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季刊

第25号

25

2016 夏 No.25

特集 地震に備える ~

熊本地震を受けて~

-1- 耐震診断と耐震改修

NPO マンション再生・建替・支援センター

特集 地震に備える ~熊本地震を受けて~ -1- 耐震診断と耐震改修

熊本地震の記録 ・・・・・ 1 熊本県内のマンション被災状況 ・・・・・ 2 地震を知る ・・・・・ 3 大地震が発生すると ・・・・・ 4 地震に弱いマンションとは ・・・・・ 5 耐震化の必要性・重要性 ・・・・・ 6 耐震化の基本的な進め方 ・・・・・ 7 耐震診断の方法/費用のめやす ・・・・・ 7 耐震改修の目的と工法/費用のめやす ・・・・・ 9 耐震化の支援制度 ・・・・・10 2016 年 4 月 14 日 21 時 26 分、熊本県熊 本地方で、マグニチュード6.5、最大震度7 の地震が発生しました。 その後、震度5~6の揺れが繰り返し発生 し、2 日後の 4 月 16 日 01 時 25 分には、 最初の地震を上回る規模のマグニチュード 7.3、最大震度7の地震が発生しました。 以降、熊本県熊本地方、阿蘇地方、大分 県中部等にかけての広い範囲で地震活動 が活発となり、3 ヶ月間に(7 月 13 日まで)、 震度1以上の地震は 1885 回、震度5弱以上 の地震は 19 回発生しています。

熊 本 地 震 の記 録

*「気象庁 HP>各種データ・資料 >震度データベース検索」 この季刊誌では、2006 年発刊の第 2 号、第 3 号でも「マンションと地震」を特集しています。そこでは、阪神・淡路 大震災での被害状況や、それを契機とした法改正などをご紹介しました。 それからわずか 10 年の間に、東日本 大震災、そして今回の熊本地震が発生したのです。東北地方は大津波が襲い、熊本では何度も大きな揺れに見 舞われるなど、阪神・淡路とも異なる様相の震災被害となりました。 大地震の度に、新たな教訓が生まれ、対策や技術も進む一方で、新たな問題も浮き上がります。それらを知るこ とは、いつ、どこで起きてもおかしくない大地震への備えとなります。そこで、改めて「地震」について取り上げるこ とにしました。様々な角度からの「地震への備え」を、本号から第 27 号までの 3 回にわたり、お伝えしていきます。

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大地震が発生すると、建物の被害に関して様々な調査が行なわれ、一部が報道・発表されますが、 それぞれの調査の目的により、調査対象や判定基準も異なりますので、注意が必要です。 たとえば、構造体の損傷をみれば「軽微・小破」程度でも、居住性能まで含めた調査では「半壊」と 判定される・・・、といったようなケースも多く、また、判定に使われる「軽微」「半壊」といった用語から受 けるイメージで、被災実態が誤解されることもあります。調査の結果や数値をみるときには、その調査 の目的や判定基準を、よく理解しておくことが大切です。 以下、大地震後に実施される主な調査について説明します。 ◆被災建築物応急危険度判定 地震直後、早急に、余震等による被災建築物の倒壊、部 材の落下等から生ずる二次災害を防止するとともに、被災者 が自宅にいてよいか、避難所へ避難したほうがよいかなどを 判定するために市町村が行う調査。判定結果は、『危険、 要注意、調査済』と区分され、建築物の見やすい場所に表示 され、建築物の危険性について情報提供する。 ◆被害認定調査(1 次~3次まである) 罹災証明書の発行を希望する被災者の申請により、市町村が行なう調査。居住のための基本性 能の損失程度をみ るため、主要構造部のほか、主要な 構成要素(外部仕上、内部仕上、床・ 梁、 設備、建具など)も対象とされる。内閣府の指針に基づいて地方自治体が定める判定基準によ り、 『全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊』と判定される。 ◆被災度区分判定 建物の所有者の依頼により、被災した建物の損傷程度と復旧の要否を判定するために行なう調 査。建築構造技術者が建物内部に立ち入り、建物の沈下や傾斜、構造躯体や非構造部材、仕上 げなどの損傷状況を調査し、日本建築防災協会の基準により『大破、中破、小破、軽微』などと判定 すると共に、地震動の強さなどを考慮して、その建物を継続使用するためにどのような補修・ 補強を したら良いかを調べ、その方法を決定する。 ◆地震保険の損害認定調査 加入者への保険金支払いのための調査。建物の主要構造部※のみで判定され、『全壊、半壊、 一部損壊』と区分される。(※特にマンションの場合、基本的に建物 1 棟ごとに判定され、専有部分 のみの判定基準がないこと、ライフラインやエレベーター等の損害は含まないことを理解する必要 がある。また、地震以外の一般の火災保険とも認定基準や保険の仕組みが異なるので注意。) ◆その他 上の「マンション被災状況」のように、マンション管理業協会や、建築学会、土木学会などの専門 家集団が独自に行う調査。

熊本県内のマンション被災状況

「一般社団法人マンション管理業協会」が、熊本県内で同協会員が管理する分譲マンション 572 棟の被災 状況を調査。6 月 14 日までに回答を得た 566 棟のうち、9 割以上の 527 棟で被害が確認されたと発表しまし た。建替えが必要な「大破」が1棟で、大規模補修が必要な「中破」は 48 棟。タイルのはがれ落ちやひび割れ などの「小破」は 348 棟でした。合わせると、7 割ほどのマンションで、何らかの補修が必要な被害が出ていま す。その他、外見上ほとんど損傷はないが軽微な被害に遭った建物が 130 棟報告されています。 尚、この調査では、主に、柱や梁、耐力壁など建物の構造体と、外壁などの損傷をみており、設備や居室 内部の被害は含まれていません(※下のコラム参照)。 被害程度 被害内容の概略 棟数 割合(%) 竣⼯年別棟数 S46 以前 S47〜56 S57 以降 年代不詳 ⼤破以上 倒壊や建替えが必要な致命的被害 1 0.18 1 中破 ⼤規模な補強・補修が必要 48 8.48 7 23 18 ⼩破 タイル剥離、ひび割れ等補修が必要 348 61.48 5 236 107 軽微 外⾒上ほとんど損傷なし 130 22.97 1 4 111 14 被害なし 39 6.89 566 100.00 ※さまざまな調査と判定基準 *同協会の報道発表資料より作成

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*「気象庁 HP>各種データ・資料 >震度データベース検索」

地震を知る・・・①過去の地震

日本は「地震大国」と言われています。実際に、他の国と比べて どのくらい地震が多いのでしょうか。 下の世界地図は、1977 年 1 月から 2012 年 12 月までに発生した 「マグニチュード 5 以上」の地震を赤い丸印で示したものです。 日本の面積は世界の面積の 1%未満であるにもかかわらず、世 界の地震の約 1 割が日本の周辺で起こっています。 この地図は、過去 30 年間に日本で 発生した「震度 6 弱以上」の地震の分 布図です。 北海道沖から鹿児島まで 至る所で 52 回も発生しています。

地震を知る・・・②将来の地震

平成 28 年 6 月 10 日、「地震調査研究推進本部※」 により、『全国地震動予測地図 2016 年版』が発表され ました。分析手法や震度別に各種の地図が掲載され ていますが、右図は、「2016 年から 30 年間に震度 6 弱 以上の揺れに見舞われる確率」を示しています。 (この確率は、「地震が発生する確率」ではなく、「日本周辺で 発生した地震によって、その場所が震度 6 弱以上の揺れに 見 舞われる確率」です。確率が例えば 3%、26%とは、それ ぞれ約 1,000 年、約 100 年に1回程度、震度 6 弱以上の 揺れに見舞われることを示しています。) もっとも、熊本地方が特別に高い確率を示していた 訳ではありません。地震はいつでもどこでも起こりえる と考え、日頃から備えておくことが大切です。 さらに、地震によって起こりえる津波、液状化、地滑り や、より詳細な地盤の揺れやすさ等を知るためには、 各地方自治体で調査・公表しているハザードマップを 確認しておきましょう。 下記のサイトで、日本全国のハザードマップが閲覧 できます(整備していない自治体もあります)。 ◆国交省ハザードマップポータルサイト http://disaportal.gsi.go.jp/ これらの地図や情報は、防災科学技術研究所の WEB サイト「J-SHIS 地震ハザードステーション」で見ることができます。 全国のすべての地点について、地図を拡大したり、「今後 30 年間に震度 6 弱以上の揺れに見舞われる確率」や、「地盤の 揺れやすさ」等を調べることができます。また、全国の主な活断層や海溝型地震の震源域も調べることができます。 個別の活断層で地震が起こった場合に周辺がどのくらいの震度で揺れるかを知りたい方は、 J-SHIS の想定地震地図や、 全国地震動予測地図の別冊 2 をご覧ください。地図は、最新の情報を反映するために毎年更新されています。 ◆J-SHIS 地震ハザードステーション http://www.j-shis.bosai.go.jp ◆J-SHIS の想定地震地図 http://www.j-shis.bosai.go.jp/map/ ◆全国地震動予測地図別冊 2 http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09_yosokuchizu/index.htm#b2 ◆地震調査研究推進本部※ http://www.jishin.go.jp ※)文部科学省研究開発局地震・防災研究課に所属し、平成 7 年 1 月 17 日に発生した阪神・淡路大震災の経験を活かし、地震に 関する調査研究の成果を社会に伝え、政府として一元的に推進するために作られた組織です。 *「全国地震動予測地図 2016 年版 付録2」より抜粋・引用 『全国地震動予測地図 2016 年版』について

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震度 人の体感・行動 屋内の状況 屋外の状況 5弱 大半の人が恐怖を覚え、物につか まりたいと感じる。 電灯などのつり下げ物は激しく揺れ、棚 の食器類や本が落ちることがある。座り の悪い置物の大半が倒れる。固定してい ない家具が移動することがあり、不安定 なものは倒れることがある。 まれに窓ガラスが割れて落ちることがあ る。電柱が揺れるのがわかる。道路に被 害が生じることがある。 5強 大半の人が、物につかまらないと 歩くことが難しいなど、行動に支障 を感じる。 棚にある食器類や書棚の本で、落ちるも のが多くなる。テレビが台から落ちること がある。固定していない家具が倒れるこ とがある。 窓ガラスが割れて落ちることがある。補 強されていないブロック塀が崩れることが ある。据付けが不十分な自動販売機が倒 れることがある。自動車の運転が困難と なり、停止する車もある。 6弱 立っていることが困難になる。 固定していない家具の大半が移動し、倒 れるものもある。ドアが開かなくなることが ある。 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する ことがある。 6強 立っていることができず、はわない と動くことができない。揺れにほん ろうされ、動くこともできず、飛ばさ れることもある。 固定していない家具のほとんどが移動 し、倒れるものが多くなる。 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する 建物が多くなる。補強されていないブロッ ク塀のほとんどが崩れる。 7 固定していない家具のほとんどが移動し たり倒れたりし、飛ぶこともある。 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する 建物がさらに多くなる。補強されているブ ロック塀も破損するものがある。 震度 耐震性が高い建物 耐震性が低い建物 5強 - 壁、梁、柱などの部材に、ひび割れ・亀裂が入ることがある。 5弱 壁、梁、柱などの部材に、ひび割れ・亀裂が入ることがある。 壁、梁、柱などの部材に、ひび割れ・亀裂が多くなる。 6強 壁、梁、柱などの部材に、ひび割れ・亀裂が多くなる。 壁、梁、柱などの部材に、斜めや X 状のひび割れ・亀裂が みられることがある。 1階あるいは中間階の柱が崩れ、倒れるものがある。 7 壁、梁、柱などの部材に、ひび割れ・亀裂がさらに多くなる。 1 階あるいは中間階が変形し、まれに傾くものがある。 壁、梁、柱などの部材に、斜めや X 状のひび割れ・亀裂が 多くなる。 1階あるいは中間階の柱が崩れ、倒れるものが多くなる。 ガス供給の停止 安全装置のあるガスメーター(マイコンメーター)では震度5弱程度以上の揺れで遮断装置が作動し、ガスの 供給を停止する。さらに揺れが強い場合には、安全のため地域ブロック単位でガス供給が止まることがある。 断水、停電の発生 震度5弱程度以上の揺れがあった地域では、断水、停電が発生することがある。 エレベーターの停止 地震管制装置付きのエレベーターは、震度5弱程度以上の揺れがあった場合、安全のため自動停止する。 運転再開には、安全確認などのため、時間がかかることがある。 長周期地震動による 超高層ビルの揺れ※ 超高層ビルは固有周期が長いため、固有周期が短い一般の鉄筋コンクリート造建物に比べて地震時に作用 する力が相対的に小さくなる性質を持っている。しかし、長周期地震動に対しては、ゆっくりとした揺れが長く 続き、揺れが大きい場合には、固定の弱いOA機器などが大きく移動し、人も固定しているものにつかまらな いと、同じ場所にいられない状況となる可能性がある。

⼤地震が発⽣すると

日本各地で地震は頻発していますが、震度6や7といった激しい揺れは体験したことがない方もいると思い ます。震度によって、人はどのように揺れを感じるのか、また、身の回りや建物の状況はどうなるのか、気象庁 の『震度階級関連解説表』より抜粋しましたので参考にして下さい。但し、熊本地震のように、大きな揺れが 何度も立て続けに発生する場合は、被害がさらに大きくなる可能性がありますので、注意が必要です。 ■鉄筋コンクリート造建物の状況 ※ 鉄筋コンクリート造建物では、建築年代の新しいものほど耐震性が高い傾向があり、おおむね昭和 56 年(1981 年)以前は耐震性が低く、 昭和 57 年(1982 年)以降は耐震性が高い傾向がある。しかし、構造形式や平面的、立面的な耐震壁の配置により耐震性に幅があるため 必ずしも建築年代が古いというだけで耐震性の高低が決まるものではない。既存建築物の耐震性は耐震診断により把握することができる。 ※ 鉄筋コンクリート造建物は、建物の主体構造に影響を受けていない場合でも、軽微なひび割れがみられることがある。 ■ライフライン・インフラ等、大規模構造物への影響 ※ 規模の大きな地震が発生した場合、長周期の地震波が発生し、震源から離れた遠方まで到達して、平野部では地盤の固有周期に応じて 長周期の地震波が増幅され、継続時間も長くなることがある。 ■人の体感・行動、屋内の状況、屋外の状況

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管理組合が⾏う地震対策・・・耐震診断・耐震改修

管理組合が行うマンションの地震対策としては、 ・建物の耐震性能を把握するための「耐震診断」、(その結果により)耐震性能を高めるための「耐震改修」。 ・被災した際の迅速な避難、避難生活を送る中での助け合いや、復旧時のスムーズな意思決定などのため、 管理組合機能やコミュニティ機能の強化。 ・被災した場合の経済的な助けとなる地震保険への加入・・・などが挙げられます。 まず本号では、「耐震診断」と「耐震改修」についてご紹介します。その他の対策については、次号以降に 掲載します。

地震に弱いマンションとは?

◆建築基準法施行令の改正で、昭和 56 年(1981 年)6 月 1 日に、新しい耐震基準(新耐震基準)が導入さ れました。これにより、『昭和 56 年 6 月 1 日以降に建築確認を受けた(※)マンション』は、新耐震基準で 建てられています。建築確認の後に着工しますので、昭和 56 年 5 月 31 日以前に着工されている(※) マ ンションは、「旧耐震基準」で設計されており、耐震性能が劣っている可能性があります。 ※そのマンションが「竣工した日」ではないことに注意して下さい。マンションの場合、規模にもよりますが、着工 から竣工まで、一般的に 1 年~1 年半ほどかかりますので、昭和 56 年中に竣工のマンションは旧耐震基準、 昭和 57~58 年あたりに竣工されている場合は、建築確認の日付を確認してみましょう。 ※但し、マンションに関する社会的調査などの場合は、「昭和 56 年以前に建築」のマンションを旧耐震基準とし ている場合が多く、この場合、着工か竣工かの明確な確認はされていないと思われます。 ※不動産取得税における中古住宅の特例では、「登記上の建築日付が昭和 57 年1月1日以降の建物は新耐 震基準に適合しているものとみなす」ことになっています。 ◆尚、「旧耐震基準」は、昭和 43 年の十勝沖地震で、柱のせん断破壊が多数発生したのを受け、柱の帯筋 間隔の規定を強化するため昭和 46 年 5 月に導入されています。それ以前の基準で建てられたマンション (平成 28 年現在、おおよそ築 45 年以上のマンション)は、要注意です。 ◆さらに、旧耐震基準のマンションの中でも、構造上のバランスが悪いマンションは、特に注意が必要です。 主な例を挙げておきます。 1)平面形状または断面形状が不整形なマンション L 字型・コの字型や雁行型など不整形な平面形状で、エキスパンション・ジョイントが 設けられていない建物や、セットバック等で断面形状が不整形な建物では、局所的に 崩壊してしまうことがある。 2)上層部と下層部で構造形式が異なるマンション 上層部と下層部とで構造形式が異なる建物(例えば下層階がSRC造・ 上層階がRC造) では、 構造 形式が切り替わる付近の階で、層崩壊等の被害が集中するおそれがある。 3)細長い形状(辺長比が大きい)のマンション 梁行き方向(短辺方向)は戸境壁が耐震上有効な壁として機能する。 それに対して、 桁行き方向(長辺方向)は、開放廊下やバルコニーに面して開口部が多く、耐震上有 効な壁が少ない。細長い形状のマンションでは、桁行き方向(長辺方向)に地震力が 伝わるのに時間差があり、桁行き方向(長辺方向)の各部位において異なる動きとな るため、耐震上弱い桁行き方向に被害が集中しやすい。 4)ピロティ形式のマンション 1階が駐車場や店舗により壁が抜けているなどのピロティ形式や、大区画の店舗等 が ある建物は、その部分に耐力壁が少なく、 剛性率(変形のしにくさ)が小さいため、 変形が集中し、層崩壊(圧壊)等の大被害が生じる恐れがある。 5)耐力壁がバランスよく配置されていないマンション 耐力壁がバランス良く配置されていない建物は、重心(建物重量の中心)と剛心 (柱、梁、耐力壁等の耐震要素の中心)の位置が異なるため、剛心を中心にねじれ (回転変位)が生じる。ねじれによる変位が大きくなる剛心から遠い部分が局所的に 崩壊 したり、地震力の集中する剛心近くが崩壊することがある。 建築基準法改正の変遷や、マンションの建築年と地震被害の関連については、本季刊紙『第 2 号』で 特集しています。併せてご覧下さい。 (*以下、主に国土交通省「マンション耐震化マニュアル」平成 26 年 7 月再改訂版より)

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耐震診断を 組合数 割合 実施した 397 17.1% 実施予定 214 9.2% 検討中 539 23.2% 検討なし・不明 1,172 50.5% 計 2,322 100.0% Is 値 組合数 割合 0.3 未満 37 20.3% 0.3以上0.6未満 78 42.9% 0.6 以上 67 36.8% 182 100.0%

耐震化の必要性・重要性・・・①耐震改修促進法・改正のポイント

上の調査の中で、「耐震診断に反対している者の意見」という設問があります(組合としての意見でなく、 「反対者」の意見)。回答数 82 件(複数回答)のうち、最も多いのが「資産価値の低下がある(69.5%)」、次い で、「改修工事費がない(65.9%)」、「費用負担ができない(37.8%)」、「必要性が納得できない(20.7%)」と 続きます。経済的理由以外に、「調べると資産価値が下がる」という考え方は根強いものがあります。 しかし、過去の地震では少なからず被害がでていること、今後も大地震が起こる恐れがあることを考えると、 まず自分の住むマンションの耐震性能を知ることが、地震への備えの第一歩ではないでしょうか。診断結果 に問題がなければ、「知らない」でいるよりも安心して生活できますし、もし改修の必要があると診断された場 合でも、改修工事までの間(もしくは改修工事ができなくても)、管理組合や各自・各居室内で、起こりえる被 害を想定し、それなりの対策をしておくことができるからです。 尚、平成 18 年の宅地建物取引業法施行規則の改正により、宅地建物取引業者が建物等の取引の際に 行わなければならない重要事項説明においては、『旧耐震基準により建築された建物について、耐震改修 促進法に基づく耐震診断を行った場合には、その内容を重要事項説明事項として購入者に説明すること』と されました。これにより、旧耐震基準により建設されたマンションを購入しようとする人は、その物件が、耐震 診断を実施したか否か、及び耐震診断の結果を知ることができるようになりました。 こうした状況から、耐震診断の実施の有無、耐震性の確保の有無が資産価値に影響を与える可能性があ り、むしろ、資産価値の維持・向上の観点からも耐震診断を実施することが重要となってきています。 耐震改修促進法の改正が平成 25 年 11 月 25 日に施行されました。耐震化を促進するため強化された点が ある一方で、円滑な促進のための措置(特例・規制緩和策など)も盛り込まれています。マンションに関係する 改正のポイントを抜粋します。 ◆「旧耐震基準」により建築された全てのマンションについて、耐震診断の努力義務が課せられました。 ◆地方自治体が指定する緊急輸送路等の避難路沿道のマンションについては、 耐震 診断を行い報告する義務が課せられる場合があります。 ◆マンションの耐震化に係る意思決定の円滑化のため、『区分所有建築物の耐震改修の 必要性に係る認定』を創設し、耐震改修を行う必要がある旨の認定を受けた場合には、 決議要件を緩和し、「普通決議」で耐震改修を行えるようになりました。 ◆耐震改修計画の認定を受けた場合、耐震改修のためやむを得ない範囲で容積率又は 建ぺい率を緩和する特例が設けられました。 ◆そのマンションが耐震性を有していると判断された場合には、その旨を視認しやすい場 所や広告に任意に表示することができる表示制度が創設されました(右図)。

耐震化の必要性・重要性・・・②旧耐震基準マンションの耐震診断状況

東京都が、都内のマンションについて調べた『東京都マンション実態調査(平成 25 年 3 月)』によると、都内 の「分譲」マンションは 53,213 棟、そのうち 22.35%の 11,892 棟が旧耐震基準(建築年が昭和 56 年以前)の マンションです。その調査報告書の中から、旧耐震基準マンションの管理組合に宛てた耐震診断について のアンケート調査の結果(回答率は約 2 割)を見てみましょう。 耐震診断の実施状況 実施済みは約 17%、約半数は検討もしていない状況です。 ・規模(戸数)別の調査結果では、「大規模なマンションほど実施率が 高い」傾向にあります(規模と実施率はほぼ比例している)。 ・耐震診断を検討していないマンションで、その理由(複数回答)は 耐震改修費⽤がない(50%)、診断費⽤がない(32%)、 診断への関⼼が低い(31%)、⾼齢化で関⼼が低い(21%)、 賃貸化で関⼼が低い(15%)、実施⽅法がわからない(11%)・・・以下略 耐震診断の結果(構造耐震指標:Is 値) 耐震診断をしたマンション 182 棟のうち、震度 6~7 程度の地震に対し 「倒壊または崩壊する危険性が高い(Is<0.3)」マンションが約 20%、 「倒壊または崩壊する可能性がある(0.3≦Is<0.6)」マンションが約 43% 合わせて 2/3 近いマンションが、耐震性に問題がありました。

耐震化の必要性・重要性・・・③耐震診断は資産価値を下げる?

◆「東京都マンション実態調査」 http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2013/03/DATA/60n34101.pdf *同調査報告書より作成

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第1次診断法 第2次診断法 第3次診断法 主な 対象建物 壁の多い建物 主に柱・壁の破壊で 耐震性能が決まる建物 主に梁の破壊で 耐震性能が決まる建物 計算方法 柱・壁の量 柱・壁の量及び強度 柱・壁・梁の量及び強度 診断精度 簡易 精密 費 用 安い 高い

耐震診断の⽅法・・・①予備調査

耐震化の基本的な進め⽅

マンションの耐震化については、所有者が単独で意思決定が容易な一般ビル等とは異なり、区分所有法 に基づいた決議に向けて、区分所有者間の合意形成を段階毎に図りながら進めていく必要があります。 マンションの耐震化の実現に向けては、「耐震診断段階」、「耐震化検討段階」、「耐震改修計画段階」、 「耐震改修実施段階」という4つの段階を踏みながら、合意のレベルを着実に高めていくことが重要です。 耐震診断にあたっては、構造上のバランスや、住民や区分所有者の耐震性に対する不安の声、意見など を聴き、必要となれば理事会等で耐震診断を予算化、耐震診断専門家を選定し、耐震診断の方針と方法を 検討します。その後、「予備調査」に進みますが、その内容は、次のようなものになります。 ①建築物の概要 ②設計図書の有無 ③建築物の履歴(使用履歴・増改築・大規模な模様替えの有無・経年劣化・被災の有無等) ④現地調査の可否 ⑤診断レベルの設定 ・第 1 次診断法 比較的耐震壁が多く配された建築物の耐震性能を簡略的に評価する。 対象建物の柱・壁の断面積から構造耐震指標を評価するもの ・第 2 次診断法 第 1 次診断法よりも計算精度の改善を図っており、一般的な建物の構造特性に適した 最も適用性の高い診断法 ・第 3 次診断法 柱、壁よりも、梁の破壊や壁の回転による建物の崩壊が想定される建築物の耐震性能 を簡略的に評価することを目的とした診断法 耐震化検討の進め方の方針決定 耐震診断の予算化 耐震化の必要性の確認 耐震改修推進決議 耐震改修計画の検討 耐震改修決議 耐震改修実施計画の予算化 耐震改修実施設計の検討 耐震改修工事の予算化 耐震改修工事 耐震診断 耐震化検討決議 耐震化手法の検討 耐震診断の予算化を踏まえ、耐震診断を実施する。 耐震診断の結果に基づき、耐震化の必要性を確認する。 耐震化検討の進め方についてアンケート等を実施し、その方針を 決定する。 耐震改修による場合は、耐震改修推進決議により、「耐震改修を推 進すること」の合意形成を図る。 なお、必要に応じて耐震化検討決 議を踏まえ、耐震化手法(耐震改修・建替え)の検討を実施した上 で、耐震改修に絞り込む場合もある。 耐震改修計画を検討し、耐震改修決議により、「耐震改修を実施す ること」の合意形成を図る。 耐震改修実施設計を検討し、耐震改修工事の予算化を踏まえ、耐 震改修工事を実施する 耐震診断 段階 耐震化 検討段階 耐震改修 計画段階 耐震改修 実施段階 段 階 フロー図 実施内容

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調査項目 調査目的 調査方法 1次 調査 2次 調査 精密 調査 使用状況や 建物環境の調査 ・現状建物の使用状況の把握 ・用途変更や改造の有無の確認 目視による ◎ ◎ ― 基礎・地盤の調査 ・建物の傾斜や地形・地盤の把握 目視による ◎ ◎ ― 劣化状況調査 ・仕上げ材の劣化状況の把握 ・補強以外に補修の必要個所や 落下危険物の有無を把握 目視による劣化状況の 確認 ◎ ◎ ― 躯体ひび割れ 状況調査 ・建物の劣化状況の把握 目視によるひび割れ発 生状況の確認 ◎ ◎ ― ひび割れ幅の測定によ る ― ◎ ― 部材調査 ・原設計図書と現状建物の整合性 の確認 部材寸法の実測による ◎ ◎ ― 鉄筋探査による配筋の 確認 ― ○ ○ 仕上げ材除去・ハツリ ― ○ ○ コンクリート 強度試験 ・診断計算に用いる コンクリート強度の把握 コンクリートコア採取及 び圧縮強度試験による ○ ◎ ○ コンクリート 中性化深さ試験 ・老朽化の程度の把握 コンクリートコアの中性 化深さ試験による ― ◎ ○

耐震診断費⽤のめやす

現地調査は、マンションの現況を把握し、設計図書との整合性を確認することや、マンションの劣化状況等 の診断計算に必要な調査項目を確認することを目的として行います。主に「第 1 次診断法で必要となる 1 次 調査」と、「第 2 次診断法・第 3 次診断法で必要となる 2 次調査」に分けられます。また、より精度が求められ る場合などには精密調査を行う場合があります。 一般的に行われる現地調査項目は次の通りです。

耐震診断の⽅法・・・②現地調査

診断費用は、マンションの規模や状態、図面等の有無、診断の内容によってばらつきがあります。 あくまで目安として挙げれば、(一財)日本耐震診断協会によりますと、㎡あたり約 1,000 円~2,500 円程度、 (一社)東京建設業協会では、500 円~2,000 円程度としています。いずれも鉄筋コンクリート造の建物で、現 地調査費を含みます。但し、竣工時の一般図・構造図が存在し、建物検査済証(建築物及びその敷地が法令 に適していることを証する文書)を交付された建物であることが証明可能な場合です。図面類(特に構造図)が ない場合は、図面を復元する必要があり、現地調査項目も多くなりますので、上記単価を大きく上回ります。 下の図表は、6P で紹介した、東京都による『マンション実態調査(H25.3)』において、「耐震診断をした」と回 答したマンションの、耐震診断費用に関する調査結果より作成したものです。参考にして下さい。 ◎:必ず実施する ○:必要に応じて実施 -:実施しない 耐震診断費⽤ 組合数 0円 31 ~ 50 万円 26 ~ 100 万円 16 ~ 300 万円 63 ~ 500 万円 54 ~1000 万円 44 1000 万円以上 18 12 万円未満 9万円未満 20 万円未満 40 万円以上 6万円未満 3万円未満 15 万円未満 40 万円未満 耐震診断費用と組合数 〈回答数 252 組合〉 建物規模別にみた 一戸当たりの耐震診断費用 〈回答数 248 組合〉

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⽬ 的 ⼯ 法 強度 向上 向上 靭性能 構造 ラ ン ス 改善 地震 ⼒ 低減 ① 枠付き鉄⾻ブレース補強 ○ ② 壁補 強 RC壁増設 ○ ○ ③ 贈打ち壁 ○ ○ ④ 鋼板壁増設 ○ ○ ⑤ そで壁補強 ○ ○ ⑥ そで壁増打ち補強 ○ ○ ⑦ 外付けフレーム補強 ○ ⑧ バットレス補強 ○ ⑨ 柱補 強 鋼板巻き⽴て補強 ○ ⑩ 連続繊維巻き補強 ○ ⑪ RC巻き⽴て補強 ○ ○ ⑫ 耐震スリットの新設 ○ ○ ⑬ 制震機構の組込 ○ ⑭ 免震構造化 ○ 耐震改修は、耐震診断により明らかとなった耐震上の 弱点や問題点を解消するために、現行の耐震基準レベ ルを満たすことを目標に実施します。 図表にある①~⑭の工法は、マンションに適した代表 的な工法です。それぞれの工法の目的を説明します。 ◆強度の向上 大地震に耐え得るだけの強度を有していない建物に対して、 建物の壁・柱・梁といった部材を補強または新設し、建物の 頑丈さ(強度)を向上させることを目的とします。 ◆靭性能の向上 建物の頑丈さ(強度)はあるが粘り強さ(靭性能)がないため 大地震にもろく破壊されることが想定される建物に対して、 建物の柱に鋼板を巻くなどにより、建物の靭性能を確保する ことを目的とします。 ◆構造上のバランスの改善 一部の階だけ耐震壁が抜けている場合や、構造種別が中間 階で変わる場合など、平面的・立面的なバランスが悪い建物 に対して、壁などの新設等によって、構造上のバランスを改 善することを目的とします。 ◆地震力の低減 地震のエネルギーを吸収する装置を建物に設置し、地震時 に建物が大きく揺れることを防ぐことを目的とします。

耐震改修の⽬的と⼯法

2階柱に免震装置を設置 1階開口部をブレース補強 ⑬制震機構の組込 ②③④耐震壁補強 ⑤⑥そで壁補強 ⑫耐震スリットの新設 ①枠付き鉄骨ブレース補強 ⑦外付けフレーム補強 ⑧バットレス ⑨⑩⑪柱補強 ⑭免震 装置の 設置 バルコニー外側にフレームを新設

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マンションを考える 編集責任者 ・・・ 三浦義幸 橋本亜由美 NPO法人 マンション再生・建替・支援センター 〒112-0014 東京都文京区関口 1-8-6-805 TEL:03-3268-3641 FAX:03-3268-3642 http:// mansion-saisei.jp 会員募集中です URL を御覧ください バックナンバーは下記 URL を ご覧ください http:// mansion-saisei.jp 第 1 号 アスベストとマンション 第 2 号 マンションと地震-1 第 3 号 マンションと地震-2 第 4 号 マンションと高齢化社会 第 5 号 小規模マンションの維持管理 第 6 号 マンションと安全 第 7 号 マンションとトラブル-1 第 8 号 マンションとトラブル-2 第 9 号 マンションの長寿命化-1 第 10 号 マンションの長寿命化-2 第 11 号 マンションの 2 戸1戸化・増床・減床 第 12 号 既存マンションの省エネルギー化 第 13 号 マンション駐車施設に起きる問題 第 14 号 既存マンションへのエレベーター設置 第 15 号 NPO の大規模修繕工事への協力-1 第 16 号 NPO の大規模修繕工事への協力-2 第 17 号 マンションの系譜と再生-1 第 18 号 マンションの系譜と再生-2 第 19 号 マンションの系譜と再生-3 第 20 号 マンションの系譜と再生-4 第 21 号 マンションの系譜と再生-5 第 22 号 これからはじめるマンション建替え 第 23 号 マンションのバリューアップ-1 第 24 号 マンションのバリューアップ-2

会 員 募 集

発行者:阿波秀貢 発行所:NPO マンション再生・ 建替・支援センター 〒112-0014 東京都文京区関口 1-8-6-805 TEL:03-3268-3641 http://mansion-saisei.jp 編集:マンションを考える 編集室

耐震改修費⽤のめやす

耐震化の⽀援制度

耐震改修の費用については、採用する工法や建物の規模により大きく異なりますし、実施する際の技術的 進歩、材料費や人件費等の市況によるため、ヒアリングや見積をとるなどして確認する必要があります。 下の図表は、前掲の『マンション実態調査』において、「耐震改修をした」と回答したマンション(93組合)の 耐震診断費用に関する調査結果より作成したものです。参考にして下さい。 耐震診断、耐震改修については、各地方公共団体で様々な支援制度があります。詳しくは、お住まいの地 域の自治体窓口にご相談下さい。また、全国の支援制度を調べられるサイトもありますのでご利用下さい。 ◆(一般財団法人)日本建築防災協会 http://www.kenchiku-bosai.or.jp/soudan/sokushinshien1.html 地方公共団体の住宅・建築物の耐震化に関する支援制度 ※地名をクリックすると、制度の概要(補助金の対象や補助率等)が閲覧できる ◆公益財団法人マンション管理センター http://www.mankan.or.jp/08_reformloan/publicsupport.html 地方公共団体の補助制度の一覧(耐震診断・耐震改修以外の制度も含む) ※地方公共団体の当該サイトを開く 耐震改修費⽤ 組合数 ~ 100 万円 5 ~ 300 万円 14 ~ 500 万円 11 ~ 1千万円 21 ~ 3千万円 19 ~ 5千万円 8 ~ 1億円 6 1億円以上 9 耐震改修費用と組合数 建物規模別にみた 一戸当たりの耐震改修費用 40 万円未満 30 万円未満 50 万円未満 70 万円未満 100 万円未満 100 万円以上 20 万円未満 10 万円未満

参照

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