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サイル (ICBM) と定義づけられる約 5,400 キロメートルの射程距離には及ばないものの グア ムとアリューシャン列島の攻撃を可能にするミサイルである そして 7 月には 2 回にわたり ICBM 火星 14 を発射 射程 5,400 キロを超える ICBM の発射実験を成功させ 11 月 2

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http://i-sugawara.jp/ 2017 年は、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射実験や核実験と、米国による軍事的・経 済的圧力の高まりを受けて、朝鮮半島の緊張が著しく高まった一年だった。 2018 年は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が 1 月 1 日に発表した新年の辞で、韓国との 対話に前向きなメッセージを発表したのを受けて 9 日に約 2 年ぶりの南北協議が開催される など、「融和」ムードで幕を開けた。 トランプ米大統領も、韓国と北朝鮮による対話が進んでいる間は軍事行動を控える考えを示 し、少なくとも平昌冬季五輪期間中の米韓合同軍事演習は延期されることが決まった。 今後、南北対話から米朝直接対話へと両国間の緊張緩和がさらに進むのか?それとも五輪 後に再び軍事圧力と挑発の危険な対立へと戻ってしまうのか? 北 朝 鮮 「核 戦 力 」の 現 状 2017 年、トランプ米大統領の就任に合わせるように北朝鮮は核・ミサイル開発を加速させた。 新米大統領の就任から 1 ヶ月も経たない 2 月 12 日、北朝鮮は新型中距離弾道ミサイル「北 極星 2」を発射。これを受けて米国は軍事的圧力を強めた。 4 月 7 日の米中首脳会談において、トランプ大統領は「中国が協力しないなら単独で行動をと る」と発言。その直前には米軍が空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群を朝鮮半島周 辺海域へ派遣することを決定した直後だっただけに、緊張が高まった。 北朝鮮が 6 回目の核実験の準備や新たなミサイル発射実験を行うなどの挑発的な行動に出 た場合、もしくはそうした行動を阻止するために米国が軍事行使をするのではないか、そして その場合、北朝鮮の報復攻撃が韓国や日本にも向けられる可能性がある、として俄かに戦 争に対する懸念が強まった。 しかし北朝鮮はその後もひるまずミサイル発射実験を続け、5 月 14 日に新型中距離「火星 12」を発射した。これは北朝鮮が「完全な国内開発」と主張する新型エンジンを使用したもの で、核兵器を搭載して約 4,800 キロメートルを飛行できる能力を持つとされた。大陸間弾道ミ

2018 年 1 月 15 日号

「平和攻勢」を仕掛ける北朝鮮の思惑

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http://i-sugawara.jp/ サイル(ICBM)と定義づけられる約 5,400 キロメートルの射程距離には及ばないものの、グア ムとアリューシャン列島の攻撃を可能にするミサイルである。 そして 7 月には 2 回にわたり ICBM「火星14」を発射。射程 5,400 キロを超える ICBM の発射 実験を成功させ、11 月 29 日には別の新型 ICBM「火星 15」を発射。同ミサイルは高度 4,475 キロメートルに達し、53 分間にわたり約 950 キロの距離を飛んだと発表された。普通に飛ばせ ば 1 万 3,000 キロと米本土に到達可能なパワフルなミサイルを発射させたことになる。 さらにこの間北朝鮮は、9 月 3 日には 6 回目の核実験も実施。爆発の規模は 160 キロトンで 広島原爆の約 10 倍であり水爆実験だったと考えられている。北朝鮮は、「ICBM 搭載用の水 爆実験に完全に成功した」と発表した。 北朝鮮は核開発について、「他の核保有国が同じ開発段階で達成したのと同様の進歩を遂 げてきた」と主張しているが、中国は 5 回目の核実験を実施するまでにミサイルに搭載可能な 小型弾頭の製造に成功していたことから、北朝鮮も 6 回の核実験を経てすでに ICBM に搭載 可能なサイズへの小型化には成功しているとの見方が有力だ。 前米ロスアラモス国立研究所所長のジークフリード・S・ヘッカー氏は、2017 年末までに北朝 鮮が実施してきたミサイル発射や核実験を通じて、北朝鮮が現在保有している核戦力につい て以下のように分析している。 ① 北朝鮮が保有しているプルトニウムの量は 20~40 キロ。これは核爆弾 4~8 個を製造で きる量に匹敵する。 ② 北朝鮮が保有している高濃縮ウランは、さらに約 12~24 個の核兵器を生産するのに十 分な 250~500 キロである。 ③ 北朝鮮は広島や長崎に投下された原子爆弾と同等の破壊力を持つ核爆発装置と、近代 的な水素爆弾の破壊力を持つ爆弾を生産できる能力がある。 ④ 北朝鮮は 25~30 個の核兵器を生産するのに十分な核物質を保有しており、年間 6~7 個の核兵器を生産することが可能。 ⑤ 北朝鮮は韓国と日本に到達できるミサイルに核弾頭を搭載できる能力は完成させてい る。 ⑥ 北朝鮮は、ICBM に搭載可能な核弾頭の軽量・小型化には成功している可能性があるが、 大気圏再突入の際に発生する極度の高温から弾頭を保護する「再突入体」の完成には 至っていない。この開発にはさらに少なくとも 2 年間の実験が必要。(『Foreign Affairs Report(No.1, 2018)』

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http://i-sugawara.jp/ 米国による軍事的な圧力に加え、国連安保理による度重なる制裁強化にもかかわらず、北 朝鮮は米本土を核攻撃できるまであとわずかなところまで核・ミサイル能力を向上させてきた と考えられる。 すでに南北境界線の非武装地帯の北側に、1万門の多連装ロケット砲や長距離砲を配備し、 「ソウルを一瞬で火の海にできる」能力を有しているとされているが、こうした通常兵器による 攻撃能力に加え、韓国や日本に駐留する米軍に対して核ミサイルで攻撃できるだけの能力を 完成させ、米国の攻撃を阻むのに十分な抑止力を形成してきたことになる。 対 韓 国 「平 和 攻 勢 」を仕 掛 け る北 朝 鮮 金正恩委員長は 2017 年の年頭の演説では、「我が国の ICBM の発射実験は最終段階に入っ た」と発言しており、核戦力の完成に向けてラストスパートをかける方針を明言していたが、実 際その通りにミサイル及び核実験を行った。 そして 11 月 29 日の「火星 15」の発射実験をもって、「国家核戦力完成」を宣言。年頭に明言し た目標を達成したことを内外に示した。 北朝鮮政府は 12 月 31 日までに、この「大成功」を記念する切手を発行したことを伝えた。切 手は 5 種類で、移動式発射台に搭載されたミサイルの絵の脇に飛行距離や飛行時間が記さ れたものや、発射命令書にサインする金正恩委員長の写真を使ったものなどがあるという。 北朝鮮では、重要な記念日やイベントに合わせて記念切手を発行するのが慣例とされており 特に珍しいことではないが、ICBM の開発に成功したことが大々的に内外に示され、「戦力化 の目標が達成された」と発表されたことは、北朝鮮が次のステップに移行することを示唆して いるともとれる。 核戦力はすでに完成したのだから、少なくとも 2017 年と同じようなペースでミサイル発射実験 を行う理由はないことになる。 このような文脈で 2018 年の金正恩委員長の「新年の辞」の内容をもう一度みてみよう。 ① 昨年、国家核戦力完成という歴史的大業を成就した。我が国の核戦力は、米国のいかな る核の威嚇も粉砕し対応できる強力な抑止力だ。 ② 米国は我が国を相手に戦争を起こせない。米本土全域が核攻撃の射程圏内にあり、核

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http://i-sugawara.jp/ のボタンが私の事務室の机上に常に置かれている。これは脅しでなく現実だ。 ③ 核弾頭と弾道ミサイルを大量生産し、実戦配備する事業に拍車をかけるべきだ。敵の核 戦争策動に対処した即時の核反撃作戦態勢を常に維持すべきだ。 ④ 責任ある核強国として、敵対勢力が我が国の主権と利益を侵害しない限り核兵器を使用 せず、いかなる国や地域も核で威嚇しない。 ⑤ 新年は北朝鮮で建国 70 年(9 月 9 日)を記念し、韓国では平昌冬季五輪が開かれる南北 双方にとって意義のある年だ。凍結状態にある南北関係を改善し、今年を民族史に特記 すべき年として輝かせるべきだ。 ⑥ 平昌五輪が成功裏に開催されることを心から願う。代表団を派遣する用意があり、このた めに南北当局が会うこともできる。 ⑦ 南北の軍事的緊張を緩和し、平和な環境をつくるため共に努力すべきだ。米韓合同軍事 演習を中止し、米国の核装備や侵略戦略を引き入れる一切の行為をやめるべきだ(『共 同通信』2018 年 1 月 1 日)。 これが年頭メッセージの要旨である。 昨年の同じ声明では、韓国の朴大統領のような「売国勢力を粉砕すべきである」、「米国は時 代錯誤的な対北朝鮮敵視政策を撤回する勇断を下すべきだ」、などと激しい言葉で敵を罵り、 「いつも気持ちだけで能力が付いてこない残念さと自責の中で昨年 1 年間を過ごした。人民の 真の忠僕となることを約束する」などと独裁者には珍しい反省を口にしていたのと比べると、 明らかに今年のメッセージは自信と余裕に溢れている。 金委員長は、米国が攻撃出来ない抑止力を「完成」させ、核兵器の実践配備に向けて態勢を 整えるが、自分たちはすでに「責任ある核強国」であり、今年は南北関係を改善させる、と述 べたのである。 そしてこの方針に基づき、北朝鮮は 1 月 3 日に 2 年ぶりに板門店の南北直通電話回線を再 開させた。続く 9 日には同じく板門店で閣僚級による南北会談を開催し、北朝鮮が平昌冬季 五輪に参加すること、南北の緊張を緩和して偶発的な衝突を避けることを目的に、軍事当局 者会談を開くことで合意した。 北朝鮮は、米本土に核ミサイルを打ち込む能力の完成にはまだ至らないものの、一定の核・ ミサイル能力の強化を進めた上で、今年は一転して「平和攻勢」をかけ、まず韓国を一本釣り して米韓同盟の分断をはかる作戦をとり始めたと考えられる。

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http://i-sugawara.jp/ 韓国の文政権にとって、北朝鮮との緊張緩和は何よりも喜ばしい状況に他ならない。北朝鮮 の脅威から平昌五輪への参加を思いとどまる国が出る中、北朝鮮は南北融和を実現するこ とで五輪成功を側面支援して韓国に貸しをつくることの出来る絶好のポジションにあるが、そ のカードを切ってきたと言える。 すでに五輪開会式で南北同時入場などが計画されており、韓国側は浮足立っていると伝えら れている。 文大統領はそもそも就任当時から南北首脳会談に乗り気だったこともあり、北朝 鮮の「平和攻勢」の呼びかけを歓迎してしまう傾向が強い。 文大統領は 1 月 10 日の年頭会見で「条件が適切であればいつでも首脳会談を行う」として南 北首脳会談に前向きな姿勢を見せている。 北朝鮮の「平和攻勢」で平昌五輪が「南北平和の祭典」のように演出されれば、韓国の民族 意識が強まり、益々南北融和ムードが強まる可能性がある。 金正恩委員長が新年の辞で、「南北の軍事的緊張を緩和し、平和な環境をつくるため共に努 力すべきだ。米韓合同軍事演習を中止し、米国の核装備や侵略戦略を引き入れる一切の行 為をやめるべきだ」と述べたように、北朝鮮の狙いは米韓合同軍事演習を止めさせ、米韓の 離間をはかり、南北交流を進める中で経済交流事業を再開させるなどして、経済制裁措置を 突き崩していくことであろう。 そしてその先には米国からの譲歩を引き出すことも視野に入れているはずである。 すでにトランプ大統領は 1 月 6 日に金正恩委員長と電話で協議することについて「問題ない」 と述べて直接対話に前向きな姿勢を見せている。また 1 月 10 日に文大統領と電話で協議し た際に、「南北間の対話が進んでいる間は、いかなる軍事的行動もないと(北朝鮮に)はっき り伝えて欲しい」と述べたという。 また「(一部米紙が)私が北朝鮮への軍事行動を検討していると報じた」と指摘し、「全く事実 ではない」と否定。両首脳は南北対話が米朝間の核問題をめぐる対話へとつながる可能性 があるとの認識で一致し、「適切な時期と状況下で北朝鮮が希望するなら対話の窓は開いて いる」とトランプ大統領は述べたと伝えられている(『日経』1 月 11 日)。 1 月 9 日に韓国と北朝鮮が板門店で開いた閣僚級会談の終盤で、北朝鮮側の代表は、「核問 題では韓国を相手にしない」と演説し、南北協議において核問題を議論しない方針を改めて

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http://i-sugawara.jp/ 明言した。 「我々が持つ原爆や水爆、ICBM は徹底して米国を標的にしており、同族(韓国)や中国、ロシ アは狙っていない(『共同』1 月 9 日)」という北朝鮮の主張は、裏を返せば核問題では米国とし か協議しないとの立場でもあり、米国との直接交渉ならば乗るというメッセージでもあろう。 北朝鮮は、2018 年は韓国に対する「平和攻勢」を精力的に仕掛け、南北融和ムードを演出し、 対話路線を支持する中国やロシアのサポートも受けながら、国際社会を分断させて対北制裁 態勢を突き崩し、米国との直接交渉にまで乗り出すことを狙っているのだろう。 編集・発行人 菅原 出 発行日:2018 年 1 月 15 日(月)

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