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ともに住む難しさにどう対応すべきか

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Academic year: 2021

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(1)ともに住む難しさにどう対応すべきか. Successful Sharing of the Space − How to Respond to Its Difficulties − 清水忠男. SHIMIZU Tadao. 金沢美術工芸大学大学院. Kanazawa College of Art, Graduate School. もうひとつの住まい方推進協議会. Alternative Housing & Living Association. 他人とともに住むというのは、これまでも、なかなか難しい. 人の関わりを調整している。カーテンやブラインドの開け閉め. ことであったようだ。ただしそれは、これから先、ますます難. 等により、窓が内部に居る人の外部に居る人々に対するメッ. しさの度合いを増して行くと考えられる。生活環境の計画や設. セージを表現していることもよくあることだ。窓そのものに限. 計においては、どのように対応して行くべきであろうか。. らない。住まいの外観から住み手の近隣への姿勢が読み取れる こともよく経験することだろう。住宅街を散歩していると、い. 「隣人は選べない」. ろいろな表情の通りに出会う。ブロック塀の連なりに挟まれた. 私たちは、一人では生きて行けない。日頃の意識には上って. 小道を歩く時と、低い植栽や風通しの良い垣根の連なりに挟ま. いないとしても、大袈裟に言えば、地球上でそれぞれの国や地. れた小道を歩く時では、気分がかなり違う。近隣に対する住み. 域において多様な人々がともに支え合いながら生きている。そ. 手の関わり方の姿勢─「心の窓の開き方」─の違いが、否応も. うは言っても、多様な価値観や行動癖を持つ他人とともに生き. 無く伝わってくる。. るのは容易なことではない。. 他人の無作法な視線は拒みたいが、かと言って、コンクリー. 「ル・コルビジュエの家」という映画を観たことがある。20. ト板塀やブロック塀の冷たさは好まない、という住民の要望に. 世紀を代表する建築家ル・コルビジュエの設計した住宅は、そ. 応えるデザイン例を最近見つけた。地方都市の郊外にある新興. のほとんどがヨーロッパに建設されたが、この映画では、南米. 住宅街の角地にあるその住宅は、狭いながらも庭を持ち、それ. 大陸に唯一具体化された住宅クルチェット邸を舞台にしている。. を囲むように金属製フェンスが設置されている。上部は落ち着. 立地は、アルゼンチンのブエノスアイレス州ラ・プラダ郊外。. いた色調のリブ状パターンを持つ金属パネルで視線を遮り、下. 主人公は成功の証しにこの名建築に暮らすプロダクトデザイ. 部は細いロッドを格子状に組んで犬や猫の出入りを拒んでいる. ナーである。隣家に越して来た住人が部屋に太陽の光を取り入. が、芝庭の一部が見えて開放感を与え、同時に、庭内の色鮮や. れたいという思いで両家の間にある庭に面した壁に窓を穿とう. かな花の群れが格子を越えて道路側にはみ出していて、目に楽. とするのだが、主人公の妻は私生活が覗かれるのは嫌だから絶. しい。この家の住み手は、通行人にさりげなく「心の窓」を開. 対に窓を空けさせるなと言う。頑固な二人の間に挟まれて右往. き、近隣とのポジティブな関わりを実践していると言えるだろ. 左往する主人公。最終的には窓は塞がれ、人の命まで失われる. う。. というブラックコメディーだが、原題が「隣人は選べない」と あって、考えさせられた。. 「縁側」を介しての関わり. 先祖代々からの関係は別として、人々は通常、その地域の利. 日本の伝統的住空間は、木材による柱梁構造で造られていた. 便性や接する通りの雰囲気などによって自分の住まいの場所を. から、基本的に開放的で、板壁や土壁で塞がなければ、柱と柱. 選び、その結果、隣人関係が生まれる。もともとは他人同士で. の間は、その全体が「人の出入りできる大きな窓」であるとも. あるし、お互いが協議して隣人関係になったわけでないから、. 言えるだろう。その開放性の度合いは、板戸、障子戸、襖戸な. それぞれの思いや好みの違いが、この映画ほどの極端さでない. どの可動間仕切りによって制御・演出される。南に面する開口. にしても、ぎくしゃくとした関係に発展することも少なくない. 部については、強い日差しや雨の吹き込みを防ぐため、深い軒. だろう。もちろん、逆に新たな素晴らしい関係が生まれること. と広い「縁側」が設けられた。最近の住宅では、椅子座生活へ. もあるはずだが。. の転換もあって、縁側の存在は希薄となり、あっても、庭に出 入りする際の、踏み石程度の扱いになってしまった感がある. 「窓」を介しての関わり 映画「ル・コルビジュエの家」では「窓」が物語展開の重要. 22. が、本来は、内部の畳の間、板の間と一体となって生活の場を 形成する重要な役割を担っていた。. な鍵となっていた。壁に穿たれた窓は、外部の光や風を室内に. 私が子供の頃、どこにでも見られた「縁側」について、いま. 取り込む役割を持っていると同時に、内部外部それぞれにいる. だに鮮明に思い出すシーンがある。ゴールデンウィークのある. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016.

(2) 晴れた日の午前中。蝶に夢中な仲間たちと捕虫網を手に東京の. が多い。店の前に置かれた「縁台」や椅子は、そういう人々の. 高尾山裏手の細い旧街道を歩いていると、鯉のぼりがはためく. 要求に応えると同時に店の売り上げ増にも貢献することになる。. 開放的な庭越しに縁側に腰かけていた高齢の婦人が声をかけて きた。「のどが乾いたなあ」などと話していたのが聞こえたら. 仮設住宅の前で. しい。縁側に招かれ、お茶やお菓子を振る舞われ、捕虫網が. 東日本大震災の後に多くの仮設住宅が建てられた。当初は建. きっかけとなって、会話が弾んだ。婦人は蝶の学名や専門用語. 築工事の現場小屋そのもので、通路に面した出入り口を開けれ. は知らなかったが、蝶のおおよその分類や行動の違い等につい. ば、内部の私的空間が丸見えとなってしまう。住戸が抽選で割. て結構知っていて少年たちを驚かせ嬉しがらせた。豊かな自然. り当てられたため、被災前の近所づきあいも失われ、出入り口. に囲まれ、野菜や花を育てているからわかるんだろうね、と. を閉め切っての生活が続けば、被災そのものによる恐怖感の癒. のこと。やがて隣家の婦人も加わって、賑やかに時がすぎた。. えない入居者の味わった疎外感は大変なものだったろう。独り. と、突然「あ、ウスバシロチョウの活動時間帯は午前中だよ!. 住まいの人の中には自殺に至った人もいたと聞く。やがて最初. 早く行かなきゃ〜!」と誰かが叫んだ。それをきっかけにグ. の冬となり、東北地方の厳しい風雪への対処として出入り口前. ループは立ち上がり、夫人達にお礼を言うと、あたふたと、街. に風除室が設置された。春が来て風除室前の扉が開けられる. 道に戻って行った。. と、入居者は寄贈された椅子を置き、日中はそこで暖かい日差. いまや年を経て高齢者となった「昆虫少年」たちが、久々に. しに包まれながらすごすようになった。背後の出入り口は閉ざ. 会うとき、世代を超えた他人との自然な関わりを可能にしたあ. され、私的内部空間は通りから見えない。そうやって椅子に腰. の「縁側」でのひとときが懐かしく語られる。だが、住宅の集. かけていると、通りを行く人と挨拶を交わしたり、長話にさえ. 合化・高層化が進んだ最近の都市部で「縁側」の生み出す物語. 時をすごすことになる。聞いてみると、そのような他人とのつ. を見るのは難しい。. ながりがどんなにか心の支えになったか計り知れないと語る人 が多かった。. 「一店一縁運動」の試み ある町の街道沿いの商店街を活性化させるプロジェクトに参. 拡大する世代間の違い. 加したときのこと。現状調査を行ったところ、シャッター街化. 他人とともに住むというのは、なかなか難しいことだ。現代. した並びの中でかなり繁盛している店を見つけた。魚屋であ. にあっては、ことに世代間のさまざまな違いが、その難しさを. る。開放的な店構えの中で、中年の夫婦と若い息子が威勢の良. 後押ししているように思われる。昔であれば、年をとった世代. い声を張り上げている。興味深かったのは、店頭の片端に置か. の持つ経験や知識が若い世代に伝えられるという風が自然で. れた縁台と、その脇の小さなスペースの使われ方だった。良く. あったろうが、いまや、情報の入手の仕方や情報の量や巾につ. 見かけた光景は、買い物を終えた高齢の女性客が縁台に腰か. いては、若い世代の方が先を行っており、それゆえの情報交流. け、店の人と歓談している姿。また、そうして縁台に腰かけて. の断絶すら起こっている。. いる人がショッピングカートを押しながら通りかかった同じ. SNS の中で利用度の高い facebook に関する調査によると、. 年頃とおぼしき婦人を呼び止め、ひとしきり楽しそうに話し. 最近、若い世代の facebook 離れが進行しているという。年. 合った後、呼び止められた婦人が、「あーら、長居しちゃった. 取った世代では、今朝の空の色、昼間の庭先の表情、今夜の食. わね〜。もう行かなきゃ〜。それじゃ、私もその干物いただく. 卓などと日々の経験を生きている証として日記のように発信す. わ。」と買い物をして、二人一緒に帰って行く様子がしばしば. ることが多いが、新しいものを求める若い世代にとっては、退. 目撃された。さらに、ベビーカーを押してやって来た母親が、. 屈そのもので、せっかく世代、人種、文化の違いを超越して交. 車を縁台脇の空間に置き、店員や、縁台に腰かけている人に赤. 流できる手段であっても、覗く時間どころか、受信リストを占. ん坊の世話を頼んで、買い物をする姿もよく見かけられた。. めること自体が無駄なものとなってしまうらしい。直接的交流. 私たちは、この「縁台」の働きに着目し、他の店先にも、可. はさらに疎ましいものとなっているようだ。. 能なスペースがあるのなら、家の中で不要となった椅子や職業. こうなると、一つ屋根の下に多様な空間を用意して、異なる. 訓練所で製作された安価な「縁台」を置くという「一店一縁運. 世代を住まわせても、住み手自身にとっては、かなり窮屈な生. 動」を提唱した。この商店街の利用者の多くは、自家用車で郊. 活を強いられることになるのではないだろうか。人間が一人で. 外のショッピングセンターに行けない近在の人々だ。そういう. は生きて行けないのは確かなことながら、ともに住むにあたっ. 人々の中には、商店街を歩き回るのですら疲れてしまうとか、. ての時代変化に対応できるしかけやソフトづくりについての検. 一人での生活が寂しいので店の人と話すのが楽しいとか言う人. 討が、これからますます重要になって行くと思われる。 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016. 23.

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