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人間環境科学科 天野 正博

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Academic year: 2022

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人間科学研究 Vol.28, No.1(2015)

研究室だより

1.はじめに

 毎年、異常気象による災害が日本各地で起きています。

その背景に地球温暖化があることを、人々はぼんやりとで すが意識しています。こうした地球温暖化に代表される地 球環境問題が生じるメカニズムと、その解決策を明らかに することを目指して、研究室の活動を展開しています。ま た、環境問題の基本概念を構成する世代間、世代内の公平 性をキーワードとして、研究を推進しています。これに加 え、途上国の貧困問題の解決を目指した、開発援助の研究 も行っています。

2.研究室の教育

1)環境問題の生じるメカニズムと解決策についての学習  研究室では環境問題に対する考え方を習得することが、

第一義的な目的となります。3年のゼミでは環境問題の歴 史的変遷を学び、つぎに公害問題から地球環境に問題の焦 点が移った背景である、人口増加及び人類の経済活動の規 模拡大について学びます。そして、環境問題の解決とは持 続可能な社会の実現と同じだということを、食料生産と水 資源を学習素材として学びます。最後に、環境問題の根本 的解決に必要なことは、経済的発展や技術開発ではなく人 間開発であり、途上国が先進国と同じ発展の道を辿るでは なく、別の発展の道筋があるということを学びます。その ためには、人間開発指数などを尺度として考えるべきとい う、国連が1992年の環境サミット以降、世界に訴えている 概念を世代間の公平性(南北間格差の解消)、世代間の公 平性という2つのキーワードを通して学びます。

 人間開発は人々の能力を高め、彼らの活動を阻害する要 因を取り除くことを意味します。ゼミでも学生の能力を高 めるため、グループでプレゼンテーションの準備をし、数 時間に及ぶ議論を通した社会的能力の獲得による人間開発 を目指しています。テキストとしては1997年6月の国連環 境開発特別総会に向けて国連事務局が編纂した「Critical Trends」を用います。

 歴代のゼミ生は三重県大台町という典型的な過疎高齢化 の集落で支援活動をしています。これは、ゼミで座学とし て習得した環境問題の解決方法を、実際の現場で適用する 実地研修にあたります。7月になると3、4年生が合同で 大台町での活動の準備に入ります。大台町で重視している

活動は、世代間の交流促進、女性の地域活動への参画、高 齢化社会における自助組織の支援、Iターン者の組織化、

文化の継承、森林・林業の抱える問題の解決支援など、多 岐にわたっています。お盆の時期には盆の行事にも積極的 にかかわります。

 研究室の山村支援の活動における大きな特徴は、ボラン ティア活動をするのではなく住民が主体となって行う地域 活動を後方から支援するという方針です。このため、活動 で重要になってくるのはワークショップなどによる住民の 合意形成や組織化です。そのため、3年生の夏休みにはプ ロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)手法の研 修を4日間にわたり受講します。PCMとはJICAが開発援 助プロジェクトの立案・運営・管理をするために用いるファ シリテーション手法です。大台町で活動を始めた頃は住民 に呼びかけてワークショップを開催するのは難しく、集 まっても特定の住民しか発言しないなど、支援活動も思う ようにいきませんでした。しかし、年を重ねるにつれ住民 も合意形成のためのワークショップに慣れ、様々な住民組 織が形成されるようになってきました。

 2014年の例ですと研究室の全メンバー 25名が8月には 9日間、9月には6日間大台町に滞在し、支援活動を行い ました。これ以外にも住民組織のイベントの手伝いに3、

4回、学生は出掛けています。このように大台町に全ての 学生が深く関わりますから、4年生の半数が大台町を対象 に卒業論文を作成します。

2)議論を通して環境問題を様々な視点から学ぶ

 環境問題は人類の経済活動と自然環境の保全のどちらを 優先するかという、トレードオフ関係の中で論じられます。

一般に、経済を重視するか環境を重視するかは、個人の価 値観や社会的環境などに左右され正解はありません。そこ で、3年生の秋学期にはその時々の社会を賑わしている環 境問題を題材に、ディベートを行います。彼らは、ファク トデータに基づき問題を客観視するとともに、ディベート を通して自分の意見を絶対化せず相対化するための思考や 表現技術を学びます。これにより、環境問題を批判的に分 析する能力を身に付けます。

3)環境展示会において学習成果を発表

 日本最大の環境展示会(エコプロダクツ)が、毎年12月 に東京ビッグサイトで開催されます。企業やNGO、自治

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人間科学研究 Vol.28, No.1(2015)

研究室だより

体、教育機関等が出展しますが、私達の研究室も出展し炭 素クレジットと山村活性化を結びつけた研究成果を、大台 町と協力して展示しています。学生は展示ブースを訪れる 市民と環境問題について議論し、市民の考えを知る貴重な 機会となっています。

4)卒業研究

 4年生になると卒業研究、大台町での調査がゼミとして の重要な活動になります。卒業研究のテーマは各学生が自 由に決めます。特徴としては、大台町を研究対象地とする 学生が半数近くを占めること、海外での調査・研究が多い ことです。テーマとしては地球温暖化、市民による環境保 全活動、山村の活性化、再生エネルギー、途上国の開発援 助、環境教育、森林・林業、食料問題などです。

5)大学院生の研究

 研究室では地球温暖化と開発援助を研究目的とし、その 特性を活かして熱帯地域における森林保全を通した地球温 暖化対策プロジェクトを、幾つか並行して実施してきてい ます。大学院生は研究室が実施している研究プロジェクト の一部を分担し研究を進めるケースが多く、海外におけ る調査をベースに論文をまとめる学生が過半を占めます。

2014年度はラオス、インドネシア、ミャンマー、パナマの 4カ国で調査・研究をしています。また、卒論を延長させ て大台町を研究対象地としてより深く掘り下げた研究をす る大学院生もいます。

 大学院のゼミでは開発援助の理論的なバックボーンと なっているアマルティア・センのケイパビリティ論を取り上 げています。これにより、世代間の公平性、世代内の公平 性(南北間格差)を論理的に理解します。また、気候変動のた めの政府間パネル(IPCC)の出版物を中心に、地球温暖化 関連のなかで重要な文献を取り上げて輪読をしています。

3.研究の概要

 主要な研究として下記の3つのテーマがあります。

(1)地球環境問題と環境政策

 国際交渉の動きを考慮しながら、我が国が取るべき環境 政策について、研究を進めています。とくに、森林による CO2吸収量を各国の削減目標の中にどのように位置づけ るべきか、各国の利害を調整するにはどのような運用規定 が良いか、日本の森林を温暖化対策に活用するには国際社 会でどのような合意形成を進めるべきか、といった政策の 構築を目指した研究を進めています。

(2)地球温暖化軽減に果たす森林の役割

 森林のCO2吸収量の評価方法と炭素クレジットの関係、

クレジットから得られる利潤を地域社会にどのような形で 還元すべきか、そして可能であればクレジットから得られ る利潤を用いて、山村の自然環境を持続的に維持できる枠

組みを提案するための作業をしています。研究対象地とし て三重県大台町を取り上げ、炭素クレジットの売上金で基 金を設置し、住民の様々な活動の資金として利用されてい るのを、モニタリングしています。

(3)熱帯林保全

 2020年以降は気候変動枠組み条約のもとで、熱帯林保全 が重要な温暖化軽減対策となることから、(1)と(2)

の研究を組み合わせた形でのプロジェクトに参画すること が多くなっています。また、研究室では当初は住民参加型 の開発援助が研究の中心であったため、熱帯林保全も住民 の能力を高めるケイパビリティ論に基づいた研究手法を 取っています。現在は、インドネシア、ミャンマー、ラオ ス、パナマで研究を実施していますが、アクション・リサー チという手法をとっています。これは、対象集落の社会変 化をもたらすような働きかけをしながら、プロセスと結果 を分析し、望ましい問題解決方法を明らかにする試みです。

研究室にはJICAプロジェクト専門家や職員が社会人学生 として学んでいることから、プロジェクトの運営に経験の ある彼らを中心に研究を実施しています。

三重県大台町でのワークショップ

エコプロダクツでの展示

タイでのゼミ合宿

参照

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