• 検索結果がありません。

検索結果 – Hokkaido University Library

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "検索結果 – Hokkaido University Library"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学 位 論 文 題 名

水 産 学 博 士 船 越 将 二

二枚 貝類における血球の分類,形態および機能に関する研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

二 枚貝の 循環系 は開 放血管 系より なり, 循環 する血 リンパ 液は脊 椎動物 のように血液,リンパ 液 ,組織 液の区 別はな く, その血 液学的 研究は 著しく 立ち 遅れて いる。 二枚貝の血球の形態と機 能 を明ら かにす ること は血 液によ る生理 調節機 構を解 明す るうえ で重要 であるばかりでなく,二 枚 貝を養 殖管理 するた めの 血液検 査によ る健康 診断技 術の 開発に 基礎知 見を提供するものと期待 さ れる。 本 研究で は,二 枚貝 の血球 を形態学的に分類し,血球が機能を果たすためにもつ諸性質のうち, 血 球種問 におけ る貪食 能お よび走 化性の 相違を 調べる とと もに, 炎症に 際しての血球の挙動を観 察 して血 球の機 能にっ いて 検討し た。さ らに, アコヤ ガイ を材料 として ,季節ならびに環境要因 の 変化に ともな う血液 学的 諸数値 の変動 を調べ ,健康 度判 定指標 にっい て若干の考察を行った。 ア カガイ ,夕イ ラギ ,アコ ヤガイ ,ヒオ ウギ ガイ, バカガ イおよ びイケ チョウガイの血球を光 顕 および 電顕で 観察し た。 形態学 的特徴 に基づ いて血 球を 赤血球 ,無顆 粒血球および顆粒血球に 大 別し, 顆粒血 球にっ いて は顆粒 の形態 や染色 性の異 なる 細胞が 観察さ れる場合は顆粒の大きさ の 違い により ,大 きな顆 粒を含 む顆粒 血球 ーIと 小さ い顆粒 を合む 顆粒血 球―IIに分類 した。 赤 血 球はア カガイ のみに 観察 され, 細胞の 形は円 盤また は楕 円盤状 で,核 は細胞の中央かやや一方 に 偏在し ,細胞 内小器 官は 少ナょ い。無顆粒血球は全ての二枚貝で観察され,核は円形または類円 形 で,分 葉核も 観察さ れ, 細胞質 中には ミトコ ンドリ ア, 小胞体 ,ゴル ジ装置,遊離のりボゾー ム な ど が 観察 さ れ た 。 無顆 粒血球 には, 径7 ,um以下 の血球 と径8um以上 の血 球の間 にりボ ゾー ム の状態 や細胞 内小器 官の 分布な どに差 異が認 められ たが ,これ らの中 間的な形態を示すものが あ り1種類 の細胞 と同定 した 。顆粒 血球の 核は細 胞の 一方に 偏在し ,細胞 質中に は顆 粒が密 に合 ま れ,ミ トコン ドルア ,小 胞体, ゴルジ 装置な どの小 器官 が観察 される 。アコヤガイおよびイケ チ ョ ウ ガ イに は , 顆 粒 の形 態 が 異 な る2種 類 の 顆粒 血球, 即ち, 顆粒血 球-Iと 顆粒血 球―皿 が 認 められ た。タ イラギ の顆 粒血球 の細胞 質中に は種々 の形 態を示 す顆粒 が含まれていたが,これ ら の顆 粒が混 在す る顆粒 血球が 認めら れた ことか ら,そ れらを 1種 類の細 胞と同 定し た。バ カガ

(2)

イには1種類の顆粒血球 が認められた。

上記6種の二枚貝に加 えてクマサルボウガ イ,イガイ,マベ ガイ,モスソアコヤガイ,アズマニシ キガイ,イタヤ ガイ,ホタテガイ ,マガキ,スダレガイおよびマルドブガイの合計16種の二枚貝を材 料と し て血 球の 細 胞電 気泳 動 度( EPM) を損 IJ定し た。赤 血球,無顆粒血球 および顆粒血球相 互 間の EPMに は 全て のニ 枚 貝で 有意 の 差が 認め ら れた 。2種 類の 顆 粒血 球を 備 えた二枚貝のうち , ア コ ヤ ガ イ の み に 顆 粒 血 球 Iと IIの EPMに 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 赤 血 球 を 備 えた フネ ガ イ科 お よ び 無 顆 粒 血 球 1種 類 の みを もっ イ タヤ ガイ 科 を除 く全 て のニ 枚貝 で ,最 も低 い EPMを 示す 種類の血球が血 リンパ液中に最も 多く出現した。 ア コ ヤガ イ, ア カガ イ, 夕 イラギ, ヒオウギガイ,バカ ガイおよびイケチ ョウガイの全てに 貧 食能 を 持つ 血球 が 観察 され , 血球種間 で貪食率に相違が認 められた。アコヤ ガイとタイラギで は 無顆 粒 血球 が, バ カガ イと イ ケチ ョウ ガ イで は顆 粒 血球と顆粒血 球―Hが最 も高い酋食率を示 し た 。 これ ら最 も 高い 貪食 率 を示 した 血 球は 最も EPMが 低 く, しか も 血リ ンパ 液 中に 一番 多 く出 現した。このこ とは,高い貪食率 を示す種類の血球 は異物との間に働く 電気的斥カが小さいため, 他の 血 球種 より 異 物と 接近 し やすく食 作用に有利な条件を 備えていることを 示し,また,二枚 貝 類が 栄 養, 排泄 , 生体 防御 な どの機能 を血球の食作用に大 きく依存している ことを反映してい る ものと考えられ た。 血 清 を加 えた 大 腸菌 培養 濾 液に 対す る アコ ヤガ イ の無顆粒血球 と顆粒血球―Iの遊走能を調 べ た 。 無顆 粒血 球 と顆 粒血 球 -Iは とも に 正の 走化 性 を示 した 。 しか し, 顆 粒血 球― Iは不 規 則運 動性 が 著し く高 く ,ま た, 化 学運動性 を示すことで無顆粒 血球と明らかに相 違した。アコヤガ イ の外套膜外腔に 熱処理した異個体 の組織片を挿入す ると,組織片に接する外套膜の殻但I亅上皮の細 胞間および上皮下の結合組織ヘ無顆粒血球と顆粒血球ーIが浸潤し,さらにそれらはタ←套膜タ{- Jl41 にも 遊 出し た。 遊 出し た血 球 は膿汁状 の血球塊となって組 織片上およびその 周辺を覆い。また 組 織片 の 中に も侵 入 した 。無 顆 粒血 球と 顆 粒血 球ー Iの浸潤 と遊出は走化性に 基づく行動と考え ら れ, 両 者と もに 貪 食能 をも っ ことから 炎症に際し異物排除 に機能すると考え られた。また,無 顆 粒血 球 は上 皮組 織 が崩 壊脱 落 した場合 ,脱落部位に密集し て障壁を形成した 。無顆粒血球は内 部 の組 織 を保 護す る とと もに 新 しい上皮 がっくられる場を保 証することによっ て組織修復を助け る と考 え られ た。 一 方, 顆粒 血 球-uは炎 症 と関 連し た 行動 を示 さ ず, 無顆 粒 血球および顆粒血 球 ーIと 著しい違いが認め られた。 漁 場 に 垂 下 養 殖 中 の ア コ ヤ ガ イ の 血 球 数 , 血 球 組 成 お よ び 平 均 無 顆 粒 血 球直 径(MAHD)を 調べ , それ ぞれ の 季節 変化 の 様相を明 らかにした。室内実 験において,水温 15℃,20℃,25℃ の

(3)

水槽に収容した個体間の血球数と血球組成の差異は漁場に垂下養殖中の同じ水温時期の個体間に おける変動傾向と同様であったことから,水温は血球数および血球組成を変化させる重要な要因 であると考えられた。また,飼育水の溶存酸素量および塩分をアコヤガイの生理活動に障害をお よぼすことが明らかにされている低い濃度域まで低下させると,血球数の増加,顆粒血球-Iの 出現率の上昇と無顆粒血球の出現率の相対的な低下が認められた。30日間飢餓状態においた個体 で は , 血 球 数 が 有 意 に 低 下 し た が , 血 球 組 成 お よ び MAHDは 変 化 し な か っ た 。 二枚貝の血球は赤血球,無顆粒血球および顆粒血球に大別される。顆粒血球は細胞質中に形態 や染色性が異なる数種類の顆粒が認められても,これらの顆粒が混在する血球が観察される場合 は1種類とし,一方,顆粒の形態および染色性が血球間で異なり,血球相互間に形態的な移行が 認められない場合は大きい顆粒を含む顆粒血球―Iと小さい顆粒を含む顆粒血球―Hに区別する ことが適切と思われる。無顆粒血球と顆粒血球の食作用と走化性は血球種間で差異がみられ,ア コヤガイの炎症過程に認められるように,血球種間には種によりかなりの機能的な分化があり, 生体防御に重要な働きをしていると考えられる。アコヤガイにっいては血リンパ液中における顆 粒血球ーIの出現率の増加と血球数の増減は個体の生理状態を判断するための指標として利用可 能と思われる。

学位論文審査の要旨

二枚貝の血リンパ中にみられる血球の形態は種により多様であり,その分類は研究者により一 定せず,それぞれの機能的特性もよく知られていなぃ。申請者は本論文において,本邦産二攸貝 数種にっいての血球の形態的特徴に基づく分類を行い,さらに各血球種の機能に関連する特性と しての細胞電気泳動度,貧食能の相違を調べその分類の当否を検証した。また,とくに真珠養殖 貝として水産業上重要なアコヤガイにっいて,血球のそれらの性質および他の重要な特性にっい て検討している。評価される主な成果は以下のとおりである。 淡水種1種(イケチョウガイ),海産種5種(アカガイ,タイラギ,アコヤガイ,ヒオウギガ

寿

(4)

イ,バ カガイ )にっ いて, 血球 の光顕 ・電顕 による 細胞 学的, 微形態 学的特 徴を詳しく記載し, それ ら の 血球を 赤血球 ,無 顆粒血 球,顆 粒血球 の3種に大 別して ,そ れらの 組成の 標準値 を示 し た。赤 血球は アカガ イのみ に, 無顆粒 血球は 全ての 貝に 同定さ れた。 ヒオウ ギガイは無顆粒血球 のみを ,他の 貝は二 種また はそ れ以上 の血球 を保有 して いた。 従来の 分類で は,細胞の大きさ, 顆粒の 大きさ と染色 性によ り無 頼粒血 球,顆 粒血球 をさ らに細 分する 例も多 くみられるが,それ らの間 に移行 型がみ られる こと を指摘 し,移 行型の みら れない アコヤ ガイ, イケチョウガイの顆 粒血 球 に っ い ては , 細 胞 内 顆粒 の形 態によ りI型とII型 の2型に分 けるこ とを 妥当と した。 上記 6種に さら に10種を 加えた 計16種 の二枚 貝の血 球の 細胞電 気泳動 度を損 lJ定し ,全ての種で上記3 種の血 球の移 動度が 単峰性 の分 布を示 し,かつ,それらの間に有意な差が存在することを認めた。 アコ ヤ ガ イの顆 粒血球 の2型の移 動度 の間に も有意 差が認 められ た。 この結 果は提 示した 血球 分 類の適 切さを 示すも のと考 えら れた。 また, 複数種 の血 球を持 っどの 種にお いても,赤血球を除 き 最 も 低 い 電 気 泳 動 移 動 度 を 示 す 血 球 種 が 最 大 の 出 現 数 を 示 す こ と を 見 い だ し た 。 前 記 6種の 貝 の 血 球 のin vitroの 貪 食実 験 に お い て, 赤血球 を除く どの血 球も 墨汁粒 子とザ イモザ ン粒子 に対す る貧食 能を 示した が,最 も高い 貪食 率を示 す細胞 種は貝 によって異なり,同 じ種類 の血球 でも二 枚貝の 種に よって 機能的 に異な るこ とが示 唆され た。そ れぞれの貝で最も低 い移動 度を示 し,か つ最も 多く 出現し た血球 種が最 も高 い貪食 率を示 した。 この結果は,低い移 動度で 示され る細胞 表面の 荷電 状態が ,異物 との間 に働 く小さ な電気 的斥カ を介して高い貧食能 を保障 するも のと解 釈され ,二 枚貝に おける 血球の 貧食 能が栄 養,排 泄,生 体防御などの多様な 生理的 機能に 大きく 貢献し てい ること を裏付 けたも ので ある。 ア コ ヤ ガイ の 血 球 の う ち, 高 い貪食 能を示 す無顆 粒血 球と顆 粒血球 -Iにっ いて, 大腸菌 培養 濾液に 対する 運動性 をケモ タキ シスチ ェンバ ーを用 いて 調べ, また移 植組織 片による炎症過程に おける 挙動の 観察か ら,両 者の 機能的 相違を 検討し た。 両者は ともに 大腸菌 培養濾液に対する走 化性 を 示 し た が, 顆 粒 血 球 Iに は 化 学 運 動性 が 認 め られ ,かつ 無顆 粒血球 に比べ て著し く高 い 不規則 運動性 が示さ れた。 両血 球とも 炎症部 位に多 数浸 潤した が無顆 粒血球 は食作用の他に組織 修復 に 関 与 す る点 で 顆 粒 血 球-Iと 異 な って い た 。 顆 粒血球 ーnは食作 用を示 さず炎 症過 程にも 関 与 し な い こ と で 対 照 的 で あ っ た が , そ の 機 能 は 不 明 の ま ま 残 さ れ た 。 ア コ ヤ ガイ の 血 球 組 成 は年 間 を 通 じ 無顆 粒 血 球 が 66ー98%,顆粒 血球 ーIと ーIIが それぞ れ1 ―31%, 1ー 2% であっ た。温 度,塩 分, 溶存酸 素ナょ ど環境 要因の 変化 に伴う 血球数と血球組成 の変 動 の 様 相 には と く に 顆 粒血 球 -Iの 消長 が 注 目 さ れた。 すなわ ち,顆 粒血 球ーIは貝 の生理 に不 利 な 条件下 で顕著 な増 加を示 すこと が明ら かにさ れた 。この ことか ら顆粒 血球 ーIを 指標 と

(5)

する健 康度判 定の有 用性 を提案 した。

本論文 の成果 は, 従来明 確でない二枚貝の血球種の形態的機能的特徴を明らかにするとともに, それぞ れの血 球の出 現と 変動に 関連す る要因 を示唆 し, 有用種 の適切 な養殖管理に応用し得る血 液学的 知見を 示した 。よ って, 審査員 一同は 本論文 を水 産学博 士の学 位論文として十分な業績と 判定し た。

参照

関連したドキュメント

G,FそれぞれVlのシフティングの目的には

非難の本性理論はこのような現象と非難を区別するとともに,非難の様々な様態を説明

うのも、それは現物を直接に示すことによってしか説明できないタイプの概念である上に、その現物というのが、

・紫色に対するそれぞれの印象は、F「ミステリアス」が最も多い回答結果になり、両者ともに

この説明から,数学的活動の二つの特徴が留意される.一つは,数学の世界と現実の

 ハ)塩基嗜好慣…自血球,淋巴球大より赤血球大に及

を塗っている。大粒の顔料の成分を SEM-EDS で調 査した結果、水銀 (Hg) と硫黄 (S) を検出したこと からみて水銀朱 (HgS)

チューリング機械の原論文 [14]