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目のアレルギー <Ⅰ> アレルギーで起きる目の病気私たちの体には 外界の抗原 ( アレルゲン ) に対して防御するメカニズム ( 免疫反応 ) が備わっています この免疫反応が過剰に起こり かゆみや腫れなど固体に悪影響を与える状態をアレルギーといいます アレルギー性眼疾患はアレルギー性炎症によって発

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Academic year: 2021

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(1)

目のアレルギー

JAANet 委員 深川和己先生

(医療法人社団慶翔会両国眼科クリニック)

I アレルギーで起きる目の病気

(1) スギ花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)と

ダニ・ハウスダストに対する

結膜炎(通年性アレルギー性結膜炎)

(2) 春季カタルとアトピー性角結膜炎(重症型)

(3) 巨大乳頭性結膜炎(コンタクトレンズ)

(4) 白内障・緑内障・網膜剥離

II どのようにして起きるのか?

(目のアレルギーのメカニズムについて)

(1) アレルギーが起きるしくみ

(2) 重症化するしくみ

(3) ドライアイとの関係

III 治療法と予防法

(1) 抗原を避けましょう (A-1)

(2) たたかない、こすらない (A-2)

(3) 目薬いろいろ (B, C, D, E)

(2)

目のアレルギー

<Ⅰ> アレルギーで起きる目の病気

私たちの体には、外界の抗原(アレルゲン)に対して防御するメカニズム(免疫反応)が備わっていま す。この免疫反応が過剰に起こり、かゆみや腫れなど固体に悪影響を与える状態をアレルギーといいま す。 アレルギー性眼疾患はアレルギー性炎症によって発症する眼疾患の総称です。アレルギー性結膜炎は次の ように分類されます。1)スギ花粉症のように発症が季節性な、季節性アレルギー性結膜炎、2)ダニや ハウスダストアレルギーのように発症が通年性である、通年性アレルギー性結膜炎、3)結膜が乳頭様に 盛り上がり(増殖)角膜が障害されることのある、春季カタル、4)アトピー性皮膚炎に合併して高率に 角膜にも炎症が波及する、アトピー性角結膜炎、5)ソフトコンタクトレンズなどの異物が原因と考えら れる巨大乳頭性結膜炎などです。

(3)

<I>目のアレルギー

(1)

スギ花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)とダニ・ハウスダストに対する

結膜炎(通年性アレルギー性結膜炎)

これらの病気は、 I 型アレルギー反応のなかでも、マスト細胞が引き起こす即時型反応(後述)が原因 になっています。スギ、カモガヤ、ブタクサなどの季節性のアレルゲンによって引き起こされるものが季 節性アレルギー性結膜炎です。通年性のアレルゲン(ダニ、ハウスダスト、動物上皮など)による慢性も しくは急性再発性の結膜炎が通年性アレルギー性結膜炎です。充血、むくみ、かゆみなどは生じますが、 角膜が傷付くなどの重症な炎症になることは稀です。

(4)

<I>目のアレルギー

(2) 春季カタルとアトピー性角結膜炎(重症型)

春季カタルでは、まぶたの裏の結膜の巨大乳頭増殖、もしくは角膜の周囲の結膜(輪部)の炎症性増殖が 生じます。“春季”という言葉が示すように、過去には、春に急激に悪化するアレルギー性疾患であり、 そのアレルゲンは季節性で、年齢も幼児から学童までの間のみで自然緩解すると考えられていました。一 方、アトピー性角結膜炎は炎症細胞の浸潤と繊維性増殖を示すが、これまでの報告では巨大乳頭は伴わな わず、罹患年齢は思春期頃より発症して青年期にわたって持続するとされていました。 その後、アトピー性疾患の急激な増加とともに、 春季カタル様の石垣状乳頭増殖を示す患者の 70% 以上 がアトピー性皮膚炎を合併し、ダニ、ハウスダストなどの季節性とは考えられないアレルゲンにより増悪 し、幼児期のみならず 30 歳以上になっても症状の持続する症例を経験することが増えてきました。どう やら境界領域の疾患が増えてきたようです。 いずれにしても 春季カタルとアトピー性角結膜炎に共通しているのは、増殖性病変を伴い、角膜の障害 とそれによる視力障害が発生するという事です。これらの疾患では肥満細胞のみならず、好酸球を含んだ 炎症の悪循環が成立しているようです。これらの炎症細胞により角膜障害が引き起こされ、角膜混濁、不 正乱視などによる視力障害を残すことがあります。

(5)
(6)

<I>目のアレルギー

(3) 巨大乳頭性結膜炎(コンタクトレンズ)

巨大乳頭性結膜炎はコンタクトレンズ、露出した手術の糸などによって生じる、巨大乳頭増殖を伴う結膜 炎です。アトピーの有無や年齢、性別には関係しません。コンタクトレンズなどによる物理的刺激と I 型アレルギー反応が相互に関与していると考えられています。

(7)

<I>目のアレルギー

(4) 白内障・緑内障・網膜剥離

アトピー性皮膚炎にはいろいろな目の病気が合併します。一番多いのは先にお話した結膜炎ですが、その 他の病気も合併することがあります。 白内障は、目の中でレンズの役割をしている水晶体という組織が濁ってしまう病気です。レンズが濁って しまうために視力が低下します。白内障というとご老人の病気のように思えますが、アトピーの炎症が目 の中にも慢性的に起きていると、幼児でも発症してしまうことがあります。ステロイド薬の副作用で起き る場合もあります。通常の白内障であれば手術してしまえば元通り見えるようになりますので心配ありま せん。しかし、アトピー性白内障では手術による炎症や、傷が治る過程で起きる組織の収縮(縮む事)の ために、緑内障や網膜剥離が手術後に起きてくる場合があります。十分注意して治療してもらうことが必 要です。 緑内障は、目の中を循環している液体の出口がつまってしまい、眼圧(目のかたさ)が高くなり、その圧 力にたえきれずに視神経が痛んでしまうという病気です。視神経の痛みがひどくなると視野が狭くなり、 放置してしまうと全く見えなくなることもあります。視神経は緑内障によって痛んでも、“痛い”とは感 じません。そのために、眼科でしっかりと眼圧の定期検査をしていないと、気付いた時には手後れになっ ていることが多いのです。アトピーによる慢性的な目の中の炎症、手術による炎症の一時的な増悪、そし てステロイド薬の副作用などが原因となります。 網膜は目の奥にある神経でできた膜で、そこに映った映像が視神経を通じて脳に行ってものが見えます。 網膜が衝撃などによって引っ張られたり、炎症が長い間続いて弱っていたりすると、網膜が剥がれてしま うことがあります。これが網膜剥離です。網膜は栄養分を補給してくれている後ろの膜(脈絡膜)から剥 がれてしまうと、栄養分が足りないためにどんどん痛んで行きます。網膜が痛みきってしまう前に手術に よって栄養分を補給する膜にくっつけなくてはなりません。アトピーの場合、年令が若かったり、まぶた が固かったりして検査が思うようにできず、発見がおくれることがありますので注意が必要です。手術自 体も高度なものになることが多いので、網膜剥離の危険性が高い場合には専門の先生に見てもらった方が よいでしょう。アトピーによる慢性的な炎症があって網膜が弱っているところに、痒くて目を強くこす る・たたくなどの物理的な刺激が加わって起きるといわれています。強くこすったり、たたいたりしない で目薬をさすようにしましょう。

(8)

<Ⅱ>どのようにして起きるのか?

(目のアレルギーのメカニズムについて)

(1)

アレルギーが起きるしくみ

アトピー性素因を持つ人の結膜に、ダニの糞や花粉などの抗原(アレルゲン)が侵入すると、そのアレル ゲンに対する IgE 抗体が作られます。 IgE 抗体が全身の組織中に分布しているマスト細胞に結合して、 アレルギーが起きる準備が整ってしまいます(このことを感作といいます)。この後にアレルゲンがふた たび侵入すると、マスト細胞はかゆみや充血の元になる物質を放出します。その結果、充血・むくみ・痒 みが生じるのが I 型アレルギー反応のはじまりです。 その後に再びアレルギー反応が生じることがあります。この反応は、充血・むくみ・かゆみに加えて、組 織が障害されてしまうことが特徴です。アトピー性角結膜炎患者の涙液中の炎症細胞を解析してみたとこ ろ、角膜障害が重篤な症例の涙液中には好酸球が非常に多く浸潤していることが分かった。主に好酸球に より角膜の細胞が壊されると考えられます。

(9)

<Ⅱ>どのようにして起きるのか?

(目のアレルギーのメカニズムについて)

(2)

重症化するしくみ

好酸球の顆粒中には非常に多くの組織障害性タンパク質が含まれています。これらの組織障害性タンパク は好酸球から放出されると、周囲の細胞を壊してしまいます。実験的に角膜上皮細胞に好酸球の組織障害 性タンパクを加えてみると、角膜の細胞は大変なダメージを受けるのがわかります。 好酸球は骨髄で成長して、血液に乗り、アレルギーが起きている場所のの血管から組織中にしみ出して行 きます。その後、好酸球は活性化されて組織障害をひき起します。不思議なことに、好酸球はアレルギー の起きている場所だけにしみ出してきます。どうやってアレルギーの起きている場所に引き寄せられるの でしょうか?これがわかれば、角膜を傷つける好酸球がしみ出してこないようにできるのではないかと考 えて、いろいろな実験がされています。その中で解ってきたのは、接着分子というものと、ケモカインと いう物質が重要な働きをしているであろうということです。これらを減らす薬も研究されてきました。

(10)

<Ⅱ>どのようにして起きるのか?

(目のアレルギーのメカニズムについて)

(3)

ドライアイとの関係

涙は目にとってなくてはならないものです。目の表面に栄養分を運ぶだけでなく、細菌やゴミやアレルギ ーをひき起す抗原から目を守っているのです。涙が少なくなったり、涙の成分が狂ってきたりして目が乾 いた状態になってしまう病気をドライアイといいます。ドライアイは世界中で急激に増えています。目を 使うことが多くなったり、空調の効いた室内で過ごすことが多くなったりしたことが原因ではないかとい われています。 ドライアイになると、目の表面は渇き気味になり、表面の細胞は痛んでしまいます。こんな状態では、ア レルゲンが飛んできた時に洗い流すこともできず、表面の細胞も痛んでいますからアレルゲンは目の組織 の中に簡単に入っていってしまいます。ドライアイはアレルギーをおこしやすくしてしまうのです。アレ ルギーが起きてしまった後にも困った事があります。アレルギーが起きて、炎症をおこす物質や細胞を壊 す好酸球がしみ出してきた時に、それらを洗い流せないのです。そのためにアレルギーの炎症は慢性的に なり、どんどん悪くなったりします。ドライアイはアレルギーを起こしやすくするだけでなく、増悪させ ることもあるのです。

(11)

<Ⅲ> 治療法と予防法

アレルギー性の眼疾患は小さいお子さんに起きることが多く、小児であることによる治療の困難さも無視 できません。自覚症状をはっきりと表現することができないことがある、検査、特に眼圧測定は乳幼児に 対して困難であることが多い等です。さらに、乳幼児の場合重篤化することが多く、角膜が痛んでしまう と弱視になってしまうことがあるので注意が必要です。弱視の予防のためにもステロイド点眼・内服が必 要となる症例が多いのですが、副作用が心配です。ですから、定期的な眼科的検査をすることと、重症化 しないように早めに治療をすることが大切です。

(12)

<Ⅲ>治療法と予防法

(1)

抗原を避けましょう (A-1)

アレルギー性疾患の治療に当たり、もっとも重要なのはアレルゲンの検索と除去です。何にアレルギーが あるのかを調べてもらって、生活環強の改善をしましょう。 スギ花粉などは外出時に暴露されることが多いものです。外出時にはマスクやフード付き眼鏡を着用する など十分注意して、室内に入るときには着衣や手、顔についたアレルゲンを持ち込まないようにしましょ う。室内では空気清浄機やアレルゲンの侵入を防ぐような換気システムを用いるとよいでしょう。ダニ、 ハウスダスト、カビなどの通年性アレルゲンには室内で暴露されることが多いので、室内環境の整備が重 要です。ダニは高温多湿を好み、ヒトのふけや垢を栄養源としているため、絨毯やベッド、枕に多く繁殖 します。冷暖房設備により気温の変化が少なくなり、換気が不十分である室内もダニ、カビの繁殖には好 都合です。絨毯や寝具の徹底的な清掃もしくはダニ防止カバーの使用、十分な換気とともに空気清浄機や アレルゲンの侵入を防ぐような換気システムの使用により室内環境を整備するとよいでしょう。

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<Ⅲ>治療法と予防法

(2)

たたかない、こすらない (A-2)

痒いとこすってしまうのはみな同じですが、非常に危険であることを知りましょう。こすっているだけで もアレルギーは悪化します。こするのが癖になると、次にはたたくようになります。たたくことは最も危 険です。目の中の炎症を悪化させるだけでなく、網膜剥離の原因になってしまうからです。痒い時には冷 たく冷やしたり、冷たい目薬をさして、かいたりたたいたりしないようにしましょう。癖にするのが大切 です。

(14)

<Ⅲ>治療法と予防法

(3)

目薬いろいろ (B, C, D, E)

(B) 洗う(人工涙液点眼) 最も安全で、それなりの効果があるのは、人工涙液です。人工涙液は防腐 剤が入っていませんので、何度でも使えます。これを頻繁に使ってアレルゲンを目の中から洗い流すのは とても有効です。ただし、防腐剤の入っていない点眼薬にしないと副作用がでてしまうのでご注意を。ま た、水道水や市販の目洗い液も、かえって刺激になってしまうことがあるので注意が必要です。病院で処 方してもらうか、薬局で、“防腐剤の入っていない人工涙液”といって買うのもよいでしょう。 (C) 抗アレルギー剤点眼薬 いくつかの抗アレルギー薬が点眼薬になっていますが、これらはマスト細 胞の脱顆粒抑制作用を持っています。抗アレルギー薬は、副作用も少なく、適切な使用方法によりかなり の効果が期待できますが、症状が増悪してから使ってもあまり効きません。なぜなら、もうすでにマスト 細胞は脱顆粒してしまっているからです。抗アレルギー薬がマスト細胞の脱顆粒抑制作用を十分に発揮す るまでには時間を要するといいます。季節性アレルゲンの場合はその飛散の2週間ほど前から抗アレルギ ー薬点眼を開始する、通年性アレルゲンの場合は症状軽快時にも点眼回数をやや減らして点眼継続するな どの工夫が必要です。 (D) 抗ヒスタミン剤点眼薬 アレルギー反応が始まって、マスト細胞が脱顆粒すると、ヒスタミンという 物質が放出されてかゆみや充血を引き起こします。抗ヒスタミン剤はこれを抑えます。比較的かゆみや充 血を抑える力が強いようです。 (E) ステロイド点眼薬・免疫抑制剤点眼薬 アレルギー性炎症が慢性化したり重症になったりした後で は、ステロイド剤やサイクロスポリンなどの免疫抑制剤が必要になることが多いものです。軽症では、症 状のひどい時に短期間、低濃度のステロイド剤点眼を併用すればかなりの効果があります。重症になると 高濃度のステロイド点眼が必要になります。なかなか治らない時は、ステロイド懸濁液の結膜下注射や、 年齢等の理由で結膜下注射が困難な症例にはステロイド内服が必要になることもあります。ステロイドに は白内障や緑内障をひき起す危険がついて回りますので、眼科専門医の定期検査を受けましょう。

(15)

参照

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