№ 274
NATIONAL VETERINARY ASSAY LABOLATORY
CONTENTS
◆トピックス 2 ✣ 創立 50 周年記念特集 1. 動物医薬品検査所創立 50 周年記念事業について 2. 動物医薬品検査所創立 50 周年記念式典祝辞 3. 創立 50 周年を記念して∼動薬検の歩みと今後の課題∼ 4. 創立 50 周年に寄せて∼過去 10 年と将来への期待∼ 5. 創立 50 周年に寄せて∼この先 50 年に向けて∼ ✣ 平成 17 年度家畜由来細菌の抗菌性物質感受性実態調査 ◆海外出張報告 11 ✣ 英国における薬事制度等の情報収集(その1) ∼欧州における動物用医薬品承認制度の移り変わり∼ ◆調査研究紹介 13 ✣ Salmonella Typhimurium の薬剤感受性と多剤耐性の動 向 ✣ 家畜におけるフルオロキノロン剤の使用とフルオロキノ ロン耐性カンピロバクターの分布との関係 ✣ フルオロキノロン耐性豚丹毒菌における DNA ジャイ レース及びトポイソメラーゼⅣ変異の解析 ✣ 国内における鶏大腸菌症由来大腸菌の抗菌剤感受性調査 ✣ 異常プリオン蛋白質に結合する RNA アプタマーの作出 ✣ 異常プリオン蛋白質に結合する RNA アプタマーの特異 性解析 ✣ リアルタイム PCR を導入したマイコプラズマ検出法の 改良✣ 類結節症菌(Photobacterium damselae subsp. piscicida) 国内分離株のパルスフィールドゲル電気泳動法を用い た遺伝子型別 ◆新薬紹介 17 ✣ フィロコキシブを含有する犬の経口投与剤 ✣ ニューカッスル病・鶏伝染性気管支炎・産卵低下症候群 − 1976・鶏伝染性コリーザ(A・C型)・マイコプラズマ・ ガリセプチカム感染症混合(油性アジュバント加)不活 化ワクチン ◆検査室だより 19 ✣ 検査第二部抗生物質製剤検査室 ◆主な行事・人の動き 20 ◆お知らせ 22 ✣ 獣医師の届出をお忘れなく!! ✣ No.273 の訂正 ★けやきコラム 22
2006.12.1
創立 50 周年記念特集
動物医薬品検査所は、昭和 31 年 6 月 25 日に創立さ れて以来、我が国唯一の動物用医薬品の検査指導機関 として活動を続け、本年創立 50 年の大きな節目を迎 えました。 今号では、これを記念して平成 18 年 10 月 4 日に開催 した記念式典・祝賀会の様子と記念誌・業績集の作成 について、ご紹介します。また、農林水産省消費・安 全局長の祝辞をはじめ、所長、検査第一部長及び第二 部長から、創立 50 周年に当たって寄稿いただきました。 1. 動物医薬品検査所創立 50 周年記念事業について (1)記念式典・祝賀会 (庶務課長) (2)記念誌・業績集の作成 (企画連絡室長) 2. 動物医薬品検査所創立五十周年記念式典祝辞 (農林水産省消費・安全局長) 3. 創立 50 周年を記念して∼動薬検の歩みと今後の課題∼ (所長) 4. 創立 50 周年に寄せて∼過去 10 年と将来への期待∼ (検査第一部長) 5. 創立 50 周年に寄せて∼この先 50 年に向けて∼ (検査第二部長)1.動物医薬品検査所創立 50 周年記念事業について
記念事業の実施に当たっては、平成 17 年 7 月 19 日 所内に創立 50 周年記念事業運営委員会を発足させ、 時節に合った記念事業となるよう、「記念式典」と「記 念出版物」の 2 本立てで粛々と実施することとしまし た。 記念式典については委員会の下に式典部会を設置し て準備に当たり、記念出版については広報委員会及び 年報編集委員会に臨時委員を配して編集を行うことと しました。以来、運営委員会を中心とする綿密な準備 と、関係機関・各位やOB職員の温かいご指導と御協 力があって、以下のとおり、成功裡に終了することが できました。この間の関係者の御努力と御協力に深く 御礼を述べますと共に、新たな 50 年に向かって歩き 始めた当所に、今後とも一層の御支援・御協力をお願 い申し上げます。 (企画連絡室長 大石弘司) (1)記念式典・祝賀会 動物医薬品検査所は、平成 18 年 6 月 25 日で創立 50 周年を迎え、これを記念して去る 10 月 4 日に国分 寺市の「Lホール」で記念式典及び祝賀会が開催され ました。当所では現在地に新築移転した際に挙行し た創立 3 周年を初めとして、10 年毎の節目の年には 記念誌の発行等によってそれまでの業務の展開等を省 み、今後の取り組むべき課題を整理するとともに、記 念行事の一つとして「記念式典・祝賀会」を催して来 ました。 今回の記念式典・祝賀会は、来賓・招待者、当所の 元・現職員等の関係者 120 余名のご出席を得て開催さ れました。式典では所長の挨拶から始まって、来賓の 小林裕幸農林水産大臣官房審議官による消費・安全局 長祝辞の紹介と挨拶が行われ、続いて来賓の皆様が紹 介されました。祝賀会では、当所と深いつながりのあ る動物衛生研究所の谷口稔明所長の音頭による乾杯が 行われ、祝宴が始まりました。 創立 50 周年ともなると流石に創立当時を知る現職 員はおりませんが、畜産業や家畜衛生の発展とともに 歩み、当所の歴史を支えてきた方々が集まると共通の 話題も多く、様々なエピソードや近況の話にも花が 咲き、にぎや かな団らんの 場となりまし た。また、若 い職員にとっ ては逢ったこ ともない諸先 輩の中で耳にする様々な話等は、当所の歴史を垣間見る貴重な機会 になったことと思われます。 久方ぶりの再会などで話題もつきない中、伊藤検査 第一部長の主催者謝辞が行われ、貝塚OB会会長の音 頭による万歳三唱で祝賀会の中〆となりました。 前日までの雨模様の空も大きく崩れることはなく、 遠方から参加いただいた元職員始め皆様方も気持ちよ く会場を後にすることができたことでしょう。準備し てきたすべての行事・事業が終わった今、職員にとっ ても有意義な記念日として記憶された一日でした。 (庶務課長 金子秀夫) (2)記念誌・業績集の作成 「動物医薬品検査所 50 周年記念誌」及び「50 年の 記録及び研究業績集」をそれぞれ 650 部及び 250 部発 行し、記念式典出席者の方々に贈呈され、また、国、 都道府県、大学、研究機関等へは後日送付されました。 記念誌は、「創立と変遷」、「現在の状況」及び「近 年のトピック」の 3 部構成となっており、「創立と変 遷」の部には、各時代を担ってこられた歴代所長の方々 に御寄稿いただいたものを編集させて頂きました。ま た、「近年のトピック」では、直近 10 年間の新しい業 務に焦点を置き、各部局それぞれの活動の特徴的事項 や VICH 等について概説されています。 また、「動物医薬品検査所 50 年の記録」及び「動物 医薬品検査所研究業績集」は、いわば年報の集大成で ありますが、大部となることもあり、検索の便も考慮 し CD-ROM にて作成し、関係機関には記念誌と併せ て送付されました。 (企画連絡室長 大石弘司)
2.動物医薬品検査所創立 50 周年記念式典祝辞
農林水産省消費・安全局長 町田 勝弘
本日ここに、動物医薬品検査所創立 50 周年記念式 典が開催されますことを心からお慶び申し上げます。 動物用医薬品の検査業務は、昭和 20 年代までは畜 産局において処理されておりましたが、昭和 31 年に、 当時の動物用医薬品の増加を背景に、新たに設けた動 物医薬品検査所が担うこととなりました。以来 50 年 間にわたり、動物医薬品検査所は、わが国で動物用医 薬品の検査を実施する唯一の機関として、食品の安全 確保、畜産業の振興に大きな役割を果たして参りまし た。その間、組織も拡充され、発足当初、一部二課 43 名の体制は、現在では、二部一室二課 82 名の体制 となっております。 動物医薬品検査所は、この 50 年間においては、新 たに開発されたさまざまな医薬品の検査に加え、豚コ レラ・口蹄疫対策、抗菌性物質の残留問題への対処、 魚病対策など、時代の要請に応じてその任務も拡充し てまいりました。 とりわけ近年におきまして、5 年前の国内でのBS Eの発生、2 年前の高病原性鳥インフルエンザの発生 など、国民の食生活や健康に大きな影響を与えかねな い重大な問題が次々と発生いたしました。 こうした中で、動物医薬品検査所は、動物衛生上の 緊急な課題に対応すべく、BSE診断キットの品質検査、 高病原性鳥インフルエンザの備蓄用ワクチンの検査な どを、迅速かつ的確に実施されてきたところであります。 このように、動物医薬品検査所は、それぞれの時代 の要請に応え、動物衛生に多大の貢献をされてこられ ました。ここに創立 50 周年の節目を迎えられました が、今後とも関係各位と連携して幅広い業務を的確に 実施されるとともに、急速に進歩する生命科学技術へ 対応され、さらに発展の歴史を築かれるものと信じて おります。 最後となりましたが、動物医薬品検査所の益々の御 発展と御出席の皆様方の御健勝を祈念し、私の祝辞と いたします。 平成 18 年 10 月 4 日創立 50 周年を記念して∼動薬検の歩みと今後の課題∼
所長 牧江弘孝
本年、動物医薬品検査所は、創立 50 周年を迎えることができました。これもひとえに、関係者の皆様のご理解、 ご支援及び先輩諸氏のたゆまぬご努力の賜であり、深く感謝申し上げます。この節目に立ち、これまでの当所の歩 みを振り返るとともに今後の課題について考えてみます。 1 動物医薬品検査所の生い立ち 当所の生い立ちは、設立 8 年前の昭和 23 年 7 月に 制定された旧薬事法(法律第 198 号)に遡ります。本 法に基づき同年 10 月に制定・施行された旧動物用医 薬品等取締規則(農林省令第 92 号)に生物学的製剤 の国家検定に関する事項が規定され、その実施機関と して家畜衛生試験場(現(独)動物衛生研究所)に検 定部が設置されました。 次いで、検定業務の公平性の確保及び家畜衛生行政 と薬事行政の分離の観点から 25 年 4 月に本省畜産局(現 生産局畜産部)に薬事課及び同課分室が設置され、この 分室において検定業務が実施されることになりました。 その後、31 年 4 月に薬事課が廃止され、同年 6 月に動 物医薬品検査所が創立されました。当時の組織は、所 長以下 1 部 2 課(庶務課、業務部(6 検査室)及び調査課) で構成され、定員は 43 名でした。また、このような中 で 29 年に抗生物質製剤の検定が始まりました。 その後、35 年 8 月に現行の薬事法(法律第 145 号) が公布(翌年 2 月施行)され、以後、本法に基づく各 種業務が当所において実施されてきました。 2 動薬検創立後の畜産と動物用医薬品の状況 我が国における農業算出額に占める畜産業の比率 及び主要家畜の飼養頭羽数の推移を見ますと(表 1)、 当所が創立された昭和 31 年当時、畜産の算出額は約 2,000 億円であり、農業総産出額の 14%にすぎません でしたが、平成 16 年では約 24,500 億円で総産出額の 約 28%占めており、国内農業の基幹的な地位を不動 のものとしています。また、乳用牛、豚及び鶏の飼養 頭羽数も飛躍的に増加し、集約化されました。しかし、 近年、生産調整、畜産物の輸入自由化等に伴い、畜産 産出額及び飼養頭羽数は、やや減少しています。 動物用医薬品の生産(輸入)販売高の推移を見ます と(表 2 )、昭和 31 年当時は、僅か 24 億円余りでし た。その後、畜産業の発展に合わせて急速に伸びまし た。近年、畜産業が縮小する一方で、養殖水産業の発展、 生活の向上に伴う犬・猫の飼育頭数の増加があり、何 とか約 800 億円の販売額を維持しています。その内訳 をみますと、生物学的製剤の比率が増加しており、感 染症の予防衛生対策が進展しています。なお、16 年 における国内製造品の販売高は 52,582 百万円(65%) でした。 3 動物薬事行政と医薬品検査業務の推移 動物用医薬品の品質等及び畜水産物の安全性確保の ために、薬事法に基づく医薬品等の開発、製造・輸入、 流通・販売及び使用に至る各段階の制 度が逐次整備されてきました。 動物医薬品検査所においては、発足 当初から生物学的製剤及び抗生物質製 剤の検定や一般医薬品の収去検査を中 心とした品質検査業務、本省の薬事事 務担当部門と協力した製剤基準、検定 基準及び医薬品公定書の作成等に携わ り、また、検査に必要な標準品の確保・ 表1 農業・畜産の算出額及び主要家畜飼養頭羽数の推移 年 農業算出額(単位:億円) 飼養頭羽数(単位:千頭・羽) 総額 うち畜産 (% ) 乳用雌牛 肉用牛 豚 採卵鶏 ブロイラー S31('56) 15,505 2,135(13.8) 497 2,719 1,170 42,589 − S41('66) 35,713 7,424(20.8) 1,310 1,577 5,158 114,500 21,920 S51('76) 92,946 24,019(25.8) 1,811 1,912 7,459 156,534 92,934 S61('86) 114,232 31,469(27.5) 2,103 2,639 11,061 180,947 155,788 H8 ('96) 103,166 25,834(25.0) 1,927 2,901 9,900 190,634 118,134 H16('04) 87,863 24,547(27.9) 1,690 2,788 9,724 174,550 104,950 農林水産省統計資料を元に改編。 表2 動物用医薬品の生産(輸入)販売高の推移(単位:百万円) 年 総額 生物学的製剤 抗生物質製剤 その他の製剤 S31('56) 2,419 553(23%) 105( 4%) 1,761(73%) S41('66) 13,547 2,488(18%) 2,266(17%) 8,793(65%) S51('76) 71,021 6,448( 9%) 18,119(26%) 46,454(65%) S61('86) 74,163 14,880(20%) 26,510(36%) 32,773(44%) H8 ('96) 69,478 17,009(25%) 16,931(24%) 35,538(51%) H16('04) 80,799 22,427(28%) 20,008(25%) 38,364(47%) 農林水産省集計資料を元に改編。括弧内の数字は、各年の構成比率。配布を行ってきました。これらの検定検査業務の増加 に対応し、43 年に業務部及び調査課を廃止し、検査 第一部及び検査第二部を設置しました。 また、49 年から開始された動物用医薬品の再評価 作業において、既承認抗生物質製剤及び一般医薬品の 有効性・安全性の評価に加えて規格及び検査法の改善 整備を図り、さらに、医薬品の安全対策に必要な薬剤 作用検査室及び残留化学検査室を設置しました。 その後、平成元年に企画連絡室を設置し、検査に関 する企画立案、調整業務及び GLP、GCP をはじめとす る承認基準適合性調査、技術的審査、安全性情報提供 等の業務の導入、強化を図ってきました。また、GMP 制度の導入・定着に必要な業務も推進してきました。 このような品質管理・確保制度が整備される中で、 抗生物質製剤の検定を昭和 62 年 10 月から段階的に縮 小し、平成 7 年に全廃しました。また、生物学的製剤 についても、検定対象範囲や試験項目の縮小を行い、 逐次、簡素化を進めてきました。その一方、近年、社 会を揺るがす海外悪性疾病の国内発生が相次ぎ(口蹄 疫(12 年)、BSE(13 年)、高病原性鳥インフルエン ザ(16 ∼ 18 年))、これらのワクチンや診断液の検査 業務と共に薬剤耐性菌問題や残留動物用医薬品のポジ ティブリスト制度への対応といった食の安全確保に必 要な危機管理対応業務や検査技術の指導業務を強化し ています。 平成 14 年 4 月に当所の業務管理の明確化及び技術 的審査業務を強化するため、企画連絡室に企画調整課 及び技術指導課並びに会計課を設置しました。こう して現在の組織構成は、企画連絡室(2 課)、庶務課、 会計課、検査第一部(7 検査室)及び検査第二部(4 検査室)となっており、また、18 年度の定員は、82 名となっています。 なお、昭和 31 年 6 月から平成 18 年 10 月までの間に、 故川島秀雄初代所長を始めとして、延べ 400 有余名の 方々が当所の在籍者として名を連ねています。 また、本省においては、15 年 7 月に消費・安全局 の設置、17 年 10 月に同局衛生管理課が畜水産安全管 理課(薬事業務を所管)と動物衛生課に拡充する組織 改正が行われました。 4 調査研究及び国際対応業務の進展 当所が実施する検定・検査業務そのものが調査・研 究業務と不可分であること、製剤基準、検定基準の設 定・改良に関する研究は、当所以外では行っていない 重要な使命であること、人体薬関係の行政対応調査研 究は、国の機関で実施していること等を背景に、当所 では各種検査業務について技術の向上、新技術の導入 のための調査研究を実施しています。 昭和 31 年 1 月に「抄読会」として開始した所内の 技術的検討会は、その後、41 年 7 月から「技談会」 と名称を変え、今年 10 月までに通算して 521 回開催 されてきました。また、当所における調査・研究成果は、 日本獣医学会をはじめとする各種学会や講演会、当所 年報、学術雑誌等に公表されるとともに、検査法の開 発、改良や製剤基準等の改正に活用されています。ち なみに、昭和 47 年 2 月に初めて制定された動物用生 物学的製剤基準に収載されたワクチンは 29 種類でし たが、平成 14 年 10 月の第二次全面改正時には、108 種類になりました。 さらに、家畜衛生や動物薬品質管理に関係する海外 技術協力のために当所職員をシリア、タイ、インドネ シア、メキシコ等に派遣するとともに、海外研修生の 受け入れを行ってきました。また、平成 8 年に OIE の傘下で発足した日本、米国及び EU の規制当局及び 製薬団体代表を主メンバーとする動物用医薬品承認審 査資料の調和に関する国際協力(VICH)において、 当所職員が農林水産省代表として運営委員会及び専門 家作業部会に参加しています。 このように、現在の動物医薬品検査所は、単なる検 査だけでなく動物薬事・衛生に関係する多面的な業務 を実施することによって社会に貢献しており、英名で あ る National Veterinary Assay Laboratory が よ く 似合う機関に発展してきました。 5 今後の課題 これからの動物医薬品検査所のあり方について考 えるとき、忘れてならないのは創立 10 周年の時に掲 げた SSS(誠実、精密、親切)の精神であり、今後 も、これを忘れることなく業務に取り組まなければな りません。また、当所はレギュラトリーサイエンスを 支える組織であることを意識し、ART 業務(Assay、 Reference、Technical guidance)を有機的に組み合 わせて検定・検査、調査研究及び各種技術対応業務を 展開していく必要があります。当面の新規課題として、 シードロットシステムの整備及びそれに必要な標準品 の確保、動物用医薬品の環境毒性評価への取り組み等 が挙げられます。 当所は、薬事法に規定される保健衛生の向上という 目的のもとで、人用か動物用かを問わず共通して医薬 品の安全性等を確保するための「国民生活の安全確保
及び財産の保護に直接係る安全規制業務」の一端を担 う国の機関であります。それ故に、政府が取り組んで いる行政の減量・効率化に対応し、また、人及び動物 の安全を守るための動物用医薬品関係業務を国民に判 り易く伝えて、当所の存在意義を示し、広く理解して もらう必要があります。 ところで、当所の敷地に掛かる都の都市計画道路(府 中所沢線)の整備事業計画が平成 27 年度の完成をめ ざして本格化しており、当所の社会的使命を果たす上 で支障を生じないように、対応措置を講じていかなけ ればなりません。 末筆ながら、これからも引き続き、関係者の皆様方 のご指導、ご鞭撻、ご支援を賜りますよう、よろしく お願い申し上げます。
創立 50 周年に寄せて∼過去 10 年と将来への期待∼
検査第一部長 伊藤 治
当所に奉職して 30 余年となり、歳月の過ぎる早さ を実感しているこの頃です。正確な形でその当時に想 いを馳せることはあまり容易ではなく、今日までの時 系列的な整理が自分のみでは出来ない事も多くなって きました。そのため、この稿の筆を持つに際してサブ タイトルをまだ身近な思い出となっている「過去 10 年」と期待に満ちた「将来」に限定していただきました。 振り返ること 10 年前の 1996 年は、日本、米国及び 欧州連合(EU)の規制当局と動物用医薬品業界代表 を主要メンバーとする動物用医薬品承認審査資料の調 和に関する国際協力(VICH)が開始された時でした。 以後、これまで、いくつかのガイドラインには合意で きたものの、生物学的製剤に関して各極・国間の規制 制度や品質保証制度のあり方に根本的な違いがあり、 容易に前進することが困難な状態が明確となってきま した。このうちの 1 つの問題解決のために、欧米が動 物用ワクチンの基本的な制度としているシードロット システムを日本においても整備し、制度化することと なり検討を進めています。これは、小分製品を対象と したワクチンの検定を見直して、ワクチン株等を含む 製造材料となる原料について検査の力点を置こうとす るもので、日本における品質確保の方法としては画期 的な改正となる予定です。 また、家畜衛生の面における出来事として忘れられ ないのは、2000 年の 92 年ぶりの口蹄疫の発生、2001 年の牛海綿状脳症(BSE)陽性牛の検出及び 2004 年 1 月の 79 年ぶりの高病原性鳥インフルエンザの発生 です。これらは畜産業界を揺るがすばかりではなく、 一般消費者に対する食の安全確保のために公衆衛生上 の観点からも、その対応に関係機関が総力を挙げて取 り組むこととなりました。 BSE 疑い例第 1 号の発見された当初、所長の号令 で全技官が会議室に招集され、当面する課題や今後に 必要とされる当所の役割と対応等が活発に話し合わ れ、全員が BSE に対する認識を新たにしたことも記 憶にあります。一方、我が国への侵襲の危険性が懸念 されていた高病原性鳥インフルエンザについては、タ イムリーにも当所における危機管理の対応として、既 に調査・研究が重ねられていため、山口県での発生時 には防疫方針を策定する上で必要となる鳥インフルエ ンザウイルスやワクチンに関する最新情報の提供、国 際的に認可されているワクチンの安全性や免疫原性の 確認、診断用抗原の作出、市販の人体用検査薬の評価 等について本省及び動物衛生研究所に協力し、畜産に おける当所の役割が多いに反映できたものと感じてい ます。 その他にも、病原性大腸菌O− 157 に関する調査、 豚コレラ生ウイルスワクチンの野外使用の中止、豚丹 毒生ワクチンの豚関節炎との因果関係や犬等の輸出入 検疫制度改正に伴う狂犬病組織培養不活化ワクチンの 有用性評価等、その時々に発生した各種の課題に職員 の協力と技術の集結があったことは動物医薬品検査所 の将来に向けた多くの可能性を含むものと考えられま した。ここ 10 年間は遺伝子やタンパクをはじめとす る様々な解析技術は日進月歩の様相にあり、少しの間 に想像もつかないほどの新知見が報告されることも多 くなってきています。 それらのいくつかは医薬品品質確保の試験に技術応 用することは必ずしも容易なことではないのかも知れ ませんが、ルーチンとしての検定・検査に終始するこ となく、常にイノベーションの観点を持ち、新しいも のに挑戦し、苦心と工夫により、業務の高度化や精密化に努力することが必要だろうと考えます。そのため には対応する各種機器類についても充実整備する必要 があるでしょうし、国内外の機関との情報交換や連携 強化も必要となることでしょう。技術者が努力すると 同様に、管理者においても経常的な予算獲得だけに終 始せず、一歩も二歩も前を見て、国際的に調和のとれ た技術力のある検査機関となるような環境整備に取り 組む姿勢が求められるものと思います。職員 82 名に 臨時職員を含めて約 100 名の所帯を今後とも同様に維 持することは容易ではありませんが、互いに試験や研 究業務において切磋琢磨し、国民の負託に応え、動物 医薬品検査所がこれからも仲良き組織であって欲しい ものです。
創立 50 周年に寄せて∼この先 50 年に向けて∼
検査第二部長 髙橋美幸
動物医薬品検査所が創立 50 周年を迎え、国の検査 指導機関として、動物用医薬品を介して動物衛生、公 衆衛生、そして畜水産物の食品安全のために貢献し続 けていることは、多くの関係者にとって、とても嬉し いことです。また、自分自身の 50 年と重ね合わせると、 半世紀という長い時間をとても重く感じると共に、そ の間に多くの出来事があったであろうことは容易に想 像でき、当時の関係者にはそれぞれの思いがあること でしょう。そんな多くの出来事や困難を諸先輩方とと もに乗り越えて、ここに創立 50 周年を迎えることが出 来たことに感謝すると共に、さらにこの先 50 年を見据 えなければならないことに、身の引き締まる思いです。 最近の検査第二部関係の食品安全に係る社会的要請 は、この 50 年間においても最も責任を痛感させられ るところです。 食品衛生法の改正によるポジティブリスト制度の平 成 18 年からの導入により、食品中の動物用医薬品の 残留問題に係る制度は大きく変わり、使用規制省令の 対象成分の充実整備と出荷制限期間の再確認或いは新 たな休薬期間の整備が行われました。当所は、これに 係る残留試験データの調査、残留分析法の開発や動物 を用いた残留試験を実施して食品安全の確保に務めて います。また、化学物質の環境への影響に対する危惧 による動物用医薬品等の環境への影響評価の必要性に 係る要請に対応するため、まもなく通知が予定されて いる VICH の動物用医薬品の環境影響評価に関する ガイドラインの施行に必要な調査研究を実施し、環境 への影響の排除に務めています。さらに、抗菌剤の適 正使用を確保するための薬剤耐性に関する調査研究を 平成 12 年から JVARM として、全国の家畜保健衛生 所の協力を得て国際的な統一手法に基づいた全国調査 を実施し、多くの薬剤耐性に関する成果を得て国内の リスク管理に役立っています。 一方、動物用医薬品開発のグローバリゼーション に対応するための承認審査資料等の国際調和のため の VICH の活動も、この 10 年間に多くの成果を得て、 品質、毒性、環境影響、薬剤耐性等について、40 を 越えるガイドラインを作成し、承認審査等の枠組みの グローバル化に多くの努力がなされました。 今後、当所のあり方について多くの議論がなされる ものと思いますが、特に検査第二部ではこれら 4 つの トピックスを含むリスク管理に継続的にどの様に取り 組んでいくかと言うことが重要です。勿論、すべての 基本は、動物用医薬品等の品質確保を確固たるものと して維持し、その検査及び技術的審査を的確に行うこ とであり、これらがきちんと出来ることが、今後とも 基本であることは言うまでもありません。 次の 50 年を見据えることは、余りにも遠い時間で 難しいことですが、創立記念式典に多くの関係者が参 加して頂いたように、今後とも多くの方々の協力によ り、当所はその重責を担っていけるものと確信してい ます。平成 17 年度家畜由来細菌の
抗菌性物質感受性実態調査
抗生物質製剤検査室 鮫島 俊哉、浅井 鉄夫
小澤真名緒、川越久美子
1.はじめに 薬剤耐性菌の発現状況調査(家畜由来細菌の抗菌性 物質感受性調査)は、主要な抗菌性物質に対する耐性 菌の発現状況等の動向を把握し、家畜に使用する抗菌 性物質の人の健康と獣医療に対するリスク分析の基礎 資料を得ることを目的としたものである。平成 17 年 度の本調査は、食の安全・安心確保交付金実施要領(平 成 17 年 4 月 1 日付け 16 消安第 10272 号消費・安全局 長通知)に基づき実施された。 公衆衛生分野への影響に配慮した全国的な薬剤耐性 菌発現状況調査は、4 菌種(食品媒介性病原細菌であ るサルモネラとカンピロバクター、薬剤感受性の指標 細菌としての腸球菌と大腸菌)を対象に平成 12 年度 から本格的に開始された。本調査においては、各都道 府県が毎年1菌種を調査し、調査対象となる菌種は地 域に偏りがないようにローテーションが組まれ、4年 間で1調査クールが終了することになっている。従っ て、平成 12 ∼ 15 年度に第 1 クールが終了し、平成 17 年度は第 2 クールの 2 年目の調査となる。 今般、平成 17 年度に実施されたこれらの調査につ いて、各都道府県より提出された報告を取りまとめた ので、その概要を紹介する。 なお、これまでの各年度調査結果は、動物医薬品検 査所ホームページ(http://www.nval.go.jp)に掲載され ている。 2.材料及び方法 (1)調査検体数 第1クールと同様に検体は健康家畜の糞便とし、検 体数は都道府県ごとに各菌種とも 4 畜種(肥育牛、肥 育豚、採卵鶏及びブロイラー)× 6 畜産経営体以上× 1 検体= 24 検体以上を原則とし、1検体から都道府県 ごとに指定された菌種を 2 株まで分離することとした。 (2)試験方法 本調査は、対象菌種ごとに統一化、平準化された分 離培養法、菌種同定法及び薬剤感受性試験法により実 施した。同定は、形態学的及び生化学的性状検査によ り行った。 分離菌株の供試薬剤に対する感受性の測定は、米国 臨床検査標準委員会(NCCLS)の提唱する寒天平板 希釈法に準拠した方法により実施し、最小発育阻止濃 度(MIC)を求めた。なお、耐性限界値(ブレークポ イント)は、NCCLS が定めたものについてはその値 とし、NCCLS で規定されていない薬剤については、 原則として平成 13 年度の値(二峰性を示す MIC 分布 の中間点)とした。 3.調査成績 (1)サルモネラ サルモネラは、供試された 238 検体中 23 検体(9.7%) か ら 41 株( 肥 育 牛 由 来 0 株、 肥 育 豚 由 来 6 株、 採 卵鶏由来 4 株及びブロイラー由来 31 株)が分離され た。分離菌株の血清型は、7種類認められ、そのうち Salmonella Infantis が 21 株(ブロイラー由来 19 株、 採卵鶏由来 2 株)で、約半数を占めていた。 表 1 サルモネラの薬剤感受性試験(平成 17 年度) 薬剤 Range (µg/ml) MIC50 (µg/ml) MIC90 (µg/ml) ブレークポイント (µg/ml) 耐性 菌株数 耐性率 (%) ABPC 0.5->512 1 1 32* 2 4.9 CEZ 1-4 1 4 CTF 0.5-2 1 2 DSM 4->512 32 128 32 24 58.5 GM 0.25-1 0.5 1 KM 1->512 >512 >512 64* 21 51.2 APM 2-8 4 8 OTC 0.5-256 128 256 16 23 56.1 BCM 16->512 16 >512 64 8 19.5 CP 1-512 4 8 32* 2 4.9 CL 0.5-4 1 4 NA 4->512 4 8 32* 4 9.8 ERFX ≦ 0.125-0.25 ≦ 0.125 ≦ 0.125 SDMX >512 >512 >512 TMP ≦ 0.125->512 64 >512 16* 26 63.4 (注)ABPC: アンピシリン、CEZ: セファゾリン、CTF: セフチオフル、DSM: ジヒドロ ストレプトマイシン、GM: ゲンタマイシン、KM: カナマイシン、APM: アプラマイシン、 OTC: オキシテトラサイクリン、BCM: ビコザマイシン、CP: クロラムフェニコール、 CL: コリスチン、NA: ナリジクス酸、ERFX: エンロフロキサシン、SDMX: スルファジ メトキシン、TMP: トリメトプリム *:NCCLS に規定されたブレークポイント分離された 41 株の薬剤感受性試験成績を表1に示 した。供試した 15 薬剤のうち 8 薬剤(ABPC、DSM、 KM、OTC、BCM、CP、NA 及び TMP)に耐性が認 められ、その耐性率は 4.9 ∼ 63.4%であった。セフェ ム系薬剤(CEZ 及び CTF)及びフルオロキノロン剤 (ERFX)に対しては全て感受性を示した。 (2)カンピロバクター カ ン ピ ロ バ ク タ ー は、 供 試 さ れ た 266 検 体 中 81 検 体(30.5 %) か ら 158 株( 肥 育 牛 由 来 12 株、 肥 育 豚 由 来 51 株、 採 卵 鶏 由 来 66 株 及 び ブ ロ イ ラ ー 由 来 29 株 ) が 分 離 さ れ た。 菌 種 の 内 訳 は、
Campylobacter jejuni90 株及びC.coli68 株であった。 肥育牛、採卵鶏及びブロイラーからは主にC. jejuniが、 肥育豚からはC. coliが分離された。 分離された 158 株の薬剤感受性について、表 2 に示 した。供試した 9 薬剤のうち 7 薬剤(ABPC、DSM、 EM、OTC、CP、NA 及 び ERFX) に 対 す る 耐 性 株 が認められ、それらの耐性率は 5.1 ∼ 58.9% であっ た。 菌 種 別 の 耐 性 率 は、EM で はC. jejuni0% 及 び
C. coli35.3% で あ っ た。ERFX で はC. jeuni17.8% 及 びC. coli25.0% であった。 (3)腸球菌 腸球菌は、一般腸球菌(Enterococcus spp)の選 択培地による分離では、供試された 336 検体中 301 検 体(89.6%)から、562 株(肥育牛由来 176 株、肥育 豚由来 128 株、採卵鶏由来 150 株及びブロイラー由来 108 株)が分離された。一方、バンコマイシン(VCM) 添加培地を用いた選択分離においては、336 検体中 6 検体(1.8%)から 8 株(肥育豚由来 1 株、採卵鶏由 来 2 株及びブロイラー由来 5 株)が分離された。 分離された一般腸球菌 562 株の薬剤感受性試験成 績を表 3 に示した。調査薬剤のうち 11 薬剤(ABPC、 DSM、GM、KM、OTC、EM、LCM、ERFX、CP、 AVM 及び VCM)に対して耐性株が存在し、その耐 性率は一般腸球菌で 0.2 ∼ 47.2%であった。このうち 135 株(肥育牛由来 28 株、肥育豚由来 41 株、採卵鶏 由来 32 株及びブロイラー由来 34 株)がE. faecium で、VGM に対する低感受性株はみられなかった。ま た、 牛 か ら 分 離 さ れ た 1 株 の VCM に 対 す る MIC 値が≧ 128µg/ml であり、VCM 耐性遺伝子及び菌種 同定した結果、VCM 耐性遺伝(van A)を保有する E. faeciumであり、VCM 高度耐性の VRE であった。 一方 VCM 添加選択培地で分離された菌の VCM に対する MIC 値は 8µg/ml 以下であった。これらの VCM 耐性遺伝子及び菌種同定を実施した結果、7 株 は VCM 耐性遺伝子(van C)を保有するE. gallinarum 又 はE. casselifl avus で あ り、VCM 自 然 耐 性 の 株 で あり、1株はE. faecalisであったが、VCM に対する MIC は 2µg/ml であり薬剤耐性はみられなかった。 (4)大腸菌 大腸菌は、供試された 306 検体中 273 検体(89.2%) から、518 株(肥育牛由来 138 株、肥育豚由来 152 株、 採卵鶏由来 121 株及びブロイラー由来 107 株)が分離 された。 これらの大腸菌 518 株の薬剤感受性試験成績を表 4 に示した。供試した 15 薬剤のうち 12 薬剤(ABPC、 CEZ、CTF、DSM、GM、KM、OTC、BCM、CP、 NA、ERFX 及 び TMP) に 対 する 耐 性 株 が存 在し、 それらの耐性率は 1.2 ∼ 51.0%であった。 表 2 カンピロバクターの薬剤感受性試験(平成 17 年度) 薬剤 Range (µg/ml) MIC50 (µg/ml) MIC90 (µg/ml) ブレークポイント (µg/ml) 耐性 菌株数 耐性率 (%) ABPC ≦ 0.125-128 4 32 32 19 12.0 DSM ≦ 0.125->512 1 256 32 34 21.5 GM ≦ 0.125-4 0.5 1 OTC 0.25-512 64 256 16 93 58.9 CP ≦ 0.125-64 2 4 16 8 5.1 EM 0.25->512 2 256 32 24 15.2 NA 2-512 4 128 32 37 23.4 ERFX ≦ 0.125-16 ≦ 0.125 4 2 34 21.5 SDMX 2->512 64 >512 (注)EM:エリスロマイシン 表 3 一般腸球菌の薬剤感受性試験(平成 17 年度) 薬剤 Range (µg/ml) MIC50 (µg/ml) MIC90 (µg/ml) ブレークポイント (µg/ml) 耐性 菌株数 耐性率 (%) ABPC ≦ 0.125-64 1 2 16* 1 0.2 DSM ≦ 0.125- ≧ 512 64 ≧ 512 128 110 19.6 GM ≦ 0.125- ≧ 512 8 16 32 19 3.4 KM ≦ 0.125- ≧ 512 32 ≧ 512 128 90 16.0 OTC ≦ 0.125- ≧ 512 8 128 16* 265 47.2 CP 2-256 8 8 32* 30 5.3 BC 1- ≧ 512 64 ≧ 512 EM ≦ 0.125- ≧ 512 0.25 ≧ 512 8* 124 22.1 LCM ≦ 0.125- ≧ 512 32 ≧ 512 128 137 24.4 ERFX ≦ 0.125-32 1 2 4 46 8.2 AVM 0.25- ≧ 128 2 4 16 45 8.0 SNM 0.25-16 1 4 VCM 0.25- ≧ 128 1 2 32* 1 0.2 VGM 0.25-32 2 4 (0.25-32) (1) (4) NHT ≦ 0.00099-0.0625 0.0078 0.0156 (注)LCM: リンコマイシン、SNM: サリノマイシン、BC: バシトラシン、VGM: バージ ニアマイシン、VCM: バンコマイシン、AVM: アビラマイシン、NHT: ノシヘプタイド VGM 欄の()内の数値は、E.faecium のみを抽出して集計した場合の数値 *:NCCLS に規定されたブレークポイント 表 4 大腸菌の薬剤感受性試験(平成 17 年度) 薬剤 Range (µg/ml) MIC50 (µg/ml) MIC90 (µg/ml) ブレークポイント (µg/ml) 耐性 菌株数 耐性率 (%) ABPC 1->512 4 >512 32* 141 27.2 CEZ ҅0.125->512 2 4 32* 26 5.0 CTF ҅0.125->512 0.5 1 8 21 4.1 DSM 1->512 4 512 32 180 34.7 GM 0.25-128 0.5 2 16* 9 1.7 KM 0.5->512 2 512 64* 65 12.5 APM 1-32 8 16 OTC 0.5->512 64 256 16 264 51.0 BCM 8->512 32 64 128 6 1.2 CP 2-512 8 128 32* 72 13.9 CL 0.25-8 1 2 16 0 0.0 NA 1->512 4 256 32* 69 13.3 ERFX ҅0.125->32 ҅0.125 0.25 2 19 3.7 SDMX 32->512 >512 >512 TMP ҅0.125->512 1 >512 16* 108 20.8 *:NCCLS に規定されたブレークポイント
4.おわりに 平成 11 年度の動物医薬品検査所の予備調査及びそ れ以降に全国の都道府県の協力により本格的に開始 された全国調査第 1 クール(平成 12 ∼ 15 年度)で集 積された各種細菌の薬剤感受性試験成績等は、畜産分 野における年次別及び由来動物別の耐性菌動向とし て取りまとめを行い、動物医薬品検査所年報(第 41 号 , 63 - 67 , 2004)に公表した。現在、畜産での抗菌性 物質の使用状況と分離菌の薬剤感受性の動向について 情報を蓄積しながら、詳細な解析を行っている。本稿 では、平成 17 年度に実施した家畜由来細菌の抗菌性 物質感受性成績の概要を紹介した。表 5 には調査 4 菌 表 5 動物別耐性率の比較 耐性率(%) サルモネラ カンピロバクター 腸球菌 大腸菌 ABPC 牛 - 15 12 豚 33 6 27 肉用鶏 0 17 53 産卵鶏 0 14 21 DSM 牛 - 8 20 豚 67 50 46 肉用鶏 65 17 46 産卵鶏 0 3 27 EM 牛 NT 0 NT 豚 NT 44 NT 肉用鶏 NT 0 NT 産卵鶏 NT 2 NT OTC 牛 - 38 23 豚 33 87 69 肉用鶏 68 59 66 産卵鶏 0 39 46 NA 牛 - 38 4 豚 0 33 5 肉用鶏 13 31 27 産卵鶏 0 9 22 ERFX 牛 - 23 1 豚 0 33 1 肉用鶏 0 28 1 産卵鶏 0 8 7 − :分離株なし NT :実施せず 種における主要薬剤、すなわち、β−ラクタム系、ア ミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリ ン系及びキノロン系薬剤に対するそれぞれの耐性率を 比較した成績をまとめた。特に、フルオロキノロン剤 に対する耐性株については、これまでの成績と同様、 肥育豚由来株とブロイラー由来株を中心にカンピロバ クターと大腸菌分離株の一部で依然として認められて おり、今後とも耐性動向を注視しなければならない。 また、畜産分野で使用されている抗菌性物質は、食 品安全委員会により作成された「家畜等への抗菌性物 質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響 に関する評価指針」(平成 16 年 9 月)に基づき、リス ク評価が行われている。今後、リスク評価の答申を踏 まえて、現状のリスク管理の見直しを含めた検討が行 われていくこととなる。その中で、国内を網羅した本 調査成績は、リスク評価に資する極めて重要なものと なっている。 抗菌性物質は、家畜の感染症の治療(動物用抗菌剤) や成長促進(抗菌性飼料添加物)を目的に使用されて いるが、その承認又は指定・流通・使用の各段階での 様々な規制は、薬剤耐性菌の出現の抑制につながって いる。抗菌性物質を使用する場合、動物用医薬品につ いては、抗菌性物質の選択は添付文書等の有用な基本 情報(抗菌スペクトル、薬物動態等)や原因菌の薬剤 感受性データに基づき適正に選択すること、適応症に 対応する用法・用量及び使用上の注意事項等を厳守す ること、並びに抗菌性飼料添加物については、定めら れた使用の方法の基準を遵守することが重要である。 今回取りまとめた調査成績については、畜産現場に おける抗菌性物質の適正な使用の一助として活用して いただきたい。