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Keysight Technologies B2900 SMUを使用した3電極法によるリチウムイオン電池/センサの電気化学測定

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(1)

B2900 SMU

を使用した

3

電極法による

リチウムイオン電池/センサの

電気化学測定

(2)

Keysight B2900Aシリーズプレシジョン・ソース/メジャー・ユニットは電気化学測定に使用されています。このよう な測定に広く用いられる手法として、サイクリックボルタンメトリー(C-V)およびクロノアンペロメトリーと呼ばれる ものがあります。これらの測定は、作用電極、基準電極、カウンター電極で構成される3電極システムをベースにしたも のです。C-V測定では電圧を掃引して、それに対応する酸化還元反応の電流を測定します。酸化/還元のピークの電圧 /電流は、検査対象溶液の濃度(ネルンストの式)と反応拡散特性(フィックの法則)によって決まる値によって測定され ます。クロノアンペロメトリーでは、一定の電圧を印加して、酸化還元反応の電流の時間変化を測定します。このアプ リケーションノートでは、基準電極としてTiO2を用いたリチウムイオン電池と、ポリマー修飾電極を用いたグルコース センサを含む、2種類の電気化学システムを測定しています。従来のポテンショスタットをベースにした構成と比較する と、SMUは電流/電圧測定の感度が非常に高いので、例えば、小さな電極システムの低い電気化学電流も正確に測定で きます。プロセス制御は、SMUのフロントパネルから、または、PCベースのB2900A Quick I/V測定ソフトウェアから 行うことができます。さらに、Keysight EasyEXPERT group+ソフトウェアを使用すれば、測定セットアップ/実行か ら解析/データ管理までのすべてのプロセスを制御することができます。これはバッテリー関連のマルチセル電気化学 自動測定にも拡張可能で、例えば、1ラックに収容された直列半電池で多くの個別パラメータ(例:電解質のイオン濃度) の変化を調査することができます。

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はじめに

バッテリー、キャパシタ、エネルギー蓄積デバイス、光電池、腐食、水素電池、電気化学センサな どのエネルギー関連の投資が増加する中で、電気化学の分野(本質的に電子エネルギーと化学エネ ルギーの変換に関する研究)が、業界および研究機関で重要な役割を担っています。実際のアプリ ケーションで最適な性能が得られるようにこれらのデバイスをデザインできるかどうかは、マクロ 的な作用の源である分子電気化学プロセスの研究にかかっています。電気化学プロセスは、個別の 酸化/還元ステップからなる酸化還元反応です。酸化は化学種が1つ以上の電子を失う反応で、還 元は1つ以上の電子を取り込む反応です。酸化還元反応で酸化と還元が対になって生じれば、電子 は酸化される化学種から還元される化学種へと移動することができます。このような電子の流れは、 ガルバニ電池のように化学反応によって自発的に発生して電気に変換される場合もあれば、電解質 電池のように強制的に化学反応を進めるために外部電源によって誘発される場合もあります。全体 として完全なガルバニ電池や電解質電池は、標準的なバッテリーと同様に2端子システムです。通 常の実験では、完全な電池ではなく、より柔軟で制御しやすい半電池を使用します。完全な電池は 2つの半電池を組み合わせたものとして表すことができます。半電池とは2つの電極のうちの1つで す。半電池には、3電極電気化学システムを形成する基準電極(RE)、カウンター電極(CE)、作用電 極(WE)が必要です(図1参照)。WEに印加される電圧はWEとREの電位差になります。電気化学電 池の電流は、REを通過せずに、CEによって形成される経路を流れます。多くの場合、CEには白金 のような不活性物質が使用されます。REは通常、Ag/AgClベースのもので、ポーラスプラグ付き のガラス管に充填された溶解性塩化銀に銀ワイヤーを浸漬したもので構成されます。WEは通常、 金やグラファイトなどの導電材料を必要な電気化学活性材料でコーティングしたものでできていま す。電気化学システムに基づいて、可動イオンを含む適切な電解質(水性または溶解性)が選択され ます(図2参照)。

A

V

基準 電極 (Ag/AgCI) 作用 電極 (TiO2) カウンター 電極 (Pt) LiOH電解液

Keysight SMU

Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ Li+

図1. Keysight B2900A SMUの使用例:作用電極として TiO2を使用したリチウムイオン電池を3電極法で測定。 LOセンス LOフォース HIセンス HIフォース WE RE CE GPIBまたはUSB (オプション) PC(オプション) Keysight Quick IV measurement software (optional)

Keysight Quick I/V

測定ソフトウェア (オプション) ガード シャーシグランド WE CE RE (b) SMUのセットアップ (a) ポテンショスタットのセットアップ (c) 測定セットアップ 溶液 電流計 溶液 4端子接続 HIフォース HIセンス LOフォース LOセンス シャーシグランド 図2. ポテンショスタットとSMUのセットアップの比較。(a) ポテンショスタットは、カウンター電極(CE)を通過する電流を調整して、 基準電極(RE)と作用電極(WE)の間の電位を一定にします。(b)、(c) SMUでは、HIセンスとHIフォースを組み合わせて、ポテンショスタッ トに似た3端子接続を構成できます。

(4)

04 | Keysight | B2900 SMUを使用した3電極法によるリチウムイオン電池/センサの電気化学測定 - Application Note 電気化学の一般的な測定手法はサイクリックボルタンメトリー(C-V)で、電解質溶液の酸化還元特性と伝 導特性を調査するものです。WEの電位が、電解質溶液に存在する分子の酸化還元対の電位よりも高くな ると、対応する化学種が酸化されて(すなわち、電子が酸化還元溶液から電極に移動して)、アノード電流 が生じます(図3参照)。同様に、電圧を逆掃引してWEの電位が酸化還元対の還元電位よりも負方向に大き くなると、還元が生じて(すなわち、電子が電極から酸化還元溶液に移動して)、カソード電流が流れます。 C-Vは、このように、電圧を順方向と逆方向に掃引しながらWEで電流を測定します。このように、C-V ボルタンモグラムのデータの解釈は、4つの取得結果、つまり、2つのピーク電流と2つのピーク電圧に依 存します[1]。IUPACの規定により、アノード電流は正、カソード電流は負です。ポテンショスタットを使 用した電気化学のセットアップの場合は、システムは、CEでの電流を調整してREに対するWEの電位を一 定のレベルに維持します。その後、電圧を順方向に掃引し、電流ピークを超えるまでREに対するWEの電 位を上昇させます。その後、逆方向の掃引を実行し、REに対するWEの電位を下降させます。このように、 サイクリックボルタンメトリー曲線は、電圧をフルサイクルで掃引しながらWEで測定した電流をプロッ トして作成します。

以下の材料では、電気化学測定にKeysight B2900Aプレシジョン・ソース/メジャー・ユニット(SMU)が 非常に適しており、10 fA/100 nV分解能で電圧/電流の両方を正確に供給/測定できます[2、3]。SMU を使用して3電極法電気化学測定を実行するために、ハードウェアやソフトウェアを変更する必要はあ りません。SMUはリモート制御用に複数のオプションを提供しています。例えば、Keysight B2900A Quick I/V測定ソフトウェアを使用すれば、WindowsベースのPCから容易に測定できます。Quick I/Vソ フトウェアには使いやすいGUIもあり、これによってLAN、USB、GPIB経由でB2900A SMUと通信でき ます。さらに、Keysight EasyEXPERT group+ソフトウェアは、測定セットアップ/実行から解析/デー タ管理までのすべてのプロセスで、効率的かつ再現性の高いデバイス特性評価をサポートしています。 EasyEXPERT group+には、すぐに使用できる測定/アプリケーションテストが搭載されているので、複 雑な作業も簡単に実行できます。また、測定後に各テスト条件や測定データを独自の内蔵データベース (ワークスペース)に自動的に保存することもできるので、重要なデータが失われることなく、測定を後日 再現することもできます。 B2900A SMUは3電極法電気化学C-V測定に使用できるだけでなく、4端子ケルビン接続を用いたバッテ リー電池の充放電サイクルのデータ収集も可能です。拡張レンジにより、3 Aの連続電流と10.5 Aのパ ルス電流を使用でき、増幅器がなくても広く使用されている現実的な条件で測定が可能です。さらに、 B2900Aシリーズには1チャネルモデルと2チャネルモデルがあり、これらをカスケード接続してKeysight BenchVueソフトウェアでリモート制御すれば、カスタマイズした測定スクリプトを動作させて大規模な 自動測定も可能です。最後に、高抵抗/低電流(fA未満)のナノスケール電極を含む非常に困難な電気化学 測定には、バッテリー駆動式のB2980シリーズフェムト・ピコアンメータおよびエレクトロメータを使 用することができます。これらは200 TΩを超える電圧測定入力抵抗を備えていて、最小0.01 fAまでの 電流測定を非常に高い確度で実行できます。内蔵電圧源は最大1000 Vまで供給でき、これによって最大 10 PΩまでの抵抗測定が可能です。

(5)

材料と手法

SMUの接続と設定:SMUの4つの端子は、半電池電気化学システムに3端子接続できるように結線されて います(図2参照)。HIフォースとHIセンスは一緒に作用電極(WE)に接続されています。LOセンスはAg/ AgCl電極を用いた基準電極(RE)に接続され、LOフォースは白金電極を用いたカウンター電極(CE)に接続 されています。図3に見られるように、測定器に供給電圧が設定されると、内部センシングによってフィー ドバック電圧が測定され、設定電圧レベルと比較されます。フィードバック電圧が設定電圧レベルよりも 低い場合は、フィードバック電圧が設定電圧レベルと等しくなるまで供給電圧が上昇します。リモートセ ンシングによりWEの電圧降下が補正され、この補正によって確実に設定電圧レベルがWEに印加されます。 図4のように、Keysight B2912A SMU、液体電池の3つの電極を半分だけ溶液に浸漬したもの、Quick I/V ソフトウェアがインストールされたラップトップを使用しました。 入力電圧 (V) 時間 (s) 測定電流 (A) 時間 (s) 測定電流 (A) 電圧 (V) V M = 測定電位 AM = 測定電流 Epa ipa ipc アノード(酸化) 正電流 カソード(還元) 負電流 E pc WE CE RE VM 調整可能な 電圧源 AM フィードバック 波形 E=入力 波形 (a) C-V測定用のフィードバック ループ付きSMU回路 (b) CVのフィードバック電圧 (c) C-V測定の原理 図3. サイクリックボルタンメトリーの原理。(a) C-V測定用のフィードバックループ付きSMU回路、(b) C-V測定の入力波形のフィードバック 電圧、(c) カソード還元反応とアノード酸化反応を含むC-V測定の原理。 液体 電池

SMU

Keysight Quick I/V測定 ソフトウェア グラフ表示 実行 測定条件の設定 (b) 測定の直接設定 (a) コンピューターによる測定制御 (c) SMUによる直接測定/表示 図4. SMUの接続/セットアップ。電気化学測定は2つの モードで実行できます。(a) コンピューターにインストー ルしたKeysight B2900A Quick I/V測定ソフトウェアを使 用して制御する方法、または、(b)、(c) SMUのフロント パネルから直接、制御/測定する(“Trigger”ボタンを押し て測定を実行する)方法です。結果はSMUパネル上に表示 され、“View”ボタンを押すたびにシングル表示とグラフ 表示が切り替わります。生の測定データまたはjpeg画像 ファイルは、USBドライブに保存できます。

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06 | Keysight | B2900 SMUを使用した3電極法によるリチウムイオン電池/センサの電気化学測定 - Application Note

Quick I/V測定ソフトウェア:測定のセットアップとトリガは、Quick I/V測定ソフトウェア経由で行うか、 SMUパネルから直接制御できます。図5に示されているように、ソフトウェアによって、測定機能を「電 源供給/サンプリング」または「掃引」モードのどちらかに設定できます。C-V測定には「掃引」モード を使用し、開始電圧と終了電圧を入力します。掃引プロファイルを選択し、測定遅延と速度を入力します。 C-V測定のサイクル数を指定し、その後、掃引速度、繰り返しサイクル数、測定遅延、ステップサイズを 指定します。 電気化学システム 1. リチウムイオン:TiO2に対するリチウムインターカレーションのC-V測定を行いました。作用電極には、 ガラス基板上に金膜を下地として100 nmの厚いTiO2膜を形成したものを使用し、カウンター電極として Ptワイヤーを、基準電極としてAg/AgClを使用しました。電解質は、濃度が1 mol/lの水酸化リチウム水 和物(LiOH.H2O)です。 2. グルコースセンサ:作用電極(WE)は、酸化還元酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOx)を含むオス ミウム錯体のレドックスポリマー[4、5]で被覆された金です。レドックスポリマーの生成と厳密な組成に ついては参考資料4、5に記載されています。グルコースがWEに接触すると、この酵素の存在によって触 媒反応が起こり、電子がグルコース分子からWEへと次々に供与され、これが電流としてSMUで測定され ます。電流は、溶液中のグルコース濃度に比例します。 電圧掃引、プロファイル、レンジ、 測定遅延、速度の設定 カウント、サイクル、 トリガモードの設定 測定のグラフ表示 生データ トリガ

図5. Quick I/VソフトウェアのC-V曲線。Keysight B2900A Quick I/V測定ソフトウェアを使用して、容易かつ高速に測定できます。直観 的なソフトウェアインタフェースにより、簡単に測定パラメータを設定でき、結果は生の表形式データまたはグラフ形式で表示できます。

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結果と考察

B2900A SMUを使用して電気化学測定を実行するには、SMUの4象限電源供給/測定端子を3端子の電気 化学半電池に適切に接続する必要があります(図2参照)。HIセンスとHIフォースはWEに接続し、LOフォー スはCEに、LOセンスはREに接続します。このような接続により、SMUから電圧が印加され、WEとCE の間の電圧が掃引されます。REとWEの間の電位が測定され、SMUによって印加されるすべての電圧が、 WEがREに対して必要な電位を維持するように調整されます。このプロセス中に、WEに流れるすべての 電流がSMUで測定され、その結果としてサイクリックボルタンメトリー(C-V)曲線が得られます(図3参 照)。図6bは、B2912Aで測定したグルコース緩衝液のレドックス金属ポリマーメディエーターのC-V曲線 です。電圧の掃引範囲は−0.4 Vから0.8 Vで、ステップサイズは2.4 mVです。これは500ポイントのポイ ント数に相当します。設定した掃引時間は2.5秒で、これは1ポイント当たり5 msに相当します。電流の 測定前に設定電圧が安定するように、「測定遅延」は500 μsに設定されています。各測定のノイズレベル に影響を与える「測定速度」パラメータ、すなわち積分時間は"LONG"に設定されています。ステップサ イズは、電圧掃引範囲に対して設定した500ポイントによって決まります。電圧は最初に−0.4 Vから0.8 V まで掃引された後、0.8 Vから−0.4 Vに逆方向に掃引されます。ボルタンメトリーは2サイクルに渡って 測定されます。 このような特定の電気化学グルコースシステムでは、電極の表面に固定化されているGOx酵素が触媒とな り、多価オスミウム金属イオン錯体の表面酸化/還元に作用します(図6c参照)。酵素を固定化した電極 がグルコース溶液(検査対象液)に浸されると、グルコース分子が電子をGOxに供与し、GOxは還元型に変 化します。次に、還元型GOxが、メディエーターとしてのオスミウム錯体に電子を供与し、オスミウムは Os3+からOs2+へと変化します。順方向掃引中(電位が正方向へと上昇中)の0.4 V付近のピークはOs2+から Os3+への酸化作用に対応しています。このときのピーク電流はアノード電流と呼ばれます。これは、オス ミウムイオンが失った電子が電極に渡ったときの電流をSMUが測定したものです。逆方向掃引中の0.2 V (b) SMUで測定したCV曲線 アノード カソード アノード カソード アノード カソード -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 -1x10-5 0 1x10-5 2x10-5 電流 (A) 電位 (V) -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 -5.0x10-6 0.0 5.0x10-6 1.0x10-5 電流 (A) 電位 (V) 電流 (A) 電位 (V) 電流 (A) (c) グルコースオキシダーゼ酵素を使用した、 オスミウムを媒介としたグルコースの酸化還元反応 (a) ポテンショスタットで測定したCV曲線 (d) SMUで測定した低電流CV測定 -Os3++ e-Os グルコース グルコノラクトン Os2+ Os3+ オスミウム境界 ポリマーマトリクス e -電極 e -グルコースオキシダーゼ酵素 e -Os2+ Os3++ e -順方向掃引 逆方向掃引 2+ 電流 (A) 電位 (V) 図6. 特定のグルコース酸化還元反応のC-Vの結果。グ ルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を使用して、レドック スポリマーを媒介としたグルコース溶液のC-V測定を Keysight SMUで実行しました。(a) ポテンショスタッ ト(CHI instruments社)によって測定したC-V曲線、(b) SMUによって広い表面積(すなわち、高電流)の電極を 測定したC-V曲線、(c) オスミウムを媒介とした酵素に よるグルコース酸化還元反応の図、(d) 狭い表面積(すな わち、低電流)の別の電極を測定した低電流C-V曲線。

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08 | Keysight | B2900 SMUを使用した3電極法によるリチウムイオン電池/センサの電気化学測定 - Application Note A V 基準電極 (Ag/AgCI) 作用電極 (TiO2) カウンター 電極 (Pt) 電解質 Keysight SMU 0.5V 作用電極 Os2+ Os3+ e -オスミウム境界 ポリマーマトリクス グルコース グルコノラクトン e -e -WE CE RE VM 調整可能な 電圧源 AM フィードバック 電圧 (a) クロノアンペロメトリーの回路図 (b) 回路図 E =固定電圧 時間 I =電流 (WE) 時間 (c) 測定 0 20 40 60 80 100 5.0x10-6 1.0x10-5 1.5x10-5 電流 (A ) 時間 (s) 0 20 40 60 80 100 120 1.0x10-5 1.5x10-5 2.0x10-5 電流 (A ) 時間 (s) (d) 電極の処理 (e) ポテンショスタットによる測定 (f) SMUによる測定 E=入力 固定 電圧 図7. クロノアンペロメトリー(電流対時間)。(a) 電流対時間測定のセットアップ回路図。(b) 測定回路。(c) 0.5 Vの一定電圧に設定した場合。 (d) 測定は、作用電極上で、グルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を使用し、ポリマーを媒介としたグルコース溶液で実行されました。(e) 電流 対時間測定((c)はCHI Instruments社のポテンショスタットを使用、(d)はKeysight SMUを使用)。

付近の下向きのピークはOs3+からOs2+への還元作用に対応しています。このときのピーク電流はカソード 電流と呼ばれます。この実験でも確認できるように、表面酸化還元反応の場合は、これらの2つのピーク は同じ電位で逆向きの電流に生じるはずです。多くの場合、実際の状況では、2つの電流ピークの電位に わずかなずれが見られます。これは、容量性電流や酸化還元反応の時定数の制限などの条件が理想的では ないためです。C-V曲線から、検査対象液の濃度や酸化還元反応速度を把握することができます[5]。還元 (または酸化)のピークが生じるのは、電位が十分に高くなって検査対象が還元(または酸化)するときです。 このときの電位は、ネルンストの式に基づいた濃度によって決まります。フィックの法則により、電流は、 検査対象液が電極の表面まで拡散する化学反応速度に依存します。 電気化学のもう1つの一般的な測定にクロノアンペロメトリーがあります。これはWEの電圧を一定に維持 しながら時間に対する電流の変化をWEで測定するものです(図7参照)。C-V情報は、特定の種類の電気化 学反応とそれに対応する電圧と電流に基づいていますが、クロノアンペロメトリーは定量的な電気化学プ ロセスの反応速度データです。したがって、クロノアンペロメトリーは、通常、C-Vの補足測定として行 われます。図7は、電圧を0.5 Vに固定して、グルコース・レドックス・メディエーター反応によって生じ た電流の時間変化のクロノアンペロメトリー測定です。ポテンショスタットによる電気化学測定(図7c参 照)とSMUによる電気化学測定(図7d参照)を比較しています。酸化還元反応の電流は最初の数秒で大幅に 低下します。この数秒の電流は、電極表面の二重層キャパシタンスの充電によって生じる、大きな非ファ ラデー成分に基づいたものです。非ファラデー電流は時定数RCによって指数関数的に減衰します。Rは未 補償抵抗、Cは二重層キャパシタンスです[4]。 最後に、水溶液中のTiO2電極に対するリチウムイオンのインターカレーションを調査するためのSMUア プリケーションを紹介します(図8参照)。TiO2は隙間のある結晶構造で、Ti4+イオンにはさまざまな電子構 造があります。その結果、TiO2は別のイオンから電子を受容することができ、Li+、H+、Na+などのインター カレーションに使用できる空孔が生じます。

(9)

電荷の中性を維持するために、電子はLi+イオンなどの陽イオンに結合してTiO 2格子に組み込まれます(図1 の絵を参照)。リチウムとTiO2間のインターカレーション/デインターカレーションは、以下のイオン反 応として表すことができ、この反応の可逆性がそのサイクル性能に関連付けられます。 xLi+ + TiO 2 + xe- ↔ Lix TiO2 xはリチウムインターカレーションの係数です。xの値は、TiO2材料の形態、ミクロ組織、表面疵に関係し ています。リチウムのインターカレーションプロセス中、TiO2は立方晶系から直方晶系のLixTiO2に変化し ます。3電極システムとTiO2作用電極を使用してSMUで測定したTiO2のリチウムインターカレーションの C-V曲線について調査しました(図8a参照。詳細は『材料と手法』を参照してください)。図8bのC-V曲線 からわかるように、掃引中にカソードピークとアノードピークから構成される酸化還元対が存在します。 負電流のカソードピークは還元プロセス中の約−0.02 Vで、正電流のアノードピークは酸化プロセス中の 0.38 Vで生じています。これらのピークは、カソードピークでの可逆的な挿入(インターカレーション: Li+イオンが還元されてTiO 2に挿入される反応)と、アノードピークでの脱挿入(デインターカレーション: TiO2由来のLi金属がLi+に酸化されて電解質に泳動する反応)によるものと考えられます。ピーク電流は、 通常、掃引速度(電圧の掃引速度)の関数になり、表面充電のメカニズムに依存します[6]。 このケーススタディーでは、従来の有機ポリマーベースの電極とは異なる、チタン酸リチウム(LiTiO2)電 極材料と水性LiOH電解質という独自の組み合わせを紹介しています。LiTiO2を選択した理由は、TiO2ベー スの材料が、毒性がない上に化学的安定性が高く、最も広く研究されている代表的なバッテリー材料だか らです。シンプルな水性リチウムアルカリ性溶液を使用して、リチウムインターカレーションを電気化学 的に誘発し、TiO2上で可逆反応を起こせることもすでに実証されています。従来のリチウムバッテリーに 使用されている有機ポリマー電解質と比較すると、水性電解質を使用することには独自の利点があります。 水性電解質は有機ポリマーを用いた同等のものよりも導電率が高いので、高いサイクル速度と低い電解質 抵抗でバッテリーを使用できるようになります。水性電解質のインピーダンスは低いので、リチウムバッ テリーの放電速度が高速になり、電圧降下が少なくなります。このような高電力かつ高容量のバッテリー 材料は、電気自動車やグリッドストレージに応用できる可能性があります[6]。 A V 基準 電極 (Ag/AgCI) 作用 電極 (TiO2) カウンター 電極 (Pt) LiOH電解質 Keysight SMU Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ Li+ -4.0E-04 -3.0E-04 -2.0E-04 -1.0E-04 0.0E+00 1.0E-04 2.0E-04 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 電流 (A ) 電圧 (V) カソード アノード

xLi

+

+ TiO

2

+ xe

-

↔ Li

x

TiO

2

Oxi: LixTiO2 → xLi+ + TiO 2 + xe

-(a)

(b)

(c)

Red: xLi+ + TiO

2 + xe- → LixTiO2 リチウムインターカレーション リチウムデインターカレーション 図8. TiO 2電極のリチウムイオンインターカレーショ ン。(a) 実験に使用した3電極とLiOH電解質の回路図。(b) リチウムイオン電池の酸化/還元ピークが見られるC-V 測定。(c) TiO2のリチウムのインターカレーション/デ インターカレーションを示す図。

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10 | Keysight | B2900 SMUを使用した3電極法によるリチウムイオン電池/センサの電気化学測定 - Application Note

謝辞

この調査は、WeiBeng Ng(シンガポールのキーサイトラボ)、Manuel Kasper(リンツのキーサイトラボ)、Ferry Kienberger(リンツの キーサイトラボ)の協力によるものです。また、Christoph Cobet氏(リンツ大学)およびShun Fujii(Keysight Japan)に感謝の意を表します。

参考資料

1. Wang, J、『Analytical Electrochemistry、Chapter 2』、John Wiley & Sons(2000)

2. 『Keysight Technologies B2900Aシリーズプレシジョン・ソース/メジャー・ユニット』、Data Sheet、5990-7009JAJP、2016年4月25日 3. 『Keysight Technologies IC/電子部品用SMU(ソース/メジャーユニット)』、Application Note、5990-9870JAJP、2014年8月3日 4. P. A. Lay、A. M. Sargeson、H. Taube, Inorg.Synth. 1986, 24, 291 – 306.

5. T. de Lumley-Woodyear、P. Rocca、J. Lindsay、Y. Dror、A. Freeman、A. Heller、Anal. Chem. 1995、67、1332∼1338. 6. A. G. Dylla、G. Henkelman、K. J. Stevenson、Acc. Chem. Res.、2013、46、1104∼12.

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