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Microsoft Word - 寄与分1.doc

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寄 与 分 総 論

第一 はじめに 1 相続争い防止のために 相続に関する相談において,「私は兄弟の中でただ一人両親の介護をしていました。」 とか「私がただ一人家業を継いで,一家を支えてきたんです。」ということを話され,「私 には『寄与分』があるから当然遺産は多くもらえますよね。」と言われる方が比較的多く おられます。 確かに,寄与分という制度(民法904条の2)があり,昭和56年1月1日以降の 相続では,亡くなられた方(「被相続人」といいます。)に対し,特別の貢献をしていた 相続人がいる場合には,その貢献に応じて相続分が増えるものとされています。 しかし,この寄与分というのは単に親の世話をしていれば当然に認められるというよ うな単純なものではなく,相続争いとなった場合,その主張・立証には多大な労力が必 要となりますし,最終的に寄与分が認められるか否かも,家庭裁判所の判断を経てみな ければ予測判断困難なこともままあります。 ですから,ご両親の介護を全面的に負担していたり,家業に特別の貢献を果たしてい る方は,ご両親等がご健在のうちに,現在の負担に見合う内容の遺言書を作成してもら うべきでしょう。仮に法的に寄与分が認められる状況であったとしても,以下で説明す るとおり寄与分を主張することは大きな負担となるものですから,今のうちにしっかり とした遺言書を作成しておくことが非常に重要です。 遺言書を書いて欲しいと頼むことは,相続の発生,つまり被相続人が死亡されること を前提とした話であり,かつ親族間での財産配分の話ですので,切り出し辛いかもしれ ませんが,専門家の作成する適正な内容の遺言書を作成しておくことは,被相続人の意 思にそった財産分配を可能とするだけでなく,将来の相続争いを未然に防止するという 機能も期待できますので,末永く円満な親族関係を維持するためにも遺言書の作成を検 討してもらうべきでしょう。 2 寄与分の予測困難性 被相続人が遺言書を作成せずに亡くなられてしまった場合には,被相続人のために特 別の負担をしてきた方は,応分の遺産を得られるよう,寄与分の主張を検討すべできで しょう。 民法では,「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付, 被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の

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寄与をした者」について,法定相続分に加えて寄与分を認めると定められていますが, 内容が抽象的であり,この規定だけで,具体的にどのような場合に寄与分が認められる かを判断することは非常に困難です。更に,寄与分の主張に際しては,ある程度の証拠 が必要であり,手持ちの証拠を確認した上で,一般的にどのような証拠が必要とされて いるのかという点も把握しなければ,寄与分が認められるか否かの予測は困難となりま す。 そこで,本連載では,寄与分について判断された具体的事例を検討することにより, 寄与分についての効果的な主張・立証方法を探って行きたいと考えています。 初回である今回は,具体的な事例検討の前提として,相続制度一般及び寄与分制度の 概要について説明致します。 第二 相続制度一般について 1 相続とは 相続とは,被相続人の死亡により,被相続人が生前有していた財産や法律関係が他の 者に移転することをいいます。相続においては,第一に被相続人の意思を尊重すること とされているため,遺言(民法960条以下)が存在する場合には,原則としてその内 容に従って相続が行われます。 遺言が存在しないとき又は遺言から漏れていた財産がある場合には,被相続人の財産 を分けるために,以下の遺産分割という手続を行うこととなります。 2 遺産分割とは 遺言が存在しない場合等では,被相続人の死亡により,遺産は相続人らの共有状態に なります。そして,この共有となっている遺産を,相続人間で分けることを遺産分割と 呼びます。一般的な遺産分割の方法は以下のとおりです。 まず,共同相続人間の協議により遺産の分割方法を定め,共同相続人全員で遺産分割 協議書を作成し,遺産の名義移転等を遺産分割協議書に基づいて行うという方法です。 共同相続人間での話し合いですべてを終えることができるので,遺産分割の方法として はもっとも簡易なものと言えます。この場合には,相続人間での協議により,遺産の分 割方法や割合を自由に定めることが可能です。 次いで,共同相続人のみでは分割協議が整わない場合には,家庭裁判所に遺産分割調 停を申し立て,家庭裁判所で調停官(裁判官),調停委員等の第三者を交えて協議を行う こととなります。この場合も協議により定めるという点は同じですが,家庭裁判所の調 停委員等の説得を期待できるため,協議がまとまりやすくなる面があります。また,下 記の家事審判を行う前提として調停を行うこととされていることから,共同相続人間の 意向が全く異なり協議が成立する見込みがほとんどないような場合でも,原則として調

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停を行わなければなりません。この遺産分割調停もあくまで協議による解決ですから, 自由な方法で遺産分割をすることが可能です。遺産分割調停での協議がまとまった場合 には,調停調書という書面が作成され,この調停調書により遺産の名義変更等の手続を 行うことができます。 そして,調停手続においても相続人間の協議が整わなかった場合には,「遺産に属する 物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他 一切の事情を考慮して」家庭裁判所が審判(裁判の一種です)により遺産分割の内容を 定めます(民法906条)。この場合,遺産の名義移転等は,家庭裁判所の審判書により 行うこととなります。審判の場合には,遺産分割の方法や割合は,法定相続分や寄与分 等の法律の定めその他一切の事情を考慮して家庭裁判所が定める内容となります。 寄与分は,これら遺産分割手続における共同相続人間の協議又は家庭裁判所の審判に より定めるものとされています(民904条の2第1項,2項)。 第3 寄与分総論 1 寄与分を主張しうる場面 上記の通り,寄与分は遺産分割において検討される事項ですので,寄与分の主張が意 味をもつのは,原則として遺産分割手続においてのみとなります。 例えば,被相続人の遺言によりすべての財産の配分が定められている場合には,遺産 分割の対象となる遺産が存在しない以上,相続人の一部が被相続人に対し多大な貢献を していたとしても,寄与分を主張しても法的な意味はありません。 さらに,遺産分割の対象となる財産が寄与分より少ない場合には,寄与分の上限は, 遺産分割の対象となる財産の価額によって画されます(民法904条の2第3項)。 例えば,遺産全体が1000万円で,うち700万円分の遺産について遺言により相 続人のうちの1名が相続すると定められている場合は,遺産分割の対象となる300万 円を超えて寄与分が認められるということは無くなります。共同相続人の一人に500 万円分の寄与があったとしても,上限は300万円となるということです。 このような結果は,寄与をした相続人に酷とも思われますが,相続はあくまで被相続 人が自由に処分することができた財産の帰属を決める手続きであること,被相続人が多 大な貢献を受けたと認識していれば,遺言において貢献に見合った配分がなされるのが 通常であることから,寄与分の全額が認められない結果となっても酷ではないと考えら れています。 以上の通り,寄与分の主張は,遺産分割手続において,遺産分割の対象となる遺産を 対象として行うこととなります。 2 寄与分の要件

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民法904条の2第1項は以下のように定めています。 「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の 療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした 者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の 協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百 二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とす る。 」 同条により,寄与分の要件として,以下の事項が要求されていることが分かります。 ① 「共同相続人」による寄与であること。 ② 「特別の寄与」であること。 ③ ②の寄与により,被相続人の財産が「維持又は増加」したこと。 更に,寄与と認められる行為(「寄与行為」といいます。)はどのようなものかという 点について,「事業に関する労務の提供」,「事業に関する財産上の給付」,「療養看護」を 例として示しています。裁判所がどのような事情を考慮して,寄与行為と認めているか については,今後具体的事案の検討により明らかにしていくこととして,まずは要件全 体について簡単に説明致します。 3 寄与分の主張主体について (1)共同相続人の家族等による寄与 条文上,寄与分を主張できるのは「共同相続人」とされています。これは,寄与分 が遺産分割を前提とする規定であることから,寄与行為の主体も相続人でなければな らないという意味です。 そのため,共同相続人の配偶者や子が,被相続人に対して寄与と評価できる行為を していたとしても,寄与分とは認められないのが原則です。 ただし,実際には,母の看護を長男の嫁がすべて行っている場合など,相続人以外 の者が寄与にあたる行為をしていることはままあります。 このような場合に,実際に療養看護を行ったのが長男自身ではないことの一事で, 寄与分を一切認めないことは,長男一家が義母の看護の負担を一手に引き受けていた ようなときには,衡平な結論とはいい難いでしょう。 そこで,このような場合でも,長男の嫁は長男の手足のように長男に代わって実際 の療養看護をしていたとして(配偶者を履行補助者とみて),配偶者らの寄与行為につ いて,共同相続人自身の行為と評価し寄与分を認める家庭裁判所の審判例が多数存在 していました。理論的にはやや難しい面もありますが,近時,相続人の配偶者による 介護について,寄与分を認めなかった原審を変更し,相続人の履行補助者として相続 財産の維持に貢献したものとして,200万円の寄与分を認めた高裁決定(東京高裁 決平成22年9月13日,家月63巻6号82頁)も存在しますので,共同相続人の

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配偶者や子らの寄与も,共同相続人の履行補助者としての行為と評価されれば,寄与 分が認められる可能性はあるといえます。 (2)代襲相続人の場合 代襲相続とは,被相続人より先に相続人となるべき子等が死亡していた場合,その 孫が子に代わって,被相続人の相続人となる制度です(民法887条2項等)。本来な ら,孫に引き継がれていた遺産が,死亡の先後という偶然の事情により,一切孫に相 続されないということは,衡平とは言い難いため,このような制度が設けられていま す。代襲相続により,例えば,被相続人Aの子BがAより先に死亡し,その後にAが 死亡した場合には,Bの子Cが,亡き父Bに代わって祖父であるAの相続に参加する ことができます。 この場合,代襲相続人Cは,亡Bが相続において行使しえた権利を代わりに行使す るものですから,亡Bが寄与分を主張できる場合には,Cも亡Bの寄与分を主張でき ることとなります。また,Aの相続時においては,Cが共同相続人である以上,C自 身の寄与行為についても,寄与分を主張できると考えられています。 同様の事案で被代襲者(上記事案のB)の寄与分を代襲相続人(上記C)が主張す ることを明確に認めた審判例(熊本家玉名支審平成3年5月31日,家月44巻2号 138頁)もあります。さらに,東京高決平成元年12月28日(家月42巻8号4 5頁)では,「共同相続人間の衡平を図る見地からすれば,被代襲者の寄与に基づき代 襲相続人に寄与分を認めることも,相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与 と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許されると解するのが相 当である。」として,代襲相続人である孫の寄与分について,被代襲者の妻(代襲者の 母親)の寄与も併せて考慮し,これを認めています。 (3)包括受遺者の場合 包括受遺者とは,被相続人から,遺産の全部または一定の割合の遺贈を受けた者で す(例えば「遺産の3分の1はZに遺贈する。」等という遺言があった場合のZをいい ます。)。包括受遺者は,共同相続人ではないものの,相続人と同一の権利義務を有す る(民法990条)とされているため,寄与分の主張をすることができるか否かが問 題となります。 この点については,争いがあるものの,包括受遺者も遺産の一定の割合の遺贈を受 けた場合には,相続人と同視され,遺産分割の当事者となることから,寄与分の主張 も可能となると考るべきと考えられていいます。もっとも,包括遺贈がなされる場合 は,通常は,被相続人がその者の特別の寄与を考慮した結果と考えられますから,寄 与分の主張を許したとしても,これが認められる場合は殆どないと思われます。ただ し,相当程度の大きな寄与があったことが認められるにもかかわらず,包括遺贈の割 合が著しく少ないような例外的な場合には,認められる余地はあると思われます。

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4 特別の寄与について 寄与分が認められるためには当該寄与行為が「特別の寄与」と評価できる高度なもの でなければなりません。この要件が,一般の方が考えている以上に寄与分の主張を厳し くしています。 例えば,夫婦には法律上相互に協力扶助義務が課せられており(民法752条),また 直系血族及び兄弟姉妹についても相互に扶養義務が課せられています(民法877条) ので,これら法律上当然予定されている程度の行為は特別の寄与ではなく,寄与分が認 められないということとなります。法律上の扶助義務等を超える程度の寄与がなければ, 特別の寄与と認められません。 そのため,法律上,高度の協力義務が課せられている夫婦間においては,ある程度の 貢献があったとしても,特別の寄与と認められる可能性はより低くなってしまいます。 一般的に,特別の寄与と言えるためには,①特別の貢献であること,②無償で行われ たものであること,③継続的に行われたものであることの要件が必要と考えられていま すが,それぞれの寄与行為の態様によって,具体的な判断要素が異なるため,次回以降, 寄与の態様毎に各別に検討致します。 5 財産の維持又は増加について 寄与分は,相続人の寄与により,被相続人の財産状況が変化したことを評価して,そ の増加分を寄与者に与えるという制度ですから,寄与行為により,被相続人の財産が増 加又は維持されたといえる関係になければ,寄与分は認められません。 例えば,精神的な支えとなったというような,財産の維持又は増加との関係を客観的 に立証できない行為は寄与行為にはなりません。 さらに,寄与行為に財産的価値があることを示さなければなりませんので,客観的な 基準(例えば第三者に同一の行為を頼んだ場合に支払うべき金額等)を基に,具体的な 価値を算出して主張する必要があります。 以上 ※ 本稿は執筆時現在の法令等に基づき記載されておりますので,その後の法改正等により結論が異なる ことがあります。 平成25年4月9日 文責:弁護士 菅谷 浩

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