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ゼロベース・バジェティングの最近の展開について-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

ゼロベース・バジェテイングの

最近の展開について

堀 井 ↑ 宣 暢

ゼロベース・バジェティング (Zero-Base Bud喧eting,以下ZBBと略す〉は, 過去に創案・開発された多くの経営管理手法と比較すると,非常に新しいもの であるといえるであろう。すなわち, 1960年代の終わりから 1970年代後半まで に創案・開発され,展開されたものであるといってよいからであら

;

1

経営管理 手法としてのZBBは,多くの側面を持つがゆえに,様々なとりあげ方がなされ てきた。また,そのとりあげられ方も,過熱気味にとりあげられ,革新的ある いは革命的な経営管理手法としてもてはやされ,万能的な力を持つ経営管理手 法と考えられ,米国はもとよりわが国においても企業組織や公共部門組織にお いてブームを巻き起こしたのである。 ところで, ZBBは,現在のところ, 1970年代終わりころまでの爆発的な関心 が払われていないのが実状であろう。筆者は既に,このような過熱的な動きに 対しては警鐘を鳴らし,さらにZBBが有用な経営管理手法として存在し発展 するために, ZBBシステムに対する精般化を試み

ζ

;

ZBBは,前述のように,多くの側面を持った複合的な経営管理手法ないしシ ステムであるがゆえに,全体として

1

つの経営管理手法としてみると,今まで にない新しい経営管理手法となるわけである。このように,全体として

1

つの 経営管理手法としてみるところにこそ,ZBBが大きな意味を持ちうる。しかし, ZBBを全体として取り扱うことはもちろん, ZBBの複合的な側面における間 (1) 拍稿「ゼロベース・パジェティング(ZBB)の会計的意義」神戸大学会計学研究室編『現 代管理会計論』中央経済社 1981年 306-316ベージ。 ( 2 ) 拙稿 rZBB と計画策定について」香川大学会計学研究室編『現代会計の展開~ 1983年 264守278ページ。

(2)

-76- 第60巻 第 3号 538 題点を 1つlつ取り上げることも, ZBBの発展に大きく寄与するであろう。す なわち,複合的な側面のそれぞれの問題点を精般化することが,全体としての ZBBシステムを一層精般化し, ZBBの再構築に役立つと考えられるからであ る。このようにしてこそ, ZBBは,経営実践の場で今後ともに意味を持ち続け るであろう。 ZBBは,全体としてのシステムとして見る限りにおいては,全く新しい経営 管理手法である。しかし,およそ経営管理手法や経営管理の根本思想ないしは 哲学には,過去に人聞が全く考えも及ばなかったことはほとんどないのであっ て,ZBBもその限りにおいて例外ではなし、。ZBBは従来から組織内にあった考 え方を再構成し,システム化したものである。それゆえにこそ, ZBBは精般化 することによって経営組織の中で発展することができるのである。 本稿では, ZBBにおける計画策定機能をPPBS(Planning, Programming and Budgeting System)との関連でとりあげ, ZBBのフレームワーグを明確に させる。この後,最近のZBBの新しい展開をとりあげることにより, ZBBが 経営組織において今後歩むべき方向を示唆するものとする。この場合に,でき る限り ZBBの会計的側面に多くの関心を払うものとする。 1 PPBSとZBB ZBBはPPBSを継承したものとして考えられ,また両者は補完しあえる関 係にあるとし、う。このことの意味を両者を検討することによって明らかにしよ う。 PPBSは,1)基本計画の策定(Planning),2)任 務 別 計 画 の 策 定(Program -ming),および3)予算編成(Budgeting)からなる3つのプロセスを 1つのトー タル・システムとして維持しようとするものである。 PPBSは,主として 1960 (3) Pyhrr, P A, Zero-base budgeting-A Practical Management Tool for Eval仰 ting Expenses, 1973, pp..152-157 (中村芳夫訳『ゼロベース・マネジメントー経営効率化のた めの革命的手法』ダイヤモンド社 1977年 221-228ベージ),拙稿「予算統制の新たな 展開のためにJr企業会計』第28巻 11号 1976年 10月 78ベージ。

(3)

539 ゼロベース・ベジェティングの最近の展開について -77ー 年代に米国国防省を中心として開発された経営管理手法といし、うるであろう。 従来の予算が,支出項目別の短期思考型予算であったのに対して, PPBSは, 長期基本計画に基づいて, 目的別・任務別計画を中継ぎとして,年度予算に結 びつけるものである。すなわち, PPBSの特徴は,1)それまでの公共部門予算 の短年度主義という枠を破って長期的視点を持ち込んだこと,

2

)

目的別・任務 別計画を策定したこと,

3

)

費用の発生を単に統制するのではなく,費用便益(有 効度)分析とし、う厳密な定量経済分析を行い,もって費用の効率的運用を計ろ うとしたこと,さらに, 4)米国連邦政府の場合には rプログラムおよび財務計 画(Programand Financial Plan)Jが作成され,多年度(5年間)にわたって のアウトプットおよび費用(所要資金〉を要約し,全体的長期計画として表示 しようとしたことである。 PPBSが国防省に導入される以前においては,各軍が互いに国防とし、う共通 の目的のもとに調整することなく,予算が設定され,したがって無駄な支出が 行われていた経緯がある。 PPBSでは,当初からこの経緯を踏まえて,全体的 な目的のもとに基本計画を設定し,これを達成してゆくための戦略を選択設定 し,さらにこれを具体的に実現させてゆくために年度予算が編成された。戦略 の選択設定に際しては費用便益分析を行うことにより,その代替案としての戦 略の経済性あるいは合理性を証明しようとした。 ZBBが,最初テキサス・インスYノレメンツ社におけるスタップ・研究部門に 適用されたことからもわかるように,その適用管理対象は,研究開発,エンジ ニアリング,品質管理,保全,生産計画のような製造活動に関連する間接部門, マーケティング部門および会計,人事,保険,法律,データ処理のような一般 管理部門における活動(業務〉である。このようなサービス・支援活動に関す る費用は間接費であって,その発生が原則として経営管理者の自由裁量に委ね られているところに特徴がある。 ZBBが自由裁量費(discretionarycosts)を管 理対象としているといわれるゆえんである。このような自由裁量費に対しては, ( 4) Pyhrr, P A ,“Zero-base budgeting,"Harvard Business Review, Nov-Dec..1970

(4)

-78- 60 第3号 540 製造直接費に対する標準原価システムのような経営管理手法を適用することが できず,費用便益分析のみが手がかりとなる。 ZBBでは,このような間接費の発生する活動領域について他とは独立した業 務(活動)あるいは機能に対して会計単位(ディシィジョン・ユニット〉を考 え, これに対して費用便益分析を行おうとする。 この費用便益分析を行うため その会計単位についての経済的情報等をもりこんだものをディシィジョ ン・パッケージ(DP)として準備・作成する。このDPは, 能に菌接かかわっている管理者が行うものである。 その業務あるいは機 まず当該管理者は, 同一業 務あるいは機能を遂行するには種々の代替案があることをまず確認し, その中 から最善の代替案を選択し,つぎに選択された代替案についてその機能を遂行 するための種々の努力(活動)水準を選択し, これに対してDPを作成する。こ こでの代替案および努力水準の選択についてはもちろん費用便益分析が行われ る。 この一連の手続きがそれぞれの部門の組織階層で則行われる。 このDPの作成が終わると,費用便益分析に基づいてDPの順位づけ(Rank -ing)が行われる。この順位づけは予算に関して重要である。すなわち,高い順位 が付けられたものから順次予算(人的資源を含む経営資源〉が配分されること になるからである。 ZBBでは, この順位づ、けが組織階層に従、って下位の階層か ら上位の階層へと進められることになる。 この結果, 上位階層の管理者は, 下 位階層で行われた複数の順位づけを統合し順位づける必要にせまられる。 この 統合順位づけには困難な問題が多く含まれており, ZBBはこの点に多くの様々 な工夫が行われている。たとえば,階層別許容支出水準の設定制,投票制, 者比較マトリックス法等であお

;

5

むしろ, この点にこそ, オベレーショナノレな ZBBの特徴があるといっても過言ではない。このようにして,すべて DPの評 価・順位づけが終わると,高順位なDPから経営資源(人的資源を含む〉が許容 限度まで配分され, 予算編成が終了する。 (5) Austin, L A andCheek, L M, Zero-Base Budgeting-A Decision Package Ma悶 仰1,AMACOM, 1979, pp..24-27,前掲拙稿「ゼロベース・パジェティング(ZBB)の 会計的意義J315ベージ。

(5)

541 ゼロベース・パジェティングの最近の展開について

79-I

I

予算編成と

PPBS

ZBB

ところで,

PPBS

および

ZBB

は,その中に予算編成

(

B

u

d

g

e

t

i

n

g

)

プロセスを 含むシステムであるという点で共通点を持っており,比較対照されることにな る。したがって,

ZBB

PPBS

との比較対照を一層進めるために,まず予算な いし予算編成の経営管理機能を明らかにしておくことが必要であろう。この点 については, さらに,予算編成の機能と計画策定機能,特に短期利益計画(策 定)との関連が問題になるであろう。 従来より,予算ないし予算編成の機能には,計画策定,調整および統制機能 があるといわれている。さらに,最近では,マネジメント・コントロール機能 との関連も問題とされている。 予算編成と短期利益計画とは,密接な関係にあることが知られている。この 関係については,大別して, 1) 短期利益計画は,予算編成に先だって行われ,予算編成以後のプロセス は統制プロセスである。

2

)

短期利益計画と予算編成とを同ーのものあるいは一体のものとして考 え,計画策定としての短期利益計画は,予算編成のプロセスを通じて実現 されてし、く。 という

2

つの見解がある。 この予算編成と短期利益計画についての

2

つの見解は,特に

ZBB

の予算編 成プロセスさらには

ZBB

それ自体を理解する上で重要で、ある。両者の関連に ついてどちらの見解が正当であるかは,実際に企業組織でどのような関係で短 期利益計画が策定され,予算編成が行われるかにもよるであろう。また,実際 の企業組織がどのような組織環境のもとにおかれているかにも依存するであろ う。しかし,組織環境が複雑かつ不確実でしかも動態的であることが一般的に なりつつある現在,このような組織環境にも適用可能な見解でなければならな いであろう。複雑かつ不確実でしかも動態的な組織環境に適用可能な短期利益 計画と予算編成との関係が,そうでない組織環境においても適用可能であると

(6)

-80- 第60巻 第

3

号 542 すれば,このような関係がより一般的であり普遍的であるとし、し、うるのである。 この点については後述することとする。 また,予算の経営管理機能に関連して,予算について,計闘予算 (planbudget) と統制予算 (controlbudget)とを考え,両者を区別すべきであるとする者もい る。このような考え方は,予算の機能についての考察を助けるであろう。 たとえば,アメイ

(Amey

L R)

は「単一の予算が,計画と統制の両方で効果 的であるとすることは, とてもありそうもないことである。」としている。さら に「計画予算は,資源の配分と資源に対する要求という本質的に経済問題であ るのに対して,統制とは,安定化あるいは規制を目的としており,統制予算の 効率は,それの生みだす結果によってのみ測定されるのであって,本質的には 経済的なものではない。統制について考える場合には,各従業員の動機づけと 個人的希求水準という形での行動科学的考庫および統制目標の水準および報酬 一罰則システムがとる形態によって,各従業員がどのような影響を受けるかに ついての行動科学的考慮が必要である。」としている。 これは要するに,計画予算においては経済的考慮、が,統制予算においてはそ の効率が生みだす結果によって測定され行動科学的考慮が必要であることを示 している。さらに,この計画予算と統制予算に関連して,計画予算は実現可能 なものであるべきであり,統制予算は必ずしもその必要がないということもい われている。 このように,予算あるいは予算編成に対して,異なった機能が期待されてい ることがわかるであろう。 上述の予算あるいは予算編成についての論述が,

ZBB

のプロセスあるいは予 算機能を検討するうえでフレームワークの役割を果たしてくれるであろう。 ( 6 ) 溝口一雄「実践的予算統制Jr企業会計』第18巻第1号 1966年 1月 115ベージ。溝 口一雄『入門利益計画』中央経済社 1975年 38-48ページ。ここでは,利益計画と予算 編成を区別すべき理由がくわしく述べられている。 (7) Amey, L R, Budget planning and ωurol system,宮Pitman, 1979, p..4

(7)

543 ゼ ロ ベ ー ス ・ パ ジ ェ テ ィ ン グ の 最 近 の 展 開 に つ い て -81-III ZBBと計画策定について ところでZBBと予算機能との関連を検討するに先だって,特に予算機能と 計画策定機能との関連あるいはZBBと計闘策定との関連を検討しよう。既に, 拙稿においてZBBと計画策定との関連について述べてき芯しかし,両者の 関連について十分に明らかにしえないところがあった。そこで,今一度,この 問題についてさらに検討を加えたい。 拙稿ですでに述べているように, ZBBという経営管理手法はピアーによって 開発され,その後ストニヒあるいはチーク等によって改善,普及されてきたも のである。したがって, ここで計画策定に関連して彼等のZBBモデノレの位置 づけを明らかにしよう。 〔第1図〕

E

iW編成のための - -1前提条件と ~I 尚 、

r

)i.

(

P

Jストニヒ著 日本能率協会コンサノレティング事業本部訳『ゼロベース計画の実際1 ) 日本能率協会 1978年 26ページ 第1図はストニヒがヒューセイのモデ、ルを利用してZBBを説明しようとし たものである。この図から推察できることは, 日本のように短期総合利益計画 という概念がはっきりとは意識されていないということである。しかしながら, ( 8 ) 前掲拙稿「ゼロベース・パジェティングの会計的意義」 前 掲 拙 稿 rZBBと計画策定について」 ( 9 ) 前 掲 拙 稿 「 ゼ ロ ベ ー ス ・ パ ジ ェ テ イ ン ク の 会 計 的 意 義J306ページ。

(8)

-82- 第60巻 第3号 544 もちろん短期計画が全く考えられていないというわけではない。それは,スト ニヒが,ヒューセイを引用した次のような表現のうちによみとれる。「年間計画 は長期計画と緊密にリンクするものであるから,予算もまた長期計画と密接に リンクする。」と。しかし,この図における長期計画とは主として,職能別(た とえば,マーケティング,生産あるいは一般管理)の長期計画が考えられてい る。また, これに密接に関連する年度予算においても,職能別に策定されてい るのである。したがって, ストニヒの場合予算編成に先だっ短期総合利益計画 とし、う概念が希薄である。 このことは, ピアーの場合にもいえるであろう。ピアーは,計画策定と予算 編成との関係について次のように述べている。『計画策定は予算編成に比べて抽 象的である。計画策定においては,プログラムを決定し目標および目的を設定 し,組織全体としての基本的な政策決定を行う。予算編成においては,その組 織が各プログラムを実施するため行わなければならない多くの機能やアクティ ビティを詳細に分析し,期待されている目標成果を実施するために各アクティ ビティにおける代替案を分析し,設定された目標の部分的ないし完全な達成と それに関連したコストとの聞のトレード・オフを確認する。』と。 この叙述によって,

ZBB

に先だって計画策定プロセスがあることを知りう る。しかし,計画策定が具体的にどのようなものであるかは窺い知ることがで きない。

ZBB

のより具体的なプロセスと計画策定との関連を述べたものが第

2

図である。この図にあるように,

ZBB

と計画策定との関連性は,

ZBB

のプロセ スがはじまるにあたって問題となる「計闘策定上の仮定

(

p

l

a

n

n

i

n

g a

s

s

u

m

p

-t

i

o

n

s

)

J

にある。この「計画策定上の仮定」には,製造加工単位数,サービス水 準や次年度の現実的な支出水準に関する一般的ガイドライン等具体的なもので ある。ここには短期総合利益計画という発想はない。 さらに,チークは,ピアーの考えを採用して,

ZBB

と計画策定との関係をよ

(10) Pyhn, P A, ZerO-

B

a

se Budgeti昭 一A Practical Management Tool for Eval叩 ting

(9)

-83-ゼロベース・パジェティングの最近の展開について 545 +一方向づけと基機的分析→汗一一一デインジョン・ノf')ケージの作成一一一一一→ すべてのディシジョン。パ y ケ l 、ンを順位づける 〔第

2

図〕 新規のアクティピティとプログラ ムに関するディシジョン パyケ F ジを作成する 子分現 イ離行 ヒ可の テ能オ イなぺ に独レ 分立l 割しシ すたヨ るアン クを

(

中村芳夫訳『ゼロベ一ス.マネジメントAtJイヤモントド品社 1ω97η7年 2幻1ベ一ジ / 〔第3図〕

~

~

I

~1\Iji1111!i)fiiÊ

I

-

-

-

→亡互日

修 E

(Cheek,L M,zuo-b仰 budgetingComes ofAp,AMACOM,1977,p 1 5 )

中神芳夫訳『ゼロベース計画と予算編成』産業能率短期大学出版部 1978年 21ベージ/ り明示的に示している。第

3

図によれば,

ZBB

は長期計画に基づいて直接予算 予算編成に先だっ短期 この場合には, し

T

こカ:って, 総合計画という概念はない。 編成が行われるのである。

(10)

-84ー 60巻 第3 546 以上のことから導かれることは,ゼロベースを創案し,発展させた

3

者にあっ ては,年度の計画策定は予算編成のプロセスを通じて実現されるという前述の 見解,ないしは短期総合計画がないままで予算編成を行うという立場で

ZBB

を考えているということになるであろう。

ZBB

と計画策定とのこのような関連 は,

ZBB

の性格および

PPBS

との関連を理解するうえで重要である。 ところで,

PPBS

は,現実には,長期計画策定に重点をおく余り,予算編成 には成功しなかった。

PPBS

B

つまり

B

u

d

g

e

t

i

n

g

まで辿りつかなかったわけ である。ここに,

PPBS

ZBB

が合体する可能性がある。 前述のように,

PPBS

は長期計画策定

(

p

l

a

n

n

i

n

g

)

に基づいて任務別計画策定 が行われ,ついで予算編成

(

b

u

d

g

e

t

i

n

g

)

が行われる。このようなコミュニケー ションの流れから

PPBS

を上意下達すなわちトップ・ダウン型の予算編成方式 といわれる。これに対して,

ZBB

においては,最初に,当該業務に直接かかわっ ている組織階層の下位の管理者が費用便益分析に基づいてDPを作成する。そ の後,その階層でのDPの順位づけにはじまり,最上位階層における統合順位づ けに終わるまで,コミュニケーションは組織の下位から上位へと流れる。

ZBB

のこのような側面が強調されて,

ZBB

を下意上達のボトム・アップ型の予算編 成方式であるとし、う。

PPBS

が上意下達のトップ・ダウ:/型!の予算編成方式という点については異 存はない。しかし,

ZBB

が下意上達のボトム・アップ型の予算編成方式である というのには賛成できない。もちろん,予算の最終的決定権限がトップマネジ メントにあるから,厳密にいうならばボトム・アァプ, トップ・ダウン方式と いうべきかもしれなし、。さらには,

ZBB

のプロセスがはじまる前に,何らかの 予算編成方針が存在するのであるから, トップ・ダウン,ボトム・アップ, トッ プ・ダウン方式というべきかもしれない。

ZBB

をボトム・アッフ。型の予算編成 方式として特徴づけることは,おそらく,

ZBB

の参加型予算であることを強調 することの結果であろう。もちろん,

ZBB

の参加型予算としての特徴を強調し (11) 前掲拙稿「予算統制の新たな展開のためにJ78ベージ。

(11)

547 ゼロベース・バジェティングの最近の展開について -85ー すぎることはない。しかし, ZBBのこの面だけをとらえて,ボトム・アップ型 の予算編成方式とするところにこそ, ZBB ~こ対する認識における問題点があ る。 すなわち, ZBBのプロセスがはじまる前の計画策定が,重みをもって認識さ れていないのである。このことは,ストニヒ,ピアーおよびチークのZBB~.こ関 するモデルを考えると理解できるであろう。そこでは, ZBBのプロセスがはじ まるにあたっての指針としては,長期計画であったり,市場予測であったり, あるいはより具体的な特定の指標であった。彼らには, ZBBの予算編成方針の 前提としての期間総合利益計画という概念が希薄である。たとえ, ZBBが特定 の経営管理領域を対象とした部門予算であるとしても,組織全体にわたる全体 計画との関連で予算編成が行われるのでなければ,その予算は全体とのつなが りが不完全なものになるであろう。 今 lつ予算に関して解決しなければならない問題は,計画予算と統制予算の 問題である。前述のように,計画予算を資源、の配分と資源、に対する要求という 本質的に経済問題に関するものとするならば, ZBBによる予算は計画予算とい うことになる。また,その効率が生み出す結果によってのみ測定される行動科 学的考慮、が必要な統制予算というものを認めるなら,参加型予算方式として事 前的モチベーションの働く ZBB を,計画予算としての部門~~予算として編成 し,場合によっては,統制予算を別に作成するということも可能であろう。従 来,予算には,資金予算との関係からいっても,実現することが期待されてい るから,大きな規範性を期待することができないという考えがあった。計画予 算と統制予算という考え方は,予算に対する最近の行動科学的研究の成果の結 果であろう。しかし,利益計画と計画予算との関係などを含めて,さらに研究 を要する問題がある。 IV ZBBと目標計画法 ZBBを,多くの側面を持った複合的な経営管理手法とした。この面に着目す

(12)

-86ー 第60巻 第3号 548 れば,

ZBB

を精般化するための多くの貢献がなしうるであろう。最近の

ZBB

に対する貢献として,

ZBB

を目標計画法

(

g

o

a

lp

r

o

g

r

amming)

の観点からとら えようとする研究がある。

ZBB

DP

の順位づけならびにこれに続く

DP

の統 合順位づけによる資源配分の問題は,まさに, 目標計画法の基本概念と一致す る。 目標計画法では,一般的に,矛盾する多重目標を順序づけ,相対的な比重を 与えることによって解決する(この問題では,この加重の問題は取扱わなし、〕。 多重目標の順序づけは順序が上の目標を満足した後(満足できなければ,満足 に一番近い状態にした後〉でなければ, IJ債序が下の目標は考慮しないという方 法をとる。 m個の目標のそれぞれについて, (1) 目標値がちょうど達成することが望ましい場合(この場合にはd+と

r

ともに目的関数に入れる

λ

ただし ,d+を目標からの超過分(正の偏差〉と し,dーを目標からの不足分(負の偏差〉とする, (2) 目標値が不足してはいけないがそれを超過することは差支えない場合 (この場合はd だけ目的関数に入れる),

(

3

)

目標値を超過してはし、けないが不足することは差支えない場合(この場 合はd+だけを目的関数に入れる), (4) 目標値にかかわりなく最小または最大にする場合(この場合には

r

-d-または -d++dーを目的関数に入れる), のいずれかに当たるかを検討し,それに合うように偏差変数

r

r

の係数

(+

1

0

, -1)をきめる。 次に,目的関数に入れられる

d

t

d

i

(i

=

1

2

, "', m)について,最も重要 なものから最も重要でないものまで順序づける。 k個のクラスに各変数が分類 されたとすると,各クラスに絶対順数

(

p

r

e

e

m

p

t

i

v

ep

r

i

o

r

i

t

y

f

a

c

t

o

r

あるいは

p

r

e

-

e

m

p

t

i

v

e

p

r

i

o

r

i

t

y

w

e

i

g

h

t

)

Pi (i

=

1

2

,… , k)を付す。絶対順数PiはPi (12) 井尻雄土『計数管理の基礎』岩波書庖 1970年 45-46ページ。ただし記号については 若干の変更を加えてある。

(13)

549 ゼロベース・パジェティングの最近の展開について -87-と比べて ,

i

> jならば,どのような自然数nをもってきても

nM

i孟

M;

とな らない数である。最も重要なクラスに属する変数(dtまたはd;)にはMlを係 数として与え,第

2

番目に重要なクラスに属する変数には

M

2を係数として与 えるというように進み,最後に最も重要でないクラスの変数には

M

kを付す。こ のようにして得られる目的関数を最小化するようにして多重目標の順序づけに よる解が得られる。これらの解は, 目標計画法が線型計画法の応用であるとこ ろから,基本的にはシンプレッグス法で得ることができる。 このような目標計画法によるアプローチをリー=シンに従って ZBBモデル に適用しょ;?このZBBモデルでは,基本的目標制約条件に関して基本的な 範時がある。すなわち,次のものである。 (1) プログラムあるいはアクティビティの達成目標に関するもの ある 1つのプログラムあるいはアクティピティに対する最大期待水準であ る。この目標については,正の偏差変数

d

+

を最小化する。

志向

+d--d+

=

M

L

P

i

(i

=

1

2

, ""',

m)

ここで、, 'xi; 番目のプログラムあるいはアクティビティの j番目の

DP

の達成度

MLP

i'

i

番目のプログラムあるいはアクティビティに対する最大期待達成 水準 (2)

DP

の達成目標に関するもの 各

DP

に対する最小期待達成水準である。この目標については,負の偏差変 数dーを最小化する。 Xuトー

d--d+

=

MLDP

i

;

(i

=

1, 2,

, m) (j

=

1, 2, ・''', n) ここで,

M

L

D

P

i

j

.

番目のプログラム/アクティビティの j番目の

DP

(t,こ対する最 小期待達成水準 (3) Lee, S M.. and Shim, J P,宮町0-Base Budgeting-Dealing with Confiicting Objectives," Long Range Planning, Vol l7..No 5, 1984, pp..103-110

(14)

-88ー 第60巻 第3号 (3) 予算枠の目標に関するもの m n ~ ~ C;

xij+d--d+

=

TB

ここで,

C

i 番目のプログラムの

DP

を達成するための単位当たりコスト

TB

利用可能な予算総額 この目標については,正の偏差変数

d

+

を最小化する。 550 次に,

ZBB

モデルにおいて,目標制約条件がこのように与えられると,目的 関数についての考慮をすればよい。目的関数は,予算における具体的問題に関 して,絶対順数を考え,適切な偏差変数を最小にすることである。 リーニシンのモデルで、は,公共部門における現実的な数値を使って,モデル を展開しているが, ここでは,問題をやや一般化するために 4つのプログラ ム/アクティピティを

1

, I!,

I

I

I

および

I

V

とするoX,J Xz, X3,およびh はそ れぞれプログラム/アクティビティ

I

,I!,

I

I

I

,および

I

V

に関連している。リー= シンのモテールにおける予算目標および絶対順数は次のとおりである。

P

1 最も重要な目標は費用支出を

4

0

0

0

0

0

0

0

ドルの予算限度に制限し,プ ログラム/アクティビティに対する最大達成期待水準を制限することで ある。

P

z

第2番目に重要な目標は各プログラム/アクティピティの第1番目の

DP

を達成することである。

P

3 第

3

番目に重要な目標はプログラム/アグティビティ

I

および

I

I

I

の第

2

番目の

DP

を達成することである。

P

4 .第

4

番目に重要な目標は,プログラム/アクティビティ

I

および

I

I

I

の第

3

番目の

DP

を達成することである。

P

S 第5番目に重要な目標は,プログラム/アクティピティ IIおよび

I

V

の第 2番目の

DP

を達成することである。 九 第

6

番目に重要な目標は,プログラム/アクティビティ凹の第

3

番目の

DP

を達成することである。

(15)

551 ゼロベース・バジェティングの最近の展開について

-89-P

7

7

番目に重要な目標は,プログラム/アグティビティ

I

I

および

I

V

の第 3番目の

DP

を達成することである。 九 : 第

8

番目に重要な目標は,プログラム/アクティビティ

I

および

I

I

I

の第

4

番目の

DP

を達成することである。

P

g

9

番目に重要な目標は,プログラム/アクティビティ

I

I

および

I

V

の第 4番目の

DP

を達成す町ることである。 このモデノレにおける実際の数値は次のように与えられる。プログラム/アク ティビティ

I

I

I

の最大期待達成水準を

1

25

とする。また,このプログラム/アク ティビティ

I

I

I

5

2

5

2

5

および

2

.

5

の達成水準目標に関連して

4

つの

DP

に分けるものとする。このプログラム/アクティビティ

I

I

I

に対する単位当たり アクティビティの資金必要額は

9

8

,000ドルとする。同様に,他のプログラム/ アクティビティについても数値が与えられると, リー=シンの目標計画法によ る全体的なZBBモデ〉レは次のようになる。

A

プログラムあるいはアクティピティの達成目標

1

~xli+dï-dt=62..5 4

2

~

X

2

;

+

d

i

-dt

=

1

8

4 3

L

:

X

3

;

d3-dt=

1

2

.

.

5

4 4.

L

:

X

4

;

d

"4

-dt

=

5

B

DP

の達成目標

5 x

l1

+d

s-dt

=

2

5

6

.

xI2+d

6-dt

=

1

2

.

5

7

.

X

I

3

d7-dt

=

1

2

.

5

8

xlads-dt

=

1

2

.

5

9 X21+d;-dt

=

9

(14) Ibid.pp.109-110明らかに間違いと思われるところは直しておいた。

(16)

-90ー 第60巻 第3号

C

10 X22+dio-d九

=3

1

1

X23+d日-d

五=3

12 X24

+

di2 -di2

= 3

13 X31十di3-di3ニ 5 14 X32

+

di4 -di4

=

2..5 15. X33+di5-di5

=

2..5 16. X34+d元-di6

=

2..5 17 X41 +d日-di7ニ 2 18 X42+ dis -dis

=

1 19.. X43十di9-di9

=

=

1 20.. X44+dゐ-dゐ =1 予算枠の目標 21 570,000Xl1

+

570,000X12

+

570,000X13

+

570,000x14

+

281,250%21 +281,250x22+281,250%23+ 281,250%24+98,000X31

+

98,000X32 +98,000%33 +98,000X34 +2,040,000X41 +2,040,000%42十2,040,000%43

+

2,040,000%44

+

d21 -dt1

=

40,000,000 目的関数 552

最 小 化

Z

=

P1(

dt+dむ)+九(ds+d9+ di3+ di7)+九(前十di4)+P4(d7 +dら)+P5(dゐ

+

dis)+ P6(di5)+ P7(d己十dゐ)+Ps(da+di6) +P9(di2+d20) ここで展開されている目標計画法は,むしろ概念的なフレームワークとして 考えた方がよいであろう。目標計画法は線型計画法の応用であり,多くの制約 条件のもとに意思決定変数と偏差変数の解を同時に求めようとするものであ る。しかも,近時においては,電子計算機を利用して数多くの意思決定変数と 偏差変数を処理することができる。リー=シンのそテ‘ルで、は 4つのプログラ ム/アクティピティと

4

つ の 努 力 水 準 で 合 計

1

6

DP

のみを取り扱ってい る。

ZBB

システムが目標計画法で表現しうることを意図しているのである。

(17)

553 ゼロベース・パジェティングの最近の展開について Qd A噌 , 今後, より複雑な意思決定環境のもとに目標計画法を展開してゆく必要があ る。すなわち ,

i

番目のプログラムのDPを達成するための単位当たりコストを 表す

c

をどのような形で表すかが会計的には問題となるであろう。さらに, リー=シンのモデルでは取り扱っていないが,多重目標聞の加重 (weighting) の問題がある。実際に,DP聞に加重を考えることが適切な場合があるであろ う。逆に,DP聞の加重の問題を考慮することが,意思決定環境をより一層明確 にすることに継がり,より現実的な目標計画法によるZBBが可能となる。 目標計画法によるZBBで最も重要な問題は r予算枠の目標」に関する(21)式 にある。リーニシンのモデルでは,

4

0

0

0

0

0

0

0

ドルの予算枠で、ある。この数値 が与えられ制約条件に入っているということは, 目標計画法による ZBBが始 まる前に,この数値が決定されていることを意味する。すなわち,サービス支 援活動に対していわゆる割増式予算方法がとられていないならば,全体的期間 計画のようなものが策定されていなければならない。つまり, 目標計画法によ るZBBでは,期間利益計画が設定された後でなければ,予算枠の目標に関する 制約条件式が他の制約条件式と同様には取り扱われないことになる。つまり, ZBBプロセスに先だっ期間利益計画が前提となっている。 V 中期予算とZBB 最近のZBBについてのもう lつの展開として,中期予算(1-3年〉と ZBB 予算を結びつけようとするグプタニシャストリの試みがある。グプタ=シャス トリは,契約産業(建設業等〉における予算編成プロセスを展開するために 中期予算と短期予算とを統合するための概念的フレームワークを提案してい る。 彼等の意図は, (1) ストカステイググなネットワーク・アプローチによる中期予算モデ、ルを

(5) Gupta, Y P and Shastri, T,“Integrating Short-and Medium Term Budgets: A Conceptual Framework,"Cost and Manage押1ent,May-June 1983, pp 18-25

(18)

-92- 第60巻 第3号 554 展開し, (2) 直接材料費,直接労務費および直接経費は,この中期予算モデルから導 き,

(

3

)

一般管理,研究開発,購買およびマーケティングのようなサービス支援 活動に対する全般的な資金配分は,この中期予算モデルから導き,個々の サービス支援活動に対する資金配分はZBBプロセスによることにある。 ここで,ストカスティックなネットワーグ・アプローチとは,

PERT(Program

E

v

a

l

u

a

t

i

o

n

a

n

d

Review T

e

c

h

n

i

q

u

e

)

C

P

M

(

C

r

i

t

i

c

a

lP

a

t

h

M

e

t

h

o

d

)

のような ネットワーグ技法に確率論を持ち込むものである。 このようなネットワーク技法は,大規模なプロジェクトを計画策定・統制す るための技法として開発されたものである。その意味で,グプタ=シャストリ がこのネットワーグ技法を主要な契約産業に適用しようとしたことは適切であ る。ネットワーク技法にも,単純なものから複雑なものまであるが,彼等は確 率を扱った, しかもモンテ・カルロ法を利用している。 通常の

PERT/

コスト技法の予算では, (1)アクティピティの期待所要時聞か らクリテイカル・パスが求められる, (2)当該アクティビティの所要時間に対し て,期待時間に対応したコストが与えられる, (3)すべてのアクティビティが, 最早可能開始時刻

(

t

h

ee

a

r

l

i

e

s

t

p

o

s

s

i

b

l

e

s

t

a

r

t

t

i

m

e

)

および最遅可能開始時刻

(

t

h

e

l

a

t

e

s

t

p

o

s

s

i

b

l

e

s

t

a

r

t

t

i

m

e

)

に開始されるということを仮定して

1

つの予 算が作成される。 グプタ=シャストリは,この

PERT/

コスト技法を一部修正して,中期予算 を作成する。この予算では,あるアクティピティの所要時間とこれに関連する コストに伴う不確実性を考慮する。当該プロジェクトの適時な完成に対するあ るアクティピティの相対的重要性は,それぞれのアクティビティに関連したリ スクを表し,モンテ・カノレロ法で決定しうる。 (16) 現在, PERTもCPMもほぼ同義語として使われているが,グプタ=シャストリは PERT/コスト技法として展開している。

(19)

555 ゼロベース・バジェティングの最近の展開について 可 ザn ?d グプタ=シャストリの中期予算モデルは,要約すると次のとおりである。ま ず,所要時間と累積コストの関係を示すアクティビティの費用関数を求め,ア グティピティの所要時間についての確率分布を決定し, この所要時間に基づい てクリテイカル・パスおよびこれに関連したアグティビティを決定する。次に, アクティビティの求められた所要時間に対応して,その費用関数からコストが 決定される。決定されたコストは,最初の費用分類の性質に応じて,当該アグ ティビティの所要時間に対応して分布している。このコスト分布に依存して当 該契約のための総費用曲線は,すべてのアグティビティが最早開始時刻と最遅 開始時刻に開始するものと仮定して決定される。モンテ・カノレロ法により所要 時間とコストを計算し,アクティピティがクリテイカルになる確率, グリテイ カル・インデッグスを求める。クリテイカル・インデックスの高いアグティビ ティは管理の対象となる。 グプタニシャストリは,以上のモンテ・カノレロ法を利用した確率を取り扱っ た

PERT/

コスト技法によって,

3

-5

年の中期予算を作成する。彼等が提案 するアプローチの長所は,サービス支援活動の水準が中期予算に照らして確立 され,結果として,短期および長期予算との関係が公式に連結されることにあ るとしている。また,直接材料費,直接労務費および直接経費が中期に対して 展開され,ここから,短期予算が導かれるとしている。 結局,グプタ=シャストリのアプローチは,次のようになる。第

u

,こ モン テ・カルロ法を利用した

3-5

年の中期予算を展開する。第

2

に,ここから, サーヒス支援コストのための短期予算が導かれる。第3に,中期予算によって 確立された制約内で,種々のサービス活動に資金を配分するのに

ZBB

プロセ スを適用する。 グプタ=シャストリにおいては,中期予算を設定しようとしている。それは, 契約(受注〉産業を対象としたものである。契約産業は特殊な業界であって, 契約によってプロジェクトを含む将来の事業活動が決定しうる。これによって, プロジェクトの実施とともに収益が実現する。また,受注とともに,将来の資 源、の配分問題が実際に発生する。したがって,たとえば3年先のプロジェクト

(20)

-94- 第60巻 第3号 556 に対しても予算を設定しうるわけである。その意味で,中期,長期の計画策定 の行いやすい産業である。このような産業での問題を一般化することはできな し、。 しかし,中期予算と短期予算あるいは

ZBB

を結びつけようとする試みは評 価すべきである。このような産業においては,実施すべきプロジェクトが明ら かになれば,サービス支援活動についても中期予算モデルが設定しうるであろ うし,また,このことからサービス支援活動についての短期予算すなわち

ZBB

による予算設定もしうるであろう。 いずれにしても,彼等のモデルは,プロジェクトの時間的および原価的管理 が行いうる,すなわち

PERT/

コスト的管理が行いうる環境にある。このプロ ジェグトの時間的あるいは原価的管理をそンテ・カノレロ法等によって行おうと すれば,同時に意思決定環境も明らかになり,サービス支援活動に対する中期 および短期予算の設定も容易に行いうることになる。 短期予算あるいは

ZBB

と中期の予算との具体的な統合の実際的成功は困雄 な点が多いだけに,グプタ=シャストリの試みは評価されるのである。しかし, ストカスティックなネットワーク技法については,

CPM

による,たとえば,特 急所要時間における原価問題等実際に行いうるいろいろな可能性がある。した がって,このような可能性を実現することによって,意思決定環境を明確にし, よりよい中期予算および短期予算あるいは

ZBB

による予算が設定され,統合 されるであろう。 グプタ=シャストリの試みは,

ZBB

が実際に企業組織に浸透したあらわれで ある。

V

I

むすびにかえて 本稿では,

ZBB

について,

PPBS

と関連さ!せながら,特に期間利益計画との 関係について論じてきた。それは,

1

つには,

ZBB

PPBS

を継承したもので あると考えられるからであり,

2

つには,

ZBB

の位置づけについて期間利益計 画との関係を明確にしなければならないからである。

ZBB

が企業組織の経営管

(21)

557 ゼロベース・パジェティングの最近の展開について -95-理の全体的なフレームワークの中で論じるのでなければ,

ZBB

それ自体が危う くなるからである。特に,期間利益計画を含む全体的な管理会計システムのフ レームワークの中に,

ZBB

を位置づけることが必要である。これにより,

ZBB

の理論的,実践的精轍化が可能となるであろう。さらに,計画予算と期間利益 との関連が,予算および計画概念それ自体の検討を含めて,今後の研究課題と なるであろう。 経営管理手法としての

ZBB

は,多くの側面を持った被合的な経営管理手法 である。本稿では, 目標計画法および

PERT/

コスト手法と

ZBB

との関連を とりあげた。目標計画法は,その分析法が

ZBB

における予算編成プロセスに対 応している点に着目したものである。目標計画法では,現実的な解をえるため に意思決定環境を明瞭にすることを要求する。企業組織において, 目標計画法 を実際に適用するためには, このことが必要である。目標計画法の適用におい て必要なことは,その前提として,期間利益計画が策定されていることである。

PERT/

コスト法では,受注産業における中期予算と

ZBB

との関連が強調 された。この

PERT/

コスト法は,

CPM

の概念をも導入することによって,更 に現実的な手法となるであろう。

ZBB

は資源配分について経済分析を行うもの であるから,今後ますますこのような経営科学における数学的手法と結びつい て行くであろう。

ZBB

は,その複合的な経営管理手法としての性格により,多くの学問分野か らの貢献をうけ,今後企業組織に定着するであろう。 (17) 次の文献は,在庫管理プロセスと ZBBを結ひ、つけようとしたものである。

Shastri, T, Gupta, Y and Coffy, R.

G

,“Application of Modified ZBB and Inven -tory Control System in Small Merchandising Businesses,"Engineering Cost吉and

参照

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