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靖国神社問題の解決に向けて

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Academic year: 2021

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靖国神社問題

S.Y. (カンボジア) 経済学部 要旨: 近年日中と日韓関係を悪化させる原因の一つは、靖国神社参拝問題である。中国と韓国 にとって、靖国神社を参拝するということは日本が行った戦争を正当化するということと同様であ る。一方、日本政府によると、単なる「平和を誓う」という意図で参拝を行っている。そのような 靖国神社参拝の意図の解釈の違いでその問題が起こった。また、そもそも首相が公式に靖国神社に 行くのは日本国憲法に反するのではないかという批判もあった。この論文では、そのような問題点 を取り上げて、考察を行う。 キーワード: 靖国神社、 A 級戦犯者、 新追悼施設、 分祀、 日本 1.序論 2005 年 5 月 19 日に来日した中国の国務院副総理呉儀(ごぎ)は小泉首相と予定していた会談を 中国国内の緊急な事情を理由に急遽キャンセルし、帰国した。しかし、その理由はただの弁解とし て捉えられ、本当の理由は小泉首相の靖国神社についての発言に対する反対姿勢を示すためだった のではないかというようにメディアで報道された。実は会談の直前小泉さんは「靖国神社問題を含 む日本の国内問題には外国が干渉すべきではない」と述べた。それは小泉首相が靖国神社参拝を続 ける姿勢だと解釈できる。従って、靖国神社参拝に強く反対している中国にとって、小泉首相の発 言を甘受できないのが本当の理由である。 しかし、以上述べたのはただ靖国神社の一つの問題に過ぎない。1985 年に中曾根首相が靖国神社 を公式に参拝したことをきっかけに起こったその問題は今まで20 年間近くさまざまな問題を引き 起こし、日中と日韓関係を悪化させてきた。では、なぜ中国と韓国がそこまで靖国神社参拝中止を 求めるのだろうか。そして、その問題に向けてどのような対策がなされてきたのだろうか。本論で は靖国神社参拝の問題点と解決策について考察を行う。 2. 靖国神社の歴史 靖国神社は1869 年に明治天皇の命によって創建されたが、当時の名前は東京招魂社であった。 そして1879 年に「靖国神社」に改称した。靖国の建設の理由は当時戊辰戦争で天皇のために死亡 した人たちを祀るためであった。その後、戊辰戦争の戦没者だけでなく、日本天皇のために戦い、 命を捧げた人たちも靖国神社に祀られるという習慣となった。そのため、靖国神社は日本の中心的 な慰霊追悼施設となっている。 しかし、戊辰戦争の戦没者に限らず、日中戦争と太平洋戦争の戦没者などそこに祀られている。 その中には、第二次世界大戦のとき犯罪を起こしたA, B,C 級戦犯者なども含まれている。そし て、靖国神社について一番よく議論されているのはなぜA 級戦犯者も靖国神社に祀られているので あろうかという問題である。

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東京裁判の判決でA 級戦犯者として認定されたのは 28 人であって、その中で 14 人が祭神として 靖国神社に合祀されている。従って、第二次世界大戦終結の前に日本の侵略と植民地化によって大 きい被害と苦痛を経験した中国と韓国は、首相の靖国神社参拝に対して強く反発している。 3. 靖国神社参拝の見解の違い 靖国神社参拝問題の原因は日本と中国、韓国政府の見解の違いである。中国と韓国にとって、靖 国神社を参拝するということは日本が引き起こした戦争、特に大東亜戦争や日中戦争を正当化する ということと同様である。つまり、それらの戦争は大東亜秩序を建設するためであったことを日本 国民に示すためのではないかと、中国と韓国は日本政府、特に小泉首相に反論した。 一方、2001 年に日本の総理大臣になってから毎年靖国神社を参拝している小泉純一郎氏は中国と 韓国と全く違う見方をしている。小泉首相によると、それはあくまでも「平和を誓う」という意図 で靖国神社を参拝した。また、「A 級戦犯者は無罪だと思っていない」ということである。 4. 日本国内の靖国神社参拝の問題点 しかし、靖国神社問題はただ日中と日韓の問題だけでなく、日本国内の問題でもある。以下では、 日本国内で靖国神社問題についてよく議論されている問題点を取り上げて考察を進めたいと思う。 それは、政教分離、私的と公的参拝、そして外交問題である。 4.1.政教分離 日本国憲法第20 条によると、「国およびその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしては ならない」ということである。よって、日本政府の公式参拝はその原則に反するのではないかとい うような解釈と批判があり、日本国内で最も大きな論点となっている。しかし、その論点について 大きく2 つの見方ある。それは: ・ 賛成派:首相の参拝は宗教的意義を持たない。よって、宗教的活動ではない。 ・ 反対派:首相の参拝は宗教的活動である。 しかし、今でもその論点について明快な判断がないまま、議論が続いている。 4.2.私的と公的参拝 ではなぜ私的参拝と公的参拝をはっきり分ける必要があるのだろうか。それは私的参拝か公的参 拝かによって問題が違うからである。 ・ 私的参拝の場合:首相個人の信仰の自由から考えてみると、それは政教分離原則に触れずに問 題がない ・ 公的参拝の場合:前に述べた政教分離の論点と同じ

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しかし、今の日本の首相である小泉純一郎の靖国参拝は公的なのか私的なのか。こういう質問に対 して、小泉さんは次のように答えた。「公的とか私的とか私はこだわりません。総理大臣である小泉 純一郎が心をこめて参拝した」とコメントをした。その答えの意味は非常にあいまいで、ただ問題 を混乱させるようにしか思えない。 4.3.日中と日韓の外交問題 ・ 賛成派: 外国が日本の決めることに干渉すべきではないと小泉さんが述べた。つまり、小泉 さんが靖国に参拝するかしないかはあくまでも日本の国内問題である。 ・ 反対派: 最初にも記述したように中国と韓国は靖国神社への参拝に強く反対しているので、 参拝し続けると日本の中国と韓国との関係が悪くなる一方ではないか。 5. 分祀と新追悼施設の可能性 今まで靖国神社問題を解決するために2 つの提案が出された。それは A 級戦犯の分祀と新追悼施 設の設置である。しばしば問題を引き起こした一番大きな原因は前にも記述したようになぜその14 人のA 級戦犯が靖国神社で祭神として慰霊されているのかということである。従って、A 級戦犯者 合祀問題を解決するため、その14 人のみを分祀すれば中国と韓国を納得させることができるだろ う。この案は中曾根元首相によって挙げられ、中国政府と韓国政府の支持も得たが今までのところ ではまだ実行されていない。それは神道の原則によると、いったん他の魂と合祀したら、特定の霊 魂だけを取り出し分祀することができないからである。つまり、A 級戦犯者のみを別の施設に持っ ていって、祀るということは神道の原則に反しているということになる。従って、そのような理由 から、靖国神社が分祀を受け入れることはないと考えられている。また、日本国憲法第20 条の政 教分離によって、政府が靖国神社に分祀を行わせることもできない。そのため、A 級戦犯の分祀の 提案が実行される可能性は非常に低いといっても過言ではない。 神道の原則に触れず、靖国神社問題を解決する鍵は、特定の宗教によらない新追悼施設の設置で ある。この意見は公明党から提案され、海外に限らず日本国内でも多くの支持を得た。例えば、い つも日本政府と同じ意見を示す読売新聞でも驚くほどに靖国神社問題に対して政府と違う立場であ るが、2005 年 6 月 4 日に“A national memorial for the war dead should be built immediately”、 または日本語に翻訳すると、「新慰霊施設を直ちに設立するべきだ」という記事を出した。その上、 新たな追悼施設を建設することによって、日本の首相を含め現在批判を恐れ、参拝できない日本の 天皇や外国のリーダーなども追悼できるようになる。 6.結論 しかしいくら新追悼施設が建てられても小泉首相が参拝の意図をはっきりと説明しない限り、靖 国神社問題が完全に解決できるとと思わない。私の考えでは、それはきっとまた新たな歴史認識問

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題を生むと思われる。中国や韓国で、次世代の子供に靖国神社を伝えるために歴史教科書に「日本 の首相が、日本が起こした戦争を正当化するために靖国神社を参拝した」と書くことになるだろう と思う。一方、日本では中国と韓国と違う見方で、「平和を祈るために参拝した」と子供に伝えるだ ろう。よって、このような歴史認識問題が起こらないため、小泉首相が自分の靖国神社参拝の意味 についてはっきりと説明しなければならない。テレビでみると、小泉さんはいつも「平和を誓いま す」というような説明だけにとどまる。単なる「平和を誓います」や「公的とか私的とか私はこだ わりません」のような簡潔なコメントはその問題解決に向けて何の役に立たない。そして今の小泉 さんの態度を見ると、ただ韓国や中国の意見を無視し、自分の考えで行動しているようにしか思え ない。だから、小泉さんは日本が起こした戦争に対してはっきりとした態度を示さなければならな いと思う。また、靖国神社問題の解決に向けて、韓国と中国も相手の説明を聞いて、お互いに話し 合うべきだと思われる。

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Wakamiya, Y., Watanabe T., “Yomiuri and Asahi Editors Call for a National Memorial to

Replace Yasukuni” http://japanfocus.org/article.asp?id=524 閲覧年月日:2006 年 6 月 16 日 参考文献 1.ウィキペディア 「靖国神社問題」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%96%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E5%95%8F%E9%A1%8C 閲覧年月日: 2006 年 6 月 16 日

2. Andrew, M.M., “Arlington National Cemetery and Yasukuni Jinja: History, Memory and the Sacred”

http://japanfocus.org/article.asp?id=359 閲覧年月日:2006 年 6 月 23 日 3. Wikepedia, “Yasukuni Shrine”

参照

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