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ケミカルエンジニアのためのExcelを用いた化学工学計算法

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Academic year: 2021

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(1)

7.VBA を用いた数値計算

7.1 ニュートン法による非線形方程式の解法

ニュートン法はある方程式 f (x)=0 の解を求める場合、任意の点での接線とx軸との交点を 次の初期値として、その操作を繰り返すことで、方程式の解を求める手法です。図にニュー トン法の概念図を示す。 点(x0、f (x0))における y = f (x)への接線の方程式は、式(1)で示される。 y = f ’ (x0)( x − x0) + f (x0) (1) この直線とx軸が交わる点をx1とするとx1は次式で示される。 x1 = x0 − f (x0) / f ’ (x0) (2) これをx0、x1、・・・、xnで収束する値が解である。初期値 x = x0 を決める。 x= x0におけるy = f(x)の接線を引き、今度はこの接線と y = 0(x軸)の交点をx1とする。つまり、 xn+1= xn−(f(xn)/f (xn))を計算する。これを繰り返してどんどん接線を引いていく。これがニ ュートン法の原理である。 この方法では初期値の設定をうまくやらないと、関数の形によっては接線と x 軸の交点が 遠くまでいって逆に解が求められなくなるときがあるので注意が必要である。 図 ニュートン法の概念図

(2)

ニュートン法の計算プログラム 1)ニュートン法を用いて以下の方程式を解け。 ただし、初期値を x0=0.7 とする。また、x0=−10 としたときの解と比較せよ。 2)ニュートン法を用いて方程式 log(x)−2=0 を解け。

初期値

収束値

図 プログラムの

入出力例

(3)

7.2 セカント法による非線形方程式の解法

ニュートン法による方程式の解法が困難な場合(方程式の微分式の導出が困難な場合)、セ カント法が用いられる。図を用いてセカント法の基礎式は次のように導出できる。

接線の傾き

f’(x

k

)

x

k+1

x

k

x

k-1

微小区間

図 セカント法の概念図 微小区間微小区間 xk-1∼xk について考える。接線の傾きは f’(xk)は以下のように近似できる (3) (4) 3)式を(4)式に代入すると、以下のセカント法の基礎式が導出される。 (5) 1 1

)

(

)

(

)

(

'

− −

=

k k k k k

x

x

x

f

x

f

x

f

また、ニュートン法の基礎式は次式で与えられる。 (

)

'

1 k k k

f

x

x

+

=

f

(x

)

(

x

k

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

'

)

1 1 1 1 1 1 − − − − − +

=

=

=

k k k k k k k k k k k k k k k k

x

f

x

f

x

f

x

x

f

x

x

f

x

f

x

f

x

x

x

x

f

x

f

x

x

  

(

(4)

セカント法プログラムの入出力例 プログラムの変数の説明 X0: xk−1 X1: xkX2: xk+1FX0:f(xk−1) FX1:f(xk) NX1: カウンター DX: 収束条件

(5)

セカント法プログラム

Sub セカント法計算() '---変数宣言部---

Dim X0 As Double, X1 As Double, X2 As Double 'X0,X1 が初期値 Dim N1 As Integer 'カウンタ変数 N1 を整数型で定義 EPS = 0.001 '収束条件値の設定 X0 = Cells(3, 3) 'Excel の数字を初期値 X0 に格納 X1 = Cells(4, 3) 'Excel の数字を初期値 X1 に格納 100: FX0 = X0 ^ 3 - 2 * X0 ^ 2 - X0 + 2 '解こうとする関数 FX0 FX1 = X1 ^ 3 - 2 * X1 ^ 2 - X1 + 2 '解こうとする関数 FX1 X2 = (X0 * FX1 - X1 * FX0) / (FX1 - FX0) 'セカント法の基礎式より X2 を計算 DX = Abs((X2 - X1) / X1) 'X1 と X2 との隔たりを調べる変数 DX を計算 N1 = N1 + 1 '繰り返しの回数 N1 をカウント '---計算過程の出力--- Cells(12 + N1, 2) = N1 '繰り返し回数 N1 の出力 Cells(12 + N1, 3) = X0 'X0 の出力 Cells(12 + N1, 4) = X1 'X1 の出力 Cells(12 + N1, 5) = X2 '計算結果 X2 の出力 Cells(12 + N1, 6) = FX0 '計算値 FX0 の出力 Cells(12 + N1, 7) = FX1 '計算値 FX1 の出力 '*****************収束条件判定部分***************** '---DX が収束条件 EPS より小さければ 200 に移動--- If DX < EPS Then GoTo 200 '---そうでないときは X1 を X0 に格納し 100 に移動--- Else X0 = X1 '計算した X1 を X0 に格納 X1 = X2 '計算した X2 を X1 に格納 GoTo 100 End If '*************************************************** 200: Cells(8, 3) = X1 '計算結果 X1 の出力 Cells(9, 3) = N1 '繰り返し回数 N1 の出力 End Sub

7.3 二分法による方程式の解法

(6)

f(x)=0 の近似解に近い数で、図のようにf(x0)とf(x1)が異符号(すなわちf(x0)×f(x1)<0)にな るような 2 数x0およびx1を選択する。その場合、関数y=f(x)が区間[x0, x1]で連続であると、解 は区間[x0, x1]に必ず 1 つは存在することになる。 1) x軸の区間[x0, x1]の中点をxc1とする。すなわち、xc1=(x0+x1)/2 となる。 2)このとき、f(xc1)とf(x0)が同符号の場合(すなわちf(xc1)・f(x0)>0)、x0=xc1とする。また、f(xc1) とf(x0)が異符号の場合(すなわちf(xc1)・f(x0)<0)、x1=xc1とする。 3)1),2)と同様の作業を行い、x0=x1(正確には|x0-x1|/x0<0.001)となるまで計算を繰り返 す。 二分法の収束過程

x

0

x

1

f(x

0

)

x

c1

x

c3

x

c2

f(x

c2

)

f(x

c1

)

f(x

c3

)

f(xc)・f(x0)>0のとき xc→x0 f(xc)・f(x0)<0のとき xc→x1

2

1 0 c

x

x

x

=

+

図 二分法の収束仮定

(7)

Sub 二分法() Dim tin As Range Dim tout As Range Set tin = Range("B1:B10") Set tout = Range("C1:C10") '---初期値の設定---x0 = tin.Cells(1, 1) x1 = tin.Cells(2, 1) fx0 = x0 ^ 3 - 2 * x0 ^ 2 - x0 + 2 fx1 = x1 ^ 3 - 2 * x1 ^ 2 - x1 + 2 If  fx0 * fx1 > 0 Then    MsgBox "初期値の範囲に解が存在しません"      Exit Sub   End If 関数の2つの初期値 Do xc = (x0 + x1) / 2 fxc = xc ^ 3 - 2 * xc ^ 2 - xc + 2 y = fx0 * fxc If y = 0 Then Exit Do ElseIf y > 0 Then x0 = xc Else x1 = xc End If n = n + 1 If n = 50 Then MsgBox "繰り返し回数が50回を超えました。" Exit Sub End If

Loop Until  Abs((x1 - x0) / x1) < 0.0001

xc x0 x1 同符号 異符号 tout.Cells(1, 1) = "方程式の根=" & xc tout.Cells(2, 1) = "繰り返し回数=" & n End Sub

(8)

7.4 最小二乗法

多くの実験データなどから変数(例えば、xi と yi )間の関係を関数(yi = f (xi))として 求める場合、最小二乗法を用いることが多い。最小二乗法では、実験値と使用する関数f (xi) の各点における差ei = yi − f (xi)の二乗を合計して、その値が最も小さくなるように関数に含 まれるパラメータを決定する。 y=a1x+a0 にて近似 誤差 ei x y 誤差が最小になる 関数(直線: y=a1x+a0の場合)  最小二乗による近似 誤差の和Sが最小 S a0 a1 直線: y=a1x+a0 の近似 誤差の全体の和は,

S=Σei=Σ{yi-(a1xi+a0)}

Sは変曲点にて最小値を示す すなわち, (∂S/ ∂a0)=0, (∂S/ ∂a1)=0  a ,a とSの関係0 1 図 5 最小二乗法の原理 2)エクセルの機能を用いた最小二乗法 以下のx-yデータに対して、エクセルの近似曲線の追加機能を用いて、直線f (x) = a0 + a1xで 近似し、切片a0および傾きa1を決定する。 X 1 2 3 4 5 6 7 Y 1.5 2.4 3.3 4.0 4.8 5.8 6.0

(9)

y=a

1

x+a

0 

にて近似

誤差 e

i

x

y

図 Excel を利用した最小二乗法の適用

(10)

エクセルのシート上に、以下のように x-y のデータを入力する。 グラフウィザード グラフウィザードをクリックし、x-y グラフを作成する

グラフの種類を選択する 「散布図」を選択し、左図のような グラフ形式を選び、「次へ」をクリ ックする

「系列」タブをクリックし、X の値 (X)と Y の値(Y)を選択する 「次へ」をクリック

(11)

「X/数値軸」および「Y/数値 軸」に、グラフの縦軸および 横軸の説明を記入する 「次へ」をクリックする

「新しいシート(S)」を選択し、 「完了(F)」をクリック

グラフが表示される。データの 1 点を右クリッ クする。「近似曲線の追加(R)」をクリックす る。

(12)

「種類」タブをクリックし、「線 形近似(L)」を選択する。

「オプション」タブをクリックし て、「グラフに数式を表示する(E)」 をチェックし、「OK」をクリック

左図のように近似結果 が表示される

(13)

3)マクロ言語を用いた最小二乗法 エクセルの機能を用いて最小二乗法を実行することも可能であるが、マクロ言語による計 算も可能である。 マクロ言語を用いた プログラムによる計 算結果 以下、マクロ言語 Sub SAISYO1() Dim NP As Integer

Dim XX(10), YY(10) As Double Dim targetin, targetout As Range NP = Cells(2, 2) For i = 1 To NP XX(i) = Cells(3 + i, 2) YY(i) = Cells(3 + i, 3) Next i SX2 = 0 SX = 0 SSX = 0 SY = 0 SXSY = 0 For i = 1 To NP SX2 = SX2 + XX(i) ^ 2 SX = SX + XX(i)

(14)

SY = SY + YY(i)

SXSY = SXSY + XX(i) * YY(i) Next i SSX = SX ^ 2 A0 = (SX2 * SY - SX * SXSY) / (NP * SX2 - SSX) A1 = (-SX * SY + SXSY * NP) / (NP * SX2 - SSX) Cells(2, 5) = "Y=A0+A1*X" Cells(3, 5) = "A0=" Cells(4, 5) = "A1=" Cells(3, 6) = A0 Cells(4, 6) = A1 End Sub

(15)

7.5 ガウスジョルダン法による線形連立方程式の解法

ガウス−ジョルダン法は、線形方程式の解法として用いられる。ガウス−ジョルダン法と は、方程式を行列化し左辺の行列を単位行列に変換して連立方程式を解く方法である。さほ ど手法的に困難ではないのでまず例題を解き理解をして欲しい。

(16)

問題 1 12wt.%の食塩水を蒸発装置に送り、濃縮して 25wt.%の食塩水にしたい。原液 100kg あたり、蒸発水分の量および濃縮液の量はいくらか。物質収支式により連立方程式をたて、 ガウスジョルダン法を用いて解け。 <ヒント> 原液の量をF[kg]、蒸発水分の量をV[kg]、濃縮液の液量をL[kg]、原液・蒸発成分・ 濃縮液中の成分濃度をそれぞれw1・w2、y1・y2、x1・x2、として、物質収支の関係を用 いて解く。 全体の物質収支をとると、蒸発装置へ入ってきた量と出て行く量は等しいので F=V+L (1) 次に各成分についての成分収支をとる。食塩を第一成分、水を第二成分 として、 w1×F=y1×V+x1×L (2) w2×F=y2×V+x2×L (3) ここで食塩は不揮発成分であるから、蒸発水分中には存在しないので y1=0 よって、w1=0.12、w2=1−0.12=0.88、y1=0、y2=1、x1=0.25、 x2=1−0.25=0.75、 F=100 を(1)式、(2)式に代入すると、次式が得られる。 V+L=100 (1)’ 0.12×100=0×V+0.25L 0.25LV=12 (2)’ (1)’式、(2)’式を行列化すると

(17)

=

12

100

25

.

0

0

1

1

L

V

(4) 右辺と左辺を一つの行列にまとめると

⎟⎟

⎜⎜

12

25

.

0

0

100

1

1

(5) (5)式をガウスジョルダン法(のプログラム)を用いて解くと

V= 52 [kg], L=48 [kg]

問題 2 接触式硫酸製造プラントにおいて 98.5wt.%の硫酸を製造する。下図に示すように SO3混合ガス (SO3:22wt.%、不活性成分:78wt.%) 100kg/sがSO3吸収塔において 97wt.%の H2SO4に吸収されたのち 98.5wt.%のH2SO4となる。吸収塔に供給されるH2SO4は 95wt.%硫酸と 吸収塔から出た製品(98.5wt.% H2SO4)の一部があてられる。このとき、次の諸量を求めよ。た だし、H2SO4の分子量=98、SO3の分子量=80、Sの分子量=32 である。 (a) 95wt.% H2SO4の供給量 (b) 吸収塔出口製品硫酸の量 <ヒント> 上図に示すように、求める各硫酸の流量をそれぞれ、x , y , z , w [kg/s] 吸収塔出口における 不活性成分の流量を i [kg/s]として、図中の A 枠およびB枠について定常状態における物質収 支をとる。

(18)

・A 枠について: 全物質収支 100 + x = i + y (1) イオウの物質収支

(

)( )

98 32 985 . 0 98 32 95 . 0 80 32 100 22 . 0 + x = y (2) 不活性成分の物質収支 (0.78)(100)=i (3) ・B 枠について: 全物質収支 x + w = z (4) 硫酸の物質収支 0.95x+0.985w=0.97z (5) (1)∼(5)式を対角線上に0が入らないように行列化すると

=

0

78

0

8

.

8

100

985

.

0

0

97

.

0

0

95

.

0

0

1

0

0

0

1

0

1

0

1

0

0

0

0

1

0

1

1

w

i

z

y

x

B

A

ここで A、B は割り切れない数字であるためここでは A、B とする。 なお、A=0.3102 B=0.3216 以下の行列をガウス−ジョルダン法(のプログラム)を用いて解く。

=

0

78

0

8

.

8

100

985

.

0

0

97

.

0

0

95

.

0

0

1

0

0

0

1

0

1

0

1

0

0

0

3216

.

0

3102

.

0

0

1

0

1

1

w

i

z

y

x

ガウスジャルダン法を用いて解くと x= 151, y= 173 z= 353.0, i= 78 w= 201 となる。したがって、a)供給すべき 95wt%H2SO4の流量は 151kg/s、b)吸収塔出口 98.5wt% H2SO4の流量は 173kg/s

(19)

7.6 台形公式による数値積分

関数y = f(x) の積分区間[a , b]をn等分して、その分点を左から順に、x0, x1, x2, ・・・xnとする。 その分点における関数値を、それぞれ、 y0, y1, y2, ・・・ynとする。このとき、曲線上の点P0, P1, P2, ・・・Pnを線分で結んで得られる折れ線の面積は、n個の台形の和として表される。 すなわち、 S = S1 + S2 + S3 + ・・・Sn (1) となるので、h=1/n とすると、

S1=(h/2)(y0+y1), S2=(h/2)(y1+y2),・・・・・, Sn=(h/2)(yn−1+yn)

となる。よって(1)式より、

S=(h/2)(y0+y1)+(h/2)(y1+y2)+(h/2)(y2+y3)+・・・+(h/2)(yn−1+yn)

=(h/2){y0 + yn + 2(y1 + y2 + ・・・yn−1)}

となる。

y

0

x

0

x

1

h

S

1

y

y

1

x

x

0

x

1

x

2

x

n

0

P

0

P

1

P

2

P

k-1

P

k

P

n

y

0

y

1

y

2

y

k−1

y

k

y

n

y = f(x)

S1 S2 Sk S n

a

=

=

b

図 台形公式の原理

(20)

台形公式計算プログラムコード Sub forex01() Dim a, b, h, V As Single a = Cells(6, 3) b = Cells(6, 4) h = Cells(6, 6) M = (b - a) / h SS = 0 N = 0 k = 0 For N = 1 To M - 1 X = a + N * h SS = SS + 3 * X ^ 2 Next N S = 0.5 * h * (3 * a ^ 2 + 3 * b ^ 2 + 2 * SS) Cells(12, 3) = S End Sub プログラム入出力例関数(y=3x2 におけるx=0~2における数値積分)

(21)

8. 吸着塔の設計(物質収支式を用いた化学装置の設計)

8.1 吸着

吸着(adsorption)による分離操作は、極めて低い濃度の除去目的物質を液体や気体中から 取り除く操作に適している。吸着とは、気体もしくは液体中の物質が、接触している固体の 表面や液体の界面に取り込まれる現象である。身近な例としては、活性炭を用いた冷蔵庫内 の悪臭成分の除去などがある。工業的には、脱臭、脱色、排ガス・排水処理、溶剤を含む気 相からの溶剤回収などに利用されている。 吸着現象 フェノール排水の活性炭吸着実験を行って、図のような吸着等温線を得た。いま、フェノー ル濃度が 40mg/ℓの排水 40m3 に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき、水中のフ ェノール濃度(mg/ℓ)および活性炭のフェノール吸着量(g/kg)を求めよ。 フェノール排水 V[ℓ] フェノール濃度C0[mg/ℓ] △:フェノール分子 + 活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1) 溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2) 物質収支式より、 nW=(C0-C)V (3) よって、 V W C C n= 0 − =

(

C

C

0

)

W

V

(4) ここで、(3)式の傾き

W

V

で、図 1 における横軸 を通過する直線式(操作線)である。すなわち、

=−

40

3

2

)

40

(

60

40

)

(

)

/

(

0

=

=

C

C

C

C

W

V

kg

g

n

活性炭 1kg 当たりに吸着された フェノールの量

: n

[mol/g] 活性炭 W[kg]

(22)

吸着等温線の一例 Langmuir 式

KC

KC

n

n

+

=

1

傾き-2/3 C0 図 1 吸着等温度線と操作線

(23)

問題 1 フェノール排水の活性炭吸着実験を行って、図 2 のような吸着等温線を得た。図 3 のような各々30kgずつの活性炭が投入された吸着塔がある。いま、フェノール濃度 40mg/ℓ の排水 40m3 を流し込み平衡に達した時、水中のフェノール濃度C[mg/ℓ]および活性炭のフェ ノール吸着量[g/kg]を作図して求めよ。 フェノール フェノール排水 活性炭 30kg 図 3 吸着塔(2 段) 図 2 吸着等温度線 問題 2 フェノール排水の活性炭吸着実験を行って、図 4 のような吸着等温線を得た。図 5 のような各々15kgずつの活性炭が投入された吸着塔がある。いま、フェノール濃度 40mg/ℓ の排水 40m3 を流し込み平衡に達した時、水中のフェノール濃度C[mg/ℓ]および活性炭のフェ ノール吸着量[g/kg]を作図して求めよ。 活性炭 15kg フェノール フェノール排水 図 4 吸着等温線

(24)

8.2 吸着等温式

(a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合、吸着分子間の距離が十分に長いため、吸着 分子同士の相互作用が無視でき、固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる とき、次式のように表される。 n=K・C (1) ここで、K は比例定数である。図 1 の(a)に示すように濃度 C と吸着量 n は比例関係があり、 一般に吸着量が小さい範囲で成立する。気体の場合は、溶液濃度 C の代わりに気相圧力 p を 用いればよい。 濃度(分圧) 濃度(分圧) 濃度(分圧) 濃度(分圧) 吸着量 吸着量 吸着量 吸着量 (a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型 (d)BET型 (c)フロインドリッヒ型 0 0 0 0 図 1 吸着等温式

(25)

(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは、図 2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり、表 面に 1 分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して、平衡状態における吸着量と溶質濃 度(気相分圧)のと関係を導いた。全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合を θ[-]とすると、分子の脱着速度r’[mol・s-1 ]はθに比例する。比例定数をa[mol・s-1]とすると次式 のように表される。 吸着剤 吸着分子 吸着サイト 図 2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir 式の導出) r=a・θ (2) また、気相からの吸着速度r[mol・s-1 ]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度C[mol・ m-3]に比例する。 r’= b・(1-θ)・C (3) このときの比例定数をb[m3 ・s-1 ]とする。また、平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以 下の式が成り立つ。 a・θ=b・(1-θ)・C (4) これを変形する。 C b a C b ⋅ + ⋅ =

θ

(5)

(26)

ここで、飽和吸着量をn

[mol・kg-1] 、b/a をK[m3・mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと、 =

n n

θ

となるので次式が得られる。

KC

KC

n

n

+

=

1

(6) これをラングミュア式と呼ぶ。 (c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 1(c)のように示される。 n=α・C1/β (7) nは吸着量[mol・kg-1]でαとβはともに吸着定数[-]である。 (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式 BET 型の吸着等温線は、図 1(d)に示される。ラングミュア式は、表面に 1 分子層だけ吸着す ると仮定したものであるが、BET 式は無限分子層まで吸着できる式である。図 3 に示すよう に、吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり、分子は積み重なって多分子層に無 限層まで吸着できるものとし、各層への吸着にラングミュア式を適用すれば、次式のように 表せる。

(

c

) (

Kc c

)

c K q q − + ⋅ − ⋅ ⋅ = ∞ 1 1 (8) この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な 式である。

(27)

表面の吸着サイト 分子上の吸着サイト 図 3 多分層吸着モデル

8.3 Langmuir 式のパラメータ決定法

水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12℃)は、表 1 のよう に与えられる。実験データより、ラングミュア式のパラメータ(K;吸着平衡定数、n;飽 和吸着量)を最小二乗法で決定せよ。さらに、ラングミュア式より決定したn Kの値を用 いて吸着等温線を計算し、計算線として図に示し実験点と比較せよ。 表 1 n, C, C/n の関係 C [mol・m-3] n[mol・kg-1] C/n [kg・m-3] 460 225 109 52.9 21.4 2.68 1.99 1.49 1.05 0.60 172 128 73.2 50.4 35.7 ラングミュア式は式(6)で与えられる。この式を変形すると、次式となる。

C

K

n

C

K

n

+

=

1

1

(9) 両辺に C をかけると以下の式が導出される.

C

C

n

K

n

C

K

n

C

C

K

n

C

β+α・

=

=

+

=

(

1

)

1

1

(10)

(28)

ただし、α=1/n、β=1/(n K)とする。式(10)よりC/nとCの関係のグラフプロットは傾き α=1/n、切片β=1/(n K)の直線関係を与えることを示している。表 1 の値を用いて計 算したC/nとCの関係を表 1 および図 4 に示す。最小二乗法を用いて、傾きαと切片βを決定 した。 α=1/n=0.306、 β=1/(n・K)=35.7 得られた傾きおよび切片より、nおよびKは次のように求まる。 n∞=3.27 mol・kg-1、 K =0.0086 m3・mol-1 得られたnおよびKを用いて、任意の濃度Cに対して計算した吸着量n(Cとnの関係) を図 5 に 示す。

0

50

100

150

200

0

200

400

600

C

[ mol・m

- 3

]

C

/

n

[

kg・

m

-3

]

傾き = 1 / n1   nK   切片 図 4 ラングミュア定数の決定

(29)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

0

100

200

300

400

500

液相の溶質濃度 C [ mol・m

- 3

]

吸着

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

液相と溶質濃度 C [ mol・m-3] 吸着 量  n [ mol ・kg -1 ] 実験点 Langmuir式パラメータ n∞: 0.0033 [ mol・g-1]

K

: 0.0086 [ m3・ mol -1] 図 5 12℃における酢酸濃度 C と吸着量 n の関係

8.4 吸着塔の物質収支式

吸着分離操作の代表的な方法として、図 6 に示すような多段型の吸着操作がある。主に液 相中の特定成分の除去や回収に利用される吸着分離操作で、撹拌槽中で溶液と吸着剤とを混 合接触させ、平衡に達した後、溶液と吸着剤とを分離する方法である。ここで、例を挙げて 具体的に吸着分離操作の計算の仕方について説明をしよう。 ある物質の活性炭吸着の実験を行って、図 7 のような吸着等温線を得た。今、排水V[m3 ] に含まれている濃度C0[mol・m -3 ]の溶質を活性炭W[kg]を用いて吸着させるとすると、どの程 度吸着できるだろうか。 この問題を解くためには、物質収支式を使う必要がある。まず、活性炭に吸着した溶質の 量は吸着量n[mol・kg-1 ]と活性炭の質量Wを使ってnWと表すことができる。また、溶液から取 り去られた溶質の量は、(C0-Cb)Vと表すことができる。Cbは排水内に残った溶質の量[mol・m -3 ] である。よって物質収支より以下の式が求められる。 nW=(C0-Cb)V (11) これを変形すると以下のようになる。 n=-V/W(Cb-C0) (12) この式と吸着等温線の交わるところが段数 1 段のときの吸着量と排水中の溶質の濃度である。

(30)

また、その点から x 軸に垂直に降ろし、その点から式(12)で求めた傾き-V/W に引き、再び吸 着等温線と交わった点が段数 2 段のときの吸着量と排水中の溶質の濃度になる。同様に 3 段、 4 段、・・と段数の増加に伴って、排水中の溶質の濃度が減少することがわかる。 吸着剤 低濃度溶液 高濃度溶液 溶液の    流れ C0 C3 C2 C1 図 6 多段吸着塔の概略図

液相の溶質濃度 C [ mol・m

- 3

]

吸着量 

n

[

m

o

l・k

g

-1

]

0

100

200

300

400

500

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

吸着等温線

傾き

W

V

q

1

c

1

c

0

液相と溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着量 

n

[ mol

・kg

-1

]

図 7 吸着等温線と操作線

(31)

例題 3 段の多段吸着塔によって,溶質 400 mol・m-3を含む 1m3の排水の処理を行った。活性炭は それぞれの段で 100kgずつ使用している。図 7 の吸着等温線が使えるとして、活性炭への吸 着量と出口での溶質濃度を求めよ。 まず-V/Wを求めると-V/W=-1/100=-0.01 m3 kg-1. この傾きの直線を使って、作図すると図のようになる。この図から、出口での排水の溶質濃 度が20 mol m-3 であることが分かる。したがって,溶質の活性炭への吸着量は(400-20)×1=380 molである.

液相の溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着

量 

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

0

100

200

300

400

500

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

吸着等温線

傾き

?

W

V

q

1

c

1

c

0

液相の溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着

量 

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

0

100

200

300

400

500

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

吸着等温線

傾き

-

W

V

q

1

c

1

c

0

液相の溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着

量 

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

液相の溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着

量 

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

0

100

200

300

400

500

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

吸着等温線

傾き

?

?

W

W

V

V

q

1

c

1

c

0

液相の溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着

量 

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

液相の溶質濃度 C [ mol・m

-3

]

吸着

量 

n

[

m

o

l・

kg

-1

]

0

100

200

300

400

500

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

吸着等温線

傾き

-

-

W

W

V

V

q

1

c

1

c

0

参照

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