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家具産地・大川との商品開発を目的とした連携活動

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Academic year: 2021

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(1)106. 特集:家具のデザインと技術. 青木幹太 Aoki Kanta 九州産業大学 Kyushu Sangyo University. 家具産地・大川との商品開発を目的とした 連携活動 The Collaborative Activities with the Furniture Production Area, Okawa for the Product Development. 1.はじめに 福岡県大川市は480年の歴史があり、我が国の家具産地の中で家具の生産 高がトップである。2012年、協同組合福岡・大川家具工業会(以下、工業 会)は設立50周年を迎え、その記念となる事業を模索していた。ある機会で 記念事業の担当者と会い、「工業会と大学が連携して何か新しい取り組みが できないか」という相談を受けた。当時の九州産業大学(以下、大学)は、 商品企画、開発を目的とした地域企業との産学連携プロジェクトを学生が実 際のデザインを体験、学習する場と位置づけ、教育に積極的に取り入れてい た。大川との連携は家具デザインを志向する学生にとって、実務を体験、学 習するいい機会になると判断し、家具産地・大川との連携活動を始めた。記 念事業は単年度の計画であり継続は想定していなかったが、①過去に工業会 が実施したプロジェクトが大川の活性化や産業振興などに生かしきれていな かった、②2012年度終了時に予想以上の成果があった等の理由で、2013年度 も工業会の一つの事業として継続することになり現在まで続いている。 本研究では、2012年度から2018年度までの7年間の連携活動を振り返り、 家具産地・大川と大学の連携活動からどのような成果が得られたのか、また 有効な連携活動のあり方とはどのようなものなのかを論じることを目的とし ている。. 2.2018年度の連携活動 2012年に家具産地・大川との連携活動を始めたときは、何をどのように進 めて行くのか、最終目標をどこに置くのかはっきりしていなかった。当時の 事情は後述するが、そのような状況で始まった連携活動が7年間でどのよう に成長、発展したのかを検証するために、2018年度の活動を時系列に述べる (表1)。尚、この連携活動は「大川プロジェクト」と称してきたことから、 本研究でもこの名称を使う[注1]。 ⑴ プロジェクト説明会 2018年5月18日(金)、大川市にある大川産業会館で工業会加盟企業を対 象に、大川プロジェクトの活動方針や目的、連携活動を効果的、効率的に実 1)2018年度に実施した大川プロジェクトの成果を展示し. 施するための条件や2012年度以降の活動成果などをスライド、資料を使って. た九産大プロデュースおよび春の木工祭りは、2019年. 説明した。参加希望の企業は自社の商品に関する課題からテーマを設定し、. 2月∼4月の間に開催するため、 「九産大プロデュー. それを幹事企業に提出して、そのリストが大学に送付される。大学では芸術. ス2019」、「春の木工祭り2019」と称しているため本研 究ではその呼称を使って記述している。. 学部生活環境デザイン学科、建築都市工学部住居・インテリア学科で、大川.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.27-1 No.101. プロジェクトへの参加を希望する学生に、2018年度の活動方針や目的、日 程、工業会から提示されたテーマなどを説明し、希望テーマに沿って学生 チームを編成した。学生チームは企業毎に複数人で、可能な限り異学年、異 学部になるように構成し、2018年度大川プロジェクトの総合リーダーと企業 別のチームリーダーを決定した。 ⑵ キックオフ会議 参加企業、学生が全員出席する最初の会議を2018年6月16日(土)に大学 のラウンジを使って実施した。この会議では、プロジェクトの最終目標であ る商品化に向けて、はじめに情報収集やコンセプトの設定に注力し、その 後、多くのアイデアから市場性、生産性などに沿ったデザインを導くことを 学生たちに求めている。全体説明が終わった後に、企業毎のチームに分か れ、企業担当者からテーマの詳細について説明を受け、質疑応答を行なっ た。その後、大学構内の食堂で懇親会を行い、リラックスした雰囲気の中で 学生と企業担当者の交流を図っている。 ⑶ 展示会見学・取材 プロジェクトに参加する学生が大川家具に関する理解を深め、既存商品の 情報収集を目的に、2018年7月11日(水)に大川産業会館を中心に開催され た「大川夏の彩展」 (一般消費者向けの展示会)を見学した。この展示会見 学は、毎年実施しており、学生は大川産業会館の展示ブースを廻りカタログ 収集や既存商品の特徴や素材、作り方などを調べ、アイデア展開に生かして いる。プロジェクト参加企業の中には、担当学生を自社に招き、会社や ショールーム、工場を見学させ、企業の商品ライン、材料加工から組み立て までの製造工程、品質管理や梱包、搬送の仕組みなど開発、製造全般につい て教示している。. 表1 2018年度の連携活動 活 動. 日 時. 場 所. プロジェクト説明会 2018|5|18. 大川産業会館. 内 容. 参考写真. 協同組合福岡・大川家具工業会の会議でプロジェク ト活動の目的・内容を講習する ●参加企業から大学に開発テーマが提示される. キックオフ会議 2018|6|16. 九州産業大学. 参加企業、学生全員が参加して目標、日程の確認、 チーム別打合せを行う(写真1). 写真1. ●チーム別に開発テーマのコンセプト案を準備する 展示会見学・取材 2018|7|11. 大川産業会館. 大川で開催された「大川夏の彩展2018」及び担当企 業のショールーム、工場等を見学する ●夏の合宿に向けた準備を行う. 夏の合宿 2018|9|8. 九州産業大学. 写真2. 終日、企業・学生のチームに分かれ、アイデアを検 討プロトタイプを制作し、成果を発表する(写真2) ●デザインの最終の詰めを行う. 中間報告 2018|11|6. 九州産業大学. それまでの振り返りと最終報告に向けた打合せを行 う(写真3). 写真3. 写真4. ●モデル、図面、報告のためのデータ制作を行う 最終報告 2018|12|7. 九州産業大学. 最終デザインをスライド、モデル等を使って報告す る(写真4) ●企業は試作、大学は展示会の準備を行う. 九産大プロデュース展 2019. 2019|2.21-3.3|. 天神イムズ. 写真5. 大学が主催する展示会で、年間のプロジェクト活動 の成果を展示する(写真5) ●展示ブースのデザイン等を行う. 春の大川木工祭り 2019. 2019|4.13-14|. 大川産業会館. 福岡・大川家具工業会が主催する展示会で、プロジェ クト活の成果を展示、公開する(写真6) 写真6. 107.

(3) 108. 特集:家具のデザインと技術. ⑷ 夏の合宿 夏の合宿は、2017年度よりプロジェクトの工程に新たに加わった活動であ る。目的は企業担当者と学生が協働でコンセプト設定やアイデア展開を行 い、開発の方向性やアイデアを共有し、コミュニケーションを深めることで ある。2017年度は大川の旅館に宿泊し二日間の日程で行なった(図1) 。 2018年度は9月8日(土)午前9時から午後8時まで大学の演習室を使い、 チーム毎にアイデアの検討、プロトタイプの制作を行い、合宿の成果を懇親 会で発表した(図2)。 図1 夏の合宿(2017年度). ⑸ 中間報告 中間報告は最終報告の1ヶ月前に、それぞれのチームの進捗状況の確認、 メンバー全員による情報共有などを目的に大学の会議室を使って2018年11月 6日火)に実施した。中間報告では、最終報告までの残り作業、最終報告か ら展示会までの工程を確認し、その後チームに分かれて最終デザインの詰め の打合わせを行なった。学生たちは企業担当者の意見や助言をもとに、デザ イン案の見直しや修正を行い、最終報告のためのデータの整理やモデル、図 面の制作などの作業に着手した。 ⑹ 最終報告. 図2 夏の合宿(2018年度). 2018年12月7日(金)に大学の講義室を使って、最終報告を実施した。こ こでは、チーム毎にスライドやモデルを使って最終デザインの仕様や開発に 至る過程を報告し、担当企業に試作に必要な図面、スケールモデル、各種 データを提出した。最終報告後、各社は提出された仕様に基づいて家具、雑 貨の試作を開始した。 ⑺ 九産大プロデュース2019 年明けて1月末に、試作された家具、雑貨が大学に搬入され、大学の写真 スタジオを使い試作品や担当メンバーの撮影を行なった。撮影後、大川プロ ジェクトの学生メンバーは、2019年2月21日(木)から3月3日(日)まで 福岡市の繁華街天神にある商業施設「天神イムズ」の地下2階イムズプラザ で開催する大学主催の「九産大プロデュース2019」に向けて、大川プロジェ クトのパンフレットや企業別の製品ポスター、展示で使う小物類の準備に取 り掛かった。2月20日(水)、展示会場に試作された家具・雑貨を搬入し、. 図3 九産大プロデュース2019. 大川プロジェクト以外の連携活動の成果等を合わせて会場準備を行った。11 日間の会期中、新聞4社、業界誌1社、テレビ放送局2社の取材を受け、紹 介記事の掲載やテレビ放送などが行われた(図3)。 ⑻ 春の大川木工祭り2019 大川では毎年、4月第2週に家具のバイヤー向けの展示会「ジャパンイン テリア総合展」(2019年4月10日−11日)と一般消費者向けの展示会「春の 大川木工祭り」 (2019年4月13日−14日)が開催される。この展示会に大川 プロジェクトの成果品を展示し、来場者から意見や要望、感想を聞き、試作 し た 家 具、 雑 貨 の 評 価 や 次 期 プ ロ ジ ェ ク ト に 向 け た 情 報 収 集 を 行 っ た. 図4 春の大川木工祭り2019. (図4)。 大川プロジェクト2019の活動は、春の大川木工祭りで完了する。その後、 工業会と大学では活動がマンネリ化しないよう成長や発展に注意し、次期プ ロジェクトの骨子や計画を協議している。. 3.2012年度以降の連携の推移 2012年度に工業会設立50周年の記念事業として始まった大学と工業会との.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.27-1 No.101. 連携活動は、2013年度に継続事業となり、その後、今日まで続いている。開 始から7年目に当たる2018年度は、連携活動の仕方や進め方、開発する家 具、雑貨に成長や発展の跡が窺えた。ここでは連携活動のはじまりである 2012年度の活動を概観するとともに、2018年度までの活動の推移を振り返 り、成長や発展に繋がった特徴的な事項について述べる。. 3.1. 2012年度の連携活動 大川プロジェクトが始まった2012年度は、連携活動の進め方や開発テーマ が明確に定まっていなかったことから、当初、工業会、大学とも手探りの状 態が続いた。この間、両者で協議を重ね、参加した学生がそれぞれの視点か ら家具を考える「私の部屋づくり」をテーマにして、学生14名を男子1チー ム、女子3チームに分けて、家具に対する若年男女の嗜好の違いを顕在化さ せることに重点を置いた。その理由は同年4月に大川で開催された展示会を 見学した際に学生から「大川には自分たちが欲しいと思える家具がない」と いう意見が多くあったからである。 男女に分かれた4チームは、 「私の部屋づくり」をテーマに家具および家 具で構成するインテリア空間のデザインに着手した。「大川家具の発展に貢 図5 2012年度の最終報告. 献した河内諒氏の『引き手なしタンス』(1955年)のように伝統的なイメー ジを払拭する新しい価値を盛り込む」という条件に沿って、コンセプト設 定、アイデア展開、CG やモックアップによるモデル制作を行い、2012年11 月5日(月)、大川産業会館で最終報告を行なった(図5) 。4グループから 31アイテムの家具の提案があり、参加企業14社による審査を経て、ワード ローブ、ベッド、本棚、シューズラックなどの17アイテムが選ばれ、14社が 分担してそれらを試作することが決まった。その後、試作された17アイテム の家具は2013年2月26日(火)から3月4日(月)まで天神イムズ地下2階 イムズプラザで開催した「地域産業プロモーション展」(図6)、3月20日. 図6 地域産業プロモーション展. (水)から3月24日(日)までアクロス福岡1階アトリウムで開催した「プ ロジェクト展」 (図7)で展示、公開し、来場者の意見、要望などを聞き 取った。それらの中で女子チームが担当した家具は、女性目線から使い方や 外観を考え、 「女子家具」というコンセプトを訴求し来場者から高い評価を 得た。この結果に工業会も注目し、加えて福岡市の繁華街での展示会の集客 性やマスコミの反響などが連携活動の継続を後押しした。. 3.2. 2013年度以降の推移 2012年度の活動後、大学と工業会で連携活動の成果や課題について意見交 を行なったところ、参加企業から①企業の得意分野や既存の商品ラインに展 図7 プロジェクト展. 開できない、②企業が抱えている課題の解決にならないなどの意見が出され た。それらの意見を踏まえて、2013年度は参加企業の個別テーマを大学が受 け入れ、テーマ毎に学生チームを編成する仕方に変更した。それによって活 動のはじめから、企業と学生のチーム活動が始まり、コミュニケーションが 活発となり、一部の家具は試作後に直ぐに商品化される等の効果があった。 また2013年度、参加企業には家具製造から生じる廃棄材を生かして、オフィ ス雑貨やアロマグッズなどの小物をテーマにするところがあった。2013年度 は2014年1月に大川産業会館で開催される「新春展」を出展目標にしたこと で日程が厳しかったことから、4月開催の「大川春の木工祭り」の出展に変 更された。2013年度、2014年度は大川プロジェクトに参加した学生が大川の. 109.

(5) 110. 特集:家具のデザインと技術. 表2 2012年度から2018年度までの連携活動の推移 年 度. 年間テーマ. 企業 学生 試作品 大川就職者 (社)(人) (アイテム) (人). 2012年度. 私の部屋づくり. 14. 14. 2013年度. 木もちいい生活. 13. 2014年度. From OKAWA Mind. 2015年度. 2. ●協同組合福岡・大川工業会設立50周年の記念事業として実施 ●参加学生は男子、女子チームに分かれ、学生が欲しい家具を提案 ●参加企業は提案された家具の中から、数点を選び分担して試作. 18 16 (家具13、雑貨3). 2. ●参加企業が抱えている課題を開発テーマとする ●1企業に数名の学生が付いてチームを編成する ●家具のほか生活雑貨のテーマが新しく加わる. 13. 29 15 (家具11、雑貨4). 0. ●工学部(住居インテリア学科)から学生が参加する ●開発製品のほか、DM や PR 映像等で企業毎に情報を発信する ●春の木工祭りという工業会主催の展示会で成果展示を行う. Okawa Projct 2015. 17. 44 23 (家具18、雑貨5). 2. ●大川市役所が参加して、大川のお土産品を開発する ●大川市役所で2012年からの活動成果を展示する ●写真・映像系の学生が参加し(10名)プロジェクションマッピングに よる大川の PR を行う. 2016年度. Okawa Projct 2016. 13. 43 23 (家具19、雑貨4). 2. ●開発製品の達成レベルが上がり、商品化されるアイテムが増える ● Funny-ture(おもしろい家具)をサブテーマに生活者にインパクトを 与える家具開発を目指す. 2017年度. Okawa Projct 2017. 9. 33 18 (家具17、雑貨1). 1. ●夏の合宿研修が始まる ●写真・映像系の学生が参加し(12名):デジタルサイネージ等による 大川の PR を行う. 2018年度. Okawa Projct 2018. 8. 28 14 (家具7、雑貨7). 0. ●教員5名参加し、学生のサポート体制を強化する ●開発過程における企業と学生のコミュニケーション頻度を増やす. 7年間の活動成果. 87社. 209人. 17. 活動の特徴. 126アイテム. 9人. 企業にデザイナーとして就職しており、これも連携活動の成果の一つであっ た(表2)。 2014年度は芸術学部の学生に加えて工学部(住居インテリア学科)にも範 囲を広げたことで参加学生が増加し、この年以降、芸術学部と工学部の学部 横断チームができるなど、大学内でもプロジェクト活動の広がりが進んだ。 また工業会との連携の仕方や進め方が定着し、企業と学生の協同プロジェク トの進行が円滑になった。2014年度は参加学生の希望により、開発過程で制 図8 1/1展(2014年度). 作したスチレンボードによる1/1プロトタイプモデルを、福岡市でも若者 が集まる中央区大名地区の展示ギャラリーを借りて「1/1展(イチブンノ イチ展)」を開催し、大川家具や大川プロジェクトの広報活動を行なった (図8)。 2015年度は参加企業17社、学生44名と最も規模が大きい年であり、それま での活動実績を受けて、大川市役所が大川市のお土産づくりをテーマにプロ ジェクトに参加した。また家具、雑貨の開発を目的とした学生のほかに、写 真・映像系の学生が大川市や大川プロジェクトの広報を目的に参加し、2016. 図9 プロジェクションマッピング. 年2月18日(木)から3月6日(日)に開催した「九産大プロデュース 2016」、2016年4月6日(水)から4月10日(日)まで大川市で開催された 「JAPAN INTERIOR 総合展2016」 、「大川春の木工祭り」で大川の CM 映像、 家具に映像を投影するプロジェクションマッピングなどを同時に展示し、華 やかな展示会となった(図9)。 2016年度は2015年度の展示会で好評だった恐竜をモチーフとした家具を参 考に、「Furniture(家具)から Funny-ture(おもしろい家具)」という造語を 使って参加学生に面白い家具や雑貨を提案するよう促した。その理由は、連 携活動が5年目を迎え、最終目標である商品化を意識するあまり、学生のア. 図10 子供用の家具. イデアが企業の発想や枠組みから脱却しない無難なものになることを抑える 狙いがあった。その結果、2016年度は子供用の家具(図10)や外観にインパ クトがある家具(図11)など学生らしいデザインが展開された。 2017年度は、企業担当者と学生が集中して課題を議論し、連携密度を深め るために、2017年8月5日(土)から6日(日)の一泊二日で、大川市内の.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.27-1 No.101. 三川屋旅館で合宿を行なった。企業9社と学生29名が参加し、それぞれのチ 分かれて5日の午前10時から深夜をはさみ翌日の午前まで、課題の解決案を スケッチや図解で表現し、6日の午後に報告会を行なった(図12)。 この合宿は、企業と学生の距離を縮め、それ以降の連携活動を円滑に進め る効果があった。合宿には写真・映像系の教員や学生も参加し、2015年に実 施したプロジェクションマッピングのほか、デジタルサイネージによる開発 家具の人気投票や子供を対象としたゲーム開発など、大川市や大川プロジェ 図11 外観にインパクトがある家具. クトの広報を目的とした活動を展開した(図13)。2017年度に試作された家 具、雑貨は、18アイテムであり、その多くが開発期間中に開催された大川や 関東圏の展示会に出展され、年度末には受注生産が可能な状況であった。 2012年度から2018年度までの7年間の連携活動では、参加企業は延べ87 社、参加学生209人、試作された家具、雑貨は124アイテムであった。2012年 に連携活動を始めた当初、大川プロジェクトが長く継続することは誰も予想 しておらず、7年間で積み上がった数字はまさに予想外の成果であった。特 にプロジェクトに参加した学生が卒業後に大川に就職したことは、工業会の みならず人口減少と高齢化が進む地方都市・大川にとって地域の活性化に繋 がると期待された。. 図12 夏の合宿(2017年度). 4.連携活動の成果と在り方 家具産地・大川との商品企画、開発を目的とした連携活動は、大学、工業 会の協調により7年間、継続したことで大きな成果に繋がった。一概に成果 といっても、工業会の参加企業、参加した学生や教員など立場や考え方の違 いによって捉え方はまちまちである。ここでは、それぞれの立場でどのよう な成果があったのか、また今後の連携の在り方とはどのようなものなのかを 7年間の活動を振り返って述べたい。. 図13 デジタルサイネージを使った家具の 人気投票. 4.1. 企業の視点 工業会には、連携活動に継続的に参加している企業や、一度参加してその 後、参加していない企業など多様である。大学が企業と連携する目的は、研 究と教育という2面性があり、プロジェクト活動として教育に主眼を置いた 場合、企業が抱える課題に即効性のある解決を1年間で導くのは、簡単なこ とではない。反面、参加する企業の考え方や目的をやや広げると、大学との 連携の効果や生かし方が見えてくる。大川プロジェクトの中から連携活動を 有効に活用し、企業が期待する成果を導いている事例を紹介する。 ⑴ 学生の自由な発想を活用する 継続的に参加する企業の中には、毎回、開発テーマを変えて参加学生に既 存の枠組みから飛び出たアイデアを自由に発想させ、それを形にすること で、新しい市場に参入している企業がある。そのきっかけは2015年度に製作. 図14 恐竜の学習机. された恐竜の学習机である(図14)。この年、この企業を担当した学生たち は、子供が喜ぶ家具という漠然としたテーマのもと、自由な発想で挑んだア イデアの中から、企業担当が面白いと思ったものを試作している。同年度に 開催した九産大プロデュース2016では、その形が来場者の目を引き、子供だ けではなく幼稚園や保育園の先生などから多くの問い合わせがあり、実際に 園に導入したところがあった。この企業は、その後も大川プロジェクトで キッズ家具をテーマに商品を開発し、それらを資源に幼稚園、保育園など B. to B 市場の開拓に注力している。. 111.

(7) 112. 特集:家具のデザインと技術. ⑵ キャラクター家具を開発する 子供や若年層に人気があるアニメーションやテーマパークのキャラクター ライセンスを保有し、それを生かした家具、雑貨を開発、販売している企業 は、毎年、学生たちが好むキャラクター家具を開発テーマにしている。これ らの商品は購買年齢が低く、キャラクター好きという特定の層を対象とする ため、学生にも取りつきやすく、自由な発想の中から企業が期待するデザイ ンが生まれている。毎年、秋には試作が完了し、東京や大川で開催される展 図15 子供用の家具 (九産大プロデュース2017). 示会に参考出品して商品化の前に市場評価を実施している。 ⑶ 学生のアイデアをシーズとして蓄積する 2016年度から参加している企業は、初めて参加したときに参加学生4名の アイデアから4つの家具を試作している(図15)。この時のテーマは「子ど もの成長に合わせたキッズ家具」で、九産大プロデュース2017で好評であっ た。翌年も参加し、同じテーマで2つのキッズ家具を試作している。この企 業の考え方は、①学生から出たアイデアを企業の商品ラインと同じ材料、加 工方法、仕上げにすることでブランドとしての統一感を持たせる、②市場の 動向に合わせてタイミングよく商品に展開することである。連携中は学生か. 図16 木質の生活雑貨. ら期待するアイデアが出るまで粘り強く意見交換を行い、時に励ましながら 徐々に企業の目標に近づけている。 ⑷ 学生が好きな雑貨開発に絞る ダイニングキッチンを専門とする企業は、1年間で新しい製品の試作まで 行うことは、製品の複雑さや規模からみても難しい。そのため参加当初か ら、キッチン周りで生活に潤いをもたらす生活雑貨をテーマに女子学生を中 心に、企業内の通常業務ではできない商品の開発に注力している。試作され た小物は、展示会等で自社の流し台やキッチン収納棚等に置いて、本業のイ メージアップや商品の訴求などにも生かされている(図16)。. 図17 秘密基地をテーマにしたデスク. ⑸ 学生を育てることを重視する プロジェクトに参加する学生に、人気の企業がある。この企業は毎年、大 川プロジェクトに参加し、コンセプト設定からアイデア展開、プロトタイプ の制作まで常に学生に寄り添い、試作した家具は担当した学生に記念として 渡している(図17)。この企業との連携活動には、同じ学生が年度を跨ぎ続 けて参加することが多く、卒業後、家具業界に進むなど学生が確実に育って いる。 家具産地・大川との連携活動は、毎年、学生が進級し4年で卒業するとい う大学特有の状況から、1年を1サイクルとして企画から開発、試作、展 示・公開までの過程を1年間にコンパクトに詰め込んでいる。最終目標であ る商品化は、この間で達成するにはやや無理があり、試作した家具、雑貨を 市場に卸すまでに、コストダウンや生産ラインの整備などブラシュアップ期 間が必要である。参加企業はそのことを理解した上で、企業経営に連携活動 やその成果をどのように関係づけるかが問われ、目的や志向が曖昧では参加 しても有効な成果が挙がらないこともある。. 4.2. 大学の視点 今日、大学および大学教育の役割は何かまたどのような人材を育成すべき か等々、様々な議論や意見、提言があり、それに向けた大学改革が常に求め られている。企業との連携やそれを大学教育に生かしていく活動は、教育現 場の改革の一つに過ぎないが、それでも7年間、継続していると、連携活動.

(8) デザイン学研究特集号  Vol.27-1 No.101. と人材育成についていくつかの経験知が生まれる。ここではこれまで述べた 内容を踏まえ、大学の視点から連携活動の教育的効果や実施上の課題を述べる。 ⑴ 家具に関する知識が増え、実際の経験が積める 開発テーマが家具であり、活動を通して家具の知識が増えるのは当然だ が、特に開発過程で家具を企画、生産、販売する企業の経営者や営業マン、 工場の職人等と直接、会って話しを聞ける環境は、大学の中だけでは難し い。①展示会や工場を見学し、販売や生産の現場の知識を持って、コンセプ ト設定やアイデア展開に取り掛かる、②プロトタイプを制作しながら材料や 加工方法の指導を受ける、③試作を前提に図面、モデルを制作する、④販売 を目的にリーフレットや資料を制作するなど、常に基礎と応用(現場)を行 き来しながら実際の知識や経験を積むことは、家具デザインに限らず多くの 分野に応用が効くと考えている。 ⑵ プロジェクト管理能力が習得できる 大川プロジェクトは、毎年、参加学生の中からプロジェクト全体のリー ダー、企業別のチームリーダーを決めて、キックオフ会議から春の大川木工 祭りまで、できるだけ学生主体のプロジェクト管理、運営を行なっている。 企業別チームは、異なる学部や学年の複数の学生で構成され、上級生はリー ダーとして開発実務のほか、日程や進捗管理、相手先との交渉などに当た り、下級生は上級生を見てプロジェクトの管理、運営方法を理解する。大川 プロジェクトの中核となる学生は、下級生の時から参加したプロジェクト経 験者が多く、それが連携活動のレベルアップに繋がっている。 ⑶ 問題解決能力が飛躍的に向上する 大川プロジェクトは、企業から提示されたテーマに学部や学年が異なる複 数人で取り組み、明確な開発の目標や日程計画に沿って作業が遂行される。 開発過程では、企業からコンセプトの見直しやアイデアの追加など様々な要 求が出され、チーム内での意見の相違、日程の突然の変更、材料発注の手違 いや遅れなど、様々な問題が発生する。その都度、チーム内で対策を立て問 題解決に当たる。1年間の経験を通して、不規則に発生する問題や課題にど のように対処していけばいいのか体験を通してその方法を学ぶことから、問 題解決能力は飛躍的に向上する。 ⑷ 教員はプロデュース能力の研鑽が求められる 大川プロジェクトは、家具デザインを志向する学生を中心に、低学年から 高学年までの学生が参加する。矮小な話しではあるが、例えば3年次、4年 次の高学年では、プロジェクト活動をゼミ授業等に割り当て、授業内の活動 として実施できるが、2年次以下の低学年では履修科目が多く、また基礎学 習の段階でもあり授業に割り当てることは難しい。そのためプロジェクトは 自主的な活動になり、キックオフ会議や展示会見学等が正規の授業に被るこ とも多く、その都度、教員が理由書を書いて担当授業の教員に了解を得るな どの対応を図っている。 活動はできるだけ学生の自主性、主体性を重視するが、キックオフ会議ま での日程や内容の調整、中間、最終報告の内容の引き上げなどは、学生の自 主性を損なわない範囲で教員が指導、助言を行なっている。また最終段階で 試作されるものは、特定の学生のアイデアが主軸になり、必ずしも全ての学 生の活動に依るものではなくなるが、最後までチームワークを保ち成果を共 有化するような意識、雰囲気に導いている。 プロジェクト活動から生じた知財について、①開発の過程で企業の保有す. 113.

(9) 114. 特集:家具のデザインと技術. るノウハウや技術等が提供されていること、②展示会の見学や打合せの交通 費、懇親会や合宿の費用、試作に関わる全ての費用を工業会や企業が負担し ていることなどから、学生が発案しまとめたアイデアは、プロジェクトで共 有する知財として参加企業は自由に活用している。 2012年度から2017年度までこのプロジェクトの担当教員は、2名であった が、2018年度から教員4名体制で運用している。その理由は、毎年、活動成 果のレベルが上がりそれを維持、向上させる必要があること、参加学生の気 質が少しずつ変化し、例えば企業の問い合わせへの対応が遅れるなど、様々 なことに気づき、行動に起こす能力が薄くなっている。そのため2018年度は 教員が1∼2チームを受け持ち、①学生からの報告や相談に対応する、②で きるだけ細かく観察、注意し、必要に応じ指示を出す、③企業と学生の打合 せに参加し、調整が必要なときには教員が動いている。このように連携活動 は大きな教育的効果をもたらすが、そのためには企業と学生間の調整を果た す教員にプロデュース能力が求められる。. 5.おわりに 2012年に工業会設立50周年の記念事業として始まった連携活動は、毎年、 連携の仕方や進め方、開発テーマなどを見直し、2018年度で7年目を迎え た。7年間の活動を振り返ると、参加企業の規模や得意分野、連携活動への 期待値に違いはあるものの、企業と大学の共通認識として「売れる商品作 り」を目標に掲げ、参加した学生にも企業経営に資する成果を求めてきた。 連携活動の成果として、工業会がそれまで力を入れていなかった「女子家 具」という市場の存在を確認したこと、一部の家具、雑貨は商品化され市場 に流通していること、参加した学生が家具デザインに関心を持ち、卒業後に 大川の家具メーカーに就職していることなどが挙げられる。大学にとって大 川はデザインを学んだ学生の受け皿として、今後も人材の需要が見込まれ、 大学が推進する地域貢献に合致する活動になっている。 大川プロジェクトでは、連携企業が積極的に教育に係わっているように、 地域企業と大学の連携では「地域が期待する人を育てる→その人が地域に受 け入れられそこで活動、活躍する→地域で活動する人が大学と係り次代の人 を育てる」という循環型の人づくりに発展する可能性が高く、実際、2018年 度は大川プロジェクトを経験し大川に就職した2名が後輩の指導に当たって いる(図18)。連携活動を通して人材の育成を図り、実際に大川に就職する. 大. 学. 提供 ●新鮮な感性 ●自由な発想 ●コンセプト力 ●アイデア. 社会が期待する幅広い 能力のある人材育成. 大川プロジェクト 経企 験業 現 場 で の デ ザ イ ン 実 務 の. 企. 画. デザイン 開. 発. 生. 産. 販. 売. 大 学 の 知 的 ・ 人 的 資 源 の 活 用. 企. 提供 ●企業ノウハウ ●製造技術 ●販売ルート ●販売方法. 市場の変化に対応した」 製品の開発. 人材提供 教育現場へのフィードバック. 図18 大川プロジェクトにおける循環型の人づくり. 業.

(10) デザイン学研究特集号  Vol.27-1 No.101. 機会も増えているが、反面離職するケースもある。その原因として、産地と いう社会の中で家具業界の置かれた現実に直面し、将来を危惧するなど、若 い世代を受け入れ育てていく環境が十分に整っていないことがある。今後、 工業会と大学の連携活動は商品開発だけではなく、地域の人材育成や教育な ど一企業では対応が難しい課題に展開していくことが求められると考えてい る。 【参考文献】 青木幹太,井上友子,佐藤佳代,星野浩司,佐藤慈,荒巻大樹:プロジェクト型デザイン教育の 方法,デザイン学研究別冊,65,88-89,2018 青木幹太,井上友子,佐藤佳代,星野浩司,佐藤慈,荒巻大樹:プロジェクト型デザイン教育の 実践 ─ 大川家具工業会との産学連携活動の推移とその成果,デザイン学研究別冊,62,348-349, 2015 青木幹太:プロジェクト型デザイン教育によるフィールドワークの実践,デザイン学研究特集 号84,21(4),34-39,2014 隈本あゆみ,石山隆通,下田隆,青木幹太:女性目線によるカフェスタイルの家具提案(2),デ ザイン学研究別冊,62,354-355,2015 協同組合大川家具工業会編:木輪の響き創立30周年記念誌,22-29,1993. 115.

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参照

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