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研究論文 パーム / ヤシ脂肪酸エチルヘキシルの混合による * 軽油の燃料性状および燃焼特性の改善 渡邉勇太 1) 河崎澄 2) 山根浩二 3) 近藤千尋 4) 狩野孝明 5) Improvement of the Combustion Characteristics and Fu

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響を受けた履歴となる.このような複合要因を考慮したモデ ルによる着火遅れ予測と,その予測値に基づいたフィードフ ォワード制御によって燃料噴射時期の操作が行わている. 以上の着火時期制御によって,図10 中段の示すように,最 大圧力上昇率のオーバーシュートを防止して,燃焼音の悪化 を効果的に低減できている.また,図示有効圧力IMEP につ いては着火時期制御時にも燃料噴射量に従った特性を得てい る.以上より,着火時期制御によって,ドライバーのアクセ ル操作に応じたトルク特性を燃焼音悪化による違和感無く提 供可能となることを確認した. 5.ま と め クリーンな排気と低燃費を同時に達成させるためのPCI 燃焼コ ンセプトを,低圧縮比を特徴とした新開発エンジンシステムへ適 用した.またPCI 燃焼を実用化するための課題であった筒内 状態の変動に対する EM,燃費および燃焼音の諸性能のロバ スト性の改善に取り組んだ.これにより以下の知見を得た. (1) 低圧縮比 14.0,高圧ループ式のクールド EGR,高効率過 給,およびピエゾ駆動式高性能インジェクターで構成され るエンジンシステム用いて,φ-TマップでのSoot 生成領 域を完全には回避させずに燃焼後期の HC,CO および Soot の酸化促進を狙った混合気分布と,長すぎない予混 合期間での燃料噴射時期の操作によるTDC への着火時期 制御性を確保した,狙いのPCI 燃焼を実現できる.これ によりNOx,Smoke,および燃費の同時低減と,HC, CO および燃焼音の悪化抑制を達成できる. (2) 本 PCI 燃焼において,近接多段噴射を用いることで,噴 霧の過分散を防いでオーバーリーン混合気が抑制され,ま た混合気と燃焼室壁面との干渉が低減される.これらによ って未燃損(HC,CO)と壁面冷損を低減できる. (3) 本 PCI 燃焼において,筒内状態の変動に対する諸性能の ロバスト性を改善する手段として,近接多段噴射による混 合気均一性の低下,および着火遅れの変動に応じて燃料噴 射時期を調整して着火時期を変動させない着火時期制御 が有効である. (4) 筒内の平均温度と圧力に加えて,噴霧混合気形成に関わる 諸因子を入力項として拡張した Arrhenius 型の実験式, Livengood-Wu 積分,および実験計画法によるモデル定数 の統計的な最適化を組合せた物理モデルによって,本PCI 燃焼の着火遅れを十分な精度で予測可能である. (5) 上記モデルによる着火遅れ予測に基づいたフィードフォ ワード型の着火時期制御システムをECU に実装すること で,本 PCI 燃焼の過渡運転において,諸性能のロバスト 性改善に有効な,適正な着火時期の制御が可能である. 参 考 文 献 (1) 島崎直基, ほか: 上死点近傍燃料噴射による予混合ディー ゼル燃焼コンセプト,自動車技術会論文集, Vol.36, No.3, p.31-36 (2005) (2) 村田豊, ほか: 可変バルブタイミングによる予混合ディー ゼル燃焼の中速中負荷への適用, 自動車技術会論文集, Vol.31, No.6, p.73-78 (2005) (3) 志茂大輔, ほか: 予混合型ディーゼル燃焼による排気と燃 費の低減(第1 報)―ITIC-PCI 燃焼コンセプトの基本的検証 ―,自動車技術会論文集, Vol.42 No.4 p.867-872, (2011) (4) 志茂大輔, ほか: 予混合型ディーゼル燃焼による排気と燃 費の低減(第2 報)―ITIC-PCI 燃焼コンセプトの実用的検証 ―,自動車技術会論文集, Vol.42 No.4 p.873-878, (2011) (5) Hasegawa, M.,et al. : Study on Ignition Timing Control for Diesel Engines Using In-Cylinder Pressure Sensor,

SAE paper, No. 2006-01-0180

(6) 中山茂樹,ほか: 筒内物理状態に基づくモデルベース燃焼制 御の開発,自動車技術会論文集, Vol.38, No.6, p.65-70 (2007) (7) Guerrier, M., et al.: The Development of Model Based Methodologies for Gasoline IC Engine Calibration, SAE paper, No2004-01-1466

(8) 吉田元則,ほか: 直噴ディーゼルエンジンにおけるモデル ベースキャリブレーションの適用,マツダ技報,No.24, p.165-168 (2006)

(9) Sakono, T., et al.: MAZDA SKYACTIV-D 2.2L Diesel Engine, 20th Aachen Colloquium Automobile and Engine Technology, p.943-965, (2011)

(10) 居倉伸次,ほか: 定容燃焼器における燃料噴霧の着火遅 れ,機械学会論文集,No41-345,p.1559-1568, (1975) (11) Livengood, J.C., and Wu, P.C.: Correlation of Autoignition Phenomena in Internal Combustion Engines and Rapid Compression Machines, 5th International Symposium on Combustion, p.347-356, (1955)

(12) Kim S.-K., et al. : A numerical study of the effects of boost pressure and exhaust gas recirculation ratio on the combustion process and exhaust emissions in a diesel engine, Int. Journal of Engine Research, Vol.8, p.147-162, (2007) (13) Kennedy. J., et al. : Particle Swarm Optimization, The1995 IEEE International Conference on Neural Network, vol.Ⅳ, pp.1942-1948, (1995)

Fig. 11 Model-based ignition timing control effect on heat release rate results of in transient operating condition

パーム/ヤシ脂肪酸エチルヘキシルの混合による

軽油の燃料性状および燃焼特性の改善

*

渡邉 勇太1) 河崎 澄2) 山根 浩二3) 近藤 千尋4) 狩野 孝明5)

Improvement of the Combustion Characteristics and Fuel Properties of Gas Oil

by Blending Fatty Acid Ethylhexyls Derived from Palm/Coconut

Yuta Watanabe Kiyoshi Kawasaki Koji Yamane Chihiro Kondo Takaaki Kanoh

This paper describes the combustion characteristics and fuel properties of gas oil blended with fatty acid 2-ethylhexyls derived from palm/coconut oil. In this study, lauric acid 2-ethylhexyl (2H-12) having the cetane number of 66.7 and the pour point of -32.5ºC, and palmitic acid 2-ethylhexyl (2H-16) having the cetane number of 73.1 and the pour point of -2.5ºC are blended into gas oil to improve ignition quality and/or cold flow property. Experimental results of engine bench tests show that by blending 2H-12 or 2H-16 into gas oil, the ignition delay is shortened and premixed-like combustion immediately after the auto-ignition is suppressed. As the result, the thermal efficiency together with nitrogen oxide emissions are improved. However, the short ignition delay obtained at the blend ratio of 20vol% leads to increase in smoke emission.

KEY WORDS : heat engine, bio-diesel fuel, performance, emission gas, 2-ethylhexyl ester, palm oil(A1) 1.ま え が き

パーム油は単位面積当たりの収穫量が多いエネルギー作物 であり,その高い生産性からバイオディーゼル燃料の原料と して期待されている.また,パーム油には飽和脂肪酸である パルミチン酸が多く含まれているため,パーム油脂肪酸メチ ルエステル(Palm Oil Methyl Ester;PME)は着火性や酸化安 定性に優れている(1)(2).しかし,飽和脂肪酸エステルを主成分 とするが故に,PME の流動点は約 15ºC であり,使用可能な 地域や季節が限定されるという課題がある. 脂肪酸エステルの低温流動性を改善する方法として,エス テルの合成にメタノールよりも長鎖のアルコールを用いる方 法がある(3-5).著者らは既報(6)において,パーム/ヤシ由来脂 肪酸と 2-エチルヘキサノールを用いて合成した,高い低温流 動性を有する脂肪酸2 エチルヘキシルの燃料性状とディーゼ ル燃焼特性を調査した.調査した脂肪酸エステルは,カプリ ル酸,ラウリン酸,およびパルミチン酸エチルヘキシル(そ れぞれ2H-08,2H-12,2H-16 と称す)である.表 1 に示すよ うに,それらは脂肪酸メチルエステルに比べて約 40�低い流 動点を有すると共に,ディーゼル燃料油として十分な着火性, 酸化安定性,潤滑性も有していることが明らかとなった.さ らに,高着火性の2H-12 および 2H-16 をディーゼル機関にニ ートで用いた場合には,軽油に比べて高い熱効率と低い燃焼 騒音が実現できるとともに,窒素酸化物,未燃炭化水素およ び一酸化炭素の排出量を低減できることが明らかとなった.

Table 1 Fuel properties of fatty acid ethylhexyls 2H-08 2H-12 2H-16 JIS-2D Density*1 g/cm3 0.87 0.86 0.86 0.81

Kinematic viscosity*2 mm2/s 2.8 5.1 8.2 2.4

Lower Heating Value MJ/kg 35.9 37.6 38.0 42.7 Pour Point oC <-50 -32.5 -2.5 -16 Oxidation stability*3 h >48 >48 >48 -Cetane number 51.9 66.7 73.1 -Distillation T10 ºC 287.0 332.5 344.5 215 T50 ºC 289.0 336.0 350.5 272 T90 ºC 289.5 338.0 365.7 338 100% Carbon Residue mass% 0.02 0.002 0.001 ND Carbon mass% 75.0 76.9 78.3 86.1 Hydrogen mass% 12.5 12.8 13.0 13.7 Oxygen mass% 12.5 10.3 8.7 <0.1 Lubricity*4 μm 433 386 193 -*1 15ºC, *2 40ºC , *3 Induction period evaluated with Rancimat test (EN14112) *4 Size of wear scar after High Frequency Reciprocating Rig (HFRR) test 以上のようなニート使用時の機関性能および排気特性を踏 まえると,表 1 に示した脂肪酸エステルのうち,2H-16(セタ ―――――――――――――――――――――――――――― *2013 年 5 月 7 日受理. 1)・3)・4)滋賀県立大学(522-8533 滋賀県彦根市八坂町 2500) 2)滋賀県立大学大学院(同上) 5)ライオン(株)( 132-0035 東京都江戸川区平井 7-2-1) (E-mail:[email protected])

(2)

ン価73.1,流動点-2.5℃)は軽油に混合するとセタン価向上剤 としての効果を示す可能性がある.また,2H-12(セタン価 66.7, 流動点-32.5℃)については,セタン価向上剤と共に流動点降 下剤としての効果も期待できる. そこで本研究では,軽油に比べて着火性の高い2H-16,およ び着火性と低温流動性が共に高い2H-12 を軽油に混合するこ とによる,軽油の燃料性状およびディーゼル燃焼特性改善の 可能性を明らかにすることを目的とした.そのためにまず, 燃料性状に及ぼす2H-12 および 2H-16 混合濃度の影響を調査 した.さらに,種々の混合濃度の燃料を用いてエンジンベン チ試験を行い,混合濃度と機関性能および排気特性の関係を 明らかにした. 2.脂肪酸 2 エチルヘキシルの混合が燃料性状に及ぼす影響 本研究では,ラウリン酸 2 エチルヘキシル(ライオン(株) 製,純度99%),およびパルミチン酸 2-エチルヘキシル(同 社製,純度97%)を,それぞれ JIS2 号軽油に 10 ~ 50vol%混 合した燃料の性状を評価した. 図1 に,2H-12 および 2H-16 の混合濃度に対する流動点の 変化を示す.なお,流動点は自動流動点・曇り点試験器(田 中化学機器製作株式会社製 MPC-102A 形)を用いて,空気加 圧法(ASTM D6749)により測定した.図 1 より,流動点 -32.5℃2H-12 を JIS 2 号軽油(流動点 -16℃)に混合すると,混合 濃度の増加に対してほぼ線形に流動点が低下することがわか る.一方,2H-16 の流動点(-2.5℃)は JIS2 号軽油よりも高い ため,これを軽油に混合すると流動点は単調に上昇すると予 想していた.しかし,実際には2H-16 の濃度を高めていくと, 流動点は一旦低下して10vol%において約-20℃の極小値をと り,20vol%を越える濃度では軽油よりも高くなった.このよ うに,軽油よりも流動点の高い2H-16 を少量混合することに より流動点がかえって低下する理由については,側鎖を有す る脂肪酸エステルを軽油中に少量分散させると,それが軽油 中の長鎖パラフィンの凝集と結晶化を阻害するためと考えて いる.

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Fig.1 Effect of 2H-16, 2H-12 blend on pour point

2 は,2H-12 および 2H-16 の混合による,着火性の変化 を示す.着火性はFIA セタン価 CNFIAにより評価した.ここ で,FIA セタン価は,定容燃焼装置(Fueltech 製 FIA-100)を 用いて測定した試料の着火遅れ時間を,セタン価標準燃料の それと比較することにより算出したセタン価である.図2 よ り,2H-12,2H-16 のいずれを混合しても着火性は単調に増加 すること,および2H-16 を混合した方がセタン価は大きく向 上することがわかる. 以上の結果より,2H-12 を軽油に混合すると低温流動性と着 火性が共に向上すること,2H-16 については,20vol%程度ま での混合濃度であれば,低温流動性を損ねることなく着火性 が向上することが明らかとなった.

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Fig.2 Effect of 2H-16, 2H-12 blend on CNFIA

3.脂肪酸エチルヘキシル混合軽油のディーゼル燃焼特性 3.1 �試機関および実験�� エンジンベンチ試験には,コモンレール噴射装置(デンソ ー製 ECD-U2)を備えた水冷単気筒 4 サイクル直噴式ディー ゼル機関(日産ディーゼル製FD-1)を用いた.表 2 に,試験 機関の主要諸元を示す. 実験中は,燃焼室内圧力をピエゾ式圧力センサー(KISTLER 6053C)により,燃料噴射弁ニードルリフト量をホール素子式 ギャップセンサーによりそれぞれ検出し,それらの信号を燃 焼解析装置(横河電機DL750)に取り込み,指圧線図解析を 行った.また,排気中の一酸化炭素濃度CO を ND-IR 式分析

Table 2 Engine specifications

Engine type Direct-injection diesel engine Single cylinder,Water cooled Bore×Stroke 108mm×115mm

Displacement 1053cm3 Compression ratio 18.1:1

Combustion chamber Re-entrant type (d/D=0.49) Fuel injection Common-rail injection Injection nozzle 0.18mm×5holes, =150º

計(ベスト測器BCC-661AS)により,全未燃炭化水素濃度 THCH-FID 計(ファームテック EXLⅡ-311)により,窒素酸化 物濃度NOx を化学発光分析計(ヤナコ ECL-88AO)によりそ れぞれ測定した.排気黒煙濃度Smoke はボッシュ式スモーク メータ(ZEXEL DSM-10)により測定した.さらに,排気微 粒子 PM を,マイクロダイリューショントンネル(エフテクMIT-2000)を用いて捕集し秤量するとともに,ジクロロメ タン溶媒を用いたフィルターソーク法により,全微粒子 PM を可溶有機成分SOF と不可溶成分 ISF に分離して秤量した. 供試燃料には,JIS2 号軽油に 2H-12,2H-16 をそれぞれ 10, 20,50vol% 混合したものを用いた.実験中は,冷却水温度を 80℃に保ち,機関回転数を 1800rpm 一定,燃料噴射圧力を 100MPa一定とした.燃料噴射時期 jは-6°ATDCから3°ATDC の間で変化させた.また,供試機関の定格トルク付近での性 能・排気特性を把握するために,正味平均有効圧力BMEP を 0.6MPa 一定とした. 3.2 実験��および考� 3.2.1 脂肪酸 2 エチル��シルの混合濃度の変化が性能およ び排気特性に及ぼす影響 2H-12 および 2H-16 混合軽油を用いてエンジンベンチ試験 を行い,混合濃度の変化が燃焼特性に及ぼす影響を調べた. 図3 は,(a) 2H-12 および (b) 2H-16 を種々の濃度で混合した軽 油を用いた場合の,筒内圧力p,熱発生率 ROHR,ニードルリ フトhzのクランク角経過を示す.正味平均有効圧力はBMEP = 0.6MPa で一定,燃料噴射時期はj = -3ºATDC 一定とした.熱 発生率のクランク角経過を見ると,2H-12 および 2H-16 の混 合濃度が増加するにつれて,実機関においても熱発生開始時 期が早くなることが分かる.図4 は,図 3 の熱発生率から求 めた混合濃度と着火遅れの関係を示す.2H-12 および 2H-16 のいずれを混合した場合も,混合濃度が0%から 50vol%まで 上昇する間で着火遅れは約 1ºCA 度減少し,50vol%以上では 着火遅れはほとんど変化しないことがわかる. さらに,図3 によると 2H-12 および 2H-16 の混合濃度の増 加とともに,熱発生開始直後の予混合的燃焼に伴う急峻な熱 発生率ピークが抑制される.これは,着火遅れの減少によっ て予混合気形成に許される時間が短くなることにくわえて, 高沸点の脂肪酸エステルの混合によって燃料の気化性が低下 するために,熱発生開始までに形成される予混合気量が減少 することが原因と考えられる.このように,予混合的燃焼が 抑制されたことにより,着火直後の圧力上昇が穏やかになり, 筒内最高圧力も低く抑えられる. 以上のような燃料混合による燃焼特性の変化が,機関の熱

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(b) 2H-16

Fig.3 In-cylinder pressure p, rate of heat release ROHR, and nozzle needle-lift h

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ン価73.1,流動点-2.5℃)は軽油に混合するとセタン価向上剤 としての効果を示す可能性がある.また,2H-12(セタン価 66.7, 流動点-32.5℃)については,セタン価向上剤と共に流動点降 下剤としての効果も期待できる. そこで本研究では,軽油に比べて着火性の高い2H-16,およ び着火性と低温流動性が共に高い2H-12 を軽油に混合するこ とによる,軽油の燃料性状およびディーゼル燃焼特性改善の 可能性を明らかにすることを目的とした.そのためにまず, 燃料性状に及ぼす2H-12 および 2H-16 混合濃度の影響を調査 した.さらに,種々の混合濃度の燃料を用いてエンジンベン チ試験を行い,混合濃度と機関性能および排気特性の関係を 明らかにした. 2.脂肪酸 2 エチルヘキシルの混合が燃料性状に及ぼす影響 本研究では,ラウリン酸 2 エチルヘキシル(ライオン(株) 製,純度99%),およびパルミチン酸 2-エチルヘキシル(同 社製,純度97%)を,それぞれ JIS2 号軽油に 10 ~ 50vol%混 合した燃料の性状を評価した. 図1 に,2H-12 および 2H-16 の混合濃度に対する流動点の 変化を示す.なお,流動点は自動流動点・曇り点試験器(田 中化学機器製作株式会社製 MPC-102A 形)を用いて,空気加 圧法(ASTM D6749)により測定した.図 1 より,流動点 -32.5℃2H-12 を JIS 2 号軽油(流動点 -16℃)に混合すると,混合 濃度の増加に対してほぼ線形に流動点が低下することがわか る.一方,2H-16 の流動点(-2.5℃)は JIS2 号軽油よりも高い ため,これを軽油に混合すると流動点は単調に上昇すると予 想していた.しかし,実際には2H-16 の濃度を高めていくと, 流動点は一旦低下して10vol%において約-20℃の極小値をと り,20vol%を越える濃度では軽油よりも高くなった.このよ うに,軽油よりも流動点の高い2H-16 を少量混合することに より流動点がかえって低下する理由については,側鎖を有す る脂肪酸エステルを軽油中に少量分散させると,それが軽油 中の長鎖パラフィンの凝集と結晶化を阻害するためと考えて いる.

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Fig.1 Effect of 2H-16, 2H-12 blend on pour point

2 は,2H-12 および 2H-16 の混合による,着火性の変化 を示す.着火性はFIA セタン価 CNFIAにより評価した.ここ で,FIA セタン価は,定容燃焼装置(Fueltech 製 FIA-100)を 用いて測定した試料の着火遅れ時間を,セタン価標準燃料の それと比較することにより算出したセタン価である.図2 よ り,2H-12,2H-16 のいずれを混合しても着火性は単調に増加 すること,および2H-16 を混合した方がセタン価は大きく向 上することがわかる. 以上の結果より,2H-12 を軽油に混合すると低温流動性と着 火性が共に向上すること,2H-16 については,20vol%程度ま での混合濃度であれば,低温流動性を損ねることなく着火性 が向上することが明らかとなった.

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2H-16

2H-12

Fig.2 Effect of 2H-16, 2H-12 blend on CNFIA

3.脂肪酸エチルヘキシル混合軽油のディーゼル燃焼特性 3.1 �試機関および実験�� エンジンベンチ試験には,コモンレール噴射装置(デンソ ー製 ECD-U2)を備えた水冷単気筒 4 サイクル直噴式ディー ゼル機関(日産ディーゼル製FD-1)を用いた.表 2 に,試験 機関の主要諸元を示す. 実験中は,燃焼室内圧力をピエゾ式圧力センサー(KISTLER 6053C)により,燃料噴射弁ニードルリフト量をホール素子式 ギャップセンサーによりそれぞれ検出し,それらの信号を燃 焼解析装置(横河電機DL750)に取り込み,指圧線図解析を 行った.また,排気中の一酸化炭素濃度CO を ND-IR 式分析

Table 2 Engine specifications

Engine type Direct-injection diesel engine Single cylinder,Water cooled Bore×Stroke 108mm×115mm

Displacement 1053cm3 Compression ratio 18.1:1

Combustion chamber Re-entrant type (d/D=0.49) Fuel injection Common-rail injection Injection nozzle 0.18mm×5holes, =150º

計(ベスト測器BCC-661AS)により,全未燃炭化水素濃度 THCH-FID 計(ファームテック EXLⅡ-311)により,窒素酸化 物濃度NOx を化学発光分析計(ヤナコ ECL-88AO)によりそ れぞれ測定した.排気黒煙濃度Smoke はボッシュ式スモーク メータ(ZEXEL DSM-10)により測定した.さらに,排気微 粒子PM を,マイクロダイリューショントンネル(エフテクMIT-2000)を用いて捕集し秤量するとともに,ジクロロメ タン溶媒を用いたフィルターソーク法により,全微粒子 PM を可溶有機成分SOF と不可溶成分 ISF に分離して秤量した. 供試燃料には,JIS2 号軽油に 2H-12,2H-16 をそれぞれ 10, 20,50vol% 混合したものを用いた.実験中は,冷却水温度を 80℃に保ち,機関回転数を 1800rpm 一定,燃料噴射圧力を 100MPa一定とした.燃料噴射時期 jは-6°ATDCから3°ATDC の間で変化させた.また,供試機関の定格トルク付近での性 能・排気特性を把握するために,正味平均有効圧力BMEP を 0.6MPa 一定とした. 3.2 実験��および考� 3.2.1 脂肪酸 2 エチル��シルの混合濃度の変化が性能およ び排気特性に及ぼす影響 2H-12 および 2H-16 混合軽油を用いてエンジンベンチ試験 を行い,混合濃度の変化が燃焼特性に及ぼす影響を調べた. 図3 は,(a) 2H-12 および (b) 2H-16 を種々の濃度で混合した軽 油を用いた場合の,筒内圧力p,熱発生率 ROHR,ニードルリ フトhzのクランク角経過を示す.正味平均有効圧力はBMEP = 0.6MPa で一定,燃料噴射時期はj = -3ºATDC 一定とした.熱 発生率のクランク角経過を見ると,2H-12 および 2H-16 の混 合濃度が増加するにつれて,実機関においても熱発生開始時 期が早くなることが分かる.図4 は,図 3 の熱発生率から求 めた混合濃度と着火遅れの関係を示す.2H-12 および 2H-16 のいずれを混合した場合も,混合濃度が0%から 50vol%まで 上昇する間で着火遅れは約1ºCA 度減少し,50vol%以上では 着火遅れはほとんど変化しないことがわかる. さらに,図3 によると 2H-12 および 2H-16 の混合濃度の増 加とともに,熱発生開始直後の予混合的燃焼に伴う急峻な熱 発生率ピークが抑制される.これは,着火遅れの減少によっ て予混合気形成に許される時間が短くなることにくわえて, 高沸点の脂肪酸エステルの混合によって燃料の気化性が低下 するために,熱発生開始までに形成される予混合気量が減少 することが原因と考えられる.このように,予混合的燃焼が 抑制されたことにより,着火直後の圧力上昇が穏やかになり, 筒内最高圧力も低く抑えられる. 以上のような燃料混合による燃焼特性の変化が,機関の熱

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10

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75

0

h

z

a.

u.

R

O

H

R

J

/d

eg

.

p

M

P

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100

125

BMEP=0.6MPa

j

= -3 ºATDC

20vol% 50vol% 2H-16 100vol% 0vol%

(b) 2H-16

Fig.3 In-cylinder pressure p, rate of heat release ROHR, and nozzle needle-lift h

z

0

50

100

blend ratio vol%

2

3

4

2H-16

2H-12

(4)

効率および各種エミッションに及ぼす影響を調べた.図5 は, 軽油に対する2H-12 および 2H-16 の混合濃度と,正味熱効率 および各種排気濃度の関係を示す.実験条件は図3 と等しく, j = -3ºATDC,BMEP = 0.6MPa である.まず,2H-16 混合燃料 の正味熱効率 eについて見ると,混合濃度が増加するにつれ てeは徐々に向上する.ここで,混合濃度0~20vol% の間で eが向上する理由は,図4 で述べたように,この濃度範囲で 着火時期が早くなり,発熱等容度が増加するためである.一 方,着火時期がほとんど変化しない20vol%よりも高濃度側に おいてeが徐々に向上する理由は,上死点付近での予混合的 燃焼が抑制されることにより,壁面熱損失が減少するためと 考えられる(5).一方,2H-12 を混合した場合も,図 4 が示すよ うに着火時期が早くなるため,20vol%付近まではeが向上す るが,混合濃度を20vol%以上に高めるとeはやや低下する結 果となった.これは,図3 に示すように,2H-12 を 20vol%以 上混合した場合の着火直後の予混合的燃焼に伴う熱発生率の ピーク値は,2H-16 を混合した場合に比べて高いことから,高 濃度混合時の壁面熱損失の低減量が小さいためと考えられる. ただし,20vol%付近での 2H-12 混合燃料の熱効率は,2H-16 混合燃料よりも高い.これは,20vol%付近における 2H-12 混 合燃料排気中の一酸化炭素CO,排気黒煙濃度 Smoke が,2H-16 のそれらに比べて低いことから,この条件では2H-12 混合燃 料の方が,燃焼効率が高いためと考えられる. 窒素酸化物NOx の排出量は,2H-12 および 2H-16 のいずれ を混合した場合も,混合濃度に対してほぼ単調に減少する. これは,図3 に示したように,2H-12 および 2H-16 の混合に よって予混合的燃焼が抑制され,上死点付近での筒内ガス温 度の上昇が抑制されたためである. 全未燃炭化水素THC について見ると,2H-12 および 2H-16 のいずれを混合した場合も,混合濃度を20%とすると,THC は混合濃度0%(軽油)の場合に比べて約 45%減少する.この ように,混合濃度0~20%の間でTHC が減少する主な理由は, 混合により着火遅れが短くなるため,過度に希薄な軽油-空 気混合気の形成が抑制されたためと考えている.なお,排気 黒煙濃度に関する考察において後述するように,混合濃度 20%付近では過濃混合気が燃焼に関与したと推察されるが,そ れらはガス状未燃炭化水素とはならず,高温を経てススを形 成したと推察している.一方,混合濃度を20%以上に高めて も,THC 排出量はほぼ一定値を示す.これは,気化性の低い 脂肪酸エチルヘキシルの割合が増加して,混合気形成が抑制 されるものの,燃料中の含酸素率が混合濃度に比例して高く なるので,未燃炭化水素の排出につながる過濃混合気の量が 一定に保たれた結果と考えている. 微粒子PM は,2H-12 および 2H-16 のいずれを混合しても一 旦低下し,混合濃度が約20vol%のときに極小となるが,混合 濃度を 50vol%以上に高めると再び増加して,100vol%では軽 油運転時よりも高くなる.このようなPM の変化は,PM 中の 可溶有機成分SOF の増減によるものであり,混合濃度に対し

N

O

x

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blend ratio vol%

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2H-12 2H-16

Fig.5 Effect of blend ratio on the thermal efficiency and exhaust emissions

SOF が増減する理由は以下のように考えている.すなわち, 2H-12 または 2H-16 の混合濃度を 20vol%程度とすると,着火 遅れが短くなることによって燃焼室壁面に付着して未燃のま ま排出される燃料液滴の量が減少し,SOF は一旦減少する. しかし,混合濃度がさらに高くなると,2H-12 および 2H-16 はいずれも軽油に比べて気化性が低いために,それらが燃焼 室壁面に付着するようになりSOF は再び増加したと考えられ る. 一方,排気黒煙濃度Smoke は,2H-12 および 2H-16 のいず れを混合した場合も,混合濃度が20vol%程度のときに高い値 を示した.これは,図4 に示したように,約 20vol%の混合に よって着火遅れが短くなった結果,燃料と空気の混合が不十 分な状態で燃焼が開始してしまうためである.しかし,混合 濃度を50vol% よりも高くすると,着火遅れはほとんど変化し ないが,燃料中の酸素含有率が増加するために,Smoke は再 び減少し,100vol%では再びほぼ 0BSU となる. 3.2.2 混合燃料の排気特性に�ぼす噴射時期の�� 前項で述べたように,高着火性の2H-12 または 2H-16 を軽 油に混合することによって,熱効率,NOx,THC および PM 排出量を改善できるが,混合濃度が20vol%付近では燃料中の 含酸素率が低い状態で着火遅れが短くなるため,排気黒煙が 著しく悪化することが明らかとなった.そこで,Smoke の悪 化が比較的小さい混合濃度50vol% の条件について,燃料噴射 時期の調整によって排気黒煙の改善を試みた. 図6 は,2H-12 および 2H-16 の混合濃度を 50vol%一定のも とで,燃料噴射時期をj = - 6 ~ 3 ºATDC の間で変化させたと きのNOx と正味燃料消費率 BSFC,着火遅れ,Smoke, PM, THC,CO のトレードオフ関係を示す.正味平均有効圧力は図 5 の条件と等しく BMEP = 0.6MPa 一定である.図より,2H-16 混合燃料に関しては,j = - 3 ºATDC のときに Smoke,CO は ともに最低となり,それよりもj を早めると NOx が増加する とともに,着火遅れがさらに短くなってSmoke,CO も増加し た. 一方,2H-12 混合燃料に関しては,燃料噴射時期を -3 ºATDC よりも遅い 0 ºATDC とし,着火遅れを長くすることにより, BSFC の増加は招くものの,THC を増加させることなく,NOx, Smoke および CO を同時に低減できることが明らかとなった. �.ま と め 本研究では,着火性と低温流動性にすぐれたパーム/ヤシ 由来脂肪酸エチルヘキシルを軽油に混合することによる,燃 料性状および燃焼特性改善の可能性について検討を行った. 以下に得られた結果を要約して示す. (1) 2H-12 を軽油に混合すると,低温流動性および着火性がと もに向上する.2H-16 を軽油に混合する場合,約 20vol%まで の混合濃度であれば低温流動性を悪化させることなく,着火 性が向上する. (2) 2H-12 または 2H-16 を軽油に混合することによって,同一 燃料噴射時期のもとでの着火遅れが短くなり予混合的燃焼が 抑制されるために,熱効率が向上し,窒素酸化物排出量が減 少する.さらに,混合濃度が約20vol%のときには微粒子中の 可溶有機成分の排出量も減少する. (3) 2H-12 または 2H-16 を軽油に混合すると,未燃炭化水素排 出量が減少する.この原因は,燃料の気化性が低下して過度

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効率および各種エミッションに及ぼす影響を調べた.図5 は, 軽油に対する2H-12 および 2H-16 の混合濃度と,正味熱効率 および各種排気濃度の関係を示す.実験条件は図3 と等しく, j = -3ºATDC,BMEP = 0.6MPa である.まず,2H-16 混合燃料 の正味熱効率 eについて見ると,混合濃度が増加するにつれ てeは徐々に向上する.ここで,混合濃度0~20vol% の間で eが向上する理由は,図4 で述べたように,この濃度範囲で 着火時期が早くなり,発熱等容度が増加するためである.一 方,着火時期がほとんど変化しない20vol%よりも高濃度側に おいてeが徐々に向上する理由は,上死点付近での予混合的 燃焼が抑制されることにより,壁面熱損失が減少するためと 考えられる(5).一方,2H-12 を混合した場合も,図 4 が示すよ うに着火時期が早くなるため,20vol%付近まではeが向上す るが,混合濃度を20vol%以上に高めるとeはやや低下する結 果となった.これは,図3 に示すように,2H-12 を 20vol%以 上混合した場合の着火直後の予混合的燃焼に伴う熱発生率の ピーク値は,2H-16 を混合した場合に比べて高いことから,高 濃度混合時の壁面熱損失の低減量が小さいためと考えられる. ただし,20vol%付近での 2H-12 混合燃料の熱効率は,2H-16 混合燃料よりも高い.これは,20vol%付近における 2H-12 混 合燃料排気中の一酸化炭素CO,排気黒煙濃度 Smoke が,2H-16 のそれらに比べて低いことから,この条件では2H-12 混合燃 料の方が,燃焼効率が高いためと考えられる. 窒素酸化物NOx の排出量は,2H-12 および 2H-16 のいずれ を混合した場合も,混合濃度に対してほぼ単調に減少する. これは,図3 に示したように,2H-12 および 2H-16 の混合に よって予混合的燃焼が抑制され,上死点付近での筒内ガス温 度の上昇が抑制されたためである. 全未燃炭化水素THC について見ると,2H-12 および 2H-16 のいずれを混合した場合も,混合濃度を20%とすると,THC は混合濃度0%(軽油)の場合に比べて約 45%減少する.この ように,混合濃度0~20%の間でTHC が減少する主な理由は, 混合により着火遅れが短くなるため,過度に希薄な軽油-空 気混合気の形成が抑制されたためと考えている.なお,排気 黒煙濃度に関する考察において後述するように,混合濃度 20%付近では過濃混合気が燃焼に関与したと推察されるが,そ れらはガス状未燃炭化水素とはならず,高温を経てススを形 成したと推察している.一方,混合濃度を20%以上に高めて も,THC 排出量はほぼ一定値を示す.これは,気化性の低い 脂肪酸エチルヘキシルの割合が増加して,混合気形成が抑制 されるものの,燃料中の含酸素率が混合濃度に比例して高く なるので,未燃炭化水素の排出につながる過濃混合気の量が 一定に保たれた結果と考えている. 微粒子PM は,2H-12 および 2H-16 のいずれを混合しても一 旦低下し,混合濃度が約20vol%のときに極小となるが,混合 濃度を50vol%以上に高めると再び増加して,100vol%では軽 油運転時よりも高くなる.このようなPM の変化は,PM 中の 可溶有機成分SOF の増減によるものであり,混合濃度に対し

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2H-12 2H-16

Fig.5 Effect of blend ratio on the thermal efficiency and exhaust emissions

SOF が増減する理由は以下のように考えている.すなわち, 2H-12 または 2H-16 の混合濃度を 20vol%程度とすると,着火 遅れが短くなることによって燃焼室壁面に付着して未燃のま ま排出される燃料液滴の量が減少し,SOF は一旦減少する. しかし,混合濃度がさらに高くなると,2H-12 および 2H-16 はいずれも軽油に比べて気化性が低いために,それらが燃焼 室壁面に付着するようになりSOF は再び増加したと考えられ る. 一方,排気黒煙濃度Smoke は,2H-12 および 2H-16 のいず れを混合した場合も,混合濃度が20vol%程度のときに高い値 を示した.これは,図4 に示したように,約 20vol%の混合に よって着火遅れが短くなった結果,燃料と空気の混合が不十 分な状態で燃焼が開始してしまうためである.しかし,混合 濃度を50vol% よりも高くすると,着火遅れはほとんど変化し ないが,燃料中の酸素含有率が増加するために,Smoke は再 び減少し,100vol%では再びほぼ 0BSU となる. 3.2.2 混合燃料の排気特性に�ぼす噴射時期の�� 前項で述べたように,高着火性の2H-12 または 2H-16 を軽 油に混合することによって,熱効率,NOx,THC および PM 排出量を改善できるが,混合濃度が20vol%付近では燃料中の 含酸素率が低い状態で着火遅れが短くなるため,排気黒煙が 著しく悪化することが明らかとなった.そこで,Smoke の悪 化が比較的小さい混合濃度50vol% の条件について,燃料噴射 時期の調整によって排気黒煙の改善を試みた. 図6 は,2H-12 および 2H-16 の混合濃度を 50vol%一定のも とで,燃料噴射時期をj = - 6 ~ 3 ºATDC の間で変化させたと きのNOx と正味燃料消費率 BSFC,着火遅れ,Smoke, PM, THC,CO のトレードオフ関係を示す.正味平均有効圧力は図 5 の条件と等しく BMEP = 0.6MPa 一定である.図より,2H-16 混合燃料に関しては,j = - 3 ºATDC のときに Smoke,CO は ともに最低となり,それよりもj を早めると NOx が増加する とともに,着火遅れがさらに短くなってSmoke,CO も増加し た. 一方,2H-12 混合燃料に関しては,燃料噴射時期を -3 ºATDC よりも遅い 0 ºATDC とし,着火遅れを長くすることにより, BSFC の増加は招くものの,THC を増加させることなく,NOx, Smoke および CO を同時に低減できることが明らかとなった. �.ま と め 本研究では,着火性と低温流動性にすぐれたパーム/ヤシ 由来脂肪酸エチルヘキシルを軽油に混合することによる,燃 料性状および燃焼特性改善の可能性について検討を行った. 以下に得られた結果を要約して示す. (1) 2H-12 を軽油に混合すると,低温流動性および着火性がと もに向上する.2H-16 を軽油に混合する場合,約 20vol%まで の混合濃度であれば低温流動性を悪化させることなく,着火 性が向上する. (2) 2H-12 または 2H-16 を軽油に混合することによって,同一 燃料噴射時期のもとでの着火遅れが短くなり予混合的燃焼が 抑制されるために,熱効率が向上し,窒素酸化物排出量が減 少する.さらに,混合濃度が約20vol%のときには微粒子中の 可溶有機成分の排出量も減少する. (3) 2H-12 または 2H-16 を軽油に混合すると,未燃炭化水素排 出量が減少する.この原因は,燃料の気化性が低下して過度

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の希薄な混合気の形成が抑制されるとともに,燃料の含酸素 率が増加して過濃な混合気塊が減少するためと推察した. (4) 2H-12 または 2H-16 を軽油に約 20vol%混合すると,排気黒 煙濃度が増加するが,20vol%よりも高めると排気黒煙濃度は 再び減少する.20vol%混合により排気黒煙が増加するのは, 着火遅れの短縮により燃料と空気の混合が不十分な状態のま ま燃焼が開始するためであり,20vol%以上の混合により減少 するのは,燃料中の酸素含有率が増加するためであるとそれ ぞれ推察した. 本研究の遂行に際し,滋賀県立大学大学院生 畑中亮二氏, 犬飼祐輔氏より多大の協力を得たことをここに記し謝意を表 す. � � 文 � (1)塩谷仁,後藤新一:パーム油メチルエステルの燃料性状に 関する研究,自動車技術会論文集,Vol.39, No.4, pp103-108 (2008) (2)河崎澄,井川達朗,山根浩二:バイオディーゼル燃料の燃 料組成および特性をもとにしたセタン価推定式, 自動車技術 会論文集, Vo.41, No.5, pp1167-1172 (2010) (3)木下英二, 植田裕, 高田聖士:パーム油イソブチルエステル のディーゼル燃焼特性, 自動車技術会論文集, Vol.40, No.5, pp1357-1362 (2009) (4)木下英二, 高田聖士, 笹川裕樹:パーム油バイオディーゼル の流動点改善とディーゼル燃焼,自動車技術会論文集, Vol.42, No.1, pp225-230 (2011) (5)鈴木貴志,狩野孝明,小出英延,彦坂知行:新規植物系変 圧器用電気絶縁油パームヤシ脂肪酸エステル(PFAE)の特性, 電気学会論文集B, Vol.129, No.8, pp975-979, (2009) (6)河崎澄, 渡邉勇太, 山根浩二, 近藤千尋, 狩野孝明:高い低 温流動性を有するパーム/ヤシ由来脂肪酸エチルヘキシルの ディーゼル燃焼特性, 自動車技術会論文集, Vol.43, No.5, pp1003-1008 (2012)

着火ロバスト性を考慮した圧縮着火機関の燃料設計

*

田中 大樹1) 染澤 俊介2) 佐古 孝弘3) 酒井 康行4) 安東 弘光5) 多田 卓矢6) 桑原 一成7)

Fuel Design Concept for Robust Ignition Process in Compression Ignition Engines

Hiroki Tanaka Shunsuke Somezawa Takahiro Sako Yasuyuki Sakai Hiromitsu Ando Takuya Tada Kazunari Kuwahara

A fuel design concept for an HCCI engine to optimize a profile of heat release and achieve a robust ignition process has been proposed and applied to design the optimal methane-based blend. According to results from detailed chemical kinetic computations where ignition process chemistry of each component of the natural gas was analyzed, ethane indicates a low ignitability close to that of methane with an initial temperature below 800 K, but a higher ignitability close to those of propane, n-butane and isobutane with an initial temperature above 1100 K. And ethane indicates a higher heat release rate than those of the other components in a late stage of an ignition process. According to results from engine operating tests with a compression ratio of 28.0 : 1, a dual-component fuel of the main component of methane and the sub component of ethane demonstrates a lower COV of IMEP than those of the other dual-component fuels with the sub components of propane, n-butane and isobutane, when the timing of 10 % heat release is set at the same crank angle in the expansion stroke.

KEY WORDS: Heat Engine, Compression Ignition Engine, Homogeneous Charge Compression Ignition, Liquefied Petroleum Gas/Natural Gas/Hydrogen, Fuel Design, Chemical Kinetics, Engine Operating Test (A1)

1. ま え が き さまざまな燃料を用いた予混合圧縮着火機関の可能性が検 討されてきた.佐古らは,天然ガスという着火性が極めて低 い燃料を用いた予混合圧縮着火機関の成立要件について検討 を行った(1), (2). 桑原らは,詳細化学反応モデルが記述する反応経路を解析 することによって,炭化水素の着火過程を以下の五つの過程 と七つの反応系に分割する考え方を提案した(3).熱着火準備期 間は,H2O2ループ反応と燃料フラグメント反応による比較的 緩やかな熱発生が雰囲気温度を,水素・酸素系の連鎖分岐反 応が支配的となる熱着火点まで上昇させる過程である.  LTO 準備期間/LTO(Low-Temperature Oxidation)期間/

NTC(Negative Temperature Coefficient)期間/熱着火準備期 間/熱着火期間  燃料系反応,燃料系フラグメント反応,H2O2ループ反応, 水素・酸素系反応,CO2反応など 予混合圧縮着火機関では,バルク燃焼による急激な熱発生 に加え,膨張行程で着火ロバスト性が低く,容易に燃焼変動 が生じることが問題である.これは,熱着火準備期間の緩や かな熱発生が膨張による内部エネルギーの低下に競い負ける ことに起因する. 本研究では,予混合圧縮着火機関の燃焼変動を抑止するこ とを意図した燃料設計コンセプトを提案し,天然ガス予混合 圧縮着火機関への適用を試みる.詳細化学反応計算によって, メタンCH4を主成分,エタンC2H6,プロパンC3H8,ノルマル ブタンn-C4H10,イソブタンi-C4H10のいずれかを副成分とする 二成分天然ガス模擬燃料の膨張行程における着火ロバスト性 を推測し,低機関回転速度・中負荷条件の実機試験によって コンセプトの妥当性を検証する. 2. 密閉定容系における化学反応計算 2.1. 計算方法 三好が開発した詳細化学反応モデル自動生成ソフトウェア KUCRS ( Knowledge-basing Utilities for Complex Reaction System)(4)-(6)によってCH4C2H6C3H8n-C4H10i-C4H10 合燃料のモデルを作成した.このモデルは145 個の化学種と 658 個の素反応から構成される.化学反応計算ソフトウェア CHEMKIN-PRO を用い,CH4,C2H6C3H8n-C4H10i-C4H10 のいずれかの単一成分燃料と空気(O221 vol. %,N279 vol. %) の混合気の着火について密閉定容系で0 次元計算を行った. 各単一成分燃料/空気混合気の初期燃料濃度を発熱量 32.20 MJ/m3相当,初期O2濃度を160.5 mol/m3N2濃度を603.7 mol/m3 に設定した.これらの値は,当量比0.5,初期温度 1000 K,初 * 2013 年 5 月 24 日受理.2013 年 5 月 24 日自動車技術会春季学 術講演会において発表. 1)・2)・3) 大阪ガス(株)(554-0051 大阪市此花区酉島 6-19-9) 4)・5) 福井大学(910-8507 福井市文京 3-9-1) 6)・7) 大阪工業大学(535-8585 大阪市旭区大宮 5-16-1)

Fig. 11 Model-based ignition timing control effect on heat  release rate results of in transient operating condition
図 2 は, 2H-12 および 2H-16 の混合による,着火性の変化
図 2 は, 2H-12 および 2H-16 の混合による,着火性の変化

参照

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