ともに住む難しさにどう対応すべきか
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(2) 晴れた日の午前中。蝶に夢中な仲間たちと捕虫網を手に東京の. が多い。店の前に置かれた「縁台」や椅子は、そういう人々の. 高尾山裏手の細い旧街道を歩いていると、鯉のぼりがはためく. 要求に応えると同時に店の売り上げ増にも貢献することになる。. 開放的な庭越しに縁側に腰かけていた高齢の婦人が声をかけて きた。「のどが乾いたなあ」などと話していたのが聞こえたら. 仮設住宅の前で. しい。縁側に招かれ、お茶やお菓子を振る舞われ、捕虫網が. 東日本大震災の後に多くの仮設住宅が建てられた。当初は建. きっかけとなって、会話が弾んだ。婦人は蝶の学名や専門用語. 築工事の現場小屋そのもので、通路に面した出入り口を開けれ. は知らなかったが、蝶のおおよその分類や行動の違い等につい. ば、内部の私的空間が丸見えとなってしまう。住戸が抽選で割. て結構知っていて少年たちを驚かせ嬉しがらせた。豊かな自然. り当てられたため、被災前の近所づきあいも失われ、出入り口. に囲まれ、野菜や花を育てているからわかるんだろうね、と. を閉め切っての生活が続けば、被災そのものによる恐怖感の癒. のこと。やがて隣家の婦人も加わって、賑やかに時がすぎた。. えない入居者の味わった疎外感は大変なものだったろう。独り. と、突然「あ、ウスバシロチョウの活動時間帯は午前中だよ!. 住まいの人の中には自殺に至った人もいたと聞く。やがて最初. 早く行かなきゃ〜!」と誰かが叫んだ。それをきっかけにグ. の冬となり、東北地方の厳しい風雪への対処として出入り口前. ループは立ち上がり、夫人達にお礼を言うと、あたふたと、街. に風除室が設置された。春が来て風除室前の扉が開けられる. 道に戻って行った。. と、入居者は寄贈された椅子を置き、日中はそこで暖かい日差. いまや年を経て高齢者となった「昆虫少年」たちが、久々に. しに包まれながらすごすようになった。背後の出入り口は閉ざ. 会うとき、世代を超えた他人との自然な関わりを可能にしたあ. され、私的内部空間は通りから見えない。そうやって椅子に腰. の「縁側」でのひとときが懐かしく語られる。だが、住宅の集. かけていると、通りを行く人と挨拶を交わしたり、長話にさえ. 合化・高層化が進んだ最近の都市部で「縁側」の生み出す物語. 時をすごすことになる。聞いてみると、そのような他人とのつ. を見るのは難しい。. ながりがどんなにか心の支えになったか計り知れないと語る人 が多かった。. 「一店一縁運動」の試み ある町の街道沿いの商店街を活性化させるプロジェクトに参. 拡大する世代間の違い. 加したときのこと。現状調査を行ったところ、シャッター街化. 他人とともに住むというのは、なかなか難しいことだ。現代. した並びの中でかなり繁盛している店を見つけた。魚屋であ. にあっては、ことに世代間のさまざまな違いが、その難しさを. る。開放的な店構えの中で、中年の夫婦と若い息子が威勢の良. 後押ししているように思われる。昔であれば、年をとった世代. い声を張り上げている。興味深かったのは、店頭の片端に置か. の持つ経験や知識が若い世代に伝えられるという風が自然で. れた縁台と、その脇の小さなスペースの使われ方だった。良く. あったろうが、いまや、情報の入手の仕方や情報の量や巾につ. 見かけた光景は、買い物を終えた高齢の女性客が縁台に腰か. いては、若い世代の方が先を行っており、それゆえの情報交流. け、店の人と歓談している姿。また、そうして縁台に腰かけて. の断絶すら起こっている。. いる人がショッピングカートを押しながら通りかかった同じ. SNS の中で利用度の高い facebook に関する調査によると、. 年頃とおぼしき婦人を呼び止め、ひとしきり楽しそうに話し. 最近、若い世代の facebook 離れが進行しているという。年. 合った後、呼び止められた婦人が、「あーら、長居しちゃった. 取った世代では、今朝の空の色、昼間の庭先の表情、今夜の食. わね〜。もう行かなきゃ〜。それじゃ、私もその干物いただく. 卓などと日々の経験を生きている証として日記のように発信す. わ。」と買い物をして、二人一緒に帰って行く様子がしばしば. ることが多いが、新しいものを求める若い世代にとっては、退. 目撃された。さらに、ベビーカーを押してやって来た母親が、. 屈そのもので、せっかく世代、人種、文化の違いを超越して交. 車を縁台脇の空間に置き、店員や、縁台に腰かけている人に赤. 流できる手段であっても、覗く時間どころか、受信リストを占. ん坊の世話を頼んで、買い物をする姿もよく見かけられた。. めること自体が無駄なものとなってしまうらしい。直接的交流. 私たちは、この「縁台」の働きに着目し、他の店先にも、可. はさらに疎ましいものとなっているようだ。. 能なスペースがあるのなら、家の中で不要となった椅子や職業. こうなると、一つ屋根の下に多様な空間を用意して、異なる. 訓練所で製作された安価な「縁台」を置くという「一店一縁運. 世代を住まわせても、住み手自身にとっては、かなり窮屈な生. 動」を提唱した。この商店街の利用者の多くは、自家用車で郊. 活を強いられることになるのではないだろうか。人間が一人で. 外のショッピングセンターに行けない近在の人々だ。そういう. は生きて行けないのは確かなことながら、ともに住むにあたっ. 人々の中には、商店街を歩き回るのですら疲れてしまうとか、. ての時代変化に対応できるしかけやソフトづくりについての検. 一人での生活が寂しいので店の人と話すのが楽しいとか言う人. 討が、これからますます重要になって行くと思われる。 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016. 23.
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