１．地籍調査の歴史 わが国における地籍調査の歴史は古く、それぞれに調査目的の差異はみられますが、歴史上特筆される統一 的に行われた土地調査は、これまででおおむね3 期に大別することができます。 現在、国土調査法（昭和26 年法律第 180 号）に基づいて実施されている地籍調査事業は、いわば第４期の 歴史的事業といえます。 ２．地籍調査の必要性と目的 （1）わが国の現存地籍の多くは、明治年間に全国的に行われた 地租改正事業に伴う土地調査の成果を改良制度化したも のです。平成の現代においても、登記所（法務局）に備えら れている地図の約半分は、その時に作られた地図(公図)を基 にしており、土地の境界が不明確であったり、測量も不正確 であったりする場合もあるのが実態です。したがって、土地 行政の円滑化を図るためには、それらに内包する不備欠陥を 早急に補正する必要が生じているのです。 （2）これらの必要性を充足させるべく、国土調査法が制定され ました。法律の期する調査の目的は、あらゆる生産等の基礎 的要素である土地の所有・利用関係を明らかすることであり、 それによって地籍の明確化を図り、土地行政諸般の基礎資料 とするとともに、公租・公課等国民負担の公平化、土地に関 する紛争防止、その他多目的に調査成果を活用することを意 図しています。 ・広義の目的（法1 条 前段）； 国土の開発、保全、利用のための 基礎資料の作成 ・狭義の目的（法1 条 後段）；地籍の明確化
地籍調査の意義と役割について
公 図 (字限図) 地 籍 図 第１期：大化の改新時の班田収授の土地調査 第２期：天正文禄年間における太閤検地 第３期：明治維新における地租改正３．地籍調査の意義 （1） 法律上の定義（法 2 条 5 項） 地籍調査とは、毎筆の土地について、その所有者、地番および地目の調査並びに境界、地積に関する測量 を行い、その成果を地図と簿冊に取りまとめ作成するものです。 地 図 地 籍 図 簿 冊 地 籍 簿 （2） 地籍とは何か 地籍とは、特定一筆の土地の特徴及び実態を記録したもので、人の身分関係を記録する戸籍に対応するも のです。 （人は戸籍、土地は地籍！） 土地の位置 所在、地番 土地の状況 地目、地積 所有者の表示 用益、担保等の権利関係 （3） 地籍調査の基本原則 … 「修正主義」。 国土調査法に基づく地籍調査は、地籍を新たに創設する（創設主義）ことではなく、原則として既存の地 籍を修正する思想で体系づけられています（修正主義）。（法20 条） 幾多の不備欠陥を内包している現存地籍も、沿革的には不動産関係諸法律に基づくものであるため、何人 といえども法律上の手続きによらなければ、これを廃止、訂正することはできないためです。 ４．地籍調査の流れと作業内容 調査の基本的な流れは、下記のとおり行われます。 ①地籍調査の実施計画をつくります ②住民への地元説明会を開催します ・調査を実施しようとする市町村等は、関係機関 ・調査を行う地域の住民の方々に集まっていただ との連絡や調整,打合せを行い、いつ、どの地域 き、調査の内容やその必要性について、説明を を調査するか等の計画を作ります。 行い、立会いなど調査への協力をお願いします。 ③境界の確認をします（一筆地調査） ・地籍調査では、土地所有者の方々に自分の土地の範囲を明確にしてもらい ます。 ・公図などをもとに作成した資料を参考に、調査担当者が現地を訪ね、境界 をはさんだ土地所有者の方々に、双方の合意の上で土地の境界を確認して もらいます。また、土地の所有者、地番、地目等も併せて調査します。 地 籍 権利者の表示事項 土地の物理的状況 成 果 みんなで一度、自分達 の土地を確認してみま しょう！！
・このようにして確認された境界に、「杭」を打ちます。 ・この杭は、将来にわたって各筆ごとの土地の境界 （筆界）を示す大切な杭となります。 ＊ 地籍調査においては、この一筆地調査が大変重要となります。 ④確認していただいた境界の測量をします（地籍測量） ・測量の基礎となる図根点（基準点）を設置し、段階を踏んで各筆ごとの 地球上の位置を決める測量を行います。 【現代の測量技術】 …トータルステーション (トランシットと光波測距儀が一体化した機器) …ＧＰＳ測量 (人工衛星を利用した測量) ・各筆ごとの位置が決まったら、その結果を もとに正確な地図（地籍図）を作り、面積 を測ります。 ⑤地籍簿をつくります ・一筆地調査と地籍測量の結果をまとめ、 地籍簿を作成します。 ⑥地籍調査の結果を確認していただきます（閲覧） ・ 作成された地籍図と地籍簿は、住民の方々に閲覧していただき、 確認を行います。 ・閲覧場所は市町村役場等などで 20 日間行われます。 ・万が一、結果に誤り等があった 場合には、申し出てください。 ・ここで確認された地籍調査の結 果が、最終的な地籍調査の成果 となります。 ｢杭｣を打って、｢悔 い｣を残さず！！ これで安心。 調査前と後でこのように変わりま した・・・・。
⑦地籍調査成果の認証を行い、その後に登記所へ送付します。そして成果の活用がはじまります。 ・所定の閲覧手続終了後、成果を都道府県等の認証権者へ送付し、 認証の請求をします。 ・｢認証｣とは、その調査成果が適正であることを認め、これを公 に証明することです。 （都道府県知事が認証しますが、認証に先立ち国土交通大臣の承 認を要することとされています。これは、認証後登記所に成果の 写しの送付がなされ、それに基づいて登記所において登記簿の記 載を改め、地籍図を登記所地図として備え付けることとなるため、厳重な点検検査を重ね、調査成果の適格 性を確保するため行われます。） ・認証後速やかに成果の写しは登記所に送付されます。 ・登記所では、地籍簿をもとに土地登記簿を修正し、それまで登記所にあ った地図の代わりに、地籍図を登記所備え付けの正式な地図（不動産登 記法第14 条第 1 項地図）とします。 ・以後登記所では、地籍調査の成果を不動産登記の資料として活用します。 ・調査成果は市町村において保管並びに維持管理されるとともに、一般の 方への閲覧にも供されます。また、その成果は行政の各方面において多 目的な利用、活用が図られることとなります。 ５．地籍調査事業の実施主体並びに経費負担 （1） 実施主体 （法 2 条、施行令 1 条） ① 都道府県 ② 市町村 ③土地改良区その他政令で定める者 ＊県内においては、全て市町村が実施主体として調査を行っています。 （2） 経費の負担 （法９条の２、施行令５条の３） 地籍調査に要する経費（法定事業費…国が定める基準により算定）について、下記区分により負担する ことになります。（住民負担はありません。） 【市町村が事業実施主体の場合】 国 … １／２ 都道府県 … １／４ 市町村 … １／４ ＊なお、都道府県と市町村負担分については、特別交付税措置があります。 ６．地籍調査の効果 地籍調査の成果は、土地所有者の権利関係を保護する不動産登記制度に寄与することになるとともに、実 施地域における土地の実態が明らかにされ、土地に関するあらゆる施策の基礎資料として広範囲にわたって 活用されることになります。 また、特に近年、地理情報システム（ＧＩＳ）の基図データとしても、大いに重要性が高まってきていま す。
