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舗装設計施工指針 2) には, 凍結指数の確率分布を対数正規分布と仮定した次式のような n 年確率凍結指数の 推定方法が示されている. log X log X (3) X:n 年確率凍結指数,σ : 標準偏差,ξ: 確率年数に対する係数,X : 凍結指数の平均値 これは下限値を設定しない最も簡易な標

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凍結指数の地域分布および年代特性に関する考察

北海道工業大学 国際会員 ○川端伸一郎 寒地土木研究所 国際会員 佐藤 厚子 北海道大学大学院 国際会員 石川 達也 1. はじめに 寒冷地における構造物の設計では,地盤凍上の影響を考慮しなければならないことが多く,凍上が問題と なる場合には,置換工法などの凍上対策工法を設計に加味する必要が生じる.ここで,凍上対策工法の設計 に不可欠な検討項目が凍結深さの推定である.凍結深さの推定には,地盤の熱定数とマイナスの熱量に相当 する定数(凍結指数)が必要になるが,前者の熱定数は対象となる地盤の固有値として定まるのに対し,気 象パラメータである凍結指数は,年度や地理的な要素によっても変動するため,その決定には幾つかの問題 が残されている. また,凍結指数に関しては単なる設計数値としての扱いに限らず,近年の地球温暖化の影響と思われ る極 端な気候変動も視野に入れることが重要であり,今後に想定される寒冷地独自の地盤災害に対する危機管理 にも繋がる内容が含まれると考える. そこで本研究は,全国の寒冷地域で観測された気象データを用いて凍結指数を求め,地域分布や年代特性, 未知点推定のための標高補正法などについて検討することを目的とした. 2. 凍結深さ推定と凍結指数 一次元凍結における凍結深さの推定には,一般に次式の修正Berggren式(Aldrich式)1)が用いられる. w c L F Z

172800

(1) Z:凍結深さ(m),F:凍結指数(℃・days),λ:凍結 時と 未 凍 結時 の平 均 熱 伝導 率(W/m・K),Lw:凍結 潜 熱(J/m3),λ c:融 解 パラ メ ータ と 熱 比で 表さ れ る 係数 ここで,式(1)を土の熱的性質の項と熱量の項に まとめると次式になる. F C Z (2) C:土質による係数(2~5程度) すなわち,地盤の凍結深さは凍結指数の関数で表 されることになる.凍結指数はマイナスの熱量の項 であり,地域ごとの寒さのレベルを示す気象パラメ ータである.凍結指数は,図-1に示すように日平均 気温を累積していき数値が減少する期間(日平均気 温がマイナスの期間)の累積幅から求められる.なお,凍結指数は絶対値で表示され,凍結指数が求められ るまでの日数を凍結期間と呼ぶ. 例えば,ある年度の凍結深さを算出するのであれば,地盤情報(熱定数が推定可能な情報)と気温デ ータ から解析が可能である.しかし,凍上対策を考える際には,特定年度の凍結指数ではなく,年変動を考慮し た凍結指数の決定が必要である.これは再現確率と称される確率統計問題である.

A Study on Regional Characteristics and Yearly Changes of Freezing Index

Shinichiro KAWABATA (Hokkaido Institute of Technology), Atsuko SATO (Civil Engineering Research Institute for Cold Region), Tatsuya ISHIKAWA (Hokkaido University)

-600 -400 -200 0 200 10/1 11/30 1/29 3/30 累積 温度(℃ ・ da ys ) 凍結指数 F 凍結期間 t 図-1 凍結指数と凍結期間の定義

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舗装設計施工指針2)には,凍結指数の確率分布を対数正規分布と仮定した次式のようなn年確率凍結指数の 推定方法が示されている. 0 0 log logX

X (3) X:n年確率凍結指数,σ0: 標準 偏 差 ,ξ:確 率 年 数に 対す る 係 数,X0:凍 結 指 数の 平均 値 これは下限値を設定しない最も簡易な標準偏差と平均値による2母数対数正規分布式であるが,筆者らが過 去に行った検討では,凍結指数は単一の確率分布を持たない性質であることが指摘されている3). 3. 解析データと解析手法 3.1 アメダス(AMeDAS)および気象台データと頻度解析手法 アメダスは,1976年から本格的に稼動を始めており,2012/4現在,国内約850地点で気温観測を継続してい る.また,気象台観測の気温データは,1961年から入手が可能である.本研究では,より長期間のデータを 用いることを前提とし,アメダ スと気象台で同一地点名がある 場合には,気象台データを優先 した. 本研究は,寒冷地の気象特性 を扱うものであり,国内全域が 解析の対象とならないことから, 解析対象エリアを北海道および 東 北6県 と 東 北 以 南 で は 2005年 度 に 凍 上 災 認 定4)を 受 け た10県 と定めた. 表-1は,解析に用いたデータ 数を地域別にまとめたものであ る.なお,解析には,25年分以 上 未 欠 損 で 連 続 し て い る451地 点(483地点中)のデータを用い た.これは,20年分以下の少な いデータ量で凍結指数を推定す ると,特異な年度の影響を強く 受けるためである3). つぎに,451地点の中には,凍 結指数が得られない,すなわち 日平均気温が一年を通じてマイ ナス気温にならない温暖な地点 も含まれている.そのため,凍 結指数が算出できない地点は解 析から除外しており,実際の解 析データ数は416地点(451地点 中)となる. さらに,確率年数の算出(頻 度解析)を行う際には,ある程 度の年度間隔で凍結指数が得ら 表-1 解析データの地域別一覧(アメダス及び気象台) エリ ア 地域 名 現稼 動 測点 数 解析 デ ー タ数 25 年連続 観測 点 数 寒冷 地 点 数 (F>0) 頻度 解 析 対象 地 点 数 (F_10>100) 北海 道 道北 45 (5) 41 41 41 道央 31 (5) 29 29 29 道東 61 (7) 56 56 56 道南 35 (5) 32 32 32 小計 172 (22) 158 158 158 東北 青森 22 (4) 22 22 22 秋田 25 (1) 24 24 20 岩手 33 (3) 32 32 29 宮城 19 (2) 17 17 9 山形 21 (3) 19 19 14 福島 30 (4) 29 29 19 小計 150 (17) 143 143 113 東北 以南 栃木 14 (2) 14 13 4 群馬 13 (1) 13 9 5 長野 30 (5) 28 28 26 山梨 10 (2) 10 9 3 岐阜 23 (2) 23 16 9 新潟 29 (3) 26 21 4 富山 10 (2) 9 8 0 石川 11 (2) 9 5 0 福井 10 (2) 9 3 0 鳥取 10 (3) 9 3 1 小計 160 (24) 150 115 52 合計 483 (63) 451 416 323 現稼 動 測 点:2012/4/30 現在,稼働中の測点 ( ):気象台観測点 内数に含む 25 年連続観測点:未欠損 25 年以上のデータ測点 寒冷 地 点 数: 解析 デ ー タ期 間で 凍 結 指数 が算 出 で きた 地点 数 頻度 解 析 対象 地点 数 :10 年確率凍結指数が 100 ℃・days を超える地点数

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れないと特異な解析結果となる.このような理由か ら,頻度解析に用いる地点の抽出条件を10年確率凍 結指数 F_10 で100 ℃・days以上とした.ちなみに, F_10 =100 ℃・daysで想定される凍結深さは,土質に よって異なるが30cm程度であり,凍上問題を扱う上 では無視できるレベルである.このような抽出条件 にすると,解析データ数は323地点となる. 前述したように,過去の検討で凍結指数は単一の 確率分布を持たない性質であることが指摘されてい る.本研究では,これまでの知見を基に,データ期 間 の 延 長 (2012/4まで)および確率分布モデルを追 加(既往研究の5種類から6種類に増加)して頻度解 析を行った.用いた確率分布モデルは,極値I型分布 (Gumbel分布),極値II型分布(Frechet分布),極値 III型分布(Weibull分布),正規分布,対数正規分布 (2母数),対数正規分布(岩井法)であり,最適適 合 分 布 の 決 定 に はSLSC5)( こ の 値 が 小 さ い ほ ど 適 合 性が高いと判断される)を用いた.なお,各確率分 布関数については,文献3)を参照されたい. 図-2は,各確率分布モデルの適合度判定の一例で ある.この例では,SLSCによって正規分布が最適適 合として選出される.同様の解析を全国323地点で行 い最適適合分布の選出割合を求めた(図-3).同図か ら極値I型分布と対数正規分布(岩井法)の選出割合 が 高 く , 従 来 か ら 用 い ら れ て き た 対 数 正 規 分 布 (2 母数)の選出割合が極めて低いことが分かる.また, 極値I型分布は本州エリアに限定された選出であり, 逆に対数正規分布(岩井法)は北海道エリアが大部 分を占めている.すなわち,凍結指数の発生確率は 地域によって特性が異なるものである. 以上のように,凍結指数は地域特性が強く,単一 の確率分布を持たない性質である.そのため,n年確 率凍結指数の算出には,本来であれば図-2のような 解析が必要となる.しかし,この手法は極めて煩雑 な計算を必要とすることから,本研究では簡便法に よってn年確率凍結指数を求めることとした.簡便法 と は , 図 -4 に 示 す よ う に 確 率 分 布 関 数 を 用 い ず Gumbel確 率 紙 上 で の 上 位 1/3デ ー タ に よ る 回 帰 式 か らn年確率凍結指数を求める手法である.なお,その 推定精度については既往研究によって信頼性が確認 されている3) 3.2 道路テレメータの気温データ 道路管理のために設置されたテレメータでは,大部分で気温観測を行っている.気温観測をしている道路 テレメータは,表-2 に示すように道内229 地点あり,1997 年以降であれば欠損などを精査したデータを入手 200 300 400 500 600 700 800 -2 0 2 4 6 凍結 指数 F (℃ ・ day s) 基準化変数S 極値I 型分布 極値II 型分布 極値III 型分布 対数正規分布 正規分布 対数正規(岩井法) 2 5 10 20 50 100 確率年数n 図-2 各確率分布モデルの適合度判定 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0

極値I 極値II 極値III 正規分布 対数正規 対数正規

最適適合分布の選出割合 (% ) 本州 (165地点) 北海道 (158地点) (2母数)(岩井法) 解析データ数 全国323地点(F_10≧100 ℃・days)

(Gumbel)(Frechet)(Weibull)

図-3 頻度解析における最適適合分布の選出割合 0 200 400 600 800 1000 凍結 指数 F (℃ ・ day s) 上位1/3データ 2 5 10 20 50 100 確率年数 上位1/3データ 回帰式 図-4 簡便法によるn 年確率凍結指数の算出法3)

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可能である.表-1 に示したように,北海道はアメダス や気象台により158 地点で凍結指数の算出が可能であ るが,このような観測点は主に市街地に設置されたも のである.一方で道路テレメータは,環境の厳しい高 標高地での観測点も多いことが特徴である.図-5 は, アメダス(気象台も含む)とテレメータの標高分布で ある.アメダスは600m 級の標高が最大で,300m 以上 になると地点数も激減するのに対して,テレメータは 1000m 級の標高データを含み,300m 以上の地点も多 く存在する.本研究では,テレメータの観測点 229 地 点のうち,アメダスなどの観測数が少ない標高 300m 以上の地点(53 地点)を対象に凍結指数を求め,高標 高地の凍結指数の特徴を調べた.さらに,テレメータ の値を真値として,周辺アメダスデータによる高標高 地点の凍結指数推定(標高補正法)についても検討を 加えた. 4. 凍結指数の地域分布と寒冬の年代特性 簡便法によって求めた全国323 地点の 10 年確率凍結 指数をエリアに分類し,その割合を図-6 に示した.ま た,同図には式(2)から得られる理論最大凍結深さ6) 併記した.図-6 より,10 年確率凍結指数が 400 ℃・days 以下は,東北および東北以南の本州エリアにほぼ限定 される値であり,理論最大凍結深さで100cm 以内に生 じる凍上問題である.一方で800 ℃・days 以上は,理 論最大凍結深さが150cm 以上となる北海道エリア限定 の問題であり,改めて北海道が国内で特異な寒冷環境 にあることを再認識できる. 北海道では,直近で2000 年度に凍上災の認定を受け た記録が残っている4).凍上災の認定を受けるには10 年確率凍結指数以上の寒冬であることが目安となるが , 寒冬の規模は不明である.そこで,北海道158 地点に ついて各年度の凍結指数の確率年数を求めた(図-7a). この関係から,過去50 年間で北海道において,どのよ うな規模と頻度で寒冬があったかを知ることができる . 凍上災の認定を受けた2000 年度に着目すると,地点に よっては50 年確率以上の寒冬であったことが分かり, 平均値(図-7b)でも約25 年の確率年数に相当してい る.また,2000 年度以降は温暖傾向が続いていたが, 昨年2011 年度は 2000 年度以降で最大の寒冬年であっ た.図-7 を概観すると厳しい寒冬年の前後は,段階的 な寒冬年が続く傾向がみられることから,ここ数年は 寒冬に備えた施設管理(防災点検)などが重要と考える.さらに,図-7b から北海道は,従来から設計で多 用している10 年確率規模に相当する寒冬の頻度が少なく,一旦寒冬になると 20 年確率以上の規模であるこ とが明らかである.したがって,今後に設計に用いる確率年数についても議論が必要であると考える. 表-2 解析データ一覧(道路テレメータ) 建設 部 区分 現稼 動 測点 数 標高 ≧300m の測 点 数 札幌 32 9 函館 24 2 小樽 22 4 旭川 20 9 室蘭 24 4 釧路 29 7 帯広 26 9 網走 24 8 留萌 14 1 稚内 14 0 合計 229 53 現稼 動 測 点:2012/4/30 現在 0 10 20 30 40 50 0 200 400 600 800 1000 1200 度数 ( 地点数 ) 標高 (m) アメダス 全158地点 テレメータ 全229地点 ←110地点(アメダス) ←123地点(テレメータ) 図-5 アメダスとテレメータの標高分布 0 50 100 150 200 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0 200 400 600 800 100012001400 理論 最大凍 結 深さ Z ( cm ) 凍 結指数 のエ リア 割 合 10年確率凍結指数 F_10(℃・days) 東北以南 東北 北海道 理論最大凍結深さ 図-6 凍結指数の地域割合と 理論最大凍結深さの関係

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つぎに,図-7a で求めた各地点の確率年 数を地域で4 分類(道南,道央,道北,道 東)して,北海道全体の平均値と比較した (図-8).目立った傾向はみられないものの, 道南はやや小さめの確率年数を示し,道央 と道北は平均的で,道東がやや大きめの確 率年数であることが分かった.地域によっ て寒冬の傾向が異なることは興味深いが, 設計などに反映するほどの明確な差異では ないと考えられる. 5. 高 標 高 地 の 凍 結 指 数 と 未 知 点 の 凍 結 指 数推定法 図-9 は,アメダス(158 地点)と標高 300m 以上の道路テレメータ(53 地点)から算出 した10 年確率凍結指数の分布である.なお, テレメータのデータは 1997 年度~2011 年 度までの14 年分である.このデータ量は頻 度解析に適する最少データ量(推奨20 年分以上)をやや下回るが,寒冬年の 2000 年度や 2011 年度のデータ が含まれていることから,ほぼ適切な値が得られていると判断している.同図に示したように,アメダスに よる凍結指数の最大値は,陸別の 1237 ℃・days である.各種資料等 6)で公表されている凍結指数をみると, この規模の値が国内最大レベルと考えられがちである.しかし,テレメータで観測された高標高地の凍結指 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 地域 平均 n (y ea r) 全地点平均 n (year) 道北地域 41地点 図-8 地域別の寒冬特性 0 20 40 60 80 100 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 確率 年数 n ( year ) 北海道 158地点 図-7a 北海道における寒冬規模の年推移(全データ表示) 0 10 20 30 40 50 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 平 均確率年数 n ( year ) 北海道 158地点 図-7b 北海道における寒冬規模の年推移(平均値表示) 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 地 域平均 n (y ea r) 全地点平均 n (year) 道南地域 32地点 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 地 域平均 n (y ea r) 全地点平均 n (year) 道央地域 29地点 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 地 域平均 n (y ea r) 全地点平均 n (year) 道東地域 56地点

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数 は , こ れ を 大 き く 上 回 り , 最 大 値 は 三 国 ( 標 高 1144m)の 1650 ℃・days,これに次ぐ石北峠(標高 990m)では 1615 ℃・days を示す.これ以外にも高 標高地では,極めて大きな凍結指数を示しており, 凍結指数に応じた適切な対応を取らなければ,これ までに経験の無い凍上被害に見舞われる恐れも否定 できない. アメダスなど の観測点は市 街地に集中し ており, 郊外地で凍結指数を決めようとすると近傍の観測点 データを流用することが多い.このような場合,既 知点と未知点の距離的な限界などが懸念されるが, 現時点では特定の手法は提案されていない.さらに, 2点 間 の 距 離 以 外 に も 両 地 点 に 標 高 差 が あ る 場 合 に は,標高に応じた補正が必要となる.舗装設計施工 指 針2)に は , 未 知 点 の 標 高 補 正 法 と し て 次 式 が 示 さ れている.

100 5 . 0 k e k k e H H t F F    (4) Fe: 未 知 点 の 凍 結 指 数 ( ℃ ・days), Fk: 既 知 点 の 凍 結 指 数 ( ℃ ・days), tk: 既 知 点 の 凍 結 期 間 (days), He: 未知 点 の 標高 (m),Hk:既 知点 の 標 高(m) 上式は,標高100m あたり 0.5℃温度が低下すると して標高差のみで凍結指数を推定するものである. 当然,2 点間の距離は考慮されない.本研究では, テレメータの高標高地データを利用して,近傍アメ ダスデータからの凍結指数の推定を試みた.この検 討では,テレメータの観測点を未知点と設定し,近 傍アメダスデータ(既知点)から各種の手法で未知 点の凍結指数を推定することとした.この際の真値 は,実測されたテレメータの凍結指数である.図-10 は,今回の検討で用いたデータの位置関係である. テレメータの観測点から直線距離(緯度経度から算 出)で近傍10 地点のアメダスデータを抽出し,各点 間の距離L と標高差 H を求めている.図-11 は,式 (4)を用いて近傍 10 地点のデータから標高差のみ で凍結指数を推定した場合の距離と誤差の関係であ る(1 地点で解が 10 個×地点数 53).この関係から, 距離が離れるに従い,真値との誤差が大きくなる様 子 が み ら れ , 最 大 で±400 ℃・days 以上の誤差とな る場合もある.さらに,10km 圏内でも±200~300 ℃・days の誤差となる点も確認できることから,1 測点で 標高差のみから凍結指数を推定することは,極めて困難であるといえる. 1 測点からの推定法には限界がみられたことから,複数の測点を利用した二次元的な推定法について検討 した.このような面的な内挿法は複数の手法が存在するが,本研究では最も簡易な手法として距離を重みと した面内挿法を用いた(式(5)).なお,Fe’は測点数n を近傍 2~10 地点の 9 パターンに変化させて求めた. 0 5 10 15 20 25 30 100 400 700 1000 1300 1600 度数 ( 地点数 ) 10年確率凍結指数 F_10(℃・days) アメダス (全データ) テレメータ(標高≧300m) 最大値(テレメータ) 三国 1650 ℃・days 最大値(アメダス) 陸別 1237 ℃・days 図-9 アメダスとテレメータの凍結指数分布 1 L1 L1 Ln H2 H4 H5 H3 H1 Hn L2 L2 L3 L3 L4 L4 L10 L5 L5 L6 L7 L8 L9 1 2 2 3 3 4 4 5 5 7 8 9 10 6 未知点 : 水平距離 : 標高差 既知点 平面図 断面図 図-10 標高補正に用いたデータの位置関係 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 0 10 20 30 40 50 真 値との誤差 Δ F (℃・ da ys ) 未知点までの距離 L (km) 図-11 1 測点補間による距離と誤差の関係

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n n n e L L L L F L F L F F 1 1 1 1 2 2 2 1 1              (5) Fe’:標高0の未知点の凍結指数(℃・days),Fn’:標高0 の 既 知 点 の 凍 結 指 数 ( ℃ ・days), Ln: 未 知 点 と 既 知 点 の距 離 ここで,標高0 の値を用いているのは,個々の地 点が三次元的な位置関係にあるためである.Fn’は 式(4)に He=0 を代入することで求められる.ま た , 式 (5) で 求 ま る 未 知 点 の 凍 結 指 数 は , 標 高 0 における推定値であるため,実際の標高点の値とす るには,次式により改めての標高補正が必要となる. 100 5 . 0 e e e e H t F F     (6) Fe:未知 点 の 凍 結指 数( ℃・days),Fe’:標高0の未知点 の凍 結 指 数(℃ ・days),te:未 知点 の 凍 結期 間(days), He: 未 知 点の 標高 (m) ここで問題となるのは,未知点の凍結期間の設定 である.凍結期間は凍結指数に応じて変化すること が知られており,高標高点のように大きな凍結指数 になれば,その影響を無視できない恐れがある.図 -12 は全国323 地点のデータによる凍結指数と凍結 期間の関係であり,両者には高い相関関係がみられ る.したがって,高標高点になり凍結指数が大きく 増加すると,それに応じて凍結期間が延長されるこ とが予想される.図-13 は,今回の検討に用いたテ レメータ53 地点の標高と凍結期間の関係である.両 者には一義的な関係が見られることから,本研究で はこの関係式によって未知点の凍結期間teを決定す ることとした.ただし,図-13 は,凍結指数の最小 値が 659 ℃・days の条件で成立している関係である. すなわち,図-12 の関係においては,およそ650 ℃・ days 以降の関係を線形回帰したものであるため,さ らに温暖な地域に関しては別の関係式が必要になる ことに注意が必要である. 図-14 は,以上のような面内挿法で測点数を変化 させた場合に,真値との誤差ΔF がどのように変化 するのかを表したものである.この関係から,測点 数を4 測点で推定した場合の誤差が最小になること が分かる.さらに,この関係を詳しくみるため,図-15 に4 測点と比較のため誤差が最大となる 2 測点につ いて誤差の分布を示した.同図から4 測点で凍結指数を推定すると,ほぼ 90%の地点で±100 ℃・days の精 度を確保できることが確認できた. 今回は,初めての試みとして面内挿法として最も簡易な手法を用いたが,これ以外にも同様の目的で 行う 解析手法には,例えば,空間的確率現象を扱うクリギング法 7)がある.この手法は,未知点のデータと既知 t = 35.217ln(F) - 104.97 R² = 0.9802 40 60 80 100 120 140 160 0 200 400 600 800 1000 1200 凍結期間の地 点 平均 t( da ys ) 凍結指数の地点平均 F (℃・days) 解析データ数 全国323地点 図-12 凍結指数と凍結期間の関係(地点平均) t = 0.042 H + 117.051 R² = 0.718 100 120 140 160 180 0 500 1000 1500 凍結期間 t( da ys ) 標高 H (m) Fmin= 659(℃・days) 図-13 標高と凍結期間の関係 94 96 98 100 0 2 4 6 8 10 12 Δ F の標準偏差 σ(℃・ day s) 面内挿に用いた測点数(地点数) 図-14 面内挿における測点数と標準偏差の関係

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点のデータがある確率的相互関係を持つとして,そ の関係を共分散関数やバリオグラム関数で表現する ものであり,今後に精度向上のために有効な手段と 考えている. 6. まとめ 本研究は,国内全域の凍結指数を調べ,地域分布 や年代特性,未知点推定のための標高補正法などに ついて検討した.得られた結果は以下の通りである. ・ n年確率凍結指数を求めるための最適適合分布は, 極 値I型分布と対数正規分布(岩井法)の選出割 合が高く,従来から用いられてきた対数正規分布 (2母数)の選出割合が極めて低いことが明らか と な っ た . ま た , 極 値I型分布は本州エリアに限 定 さ れ た 選 出 で あ る の に 対 し て , 対 数 正 規 分 布 (岩井法)は北海道エリアが大部分を占めており, 凍 結 指 数 の 発 生 確 率 に 地 域 性 が 高 い こ と が 示 さ れた. ・ 北 海 道 に お け る 過 去50年 間 の 寒 冬 の 規 模 と 頻 度 を 調 べ た 結 果 , 従 来 か ら 設 計 で 多 用 し て い る10 年確率規模に相当する寒冬の頻度が少なく,一旦 寒 冬 に な る と20年 確 率 以 上 の 規 模 で あ る こ と が 分かった. ・ 道 路 テ レ メ ー タ で 観 測 さ れ た 高 標 高 地 の 凍 結 指 数は,極めて大きな値を示しており,最大値は三国(標高1144m)の1650 ℃・daysであった. ・ 未 知 点 の 凍 結 指 数 を 既 知 の1測 点 で 標 高 差 の み か ら 推 定 す る こ と は 極 め て 困 難 で あ り , 地 点 間 の 距 離 が 10km以内であっても場合によっては±200~300 ℃・daysの誤差となる. ・ 距離を重みとし複数の測点による面内挿法によって推定した凍結指数は,4測点で推定した場合の誤差が 最小になり,ほぼ90%の地点で±100 ℃・daysの精度を確保できることが確認できた. 最後に,本研究の一部は平成23 年度~平成 26 年度科学研究費補助金(基盤研究(B),課題番号:23360201, 研究代表者:石川達也)の交付を受けて実施されたものである. 参考文献

1) Aldrich, H. P. : Frost Penetration Below Highway and Airfield Pavement, Bulletin 135, H. R. B., 1956. 2) 日本道路協会:舗装設計施工指針(平成 18 年度版),pp.171-174,2006. 3) 川端伸一郎,亀山修一,高見雅三,神谷光彦:凍結指数推定における各種確率分布モデルの適合性,土 木学会論文集C,Vol.65,No.3,pp.716-727,2009. 4) 全国防災協会:わが国の災害史(第四編),pp.38-52,pp.477-489,2004. 5) 宝 馨,高棹琢馬:水文頻度解析における確率分布モデルの評価規準,土木学会論文集,Vol.393,No.II-9, pp.151-160,1988. 6) 日本道路協会:道路土工要綱(平成21 年度版),pp.202-218,2009. 7) 間瀬 茂:地球統計学とクリギング法,オーム社,2010. 0 2 4 6 8 10 12 14 250 150 50 -50 -150 -250 度数 ( 地点 数) 真値との誤差 ΔF (℃・days) 2 測点補間 σ =99.0 (℃・days) 0 2 4 6 8 10 12 14 250 150 50 -50 -150 -250 度数 ( 地点 数) 真値との誤差 ΔF (℃・days) 4 測点補間 σ =94.5 (℃・days) 図-15 2 測点補間と 4 測点補間の誤差分布

参照

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