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最適金融政策と支出のファイナンス-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香 川 大 学 経 済 論 叢 第66巻 第4号 1994年 3月 85-99

最適金融政策と支出のファイナンス*

藤 井 宏 史

I は じ め に

W

プール(1

9

7

0

)

は,かつて,

I

S

/

L

M

モデルに確率変数を入れただけの単純 なモデ、ルを使って市場の相対的な不確実性の程度が最適な金融政策手段の選択 基準になることを示し,最適な金融政策手段をめぐるケインジアンとマネタリ ストの論争に新たな視点、を導入することに成功した。そのためか,その後,こ の論文の分析方法を踏襲した論文が数多く生み出されてきた。いまや金融の分 野では常識となった感のある彼の主要な結論は次の様なものである。 すなわち,不確実性下で所得の安定化をめざす通貨当局にとって,貨幣量を 一定にする政策(以下では貨幣量政策と呼ぶ)と利子率を一定にする政策(以 下では利子率政策と呼ぶ)の有効性は,

I

S

曲線と

LM

曲線の相対的な不確実性 の程度に依存し,

I

S

曲線の不確実性が相対的に大きい場合には貨幣量政策が,

LM

曲線の不確実性が相対的に大きい場合には利子率政策が望ましい。 このようなプールの命題は,

I

S

曲線の変化と

LM

曲線の変化,すなわち財需 給の変化と貨幣需給の変化を相対的に独立したものとして取り扱う,ある種の 二分法を前提にしているのが特徴である。

P

a

t

i

n

k

i

n

以来の伝統的な

I

S

/

L

M

モ *小論は,平成4年度香川大学経済学部経済学科プロジェクト費による研究の一部である。 (1) 不確実性下の最適な金融政策手段の選択問題について,Poole (1970)以後の論文のサー ベイとしては, Friedman; B. M (1990)が詳しい。 ( 2 ) 最近の教科書的な ISjLMモデルでは,更に一歩進んで資産制約を前提に貨幣需給と金 融市場(債券市場)を表裏一体に考え,財市場の変化を実物ショック,貨幣需給の変化を 金融ショックとみなす完全な二分法を採用することが多い。しかし,その場合,支出の ファイナンスはあらかじめ排除されているので考慮することはできない。例えば,岩田 (1992)p 151

(2)

86 香川大学経済論叢 900 デルにおけるこの種の取り扱いは,背後に隠された債券市場を財市場と貨幣需 給の変化を吸収するパップアーとみなすことを意味し,暗黙の内に,支出が債 券の発行もしくは売却でのみ賄われるという特殊なファイナンスの方法を仮定 していることになる。 しかし,予算制約を考慮すると,支出の変化は保有貨幣の調整を通じて貨幣 需給にもシステマティックな影響を及ぽすと考えるのが,より一般的な取り扱 いである。で、は,予算制約式を通じて,財市場と貨幣需給の聞にシステマティッ クな関係を認めた場合,プールの命題はどのようになるのだろうか? この点では,かつて Sargent(1971)が,支出と貨幣需給の撹乱項聞にファイ ナンスの必要から強い負の相闘がある可能性が高く,その場合には利子率政策 が唯一最適な政策手段になると指適している。 また最近では,小論と同じ問題意識の下に, Hirayama (1992)が予算制約式 を明示化したモデルを使ってプーノレ命題を再検討している。それによると,予 算制約を通じて支出ショックが貨幣需給に影響を及ぽし,

1

S

曲線と同時に

LM

曲線がシフトする場合には,必ず、利子率政策が最適な金融政策手段になると主 張している。 しかし,いずれの場合払使用しているモデルがプールの使った標準的

1

S

/

LM

モデルに比べるとかなり複雑であったり,証明の方法がプール以来の伝統 的な分析方法を採用していなかったりで,その結論が標準的な

1S/LM

のフ レームワークで成立するのかどうかが明らかではなに ( 3) 予算制約式を通じて財市場と債券市場,貨幣需給との関係を明確にし, ISjLMモデノレ の背後に隠されている債券市場の重要性を指摘したものとしては,二木 (1977)や藤原 (1977) ,置塩 (1986)がある。 ( 4 ) Sargent(1971)は, Samuelson型の乗数加速度原理とPhillips曲線で拡張されたISj LMモデルを使ってプール命題を再検討しているが,予算制約式は明示化されていない。 これに対して, Hirayama (1992)が採用したのは予算制約式を前提に導出された Tobinの離散型モデノレである。彼は,多資産になると分析が困難になる従来の分析方法と は異なる新しい分析方法を提示するために,あえて複雑な一般均衡モデルを選んでいる。 そして不確実性下の政策問題の本質が所得の観察不可能性にあることに着目し,この問 題を現実所得の推計問題に還元して,確率推定の理論を応用して解けることを証明して いる。(次頁に続く)

(3)

901 最適金融政策と支出のファイナンス 87ー ← そこで,本稿では,従来の

ISjLM

モデルを使った倍統的な方法に,支出の ファイナンスの視点を導入して,この結論が何に依存しているかを明らかにし, あわせて支出のファイナンスとプール命題との関係をさぐることを目的とす る。 そのために,以下の要領で分析を進める。まず,次の2節で,プールの手順 に沿って周知のプーノレ命題を導出する。そして3節では,支出のファイナンス を考慮するために標準的な

ISjLM

モデルで背後にある予算制約式と債券市場 を提示し,ワノレラス法則から撹乱項の聞にも一定の制約条件が成立することを 示す。この条件を使って

4

節では支出のファイナンスが貨幣の取崩しによっ て行われる極端な場合に Hirayamaの主張が成立する条件が明らかにされる。 最後に

5

節で,支出のファイナンスが貨幣の取崩しばかりでなく債券の売却や 債券発行で行われる一般的な場合を考え,支出のファイナンスの視点からプー ル命題を見直すことにする。 II プールの命題 この命題を導出するにあたって彼が使ったのは,財と貨幣の需給均衡式から なる標準的な線形の

ISjLM

モデルである。そこで本稿では,次のように表す。

y =α

+α1

Y

-

a

2

r

+

u

(1)

M

=

b

o

+b

1

Y-b

2

r+v

(

2

)

ここで,Yは国民所得

r

は利子率,Mは貨幣量であり U,Vは財市場と貨 幣需給の不確実性を表す期待値

O

の撹乱項である。以下では,これら撹乱項の また.Modigliani = Papademos (1980)も,経済主体の予算制約式を明示化して不確実 性下の金融政策手段の問題を分析している。しかし,彼らは,民間銀行部門の行動を含ん だマクロモデJレを使い,貨幣量と銀行貸出の政策手段としての優劣を問題にしており, プール命題を対象にしてはいなし〉。 ( 5) bond financeやmoneyfinanceという用語は,通常,政府の財政赤字の資金調達方法 として使われるが,本稿では非銀行民間部門に適用する。ただし,非銀行民間部門は貨幣 増発が不可能なので.money financeは保有貨幣の取崩しを意味する。 (6 ) プールのモデルではIS関数を .

Y

= ao+a,ア+uとしているが,以下での議論の便宜 上,一般的な形式で表している。

(4)

-88 香川大学経済論叢 902 分散・共分散をそれぞれ O~,

0

;

O

u

v

と表す。それ以外のパラメータは,政策 当局にとって既知であり,すべて非負であるものとしよう。 そして,政策当局は,貨幣量政策と利子率政策のいずれかの手段によって, 国民所得の目標水準

Y*

と現実水準 Yの希離によって定義される,次の期待損 失関数の値を最小にするように金融政策の運営を行う。

E

[

(

Y

-

y

*

)

2

]

体系が加法的な撹乱項しか含まない場合,こうして決定される政策手段の最 適水準は,不確実性がない場合の水準と一致するから

(

c

e

r

t

a

i

n

t

y

e

q

u

i

v

a

l

e

n

c

e

)

, そのときの期待損失関数の最小値は,国民所得の分散で表せる。 そこで,最適な貨幣量政策や利子率政策が採られたときの貨幣量と利子率の 水準をMヘげとおき,それらが実施された場合の国民所得の分散

LM'Lr

を 求める。 まず、貨幣量政策の場合の現実の所得水準

Y

を求めると以下のようになる。

Y

=

Y*+(b2u-a2v)

/

L

J

(3) ただし ,

Y*

=

[

b

2

a

O

-

a

2

(

b

o

-M*)]/

..:::1

d

(

l

-

a

l

)

b

Z+α2

b

1

>

0

すると,所得の分散は次のようになる。

LM

= (b~0~-2a2b2σuv+ α~O;)

/

L

J

2 一方,利子率政策の場合の所得水準 Yは,

Y =

Y*

u

/

(

l

-

a

l

)

となるから,その分散は次のように表せる。

Lr

=

oU(1-al)2

(4)

(

5

)

(6) 政策手段の判定基準は,この分散の大きさによって行われ,小さい値を実現 した政策手段が最適とみなされる。そこで,貨幣量政策と利子率政策の場合の 期待損失関数の最小値の相対比を表せば,以下のようになる。

L

笠 ー

(l-al

)

2

.

bZσ~-2a2b2ρuvOuOv

+

a

2

0

'

;

Lr

..:::12

σ

4

(7) ただし, σ

u

v=

ρ

u

v

O

u

O

v

で,p聞は相関係数である。

(5)

903 最適金融政策と支出のファイナンス -89-この式より,不確実性下の金融政策手段が,

I

S

LM

関数の係数の大小と,貨 幣需要と支出の分散・共分散に依存することが分かる。このうち,プールが金 融政策手段の基準として強調したのは,貨幣需要と支出の分散比συ/σuである。 ここで,bl

=

=

bd(1-al)

>

0

とおいて(7)式を変形すると以下のようになる。 LM _ [a2(σv/Ou)十b2]2-2a2M1

+

ρω)(σv/σ,u) Lr (a2b1十b2)2 (8) これより,貨幣需要の撹乱が支出の撹乱に比して十分小さく ,Ov/σ,uく

b

1であれ ば,LMく Lrとなって貨幣量政策が優越するのに対し,貨幣需要の撹乱が支出 の撹乱に比してl十分大きく,

σ

v/Ou>

ι

+

(2b2/'

α

2

)

であれば,必ず LM

>

Lrと なって利子率政策が優越する。 このように,不確実性下の金融政策手段が,基本的に貨幣需要と支出の分散 の相対比の大小によって決定され,貨幣需要の撹乱が大きいときには利子率政 策が,支出の撹乱が大きいときには貨幣量政策が望ましいと主張するのが,プー ルの命題である。 基本モデルを提示する前に,このフレームワークの中で,ファイナンスのた めに支出と貨幣需要の聞に強い相闘があれば必ず利子率政策が優越するとい う,

S

a

r

g

e

n

t

Hirayama

の結論が導出できるか否かを確かめておく。これは, 最も強い負の相闘を仮定してρuv= -1を(8)式に代入すれば容易に分かる。明 らかに,利子率政策が必ずしも優越するわけではなく,依然としてプールの命 題が成立する。それゆえ,彼らの結論は,漠然とファイナンスのために支出と 貨幣需要に強い相闘があると想定しでも導出することはできないのである。 (7) LM/L

γ

三二[a2(σv/σu)+ゐ)2/(a2bl+b2)2より, συ/σu

<

b

l

ならば,LM川

4γ<1

。 (8) LM/L

γ

注 l+aH(σv/σu)+bd[(σv/σU)-bl一(2b2/a2))/(a2bl

+

bグ よ り,ov/σv

>

b

l

+

(2b2/a2)ならば,LM/Lr

>

1。 ( 9 )

S

a

r

g

e

n

t

(1971)は,支出と貨幣需要の撹乱項Ut,Vtに正の栢闘がある場合について説 明した後しかしながら ,Utと仇が正の相関をもつよりは負の相関をもっ可能性の方が 高いように思われる。個人や企業は財・サービスの購入に使うために貨幣を蓄積している ので,消費や投資の撹乱的な減少が予期せざるフローの貨幣需要をもたらすと考えるの が,最も合理的である。もしこの議論を受け入れるならば,我々の描いた経済では利子率 が優れた金融政策手段である。J(p58)と述べている。

(6)

90 香川大学経済論叢 904 III 基本モデル そこで以下では,支出のファイナンスを考慮した場合に

Hirayama

の結論や プールの命題がどうなるかを調べるために,あらためてプールの使った標準的 な

ISjLM

モデノレの背後に想定されている経済主体の予算制約式を考えること にする。経済主体としては,家計と企業からなる民間部門と,通貨当局のみか らなる銀行部門を考え,それぞれのフローの予算制約式を次のようにお

F

。 民間部門 :Y三 E+BP+L

(

9

)

銀行部門::M

=

=

Bb (10) 記号::Y =国民所得,E =総需要(支出), BP =民間の純債券需要,L =貨 幣需要,M =貨幣供給,Bb =通貨当局の債券需要(買いオペ額)。 民間部門の財と貨幣に対する需要は,先の(1)(2)式に対応するように所得の増 加関数,利子率の減少関数として以下のようにおく。 E

=

=

ao+a1Y-a2r+u L

=

=

bo+b1Y-b2r+v (l1a) (l1b) しかし,債券の需給関数は,

ISjLM

モデルでは背後に隠されているので標準 的な定式化がない。そこで,本稿では民間の純債券需要

B

Pを利子率ならびに所 得の増加関数と仮定して以下のようにおく。 BP三 Co十c1Y十C2r+w (l1c) すると,財と貨幣の需給均衡式は上述の(1)(2)式で表され,債券の需給均衡式は, Bb+co十C1Y+C2Y'十

ω=0

M

と表せる。 次に,両部門の予算制約式

(

9

)(10)を統合すると,財,貨幣,債券の需給の相互 関係を示す周知のワルラス法則が得られる。 (10) 以下での議論は,フロ}とストックの区別は重要ではないので,簡単化のためにフロー の次元で定式化している。 (11) 以下では,財市場・債券市場・貨幣需給の不確実性をそれぞれの需要の撹乱項で代表さ せて議論を進める。ただし,債券の需要のみ,超過需要を表している。

(7)

905 最適金融政策と支出のファイナンス J 4

(Y-E)+(M-L)+(-BO-BP)

=

=

0

の) 4 J v ' E g ( このワルラス法則より,各需要関数の係数は次の関係式(adding-up condi -tions)を充たさなければならない。

al+b

1

+Cl

=

=

1 α 1

>

0

b

l

>

0

C

l

>

0

a2+ b

2

-

C2三

o

a

2

>

0

b

2

>

0

C

2

>

0 (14a) (14b) また,各需要関数の撹乱項も次の関係式を充たさなければならない。すなわち, U 十

v+w

=

=

0 (14c) である。これより,

3

つの撹乱項は独立ではありえず,これら撹乱要因のうち, 二つが独立に変化すれば,残る一つはその残差として定まる。問題は,財,貨 幣,債券の各需要の撹乱項のうち,独立的な撹乱項として何を選ぶかである。 プールは,標準的な

IS/LM

モデルを採用することによって,支出と貨幣需要の ショックを独立的な撹乱項とし,債券需給の撹乱項がそれを吸収するとみなし ている。 しかし,実際に市場で貨幣と引き換えに取引されるのは財と債券であり,そ の取号│と無関係な貨幣需要は考えられない。それゆえ,このこつの需要の撹乱 。 却 項を独立的撹乱項とし,残る貨幣需要の撹乱項がそれに従属して変化すると想 定する。 そこで,新たに導入する債券需要の撹乱項 W は期待値が

O

で,分散を

σ

S

,支 出の撹乱項との共分散をの却とすると,貨幣需要の撹乱項 Uは,支出と債券需 (12) 民間部門の純債券需要が利子率の増加関数である(C2

>

0)ことは問題ないが,所得の 増加関数であるか(じ

1>

0),減少関数であるか(Cl< 0)は議論の分かれるところである。 例えば, Patinkin (1965)は生産量が大きいほど,それに必要な機械,設備,および在 庫を金融するための貸付資本に対する企業による需要が大きくなる J(邦訳p201)との理 由で,所得の減少関数と仮定している。また,最近の貯蓄決定と金融取引を分離した標準 的なIS/LMモデルでは,所得の増加は貨幣の取引需要を充たすための債券売却をもたら すので,債券需要は所得の減少関数となる。 しかし,支出の決定と金融取引が分離されていない本稿のモデルでは,所得の増加は, 一般に貯蓄の増加を通じて貨幣需要を増加させるとともに,債券需要をも僧加させるこ と,更には所得の増加にともなう企業の内部留保の増加は,それによって投資が大幅に刺 激されない限り,企業の債券発行を減少させる。それゆえ,債券の純需要を所得の増加関 数(じ1

>

0)とする小論の仮定の方がplausibleであると思われる。二木 (1977)や藤原 (1977),置塩 (1986)はいずれも所得の増加関数を仮定している。 (13) ここで「独立」というのは,確率的な意味での独立ではないことに注意。

(8)

-92 香川大学経済論叢 906 要の撹乱項の性質を反映するから,期待値は同じく

O

となり,分散・共分散は 次のようになる。 σ~ = a~+2σω+σる (15a)

ω

= -a~ σω(15b) Owv -O!-σ叩 (15c)

I

V

分 析 本節では, Hirayamaが問題にしている,支出がmoneyfinanceで行われる 極端なケースについて分析を行う。この場合の最適な金融政策手段を求めるた めに,。叩

=0

を仮定して(15a)(15b)式を(7)式に代入して変形すれば以下のよ うになる。

LM

ー (a2+b2)2+ぬ(σ即

/

o

U)2

Lr

ー (a2fJJ

+

b2)2 ここで, (14a)式より, (18) O<~<l ~ が成立するから,明らかに ,

LM

二":

Lr

。 したがって,本稿の

ISjLM

モデルでは,不確実性下の最適な金融政策手段に 選択の余地はなく,支出と債券需要の相対的な不確実性の程度にかかわらず, 利子率政策が最適な政策手段となる。 このことは,次の図からも容易に推測できる。図lは,本稿のモデノレで,財 市場にのみ不確実性がある極端なケースを表したものである。図中,BB曲線は 債券の需給一致線を表している。本来,プールの命題によれば,このケースで は貨幣量政策が優越するはずであるが,図より,利子率が固定化されている場 (14) (15b)式にのω=0を仮定すれば,支出と貨幣需要の栂関係数は, ρ即=ーの/σuとな る。 (15) (14a)式より, bl= bJ(l-al)

=

bl/(bl+α)。ここで, Cl

>

0ならばO<bl<l。 (16) σuw宇Oの場合も, 自由式の分子 =(a2+b2)2+2a2(a2+b2)ρ山 内/Ou+a~( 白/σU)2 より, ρ叫二三Oであれば,利子率政策が優越する。しかし,ファイナンスの視点で見れば, ρuwζOの可能性が強い。このケースを含めた分析は次節で行う。

(9)

907 最適金融政策と支出のファイナンス 93 │ 理11 ISI ISo IS2 LM BB y. 合より,所得の変動幅が大きくなるので利子率政策の方が望ましい。 貨幣量政策を採用した場合に,なぜ所得の変動が大きくなるかを理解するた めに,支出が撹乱により増加したと仮定する。この場合に,利子率政策であれ ば所得は単純乗数倍だけ増加する

(

y

*

y

;

)

。しかし,貨幣量政策の場合,貨幣 量を一定に維持したとしても,支出が貨幣需要の減少で賄われるので,LM曲線 が

I

S

2と

BB

曲線の交点

A

と交わるように

I

S

曲線と同時に右にシフトする。そ の結果,所得の増加→債券需要の増加→利子率の低下のプロセスを経て,所得 は利子率政策のとき以上に増加することになるのである

(

y

*

→臼う。 これに対し,図

2

は債券需要にのみ不確実性がある極端なケースを表したも のであるが,この場合は,貨幣需要が債券需要の撹乱を反映するため, LM曲線 は

BB

曲線と同方向にシフトする。その結果,プーノレの命題が教えるとおり, 利子率政策が優越することになる。 では,このように財市場が不安定な場合にも利子率政策が最適となる理由に (17) 支出のファイナンスがmoneyfinanceで行われる場合, IS曲線と同時にLM曲線がシ フトし, bond financeで行われる場合には, IS曲線と同時にBB曲線がシフトすること については,二木 (1977),置塩 (1986)を参照。

(10)

-94 香川大学経済論叢 908 │ ヌ12 IS LM * r BB

BBo lit--﹃ ・ M l i F 、 ー BB2 * Y M Y2 ついて,考えてみよう。 一つは, Hirayamaが指摘したように,ワルラス法則を前提にして貨幣需要 が支出と債券需要の不安定性を直接反映するとした結果,図

1

からも分かるよ うに財市場の撹乱による

I

S

曲線のシフトと同時に,

LM

曲線が同方向にそれ以 上に大きくシフトするからである。その結果,プーノレ命題の中で貨幣量政策が 優越するケースが退化してしまうのである。 しかし,

LM

曲線が同方向に大幅にシフトするのは,単に貨幣需要が支出 ショックを直接反映するからだ、けではない。もう一つの理由は,債券市場の需 給均衡線

BB

の傾きにある。本稿のマクロモデルでは,債券需要の所得反応係 数Clを正と仮定しているので傾きは右下がりであるが,債券市場を従属的な市 場と考える標準的な

ISjLM

モデノレでは,暗黙理に債券需要の所得反応係数Cl を負と仮定しているので傾きは右上がりである。この場合には,(18)式より,基 本的に財と債券の両市場の相対的な不確実性の程度

(

O

W

/

'

σ

u

)

が最適な政策手段 (18) Hirayama (1992)の使ったトービンの一般均衡モデルで、は,債券需要は所得の増加関 数,債券供給は所得の減少関数となっているので,債券需給線は,小論同様右下がりであ る。併せて,脚注(12)を参照されたい。

(11)

909 ホ r 最適金融政策と支出のファイナンス │ 立13 IS2 LM r

Y

;

が決める基準となる,いわゆるプーJレの命題が成立する。 -95-このことは,財市場が不確実でBB曲線が右上がりの場合を示した図3に よって容易に確かめることができる。再び,拡張的な支出ショックがあった場 合を仮定する。この場合,貨幣量政策であれば,所得の増加にともなって債券 需要が減少し,利子率が上昇するので支出が一部削減され,利子率政策の場合 より,所得の変動幅は小さい。それゆえ,このケースでは,ファイナンスのた めに支出と貨幣需要が相関するにもかかわらず貨幣量政策が優越するのであ る。 したがって,ファイナンスの必要から支出と貨幣需要が負の相関を持つ場合, 必ず利子率政策が優越するという

S

a

r

g

e

n

t

Hirayama

の主張が成立するに は,債券需給の均衡線BBが右下がりであることが必要なのである。また,支 出のファイナンスを考慮すると,

I

S

曲線と

LM

曲線の不確実性の程度によって 貨幣量政策と利子率政策の最適手段の割当てが発生するというプール命題も基 本的に債券需給の均衡線BBの傾きに依存し,暗黙理に右上がりの債券需給線 を仮定していることが分かる。

(12)

96 香川大学経済論叢 910 V 支出のファイナンスとプール命題 前節では,貨幣需給が財と債券の需給ショックを吸収すると考えて,支出の ファイナンスはもっぱら貨幣の取崩しで賄われるとしてきた。しかし,冒頭で も述べたように,通常は,債券発行もしくは債券売却によっても行われる。そ の場合には,財市場のショックも債券市場にシステマティックな影響をもたら すことになるから, LM曲線同様, BB曲線のシフト自体も, IS曲線から独立し た金融ショックとみなすことはできない。 そこで,前述のマクロモデ、ノレを前提に,こうしたファイナンス面での撹乱項 の一般的な依存関係を考慮すると向時に,支出活動から独立した金融活動とし て資産選択活動を考え,その撹乱要因を明示した定式化を行う。 まず,支出は貨幣のと債券のいずれかによってファイナンスされなければな らないから,支出の撹乱項Uを貨幣需要の取崩しによる moneyfinanceの部分 xと債券需要の削減による bondfinanceの部分 yに分けて考える。 u =-.x十y 1 ( 03 ) 次に,債券需要の撹乱項 w は,支出活動と独立した純粋に資産選択行動に基 づく独立的な撹乱項

z

と,支出のファイナンスのために従属して変化する撹乱 項yからなるとする。 w

=

-

z-y

すると,貨幣需要の撹乱項Uは,資産選択行動に基づく撹乱項

z

と支出の ファイナンスに基づく撹乱項 xから構成されることになり, (14c)式から, U三

-

-

z

-

x

(2J.) と表せる。 新たに導入した撹乱項 .,x y,

z

はいずれも期待値Oの独立した確率変数であ ると仮定すると,支出と貨幣需要の翻

L

項の性質は以下のようにな

2

。 (19) Hirayamaは, ISショックと独立な金融ショックを百nancialreshuffling shocks'と 呼んでいる。 (20) 撹乱項zとUが相互に独立しているという仮定は,現実的には,資産選択と支出決定 (貯蓄決定)はある程度独立していると考えても差し支えないとの判断による。

(13)

911 σ2=σ~+σ3

0

;

= O~+OX

σ

即 =-O~ 最適金融政策と支出のファイナンス -97ー (22a) (22b) (22c) ここで,支出ショックに占める moneyfinance部分の比重を示す尺度。を導 入する。

oζ8:::;:1 これを考慮して,期待損失関数比を示す(7)式に代入すると,

LM

ー (1-al)2biσ~+ 2a2b280~+ a~( σ~+8σ~)

L

r

L]2 o~ 一

α28+b

(

2

)

2

+

a~(oz/ou)2+

d(l-

8

)

8

(

α2

b

l

+

b

2

)

2

と計算できる。 (お) ( 24) この式より,支出ショックからは独立に,資産選択行動の撹乱が大きくなる と(σ'z

/

O

u

大),利子率政策が優越する可能性が高まる。それゆえ,予期せざる所 得の変化が資産選択行動の撹乱による利子率の乱高下が原因ならば,それを安 定化させる利子率政策が望ましいことが分かる。 これに対して,支出の不安定性が原因の場合,支出のファイナンスが主に何 によって行われているかで異なる。いままで同様

b

1

<

1を仮定すると,支出 ショックにおける moneyfinanceの比重が十分大きく(B大),例えば,。二と

b

1 であれば,の

/

o

u

の大きさに関わらず、利子率政策が優越することが分かる(前述 の分析では,

8

=

1

であるから,必ず利子率政策が優越したのである)。反対に, 支出ショックにおけるbondfinanceの比重が十分大きければ (8小),

o

'z/ouの 大きさによっては,貨幣量政策が優越する可能性がある。 ただし,図3からも明らかなように,こうした支出のファイナンスの方法に よって最適な金融政策手段が異なるのは,債券の需給線の傾きに大きく依存し ている。というのも,債券の需給線が右上がりの場合,

b

1

>

1

が成立するから, (21) 支出とmoneyfinance部分の相関係数をρ悶とすると,(J間 三ρUXの の =-o'iより, ρux =一σ'X/'σU=-/8。

(14)

-98 香川大学経済論叢 912 (幼式において

8=1

であっても

O

z

l

,σuが十分小さいならば期待損失関数比が

1

より小さくなって貨幣量政策が優越する可能性が残るからである。

V

I

お わ り に 貨幣需給同様,支出もファイナンスの必要から金融的な側面をあわせ持って いる。財市場と貨幣需給を陽表化する伝統的な

ISjLM

モデルでは,支出のファ イナンスは背後に隠された債券市場でのみ調整されること (bondfinance)を仮 定していた。しかし,ファイナンスは貨幣需要の調整(moneyfinance)によって もなされるから,財需給と貨幣需給を独立に取り扱う単純な二分法は成立しな しh

本稿では,このような観点から不確実性下の金融政策手段に関するプールの 命題を再検討してきた。その結果,以下のようなことが分かった。 まず第

1

に,支出のファイナンスが何によって行われるかで,最適な金融政 策手段が異なる可能性があるということである。すなわち,支出がmoney financeで行われる比重が高く,支出が貨幣需給との聞に強い負の相闘を持つ場 合には,必ず利子率政策が優越し,逆にbondfinanceで行われる場合には貨幣 重政策が優越する。 そして,第

2

に,このように支出のファイナンスの比重が最適な金融政策手 段に大きく影響するのは,

ISjLM

の背後に仮定されている債券需給線の傾きに 決定的に依存しており,ぞれが右下がりのときであるということである。 それゆえ,支出が不安定な場合に貨幣量政策が望ましいとするプール命題は, 支出がbondfinanceで行われているか,あるいは債券の需給均衡線が右上がり であることを暗黙のうちに想定していることを意味している。 また,金融市場の撹乱も,それがいかなる金融取引によって生じているか (ファイナンスか,資産選択か)で,採用されるべき金融政策手段が異なるこ とも注意しなげればならない。すなわち,金融市場が,支出の撹乱に伴う bond financeによって大きく影響を受けるほど,貨幣量政策が優越するのに対し,純 粋に資産選択行動の撹乱によって影響を受けるほど,利子率政策が優越するの

(15)

913 最適金融政策と支出のファイナンス 99 である。

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参照

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