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医療機器学. 2012, Vol.82, No.4.

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(1)

原 著

A Practical Solution using VNC and Android Tablets to Improve Efficiency

of Assisting Duty in Cardiac Catheter Operation

Keigo Iwazaki, Takahide Murasawa, Hisayoshi Tamai, Jiro Ando* 1, Kayo Waki* 2, Yuji Uchimura* 2, Hideo Fujita* 2, Takahide Kohro* 3, Kazuhiko Ohe* 4and Koji Omae* 5

The University of Tokyo Hospital, Department of Clinical Engineering

* 1

The University of Tokyo Hospital, Cardiovascular medicine

* 2

Graduate School of Faculty of Medicine, The University of Tokyo, Department of Ubiquitous Health Informatics

* 3

Graduate School of Faculty of Medicine, The University of Tokyo,

The Department of Translational Research for Healthcare and Clinical Science

* 4

Graduate School of Faculty of Medicine, The University of Tokyo, Medical Informatics and Economics

*5

NTT DOCOMO, INC. Department of Frontier Services

Abstract

[Background] In the clinical settings, quantity as well as quality of daily duties is increasingly demanded, where human resources are hardly satisfied in Japan. [Objective] To solve this imbalance problem, we specifically sought a practical solution in the catheter operation room using Android mobile tablets. [Methods] It was simply needed to install VNC software in PC terminals of our specially designed reporting system for adding to the new function of remote operation. [Results] Our experimental operations show that this enhancement achieved by Android and VNC remarkably decreased the amount of physical movement of co-medical members, resulting in increased attention to assisting operation. [Conclusion] Thus we propose that our solution is easy and cost-effective to

improve efficiency in the medical facilities.

岩 崎 圭 悟

 村 澤 孝 秀

 玉 井 久 義

安 東 治 郎

* 1

 脇 嘉 代

* 2

 内 村 祐 之

* 2

藤 田 英 雄

* 2

 興 梠 貴 英

* 3

 大 江 和 彦

* 4

大 前 浩 司

* 5

Android Tablet 端末を用いた診療業務効率化の試み

1.背

医療の現場において求められる業務量および 質は増加傾向にある1).求められる医療安全水 準も高まる一方で,医療従事者の人的資源は伸 び悩み,解決策として医療従事者側にも効率化 が要求されている2 , 3) . * 東京大学医学部附属病院 医療機器管理部 * 1 東京大学医学部附属病院 循環器内科 * 2 東京大学大学院医学系研究科 健康空間情報学講座 * 3 東京大学大学院医学系研究科 健康医科学創造講座 * 4 東京大学大学院医学系研究科 医療情報経済学分野 * 5 ㈱ NTT ドコモ フロンティアサービス部 (原稿受付:2012 年 2 月 14 日) 当院では,虚血性心疾患・不整脈疾患および 重症心不全の検査および治療をおこなう心臓血 管撮影室において,2011 年は合計で 2,413 例の 検査および治療を施行した.症例数はここ数年 増加傾向にあり今後もこの傾向は続くと予想さ れるが,施設のスペース・スタッフ数・診療時 間の制約があり,一層の効率化による改善が求 められている. 心臓血管撮影室には「業者立会い規制」施行 を受け,2007 年より臨床工学技士が配属され, 2011 年末において総勢 6 名の臨床工学技士が 専任で業務にあたっている.業務内容としては, 主に循環器専用の 3 室における診断および治療 のサポートである.しかし,部屋の形状や配置 されている設備や医療機器が異なっているため に,診療に関わる医師・看護師・臨床工学技士 の立ち位置や,人と物の動線までもがそれぞれ 異なる. 心臓血管撮影室における治療ではステントや バルーン選択といった多くの医療材料が術中に 決定されるため,術者から外回りの臨床工学技 士へ正確に意思伝達がされなければならない. 臨床工学技士のカテーテル治療における業務の ひとつに,決定された医療材料を術者へ迅速に 図1 A カテーテルレポートシステム全画面と術中記録部分 当院カテーテルレポートシステムの基本画面.透 視動画の描出箇所(左上),術者氏名や患者の身長 / 体重,穿刺部位等の基礎情報(左下),術中記録 箇所(右下),治療した部位や血管性状などの記載 箇所(右下).通常,臨床工学技士が術中に記録す る箇所を点線で示した.平均的な 1 症例で,20 〜 30 行におよび,3 〜 5 分に一回,最頻度では 20 〜 30 秒に一回,入力操作を行う. シ ス テ ム の 起 動 条 件 は,OS は Windows XP (Microsoft),解像度は 1,920 × 1,200 pixel でのみ利 用可能な固定仕様である.端末は操作室におかれ, サーバとは有線 LAN で接続されているため,端末 本体を自由に移動することはできない.

(2)

当院では,虚血性心疾患・不整脈疾患および 重症心不全の検査および治療をおこなう心臓血 管撮影室において,2011 年は合計で 2,413 例の 検査および治療を施行した.症例数はここ数年 増加傾向にあり今後もこの傾向は続くと予想さ れるが,施設のスペース・スタッフ数・診療時 間の制約があり,一層の効率化による改善が求 められている. 心臓血管撮影室には「業者立会い規制」施行 を受け,2007 年より臨床工学技士が配属され, 2011 年末において総勢 6 名の臨床工学技士が 専任で業務にあたっている.業務内容としては, 主に循環器専用の 3 室における診断および治療 のサポートである.しかし,部屋の形状や配置 されている設備や医療機器が異なっているため に,診療に関わる医師・看護師・臨床工学技士 の立ち位置や,人と物の動線までもがそれぞれ 異なる. 心臓血管撮影室における治療ではステントや バルーン選択といった多くの医療材料が術中に 決定されるため,術者から外回りの臨床工学技 士へ正確に意思伝達がされなければならない. 臨床工学技士のカテーテル治療における業務の ひとつに,決定された医療材料を術者へ迅速に 図1A カテーテルレポートシステム全画面と術中記録部分 当院カテーテルレポートシステムの基本画面.透 視動画の描出箇所(左上),術者氏名や患者の身長 / 体重,穿刺部位等の基礎情報(左下),術中記録 箇所(右下),治療した部位や血管性状などの記載 箇所(右下).通常,臨床工学技士が術中に記録す る箇所を点線で示した.平均的な 1 症例で,20 〜 30 行におよび,3 〜 5 分に一回,最頻度では 20 〜 30 秒に一回,入力操作を行う. シ ス テ ム の 起 動 条 件 は,OS は Windows XP (Microsoft),解像度は 1,920 × 1,200 pixel でのみ利 用可能な固定仕様である.端末は操作室におかれ, サーバとは有線 LAN で接続されているため,端末 本体を自由に移動することはできない.

(3)

テルレポートシステム端末(Windows XP, Microsoft).Android Tablet(Galaxy Tab SC- 01 C, サ ム ス ン 電 子 ㈱ )( 図 2 A). Bluetooth 接 続 タ イ プ の キ ー ボ ー ド (TK-FBP 017 BK,エレコム㈱)(図2B).サー バ用ソフト Ultra VNC(UltraVNC Team).ク ライアントアプリケーション Mocha VNC Lite (Mocha Soft). 2 )構  成 操作される側(サーバ側)に Ultra VNC (Ultra VNC Team)をインストールし,操作 する側(クライアント側)に Mocha VNC Lite (Mocha Soft)をインストールした.各ソフト を起動させ IP アドレスを設定した後,院内 無線 LAN を経由し接続,遠隔操作をおこな った. Galaxy Tab SC- 01 C(サムスン電子㈱)は, クライアント側とし,モニタ兼マウスとし て 利 用 し た. 既 存 の Input Method Editor ( Samsung 日本語キーボード)も利用は可 能だが,カテーテルレポートシステム端末 と の 相 性 が 悪 く, 今 回 は 無 線 キ ー ボ ー ド (TK-FBP 017 BK,エレコム㈱)を Bluetooth 経由で接続してカテーテルレポートシステム端 末に入力する方法を取った.簡単な構成図を示 す(図2C). 3 )セキュリティについて 当院のカテーテルレポートシステムは院内の 医療従事者の中でも実際に心臓カテーテル業務 に従事する者限定(循環器内科医師,臨床工学 技士,システム管理者)で各個人別の ID とパ スワードが配布されている. また,VNC を用いて遠隔操作をする際は, 12 桁の英数字を用いてパスワード設定をおこ ない,そのパスワードは今回実験に関わった人 物にのみ公表した. さらに当院の院内無線 LAN 環境は,各フロ アごとに固定 IP アドレスが指定されており, かつ 10 桁のパスワードを入力することにより 図2C 構 成 図 図2 A Galaxy Tab SC- 01 C ( サムスン電子㈱ ) 7 インチ画面であり,本体サイズ も 191 × 121 × 12.1 mm と小型であ り片手で使用できる.また,通 信 も IEEE 802 , 11 a/b/g/n に 準 拠している為,無線 LAN がある 施設では必要最低限の設定で利 用が可能である.今回は,モニ ター兼マウスとして使用した. 図2 B 無線キーボード ( TK-FBP 017 BK,エレコム㈱) Galaxy Tab SC- 01 C(サムスン 電子㈱)既存の Input Method Editor (Samsung 日本語キーボ ード)でのクライアント側から の直接入力も可能である.しか し,今回はサーバとなるカテー テルレポートシステムとの相性 が 悪 く, 無 線 キ ー ボ ー ド (TK-FBP 017 BK,エレコム㈱) を Bluetooth 経由で接続してカテ ーテルレポートシステムに入力 する方法を取った. 提供した後に使用した医療材料と共に詳細な施 術の内容を含めた記録をすることが挙げられ る.当院では,独自開発のカテーテルレポート システム(図1A)を利用し,施術内容の記録 保存をおこなっている.これらの業務を効率的 におこなうためには,動線も重要な要素となる (図1B).しかしながら,特に急患対応時など は心臓カテーテル検査・治療には参加しない多 くの医師の存在が,動線の妨げになり業務の支 障になることも少なくない(図1C). この問題に対する改善策として,これまでは カテーテルレポートシステム端末へ直接入力し ていたものを,タブレット端末を利用して遠隔 操作で入力することにより臨床工学技士の物理 移動を減少させ時間短縮を図る方法を考案し た.この新たな方法について,実際に遠隔操作 の安全性・精度のほか,動線短縮効果について の実証的検討をおこなった.

2.方

1)使用機器,ソフト 使用機器は以下の通りである.既存のカテー 図1C 当 院 の 緊 急 検 査 ・ 治 療 時 の 様 子( 一 例 ) 当院は医師数が多く,緊急時に救急部・循環器内 科・心臓外科医師等が集まり(左端の大楕円),そ のため図1B で示した動線の妨げになり,業務に 支障をきたす事も少なくない(図 1 C 点線矢印). 図1B 血 管 撮 影 室 ( 一 例 ) 術中に臨床工学技士が業務している場所(右円内) では血管内超音波装置等の画像解析をリアルタイ ムで行い,結果を術者に適宜報告し使用する医療 材料が決定される. 従来は術中記録を入力するカテーテルレポートシ ステム(左楕円内)と二か所をその都度往復して 業務を行っており,一回の移動距離は約 13 m にお よぶ.

(4)

テルレポートシステム端末(Windows XP, Microsoft).Android Tablet(Galaxy Tab SC- 01 C, サ ム ス ン 電 子 ㈱ )( 図 2 A). Bluetooth 接 続 タ イ プ の キ ー ボ ー ド (TK-FBP 017 BK,エレコム㈱)(図2B).サー バ用ソフト Ultra VNC(UltraVNC Team).ク ライアントアプリケーション Mocha VNC Lite (Mocha Soft). 2)構  成 操作される側(サーバ側)に Ultra VNC (Ultra VNC Team)をインストールし,操作 する側(クライアント側)に Mocha VNC Lite (Mocha Soft)をインストールした.各ソフト を起動させ IP アドレスを設定した後,院内 無線 LAN を経由し接続,遠隔操作をおこな った. Galaxy Tab SC- 01 C(サムスン電子㈱)は, クライアント側とし,モニタ兼マウスとし て 利 用 し た. 既 存 の Input Method Editor ( Samsung 日本語キーボード)も利用は可 能だが,カテーテルレポートシステム端末 と の 相 性 が 悪 く, 今 回 は 無 線 キ ー ボ ー ド (TK-FBP 017 BK,エレコム㈱)を Bluetooth 経由で接続してカテーテルレポートシステム端 末に入力する方法を取った.簡単な構成図を示 す(図2C). 3)セキュリティについて 当院のカテーテルレポートシステムは院内の 医療従事者の中でも実際に心臓カテーテル業務 に従事する者限定(循環器内科医師,臨床工学 技士,システム管理者)で各個人別の ID とパ スワードが配布されている. また,VNC を用いて遠隔操作をする際は, 12 桁の英数字を用いてパスワード設定をおこ ない,そのパスワードは今回実験に関わった人 物にのみ公表した. さらに当院の院内無線 LAN 環境は,各フロ アごとに固定 IP アドレスが指定されており, かつ 10 桁のパスワードを入力することにより 図2 C 構 成 図 図2 A Galaxy Tab SC- 01 C ( サムスン電子㈱ ) 7 インチ画面であり,本体サイズ も 191 × 121 × 12.1 mm と小型であ り片手で使用できる.また,通 信 も IEEE 802 , 11 a/b/g/n に 準 拠している為,無線 LAN がある 施設では必要最低限の設定で利 用が可能である.今回は,モニ ター兼マウスとして使用した. 図2 B 無線キーボード ( TK-FBP 017 BK,エレコム㈱) Galaxy Tab SC- 01 C(サムスン 電子㈱)既存の Input Method Editor (Samsung 日本語キーボ ード)でのクライアント側から の直接入力も可能である.しか し,今回はサーバとなるカテー テルレポートシステムとの相性 が 悪 く, 無 線 キ ー ボ ー ド (TK-FBP 017 BK,エレコム㈱) を Bluetooth 経由で接続してカテ ーテルレポートシステムに入力 する方法を取った.

(5)

要な時間をできるだけ少なくすることが重要 である.本システムは,サーバとクライアント の 2 点間の距離が長い場合や複雑な施設構造を している場合に,より効果を発揮すると考えら れる. 2 )セキュリティの観点から 通常 VNC は通信に暗号を用いないため,パ スワードなどを含めすべて平文で送信されてし まうため危険性を有したプロトコルであり,使 用には十分に配慮しなければならない. 今回の研究では,シールドルームでありかつ 院内 LAN を利用しているという点でセキュリ ティの強化が計られているが,病院システムに 不安がある場合には VNC は利用すべきではな い. 暗号化や認証の技術を応用し開発された, SSH や VPN をトンネルして接続することもで き4) ,セキュリティ面の強化が図られているも のもある.必要に応じてそれらのソフトや機能 を利用し,患者情報の保護に努めなければなら ない. また,病院ネットワークシステム使用のた め,院外から院内へのアクセスはできない構成 となっている.そのため今回は,院外から院内 LAN への不正アクセスによるいわゆる「乗っ 取り」といった事態は考慮しなかった.しかし ながら,院内から院外への情報の流出は技術的 には可能で,この点においてはすべての端末で も同様レベルでの注意が必要であり,使用する 全医療従事者の注意と院内学習によるモラルの 向上が前提条件であると考える5 , 6) 3 )タイムラグについて VNC を使用する際は,サーバ側の画面をキ ャプチャーした後,圧縮・転送・描出などの段 階を経るために必ず技術的なタイムラグが生じ る.またタイムラグの増減は,使用するサー バ端末の負荷状態・無線ネットワークの使用 状況・クライアント端末の負荷状態などにより 情報処理能力に左右される. 幸い本システムでは実用許容範囲に収まって いたと考えるが,よりリアルタイム化を計るの であれば,ネットワークの高速化・送信データ 量の減少・情報処理能力の速い VNC ソフトを 利用するといった改善が必要である. 4 )コストについて 既存の PC 仕様の特別仕様システムを,タブ レット端末仕様に更新するためにかかる開発費 は,通常数百万円から数千万円となる.一方, 図 3 B 各部屋における,術中記録の為の行動量の比較(平均 ±SD) 術中記録のための行動量は VNC 群において両室ともに有意 に減少が認められた(A 室 p= 0.0025,B 室 p= 0.020). 利用可能である.また,院外からはファイアウ ォールがあるためアクセスできない構成になっ ている.また,心臓血管撮影室はシールドルー ムとなっており,病院によって整備された LAN 経由でしかネットワークを利用する方法 はない.したがって第 3 者が外部よりカテーテ ルレポートシステムにアクセスする可能性はな いと考えられる. 4 )実 証 試 験 実証試験は 2011 年 4 月に経皮的冠動脈イン ターベンション症例(PCI)でおこなった.万 歩計(HJ- 005,オムロン㈱)を用い,Virtual Network Computing(VNC)を用いた入力法 (VNC 群)を従来の入力法(従来群)との歩数 を計測し比較した.入力内容は,リアルタイ ムに術中使用するデバイスの種類や名前・サ イズ・使用する場所・目的・バルーンの加圧時 間と加圧値などを記録した.症例の各群への登 録は難易度に偏りのないようランダムに決定し た. 両群において症例の難易度や術中記録以外で の行動量など背景因子を比較するため手技時 間・物品を棚に取りにいった回数・ポリグラフ に記録のため移動した回数を計測した.さらに 症例の難易度と術中記録の入力操作以外での行 動量に差があったかどうかの比較をおこなっ た. 5)解  析 各項目で F 検定(有意水準両側 10 %)をお こない,分散の確認をおこなった.等分散の場 合は,Student-T 検定を用い,不等分散の場合 は,Aspin-Welch-T 検定をおこなった.p< 0.05 を有意差ありとした.

3.結

A 室において計 6 症例(従来群 3 例,VNC 群 3 例),B 室において計 23 症例(従来群 11 例, VNC 群 12 例)を計測した.その結果,各部屋 において従来群と VNC 群との間では症例の難 易度や術中記録の入力以外での行動量に有意差 はなく,両群の手技的な背景因子は同程度と考 えられた(図 3 A). ここで記録のための移動歩数を比較したとこ ろ,各部屋において従来群に比較して VNC 群 では歩数の違いで有意に減少が認められた(A 室 p= 0.0025,B 室 p= 0.020)(図 3 B).

4.考

1)医療安全の観点から 従来群は入力のたびに心臓血管撮影室から出 て端末に向かっていたが,VNC 群では部屋か ら出ることなく記録をおこなえることで有意に 移動歩数を減少させることができた.また,携 帯性に有利なため,部屋から出ることなく手術 記録業務をおこなえたことにより,長時間患者 の傍にいることができたので安全性の向上に貢 献できたと考えられる.また,業務量の増加・ 質の向上・医療安全のためにも移動にかかる不 図 3 A 従 来 群 と V N C 群 の 症 例 比 較(平均 ±SD) 手技時間(A 室 p= 0.79,B 室 p= 0.93,左)・物品 を 棚 に 取 り に 行 っ た 回 数(A 室 p= 0.52,B 室 p= 0.66, 中 央 )・ ポ リ グ ラ フ 記 録 回 数(A 室 p= 1.0,B 室 p= 0.38,右)は両群に有意差はなく, 症例の難易度等背景因子はほぼ同一であった.

(6)

要な時間をできるだけ少なくすることが重要 である.本システムは,サーバとクライアント の 2 点間の距離が長い場合や複雑な施設構造を している場合に,より効果を発揮すると考えら れる. 2)セキュリティの観点から 通常 VNC は通信に暗号を用いないため,パ スワードなどを含めすべて平文で送信されてし まうため危険性を有したプロトコルであり,使 用には十分に配慮しなければならない. 今回の研究では,シールドルームでありかつ 院内 LAN を利用しているという点でセキュリ ティの強化が計られているが,病院システムに 不安がある場合には VNC は利用すべきではな い. 暗号化や認証の技術を応用し開発された, SSH や VPN をトンネルして接続することもで き4) ,セキュリティ面の強化が図られているも のもある.必要に応じてそれらのソフトや機能 を利用し,患者情報の保護に努めなければなら ない. また,病院ネットワークシステム使用のた め,院外から院内へのアクセスはできない構成 となっている.そのため今回は,院外から院内 LAN への不正アクセスによるいわゆる「乗っ 取り」といった事態は考慮しなかった.しかし ながら,院内から院外への情報の流出は技術的 には可能で,この点においてはすべての端末で も同様レベルでの注意が必要であり,使用する 全医療従事者の注意と院内学習によるモラルの 向上が前提条件であると考える5 , 6) 3)タイムラグについて VNC を使用する際は,サーバ側の画面をキ ャプチャーした後,圧縮・転送・描出などの段 階を経るために必ず技術的なタイムラグが生じ る.またタイムラグの増減は,使用するサー バ端末の負荷状態・無線ネットワークの使用 状況・クライアント端末の負荷状態などにより 情報処理能力に左右される. 幸い本システムでは実用許容範囲に収まって いたと考えるが,よりリアルタイム化を計るの であれば,ネットワークの高速化・送信データ 量の減少・情報処理能力の速い VNC ソフトを 利用するといった改善が必要である. 4)コストについて 既存の PC 仕様の特別仕様システムを,タブ レット端末仕様に更新するためにかかる開発費 は,通常数百万円から数千万円となる.一方, 図 3 B 各部屋における,術中記録の為の行動量の比較(平均 ±SD ) 術中記録のための行動量は VNC 群において両室ともに有意 に減少が認められた(A 室 p= 0.0025,B 室 p= 0.020).

(7)

践ガイド,㈱エクスナレッジ,2011,112 p. 14) 中村 寿,荒井泰輔,松尾健二ほか.電子カ ルテシステム無線 LAN 運用下でのタブレット 型携帯端末(GALAXY Tab)の活用.日本医 療マネジメント学会雑誌.2011,Vol. 12,No. 2, p. 372 - 372. 本研究では新規開発費はゼロであり,タブレッ ト端末とキーボードの現物コストのみで実現可 能であった.2011 年時点でのタブレット端末 の平均本体価格は,4 万円台であったが,現在 では,さらに低価格帯の端末も多数発売されて いる.そのため,各施設の状況に見合った機種 を選定しやすくなっている. 既存のシステムをそのまま使用できる点か ら,かなりのローコスト化が期待できる. 5)今後について 近年タブレット端末の発展は目覚ましく,そ の利便性もあり著しい普及をみせている7).ま た,医療業界においてもいち早くその利便性に 目を向け,各分野での利用が試みられ8 〜 11),タ ブレット利用を図る医療機関向けの書籍も発売 されている12 , 13) .従来のデスクトップ・ノート 型の端末と比べて,タブレット型の端末は占有 スペースを小さくまとめることができ,かつ携 帯性に優れている.したがって今後は,医療従 事者が広く施設内で使用する時代が来るのでは ないかと考える. しかしながら,現在当院を含め多くの医療機 関で使用される診療情報・補助システムのほ とんどは Windows OS で稼働している.その ため,Android OS,もしくは iOS のタブレッ ト型端末を利用する際は,新たなシステムの開 発を考慮しなければならず,さらに新システム を導入する際には,コスト・教育・現システム からの情報移行など問題点が多々ある.現在で は,別端末を遠隔操作する方法に,今回使用し た方法以外にも多種多様に存在するが14),さら にタブレット型端末を医療業界で普及していく ために,今後は,Windows OS のタブレット端 末のさらなる発展,もしくは標準化などにより 双方の OS へ互換性のあるシステムへのバージ ョンアップが望まれる.

5.結

今回われわれは院内無線 LAN を経由し,タ ブレット型端末と VNC の組み合わせにより他 の端末を遠隔操作することで,移動時間を短縮 し業務の効率化を図った.これは,比較的ロー コストでかつ容易に導入ができた.既存のシス テムをそのまま利用するため,汎用的であり複 雑化する医療現場に対する効率的な解決法のひ とつとなりえる. 文  献 1) 日本看護協会政策企画部.2009 年看護職員実 態調査.日本看護協会調査研究報告.2010, Vol. 83,p. 1 - 196. 2) 小磯 明.病院勤務医師不足の現状と対応につ いての研究 公的病院のアンケート分析から. 医療福祉研究.2008,Vol. 2,p. 49 - 59. 3) OECD.HEALTH ATA GLANCE 2011 :

OECD INDICATORS.2011,p. 70 - 74. 4) 津坂昌利.VPN とその応用.インナービジョン. 2005,Vol. 20,No. 5,p. 85 - 91. 5) 西井正樹,山本美紀,出田めぐみ.個人情報 の取り扱いに関する学内教育の有効性につい て.日本作業療法学会抄録集.2010,Vol. 44, p. 869 - 869. 6) 中西 寛,中野悦子.e ラーニングを活用した 情報セキュリティ教育.看護.2009,Vol. 61, No. 14,p. 70 - 79. 7) ㈱ QLife.“第 3 回 医師の「スマートフォン & タブレット型端末」利用意向調査”. http://www.qlife.co.jp/news/ 2394 .html, (参照 2011 - 10 - 26). 8) 宮崎 真,細矢光亮,貞森拓磨.クラウドと タブレット端末を活用した被災地医療支援. 日本遠隔医療学会雑誌.2011,Vol. 7,No. 2, p. 165 - 166. 9) 星野 裕,星野 敦,小寺由人ほか.医療現場 における iPad の活用.東京女子医科大学雑誌. 2011,Vol. 81,No. 5,p. 388 - 388. 10) 高尾洋之.医療現場における携帯電子端末の 活用の現状と今後の可能性.ナーシングビジ ネス.2011,Vol. 5,No. 9,p. 786 - 790. 11) 鎌倉文子,中村 寿,荒井泰輔ほか.電子カ ルテ環境下における看護部門でのスマートフ ォンの活用.日本医療マネジメント学会雑誌. 2011,Vol. 12,No. 2,p. 372 - 372. 12) エクスナレッジ医学出版部.医療現場 iPad 活 用ガイド,㈱エクスナレッジ,2011,92 p. 13) エクスナレッジ医学出版部.医療現場 iPad 実

(8)

践ガイド,㈱エクスナレッジ,2011,112 p. 14) 中村 寿,荒井泰輔,松尾健二ほか.電子カ ルテシステム無線 LAN 運用下でのタブレット 型携帯端末(GALAXY Tab)の活用.日本医 療マネジメント学会雑誌.2011,Vol. 12,No. 2, p. 372 - 372.

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