割を占めており、この受注生産部門も 受注から発送までのリードタイムはわずか 3 日から 1 週間という短期間で実現している。 こうした迅速な顧客対応を可能にしているのは、多品種少量生産のための生産設備、人員配置、物 流センターでの在庫管理などにおける同社独自のノウハウであり、同社はこのビジネスモデルを 10 年 から 15 年間をかけて構築した。 岩田製作所 本社工場 生産はかつて外注が 8 割を占めていたが、不況の影響により最近は内製率を上げている。昨年秋以 降の不況という厳しい経営環境にもかかわらず、同社は従業員の雇用を維持しつつ、さらなる製品の 原価低減と新たな製品ジャンルの開拓に注力することにより、事態の打開を図ろうとしている。

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に直面~ 準部品のカタログ通信販売のビジネスモデルは、大手 部 財産に関するトラブルに悩みを持っていた同社は、 10 支援内容と成果の実感 カスタマイズ~ そこで数年前から親交のあった岐阜県知的所有 権 細 支 レベルであり、中小企業としては に多いものを教えられたが、開発部員の 開発効率が向上、新アイテムの市場への大量投入が可能に~ を多く投入することが可能となって い ~他社による自社製品の模倣、また自社の意図せざる他社製品の模倣問題 産業機械の標 製品の一例 品商社が先行している。この部品商社も 20 年前から FA 分野に進出 しており、同社にとって最大の競合相手となっている。同社が取り扱 う製品は単純形状のものが多く、他社による模倣が絶えないことが同 社の悩みであったが、この部品商社による模倣は商標にも及んだこと があるという。 このような知的 数年前から商標、意匠登録には力を入れてきたが、特許電子図書館 (IPDL)を十分には活用できていなかった。特許出願も 20 件ほど行い うち 2 件は登録に至ったが、出願は全て弁理士任せであった。 (スタンダードセットカラー) ■ ~支援で得た成果を独自に センターの特許流通アドバイザーのアドバイス を受け、開発部長をはじめとする開発部のメンバ ーが知的財産管理の支援を受けることとなった。 支援の内容は特許データベースの検索、特許明 書の書き方、新商品の企画書の書き方の講習な どであった。支援により、開発部員のモチベーシ ョンが向上し、先行特許を調査することによって ニーズ、シーズのトレンドが把握できるようにな った。 援の内容がハイ ただし、支援人材は大企業の知財部出身者で、 そのまま導入することは容易ではなかった。例えば、出願を行 う際に作成する企画書のフォームは、支援では記載項目が非常 意見を取り入れ簡潔なものにカスタマイズした。支援前は設 計図と現物を弁理士に示し、丸投げの形で特許明細書を作成してもらっていたが、この企画書の作成 により弁理士のもとに何回も説明に出向く必要がなくなり、手続きは大幅に簡素化され、経費の削減 にも繋がった。 社長の岩田修造氏(左)と開発部長の岩田光一氏 ~ また同社では支援により開発効率が大幅に向上し、新アイテム る。不況の今こそ新アイテムの市場投入が重要であると考える同社にとって、支援は経営にとって 大きなプラスとなったといえる。具体的には、これまでは 3 年間かけて月間 2000 アイテムを開発、市 場に投入していたのだが、この 1 月に市場に投入する新商品のアイテム数は 2000 アイテムで、しかも 開発に要した期間は半年間に過ぎないという。

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支援後の実践・継続状況 らのきめ細かいフォローアップ~ 来のようにむやみに新商品を開発し よ 受けるきっかけを作ってくれた岐阜県知的所有権センターの特許流津アド バ 事例からの示唆(定着の成功要因) 品対策、②開発効率の向上の2点であるが、岐阜県知的所有 的財産活動の経営戦略上の目的・位置づけ ■ ~IPDL の積極的な活用、県か 支援を受けたことによって、同社では開発の姿勢も変わり、従 うとはせず、IPDL により他社の特許などを調べることにより従来の商品と何が違うのかを非常に意 識して開発するようになった。さらに最近では、開発部だけではなく営業担当者にも IPDL を営業に活 用するよう促している。 また、開発部長は支援を イザーと月に1回程度定期的に会い有益なアドバイスを受けている。同社は昨年個人所有の特許を 技術移転したことがあったが、その際にもこの特許流通アドバイザーからフォローを得ている。 ■ 同社の知的財産経営の目的は、①模倣 権センターの特許流通アドバイザーとの交流がその「気づき」を促す上で重要な役割を果たしている。 そして実践する仕組みとしては、経営者から知的財産活動について一任された開発部長の下、開発部 員が製品開発に IPDL を積極的に活用しているが、これには支援が大きく参考になったようである。知 財戦略・知財経営、法制度・実務といった汎用的な知識については、支援も参考としながら開発部長 が自ら会得している。 知 上 バイザーとの交流の中で開発 知的財産活動を実践する仕組み 活用 ントマップ作 ①模倣品対策 ②開発効率の向 ←県の特許流通アド 部長が理解 ①開発部長+開発部5名で実践 ●経営者は開発部長に一任 ●製品開発に IPDL を積極的に ←支援で教えられた IPDL 検索、パテ 成は参考になった 知財戦略・知財経営 と支援で得た情報から開発 法制度・実務 なった ←開発部長自身の体験 部長自らが体得 ←支援は参考に 支援 行動 県の技術アドバイ ザーからの示唆 国内での模倣被 パテントマップ作成 IPDL活用 経営者は知的財産 について開発部長 に一任 IPDLを開発に積 極的に活用 支援内容は大企業 向けで、このままで 気づき 開発効率の 大幅な向上

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