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平成28年度東京女子医科大学医学部・基礎系教室研究発表会

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Academic year: 2021

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1.BCL-2 ファミリーを標的とした小細胞肺癌治療 (病理学(第二)) 山内 茜   小細胞肺癌は肺癌全体の約 15~20% を占める非常に 悪性度の高い癌である.化学療法や放射線療法に対する 感受性が高いが,多くの場合再発が問題となっており, 新たな治療法の開発が待たれている.興味深いことに, 小細胞肺癌はアポトーシス抑制因子 BCL-2/BCL-XLの阻 害薬 ABT-263 に対して高い感受性を示すことが報告さ れ,その臨床応用に期待が集まった.しかしながら, ABT-263 の臨床試験の結果はその有効性を支持するも のではなく,併用治療の必要性を示すものであった.本 研究では,ABT-263 耐性の克服を目指し,ABT-263 のア ポトーシス活性を促進可能な薬剤のスクリーニングを 行った.1069 種類の薬剤を含む 2 種類の薬剤ライブラ リーを用いたスクリーニングの結果,doxorubicin を含 むアントラサイクリン系薬剤および,dinaciclib を含む CDK 阻害薬を同定した.実際に,doxorubicin および dinaciclib は,ABT-263 との相乗作用により,ABT-263 耐性を示す複数の小細胞肺癌細胞株のアポトーシスを効 率的に誘導した.それらの薬剤の主要な作用標的は, ABT-263 によって阻害されない,アポトーシス抑制因子 MCL-1 であり,その発現を転写レベルで抑制することが 判明した.本発表では BCL-2 ファミリーを標的とした新 たな小細胞肺癌の治療戦略について議論したい.

2.Searching for interactive molecules using the Yeast Two-Hybrid system

(DepartmentofPharmacology)

 TutomuOMORI   The Yeast Two-Hybrid (Y2H) system is one of the methodsforanalyzingprotein-proteininteractions.The proteinofinterestiscalledasthebait.Thefusionpro-tein,suchashuntedunknownprotein,iscalledasthe prey.Ifthebaitandthepreyhaveintermolecularinter-action,theytranscriptseveralreportergenesandresult ingrowththeyeastontheselectivemediums.Based uponthoseresults,weidentifypositive,negative,and false-positive clones. While the Y2H can successfully recognizetrueprotein-proteinbindings,italsohuntsa numberoffalse-positives.Thedistinctionbetweenposi-tives and false-posinumberoffalse-positives.Thedistinctionbetweenposi-tives has been the toughest chal-lengeinthissystem.Thankstoindividualresearchers and many manufactures, protocols and commercial productsareeasilyavailablenowadays.Notonlyfollow-ingthoseprotocols,butwesimultaneouslyhavetried some verification and interlaced various methods. Thoseprocessescouldbemiscellaneousandsometimes lead the screenings to devastating end. However, a major reason we keep try screening is that the Y2H systemisamixtureofgoodandbadandthereisalways apossibilitytofindanew,unknownbindingpartner. Althoughthesystemisnotperfect,wehaveusedthis strategyastorevealthemolecularmechanismsofcan-cermetastasisandsofar.Severalpapersarealready published and some are still working. Considering a timeandeffort,theY2Hsystemmaybedifficultasa 学会・研究会抄録

平成 28 年度東京女子医科大学医学部・基礎系教室研究発表会

日 時:平成 28 年 12 月 22 日(木)13:00~17:00 場 所:東京女子医科大学 臨床講堂Ⅰ 主 催:基礎医学系教授会 1.BCL-2 ファミリーを標的とした小細胞肺癌治療 (病理学(第二))山内 茜 2.YeastTwo-Hybrid を用いた相互作用分子の探索 (薬理学)大森 勉 3.網膜傷害後の Müller グリアの細胞周期進入と DNA 損傷応答 (解剖学)蒋池かおり 4.内科共通クラークシップ導入とその評価の検討 (医学教育学)村㟢かがり 5.わが国における青年の携帯電話利用状況と脳腫瘍罹患率との関連 (衛生学公衆衛生学(二))佐藤康仁 6.法医学での DNA 解析による個人識別に利用可能な SNPs の探索 (法医学)町田光世 7.接触型シグナル伝達のもたらす位置情報が心外膜・冠動脈前駆体の心臓への移動を制御する  (生物学)石井泰雄 8.侵害刺激強度による逃避行動の最適化とその神経メカニズム (生理学(第二))若林沙耶香

東女医大誌 第 87 巻 第 1・2号頁 45~47 平成 29 年4月

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firstfoothold,butitwouldbegreatifanyonewillbe interestedinit. 3.網膜傷害後の Müller グリアの細胞周期進入と DNA 損傷応答 (1解剖学,2衛生学公衆衛生学(第一))  蒋池かおり1 齋藤文典1・蒋池勇太2・藤枝弘樹1   魚類などの下等脊椎動物では,網膜傷害時に網膜のグ リア細胞である Müller グリア(MG)が脱分化して増殖 し,新しい神経細胞に再分化して網膜を再生する.哺乳 類でも MG の同様な性質は報告されているが,網膜の再 生能は極めて乏しく,そのメカニズムは明らかになって いない.そこで我々は,網膜が再生する魚類(ゼブラ フィッシュ)と網膜が再生しない哺乳類(ラット,マウ ス)を比較することで,哺乳類網膜の再生を負に制御す る要因を明らかにすることを目的とし,本研究を行った. 成体 Wistar ラット,C57BL/6 マウス,およびゼブラ フィッシュに視細胞特異的にアポトーシスを誘導する DNA のアルキル化剤,N-methyl-N-nitrosourea(MNU) を投与して視細胞変性を誘導し,細胞周期への進入と DNA 損傷応答について解析した.その結果,ラットの MG は細胞周期へ進入し,同時に DNA 損傷応答(γ-H2A. X,p53,p21 の発現)を呈した後に細胞死を起こし減少 した.一方マウスでは MG の細胞周期への進入は認めら れなかった.ゼブラフィッシュでは盛んな MG の増殖が 認められ,DNA 損傷応答は認められなかった.以上の 結果から,哺乳類網膜では網膜の変性後,ラットのよう に MG が細胞周期へ進入するものの DNA 損傷応答を呈 する,もしくはマウスのように細胞周期に進入しないた めに網膜再生が負に制御されている可能性が示唆された. 4.内科共通クラークシップ導入とその評価の検討 (医学教育学) 村㟢かがり   〔緒言〕クリニカルクラークシップでは,臨床参加型実 習として,質の高い,標準化された実習内容が求められ る.しかしながら,大学病院を中心とした実習では,診 療科による専門性にともなう学習内容の偏りが見られて いた.今回,本学では新たな臨床実習カリキュラムを開 始するにあたり,内科必修臨床実習として,診療科の専 門性に関係なく,内科の基本的な事項を学ぶことを目的 とした学習単位を設けた.共通 e-portfolio に学生が記載 した内容を解析と miniCEX による評価を実施し,実習 内容の標準化の推進を行っている.〔対象と方法〕平成 27 年度,5 年生 106 名を対象に,4 週間を 1 単位として 順に内科必修(I)と(II)の 2 単位,計 8 週間実施し た.内科必修実習中に毎週記録された,e-portfolio の学 習記録テキストマイニング手法を用いて解析し,4 週間 毎に二回実施された miniCEX の結果を合わせて評価し た.〔結果〕共通到達目標 96 項目のうち,e-portfolio に 学生が学んだと記載した項目数は,平均 44.7 個(最大 62 項目,最小 37 項目)であり,担当科毎に差異が見られ た.実際の知識,技能,態度 20 項目をリスト化し,指導 医による実習中の観察と Portfolio 評価を実施し,併せて miniCEX も行った.いずれの評価も,内科必修(I)と (II)を比較すると評価スコアがおおむね改善しており, 学生,教員の満足度も改善した.〔結論〕クリニカルク ラークシップでの内科必修臨床実習は,学生全員が一定 の到達目標を達成できるよう,内科必修カリキュラムを 導入した.e-portfolio を用いて臨床実習記録を行うこと と miniCEX による評価を実施することにより教育指導 上の問題をより早く把握することが可能となり,結果は 実習終了後直ちに共有され,問題解決のためのワーク ショップが実施された.e-portfolio の導入は,実践され た教育プログラムの改善に対しても有用であると考えら れた. 5.わが国における青年の携帯電話利用状況と脳腫瘍 罹患率との関連 (衛生学公衆衛生学(第二)) 佐藤康仁   携帯電話利用の健康影響を明らかにする疫学研究は現 在世界的に進められているところである.本研究は,若 い世代(10 歳代~30 歳代)に注目して,携帯電話利用状 況と脳腫瘍罹患率の関連について分析を実施した.脳腫 瘍の罹患データは,地域がん登録全国推計によるがん罹 患データを用いた.対象期間は,わが国において携帯電 話の普及が進んだ 1993~2010 年とした.携帯電話の利用 状況データは,本講座が構築した携帯電話利用のコホー トからデータを抽出した.解析は男女別,年齢 10 歳階級 別に行った.初めに脳腫瘍の罹患データについて折れ線 回帰分析を実施した.次にコホートデータより携帯電話 累積使用時間 1640 時間以上の者の割合を算出した.続い て携帯電話の累積使用時間が 1640 時間以上の者におい て,脳腫瘍の相対危険が 1.4~12.0 に変化した場合の期待 罹患率がどのように変化するのかシミュレーションを 行った.折れ線回帰分析の結果,20 歳代の APC(Annual PercentChange)は,男性 3.9,女性 12.3(2002~10 年) となり有意差が見られた.30 歳代の APC は,男性 2.7, 女性 3.0 となり有意差が見られた.シミュレーションの 結果,携帯電話累積使用時間 1640 時間以上において相対 危険が 1.4 である場合の罹患率の上昇はわずかであった. 携帯電話の利用で罹患率の上昇を説明することはできな かった. ―46― 46

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6.法医学での DNA 解析による個人識別に利用可能な SNPs の探索 (法医学) 町田光世・木林和彦   法医学では一般に shorttandemrepeat(STR)を用い て個人識別が行われているが,環境への曝露等によって DNA の変性が生じると STR の解析が困難となることが ある.近年,single nucleotide polymorphisms(SNPs) 解析が法医学分野で注目されており,変性 DNA につい て SNPs 解析が可能かを調べる必要がある.本研究では, DNA 試料が変性した後においても解析可能な SNPs に ついて調べた.  変性 DNA で解析可能な SNPs を特定するために,(1) これまで報告されている SNPs を用いて,(2)amplified fragmentlengthpolymorphism(AFLP)法により,SNPs 解析を行った.なお,本研究は本学遺伝子解析研究に関 する倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 250).変性 DNA における検出可能な SNPs 数は,変性 時間が長くなるに従い減少し,rs1031825 については検 出率が最も低い傾向を示した.また,AFLP 解析の結果, 変性・未変性試料に共通に見られるバンドが 9 本検出さ れ,同バンドから抽出した DNA の塩基配列中には SNPs22 個が存在し,そのうちマイナー対立遺伝子頻度 (MAF)0.01 以上の SNPs は 3 個同定された.以上のこ とから,SNPs には変性の影響の受けやすさに違いがあ り,MAF 0.01 以上の SNPs3 個は,環境への曝露等で DNA が変性した場合においても,個人識別に利用でき る可能性があると考えられた. 7.接触型シグナル伝達のもたらす位置情報が心外膜・ 冠動脈前駆体の心臓への移動を制御する (生物学) 石井泰雄   心臓の心外膜および冠動脈は,胚発生の過程で,拍動 をすでに開始した心臓に新たな細胞集団が付け加わるこ とによって生じる.Proepicardium(PE)と呼ばれるこ の中胚葉性の細胞集団は,囲心腔内をルーピング期の心 臓に向かって成長する突起として,肝臓の近傍に現れる. PE はその後,心房と心室の接合部(atrioventricular junction:AVJ)に接着し,心臓全体を包み込み,心外 膜および冠動脈を形成する.ニワトリ胚やマウス胚に対 して PE の心臓への接着を阻害するような実験操作を施 すと,心外膜と冠動脈の欠損により胚は発生の途中で死 亡する.このように PE の接着は心臓の正常な発生およ び胚の生存に不可欠であるが,この接着が AVJ でのみ起 こるしくみは現時点では不明である.われわれはマイク ロアレイ法を用いた探索を行い,膜結合型シグナル分子 EphB3 がニワトリ胚心臓の AVJ で高レベルに発現する ことを見いだした.加えて EphB3 遺伝子をニワトリ胚心 臓の広い範囲で強制発現させたところ,PE の接着部位 に異常が認められた.これらの結果は,Eph を介した接 触型シグナル伝達が PE 細胞の心臓への移動に関与して いる可能性を示している. 8.侵害刺激強度による逃避行動の最適化とその神経 メカニズム (1生理学(第二),2東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻,3MRC Laboratory of Molecular Biology)  若林沙耶香1・小田茂和2,3 末廣勇司1・飯野雄一2・三谷昌平1   「感覚統合」は,中枢神経が感覚情報を評価し,適切に 行動するのに必要な生命機能である.例えば,好ましく ない感覚では,動物は刺激の種類や強度,状況に応じて, 反射や後退等の回避手段を選択する.感覚統合の神経回 路の理解は重要だが,高等生物では行動解析や神経活動 の計測が主のため,回路構築の分子機序の解明は遅れて いる.そこで我々は,「侵害刺激からの逃避行動を規定す る神経回路発生の分子機序の解明」を目的とし,単純な モデル生物の線虫 C. elegans を用いた遺伝子スクリーニ ングを行ってきた.以下の 4 点の利点から,線虫は感覚 統合を分子,細胞,回路,個体,行動の全階層で迅速に 解明できる,優れたモデル系であると考えた.①全神経 の細胞系譜とシナプスがデータベース化された,唯一の モデル生物.②全神経が 302 個,シナプスが約 7000 個と シンプル.③世代交代が早い.遺伝学的解析が容易.④ 所属研究室はナショナルバイオリソースプロジェクト 「線虫」の拠点であり,世界最大規模の 7506 種類の変異 体が利用可能.これまでに,回路発生への関与が期待さ れる転写因子をスクリーニングし,65 種類の逃避に関わ る候補を得てきた.候補の多くは生物種間で保存され, 哺乳類の中枢性侵害受容路で発現する.今後の研究によ り,生物種に共通する感覚統合の回路構築機序の理解へ の発展が期待される.        ―47― 47

参照

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