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経済産業省
平成26年度非エネルギー起源温暖化対策海外貢献事業
(途上国における森林の減少・劣化の防止等への
我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業)
ケイ酸カリ肥料の活⽤による
⼆国間クレジット制度 REDD+プロジェクト
報 告 書
平成 27 年 3 月
電源開発株式会社/中外テクノス株式会社
- 3 - ケイ酸カリ肥料の活⽤による⼆国間クレジット制度 REDD+プロジェクト 目 次 Ⅰ 調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.調査の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.調査対象事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3.導入する日本技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4.調査対象事業の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 5.温室効果ガス排出量算定のモデル地域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 6.調査の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 7.調査の実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 Ⅱ 調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.気候変動を巡る情勢と政策の概況の把握 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 (1)代替地に関連するコンセッション調査 (2)保全林に関連するコンセッション調査 2.プロジェクトの協力可能性およびファイナンスと環境整備の検討 ・・・・・・・ 9 (1)プロジェクトの協力可能性調査 (2)ファイナンスに関する調査 (3)環境整備に関する調査 3.インドネシアにおけるケイ酸カリ肥料の適用性評価 ・・・・・・・・・・・・・11 (1)土壌分析 (2)栽培試験 (3)フィールド試験 4.炭鉱跡地の土壌改良に対応した温室効果ガス排出削減量算定の方法論の検討 ・・28 (1)適格性要件の設定 (2)森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量算定方法 (3)土壌改良に伴う温室効果ガス排出量算定方法 5.パイロット・プロジェクトにおける温室効果ガス排出削減量の算定 ・・・・・・35 (1)森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量算定 (2)土壌改良に伴う温室効果ガス排出量
- 4 - 6.パイロット・プロジェクトの事業性評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 (1)試算の前提 (2)事業性評価に用いる GHG 排出削減量 (3)損益とキャッシュフロー分析による事業性評価 7.パイロット・プロジェクトを通じて得られる経済効果に関する検討 ・・・・・・52 Ⅲ 今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 別添資料:《温室効果ガス排出削減量算定表》
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Ⅰ 調査の概要
1.調査の目的 本調査は、日本企業が開発・製造しているケイ酸カリ肥料を活用して、インドネシアの 炭鉱跡地における酸性土壌を改良して代替農用地を創出することにより、農用地利用を目 的とした開発計画対象の森林伐採を回避するという具体的なプロジェクトを想定し、二国 間クレジット制度(REDD+分野)に関するプロジェクトを実施した場合に適用可能な排出 削減方法論の策定ならびにプロジェクトの実施に向けた技術的および経済的実現可能性の 確認等を実施することを目的とする。 2.調査対象事業 本調査対象事業は、パームプランテーション事業拡大のための森林利用権(コンセッシ ョン)が与えられている開発計画対象の森林の代替地として、ケイ酸カリ肥料(Potassium Silicate Fertilizer)を用いて土壌改良した炭鉱跡地をパームプランテーションに利用すること で、開発計画のある森林を保全するものである。カウンターパートであるPT Anugerah Bara Kaltim(以下、ABK 炭鉱)の所有者は、炭鉱 事業のための土地利用権(コンセッション)とパームプランテーション事業のための森林 利用権(コンセッション)を保有している。 図:調査対象事業イメージ 開発計画区域
森林保全
代替地
未利用地・ 生産地の低い土地 土壌改良 生産性の高い土地調 査 対 象 事 業
- 2 - 3.導入する日本技術 ケイ酸カリ肥料は日本国内の石炭火力発電所から発生する石炭灰にカリを組み合わせる ものである。本肥料は、電源開発(株)(以下、J-POWER)の関連会社が世界で初めての肥 効持続型カリ肥料として開発し、1980年より日本国内で製造・販売されている。 本肥料は、作物に吸収されやすい可溶性ケイ酸と作物の根が出す根酸などの薄い酸に溶 ける、く溶性カリを含有していることで世界に類を見ない。また本肥料のpHは10~11であ り酸性土壌を作物の生長に適したpHに中和することから、炭鉱跡地の酸性土壌を改良する のに適していると考えられる。 表:ケイ酸カリ肥料の保証成分と pH 保証成分 pH く溶性カリ 可溶性ケイ酸 く溶性苦土 く溶性ホウ素 20% 34% 4% 0.1% 10~11 4.調査対象事業の特徴 インドネシアにとって、プランテーション作物は主要な外貨獲得手段であり、経済発展 の原動力となっている。一方で、急激なプランテーション拡張による熱帯雨林の消失が顕 在化している。熱帯雨林の伐採を伴うプランテーション開発は、生物多様性の喪失や二酸 化炭素吸収源の減少等を招くものとして、欧州を中心に批判が高まっている。
「国家エネルギー政策(National Energy Policy:大統領令2006年第5号)」において、2025 年までに達成すべきエネルギー比率の目標値は、石炭の割合が最も高く、33%以上(2008 年現在は18.8%)の目標が掲げられている。このような情勢から、石炭火力発電の原料とな る石炭採掘量の増加が見込まれる。 一方、「鉱業終了後の処理・修復に関する規制(政府規制2010年第78号)」において、炭 鉱跡地のリハビリテーションが義務付けられている。しかし、現状では南カリマンタン州 における炭鉱跡地の約50%がリハビリテーションを実施できていない。その理由として、リ ハビリテーションへの費用が捻出できないことが挙げられている。 このようなインドネシアの課題に対し、本事業は、炭鉱跡地に経済的価値を創出するこ とにより、炭鉱跡地のリハビリテーションの実施を促進できる。また森林伐採により拡大 するプランテーションの代替地を提供することで、経済活動に影響を与えずに森林を保全 できる。インドネシアの経済発展と環境保全の両立に貢献できる事業である。
- 3 - 5.温室効果ガス排出量算定のモデル地域 本調査では、ABK 炭鉱が東カリマンタンに保有する炭鉱事業のためのコンセッションエ リア(1,500ha)と、パームプランテーション事業のためのコンセッションエリア(1,500ha) を温室効果ガス排出量算定のモデル地域とした。 図:調査対象モデル地域 保全林: 1,500ha (パームプランテー ション開発コンセッ ションエリア) ABK炭鉱の関連会社 がパームプランテーション 開発コンセッションを保 有 土地利用:Secondary dryland forest(林業省 webGIS ) 代替地: 1,500ha (炭鉱) ABK炭鉱が石炭を採 掘中 土地利用:森林外 (林業省webGIS)
東カリマンタン
- 4 - 6.調査の内容 図:調査実施フロー ① 気候変動を巡る情勢と政策の概況の把握 気候変動を巡る情勢や政策のうち、特にREDD+事業の実施のためのインドネシアの森 林に発行されるコンセッションについて調査を行った。 ② プロジェクトの協力可能性およびファイナンスと環境整備の検討 ABK 炭鉱の今後の炭鉱跡地のリハビリテーション計画とパームプランテーションの拡 張計画について調査を行った。またケイ酸カリ肥料を供給するにあたり、インドネシア における肥料の輸入・販売に係る登録・認定に関する法制度について調査を行った。 ③ インドネシアにおけるケイ酸カリ肥料の適用性評価
インドネシアの炭鉱跡地土壌におけるケイ酸カリ肥料の有効性を評価するため、土壌 の成分含有量等の分析と作物の栽培試験を行った。 ④ 炭鉱跡地の土壌改良に対応した温室効果ガス排出削減量算定の方法論の検討
温室効果ガス排出削減量を、森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量と土壌改良 に伴う温室効果ガス排出量に区分し検討した。 気候変動を巡る 情勢と政策の概況の把握 プロジェクトの協⼒可能性 および、ファイナンスと 環境整備の検討 (3) 環境整備に 関する調査 (2) ファイナンスに 関する調査 (1) プロジェクトの 協力可能性調査 インドネシアに おけるケイ酸カリ肥料の 適⽤性評価 (3) フィールド試験 (2) 栽培試験 (1) 土壌分析 炭鉱跡地の ⼟壌改良に対応した 温室効果ガス排出削減量 算定の⽅法論の検討 (2) 土壌改良に伴う 温室効果ガス 排出量 (1) 森林減少に 由来する 温室効果ガス排出 削減量算定方法 パイロット・プロジェクト における温室効果ガス 排出削減量の算定 (2) 土壌改良に伴う 温室効果ガス排出量 (1) 森林減少に由来する 温室効果ガス排出 削減量算定方法 パイロット・プロジェクト の事業性評価 パイロット・プロジェクト を通じて得られる 経済効果に関する検討 ケ イ 酸 カ リ 肥 料 の 適 応 性 G H G 算 定 事 業 性 評 価
- 5 - ⑤ パイロット・プロジェクトにおける温室効果ガス排出削減量の算定
インドネシア国内にモデル地域を設定し、温室効果ガス排出削減量の算定を行った。 モデル地域は、インドネシア東カリマンタン州のABK炭鉱所有地とした。 ⑥ パイロット・プロジェクトの事業性評価
事業実施コストを試算し、キャッシュフロー分析によりパイロット・プロジェクトの 事業性の評価を行った。 ⑦ パイロット・プロジェクトを通じて得られる経済効果に関する検討
調査対象事業を通じて得られる主な経済効果として、雇用の創出が挙げられる。そこ で、パイロット・プロジェクトの実施に必要となる各工程の人数や人件費等から、パイ ロット・プロジェクトを通じて得られる経済効果について検討した。 7.調査の実施体制 図:調査実施体制 表:各事業者の業務範囲 事業者名 業務の範囲 電源開発株式会社 ファイナンス・環境整備に係る情報収集、 ケイ酸カリ肥料の適用性評価、事業性評価、 経済効果検討 中外テクノス株式会社 気候変動に係る情報収集、温室効果ガス排 出削減量算定の方法論検討と削減量の算定 Ministry of Agriculture (農業省) 土壌分析・栽培試験機関の紹介、環境整備 に係る情報提供
PT Anugera Bara Kaltim (ABK 炭鉱) 土壌分析・栽培試験の実施支援、ファイナ ンス・環境整備に係る情報提供 PT Anugerah Bara Kaltim (ABK炭鉱) - ⼀般財団法⼈ 電⼒中央研究所 - 株式会社 地域環境計画
コンソーシアム
- Assessment Institute for Agricultural Technology (AIAT) East Kalimantan (東カリマンタン農業試験場) 外注 カウンター パート 電源開発 株式会社 中外テクノス株式会社 農業省 電源開発株式会社 ジャカルタ事務所(現地対応) 協力
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Ⅱ 調査結果
1.気候変動を巡る情勢と政策の概況の把握 本プロジェクトの実施のためには、代替地と保全林それぞれのコンセッション確保が必 要となる。そこで本調査ではコンセッションについて調査した。調査は、ABK炭鉱や、そ のオイルパーム事業を担当するPalma Serasih社、インドネシア現地のJICA専門家等にヒアリ ングして情報収集した。 (1)代替地に関連するコンセッション調査 インドネシアにおいて炭鉱を開発する場合は、炭鉱開発用コンセッションを取得する必 要がある。本プロジェクトでは、採掘の終了した炭鉱跡地の炭鉱開発用コンセッションを、 パームプランテーション開発用コンセッションに変更する必要がある。 炭鉱跡地が林業省の定める森地外である場合、農業利用としてパームプランテーション 開発用コンセッションへの変更手続きを行う。農業利用権は農業省が担当しており、県が 窓口を行っている。 炭鉱跡地が林業省の定める林地である場合、一度、林地から用途除外し、パームプラン テーション開発用コンセッションに変更する手続きが必要になる。林地からの除外は林業 省、農業利用権は農業省が担当しており、県が両方の窓口を行っている。申請は、担当の 異なる手続きが必要とするため、2 年以上の期間が必要である。 図:炭鉱跡地のコンセッション変更イメージ コンセッション ⼿続き 開発■炭鉱跡地(林地外)
炭鉱開発用 パームプラン テーション開発用■炭鉱跡地(林地)
変更 手続き 土壌改良 (開発) コンセッション ⼿続き 開発 炭鉱開発用 パームプラン テーション開発用 林地除外 手続き 土壌改良 (開発) 変更 手続き- 7 -
パームプランテーション開発用のコンセッション(HGU:Hak Guna Usaha)は、県知事 が許可し、県が発行する。HGU は、30 年間有効である。HGU 取得エリアの開発前の土地
利用が森林の場合は林業省、農地の場合は農業省が県に HGU 発行権限を委嘱している。
HGU を取得するには、Location permit, Wood cut permit, Land reclamation permit, Environmental assessment permit, Mobilization permit, Land use permit 等の全ての許認可を取得して始めて発 行される。HGU を得るまでは、各 permit を 1 年間毎に更新する必要がある。 【ABK炭鉱】 ABK炭鉱は炭鉱開発用のコンセッションを取得し、東カリマンタン州のサマリンダ近郊 で石炭採掘を行っている。炭鉱鉱区は、約4,400haであり、全鉱区の60%の2,700haが掘削予 定区である。このエリアは、林業省の定める林地外であるため、林地除外の手続きは必要 ない。 出典:林業省 Web-GIS 土地区分図 http://webgis.dephut.go.id/ditplanjs/index.html 図:ABK炭鉱付近の森林区分
- 8 - (2)保全林に関連するコンセッション調査
前述のとおり、パームプランテーション開発用のコンセッション(HGU:Hak Guna Usaha) は、県知事が許可し、県が発行する。
本プロジェクトでは、このパームプランテーション開発用コンセッションエリアが発行 されたパームプランテーション開発を実施せず、プロジェクト期間にわたり森林を保全す るものである。
- 9 - 2.プロジェクトの協力可能性およびファイナンスと環境整備の検討 (1)プロジェクトの協力可能性調査 ①ABK炭鉱開発計画 ABK 炭鉱は東カリマンタン州の州都であるサマリンダ市近郊のマハカム川沿いに位 置する。2001 年より石炭の生産を開始し、年産 700 万 ton 規模である。鉱区面積は約 4,400ha であり、全鉱区の約 60%の 2,700ha が掘削予定区である。2001 年の操業開始以 来、炭鉱の開発権期限である2017 年までに 1,200ha の開発エリアの掘削を完了する計 画である。2018 年から 10 年間の延長許可を得られれば、2027 年までに残存する 1,500ha の開発を実施する計画である。 リハビリテーション計画は、採掘完了ピットエリアのリハビリテーションを実施す ることから、炭鉱の採掘ピットの開発計画に基づき策定する。炭鉱開発の請負業者が、 掘削土の埋戻しまでを行う。 ②パームプランテーション開発計画 ABK 炭鉱は 2008 年よりパームプランテーション事業を開始した。東カリマンタン州 内にパームプランテーション事業のための森林利用権(コンセッション)を 9 区画 96,075ha 所有しており、2014 年までにその 3 区画内において 13,615ha を既に開発して いる。2014 年より FFB 処理能力 60t/h のパームオイル工場の運用を開始した。 パームプランテーションの開発計画は、2015 年からの 10 年間でパームプランテーシ ョンを80,000ha まで拡大する計画となっている。また FFB 処理能力 300t/h までパーム オイル工場を拡大し、さらにパームオイル精製能力1,000t/d のパームオイル精油所の運 用を開始する計画である。 (2)ファイナンスに関する調査 プロジェクトに必要な資金規模は、出資金150 万 USD、借入金 350 万 USD の計 500 万USD である。ABK 炭鉱は年産 700 万 ton 規模の石炭を生産しており、また、パーム プランテーション事業も既に 13,615ha を開発している。これら事業規模から、本プロ ジェクトに必要な資金拠出は可能であると想定される。
- 10 - (3)環境整備に関する調査
①肥料の輸入・登録手続き
肥料の輸入・登録手続きは、大臣令(Ministry Decree No.43/ Permentan/ SR.140/ 8/2011, Ministry Decree No.70/ Permentan/ SR.140/ 10 /2011)による。申請書類(申請様式 2 種類 を作成、必要書類を添付)をWeb で受け付けてから審査期間は 2 週間程度である。そ の後、品質確認、肥効性確認試験があり、手続きが完了するまで1~2 年程度かかる。 ②パーム開発権(コンセッション)の取得 パームの開発権(コンセッション)は、森林は林業省、農地は農業省が地方政府に 発行権限を委嘱し、地方政府が発行する。本プロジェクトでは、採掘の終了した炭鉱 跡地の炭鉱開発用のコンセッションを、パームプランテーション開発用コンセッショ ンに変更する必要がある。そして炭鉱埋戻しが完了した鉱区より順次、パームプラン テーション開発を行うには、炭鉱開発用のコンセッションエリアの一部エリア(炭鉱 埋戻しが完了した鉱区)について、パームプランテーションへの活用に係る許可を取 得する必要がある。本プロジェクトの炭鉱エリアは県を跨らないため、炭鉱開発用コ ンセッションの発行権限は県知事に委嘱されている。
- 11 - 3.インドネシアにおけるケイ酸カリ肥料の適用性評価 ABK 炭鉱内の炭鉱跡地を対象として、ケイ酸カリ肥料による土壌改良のフィールド試験 ならびに炭鉱土壌を用いたポット栽培試験を実施した。 ポット試験では、ケイ酸カリ肥料を土壌改良材として施用した炭鉱跡地土壌を用いて、 東カリマンタン農業試験場の温室においてトウモロコシ、イネ、オイルパームを栽培した。 その結果、トウモロコシ、イネにおいて生育促進と増収効果、オイルパームでは生育促進 効果が確認された。 一方、フィールド試験では、面積約54a の炭鉱内の掘削跡地にケイ酸カリ肥料を施用し土 壌改良を行った。その結果、ケイ酸カリ肥料の施用から60 日には炭鉱跡地土壌の改善と肥 料成分の供給効果が認められ、肥料成分については施用後90 日経過後にも確認されたこと から、ケイ酸カリ肥料により炭鉱跡地土壌のpH、肥料成分などの土壌化学性が改善するこ とができ、その効果の持続性が確認できた。 (1)土壌分析 ①土壌採取地 本試験の対象としたABK 炭鉱は、インドネシアの東カリマンタン州サマリンダ近郊 に位置している。炭鉱内で、石炭の採掘が終了したエリア内の約 54a をフィールド試 験の対象地点に選定した。 図:フィールド試験サイトの概要
- 12 - 現地の一般的な炭鉱では、石炭は露天掘りで採掘されている。採掘にあたり表層土 壌(Top soil)は炭鉱内に保管され、リハビリテーション時に埋め戻されている。 本試験においても、フィールド試験サイトに保管されていた表層土壌を移送し、重 機で整地した。ポット栽培試験ならびにフィールド試験ともに、この表層土壌を試験 土壌として供試した。 ②土壌の採取 試験フィールドからの土壌の採取は、以下の手順で実施した。 ①各区間の中心を土壌採取地点(6 ヶ所)とする。 ②各地点の土壌を深さ30cm に掘り、土壌を約 500g 採取する。 ③試験区毎の地点の土壌を十分に混合し、1 つのサンプルとする。 図:炭鉱跡地における土壌採取の様子 図:炭鉱跡地の土壌の状態 ③ケイ酸カリ肥料の施用量の推定 炭鉱跡地土壌のpH を改善するために要するケイ酸カリ肥料の施用量を推定するため に、わが国の酸性土壌の中和において一般的に用いられる緩衝曲線法を実施した。イ ンドネシアにおけるオイルパームの栽培に適した土壌pH が 4~5 とされていることか ら、土壌改良の目標値はpH4.5 と 5.0 とした。また、オイルパームの肥料分を吸収する 水平根は表層に発達することから、改良深を10cm とした。 緩衝曲線法は、炭鉱跡地土壌10g を 100mL 容ポリビンに入れ、ケイ酸カリ肥料を 25、 50、100mg 混合し、純水を 25mL 加えて十分に撹拌した。その後、24 時間静置し、さ らによく撹拌した後、ガラス電極にてpH を測定した。得られた pH とケイ酸カリ肥料 の添加量から緩衝曲線を作成し、次項の式に基づいて目標値とするための添加量を求 めた。その結果、pH4.5、5.0 とするためのケイ酸カリ肥料の施用量は、9a あたりそれ ぞれ125kg、250kg となった。
- 13 - 図:炭鉱跡地土壌に対するケイ酸カリ肥料の pH 緩衝曲線 ④炭鉱跡地土壌の物理化学特性の分析 炭鉱跡地のあるインドネシアのカリマンタン島は、年間降雨量が約 2,500~3,000mm に達することから、無機成分の溶脱が進んだ土壌が広く分布している。そのような土 壌では、作物の栽培に必要な窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)等の肥料成分が欠 乏している。したがって、炭鉱跡地を植物の生育に適した土壌とするためには、ケイ 酸カリ肥料による土壌改良に加えて窒素、リンなどの肥料成分を施用する必要がある と考えられる。そこで、別途添加することが必要な肥料成分を把握するため、炭鉱跡 地土壌の物理化学特性の分析を東カリマンタン農業試験場で実施した。 炭鉱跡地土壌の土質としては、砂(Sand)が 26.7%とやや少なく、シルト(Dust)と 粘土(Clay)が約 37%と同程度で、土性は軽埴土であった。土壌の色は赤色であり、pH (H2O)は 3.9 の強酸性、さらにナトリウム、カルシウム、カリウムなど陽イオンが少 ないことから、前述したように東南アジア地域に広く分布する風化が進んだラテライ ト性赤色土と判断される。また、窒素やリンの含有量も低く、陽イオン交換容量(Cation exchange capacity)も 2.0Cmol(+)・kg-1とわが国の砂丘未熟土程度であることから、窒素、 リン、カリウムを施用する必要であることが明らかになった。 0 1 2 3 4 5 6 0 20 40 60 80 100 120 pH ( H 2 O) 添加量(mg/10g土壌) 5 4.5 ケイ酸カリ肥料施用量 = フィールド試験区面積(9a) × 改良深(10cm) × 土壌仮比重(1.2g/cm3)× 緩衝曲線から得られた添加量(mg/10g)
- 14 - 表:炭鉱跡地土壌の物理化学特性の分析値 分析項目 数値 成分構成 (%) 砂 26.7 シルト 36.0 粘土 37.3 含水率 (%) 2.7 pH (H2O) 3.9 N (%) 0.03 C (%) 0.84 P (㎎ P2O5・g -1) 13 K (㎎ K2O・g-1) 6.73 有効態リン酸(ppm) 15.77 交換性塩基 (Cmol(+)・kg-1) Na 0 Ca 31 Mg 28 K 11 陽イオン交換容量(Cmol(+)・kg-1) 2.0 交換性アルミニウム (Cmol(+)・kg-1) Al3+dd 5.42 H+dd 0.21
- 15 - (2)栽培試験 ケイ酸カリ肥料の炭鉱跡地土壌に対する土壌改良効果と肥料効果を調べるために、東カ リマンタン農業試験場の温室において、トウモロコシ、イネ、オイルパームの栽培試験を 実施した。試験方法は、わが国の肥効試験で一般的に用いられているポット栽培試験法と した。また、植物材料であるトウモロコシ、イネ、オイルパームの品種は、インドネシア で栽培されているものを用いた。同様に、ケイ酸カリ肥料以外の肥料は現地で入手した。 なお、施肥量ならびに潅水間隔などの栽培条件は、現地の慣行農法に準じて実施した。 ポリバック NK-22(トウモロコシ) Inpago-8(イネ) 尿素 SP36(リン肥料) 塩化カリ肥料 図:現地で調達した資材
- 16 - ①試験方法 試験は以下の通り、実施した。 表:試験方法 項目 実験場所 東カリマンタン農業試験場(サマリンダ市内)の温室 栽培台 温室の中央台(長さ11m×幅1.8m)でトウモロコシとイネ、側面2ヶ所(長 さ5.6m×幅0.7m)でオイルパームを栽培 土壌 ABK炭鉱の表層土壌4tonを50kgの土嚢に詰め、トラックで移送 植物材料 トウモロコシ (品種:NK-22) イネ (品種:Inpago-8) オイルパーム (品種:Medan) 直接ポットに播種 当初炭鉱跡地土壌に播種 ⇒苗の生育にバラつきが 見られたため、試験場 内の土壌に播種し、13 日間育苗 ABK炭鉱のオイルパー ム 事 業 を 担 う Palma Serasih社のサンガッタ 農 園 で4カ月間育苗し た苗を利用 ポット ポリバッグ(直径33cm×高さ39cm) 使用肥料 窒素肥料:尿素、N 46% リン肥料:SP36、Superphophate P2O5 36% カリウム肥料:ケイ酸カリ肥料(PSF)K2O 20% または 塩化カリ肥料(KCl)K2O 50% 生育調査 ■全植物において、7日から14日間隔で草丈、葉枚数、分げつ数を測定 ■収穫時 トウモロコシ:葉、茎の重量、雌穂の重量、数、実の数 イネ:葉と茎の重量、穂数、一穂籾数、登熟歩合、千粒重 表:ポット試験の試験区 試験区 条 件 Control 区 無施肥 IS 区 土壌改良処理のみ(ケイ酸カリ肥料:6g/ポット) C+KCl 区 Control 区+窒素肥料、リン肥料+KCl C+PSF 区 Control 区+窒素肥料、リン肥料+PSF IS+KCl 区 IS 区+窒素肥料、リン肥料+KCl IS+PSF 区 IS 区+窒素肥料、リン肥料+PSF 窒素肥料⇒尿素:0.65g/ポット、リン肥料⇒SP36:1.39g/ポット KCl:0.6g/ポット、PSF:1.5g/ポット
- 17 - ②温室の環境 温室の大きさは長さ14m、幅 6.5m で、建物はコンクリート製、屋根はガラス、側面 の上部はナイロン網である。床面もコンクリート製であった。中央と側面 4 ヶ所に栽 培用台があり、中央台に水道が完備されていた。温室の温度、日射などの計測は行わ れていなかったため、第2 回現地調査時(2014 年 10 月)に温室の内外の温度と日射を 計測した。 a)測定方法 • 温度:サーモレコーダー RT-23S(エスペックミック㈱ 製)を用いて、温室内 外の温度を計測 • 日射:光量子センサー CLI-190SB(Licor 製)を用いて、植物の光合成に利用さ れる波長400~700nm の光合成有効放射量(PAR、Photosynthetically active radiation) を計測 • 日射量と温度は、2014 年 10 月 21 日~22 日の 2 日間連続して計測 図:東カリマンタン農業試験場の様子と環境計測に用いたセンサー類の設置状況 b)測定結果 測定を実施した10 月 21 日~22 日は現地では乾季の終わりにあたり、天候は主に晴 天であったが、時おり曇天となり10 月 21 日の 11 時ごろには短時間の降雨があった。 • 温度は、日射が高くなる7 時より前の 6 時ぐらいから上昇し、午後 3 時ぐらいに ピークに達し、徐々に低下して朝方の4 時ぐらいに最低となった。 • 温室内の温度は、屋外の温度に追随して変化したが、日射のある昼間は3~5℃以 上高く推移し、もっとも高い場合は40℃に達していた。また夜間は、25~30℃の 間で推移した。 • 日射についても、温度と同様に屋外の変化に追随して変化したが、屋内は屋外よ りも30~50%程度低く推移した。 Greenhouse Grass Nyron mesh Thermometer PPFD sensor
- 18 - 図:温室内外の温度と光合成有効放射量の日変化 ③トウモロコシの植物栽培試験結果 a)発芽率 トウモロコシの種子は1 ポットに 5 粒播種し、13 日目の間引き時に発芽率を調べた。 試験に用いたNK-22 は飼料用の品種であるが、一般的に発芽率は 80%程度である。い ずれの試験区においても、トウモロコシの発芽率はほぼ 75~90%に達しており、試験 に使用した土壌あるいは肥料により発芽率が阻害されることは認められず、安全であ ると判断された。 表:播種後13 日目におけるトウモロコシの発芽率
実験区 Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
発芽率 90% 90% 76% 76% 80% 90% b)植物生育と収量 トウモロコシは順調に生育し、播種から90 日目に収穫した。結果、トウモロコシは Control 区に比較して、IS 区で草丈、葉枚数の増加が大きかった。さらに、C+KCl 区と 比較すると C+PSF 区で、草丈、葉枚数ともに増加が大きかった。また、IS+KCl 区と IS+PSF 区では草丈と葉枚数に差はみられなかったが、他の 4 つの実験区に比較して生 育が優れていた。 収穫時の葉と茎の重量と雌穂重はControl 区、IS 区ともに生育が悪く、雌穂は出たも のの結実しなかった。C+KCl 区と C+PSF 区の生育は、Control 区より有意(P<0.01)に 大きくなり、葉と茎の重量は約3 倍、雌穂重は 1.5 倍になった。さらに、IS+KCl 区と IS+PSF 区ではより生育が改善され、葉と茎の重量は約 5 倍、雌穂重は約 2 倍と有意(P< 0.01)に大きくなり、全粒数も約 600~700 個と C+KCl 区、C+PSF 区より多く得られ収 量が増加した。 15 20 25 30 35 40 45 0: 00 2: 10 4: 20 6: 30 8: 40 10: 50 13: 00 15: 10 17: 20 19: 30 21: 40 23: 50 2: 00 4: 10 6: 20 8: 30 10: 40 12: 50 15: 00 17: 10 19: 20 21: 30 23: 40 21‐Oct 22‐Oct Te m p e ra tu re ( ℃ ) Outdoor Indoor 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 0: 00 2: 20 4: 40 7: 00 9: 20 11: 4 0 14: 0 0 16: 2 0 18: 4 0 21: 0 0 23: 2 0 1: 40 4: 00 6: 20 8: 40 11: 0 0 13: 2 0 15: 4 0 18: 0 0 20: 2 0 22: 4 0 21‐Oct 22‐Oct PPF D (μ mol m ‐2 s ‐1 ) Outdoor Indoor
- 19 - 図:トウモロコシの栽培状況と収穫時のトウモロコシの植物体の様子 図:トウモロコシの草丈と葉枚数の経時変化 図:トウモロコシの収穫時における葉と茎、雌穂の重量、および全粒数 0 20 40 60 80 100 120 140 0 20 40 60 80 100 120 草丈 (c m /株 ) 播種後日数(日)
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
0 2 4 6 8 10 12 0 20 40 60 80 100 120 葉枚数 (枚 /株 ) 播種後日数(日)
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
10.7 10.8 32.2 38.4 48.9 49.2 0 10 20 30 40 50 60
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
le af and st e m weig ht (g / p o t) 16.1 16.6 24.7 24.2 30.8 32.2 0 0 370 428 616 727 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 5 10 15 20 25 30 35
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
To ta l se ed nu m b er Ea r we ig ht (g /p o t) Ear weight Total seed number Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
- 20 - ④イネの植物栽培試験結果
イネもトウモロコシ同様に順調に生育し、播種後 107 日目に収穫した。イネの草丈 では、IS+PSF 区、IS+KCl 区が高く、次いで IS 区で、KCl 区と PSF 区、Control 区の順 に低い傾向が認められた。一方、葉枚数では、Control 区、IS 区が少なく、他の 4 区が 多くなっている。さらに、収量に関係する分げつ数においては、IS+KCl 区、IS+PSF 区 が大きく増加し、次いで、KCl 区と PSF 区で、IS 区と Contorol 区はほとんど変化せず 分げつが進まなかったと考えられた。 次に、イネの収量は、トウモロコシと同様の傾向であり、Control 区、IS 区のいずれ も生育が悪く、分げつ数が少ないため収量が3.4~4.4g/ポットと少なかった。これに対 して、C+KCl 区と C+PSF 区では生育が改善され、地上部生体重、収量ともに Control 区の約3 倍になり、有意(P< 0.01)に増加した。IS+KCl 区と IS+PSF 区ではさらに生 育が改善され、最も生育がよかったIS+PSF 区の地上部生体重は、Control 区の約 4 倍の 107.3g/pot、収量も約 4 倍の 15.5g/pot に達した。 図:イネの栽培状況と収穫時のイネの植物体の様子 Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
- 21 - 図:イネの収穫時における葉と茎の重量および収量 23.5 23.5 75.5 74 99.5 107.3 0 20 40 60 80 100 120
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
Lea f and st e m we ig ht (g/ p o t) 図:イネの草丈と葉枚数、 分げつ数の経時変化 0 20 40 60 80 100 120 140 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 草丈 (c m /株 ) 播種後日数(日)
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
0 5 10 15 20 25 30 35 40 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 葉枚 数 (枚 /株 ) 播種後日数(日)
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
0 1 2 3 4 5 6 7 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 分げ つ 数 (本 /株 ) 播種後日数(日)
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
3.4 4.4 10.0 9.6 12.9 15.5 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
Yi el d (g/ p o t)
- 22 - ⑤オイルパームの植物栽培試験結果 オイルパームの苗は、パームプランテーションで 4 カ月間育苗された株を入手し、 炭鉱跡地土壌に定植して栽培した。その際、定植時の植え痛みを避けるため、すでに 施肥されている育苗時の土壌を保持したまま定植した。そのため、肥料分は生育に必 要な量が与えられていると判断し、Contorol 区と IS 区のみで比較を行った。オイルパ ームはトウモロコシ、イネに比較して生長が遅いことから、定植後 53 日目、95 日目、 179 日目の草丈と前調査日との差を比較した。また、定植後 81 日目、95 日目、179 日 目の茎の直径と前調査日との差も比較した。草丈では、53 日目までは、Control 区と IS 区で差は見られなかったが、95 日目には IS 区が大きくなり、179 日目でも同様であっ た。葉枚数も同じ傾向であり、179 日目には有意(P< 0.05)に IS 区が多かった。茎の 直径では、定植後81 日目では差がなかったが、95 日目以降に差が大きくなり、IS 区が 大きい傾向が認められた。 図:オイルパームの生育の状況と茎の直径(179 日目) Control IS Control IS
- 23 - 表:オイルパームの草丈と変化量 調査日 実験区 草丈(cm) 2014/08/21 (定植日) 2014/10/13 (53 日目) 2014/11/24 (95 日日目) 2015/02/16 (179 日日目) Control 38.1 47.8 60.4 88.6 IS 39.8 50.7 66.9 97.8 調査日 実験区 伸長(cm) 2014/08/21 (定植日) 2014/10/13 (53 日目) 2014/11/24 (95 日日目) 2015/02/16 (179 日日目) Control - 9.7 12.6 28.2 IS - 10.9 16.2 30.9 表:オイルパームの葉枚数と変化量 調査日 実験区 葉枚数(枚) 2014/08/21 (定植日) 2014/10/13 (53 日目) 2014/11/24 (95 日日目) 2015/02/16 (179 日日目) Control 7.2 8.0 8.0 8.2 IS 6.8 7.8 9.2 9.3 調査日 実験区 増加枚数(枚) 2014/08/21 (定植日) 2014/10/13 (53 日目) 2014/11/24 (95 日日目) 2015/02/16 (179 日日目) Control - 0.8 0.0 0.2 IS - 1.0 1.4 0.1 表:オイルパームの茎の直径と変化量 調査日 実験区 茎の直径(cm) 2014/08/21 (定植日) 2014/11/10 (81 日目) 2014/11/24 (95 日日目) 2015/02/16 (179 日日目) Control - 1.52 1.61 3.87 IS - 1.51 1.65 4.65 調査日 実験区 成長量(cm) 2014/08/21 (定植日) 2014/11/10 (81 日目) 2014/11/24 (95 日日目) 2015/02/16 (179 日日目) Control - - 0.09 2.26 IS - - 0.14 3.00
- 24 - ⑥まとめ ケイ酸カリ肥料による土壌改良効果とKCl、ケイ酸カリ肥料の肥料効果により、トウ モロコシ、イネともに地上部の生育ならびに収量の増加が認められた。また、オイル パームでは、ケイ酸カリ肥料による土壌改良効果により、草丈が高く茎の太くなる傾 向が認められた。 ポット栽培試験に使用した土壌はpH3.8 の酸性土壌で、交換酸度も高く酸性害が生じ やすい土壌だった。しかし、ケイ酸カリ肥料の施用によりpH の改善と交換酸度の低下 が認められ、植物の生育に適した土壌に改良されたと考えられる。改良された土壌で は、植物による肥料成分の吸収が増加したことから、生育がさらに増加したと考えら れる。特に、イネ科植物の生育に有効なケイ酸カリ肥料は、その肥料効果が大きく発 揮されたと考えられる。 図:ケイ酸カリ肥料による炭鉱跡地土壌に対する土壌改良と肥料効果 Infertile soils Low pH High Al3+ Poor fertility Low Productivity Improvement
of productivity High productivity
Fertilization pH modification Al3+ Reduction KCl
PSF PSF
Control IS C+KCl C+PSF IS+KCl IS+PSF
Corn Ear weight 16.1 16.6 (+3%) 27.7 (+53%) 24.2 (+50%) 30.8 (+91%) 32.2 (+100%) Rice Yield 3.4 4.4 (+29%) 10.0 (+183%) 9.6 (+180%) 12.9 (+280%) 15.5 (+360%)
- 25 - (3)フィールド試験 ケイ酸カリ肥料の炭鉱跡地土壌に対する土壌改良効果を調べるため、ABK 炭鉱内の跡地 にケイ酸カリ肥料を散布し、経時的に土壌分析を実施した。試験サイトは、石炭採掘後の 約54a に表層土壌を運び、重機で整地した。ケイ酸カリ施用量は、前項で作成したケイ酸カ リ肥料の緩衝曲線に基づいて、1 試験区(9a)当たり 125kg(1.25t/ha 施肥区)または 250kg (2.50t/ha 施肥区)とした。 ①試験方法 試験は以下のとおり、実施した。 表:試験方法 項目 試験サイト ABK炭鉱内の採掘跡地 試験区 無施肥区 1.25t/ha施肥区 2.50t/ha施肥区 1試験区の大きさ 30m×30m = 900m2 = 9a 試験区の設定 (試験区数:3)×(反復数:2)= 6区画 (区画面積:9a/区画)×(区画数:6区画)= 総面積 54a 試験方法 ■ケイ酸カリ肥料を人手にて散布:2014年8月15日 ■被覆植物の種子を散布:2014年10月23日 ■土壌採取および分析:10月22日、12月12日 ②試験区の整備 フィールド試験の対象地点は、ABK 炭鉱内の小高い丘陵地になっていた。試験を行 うにあたり、保管していた表層土壌をトラックで移送し、大型の重機で整地した。可 能な限り、水平になるように整地を行ったが、丘陵部であったため、試験区全体がス ロープ状になることが分かった。そのため、施用したケイ酸カリ肥料が降雨により移 動することも考慮して、スロープ上部から下部に向かって、無施肥区×2 区画、1.25t/ha 施肥区×2 区画、2.50t/ha 施肥区×2 区画と設定した。 図:フィールド試験サイトの様子と重機による整地
- 26 - ③ケイ酸カリ肥料の散布 ケイ酸カリ肥料の散布は人手により散布し、土壌へのすき込みは行わなかった。可 能能な限り試験区内に均一となるように散布したが、降雨などにより固まって分布し ている場合もあった。 図:ケイ酸カリ肥料の散布の様子と散布された肥料の状態 ④被覆植物 インドネシアのパームプランテーションでは、風雨による土壌の流亡や風化を防ぐ とともに、窒素固定による肥料効果を期待して、マメ科植物による土壌被覆(Cover plants)が一般的に行われる。本試験区では、炭鉱内の他のエリアでの使用実績のある タヌキマメ属のCP(Crotalaria paniculata)を用いた。無施肥区に比較して、1.25t/ha 施 肥区、2.50t/ha 施肥区においてにおいて、被覆植物の生育が優れており、ケイ酸カリ肥 料による土壌改良効果が発揮されていると考えられる。 図:被覆植物の播種の様子と発芽した植物の状態 図:播種から 117 日が経過した被覆植物の状態
- 27 - ⑤土壌分析結果 土壌分析は、試験区から第2回現地調査(10 月 22 日)、第3回現地調査(12 月 12 日)の 2 回採取したサンプル土壌で行った。第2回現地調査時の分析値から、ケイ酸 カリ肥料の施用により、1.25t/ha 施肥区、2.50t/ha 施肥区ともに pH が高くなる傾向が見 られた。また、土壌の酸性化の要因の一つである交換酸度を示すAl3+の量も、同様にケ イ酸カリ肥料の施用により低下している。さらに、マグネシウム、カリウムの含有量 も増加しており、肥料としての施用効果も認められる。この効果は第3回現地調査の 分析でも認められ、効果が持続していると考えられた。 表:フィールド試験における土壌分析結果 分析項目 第2回現地調査 第3回現地調査 無 施肥区 1.25t/ha 施肥区 2.50t/ha 施肥区 無 施肥区 1.25t/ha 施肥区 2.50t/ha 施肥区 成分構成 (%) 砂 25.0 24.0 39.0 50.0 26.0 46.0 シルト 28.0 39.0 32.0 24.0 36.0 25.0 粘土 47.0 37.0 29.0 26.0 38.0 29.0 含水率 (%) 4.76 5.00 3.22 4.92 3.84 4.08 pH (H2O) 4.06 4.19 4.15 - - - N (%) 0.02 0.05 0.03 0.02 0.04 0.03 C (%) 0.3 0.6 0.7 0.3 0.3 0.7 P (㎎ P2O5・g -1) 4.1 25.4 28.0 6.1 25.2 11.4 K (㎎ K2O・g-1) 0.84 1.34 2.05 0.9 1.28 1.37 有効態リン酸(ppm) 3.4 2.9 4.2 1.6 1.2 2.8 交換性塩基 (Cmol(+)・kg-1) Na 0 0 0 0 0 0 Ca 0 0 0 0.94 2.35 2.36 Mg 0.04 1.34 1.03 0.77 2.02 2.45 K 0.82 0.88 1.12 0.75 0.84 0.84 陽イオン交換容量 (Cmol(+)・kg-1) 5.87 5.13 5.05 3.99 5.44 4.47 交換性アルミニウム (Cmol(+)・kg-1) Al3+dd 5.82 3.04 2.04 2.81 3.95 3.04 H+dd 2.54 0.45 0.31 1.50 0.94 0.94 Macro Mg(%) 0 0 1.98 1.98 15.48 18.87 Micro Fe(ppm) 20450 23380 13520 - - - Zn(ppm) 3.67 15.06 19.18 37.37 60.87 48.16
- 28 - 4.炭鉱跡地の土壌改良に対応した温室効果ガス排出削減量算定の方法論の検討 本プロジェクトは、開発計画(伐採や土地利用変化等)対象の森林の代替地を提供する ことで森林伐採を回避し、森林保全を実現する。代替地は、日本製技術であるケイ酸カリ 肥料を用いて、炭鉱跡地や強酸性土壌地、未利用地等のせき悪土壌を土壌改良し、当該土 地の生産性を向上させることで創出する。つまり、本プロジェクトは、保全森林と代替地 の2種類のサイトで実施することになる。 図:調査対象事業の概要 そこで、温室効果ガス排出削減量もサイト毎に、森林由来の温室効果ガス排出削減量と 土壌改良に伴う温室効果ガス排出削減量に区分し算定することとした。本プロジェクトで 採用する方法論は、IPCCやVCS等の先行する方法論で多用されている方法論を参考に新た に構築した。 STEP3:代替農用地を経済活動に利用することで、 開発計画(伐採や土地利用変化等)に伴う森林の伐採を回避 STEP1:日本で生産したケイ酸カリ肥料を、せき悪土壌(炭鉱跡地等)へ運搬 STEP2:ケイ酸カリ肥料により、せき悪土壌(炭鉱跡地等)の土壌改良を行い、 代替農用地(プランテーション等の農地)を創出
TERy = (FERy + RERy) * Apj
TERy y 年における GHG 排出削減量(tCO2/year)
FERy y 年における森林からの単位面積当たり排出削減量
(tCO2/ha・year)
RERy y 年における代替地からの単位面積当たり排出削減量
(tCO2/ha・year)
- 29 - (1)適格性要件の設定 本方法論は、以下の適格性要件を満たしていることが必要となる。 ■適格性要件 1 森林の定義 a. 対象事業で保全する森林は、インドネシアが国連気候変動枠組み条約・京都議定 書の下で定義した森林であること。 【インドネシアの森林の定義】 ・最低樹冠率:30% ・最小森林面積:0.25 ha ・最低樹高:5m b. 対象事業は、REDD+のスコープのいずれかを必ず包含すること。 【REDD+のスコープ】 ・森林減少からの排出の削減 ・森林劣化からの排出の削減 ・森林炭素蓄積の保全 ・持続可能な森林経営 ・森林炭素蓄積の強化 ■適格性要件 2 森林開発のコンセッション 対象事業で保全する森林の開発(伐採や土地利用変更)に関するコンセッション を保有していること。 ■適格性要件 3 代替地のコンセッション 代替地として利用するサイトのコンセッションも保有していること。 ■適格性要件 4 土壌の生産性 対象事業で保全する森林と代替地の土壌の生産性が同等であること。
- 30 - (2)森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量算定方法 本プロジェクトを実施することで、計画された森林伐採や森林開発が回避される。そこ で、事業を実施した場合の森林伐採回避による温室効果ガス排出削減量の算定方法につい て検討した。なお、本調査においては、伐採を回避する森林の気候、土壌、樹種等の条件 は、それぞれ単一と仮定した。 ①リファレンスシナリオの設定 保全森林のリファレンスシナリオを設定した。プロジェクトが実施されない場合、 森林が伐採されプランテーション等に開発されることで、温室効果ガス排出量が増加 する。しかし、プロジェクトが実施された場合、森林は保全され、温室効果ガス排出 量は増加しない。この差が、保全森林の温室効果ガス排出削減量となる。 図:保全森林のリファレンスシナリオ ②温室効果ガス排出削減量の算定方法 森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量は、計画された森林伐採を回避する森 林の単位面積当たりのカーボン変化量から算定する。 リファレンス排出量は、植生タイプ別の排出係数を利用する。この植生タイプ別の 排出係数は、植生別の炭素蓄積量である。プロジェクトを実施することで、プロジェ クト実施前の森林の炭素蓄積量が保全される。プロジェクトが実施されない場合でも、 森林が伐採や開発後の植生に変わり炭素量が蓄積される。つまり、この差が、プロジ ェクト実施により保全される炭素蓄積量となる。 IPCC や VSC 等の先行する方法論で多用されている単位面積当たりの炭素蓄積量と して、主に以下の2 種類が挙げられる。 毎木調査から試算した値 国の機関等が整備したデータ 本方法論においても、これらのデータを利用することが可能である。 森林が保全される 森林がプランテーションに 開発される 時間 GHG 排出量 プロジェクト排出量 リファレンス排出量
プランテーション
開発開始
- 31 - 図:森林伐採回避による温室効果ガス排出削減量算定イメージ ③MRV(測定・報告・検証) 森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量に関するMRV は、植生タイプ別の排出 係数と森林面積の変化の2 項目で実施する。 表:森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量に関する MRV 項目 項目 モニタリング方法 頻度 植生タイプ別の排出係数 - 政府等が発行する公式データの確認 - グランドトゥルース 5 年毎 森林面積の変化 - 森林管理簿の確認及びリモートセン シングによるモニタリング 5 年毎 カーボン プール量 カーボン プール量 (伐採/開発 後の植生) カーボン 大気 放出量 伐採/ 開発前 プロジェクトが実施されない場合 プロジェクトが実施された場合 カーボン 変化量 伐採/ 開発後 伐採/ 開発回避
FERy = FRELy – FPEy – FLEy
FERy y 年における森林からの単位面積当たり排出削減量
(tCO2/ha・year)
FRELy y 年における単位面積当たりのリファレンス排出量(tCO2/ha・year)
FRELy = (EFvi - EFvj) * (44/12)
EFvi:プロジェクト実施前の植生 i の排出係数(tC/ha) EFvj:プロジェクト実施しない場合に変化する植生 j の
排出係数(tC/ha)
EFvi と EFvj は政府等が発行する公式データ(インドネ シアのRAD-GRK 等)や実測値を利用できる
FPEy y 年における単位面積当たりのプロジェクト排出量(tCO2/ha・year) ■プロジェクト実施による排出は想定していない。
FLEy y 年における単位面積当たりのリーケージ排出量(tCO2/ha・year) ■プロジェクト実施による、リーケージは想定していない。
- 32 - (3)土壌改良に伴う温室効果ガス排出量算定方法 本プロジェクトを実施することで、土壌改良に伴う温室効果ガスの排出が見込まれる。 そこで、事業を実施した場合の土壌改良に伴う温室効果ガス排出量の算定方法について検 討した。 ①リファレンスシナリオの設定 プロジェクトが実施されない場合、せき悪土壌地は、未利用地となる。炭鉱跡地の 場合は、リハビリテーションが実施される。しかし、現状では、炭鉱跡地のリハビリ テーションは進んでいない。そのため、プロジェクトが実施されない場合、代替地で の温室効果ガス排出量は変化しない。プロジェクトが実施された場合は、せき悪土壌 地が代替農用地として開発される。この開発のために、ケイ酸カリ肥料を日本から代 替地に運搬するための化石燃料が消費される。また、土壌改良により、土壌中のバク テリアの活動が活発になり、土壌中の炭素が放出される。つまり、プロジェクトを実 施することで、代替地の温室効果ガス排出量は増加する。 図:代替地のリファレンスシナリオ ②温室効果ガス排出削減量の算定方法 土壌改良に伴う温室効果ガス排出量は、車両と貨物船の利用に伴う温室効果ガス排 出量と土壌改良に伴う温室効果ガス排出量を、別々に算定する。 炭鉱跡地をプランテーショ ンとして整備 炭鉱跡地のリハビリテー ションは進まない
ケイ酸カリ肥料による
土壌改良開始
γ γ γ γ γ γ γγ プロジェクト排出量 リファレンス排出量 時間 GHG 排出量- 33 -
車両と貨物船の利用に伴う温室効果ガス排出量は、化石燃料の消費量と化石燃料別 の排出係数から温室効果ガス排出量を算定する。
RERy = RRELy – RPEy – RLEy
RERy y 年における代替地からの単位面積当たり排出削減量
(tCO2/ha・year)
RRELy y 年における単位面積当たりのリファレンス排出量(tCO2/ha・year) ■プロジェクト実施によるリファレンス排出への影響はな
い。(=0 tCO2/ha・year)
RPEy y 年における単位面積当たりのプロジェクト排出量(tCO2/ha・year)
RPEy = RPEvy + RPEcsy + RPEsiy
RPEvy : y 年における車両利用による排出量 (tCO2/ha・year) RPEcsy : y 年における貨物船利用による排出量 (tCO2/ha・year) RPEsiy : y 年における土壌改良による排出量 (tCO2/ha・year) RLEy y 年における単位面積当たりのリーケージ排出量(tCO2/ha・year)
■プロジェクト実施による、リーケージは想定していない。
RPEvy =EFv * DDvy * QF
RPEvy y 年における車両からのプロジェクト排出量(tCO2/ha・y)
EFvi プロジェクト車両の積載荷重当たりの原単位(tCO2/t・km)
DDiy y 年におけるプロジェクト車両の 1 回当たりの走行距離(km)
QF ha 当たりの土壌改良に必要な施肥量(t/ha)
RPEcsy =EFcs * DDcsy * QF
RPEcsy y 年における貨物船からのプロジェクト排出量(tCO2/ha・y)
EFcs プロジェクト貨物船の積載荷重当たりの原単位(tCO2/t・km)
DDcsy y 年におけるプロジェクト貨物船の 1 回当たりの航行距離(km)
- 34 - また、土壌改良による温室効果ガス排出量は、チャンバーにより実測する方法や土 壌含有炭素量により算定する方法がある。本方法論では、土壌含有炭素量での算定を 採用した。その理由は、主に以下の2 種類が挙げられる。 測定のためのイニシャルコストが必要ない。 定期的に土壌分析を実施することで、効率よく農作物を育成させることが可能 となる。それと同時に土壌含有炭素量を把握することが可能である。 既存の方法論では、土壌の土壌含有炭素量の差から土壌中の炭素変化量を算定して いる(Good Practice Guidance for Land Use, Land-Use Change and Forestry, IPCC)。 本方法論では、土壌中の含有炭素量は、含水率とかさ密度で現地の土壌構成に補正 した。(土壌含有炭素量は、土壌サンプルを風乾し、粉砕後、定量される。) ③MRV(測定・報告・検証) 土壌改良に伴う温室効果ガス排出削減量に関するMRV は、肥料運搬による化石燃料 消費量と土壌含有炭素量の2 項目で実施する。 表:土壌改良に伴う温室効果ガス排出削減量に関する MRV 項目 項目 モニタリング方法 頻度 肥料運搬による 化石燃料消費量 - 領収書等の化石燃料購入履歴の確認 毎年 土壌含有炭素量 - 土壌分析 毎年 RPEsiy = (RSCCi - RSCCj) * SD * (1 - MC) *10,000 * Depth * (44/12) RPEsiy y 年における土壌改良によるプロジェクト排出量(tCO2/ha・y)
RSCCi 以前の時期 i における土壌含有炭素量(%) RSCCj 現在の時期 j における土壌含有炭素量(%) SD 土壌のかさ密度(t/m3) MC 土壌の含水率 ウェットベース(%) 10,000 単位換算(ha⇒m2) Depth 土壌の深さ(m)
- 35 - 5.パイロット・プロジェクトにおける温室効果ガス排出削減量の算定 本調査では、以下に示すパイロット・プロジェクトを対象として、GHG排出削減量を算 定した。 日本で生産したケイ酸カリ肥料(1.25t/ha)を用いて、ABK炭鉱所有地の炭鉱跡地(1,500ha) を改良し、代替地(農地)を創出する。この代替地をパームプランテーションとして利用 することで、開発計画(伐採計画)に伴う森林(1,500ha)の伐採を回避することを想定し た。 図:パイロット・プロジェクト 図:パイロット・プロジェクトにおける温室効果ガス排出削減量 STEP1:日本で生産したケイ酸カリ肥料を、ABK炭鉱跡地へ運搬 STEP2:ケイ酸カリ肥料により、 ABK炭鉱跡地の土壌改良を行い、 代替地(パームプランテーション)を創出 STEP3:代替地をパームプランテーションとして利用することで、 パームプランテーション開発計画に伴う森林の伐採を回避 森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量: 388 tCO2/ha・y 土壌改良に伴う温室効果ガス排出削減量: -12.4 tCO2/ha・y
車両利用による排出量: 0.013 tCO
2/ha・y
貨物船利用による排出量: 0.23 tCO
2/ha・y
土壌改良による排出量: 12.0 tCO
2/ha・y
■単位⾯積当たりの温室効果ガス排出削減量
保全林面積:1,500ha(150ha/year ) 炭鉱(採掘中を含める) : 4,391ha プランテーション開発予定地 :66,385ha■パイロット・プロジェクトにおけるコンセッション状況
単位面積当たりの温室効果ガス排出削減量:375 t-CO
2/ha・y
単位面積当たりの温室効果ガス排出削減量×保全林面積 =562,000 tCO
2■パイロット・プロジェクトにおける温室効果ガス排出削減量
- 36 - (1)森林減少に由来する温室効果ガス排出削減量算定 ABK炭鉱が東カリマンタン州に確保しているパームプランテーション用のコンセッショ ンエリアの植生状況を、リモートセンシングを用いて分析した。その結果から、森林減少 に由来する温室効果ガス排出削減量を算定した。 ①分析用画像の選定 本調査では、Landsat 画像(TM、ETM+)を利用し、Landsat 画像 1 枚分(約 185km×185km) を解析対象範囲とした。パイロット・プロジェクトの保全林を含み、3 年代以上同じ場 所で撮影を行っている衛星画像の選定を行った。選定した画像は1989 年、2000 年、2009 年の3 年分とした。選定した 3 年分の衛星画像が重なる共通範囲を分析対象とした。 また、本調査では解像度が 30m の可視~短波長赤外の画像のみを使用し、解析精度を 統一した。 図:選定画像撮影位置図 表:画像詳細 衛星 撮影年代 撮影日時 センサー 解像度 Landsat-5 1989 年 4 月 22 日 TM 30m(可視~短波長赤外) 120m(熱赤外) Landsat-7 2000 年 8 月 26 日 ETM+ 15m(パンクロ) 30m(可視~短波長赤外) 60m(熱赤外) Landsat-5 2009 年 8 月 11 日 TM 30m(可視~短波長赤外) 120m(熱赤外)
- 37 - ②解析方法の検討 解析の条件は、下記のとおりとした。 ・土地利用分類:森林・草地・市街地の 3 区分(画像分類の精度を上げるため、 水域、雲、影、その他の凡例は適宜区分を行う) ・分析方法:可視、もしくは自動判別による画像判別(自動判別の場合、衛星画 像だけではなく航空写真や植生図などによる確認を行う) 画像解析には、一般的な分類手法の「教師付き分類」を用いた。教師付き分類とは、 各クラスのトレーニングサンプルで抽出された画素データの尤度(尤もらしさの度合 い)を求め、各画素を最も近いクラスに分類する方法である。 図:解析フロー ③画像前処理 画像分類には、各バンドを合成した画像を用いるが、前処理として太陽光の反射を 放射輝度に、さらに放射輝度を反射率に変換する必要がある。合成後の画像では変換 が行なえないため、各バンドに対して変換を行なった。 表:放射輝度、反射率変換式 放射輝度変換式 R=(Lmax-Lmin)÷255×DN+Lmin R :放射輝度値 Lmax :バンド別の最大放射輝度 Lmin :バンド別の最小放射輝度 DN :デジタル値 放射輝度-反射率変換式 ρ=(π×R×d2)/(Esunλ×cosθ) ρ :反射率 R :放射輝度値 d :地球と太陽の距離 Esunλ :バンド別の太陽放射量 θ :衛星通過時の太陽天頂角 引用:国土技術政策総合研究所 http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0436pdf/ks043607.pdf Landsat 画像 前処理 精度検証 ・放射輝度変換 ・反射率変換 教師付き分類 トレーニングサンプル取得
- 38 - ④トレーニングサンプル取得による教師付き分類と精度検証 画像分類を行うにあたり、トレーニングサンプルの取得を行った。トレーニングサ ンプルの取得には、東カリマンタン植生図を使用した。 また、トレーニングサンプル取得用に、共通範囲の植生図のデジタイズを行った。 図:共通範囲植生図 表:土地利用別面積 凡例 面積(ha) 面積割合(%)
Hutan Lahan Kering Primer 1,128,997.2 36.1
Hutan Lahan Kering Sekunder 887,210.4 28.4
Tanah Terbuka, Pelabuhan Udara 12,736.5 0.4
Pertambangan 8,664.3 0.3
Semak / Belukar 729,618.7 23.4
Pertanian Lahan Kering 34,649.5 1.1
Hutan Tanaman 8,692.6 0.3
Tambak 17,552.0 0.6
Tubuh Air 13,607.0 0.4
Awan, Tidak Ada Data 281,880.7 9.0
- 39 - ⑤分類結果 画像を「森林・草地・市街地(裸地含む)・水域・影・雲」の6 区分で教師付き分類 を行なった。 図:1989 年分類結果(6 区分) 図:2000 年分類結果(6 区分)
- 40 -
- 41 - ⑥共通範囲における森林面積の推移 面積の比較では、各年代の画像が重なりあう共通範囲を抽出し比較した。画像によ って影響を受ける凡例(雲、影、水域)については、除外して比較した。 図:比較対象範囲と除外箇所 表:共通範囲の面積推移 面積 凡例 1989 年 2000 年 2009 年 ha % ha % ha % 森林 1,532,453.0 88.3 1,432,453.0 82.5 1,410,251.0 81.3 草地 195,937.1 11.3 276,995.2 16.0 270,373.0 15.6 市街地(裸地含) 6,668.2 0.4 26,023.3 1.5 54,847.4 3.2 比較 凡例 1989 年~2000 年 2000 年~2003 年 1989 年~2009 年 ha % ha % ha % 森林 ▲ 100,000.1 ▲ 5.8 ▲ 22,201.9 ▲ 1.3 ▲ 122,202.0 ▲ 7.1 草地 △ 81,058.1 △ 4.7 ▲ 6,622.2 ▲ 0.4 △ 74,435.9 △ 4.3 市街地(裸地含) △ 19,355.1 △ 1.1 △ 28,824.1 △ 1.7 △ 48,179.3 △ 2.8 増(△)減(▲)
- 42 - 共通範囲において2000 年は 1989 年と比べ、森林が 5.8%減少したのに対し、草地が 4.7%、市街地(裸地含)が 1.1%増加している。しかし、2000 年から 2009 年では、森 林が 1.3%減少するだけでなく、草地も 0.4%減少している。一方で、市街地(裸地含) は1.7%増加している。 森林は1989 年から 2009 年にかけて 7.1%減少しており、草地は 1989 年から 2009 年 にかけては4.3%増加していたが、2000 年から 2009 年にかけて 0.4%の減少も見られた。 市街地(裸地含)は1989 年から 2000 年にかけて、2000 年から 2009 年にかけて徐々に 増加しており、全体的に2.8%増加している。 ⑦コンセッションエリアにおける森林面積の推移 ABK 炭鉱が保有するパームプランテーション用コンセッションエリアについても、 共通範囲と同様に、画像によって影響を受ける凡例を除外して面積比較を行った。な お、当該地域に集落は存在しないことから、凡例の「市街地(裸地含)」を「裸地」と した。 図:1989 年分類結果(6 区分)
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図:2000 年分類結果(6 区分)
- 44 - 表:コンセッションエリアの面積推移 面積 凡例 1989 年 2000 年 2009 年 ha % ha % ha % 森林 4,004.9 75.7 3,136.8 59.3 4,727.7 89.4 草地 1,283.7 24.3 2,154.3 40.7 560.4 10.6 裸地 0.0 0.0 0.0 0.0 2.3 0.04 比較 凡例 1989 年~2000 年 2000 年~2003 年 1989 年~2009 年 ha % ha % ha % 森林 ▲ 868.1 ▲ 16.4 △ 1,590.9 △ 30.1 △ 722.8 △ 13.6 草地 △ 870.6 △ 16.4 ▲ 1,593.9 ▲ 30.1 ▲ 723.4 ▲ 13.7 裸地 0.0 0.0 △ 2.3 △ 0.04 △ 2.3 △ 0.04 増(△)減(▲) コンセッションエリアにおいて、1989 年は森林が 75.7%、草地が 24.3%であり、裸地 は抽出されなかった。1989 年から 2000 年にかけて森林の 16.4%が減少し、草地が 16.4% 増加したことから、森林が草地に変化したと推測される。2000 年においても裸地は抽 出されなかった。2000 年から 2009 年にかけては、森林が 30.1%増加し、草地が 30.1% 減少している。 全体的に見ると、1989 年から 2009 年にかけて森林の増加及び草地の減少という結果 が得られた。1989 年から 2000 年にかけて森林が減少し、草地が増加したが、2000 年 から2009 年にかけては逆に森林が増加し、草地が減少している。 ⑧リファレンスシナリオと保全林の設定 リモートセンシングを用いてコンセッションエリアに、約4,000ha の森林が 10 年以 上前から分布していることが確認できた。ABK 炭鉱は将来、この 4,000ha をパームプ ランテーションとして開発する予定である。 また、パイロット・プロジェクトでパームプランテーションの開発代替地とする炭 鉱跡地は1,500ha となっている。そのため、本調査において分析を行ったコンセッショ ンエリア内の森林1,500ha を、パイロット・プロジェクトの保全林として設定した。