理学療法学 第 18巻 第5 号
473〜479
頁 (1991 年)報 告
骨 盤骨切
り
術 患者
の
股 関節外転
・内転筋力
の
推移
CYBEX
machineを
用
い て *永
井
聡
1)大
野
範
夫
1)山
口光 国
D入 谷
誠
1)山 嵜
勉
1)扇 谷 浩 文
2) 要旨 当 院整 形 外 科でChiari骨 盤 骨 切 り術 また は寛 骨 臼 回転 骨 切 り術 を施 行 した症 例 (16例 17関 節,
手 術 時 年齢・
14〜
46歳,
平 均30.
0歳 ) を 対 象に,
CYBEX 皿を 用いて股 関節 内・
外 転筋力の術 後経 過 を調 査した。
そ の結 果,
外 転 筋 力ピー
ク ト ル ク値は,
術 後6 ヶ月か ら 正年で術 前 値まで回 復して い た。 しか し,
外 転 位 が大 き くな る程,
その位 置での回復 は遅 延 して いた。 内 転 筋 力につ いて は,
術 後 筋 力 低 下 する こと な く継時 的に著明に増 加 して い た。 以上の結 果か ら,
術 後 徐々 に正常な歩 行へ と獲 得されて い く過 程で,
歩 容の改 善には外 転 筋と共に拮 抗 筋で あ る内転筋が関与して い ること が示 唆さ れ た。 キー
ワー
ド 骨 盤 骨 切 り術,
筋 力,CYBEX
は じ め に 変 形 性 股 関節 症 患 者は,
主に疼 痛,
跛 行,
ADL 障 害 を主訴と して いる。 そ して,
股 関節症の進行に は骨性要 素と外転 筋力な ど力 学 的要因が大きい と考え ら れて い る1噸。 ま た,
股関節疾患術後の理学療法と して は,
従来 より外転 筋 力 強化や歩行 訓 練を 主 に行っ て いる。 股 関節 疾患の外転筋 力にっ い ては,
数 多くの報告があり,一
般 に,
その術 後 外 転 筋 力は継 時 的に回 復して くる といわ れ て いる5−
7) 。 し か し,
日 々 の臨 床の中で術 後の外 転 筋力 はMMT
で3
前 後にあ り,
長期にわたり変化し ないに も か かわ らず 歩 容が改 善されて い る症 例 を多 くみ うけ る。 nyChanges of the torque of hip abductor and adductor
muscles in patients with pelvic osteotomy
−
with CYBEX 皿 machine−
1)
昭 和 大 学 藤が丘リハ ビ リテ
ー
シ ョ ン病 院リハ ビ リテー
ション部
SaLoshi Nagai
,
RPT,
Norio Qno,
RPT,
Mitsukuni Yama−
guchi
,
RPT,
Makoto Iritani,
RPT,
Tsutomu Yamazaki,
RPT :Dept
.
of Rehabilitation,
Showa University,
Fuji−
gaoka Rehabilitation Hospital
m
昭和大学藤が丘病院 整形外科
Hirofumi Ohgiya
,
MD :Dept,
of Orthopaedic Surgery,
Showa University
,
Fujigaoka Hospital(受付日1990年1Q月11日/受理日1990年12月15日)
MMT
での 外転筋力 評 価 と歩容との あい だに相関が見ら れ に くい点は, 臨床に お いて痛感し てい る と こ ろで あ る。 そのた め歩 容の改 善には,
単に外転筋力の強化だ け を考 えて いけ ば良い のか問 題が残る。 姫 野ら は剛体バ ネモデ ルを用いた研 究か ら,
外 転 筋だけで なく拮 抗 筋で ある内 転 筋との同 時 収 縮が,
股 関節の安 定 性を得る の に大 き く 関 与 す る と論じて い るR) 。 そこ で,
今 回 著 者 らは,
骨 盤 骨 切 り術によ り臼蓋 形成 術を行っ た患 者の術 後経過に MMT と CYBEX ロを 用い て股 関 節 外 転 筋 力と内 転 筋 力につ い て術 後 推 移を調 査したの で報 告 する。 対 象 及び症 例 昭 和63年4月 以 降 当 院整 形 外 科でChiari
骨 盤 骨 切 り 術 (以 下Chiari
)ま た は寛骨 臼 回 転骨切 り術 (以 下 RAO ) を施 行した症 例の う ち男 性 3例 4関 節,
女 性 13例 13関 節,
計 16例 17関 節 を 対 象 と した。 内 訳 は Chiari 6例 6関 節,
RAO 10例 11関 節であ り,
手 術 時 年 齢は14〜46
歳 平均30.
O
歳であっ た。 方 法、
筋 力 測 定は MMT 及びLumex 社 製CYBEX
Hを用474 理学療 法学
第 18巻第
5 .
号 外転筋力測定 い,
症例の術 前・
術 後3 ヶ月 ・術 後6
ヶ月・
術 後 1 年の 外 転,
内 転 筋 力 を調 査し た。CYBEX llを 用い た測定は
,
マ ニュ
アル に従っ た側臥 位で の方法で は,
外 転 運 動での骨 盤挙上による代 償 運動 を防 ぐことが困難な た め, 本 来の 使 用 方 法 と異な り独 自 に測 定 台 を 作 製 し,
背 臥位で計 測 した (図 1)。
その際,
軸は坐骨 結節に合わ せ,
トル クパ ッ トは膝関節の外側に あわせ た。 固定は対 側 肢と骨 盤 をベ ル トにて固定 し た。 被験 者の股 関 節 可 動 範 囲 は 内転 約10
° か ら外転約15
° で あっ た 。 角速度 30deg /sec (5RPM
)で股関節外 転・
内 転 運 動 を連 続5
回行わ せ,
得られた トル ク曲 線か ら内 転筋力は ピー
ク トル ク値を計算 し,
外転筋 力は ピー
ク ト ル ク値,
内外転0
° の トル ク値,
外 転 10° の トル ク値を 計 測 した。 各々5
回の平 均 を 被 験 者の体 重で除し体重比 として百分 率 (%Body
Weight , 以下 %BW
と略 )で 表し た。 そ して,
計 測 したトル ク値の体重比か ら症 例の 術 後筋力推i移を検 討し た。
(%BW } 40 30 2010
0 術 前 3M 6M IY 図2
外転 筋ピー
ク トル ク値の推移 (平 均±標 準偏差 n−
17)MMT は
,
CYBEX 測定と同時期にダニ ェ ル の徒 手筋 力 検 査法に準じて評 価 した。 結 果 外 転 筋 ピー
ク トル ク値の推移 (図2
)は,
術 前 平 均22.
9
土6.
6
%BW ,
術 後3 ヶ月平均 16.
2
± 6.
6%BW,
術後6
ヶ 月 平均20.
4±7.
4%BW,
術後1
年 平 均 24.
1
±5.
2
%BW
で あ り,
術 後3
ヶ 月では回復せず 術 後 6 ヶ月 から1年で ほぼ術前値まで回復して いる。外転運 動による トルク値の推移 (図
3
)は,
ピー
(%BW ) 30 ト ル ク 値 / 体 重 20 10 oPEAK O
deg.
10deg.
図3 外 転 運 動によ るトル ク値の推 移 (平均値 n
=17
) 〔%BW ) 50 40 30 20 10 30 20 10 術 前 3M6M
IY 図4 内転 筋ビー
ク トル ク値の推移 (平 均±標 準 偏 差 n≡
17)骨 盤 骨 切 り術 患者の股 関節外転
・
内転筋力の推移 475 5 5−
4十 M4 4−
M 3+ 3T 3−
2十 2 2一
術前 3M 6M IY 図5 MMT 評 価で の外転 筋 力の推 移}
+一
+一
+一
55444333222 M M T ク ト ル ク値,
内 外 転 0°
の トル ク値,
外 転 10°
の トル ク 値の変 化で表し た。 ピー
ク トル ク値は,
全 症 例 術 前 後共 に内外転0
° 通 過 以前,
っ ま り内 転 位で発 生 して いた。 平 均 トル ク値の推 移は,
術 前で は,
ピー
ク ト ル ク値22.
9
±6.
6
%BW
, 内外転0
° で 20.
9
± 7.
0%BW,
外 転 正0°
で18.
9
± 7.
8
%BW で あっ た。
術 後3 ヶ月で は,
ピー
ク ト ル ク値16.
2
±6、
6
%BW ,
内外 転0
° で 14、
1± 7.
3% BW,
外 転 10Qで 10.
6± 5.
9%BW で あっ
た。 術後 6ヶ 月で は,
ピー
ク トル ク伯20,
4
±7.
4
%BW ,
内外転 0° で 18.
6
± 7.
4% BW,
外 転 IO°
で 13.
7
±7,
2
%BW
で あっ た。 術後 1年で は,
ピー
ク ト ル ク値24.
1±5.
2
% BW , 内外 転 0°
で 20.
5± 4.
3%BW,
外 転10°
で 15,
4
± 「 J.
3
%BW
で あっ た。 以E
か ら,
術 後 3 ヶ月で は外転 筋 力は,
術 前 トル ク値まで回復せず, 術 後6
ヶ 月か ら1 年で ピー
クト ル ク値は,
ぽ ぼ術前値まで回復す る が, 外 転 角度が増 すに従っ て トル ク値の回 復 は遅 延 する傾 向に あ る。内 転 筋ピ
ー
ク ト ルク値の推 移 (図4
)は,
術前平 均25.
9
±9.
3
%BW
, 術後3
ヶ 月 平均 25.
7±9.
4%BW,
術 後6
ヶ月 平 均30.
4
±9.
6
%BW ,
術後 1年 平 均35.
8± 10.
3% BW であ り,
術 後3
ヶ月で もほ と ん ど筋力が低}’
せず,
術 後6 ヶ月か ら1年と継 時 的に増加 して い く傾向 が あっ た。
MMT
評 価での外 転 筋 力 (図 5) は,
術 前4
以上 あっ た筋 力が術 後3 ヶ月で3程 度,
6 ヶ月で も術前ほど 回復して いな い。 術後1
年で4
レ ベルに回 復 してきてい る症 例も あ る が,
MMT 評 価での術 後 推 移の ばらつ きは 大き い。 内転筋力は,
術 前,
術 後 と も奈ての症 例が4+ か ら5
と,
あ まり変化を 認めな か っ た。 症 仮哩 症 例は,
Chiari骨 盤 骨 切り術を施行し た30
歳女性で あり,
術 後 1年 まで経 過を観 察 し得た患者であ る。 図6
は, その Cybex ト ル ク波 形の推 移であ る。 術 前 6M 3M 1Y 図6
症例の CYBEX トル ク波形の推移476 理学療 法学 第
18
巻 第5号術 前の 内 外 転 筋 ピ
ー
ク ト ル ク値 は,
外転36.
OFT −
LBS ,
内転34.
O FT−
LBS で あっ た。
術 後 3ヶ月で は外 転22,
0FT −LBS ,
内転34.
O
FT−
LBS,
術 後6ヶ月で は 外 転35.
O
FT −LBS ,
内転44.
O
FT −LBS
で あっ た。 術後 1年で は 外転40,
0FT −
LBS,
内転 50.
O FT−
LBS で あっ た。 こ の よ う に, 術後 1年 経 過におい て,
外 転 筋 ピー
ク トル ク値は徐々に回 復し,
図6より わ かる ように,
外 転 角度が増すに し た がい回復は遅 延 している。 それに反 し て,
内 転 筋ピー
クトル ク値は, 継 時的に著明に増加して い る。 今回の症例は,
術 後 約 3ヶ 月で退 院し,
以 後 外 転 筋 力の回復に は努めて い たと思わ れるが,
内 転 筋につ い て は,
特に訓練して いない。
考
察
日 々の臨床の中で,
変形 性 股 関節 症 患 者の術 後 外 転 筋、
。
1 茎』i‘;乙
[Il 中殿 筋 内転筋 カが長期に わ たりMMT
の評価で変 化 しないにもか か わ らず,
歩 容な ど動作の中で改善されて い る例は多 くみ うける。
理学的評 価の中で,
従来より広く施行されてい るダニ エ ル に よる徒 手 筋 力 検 査 法は,
筋 力を 重力と抵抗 と い う検 者の 主観的段階づ けに頼っ てお り,
その信 頼 性 には依然欠ける点が あ る。 それに対し諸家に よ りバネ式 や歪 式,
Cybex machine な ど に よ る方 法で筋 力の定 量 的 評 価が試み られて いる9』
−
1 今回我々 は, 術後経過に MMT の他に,
関 節 可 動 域ご とに筋力 を評 価で き る利 点 をもっ たCYBEX
を用い て, 外 転筋力と内転 筋力にっ い て術 後 推 移を調 査し た。 その結果,
外 転 筋 力はMMT で は術 後6
ヶ月を経 過し て も術前ほ ど回復していなかっ た。 しか し,CYBEX
測 定の結果, ピー
クト ルク値は術 後 6ヶ月で ほ ぼ術 前値まで に回復し,
1 年で術前値を越 えて いた。 し か し,
外転 5 度か ら10 度, さ らに 10 度か饗
ド
丐
τ π.
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一
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一
一
一一
・一
一一
一
’
“
’
一
一
一
一一
・Nt
内 転 筋繍
麟 購
図7 正中位片脚起立 とDuchenne 片 脚 起 立の筋 活 動 ヒ段 :正 中位 片 脚 起 立の筋 活 動.
卜.
段:Duchenne 片 脚 起 立の筋 活 動骨盤 骨 切 り術 患 者の股 関 節 外 転
・
内 転 筋 力の推 移 477 ら15度の可 動 域で の筋 力 回 復は悪い。 術 後は,
外転角 度が増 すに従っ て筋 力が発 揮しに くい とい う結 果を得た。 志 波らはChiari
骨 盤 骨切り術後の外転筋力につ い て , 術後 3ヶ月めに は一
時 的に低 下 し,
6ヶ月で ほぼ術 前の 値 まで回 復,
1年で術 前 値を越えており,
ま た,
外 転 25 度付 近の筋 力 回復が悪い と先に報 告 して いる16 )。 今 回 の調 査 結 果からも,
志 波ら と同様の結 果を得た。 こ の原 因と して は,
術 中の股 関 節周開 筋に対する侵襲, 特に中 殿 筋の深 層や,
小殿筋にまでい た る影響が考え られる。 ま た骨 性 要素によ る生力 学的な面か ら, 外転筋力方 向の 変 化や,
筋 張 力の変 化が考え ら れ る16’
18)。 歩行 時の筋 力 を考えて み る と,
外転位で の筋 力とい う よ り は, 内外 転O
度か,
さ らに内転位で の筋 力が関係してい る と考えら れ る。 っ ま り は,
今回の結果か らピー
ク トル ク値 発 生角 度 付 近で の筋 力が骨盤平 衡に関 係して いる と考え ら れ る。 股関節疾患患者の筋力 増強訓 練 として, 単に抗 重 力 位で の股関節外転とい う能力を求め るの で はなく,
歩 行とい う荷 重 位で,
しかも動 的 場 面の中で外転 筋 筋 活動量 を高 めてい く訓 練 が重 要である。 以 上の点か ら,一
般に骨盤 骨 切り術 施 行 患 者の股 関 節外 転 筋 力は,
術 後6 ヶ月か ら 1 年で回復 する とい うことがいえ る。 そ して,
少な く と も術 後 6ヶ月か ら1年は,
杖を使 用さ せ,
より正中位で の歩 行 か ら外 転 筋の活 勁 を 促 す 必要が あ る といえ る。 次に,
今 回の症 例を既に報 告し た19> 健 常人 (16
名32 関 節,
男 性7
名,
女 性9
名,
年齢21〜31
歳 平均24.
O
歳 )の測 定 結 果 (外 転 筋 ピー
ク トル ク 値 は 平均 36,
7%BW ,
内転筋ピー
ク トルク値は34,
4%BW ) と比 較 する と, 今回の症例の術 前外転筋 力は健 常者の約 62% とい う結果であっ た。
さらに,
術 後1年におい て も健 常 者の 約67
%BW であっ た。 次に術前内転筋力は,
健 常 者に 比べ て75
%,
術 後 1年で 104% であっ た。
今 回の症 例 は, 術 前の疼痛や跛行は比 較 的 軽 度であっ た。 それに も か か わ らず,
筋 力の ピー
クト ル ク値は健 常 人よ り外 転筋 に おいて は約40
%, 内 転筋で は約 25% 筋 力 低 下 して い た。
この こ と か ら,
股 関 節の機 能 不 全が外 転筋力に影響 を 及ぼすの みな らず,
内転 筋にも少な か らず 影響を及ぼ して い る ことが示 唆さ れ た。 臼 蓋 形成術を施行する ことに よっ て生 力 学 的 不 均 衡は 理論 上お ぎなえ る【
T)18)。
今回の症 例に お い て術 後 1年 経 過し た状 態であっ ても健 常 者よ り外 転 筋 力は約 30% 低 下して いた。 それに対して内転 筋 力は,
健 常 者の レ ベ ル に達 して いた。 さ らに術後 経 過を観 察し外転筋 力が健常 者の レ ベ ルまで回 復し えるのか ? ま た そ れ まで にどの 程度期間がかか るのか? 今 後も検討したい と考えてい る。 次に, 内転 筋につ いて であるが,
今 回の症 例は当 院の 術 後プロ グラムに従い,
術後約3
ヶ月で退 院し以 後,
自 宅に て外 転筋力の強化に は努め ていた と思わ れ る が,
内 転 筋につ いては特に訓練を行っ て いな か った症例で あ る。 しか し,
内転筋力は術 後筋力 低 下は認めず,
術 後6 ヶ月,
1 年と筋力は継時 的に著 明に増 加して い る。 今 國の結 果 から,
内転筋の訓練を 特に行っ て いない にもか かわ らず,
内転筋 力が継 時 的に増 加して いたの は,
日常 生 活の歩 行 によ る影 響が大 きい と考え られ る。
従 来,
臼 蓋 形 成 不 全 など不 安 定な股 関 節は内 転 筋の過 度の収 縮が,
臼蓋と骨 頭の不 安 定 性 を助 長しか ね ないと されて い るSO)m )o し か し,
姫 野ら は剛体バ ネモ デルを 用いた力 学 的シ ュ ミ レー
シ ョ ンか ら,
実 際の歩 行に お い て は外 転 筋と拮 抗 筋であ る内転 筋との同 時 収 縮の結 果, 筋合力は外転筋のみの収 縮に く らべて よ り内 方 化し骨性 要 素の不安 定 性を代 償し て安 定性を得るのに作用して い ると報 告 して いるs)22 )。
そ して,
こ の よ う な臼 蓋形成不全を旱 して いる癨 例に対 し,
骨頭被覆の拡 大 を目的に,
骨盤 骨 切り術など臼蓋 形 成 術が おこな わ れ る が, その術後は,
外 科 的侵襲な どに より外転筋力の低F
した状態で の歩 行 をよぎなくされる。
その結 果, これ らの症例が,
Trendelenburg 歩 行 や,
Duchenne 歩 行 を呈し て くる の は,
周 知のと おりで ある。 図7
は, 正中位の片 脚 起 立 と,
体 重 中心 を起 立 側に移 動 させ る いわ ゆる Duchenne 歩 行肢位で の起立側の内・
外 転 筋の筋 電 図 波 形であ る。 上 段に比べ下段のDuche−
nne 歩 行 肢 位で は,
外 転 筋の筋 活 動量 は減少し内転 筋の 筋 活 動 量は著明に増 加して いる。 今 回の結果か ら,
術 後 内 転 筋 力が著 明に増 加して いたのは,
患者は中殿 筋 跛行 を呈 する が,
その際に立脚期に おい て内転筋の筋活 動 量 が大 きい こと が影 響 して い る と考え ら れ る。 こ の よ うな 症例の歩行が,
中殿筋跛行から徐々 に獲得されて い く過 程で,
外 転 筋と共に拮抗筋で あ る内転筋が関与して いた ことが示 唆さ れ た。 次に,
正 常 歩 行にお ける外 転 筋 群と 内転筋群の筋 活 動につ いて述べ る勸。
外 転 筋 群の活 動は,
立 脚 相の下 肢に体 重が負 荷さ れ た と き遊脚側の骨盤が.
.
ド 方に傾 斜 するの をコ ン トロー
ルする と き に生じ る。 そ し て,
立脚相のあいだ反対側の脊柱起 立 筋 と共 同して働 き,
体幹の姿勢を維 持す る。 次に内転筋群の活 動は,
最 初に 接踵期に股 関節を 安定 化す るた め に働 き,
接 踵後に起こ る骨盤の回旋 運 動 をコ ン トロ 「 ルする。 次の も うひ とっ の ピー
ク は立 脚 相の終 わり と遊 脚 相の始めの聞に起こ る。478 理学 療法学 第
18
巻 第5
号 これは, 内転 筋群が 遊脚期の下 肢を前 方に振り出 す ため の股屈筋として作用 し,
ま た接 踵 前の遊 脚 ド肢の位 置決 定に関 係して いる と言 わ れて い る。
内転 筋は振り出しの 股 屈 筋と共に,
遊 脚 下 肢を体の中心線に向か わ せ る よう に内側 方 向に働 く力として作 用 し重 心 線の決定に作 用し て い る。 以 上よ り,
人聞は直 立二足歩行を行っ てお り一
足だ け で考え るこ と は非常に困難であ る。 術 後は静 的に とらえ れ は,
図7
の下 段に示 し た ように,
Duchenne 歩行肢位 で の筋 活 動を呈 する症 例が多いが,
こ の よ う な状 態か ら 反 対 側を振 り出 すこ とは難し い。 振り出し に は, こ こか ら外 転 筋の活動と脊 柱起 立筋の活 動が体 幹と骨 盤の安 定 性に作用 する が, 術後の筋 力 低 下か ら重 心の動 揺 は大 き く な り股関節の安 定 性は 低 下 す る。 そ れに ともな っ て内 転 筋が逆に重 心 線の決定に大き く関与 し,
内転 筋 活 動 量 は増 加し 二足 歩 行とい う ものが 成 り立っ
て い る と考える。 そこで, 術 中侵襲を加え ら れ た外転筋に比べ,
歩 行時に より正中位を と る た めの役 割 を 果たす 内転筋の方が筋力 は著明に増 加 して い た と考え られ る。
今 後 さ らに術 後 経 過 を観 察 すると共に歩行分析,
勁 作 解 析か らの検 討 も加え筋 力の回 復メ カニ ズム にっ いて も 検 討 していき たい。 ま と め臼 蓋形 成術を施 行し た症例 (
16
例 17関節,
手 術時年 齢・
14〜
46 歳 平均30,
0
歳)を対象に,
CYBEX U を用いて股 関節 内・
外転筋力の術 後 経 過 を調 査 した。1,
外 転 筋 力ピー
ク ト ル ク値は,
術 後6 ヶ月か ら1
年 で術前 値 まで回 復 していた。 2.
外 転 位が大 きくな る程, その位 置で の筋 力 回 復は 遅 延 して いた。3 .
内転筋 力につい て は,
術 後 筋 力 低 下 すること なく 継 時的に著明に増加 して いた。 術 後徐々 に正常な歩行へ と獲 得さ れて い く過 程で,
歩 容の 改 善には外転筋と共に拮 抗 筋で ある内 転 筋が関 与し てい る ことが示唆さ れ た。 本論文の要 旨は第 25回日本理学 療 法 上 学 会にて報 告 し た。 参 考 文 献 1) 稗田 寛・
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fiasebl
o
diregutvacaswAij
・INtzma1omeif
479
<Abstract>
Changes of theTorque of Hip Abductor and Adductor Museles inPatieRts with Pelvic
Osteotomy
With CYBEX llMachine
Satoshi NAdAI, RPT, Norio ONO, RPT, Mitsukuni YAMAGUCHI, RPT, Makoto IRITANI, RPT, Tsutomu YAMAZAKI, RPT,
Dopt.
ofRehabigitatioza
Showa
Uitiversity,
Fletiigaoka
Rehabilitation
Hbspital
Hirofumi OHGIYA, MDDopt,
of
Orthopaedic
Surge7:y,
Showa
[iniveTsiC)p,
Fuiigaoka
HbspitaJ
The purpose inthisstudy was toanalyze the changes ef the torque ef hip abductor and adductor rnuscles comparing with pre and post operative stage u$ing
the
Cybex
].
Seventeen pre-arthrosisand early osteoarthritis patientswho had taken surgical treatment
of either
Chiari
pelvicosteotomy or rotational acetabuaar osteotomy were examined.The
aver-age age of thesepatients was
30.0
years(range
from
14
to46
years old).
From
theanalysis ofthe
both
muscles' peak torque, we could get the following results,
1.
The
period that the peak torque of abductor muscle carne up tobecome
it's
pre-operative Ievelwas within 6 to12months from the operation.
'
2. The re.covery of the torque of abductor muscle was
delayed
anddithcult
in companywith the
increased
angle of abduction.3.
The
adductor muscle terquedid
not decrease after the operation and rather graduallyincreased.