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先進諸国における理学療法教育の再編動向とその特徴

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 174 43 巻第 2 号 174 ∼ 175 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 26 年度研究助成報告書. 3.集計・解析方法(研究 B)  アンケート回答データは IBM SPSS Statistics ver.20 を用い て解析した。アメリカ,スウェーデンの国別と各項目の関連に. 先進諸国における理学療法教育の再編動 向とその特徴. 20%以上ある場合は Fisher の正確確率検定(片側)を行った。. ─アメリカとスウェーデンを中心にして─. 統計学的有意水準は 5%とした。. 2 ついて χ 独立性の検定を行った。期待度数が 5 未満のセルが. 結  果 田中幸子 1),Chiyoko Butcher 2),木藤伸宏 3),今北英高 4), 田中秀樹. 5). 1.理学療法教育再編動向の分類と特徴(研究 A)   ア メ リ カ は 2015 年 に DPT(Doctor of Physical Therapy) 養成へと移行完了した。カナダは 2012 年に学士養成課程がな. 1). くなり,修士養成が中心となった。ヨーロッパでは,イギリ. 2). スは 1970 年代より学士養成となり,スウェーデンもすでに学. 広島都市学園大学健康科学部リハビリテーション学科 前 West Memphis School District. 3). 広島国際大学総合リハビリテーション学部リハビリテーション. 士養成に統一され,2007 年の高等教育再編により修士課程が. 学科. 創設された。ドイツ,フランスは専門学校が中心であるが,ド. 4). イツは 2010 年に学士課程が正式認可され,移行がはじまった。. 5). ヨーロッパの学士教育は 3 年制に集約される傾向にある 5)(表. 畿央大学健康科学部理学療法学科 広島大学大学院生物圏科学研究科. 1)。 キーワード:理学療法教育,アメリカ,スウェーデン. 2.アメリカの理学療法教育(研究 B)   ア ン ケ ー ト 送 付 し た 全 212 課 程 中, 回 収 数 109, 回 収 率. はじめに. 51.4%であった。開設年は 2001 ∼ 2004 年がもっとも多く,修.  世界的に理学療法教育の再編が進んでいる。大学院博士課程. 士課程からの移行が 84.4%であった。修学期間の最頻値は. に移行したアメリカの動向が報告されているが 1)2),カナダも. 36 ヵ月(62.4%,レンジ 27-78)であった。入学要件を大卒と. 修士課程に移行し,博士課程への移行をめぐって議論が起こっ. する課程が 97.2%であった。. ている 3)4)。ヨーロッパにおいても理学療法教育が再編されつ. 3.スウェーデンの理学療法教育(研究 B). つあるが,その動向はあまり知られていない。.  送付した全 8 大学中,回収数 4,回収率 50%であった。学.  本研究では,第 1 に,各国における理学療法教育の再編動向. 士課程開始は 1983 年 1 校,1986 年 1 校,1993 年 2 校であり,. を幅広く調べ,その特徴を検討した(研究 A) 。第 2 に,そこ. Diploma(専門士)課程からの移行が 1 校であった。1 学年学. で抽出された 2 つの動向からアメリカとスウェーデンを選び,. 生数は 35 名 1 校,60 名 1 校,40 名 2 校であり,修学期間は 4. 再編後の特徴と問題点を明らかにする目的でアンケート調査を. 校とも 3 年であった。問題点は,臨床実習改善の遅れ(n = 2),. 行い,比較検討した(研究 B)。. 学習時間が増え学生の負担が増えた(n = 2)であった。. 方  法. 4.アメリカとスウェーデンの比較. 1.対象と調査方法.  アメリカでは前身課程(修士,学士)からの移行が 89.9%,.  本研究での理学療法教育とは Entry level(資格取得のため. スウェーデンは前身課程(専門学校)をもつ課程が 25.0%だっ. の課程:卒前教育)を指す。. た。国別と前身課程の有無の関連について Fisher の正確確率.  研究 A は,理学療法教育制度が整っている先進諸国を対象. 検定(片側)を行ったところ,前身課程の有無は有意な関連が. とした。世界理学療法連盟 WCPT の member organizations,. あった(p = 0.006)。また,調整済み残差による頻度の差も見. 各 国 理 学 療 法 士 協 会 お よ び European Region of the World. られた。その他,アメリカは公立 46.8%,私立 33.9%であり,. Confederation for Physical Therapy:ER-WCPT の Members. スウェーデンはすべて公立であった。. よりデータを取得した(2014 年 8 月 27 日閲覧) 。研究 B は,.  アメリカ,スウェーデンの国別と各項目の関連について,期. アメリカおよびスウェーデンの理学療法士養成課程を対象とし. 待度数が 5 未満のセルが 20%以上あり Fisher の正確確率検定. た。全養成課程責任者に対して,アメリカは 2015 年 1 月,ス. (片側)を行ったところ,開設利点では,「就職率向上」および. ウェーデンは 2 月に郵送アンケート調査を行った。調査目的と. 「PT の社会的地位向上」,問題点では「学生の経済的負担増」. 統計的にデータ処理し研究目的にのみ使用することを述べた依. で有意な関連があった(表 2,3)。. 頼文と返信用封筒を同封し,返送をもって調査への同意が得ら. 考  察. れたものとみなした。. 1.理学療法教育再編の動向. 2.調査内容.  大学院教育に移行したアメリカ,カナダと,専門学校から大.  研究 A は,入学資格,卒業必須レベル,取得可能学位,修学. 学(3 年制)へ統一を図るヨーロッパの 2 つの動向が明らかに. 年数等のデータを取得した。研究 B のアンケート設問は,課程. なった。. 開設年,前身課程の有無,学生数,修学期間,開設利点(アメ. 2.アメリカとスウェーデンの比較. リカは DPT 課程,スウェーデンは学士課程) ,問題点であった。.  スウェーデンでは大学院整備が進みつつあるが,そこでの学 位は Master of Science や PhD であり,DPT の検討は見られ.

(2) 先進諸国における理学療法教育の再編動向. 175. 表 1 理学療法教育(Entry level)に関する各国の現状 日本. アメリカ. カナダ. オーストラリア. イギリス. スウェーデン. ドイツ. フランス. 高卒. 大卒 *. 大卒. 高卒. 高卒. 高卒. 高卒. 高卒. 専門学校卒. 修士 **. 修士. 学士. 学士. 学士. 専門学校卒. 専門学校卒. 学士. DPT. 修士. 修士. 学士. 学士. 学士. ─. 3 or 4. 通常 3. 2. 4. 3. 3. 3. 3. 試験. 試験. 試験. 卒業. 卒業. 卒業. 試験. 卒業. 入学資格 1). 卒業必須レベル 取得可能学位. 2). 修学年数 資格取得条件 試験 / 卒業. 2014.8.27 現在 Entry level とは資格取得のための課程(卒前教育)を意味する. DPT:Doctor of Physical Therapy 1),2):たとえば日本では卒業必須レベルは専門学校卒であるが,学士課程も存在する. * 一部高卒で入学できる 6 年制コースがある. ** 2015 年にすべての課程が DPT に移行した.. 表 2 再編後(アメリカ:DPT 課程,スウェーデン:学士課程)の利点     クロス表 PT の社会的 地位向上. 就職率向上 Yes No 合計 アメリカ. 10. スウェーデン 合計. 4 14. p値. 質のよい希望 者増加. 直接診療拡大. 学生の能力 向上. カリキュラム 改善. Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値. 99 109 0. 入学希望者の 増加. 42. 4. 67 109. 4. 99 113 0.000** 46. 0. 37. 4. 3. 67 113 0.025* 40. 72 109 1. 66. 4. 4. 73 113 0.126 70. 43 109 0. 42. 4. 3. 43 113 0.142 45. 67 109 1. 82. 4. 4. 68 113 0.173 86. 27 109 0. 94. 4. 15 109. 4. 0. 27 113 0.330 98. 15 113 0.561. * p<0.05,** p<0.01. 表 3 再編後の問題点     クロス表 学生の経済的 負担が増えた Yes No 合計 アメリカ スウェーデン 合計. 74 0 74. p値. PT の社会的地 位の改善が遅 れている. 学習時間が増え 学生の負担が増 えた. Yes No 合計 p 値. Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値 Yes No 合計 p 値. 35 109 4. 4. 39 113 0.013*. 32 0 32. 77 109 4. 38. 4. 81 113. 2 0.258. 40. 71 109 2. 4. 学位にふさわ しい臨床実習 改善の遅れ. 38 2. 73 113 0.445 40. 71 109 2. 4. 73 113 0.445. 学位にふさわし い教育が質量と もに不十分. 学位にふさわし いカリキュラム 改善の遅れ. 8 101 109. 6 103 109. 0. 0. 4. 4. 8 105 113 0.742. 4. 4. 6 107 113 0.801. * p<0.05. なかった。修学期間は,アメリカは 3 年が多く,スウェーデン はすべて 3 年であり,3 年制への集約がアメリカ,ヨーロッパ で見られた。新課程開設の利点としては,「就職率向上」およ び「PT の社会的地位向上」はスウェーデンで高くアメリカは 低い傾向にあった。また, 「カリキュラム改善」および「学生 の能力向上」効果は両国ともに高く,再編の効果は教育内容面 で現れていた。しかし,両国ともに,問題点で「取得学位にふ さわしい臨床実習改善の遅れ」を挙げた課程が目立ち,臨床 実習では実習先の確保や実習内容面での課題が残されている。 DPT 課程への移行による「学生の経済的負担増」はアメリカ の大きな問題であったが(授業料を含む学生の 3 年間総経費平 6) 均は公立$ 50,294,私立$ 94,251 ),スウェーデンは授業料. 無料のため経済的な問題はなく,この点は大きな違いである。  理学療法教育の今後を検討するうえで,世界的な動向やアメ リカやスウェーデンにおける養成課程再編の成果や課題に関す る情報が有益であると考えられる。. 4. 文  献 1)Domholdt E, Kerr LO, et al.: Professional (Entry-Level) doctoral degrees in physical therapy: status as of spring 2003. J Phys Ther Educ. 2006; 20: 68‒76. 2)Plack MM: The evolution of the Doctorate of Physical Therapy: moving beyond the controversy. J Phys Ther Educ. 2002; 16: 48‒59. 3)Mathur S: Doctorate in Physical Therapy: Is it Time for a Conversation? Physiother Can. 2011; 63: 140‒142. 4)Mistry Y, Francis C, et al.: Attitudes toward Master’s and Clinical Doctorate Degrees in Physical Therapy. Physiother Can. 2014; 66: 392‒401. 5)タイヒラー U:ヨーロッパの高等教育改革.馬越 徹,吉 川裕美子(訳),玉川大学出版部,東京,2014,pp. 14‒93. 6)CAPTE: 2012-2013 Fact Sheet Physical Therapist Education Programs. http://www.capteonline.org/ CAPTESearch.aspx?q=fact % 20sheet(2015 年 1 月 10 日 引用).

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