総 説 東女医大誌 91(1): 92-101, 2021.2 第 86 回東京女子医科大学学会総会 シンポジウム「ロボット手術の最前線」
本邦における産婦人科領域でのロボット支援下手術の現状
東京女子医科大学産婦人科 フナモト ヒロシ 舟本 寛 (受理 2020 年 10 月 14 日)The 86th Annual Meeting of the Society of Tokyo Women s Medical University s Symposium on Up-to-Date Robotic Surgery
Current Status of Robotic Surgery in Gynecology in Japan
Hiroshi Funamoto
Department of Obstetrics and Gynecology, Tokyo Women s Medical University, Tokyo, Japan
Robot-assisted surgery has high-resolution 3D stereoscopic vision and a function to prevent camera and forceps from shaking. Furthermore, as the forceps can be operated with a high degree of freedom utilizing the multi-joint function, it is effective for fine surgery such as lymph node dissection for gynecologic malignancies. Currently, in the gynecologic field, total hysterectomy for benign diseases such as uterine myoma and early endometrial can-cer, and sacral colpopexy for pelvic organ prolapse are covered by social insurance. When performing these op-erations, the facility must be registered in compliance with the guidelines of the Japanese Society of Obstetrics and Gynecology. In the future, the indications are expected to be expanded by utilizing the aforementioned char-acteristics and applied to highly difficult surgeries such as radical hysterectomy for cervical cancer and para-aortic lymphadenectomy for endometrial cancer. However, there are also unique complications that are not prevalent during laparotomy and laparoscopic surgery. In order to safely perform robot-assisted surgery, It is necessary to have sufficient training regularly.
Keywords: robot-assisted surgery, gynecologic diseases
はじめに ロボット支援下手術は 2012 年,本邦において前立 腺癌に対して初めて保険収載され,これにより泌尿 器科領域で爆発的な普及が起こった.2018 年 4 月の 診療報酬改定では,新たに 12 術式が保険適応となっ たが,婦人科領域では子宮筋腫などの良性疾患と子 宮体癌に対する 2 つの術式が保険収載された.さら に 2020 年 4 月からは骨盤臓器脱(pelvic organ pro-lapse:POP)に対するロボット支援下仙骨腟固定術 (robot-assisted sacrocolpopexy:RSC)も加わり,今 後は婦人科疾患に対するロボット支援下手術はます ます増えてくるものと思われる.
Corresponding Author: 舟本 寛 〒162―8666 東京都新宿区河田町 8―1 東京女子医科大学産婦人科 [email protected]. or.jp
doi: 10.24488/jtwmu.91.1_92
Copyright Ⓒ 2021 Society of Tokyo Women s Medical University. This is an open access article distributed under the terms of Creative Commons Attribution License (CC BY), which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original source is properly credited.
Figure 1. Number of cases in each field of robot-assisted surgery worldwide.
In 2010, gynecological robot-assisted surgery overtook urological surgery in terms of the number of cases.
Courtesy of Intuitive Surgical, Inc.
本稿では婦人科領域におけるロボット支援下手術 の歴史,現在保険で行われている手術の現状,さら に今後実施されるであろう術式の展望について述べ みたい. ロボット(da Vinci)支援下手術の歴史 手 術 支 援 ロ ボ ッ ト da Vinci(Intuitive Surgical Inc.)は 1999 年に発売され,2000 年 7 月に米国食品 医療局(Food and Drug Administration:FDA)に より認可された.当初は心臓外科領域を目的として 開発されたが,一般的に広く行われるようになった のは 2005 年に泌尿器科において FDA に認可され てからである.前立腺癌に対するロボット手術はこ れまでの開腹術や腹腔鏡手術と比べると出血,合併 症,予後などすべての面で優れており,数年の間に ゴールドスタンダードの術式となった.婦人科領域 においては FDA の承認は泌尿器科より遅れたが, 良性疾患特に,子宮摘出術と子宮筋腫核出術に対す るロボット手術が 2005 年に FDA の承認を得てか らは1) 急速に広まり,2010 年には婦人科手術は泌尿 器科手術を追い抜くまでになった(Figure 1).さら に子宮体癌などの婦人科悪性腫瘍に対するニーズも 高まり2)3) ,2009 年ごろより米国においては婦人科悪 性腫瘍に対する子宮全摘術の 80% 以上はロボット 支援下に行われている.
da Vinci Surgical System は 1999 年に da Vinci ス タンダードが米国で最初に発売され(本邦では未承 認),現在までに何度かのモデルチェンジを行ってい る.2006 年に da Vinci S,2009 年に da Vinci Si,2014
年に da Vinci Xi が発売され,さらに 2018 年には da Vinci X が Xi の廉価版として承認された.現在,世 界でもっとも普及している Xi はラーニングコス ト,触覚のなさなどの欠点はあるものの,手術用ロ ボットとしては非常に完成度が高いといえる. 2019 年 12 月末で,世界における da Vinci の普及 状況は北米で 3,531 台,欧州で 977 台,アジアで 780 台 で あ り,世 界 中 で da Vinci Surgical System は 5,582 台導入されている(Figure 2).さらに,手術件 数は全世界で年間 100 万件を超えている. 本邦においては 2012 年,前立腺癌に対するロボッ ト支援下手術が保険収載され,その後,腎部分切除 術なども加わり,泌尿器科領域でロボット手術は眼 を見張る勢いで普及を続けている.婦人科領域にお いては 2009 年 3 月,東京医科大学において本邦初の ロボット支援下子宮全摘術(robot-assisted total
hys-terectomy:RAH)が実施されたが4) ,その後は画期 的な普及はなく,一部の施設で試験的に行われてい るに過ぎなかった. しかし,2018 年 4 月の診療報酬の改定により一般 外科,胸部外科,泌尿器科,産婦人科の 12 術式が保 険収載された.婦人科領域では子宮筋腫などの良性 疾患に対するロボット支援下腹腔鏡下子宮全摘術と 早期子宮体癌に対するロボット支援下子宮悪性腫瘍 手術(子宮体癌に限る)の 2 つの術式が保険適応と なり,多くの施設で実施されるようになった.さら に 2020 年 4 月からは POP に対する RSC も加わっ た.
Figure 2. The spread of da Vinci Surgical system worldwide (2019).
5,582 da Vinci Surgical systems have been installed worldwide. Of these, there are 3,531 in North America, 977 in Europe, 780 in Asia, and 294 in other regions.
Courtesy of Intuitive Surgical, Inc.
Figure 3. The frequency of robot-assisted hysterectomy in Japan.
With respect to the robot-assisted hysterectomy, benign diseases increased by 40 times and malignant diseases increased by 4 times between 2017 and 2019.
Courtesy of Intuitive Surgical, Inc.
2018 年 保 険 収 載 以 降,子 宮 全 摘 術 に 関 し て は (Figure 3),2019 年には良性において 2017 年の 40 倍,悪性においては 4 倍に増加しており,2,000 件以 上実施されている.東京女子医科大学産婦人科にお いて も 2018 年 9 月 よ り RAH を 開 始 し,2020 年 8 月までに 105 例に実施している. ロボット支援下手術の特徴 腹腔鏡の最大の特性は拡大視野で深部到達能に優 れ,的確な剝離層での手術が可能であり,従来の開 腹術では認識できなかったような細い血管や神経な どの構造を確認できたことである.そのため骨盤深 部の操作や大血管周囲の繊細かつ正確な操作が必要 な婦人科手術に適している.ロボット支援下手術で は高解像度 3D 画面上で,実際に腹腔内に入ったよ うな感覚での操作となるため,腹腔鏡手術よりさら に血管や神経がよく見え,その威力を発揮すること
Table 1. Target of health insurance, own expense, and advanced medicine for the surgery of gynecologi-cal diseases In Japan.
Laparotomy Laparoscopy Robot Hysterectomy for Benign uterine disease Health insurance Health insurance Health insurance Endometrial Ca
PAND (−) Health insurance Health insurance*1 Health insurance*1 PAND (+) Health insurance Health insurance*2 Own expense Cervical Ca Health insurance Health insurance*3 Advanced medicine*4 Ovarian Ca Health insurance Own expense Own expense POP Health insurance Health insurance Health insurance Ca, cancer; PAND, para-aortic lymph node dissection; POP, pelvic organ prolapse.
*1: Low risk group of endometrial cancer stage Ia.
*2: Endometrial cancer stage Ia with type II form (papillary serous Ca, clear cell Ca et.). *3: The indications for laparoscopic radical hysterectomy are stage Ia2 Ib1 and IIa1.
*4: Robotic-assisted radical hysterectomy is indicated for squamous cell carcinoma of stage Ib to IIb and adeno-carcinoma of stage Ia2 to IIb.
になり,解剖が理解しやすいという点では教育面で も非常に優れている.さらにロボット鉗子は多関節 を有し,540 度までの広い可動域を持ち,術者の指の 動きに同期した繊細な腹腔内操作が可能である.ま た手振れ防止機構により精微で安全な操作が可能 で,腹腔鏡手術より小さなワーキングスペースでも ストレスのない操作性が得られる.腹腔鏡手術では カメラ操作,術野展開は助手によって行われるが, ロボット支援下手術では術者自身がカメラを操作す るため,慣れとトレーニングが必要である.しかし, 近接視と遠隔視を頻回に切り替えて全体像を把握 し,3rd アームをうまく使って,臓器を牽引・圧排す ることにより,良い術野を創ることができ,安全か つ精微で高度な手術が可能になる. 一方,da Vinci 専用鉗子には触覚がなく,把持力が 強いため,臓器の把持・牽引で意図しない組織の損 傷挫滅を引き起こすことがある.特に,クラッチ操 作を頻回に行うことによって,ロボットアームを見 失い,術野外でブラインド操作を行っていることが ある.鉗子が視野から消えたときは,視野外に十分 に注意を払うことが重要である. 婦人科領域で行われているロボット支援下手術 Table 1 に本邦における保険,自費,先進医療で行 われている婦人科手術の対象を示す.現在,保険適 応となっているロボット支援手術は 2018 年 4 月に 保険収載された良性子宮疾患に対する子宮摘出術, 傍大動脈リンパ節(paraortic lymph node:PAN)郭 清術の必要のない初期子宮体癌手術(Ia 期,type I), 2020 年 4 月 に 保 険 収 載 さ れ た RSC の 3 術 式 で あ る.これらの手術の導入・実施にあたっては,日本 産科婦人科学会の指針(Table 2)5) を遵守し,施設登 録を行わなければならない.そうでなければ保険請 求できないことを十分に注意する必要がある. 1.良性疾患に対する RAH 腹腔鏡下腟式子宮全摘術(内視鏡手術用支援機器 を用いる場合)の施設基準を Table 36) に示す. 重要なのは腹腔鏡下腟式子宮全摘術を 10 例以上 実施している施設で,当該手術を 5 例以上行った術 者が常勤していることである.「産婦人科内視鏡手術 ガイドライン 2019 年版」7) における CQ14「子宮筋腫 に対して,ロボット支援下単純子宮全摘術は推奨さ れるか?」のステートメントは「子宮筋腫に対する ロボット支援下単純子宮全摘術は,腹腔鏡下単純子 宮全摘術とならぶ選択肢として推奨する」であり, RAH(Figure 4)は腹腔鏡手術と比較して,技術的 に問題なく,入院期間は同等あるいは短く,術中お よび術後合併症の発生率に差はないと明記されてい る.さらに適応に関してはその解説の中で“腹腔鏡 下単純子宮全摘術と同様に,腟式手術を適応できな い子宮筋腫が適応となるが,術者や施設の裁量に委 ねられる”と示されている7) .大きな筋腫や子宮内膜 症などで高度癒着を伴った子宮全摘術では難易度が 高くなるため,個々の症例に対して,術前の評価, 手術のシミュレーションをしっかりと行い,さらに 術中トラブルに対する対応をしっかりと考慮したう えで,手術に臨むべきであると考える. 2.子宮体癌に対するロボット支援下手術 施設基準として腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮 体癌に対して内視鏡手術用支援機器を用いる場合) を術者として 10 例以上実施した経験を有する常勤
Table 2. Guidelines for robot-assisted surgery for gynecological diseases. ፬ே⛉㡿ᇦ䛾䝻䝪䝑䝖ᨭୗᡭ⾡䛾ᐇᇶ‽
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Adapted from reference 5.
Table 3. Facility criteria for laparoscopic vaginal hysterectomy (when using assistive devices for endoscopic surgery).
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の医師が 1 名以上配置され,当該手術を施設として 年間 5 例以上実施していることが必要である. 「産婦人科内視鏡手術ガイドライン 2019 年版」に よると CQ30「子宮体癌に対して,ロボット支援手術 は推奨されるか?」のステートメントは「適切な症 例選択のもとで行われるロボット支援手術は開腹術 とならぶ選択肢として推奨する」である8) .ただしリ ンパ節郭清術は骨盤リンパ節のみの低リスク群に
Figure 4. Robot-assisted total hysterectomy (RAH).
a: identification of the ureter via the lateral approach, b: adnexectomy, c: resection of the cardinal ligament, d: separation of the bladder from the uterine cervix, e: incision of the vaginal wall, f: suture of the vaginal wall.
a
R.ureter Uterusb
Myoma R.ovaryc
Uterine cervixe
Cervix Vaginaf
Vaginal walld
Uterine cervix Urinary bladderFigure 5. Laparoscopic radical hysterectomy (LRH) for severely obese patients (body weight 102 kg, BMI 39.1).
In robotic surgery, as the abdominal wall is elevated by the port, it becomes a form that uses a lifting type of laparoscopic surgery in addition to the conventional pneumoperito-neum. Moreover, a high Trendelenburg position is taken, so it is easy to obtain a working space. 限っており,傍大動脈リンパ節郭清術が必要な Ib 期以上の体癌や type II の症例(中・高リスク群)に 対しては保険適応での実施は不可である. 肥満(Figure 5)は子宮体癌のリスク因子である. 高度肥満症例のリンパ節郭清術を含む体癌手術は術 野展開が大変であり,難渋することが多い.そのた め,必然的に手術時間が長くなり,術後イレウスや 創部離開などの合併症発生頻度も高くなり,入院期 間も延長すると考えられる.また腹腔鏡手術におい ても厚い皮下組織が鉗子の動きを制限し,意図する ところに鉗子が思うように届かず,イライラを経験 した術者も多いと思う.一方,ロボット手術は,ポー トで腹壁を挙上するため,従来の気腹に加え,吊り 上げ式を併用するような形になり,さらに高度の骨 盤高位をとるため,ワーキングスペースが得やすい. また 3D 画面,多関節機能,ブレ防止機能により腹腔
Figure 6. Laparoscopic sacral colpopexy (LSC).
a: pass the needle through the sacral promontory, b: fix the mesh to the anterior vaginal wall, c: fix the mesh to the uterine cervix, d: fix the mesh to the sacral promontory. LSC is a very difficult operation because it requires manipulation of the deep pelvis, as well as suture and ligation in tight spaces multiple times.
a Promontory b Bladder c Uterine cervix d Promontory 鏡手術より鉗子操作がスムーズに行える.一般的に 肥満症例は健常者に比べて trendelenburg position が取れない,低喚起・低酸素症のため開腹移行率が 高いといわれている9) が,肥満症例は開腹術,腹腔鏡 手術に比べ,ロボット手術が適しているのは確かで ある.しかし,その実施に際しては,麻酔科や肥満 外来担当医と相談し術前より十分に注意して行うべ きである. 3.骨盤臓器脱に対する RSC
仙 骨 腟 固 定 術(ASC)は POP,特 に DeLancey の分類のレベル 1 障害に対する手術療法のゴールド スタンダードとして主に米国で行われてきた.本邦 では腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)として限られた施 設で先進医療によって行われていたが,2016 年 4 月に保険収載され,一躍脚光をあびる術式となった. しかし,LSC(Figure 6)は骨盤深部の操作が必要で 狭い空間での縫合結紮が多く,非常に難易度の高い 手術である.一方,RSC では高解像度拡大視野,多 関節機能などの特性により LSC の手術難度を減じ てくれると思われる. RSC の施設基準は腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術(内 視鏡手術用支援機器を用いる場合),LSC(内視鏡手 術用支援機器を用いる場合),腹腔鏡下腟式子宮全摘 術(内視鏡手術用支援機器を用いる場合)を合わせ て 10 例以上,そのうち当該手術を 3 例以上術者とし て実施した経験を有する常勤の医師が 1 名以上配置 され,LSC を年間 5 例以上実施していることが必要 である. 今後の婦人科領域のロボット支援下手術 1.ロボット支援下広汎子宮全摘術 従来から行われている開腹による広汎子宮全摘術 は骨盤深部の操作が必要で出血量も多くなり,婦人 科領域では極めて難易度の高い手術である.一方, 鏡視下手術はその特性により骨盤底の深い操作に威 力を発揮する.特に基靭帯の処理,膀胱子宮靭帯前 層・後層の処理は緻密な part であり,出血しやす く,自律神経損傷が問題となる.細い血管の 1 本ず つの処理や自律神経の温存には拡大視能を有する鏡 視下手術は非常に有用である10) .特に,高解像度の 3D 画面や多関節機能を持つロボット手術(Figure 7)は広汎子宮全摘術のもっとも良い適応になると考 えられる.本邦においては 2016 年より先進医療 B 「内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下広汎子 宮全摘術」として限られた施設で行われている.し かし,2018 年に発表された LACC trial11) の結果(Fig-ure 8)は衝撃的であった.すなわち,鏡視下手術 (ロボット手術 16% を含む)は開腹術に比べその治 療成績が有意に劣るというものであり,鏡視下手術 は断端/骨盤内再発がより多かった.特に骨盤内再発 は開腹術では皆無であったのに対し,鏡視下手術で
Figure 7. Separation and division of the anterior leaf of the vesicouterine ligament in robot-assisted semi-radical hysterectomy in cervical cancer.
a: separation of the uterine artery, b: cutting the uterine artery, c: identification of the ure-teral roof, d: cut of the cervico-vesical vein, e: rolling of the ureter, f: cut of the paracolpium. The treatment of the anterior leaf of the vesico uterine ligament is a very delicate proce-dure. Hence, it is useful to process the thin blood vessels one by one and to preserve the autonomic nerves using a high-resolution 3D screen and forceps operation utilizing multi-joint function. L.ureter
d
Cervix Cervico-vesical vessels L.ureterf
Paracolpiumb
Uterine artery L.ureter Cervix L.ureterc
Ureteral roofa
Uterine artery L.ureter Cervixe
L.ureter Cervix Figure 8. LACC trial.Minimally invasive radical hysterectomy was associated with lower rates of disease- free survival and overall survival than open abdominal radical hysterectomy among women with early-stage cervical cancer.
Adapted from reference 11. Number at risk は再発例の 29% を占めていた.鏡視下手術では子宮 マニピュレーターの使用や CO2ガスによる腹腔内 への癌細胞の散布が予後に関与しているのではない かと考えられている.また鏡視下手術を選択する場 合,腫瘍径が 2 cm 未満の症例を対象にすべきでは ないかと考える. 「産婦人科内視鏡手術ガイドライン 2019 年版」に よると CQ29「子宮頸癌に対して,ロボット支援下手 術は推奨されるか?」のステートメントは「下記留 意事項に則り実施することを条件として,ロボット 支援下広汎子宮全摘術は先進医療等の研究的治療と して行われることを推奨する」である12) . 「下記留意 事項」の中に,「腟管切断においては,腫瘍が腹腔内 に曝露され,散布されることがないように腟管切開,
Figure 9. Para-aortic lymphadenectomy by laparotomy.
Paraaortic lymph node (PAN) dissection by laparotomy requires a large incision from above the pubic symphysis to below the xiphoid process, and there are problems such as postoperative adhesions, intestinal obstruction, and wound dehiscence.
Figure 10. Laparoscopic para-aortic lymphadenectomy.
Laparoscopic PAN dissection is designated as an advanced new medical technology in ob-stetrics and gynecology.
In the high-risk group of endometrial cancer, it is performed up to the lower margin of the left renal vein.
PAN, paraaortic lymph node; IMA, inferior mesenteric artery.
Vena Cava IMA Aorta L. Renal vein Vena Cava L. Renal vein R. Renal artery IMA L. Renal vein L. Renal artery
Vena Cava Aorta L. Renal vein 子宮摘出方法に十分に留意し,導入時には腫瘍の大 きさなどを考慮し症例選択を行う」とあるが,すで に保険適応となっている腹腔鏡下広汎子宮全摘術と 同様十分に注意を払うが必要がある. 2.ロボット支援下 PAN 郭清術 PAN 郭清術は子宮体癌のハイリスク群において 左腎静脈下縁まで行われる.開腹術では骨盤リンパ 節から左腎静脈下縁までの PAN 郭清を行うには恥 骨結合上から剣状突起下まで大きく切開する必要が あり,術後の癒着,腸閉塞,創部離開などの問題が ある(Figure 9).一方,腹腔鏡手術はその特性によ り大血管周囲を拡大視でき,マイクロサージャリー
のような感覚で手術でき,下大静脈前面から出る細 い血管 perforator 通枝を確認しながら切除を行 うため,ほとんど出血することなく手術可能である. さらに,術後癒着が少なく,腸閉塞などの合併症も ほとんど発生しないと考えられる13) .さらにロボッ ト支援下手術では高解像度 3D による拡大視能や多 関節,手振れ防止機能により,より安全な手術が可 能であると考える. 子宮体癌に対する腹腔鏡下 PAN 郭清術(Figure 10)は 2016 年 4 月に先進医療 A に承認された.著者 も前任地の富山県立中央病院で 2019 年 3 月まで先 進医療 A として実施してきたが,2020 年 4 月より ようやく初期子宮体癌(Ia 期)のハイリスク群に 限って保険収載された(Table 1). ロボット支援下 PAN 郭清術は現在のところ保険 収載されていないため,現時点で行うには臨床試験 として,院内倫理委員会の承認を得て慎重に行わな ければならない.さらに「ロボット支援下子宮悪性 腫瘍手術」も「腹腔鏡下 PAN 郭清術」も産婦人科領 域の高度新医療技術に指定されていることから「ロ ボット支援下 PAN 郭清術」は両者の複合手術とし て,院内の高難度新規医療技術評価委員会による承 認を得なければならないと考える. PAN 郭清術はロボット支援下に行うことにより, より精度の高い手術が可能であることは言うまでも ない.しかし,下大動脈・下大静脈周囲を操作する ため,一つ間違えば大血管損傷などの大きな事故に もつながる危険がある高難度術式であることを認識 し,十分に注意して施行する必要がある. おわりに 婦人科領域におけるロボット支援下手術の歴史は 浅く,保険収載されてからまだ 4 年を経過したにす ぎない.高画質 3D 画像,多関節,手振れ防止機能に より広汎子宮全摘術や PAN 郭清術などの高難度の 手術に対しても,精密でクオリティーの高い手術が 可能であると思う.腹腔鏡手術に比べ開腹術に近い 感覚で手術可能で,ラーニングカーブが短いとされ ているが,ドッキングやポート配置にも工夫が必要 である.さらに,開腹術や腹腔鏡手術にはない特有 の合併症も存在する.ロボット手術を安全に実施す るためには,万一に備えて起こるべき偶発症を想定 し,日頃よりそれらの対処法に精通し,十分なトレー ニングをしておくことが必要である. 本稿における開示すべき利益相反はない. 文 献
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