ニンジンの抽台に関する研究
倉 田 久 男
STUDIES ON BOLTING工N CARROT,DAUCLLS CAROTA LINN.
Hisao KuRATAIRelationbetweenlengthofflowerstalk and flower bud diffbrentiation小 After the stalk begins to elongate,the flowerbuds differentiateand develop.When the stalk ofcultivar‘Kintoki’becameabout twocmlong,theinflor・eSCenCe begins todifferentiate andwhen thestalk became four’tO fivecmlong,
floretsbegintodifferentiate.The differencein theconditionofflowerbuddifferentiationamongradish, Onion and carrot was dicussed.
ⅡInflufhce ofseeding timeandfertilizer applicationon the development of flower’Stalk.Seedsof Cultivar‘Kintoki’were seededeveryhalfmonthfr’OmApril16toJuly16.Then,theearlierthesowing
WaS,themorethenumberofdeveloped flowerstalks therewasanydeveloped flowerstalkonthesowlng
fromJulyltoTuly16。Theユater the sowing was tilりunel,the faster the developmentofflowerstalks. When the amountofapplied 董brtilizerwas changed,numberofdeveloped flowerstalksinplantsma−
nuredheavilywasthe sameasthenumberofdeveloped flowerstalksincontrolplants,and thatofplants
applied no fbrtilizer wasafew.Itbecomes clearIthat the development of flower stalkin carrotis
affectednotonlybyclimaticconditionand sizeofplantbutalsobyabsorptionofnutrientintoplant
Ⅰ抽台,茎の伸長と花の分化との関係 茎の伸長を始めてから花が分化発育する,品種金時では茎長約2cm以上で花序が分化し,4∼5c】n以上で小花が 分化する.花の分化条件について,ダイコン,タマネギと異ることについて論じた Ⅱ 抽台に及ぼす種まき期,施肥鼻の影響 品種金時を,4月16日から7月16日まで半月毎に種まきすると,早まき程抽合し,7月1日,16日まきは抽台しな かった6月1日まきまでは遅くまいたもの程,抽台は早まった 施肥鼠を変えると,多肥区の抽台ほ標準施肥区と同様であったが,紐肥料区の抽台は極めて少なかった,これから ニンジンの抽台は,気象条件と植物体の大きさの外に,植物の養分吸収条件が影響することを明らかにした 緒 口 低温感応作物の−・つといわれるニンジンの抽台は,抽台時期,抽台の揃い,遅い抽台の様相など他の低温感応作 物,ダイコン,ハクサイや,カンテン,タマネギなどとかなりの相異が観察されるい また今まで報告された金時ニン ジンの種まき期別抽台率を通覧すると,同劇地域では春早まき程抽合しやすし 抽台推移は必ずしも一定ではない.このことほ,ある程度の大きさの植物が,ある程度の低温に遭遇することが抽台 の基礎条件であるにしても,気象的環境(低温とか日長,抽台温度)と植物体の大きさだけでなく,別の要因が関与 していることが推察される そこで不揃いである抽台と花序の分化発育との関係,および抽台に及ぼす休内条件,とくに養分吸収に影響する施 肥栄養条件との関係について調査した 本実験は昭和29−31年調査し,昭和30年秋(花の分化との関係),昭和32年秋(種まき期と施肥との関係),園芸学 会大会で発表したが,事情があって論文としなかった.しかし,花の分化との関係については昭和32年,井上,鈴木 氏(学会講演),塚本,熊本,並河氏(論文)によって追認実証された.香川大学農学部学術報告 第34巻 第1号(1982) 74 実験材料および方法 Ⅰ抽台と花の分化との関係 昭和28年9月7日および10月1日,中生金時を−・般採種栽培に準じて餌場に種まきし,そのまま越冬させたもの と,10月1日畑土を入れたリンゴ木箱に種まき,3∼4月乾燥条件においたもの,および昭和29年3月25日圃場直ま きのものについて,29年春調査したl抽台は不揃いであるところから,1回の調査に,無作為に可及呵多数の個体を とり,茎長(根部屑の部分から生長点までの長さ)と花の分化段階(代表的かつ明瞭な分化段階について)とを調べ た. Ⅱ 種■まき期,施肥患が抽台に及ぼす影響 中生金時を標準施肥区は昭和31年4月16日から7月16日 まで単月毎に,多肥区および無肥料区は4月16日から7月 16日まで1.月毎に,一・般栽培に準じて種まきした,阻場は 稀薄で,施肥盈は欝1表の通り,追肥は本業5枚のとき施 こした 発芽5日後株間5cmに間引き,生育が斉−・になるよう 注意レて,各区調査個体数は200本.以上とした.抽台は菓間 に節間伸長した茎が見えたものとした 第1真 冬区の施肥盈(3.3m2当り) 実 験 結 果 Ⅰ抽台と花の分化との関係 花序の分化は,茎の頂部生長点の其の分化停止,肥厚に始まり,周辺に大敵総竃を分化し(第1図),その内側に 小散を,それぞれの小散の周辺に小散給電を分化しその内側
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に小花を分化する,この進み方は短期間の間に一部蕊復して 連続的である. 小敵および小花ほ周辺からある序列で規則正しく分化する が,その数ほ植物体の大きさなどによって若干異なり,小散 の場合例えば8・−12,9−14(第2図)などが多いが,その 他の場合もある. 多数の個体を無作為に採集し,頂花序の分化を調査する と,花の分化発育は極めて不揃いであるが,茎長との関連が 8−12 花伴分化始 大役綺竃分化 第1図 花序分イヒの初期,ゼ最終菓 9−14 第2図 小散分化の序列例10月1日梢まき,乾晩 3月25日まき 5月10−15日調 5月24日∼5日調 10月1日まき 3月28日調 9月7日まき 3月25日調 ノト /」、 末 大 く.】′:ご1二・ 末 大 朱 大 づ 末 大
.−、− ・∴ ∴ −−・− −・■
第3図 金時ニンジンの抽台茎長と花序分化との関係(1954) て142128烏121926を9162330鳥132029 も月 旬月 第4図 抽台加積曲線(月日ほ種まき期) 0 0 0 1 2 3 全分化基数 〔ll】 2 根15 径1 05 191630 1630詰&21烏&
箸,孟】21考責19畠
館5図 生育調査(抽合しない個体)香川大学農学部学術報告 第34巻 第1号(1982) 第2表 抽台始めまでの日数,抽台始めの抽台個体の大きさ 76 観察されたので第3図のように整理作図したり 何れも花序総竃を分化するときほ抽台を始めており,台の伸長と平行して花序の分化発育が進んでいる様相が明ら
かである∴また全く抽台を始めていない個体は花序は未分化で,引つづき菓を分化していた.
花序分化発育と茎長との関係は,3月下旬調査では未分化の個体は茎長2、1∼18cm以下,花序分化始の個体は 1”6∼1.7cm以上,小敵分化ほ2,5cm以上,小花分化は3cm以上であったが,呑まきおよび秋まき乾燥条件にお いたものについて5月調査すると,未分化個体は1∼2cm以下,花序分化始は19∼2.Ocm以上,小散分化は2、0 ∼3・1cm以上,小花分化は4∼5c甲以上であった”これらの数値から総合して,花序分化は茎長約2cm以上,小 花分化は4∼5cm以上と結論づけられる. 別に三寸ニンジンを10月1日種まきし,春の抽台現に調査したものでは,茎の伸長に伴い花が分化発育することば 金時と同様であったが,花序分化始めの茎長は金時より短く概ね1cm以上であった. Ⅱ 種まき期,施肥盈が抽台に及ぼす影響 各区の抽台の進行を加硫曲線であらわすと第4図の通りで,標準施肥区,多肥区ともに4月16日まきから6月16日 まきまでは,棲まき期の早いほど抽台が揃い抽台率が高かった7月1日および7月16日まきは抽合しなかった小 多肥区の抽台は,4∼5月まきの場合抽台の前半で標準施肥区よりやや早い傾向がみられそうであるが,その差は 掻く僅かであり,最終抽台は差がなかった..それに対し無肥料区の抽台は,4月,5月,6月とも抽台始めが遅く, 抽台率は12∼13%以下という極めて低率であった. 各区の植物体の発育を抽合しない個体について全展開英数,全分化英数,生態乱 根径であらわすと(第5図), 標準区に比べ多肥区の生育はやや良く,無肥料区はかなり遅延しとくに生態重でその差が大きい‖ しかし無肥料区の 生育が遅いといっても,4月16日まき無肥料区を5月16日まき標準施肥区に比べると,何れの調査数値においても無 肥料区が大きいことは明らかであり,同様のことは5月16日まき無肥料区と6月16白まき標準施肥区の比較でも認め られる.、 次に各区の種まきから抽台始めまでの日数と抽台始めの抽台個体の大きさを比較すると(第2表),抽台始までの 所要日数は4月16日まきから6月1計まきまで漸減し,6月16日まきは上昇している.別に抽台率50%に達するまで の日数では4月16日まきから5月16日まきまで漸減し,以降上昇した,抽台始めの植物体の大きさを全展開英数,全 分化英数,根径で比べると,4月16日まきから6月1日まきまでは漸減し,6月16日まきほ大きくなる傾向が明らか で,施肥盈別では,標準施肥区に比べ多肥区は何れもやや大きく,無肥料区は大差がない数値であった. 考 察 秋まき越冬または呑まきしたニンジンは春温暖になって,茎の伸長と平行して花が分化,発育することは明らかで ある.基本的にはニンジンほ低温感応作物であるが,秋まきした場合ナ類,ダイコンなど10∼11月に花が分化し越冬して抽合するもの,カンラン・タマネギのように2月頃低温期間に花が分化し発育して春抽合するものと,その性 格,分化期を異にしている、即ちニンジンほ低温を花の分化の誘起的,前措置として位暦づけ,花序の分化は温暖, 抽台に伴って開始し,その後,台の伸長と花序の発育が併行して急速に進むもので,花の分化始以降,花の発育のた めに低温が必要とか,台の伸長が停滞しているとかは全く考えられない,また抽台を始めていない個体は栄養生長を つづけ花序は分化していない,このような性格から他の低温感応性作物にみられるような低温または低温期間の不足 による座止視象はみられない,この意味から,助植物感応のダイコン,ナ類,大箇感応のカンラン,タマネギと別の 第3の立場に位置づけられると考える ニンジンのこの性格は,ゴボウの花序分化に近く,またセルリ,ノペセリなどカラカサバナ科そ菜に基本的に共通 し,更に宿根草のヰキョウ,球根のテッポウユリ,アイリス,フリ・−ジアとも類似しているものと考える‖ このように抽台と花序の分化が平行しているものは,外観的抽台淘汰と内面的花の分化の淘汰とほ直結しているこ とを意味する. 4∼7月まきで早まき程抽台しやすいことば低温感応作物として当然である,ただ金時は夏∼秋まき品種で抽台淘 汰が進んでいないため4∼6月まきで抽台したが,抽合性を選抜してある洋種系品種では,基本的にほ同じでも抽合 する限界種まき期は著しく異る、 施肥盈を変えたとき酬巴料区が,1カ月おそまきの標準施肥区より植物体の大きさは大きいにかかわらず抽台率は 極めて低率で,大差が認められた,このことはⅠの実験で秋まき箱植乾燥区が5月中旬,なお不抽台,花未分化個体 が多かったことに通ずると考える1 このことはニンジンめ抽台が温度,日長など外的気象条件と植物体の大きさという盈的条件とで決まるものではな く,ある場合には植物体内の質的条件が大きく影響することを意味する,この場合質的条件とは,養分吸収からみた 栄養条件が恵まれていて生長が良い場合に抽合し花が分化しやすいが,紐肥料区のように生育がおそい場合は明らか に抽台は少ないということ,即ち標準以上に生育を良くしても抽台の推移は変らない,抽台に影響するのは養水分吸 収の悪い生育緩慢の場合に限るという意味に解釈できるい 曽って各地の積まき期別抽台率の成紡が地域の気象環境と・−・定の傾向がなかったことほ,このような体内栄養条件 が異るためと考えられる、 多肥区ほ植物体の大きさは大きいが抽台始めは標準施肥区とほぼ同様であったのは,体内質的条件を除いて外的気 象環境との感応が同じであったためであろう,しかし無肥料区:ほ抽台始めがおくれたことは植物体の恩的発育,劉勺 条件の差に関与しているものと考える、 引 用 文 献 (6)位田藤久太郎:三重大農学術報告1,14−21(1950) (7)Jacobsohn,R.,MハSachs,Y.Kelman:J..Amer Soc.Hort.Sci.105,80ト805(1980) (8)小原 辿:虚及園25,517−521(1950) (9)杉山直儀:農及閻20,465−466(1945) (10)塚本洋太郎,熊本義房,並河 浩:京大食塩科学 研究所報告20,13−19(1957) (1982年5月31日受理) (1)常葉 高:山形農林学会報18,16−21(1961) (2)130rthwich,H.A.,Phillips,M.,Robbins,W・ W.:Amer,J.Bot.18,784−796(1931). (3)Eisu.H.、M.,H.Wallace:J.Amer.Soc.Hort. Sci.94,647・649(1969) (4)藤井健雄:疏菜園芸学総論246−248(1947) (5)Hiller,L.K一,,W.C.Kelly:J.Amer.Soc.Hort. Sci.104,253−257(1979)