• 検索結果がありません。

日本における死因別死亡数の動向予測

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本における死因別死亡数の動向予測"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

* *

池 田 一 夫 ,矢 野 一 好

The Estimation of the Leading Cause-specific Mortality in Japan

* *

Kazuo IKEDA and Kazuyoshi YANO

:人口動態統計 世代マップ 総死亡 脳血管疾患

Keywords vital statistics, Generation Map, all causes of death, cerebrovasculer diseases,虚血性心疾患 ischemic heart diseases,全がん malignant neoplasms

研 究 目 的 衛生行政の基本的な使命は生活環境の安全性の維持と 向上を図ることにある.この使命を達成するに当たり,地 域における生活環境の安全性と地域住民の健康損失の状況 を定式的かつ継続的に観測するシステムの構築は非常に重 要な意味を持つ.また,行政施策の効果判定にも定量的な 予測値と実測値との比較が欠かせない.当センターでは, 地域における疾病事象を把握し,衛生行政を支援するため に疾病動向予測システムを開発している.本論文では,こ のシステムを用いて日本における主な死因の死亡特性と今 後の動向について分析した結果を報告する. 研 究 方 法 東京都健康安全研究センターで開発している疾病動向予 測システム1-5)(SAGE Structural Array GEnerator: )を用 9 いて,総死亡,脳血管疾患,虚血性心疾患,全がんなど 種の死因による死亡特性を分析し,2018 年までの動向を 予測した. 縦軸を出生世代,横軸を暦年(調査年)とする時間平 面の所定の位置に,対象となる事象の数量もしくはその 数量の多寡に応じた色彩を配置した疑似地形図が世代マ ップ2,3)である.人口動態統計の死亡者数を用い,縦軸 を出生世代,横軸を暦年とする3年 3世代メッシュを単 位とした世 代マ ップを作成し,年次推移の動向も考慮 し,死亡特性を分析した.各行(出生世代)におけるピ ークを行内ピーク,各列(暦年)におけるピークを列内 ピークと定義し,これらのピークの世代マップ上の分布 を分析した上で,コーホート変化率法6)により死亡者数 の予測を行った.コーホート変化率法とは,基本的には 年齢コーホートごとに今後の死亡率が将来も大きく変化 しないと仮 定し て,年齢別死亡数を推計する方法であ る.本論文では,1998 年から2003 年までの 6年間のデ 3 3 2 2 ータを前半 年と後半 年に 分し,その変化率から, 年から 年先の 年までの動向を予測した. 004 15 2018 研究結果および考察 1.総死亡(図1) 1950年における総死亡者数は男女それぞれ467,073名と 437,803名であったが漸次減少し,1963年には男子361,46 名,女子 名と最小となった.その後 年頃ま 9 309,301 1980 で,男子は36~39万人,女子は31~33万人程度で推移 1980 2004 557,097 したが, 年以降増加を始め, 年には男子 名,女子471,505名となっている. 図1.死亡者総数の年次推移 (2004年以降は予測値) 年代の死亡者数の減少は主として乳幼児死亡の顕 1950 1980 著な減少と,青年期死亡の減少によるものであり, 年以降の増加は後期高齢者死亡の増加によるものである (図 2).後期高齢者死亡の死亡年齢ピークは徐々に高齢 側に移動し女子では2018年には80歳代後半になると予測 される. 高齢化が進むものの,近未来では死亡者数の増加はそれ ほどみられず,2015年には男子55万人,女子 44 万人程 度になると予測される.特に女子においては 2010 年以降 において減少を示すことも予測される.ただしこれは,一 総死亡 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人 169-0073 3-24-1 * 東京都健康安全研究センター微生物部疫学情報室 東京都新宿区百人町

Tokyo Metropolitan Institute of Public Health *

(2)

図2.総死亡の世代マップ(女子) (2004年以降は予測値) 乳幼児死亡の減少 青年期死亡の減少 後期高齢期死亡の増加

死亡数(人)

時的な現象で,団塊世代の高齢化にともない,長期的にみ れば 2018 年以降のいずれかの時期に増加に転じると推測 される. 2. 脳血管疾患(図3) 脳血管疾患には,脳内出血,脳梗塞,くも膜下出血,そ の他の脳血管疾患が含まれる.1950 年の死亡数は男女そ 42,668 45,752 1970 96,9 れぞれ 名と 名,以後,男子は 年の 名,女子は 年の 名までほぼ単調に増加し, 10 1973 86,009 以後はほぼ単調に減少して男子は1993年に55,279名,女 子は1992年に62,627名と極小を示した.2004年には男子 名,女子 名となっている.なお, 年か 61,547 67,508 1994 1995 ICD:Internation ら 年にかけての急増は国際疾病分類( )の変更によるものと考えられ al Classification of Disease る. 今後は,男女とも順調に死亡数の減少が続き,2018 年に は,男女それぞれ4万8千名, 万名程度になると予測さ4 図3.脳血管疾患による死亡者数の年次推移 2004 脳血管疾患 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人 れる. 3.虚血性心疾患(図4) 虚血性心疾患による死亡者は,1958年の男子 9,150名, 女子5,897名から一貫して増加を続け,2004年には男女お のおの39,014 名,32,271名となっている.なお,1993年 から 1994 年にかけての大きな不連続は,厚生省が死亡診 断書を改訂し原死因として「心不全」を原則として認めな くなったことによるものである .7) 男女とも同年齢における死亡率は,若い世代ほど減少し ているが,今後,団塊世代が好発年齢にさしかかるため男 子死亡者数は漸増を続け,2018 年には 4 万 1 千名にな り,死亡の最頻年齢は 70 歳代後半になると予測される. 2 一方,女子では男子に比して死亡率の改善が著しいため 年には 万 千人にまで減少すると予測される (図 018 2 5 . . 5) 図4.虚血性心疾患による死亡者数の年次推移 (2004年以降は予測値) 虚血性心疾患 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人 , , 395-400, 2006 東京 健安研セ年 報 Ann. Rep. Tokyo. Metr. Inst.P.H. 57

(3)

図5.虚血性心疾患による死亡者の世代マップ(男子) (2004年以降は予測値)

死亡数(人)

団塊世代 4.全がん(図6) 1950 32,670 全がんによる死亡者数は,男子では, 年の 名が2004年の193,096名へと約 6倍に増加している.女 子では,同様に31,758名から127,262名へと約4倍に増加 している. 世代マップ(図 7 8, )で見ると,男子の死亡者数の列 内ピークは1950年代後半には約 60 歳であったが,次第 に高齢側に移動し 1990年頃には約 75 歳となった.しか し1990年代に入り1926-28年世代でのピークが大きくな り2003年には,ピークが約72 歳になっている.死亡者 数の増加は徐々に頭打ちになり 2010年頃ピークの 20 万 名弱に達し,それ以後は減少に転じると予測される(図 .女子の死亡者数の列内ピークは 年には約 歳 6) 1950 65 2003 85 であったが,徐々に高齢側に移動して 年には約 歳になっている.女子では男子とは異なり 1926-28 年世 代のピークが観測されない.2010 年頃に年間死亡者数は 図6.全がんによる死亡者数の年次推移 (2004年以降は予測値) 全がん 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人 万名に達し,その後は停滞すると予測される(図 ). 13 6 5.胃がん(図9) 胃がんによる死亡者数は,1955 年の男女各22,899 名お よび14,407名に始まり1970年代まで微増を続け,それぞ れ3万名および2万名前後に達する.以後はそれほど変化 せず,2000 年頃から微減傾向がみられ,2004 年には男子 名,女子 名となっている.なお, 年か 32,851 17,711 1994 ら 1995 年における死亡者数の不連続な増加は,この時期 に死因分類が国際疾病分類第 9回修正から同第10回修正 へ変更されたことによるものと考えられる. 今後 1926-31 年前後の世代で多少の増加が予想される が,年間死亡者総数は着実に減少するとみられ,2018 年 の年間死亡者数は男子2万2千名と予想される.女子に おいても死亡者数は着実に減少し,2018年には1万2千 名と予測される. 図9.胃がんによる死亡者数の年次推移 (2004年以降は予測値) 胃がん 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人

(4)

図7.全がんによる死亡者の世代マップ(男子) (2004年以降は予測値) 図8.全がんによる死亡者の世代マップ(女子) (2004年以降は予測値) 死亡数(人) 団塊世代 死亡数(人) 団塊世代 6.結腸がん(図10) 結腸がんによる死亡者数は,1955 年の男子 723 名,女 子 905 名から始まり単調に増加する.2004 年の死亡者数 は男女それぞれ13,350名,13,167名である. 男子の死亡ピーク年齢は 1965年頃は約 70歳であった が次第に高齢側に移動して現在は約75歳になっている. 2 死亡者数の増加は今後も続くものの,増加率は低下し, 年台の半ばに約 万 千名に達し,その後停滞する 010 1 4 と予測される.女子では死亡のピーク年齢は当初約73歳 であったが,次第に高齢化する傾向がみられ,現在は約 歳になっている.女子でも年間死亡者数は増加を続 85 け,2018年には1万6千名と予測される. 7.肺がん(図11) 1958 2,9 肺がんによる死亡者数は, 年には男女おのおの 名と 名であった.しかし,それ以後の増加は単調 19 1,352 2004 43,921 16,001 なっている. 図10.結腸がんによる死亡者数の年次推移 2004 結腸がん 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人 , , 395-400, 2006 東京 健安研セ年 報 Ann. Rep. Tokyo. Metr. Inst.P.H. 57

(5)

図13.子宮がんによる死亡者の世代マップ(女子) (2004年以降は予測値)

死亡数(人)

団塊世代 男子死亡のピーク年齢は当初約69歳であったが,次第 に高齢側に移動し,2003 年には約 73 歳となっている. 死亡者数は増加を続けるものの増加率は減少し,2010 年 頃からは年間死亡者数は4万6千名程度になるものとみ られる.女子死亡のピーク年齢は1958 年の約64 歳から 高齢側に移動し,2003 年では約 80 歳になっている.男 子と同様に死亡者数の増加は次第に緩慢となり,2010 年 頃からは年間1万6千名前後になると予測される. 図11.肺がんによる死亡者数の年次推移 (2004年以降は予測値) 8.子宮がん(図12) 子宮がんによる死亡者数は,1950年には8,783名であっ たが,これをピークとして以後着実に減少し,1970 年代 後半には5,000名台となり,1994年には4,445名と極小を 示した.しかし,1995 年以降微増傾向を示し,2004 年に は5,525名となっている. 世代マップを見ると子宮がんの列内ピークは年齢依存性 肺がん 日本 男女 (2004年以降は予測値) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 男子 予測 女子 予測 年 人 1902-というよりはむしろ世代依存性が顕著で,主として 年世代の寄与が大きかった(図 .その結果,年齢位 13 13) 置は最初の約 52 歳から次第に高齢側に移動してきた.こ の世代の寄与がほとんどなくなった 2003 年には,列内ピ ークは約80歳となっている.1995年以降,団塊世代付近 の年齢域で子宮がんによる死亡が増えており,1947-55 年 世代に低い列内ピークが出現している.今後の動向を注視 2018 していく必要があろう.年間死亡者数は漸増して, 年頃には5千6百名程度になるものと予測される. 図12.子宮がんによる死亡者数の年次推移 (2004年以降は予測値) 9.乳がん(図14) 1955 子宮がんとは対照的に乳がんによる死亡者数は, 年の1,572名から2004年の10,524名まで7倍弱の増加を 示している. 15 19 世代マップ(図 )で見ると乳がんの列内ピークは 50年代の約50歳の位置に始まり,徐々に高齢化して200 子宮がん 日本 女子 (2004年以降は予測値) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 子宮がん 予測 年 人

(6)

図15.乳がんによる死亡者の世代マップ(女子) (2004年以降は予測値) 死亡数(人) 団塊世代 年には約 歳になっている.行内ピークの位置は全期 3 55 間を通じて明らかでなく,特に1910年以前の世代では広 い年齢域に わた って低い水準の死亡者数が分布してい る.また1910年前後の世代を境に,それ以後の世代での 死亡者数急増傾向が注目される.今後も死亡者数は団塊 世代を中心に増加の一途をたどり,2018年には1万3千 名に達するとみられる. 図14.乳がんによる死亡者数の年次推移 (2004年以降は予測値) 結 論 東京都健康安全研究センターで開発している疾病動向予 測システムを用いて,総死亡,脳血管疾患,虚血性心疾 患,全がんなど9種の死因による死亡特性を分析し,コー ホート変化率法により 2018 年までの動向を予測した.そ の結果,①脳血管疾患・胃がんによる死亡は今後順調に減 少していく,②全がん・肺がん・子宮がんによる死亡はま 乳がん 日本 女子 (2004年以降は予測値) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 乳がん 予測 年 人 もなくピークに達しその後停滞する,③結腸がん・乳がん 2 による死亡は今後も増加が続く,④全がんによる死亡は 年頃男子 万名弱,女子 万名のピークに達しその 010 20 13 後停滞する,などと予測された. 平成18年3月「東京都健康推進プラン21後期5か年戦 略」が策定された.その中で脳血管疾患,虚血性心疾患, 全がんなどをはじめとする生活習慣病の死亡率の引き下げ が大きな目標として掲げられている.この目標を達成する ためには,疾病動向の観測とそれに基づく施策の継続的な 評価と柔軟な見直しを欠くことはできない.行政施策をよ り一層効果的に評価するために,どのように SAGE を活 用するかについての研究を今後も進めていきたいと考えて いる. 文 献 池田一夫,上村尚:人口学研究, , , . 1) 30 70-73 1998 2) SAGEホームページ:http://www.tokyo-eiken.go.jp/SAGE 3/ 池田一夫,竹内正博,鈴木重任:東京衛研年報, , 3) 46 , . 293-299 1995 4) 倉科周介,池田一夫:日医雑誌,123,241-246 200, . 0 5) 倉科周介:病気のなくなる日-レベル0の予感-,19 ,青土社,東京. 98 金子武治,伊藤達也,廣嶋清志,他:人口推計入門, 6) , ,古今書院,東京. 98-110 2002 ) 厚生省大臣官房統計情報部人口動態統計課:死亡診断 7 20-2 書等の改訂(案)について,厚生の指標,41 4( ), , . 5 1994 , , 395-400, 2006 東京 健安研セ年 報 Ann. Rep. Tokyo. Metr. Inst.P.H. 57

図 13 .子宮がんによる死亡者の世代マップ(女子) ( 2004 年以降は予測値) 死亡数(人)団塊世代 男子死亡のピーク年齢は当初約 69 歳であったが,次第 に高齢側に移動し, 2003 年には約 73 歳となっている. 死亡者数は増加を続けるものの増加率は減少し, 2010 年 頃からは年間死亡者数は 4 万 6 千名程度になるものとみ られる.女子死亡のピーク年齢は 1958 年の約 64 歳から 高齢側に移動し, 2003 年では約 80 歳になっている.男 子と同様に死亡者数の増加は次第に緩慢
図 15 .乳がんによる死亡者の世代マップ(女子) ( 2004 年以降は予測値) 死亡数(人)団塊世代 年には約 歳になっている.行内ピークの位置は全期355 間を通じて明らかでなく,特に 1910 年以前の世代では広 い年齢域に わた って低い水準の死亡者数が分布してい る.また 1910 年前後の世代を境に,それ以後の世代での 死亡者数急増傾向が注目される.今後も死亡者数は団塊 世代を中心に増加の一途をたどり, 2018 年には 1 万 3 千 名に達するとみられる. 図 14 .乳がんによる死亡者数

参照

関連したドキュメント

(2)特定死因を除去した場合の平均余命の延び

① 新株予約権行使時にお いて、当社または当社 子会社の取締役または 従業員その他これに準 ずる地位にあることを

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

 県民のリサイクルに対する意識の高揚や活動の定着化を図ることを目的に、「環境を守り、資源を

このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと

絶えざる技術革新と急激に進んだ流通革命は、私たちの生活の利便性

小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に