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P波PGAの飽和域を用いた巨大地震に対応した緊急地震速報の高度化

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Academic year: 2021

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1

3

.

P

PGA

の飽和域を用いた臣大地震に対応した緊急地震速報の高度化

倉橋奨

1 .はじめに 「緊急地震速報」を地震災害の軽減のために有効活用できるようにするには、直下地震のときに震源近傍域で 間に合わない、震源断層の面的な広がりが考慮されていない、など緊急に改善の必要とされる課題がある。なか で、も差し迫った東海、東南海、南海地震などの巨大地震が発生したときに、緊急地震速報が災害軽減に有効な情 報を提供できるかどうかはこのシステムの真価が間われる課題といえる。ここでは、緊急地震速報をより効果的 に地震災害の軽減に活かしていくための問題点として、 1 )内陸の直下地震のときに震源近傍の被害発生の高い 地域への間に合う情報伝達、 2) 巨大地震が発生したとき、震源断層の広がりを考慮した震度情報の伝達、など の問題点を解決する方策について述べる。

2

.

臣大地震の断届破壊の広がりの推定 大きな地震被害が引き起こされるマグ、ニチュード8クラスの地震では、震源域が100km以上にもおよぶ。地 震動は破壊開始点からのみではなく断層破壊域の全域から生成されるため、地震の震源を点ではなく広がりのあ る震源域をリアルタイムに把握する必要がある。本研究は、主要動のS波が到達するまでの上下動成分の最大動 から、

P

波震動の

PGA

の飽和域(震源近傍における

PGA

の頭打ちの領域)を推定し、断層破壊域を評価するこ とを目指す。 図

l

には、中越地震と岩手宮城内陸地震における

P

PGA

S

PGA

の距離減衰の図を示す。この図の

S

PGA

の距離減衰の関係は、断層最短距離が短くなるにつれて

PGA

が大きくなるが、 20km付近から近い観測点 では、距離とは関係なくほぼ同じ振幅になっている。この関係は、集集地震や四川地震でも成り立っており、地 震規模には依存せずに、震源近傍では

PGA

が飽和することがいえる。同様に、図

l

左図に示される

P

PGA

と 断層最短距離との関係も、中越地震、岩手宮城内陸地震では、断層最短距離が20km付近より短くなるとP波

PGA

が一定になる傾向にある。したがって、

P

波に関しでも

S

波同様に、断層最短距離が短くなると

PGA

が飽 和するといえる。しかしながら、図

2

左図に示すように、巨大地震である集集地震に関しては、断層最短距離の 短い観測点の中に、

P

PGA

が必ず、しも大きくない観測点が存在することがわかった。この飽和しない観測点 について検討したところ、破壊域からの断層最短距離は近いが、破壊開始点からは遠い地点であることがわかっ た。このことから、破壊開始点で生成されたS波が到来した後に、観測点近くの破壊域から生成されたP波が 到来するため、破壊開始点から生成されたS波までの記録内には、破壊面から生成されたP波は記録されない ためと考えられる。すなわち、破壊域の大きな巨大地震に対応させるためには、点震源ではなく、面的な震源を 考えなければいけないことを示唆している。 ,

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1

中越地震、岩手宮城内陸地震の

P

PGA

(左図)と

S

PGA

(右図)と断層最短距離の関係

53

(2)

3. UD成分の観測記録を用いた飽和域の推定 断層面が大きくなる規模の大きな地震では、

P

-

S

時間内の

P

波のみでは、飽和域から断層面を推定することは しかしながら、断層面から生成されたP波は、必ず、S波よりも先に到達するはずあり、そのP波から 難しい。 飽和域を推定できれば、主要動となる S波が到達する前に震源断層相当域を推定できると考えられる。そこで、 本研究では、 UD成分に、 P波成分が多く含まれると仮定して、 UD成分から P波の飽和域を推定することを試みる。 図 3左図には、集集地震の E W成分と UD成分の観測記録を示す。 UD成分の最大動は、 E W成分の最大動より も若干早く着信しており、主要動の最大動を利用するよりも若干早く情報提供が可能と考えられる。 と上下動成分の

PGA

(赤口)の距離減哀を示す。 上下動成分を用いれば、飽和域を推定することで可能であることがわかる。各地震における

S

波の

PGA

になる までの記録を用いた、 UD成分の

PGA

の距離減衰が図

4

左図に示す。中越地震、岩手宮城内陸地震、 図

3

右図に、集集地震における、

P

波部分の

PGA

(黒口) 四川地震、 集集地震ともに、断層最短距離が短くなる地点でも

PGA

が飽和することがわかる。 この図面から、 UD成分

PGA

と波形インパージ 集集地震における UD成分の

PGA

分布が図

4

右図に示めす。 ョンによる断層域とは、 UD成分

PGA

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以上の地点と、断層の大きさがよく近似していることがわかる。

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と震源近傍で

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の大きくない観測点の空間図(右図) 0 門 凶 国 間 噌 A V 9

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PGA

(黒口) UD成分

PGA

(赤口)の距離減衰関係(右図)

54

集集地震の E W成分と UD成分の観測記録(左図) 図3

(3)

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図4 中越、岩手宮城内陸、四川、集集地震の UD成分 PGAの距離減衰関係(左図)と集集地震における、 波形インパージ、ヨンによる破壊域とUD成分の PGAとの空間的な関係(右図)

4

.

上下動成分のサイト特性の特徴 本研究の方法では、上下動成分のPGAのばらつきが大きいと、中小規模地震では震源断層相当域を過大評価、 また大規模地震で、は過小評価となる可能性がある。そのため、安定したPGAとなるような処理を行う必要性が 考えられる。ここでは、観測記録に含まれるサイト特性に注目し、 P波上下動成分、 S波水王子動成分のサイト特 性の傾向のキ食言すを行った。 本研究で推定するサイト特性は、距離減衰式とPGAとの比で表現することとした。距離減衰式は、今回利用 する中越地震の余震記録を用いて、

2

ステッフ法により求めた。使用した余震は

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のもので

1

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佃 である。図5に距離減衰式と P波上下動成分の PGAとの比較の一例を示す。これらの比をサイト特性とした。 推定した距離減衰式は、観測記録を満足するものが得られているが、震源近傍の記録では、距離減衰式よりも大 きくなっているものがある。実務で利用する場合は、このような観測記録の取り扱いにより、飽和域の推定そ誤 る可能性がある。この原因のーっとして、サイト特性の影響が考えられる。 図

6

には、震源近傍の観測点の

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G

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(小千谷)における

P

波上下動成分、

S

i

皮上下動成分、

S

波水平動成 分のPGAから推定されたサイト特性と距離減衰式の PGAとの比較図を示す。口は余震、

O

は本震を示す。 S波 水平動に関しては、 PGAが大きくなると、サイト特J性も小さくなる傾向となった。これは、非線形効果により 見かけ上増幅度が小さくなったと考えられるが、今後詳細な検討が必要である。一方で、 P波サイト特性はばら つきが小さく、振幅依存性は若干みられる程度であり、 S波水平動よりも変化率は小さい。これは、 P波上下動 成分により飽和域そ推定する場合、

S

波水平動よりも安定して推定することが可能であることを示唆している。

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5

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(4)

余震

本震

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S

波 上 下 動

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PGA (gal) PGA (ga

)

l

PGA (ga

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l

図6 震源近傍の観測点の

NIG019

(小千谷)における

P

波上下動成分、

S

波上下動成分、 S

i

皮水平動成分のPGAから推定されたサイト特性と距離減衰式の PGAとの比較図

5

.

まとめ 緊急地震速報が、巨大地震のとき予測震度が過小評価される、などの問題を解決する方策を検討した。直下 地震に対してより早く震度情報を出すためには、 P波が主成分である加速度記録の上下成分の最大値 (PGA) か らマグ、ニチュードを評価する方法が有効である。巨大地震のときの問題の解決のためには、これまでの点震源を 仮定したマグ、ニチュードを推定し、距離減衰式から震度を評価する方法を脱却する必要がある。その方法のーっ として、本研究では、 P波が主成分である加速度記録の上下成分の最大値 (PGA) と断層最短距離との関係を調べ、 この PGAが震源近傍地点で飽和域をもつことを明らかにした。この飽和域から、地震の断層破壊域の推定を推 定する可能性が検討された。

s

波の最大動が到達する前までの上下動成分の最大加速度の監視により、大局的な 破壊域の推定が可能と考えられる。しかしながら、破壊域と現在の地震計設置の密度を比べると、地震計の数が 少ないと考えられ、今後も高密度な地震観測網を構築する必要がある。

56

図 6 震源近傍の観測点の NIG019 (小千谷)における P 波上下動成分、 S 波上下動成分、 S  i 皮水平動成分の PGAから推定されたサイト特性と距離減衰式の PGAとの比較図 5

参照

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