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臨地実習における看護学生の「患者理解」に関する研究 : H.G.ガダマーの解釈学的アプローチをとおして

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(1)

臨地実習における看護学生の「患者理解」に関する

研究 : H.G.ガダマーの解釈学的アプローチをとお

して

著者

前川 幸子

学位名

博士(看護学)

学位授与機関

神戸市看護大学

学位授与番号

24505甲第10号

学位記番号

甲第10号

URL

http://id.nii.ac.jp/1189/00000168/

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2014 年 度 博 士 論 文

臨地実習における看護学生の

「患者理解」に関する研究

‐H.G.ガダマーの解釈学的アプローチをとおして ‐

“Patient Understanding” by nursing students

in the context of nursing practicum

Through the hermeneutics approach of Hans-Georg Gadamer

神 戸 市 看 護 大 学大 学 院

博 士 後 期 課 程

看 護 実 践 哲 学

72006003 前 川 幸 子

( 指 導 教 員 鈴木 志 津 枝 )

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2014 年度 博士論文要旨

臨地実習における看護学生の「患者理解」に関する研究

‐H.G.ガダマーの解釈学的アプローチをとおして‐

看護実践哲学 72006003 前川 幸子

指導教員 鈴木 志津枝

Ⅰ.研究の背景 少子高齢社会の到来と医療の高度化、複雑化が 進展した現在、看護の役割は多岐に渡り、看護基礎 教育における看護実践能力の育成が重要課題とな っている。看護実践能力とは、患者の健康の回復・増 進を目指し、個別具体的な状況に添うように看護技 術を駆使しながら全体性を以って為すことである。そ の核とは「患者理解」であり、看護学実習においても 学習目標として示されている。看護学実習において 患者理解が重要であることは自明ではあるが、学生 の患者理解の経験の内実は未だ明らかになってい ない。 Ⅱ.目的 臨地実習において看護学生が患者を理解する過 程と構造を、ガダマーの解釈学的アプローチによっ て明らかにし、「患者理解」の本質的特徴を探究す る。 Ⅲ.研究方法 1.解釈学的アプローチによる質的記述的研究。 本研究では、学生の「患者理解」の経験を、相互 関係において成り立つものとした。その事象を読み 解くにあたっては、「個は全体から、全体は個から 理解される」という解釈的循環を理解の基本構造と して捉えた H.G ガダマーの思想を手がかりとした。 2.研究参加者:「基礎看護学実習Ⅱ」で学ぶ A 大学 看護学科 2 年生 4 名 3.場所:A 大学、B 病院 4.期間・方法:学生の患者理解の多様性を知るため、 以下の方法を用いた。①2008 年 1 月 28 日から 2 月 4 日まで(学生の看護実践場面、及びカンファレ ンス場面の参与観察)、②2008 年 3 月から 10 月ま で(実習終了後の個別インタビュー)。 5.データの解釈・記述 1)患者理解の過程:①時間的経緯を基にした記述: 時系列に沿って学生の「患者とのかかわり・出来 事」「看護実践の経験の交流」など、学生の経験を 解釈し〈モチーフ〉として表した。②解釈的循環とい う方法的態度:〈モチーフ〉の意味・解釈について、 データに戻り全体を捉え直しながら、幾つかの〈モ チーフ〉をまとまりのある《テーマ》として表した。 2)経験の構造化:上記により明らかになった学生の 患者理解について、その特徴を【フェーズ】として 表し、患者理解の経験の諸相を浮き彫りにした。 3)記述では、学生の患者理解の体験について、文 脈性を重視しながら学生の視点で描くことを心が けた。さらに学生が、患者とどのようにかかわりなが ら「患者理解」のプロセスを辿り、他の学生たちと共 にその経験を成り立たせているのかに焦点をあて、 ガダマーの理解の概念を導きの糸として解釈を行 った。また指導教官のスーパーバイズを受け、メン バーチェックを得ることで真実性を確保した。 6.倫理的配慮:神戸市看護大学倫理審査委員会より 承認を受け、研究参加者の学生の学習の妨げに ならないよう担当教員・病棟責任者と調整を行っ た。 Ⅳ.結果 1.学生 4 名の患者理解の経験から、47 のモチーフ と 19 のテーマが導き出された。 例えば、学生 C さんは、初めて他者を援助する実 習に戸惑っていた。クリーンルームで療養生活を送る 易感染状態にある人を受け持った C さんは、初めて の援助、足浴を教員と共に行うことになった。C さん は、患者が易感染・易出血状態にあることは分かって いた。そのため足浴の際、血小板輸血をしていたこと と関連させながら、患者の「皮膚の状態を観察しよう」 と思っていた。しかし患者の前に立ち、実際に足浴を 行ってみると、足を洗う手順に意識が向いてしまい、 患者の足の状態さえ見ることが「できなかった」。C さ んは、次に何をしなければならないかということを想 起するために「いっぱいいっぱいに」なっていたので ある。言い換えれば、過去に学んだ内容を、そのまま 佐藤さんに転写して再現する事態に陥っていたとも いえよう。それは、「今、ここ」における C さんの不在と 同時にその援助を受ける患者をも不在にしていたこ とになる。そして C さんは、教員が患者に問いかけた 「爪が伸びていると皮膚が傷つきやすいですね」とい

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う声が C さんへと反響し、皮膚の観察など「初めから それはしようと思っていた」にもかかわらず、できてい ない自己へと引き戻されたのだった。さらに C さんは 「今日も血豆みたいなのができましたね」という教員の 言葉で、患者の左上肢に「蜂窩織炎」があったことへ と思いを寄せる。もしかしたら「足だってちょっとした 傷から蜂窩織炎っていうか、起こす可能性がある」か もしれない。C さんは、現実に立ち戻り患者の足に変 化をもたらした事象の意味、そしてその行き先につい て、改めて捉え直していたのだった。それは同時に、 自分の「足浴」が、「足を洗う」という行動にすり替わっ てしまっていたことを映し出す機会となり、援助の意 味を新たに理解する経験でもあった。そのため「やっ ぱり足浴をする」ということは「ただ足の汚れを取った り」「血液の循環とかを、良くするっていうだけじゃな い」という援助の理解に繋がっていったのである。以 上から教員の行為が学生の行為を含めて〈自己を映 し出す鏡〉となっていた。このモチーフを含めて他に 〈患者に分け入る契機をもたらした病態の理解〉など から、テーマとして導き出されたのは《教員の看護の 実践過程を辿る》という内容であった。これらは、経時 間的な解釈的循環の経緯において、相互関係と相 互理解いう対の事態として深まりを増していった。 2.学生の患者理解の経験の構造は、3 つのフェーズ として表すことでその特徴が明るみになった。 【フェーズ 1】先行判断の自覚:学生の患者理解は、 患者と出会う以前の先行判断から始まった。学生は、 看護師が捉えた患者像を参照することで患者理解の 準備をするが、それは同時に患者に対する先行判断 が形作られる機会となっていた。しかし学生は、それ をそのまま患者に当て嵌めるのではなく、患者と向き 合った時の自己の感覚を元にしながら患者を理解す るという、先行判断の捉え直しを行っていた。 【フェーズ 2】省察を契機にした理解の深化:学生は、 教員や看護師の患者中心の看護実践を知ることで 患者理解の仕方の相違に気づき、患者への向き合 い方を省みる機会を得た。学生は、臨床現場で学ぶ 緊張感や焦燥感により、自分中心に事象を捉えてし まう傾向を自覚し、患者の立場で患者を理解すること へとまなざしが転換した。加えて教員と行った看護実 践は、患者の経験を共有することの重要性という観点 から、患者理解の意味を深めていった。 【フェーズ 3】相互主観的な関係における理解の促 し:学生と患者との関係の中で織り成される看護実践 は、学生の患者理解を深めるだけでなく、患者が学 生を理解する相互理解へと連関していった。その患 者理解は、学生間で自らの体験を「聴く-語る」という 交流の中で培っており、更にはその理解を支える教 員や看護師との信頼関係が患者理解の更新を可能 にしていた。 Ⅴ.考察 1.患者理解の更新と解釈的循環:学生の先行判断は、 患者に対する問いとなって機能する時に、理解は固 定化されることなく変容していった。その過程で浮き 彫りになったのは、学生自身の前提や解釈の枠組み、 理解の仕方であった。この自己理解は、相互理解の 循環過程で絶えず生じることで「今、ここ」に在る患者 理解を可能にしていた。また学生は、看護の初学者 であることから患者理解に自信が持てず確定できな い。この未決状態が、学生が問い続ける原動力となり、 「問いと応答」という解釈的循環を機動させる力へと 変換させていた。さらに学生は、学生同士の看護実 践を交流させ理解し合うという解釈的循環により、ま た教員・看護師の看護実践を理解し合うという解釈的 循環によって自らの患者理解が更新された。このよう に学生の患者理解は、重層的な循環経験であった。 2.患者理解の本質的特徴:学生の患者理解の過程 では、学生が患者と同じ立場に立つ感覚が分かった 時、さらにその経験を分かち持つ実感を得た時に患 者理解が飛躍的に深化した。その理解の仕方は、客 体化された患者への認識ではなく、相互関係を前提 とした関係性において成り立っていた。看護実践は、 相互主観的な経験の中に存在し、その関係は絶え ず変容するように、患者理解も常に捉え直され、更新 されていった。このように患者理解は、看護を実践す るための予備的な位置づけではなく、理解するという 実践自体が、看護実践に通底しているといえる。 本研究は、ガダマー解釈学を導きの糸とすることで、 患者理解が相互の意志に支えられた解釈の循環と いう持続的な事態であることが明らかとなった。さらに 発展して明確になったのは、患者理解は患者‐学生 間の閉鎖的な関係ではなく、関わる人々の関係がも たらす解釈的循環によって患者理解が成り立ってい るということであった。「個と全体」という空間的配置、 経時間的配置、さらには関係的配置の発展において 患者理解が深まることが明らかになった。 Ⅵ.看護学教育への提言 学生の患者理解は、患者との関係だけではなく、 学生や教員、看護師を含めた重層的な解釈的循環 の過程において、常に動的な様相を示していた。臨 床教育において教員は、学生の言動のみならず言 語の手前にある感覚や、関係性が生み出す事象に 関心を寄せることが必要である。それは学生が患者 理解に臨むように、教員も学生理解の循環が停滞し ないよう、その都度の学生理解を更新していく姿勢が 求められる。

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2014 Doctoral Dissertation Abstract

“Patient Understanding” by nursing students in the context of nursing practicum

Through the hermeneutics approach of Hans-Georg Gadamer

Yukiko Maekawa Kobe City College of Nursing

Dissertation Adviser: Professor Shizue Suzuki

I. Research Background

The role of nursing has expanded as medical care has become more advanced and complex. Development to enhance nursing practice competency has become an important issue in education of the nursing science. “Patient understanding” is at the core of nursing competency and is also emphasized in nursing

practicum. However, the facts behind

experiences of patient understanding by students remain to be clarified.

II. Purpose

The essential characteristics of “patient understanding” will be explored by elucidating

the process and structure of patient

understanding by nursing students in clinical practicum based on Gadamer’s hermeneutic approach.

III. Methodology

1. Qualitative descriptive research using a hermeneutic approach.

2. Study participants: Four second-year nursing university students.

3. Place: University A, affiliated hospital B. 4. Period and methods: (1) From January 28 to

February 4, 2008 (participant observation of student “Fundamental Nursing Practicum II”

situations and conference situations), (2) From March to October 2008 (individual interviews at the end of nursing practicum). 5. Data Interpretation and Description

1) Process of patient understanding: Each process in the sequence of events was described as a “motif,” while “themes” were given according to the method in the interpretive cycle based on changes in the understanding of parts of the cycle and the whole cycle.

2) Structure of patient understanding: The characteristics of patient understanding were presented in “phases” that highlighted the aspects of experiences.

3) The above were interpreted based on Gadamer’s concept of understanding as a guide. Credibility was ensured through respondent validation under the supervision of an advisor.

6. Ethical considerations: The protocol of this study was approved by the Ethics Review Board of Kobe City College of Nursing.

IV. Results

1. Forty-seven motifs including “a mirror reflecting oneself” and “understanding diseases that offered the opportunity to see into the

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patient” and 19 themes including “following the process of nursing practices performed by teaching staff” were derived from the experiences of patient understanding of the four students. These motifs and themes were e n h a n c e d t h o u g h b o t h i n t e r p e r s o n a l relationships and mutual understanding in the sequence of events in the interpretive cycle. 2. The characteristics of the structure of students’ patient understanding were elucidated by presenting the structure in three phases. [Phase 1] Awareness of prejudices: Students’ patient understanding started with prejudices held by the students prior to meeting the patients. Students developed their patient understanding with reference to the image of patients held by nurses, but simultaneously formed their own prejudices regarding patients. [Phase 2] Deepening understanding through

reflection: By understanding the

patient-centered nursing practices of teaching staff and nurses, students noticed differences in the methods of patient understanding and gained opportunities to reflect on how to confront patients.

[Phase 3] Promoting understanding in

intersubjectivity relationships: Nursing practice provided a forum for students to understand patients and for patients to understand students. The sharing of patient understanding among students and the relationships of trust between the teaching staff and nurses who support this understanding enabled students to renew their understanding of patients.

V. Discussion

1. Renewed patient understanding and the

interpretive cycle: Students’ patient

understanding was renewed through the interpretive cycle in which students exchanged nursing practices in order to understand each other and through the interpretive cycle of understanding the nursing practices of teaching staff and nurses.

2. The essential characteristics of patient understanding: Students deepened their patient understanding dramatically when they placed themselves in the patients’ shoes. Patient

understanding founded on interpersonal

relationships is constantly revised and renewed. Nursing practices transform in response to this constant revision and renewal, demonstrating that these practices are inextricably linked to understanding.

This study used Gadamer’s hermeneutic approach to reveal that patient understanding is

an interpretive cycle in interpersonal

relationships. It was also revealed that this interpretive cycle acts to deepen students’

patient understanding not only through

patient–student relationships, but also through relationships with all individuals involved in nursing.

VI. Suggestions for Nursing Education

Renewed mutual understanding forms the basis of understanding. Deepening of patient understanding by students is related to the understanding of students by the teaching staff involved in this field of education. Teaching staff promote renewed and deepen students’ patient understanding by taking an interest in both the words and actions of students and the emotions that precede these words and action.

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目 次

第 Ⅰ 章 研 究 の 背 景 と 目 的 ............................................. 1 A 研 究 の 背 景 と 動 機 .................................................. 1 1.看 護 実 践 力 を 育 む た め の 看 護 学 教 育:現 状 と 課 題 .....................1 2.看 護 現 場 に お け る 患 者 理 解 .........................................5 3.ガ ダ マ ー の 解 釈 学 的 理 解 と 看 護 実 践 に お け る 患 者 理 解 の 接 点 ............9 B 研 究 の 目 的 と 意 義 ..................................................13 1.研 究 の 目 的 ......................................................13 2.研 究 の 意 義 ......................................................13 C こ れ ま で の 研 究 と 本 研 究 の 位 置 づ け ..................................16 1.看 護 に お け る 理 解 に 関 す る 文 献 の 概 観 .............................. 16 a.「 患 者 を 理 解 す る こ と 」と「 患 者 を 知 る こ と 」......................16 b.看 護 に お け る 理 解 の 仕 方 ........................................21 2.理 解 に お け る 特 徴 や 捉 え 方 に つ い て の 文 献 の 概 観 .....................23 a.「 理 解 」す る こ と と「 実 践 知 」....................................23 b.理 解 の 分 化 ....................................................26 c.言 語 的 理 解 と い う 事 態 ..........................................30 3.先 行 研 究 と 本 研 究 と の 関 連 .........................................33 第 Ⅱ 章 本 研 究 の 方 法 .................................................37 A H.G.ガ ダ マ ー の 解 釈 学 に 基 づ く 事 象 へ の 接 近 ..........................37 1.看 護 実 践 に お け る 研 究 の 方 法 論 ....................................37 a.看 護 実 践 の 特 徴 と 研 究 ..........................................37 b.看 護 実 践 に お け る 研 究 の 手 立 て と し て の 解 釈 学 ....................38 c.解 釈 学 に お け る ガ ダ マ ー の 主 張 ..................................40 d.解 釈 学 に お け る ガ ダ マ ー の 立 場 ..................................42 2.学 生 の 経 験 を 明 る み に 出 す 方 法 と し て の 解 釈 学 ......................43 a.研 究 に お け る 方 法 的 態 度 ........................................43 b.解 釈 学 と い う 方 法 的 態 度 ........................................46 c.テ ク ス ト と 解 釈 者( 研 究 者 )と の 相 互 交 流 ........................47 d.解 釈 の 手 立 て ..................................................48 B 具 体 的 な 研 究 の 手 順 ................................................50 1.調 査 期 間 ........................................................50

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2.調 査 場 所 ........................................................50 3.研 究 参 加 者 ......................................................52 4.倫 理 的 配 慮 ......................................................54 a.研 究 参 加 の 承 諾 を 得 る た め の 手 続 き ..............................54 b.研 究 を 遂 行 す る に あ た っ て の 研 究 参 加 者 へ の 倫 理 的 配 慮 ............55 1)学 生 が 不 利 益 を 被 ら な い 権 利 の 保 障 ............................55 a)研 究 参 加 へ の 自 由 の 保 障 が 侵 さ れ る 危 険 性 の 回 避 に つ い て .......55 b)学 生 の 学 習 の 保 障 が 侵 さ れ る 危 険 性 の 回 避 .....................55 c)研 究 方 法 が も た ら す 危 険 性 へ の 回 避 ...........................56 d)臨 地 実 習 体 験 の 想 起 に 伴 う 危 険 性 の 回 避 ......................56 e)研 究 参 加 者 か ら 得 た 情 報 漏 洩 に 対 す る 不 安 の 回 避 ...............56 2)研 究 目 的・内 容 を 知 る 権 利 の 保 障 ..............................57 3)自 己 決 定 の 権 利 の 保 障 ........................................57 4)プ ラ イ バ シ ー 、匿 名 性 、機 密 保 持 の 権 利 の 保 障 ..................57 5)研 究 結 果 の 公 開 ..............................................57 6)研 究 者 の 説 明 義 務 と 調 査 協 力 の 意 思 決 定 の 権 利 保 障 ..............58 7) 本 研 究 の イ ン タ ビ ュ ー お よ び 参 与 観 察 に 登 場 す る 個 人 、 な ら び に 諸 機 関 に 対 す る 倫 理 的 配 慮 .............................58 8)研 究 者 の 立 場 の 明 示 ..........................................59 5.デ ー タ 収 集 方 法 ..................................................59 a.参 与 観 察 ......................................................59 b.カ ン フ ァ レ ン ス ................................................60 c. イ ン タ ビ ュ ー ................................................. 60 6.デ ー タ の 解 釈 と 記 述 ..............................................61 7.デ ー タ の 信 頼 性 に つ い て ..........................................63 a.質 的 研 究 に お け る 基 準 ..........................................63 b.質 的 研 究 と 研 究 参 加 者 数 の 捉 え 方 ................................64 c.厚 い 記 述・濃 密 な 記 述 ..........................................65 第 Ⅲ 章 結 果 .........................................................67 A 研 究 参 加 者 と 協 力 者 に つ い て ........................................68 B 研 究 参 加 者 の こ れ ま で の 学 習 ........................................68 C 導 き 出 さ れ た テ ー マ と モ チ ー フ .......................................68

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D < 結 果 1 > 看 護 学 実 習 に お け る 学 生 の 患 者 理 解 の 経 験 ................69 1.《 C さ ん 、看 護 学 科 2 年 生 、男 子 学 生 》..............................69 【 H 教 員 の 看 護 の 実 践 過 程 を 辿 る 】................................... 69 患 者 に 分 け 入 る 契 機 を も た ら し た 病 態 の 理 解 ....................... 69 自 己 を 映 し 出 す 鏡 .................................................71 【 B 看 護 師 の 看 護 実 践 の 姿 か ら 自 己 を 映 し 出 す 】...................... 72 「 自 分 の 患 者 」と い う 実 感 .........................................72 B 看 護 師 の 看 護 実 践 と 迷 い .........................................75 囚 わ れ て い た 自 己 .................................................79 【 患 者 理 解 の 更 新 】..................................................80 患 者 理 解 の 壁 ................................................. 80 理 解 の 奥 行 き .....................................................83 語 る こ と の 行 方 ...................................................84 【 患 者 の 経 験 を 受 け 止 め る 】..........................................87 「 夢 」と い う ア ク チ ュ ア ル な 出 来 事 .................................87 【 患 者 と の 関 係 に お け る 自 己 】........................................90 表 情 が 与 え る 影 響 .................................................90 ち ゃ ん と 聴 く .....................................................91 【 患 者 理 解 と 看 護 の つ な が り 】........................................95 援 助 と い う 形 で 応 え る .............................................95 理 解 に 先 立 つ 感 覚 ................................................101 2.《 S さ ん 看 護 学 科 2 年 生 、20 歳 》..................................102 【 患 者 に よ っ て 写 し 出 さ れ る 自 己 】.................................. 104 と っ つ き に く い 患 者 ..............................................104 表 情 が 問 い か け る ................................................106 「 思 い 込 み 」か ら の 離 脱 ...........................................109 自 己 の 構 え が 生 み 出 し て し ま う こ と ................................111 【 教 員 の 観 方 を 辿 る 】...............................................113 見 て い る よ う で 見 え て い な い ......................................113 患 者 の 状 態 が 繋 げ て く れ る 断 片 的 な 知 識 ............................116 【 教 員 の 看 護 実 践 を 辿 る 】...........................................120 教 員 と 共 に 行 う 看 護 実 践 ..........................................120 心 地 よ い 援 助 ....................................................123 「 与 え - 受 け と る 」援 助 の サ イ ク ル ..................................125

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【 そ の 人 に 合 っ た 援 助 方 法 を 編 み 出 す 】...............................127 看 護 学 生 と し て の 責 任 ........................................... 127 そ の 人 ら し さ を 見 出 し 援 助 に 生 か す ................................129 3.《 M さ ん 看 護 学 科 2 年 生 、20 歳 》..................................134 【 患 者 の 先 行 理 解 が 及 ぼ す 影 響 】.....................................136 患 者 理 解 の 仕 方 の 自 覚 ............................................136 気 が か り が 見 出 せ な い ............................................140 【 断 ら れ た こ と か ら 始 ま っ た 援 助 】...................................142 「 と り あ え ず 」の 計 画 .............................................142 教 員 に 導 か れ て 行 う 看 護 ..........................................147 誰 の た め の 援 助 な の か ............................................149 【 教 員 と 共 に 実 践 す る こ と で 拡 が る 看 護 】.............................154 教 員 の 声 を 手 が か り に 行 う 援 助 ....................................154 援 助 を 必 要 と し て い る 人 に 向 き 合 う ................................158 教 員 の 見 方 で 拡 が っ て い く 患 者 理 解 ................................160 予 想 外 の 出 来 事 を ふ り 返 る ........................................162 【 患 者 理 解 の 深 ま り 】...............................................163 患 者 と の 関 係 を 捉 え 直 す ..........................................163 振 り 返 る こ と で 見 え て き た 患 者 の 思 い ............................. 165 4.《 I さ ん 看 護 学 科 2 年 生 、20 歳 》..................................168 【 患 者 理 解 の 捉 え 直 し 】........................................ 1 69 自 己 の 観 方 を 自 覚 す る 契 機 ........................................169 【 言 葉 に し 難 い 患 者 へ の 思 い 】...................................... 171 患 者 の 思 い を 受 け 取 る ほ ど に 言 葉 に な ら な い ........................171 不 安 を 和 ら げ た い ................................................175 【 相 互 関 係 の 中 で 捉 え る 患 者 理 解 】...................................177 患 者 と 自 己 の 感 覚 の 相 違 ..........................................177 自 分 の 表 情 が 与 え る 影 響 ..........................................178 自 分 の 意 見 を 言 う こ と が で き な い ..................................181 【 患 者 理 解 の 深 ま り と 援 助 の 仕 方 】.................................. 182 患 者 の 生 活 リ ズ ム を 考 え て 援 助 す る ................................182 違 和 感 が 教 え て く れ る こ と ........................................184 看 護 師 の 援 助 方 法 と 葛 藤 ..........................................187

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他 者 に 支 え ら れ て 見 出 せ た 自 分 の 思 い ..............................194 【 患 者 理 解 と 相 互 作 用 】.............................................196 患 者 の 思 い を 受 け 取 る た め の 時 間 ..................................195 患 者 が 感 じ る 看 護 者 の 受 け と め 方 ..................................197 E < 結 果 2> 患 者 理 解 の フ ェ ー ズ ...................................200 フ ェ ー ズ 1: 先 行 判 断 の 自 覚 ..................................... 200 1.看 護 師 の 見 方 と 先 行 判 断 ........................................200 2.病 気 と 先 行 判 断 ................................................203 フ ェ ー ズ 2:省 察 を 契 機 に し た 理 解 の 深 化 .............................203 1.教 員 や 看 護 師 の 実 践 か ら 自 己 を 省 み る -自 分 中 心 の 捉 え 方 か ら の 転 回 .204 2.患 者 の 応 答 を 受 け 取 る こ と で 見 え て き た 自 己 の 捉 え 方 ..............206 3.教 員 に よ っ て 導 か れ る 看 護 実 践 ..................................208 フ ェ ー ズ 3:相 互 主 観 的 な 関 係 に お け る 理 解 の 促 し ....................211 1.相 互 関 係 の 中 で 自 己 を 見 出 す ....................................211 2.相 互 主 体 的 な 関 係 の 中 で 生 み 出 さ れ る 看 護 実 践 ....................213 3.カ ン フ ァ レ ン ス が も た ら す 理 解 の 更 新 ......................... 215 第 Ⅳ 章 考 察 ........................................................218 A 患 者 理 解 の 構 造 ‐ 理 解 の 更 新 と 解 釈 学 的 循 環 ........................ 219 B 患 者 理 解 の 深 化 を 促 す 契 機 .........................................226 C 相 互 主 観 的 な 関 係 に よ っ て 深 め て い く 患 者 理 解 .......................231 第 Ⅴ 章 看 護 学 教 育・看 護 学 研 究 へ の 提 言 ...............................237 A 患 者 理 解 に 向 け た 教 育 方 法 と し て の リ フ レ ク シ ョ ン ...................237 1.患 者 理 解 と い う 経 験 ..............................................237 a.「 経 験 」と は ...................................................237 b.〈 振 り 返 る 〉と い う 方 途 .........................................240 c.〈 問 い と 応 答 〉の カ ン フ ァ レ ン ス .................................241 d.カ ン フ ァ レ ン ス と い う 教 育 方 法 .................................244 e.カ ン フ ァ レ ン ス に お け る 教 員 の 役 割 ..............................245 f.他 者 理 解 を 基 盤 に し た 協 働 的 な 振 り 返 り ..........................246 B 研 究 方 法 論 に 関 す る 検 討 ...........................................248

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1.患 者 理 解 と い う 実 践 を 省 み る た め の〈 時 間 性 〉.......................248 a.イ ン タ ビ ュ ー が も た ら す 患 者 理 解 の 深 ま り .......................250 b.患 者 理 解 の 経 験 を「 語 る - 聴 く 」.................................251 2.解 釈 学 的 な 記 述 に つ い て ..........................................252 C 看 護 学 実 習 教 育 へ の 提 言 ...........................................254 D 今 後 の 課 題 .......................................................257 E 結 論 .............................................................258 1.患 者 理 解 の 構 造 と 解 釈 学 的 循 環 ....................................259 2.患 者 理 解 の 実 践 的 特 徴 ............................................259 3.患 者 理 解 と 看 護 学 実 習 教 育 ........................................259 提 言 1.患 者 理 解 に 向 け た 教 育 方 法 と し て の リ フ レ ク シ ョ ン .............260 提 言 2.研 究 方 法 論 の 検 討 に み る 看 護 学 教 育 ...........................260 謝 辞 ............................................................. 261 引 用 文 献 ............................................................262 資 料 資 料 1: 研 究 協 力 に 関 す る お 願 い 〈 大 学 施 設 用 〉 資 料 2: 研 究 協 力 に 関 す る お 願 い 〈 病 院 施 設 用 〉 資 料 3: 研 究 協 力 に 関 す る お 願 い 〈 研 究 協 力 者 学 生 用 〉 資 料 4: 研 究 協 力 に 関 す る お 願 い 〈 研 究 参 加 者 用 〉 資 料 5: 同 意 書 〈 研 究 参 加 者 用 〉 資 料 6: 同 意 書 〈 研 究 者 用 〉 資 料 7: 研 究 協 力 に 関 す る お 願 い 〈 研 究 協 力 者 教 員 ・ 実 習 指 導 者 用 〉 資 料 8: 研 究 協 力 に 関 す る お 願 い 〈 研 究 協 力 者 患 者 様 用 〉

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第 Ⅰ 章 研 究 の 背 景 と 目 的 A 研 究 の 背 景 と 動 機 1. 看 護 実 践 力 を 育 む た め の 看 護 学 教 育 : 現 状 と 課 題 少 子 高 齢 化 社 会 の 到 来 と 、医 療 の 高 度 化 、複 雑 化 が 進 展 し た 現 在 、国 民 の 健 康 生 活 へ の 支 援 は 、先 端 医 療 か ら 在 宅 療 養 に お け る 生 活 支 援 ま で 、広 範 囲 に 及 ん で い る 。そ れ に 伴 い 看 護 の 役 割 も 多 岐 に 渡 り 、看 護 師 の 資 質 向 上 は 不 可 欠 な 課 題 と な っ た 。こ の よ う な 社 会 的 背 景 に 鑑 み 、看 護 基 礎 教 育 の 内 容 の 充 実 を 主 眼 に 、看 護 基 礎 教 育 を 4 年 制 の 大 学 教 育 へ と 移 行 す る 取 り 組 み が な さ れ て い る 。そ の 推 移 を 見 て い く と 1991 年 ( 平 成 3 年 ) に 11 校 だ っ た 看 護 系 大 学 は 、 約 20 年 の 時 間 を 経 た 2014 年 ( 平 成 26 年 ) 4 月 に は 230 校 を 超 え た 。 こ の よ う な 看 護 基 礎 教 育 の 大 学 教 育 化 に 向 け た 構 想 は 、ま ず「 看 護 制 度 に 関 す る 基 本 姿 勢 」( 昭 和 50 年 、日 本 看 護 協 会 )の 将 来 構 想 と し て 示 さ れ 、以 後「 看 護 制 度 検 討 会 」( 昭 和 59 年 、厚 生 省 )な ど か ら 看 護 制 度 の 改 革 に 向 け た 看 護 大 学 お よ び 大 学 院 の 増 設 と 充 実 が 提 言 さ れ た 。看 護 基 礎 教 育 の 充 実 化 い う 課 題 は 、も は や 看 護 界 内 部 の 課 題 に と ど ま ら ず 、社 会 的 に も 看 護 専 門 職 の 取 り 組 み と し て 注 目 さ れ て い る 。 専 門 職 教 育 の 基 盤 と な る 看 護 基 礎 教 育 に 関 す る 議 論 を 見 て い く と 、「 看 護 基 礎 教 育 の あ り 方 に 関 す る 懇 談 会 論 点 整 理 」( 平 成 20 年 、厚 生 労 働 省 )に お い て 、専 門 的 な 知 識・技 術 の 習 得 は も ち ろ ん の こ と 、看 護 実 践 力 に 欠 か せ な い 思 考 力 、そ し て 適 切 に 行 動 す る 力 を 持 っ た 人 材 を 育 成 す る と い う 、目 指 す べ き 看 護 基 礎 教 育 の 方 向 性 が 示 唆 さ れ た 。 さ ら に 看 護 師 に 求 め ら れ る 資 質 と し て 、「 高 度 な フ ィ ジ カ ル ア セ ス メ ン ト 能 力 」「 緊 急 時・急 変 時 に 対 処 す る 能 力 」や 、「 臨 機 応 変 に 看 護 を 提 供 で き る 能 力 」「 自 律 し て 考 え 判 断 す る 能 力 」「 高 度 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 」( 斎 藤 ら ,2008) な ど が 示 さ れ た の で あ る 。 ま た 看 護 系 大 学 協 議 会 で は 、学 士 課 程 に お け る 看 護 学 教 育 の 基 本 で あ る 看 護 職 に 必 要 な 能 力 を 明 確 に す る こ と と そ の 育 成 を 確 実 に 行 う こ と を 目 指 し て 、看 護 学 教 育 の 在 り 方 に 関 す る 検 討 会 報 告「 看 護 実 践 能 力 育 成 の 充 実 に 向 け た 大 学 卒 業 時 の 到 達 目 標 」 ( 文 部 科 学 省 ,2004) を 提 示 し た 。 学 士 課 程 に お け る 看 護 学 教 育 の 今 後 の 在 り 方 に つ い て 、看 護 学 基 礎 カ リ キ ュ ラ ム1に よ る 指 針 を 第 一 次 報 告( 2009 年 )と し て 示 し 、さ ら に 学 士 課 程 教 育 で 養 成 す る 看 護 実 践 能 力 の 再 検 討 の 内 容 を 、 1 看 護 学 基 礎 カリキュラム」とは、看 護 師 等 に共 通 する看 護 学 の基 礎 とそれぞれの免 許 取 得 に必 要 となる教 育 内 容 を効 率 的 に教 授 するための体 系 化 したカリキュラムを意 味 する。

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「 大 学 に お け る 看 護 系 人 材 養 成 の 在 り 方 に 関 す る 検 討 最 終 報 告2」 ( 2011年 ) と し て ま と め て い る 。 こ の「 最 終 報 告 」に お け る 学 士 教 育 の 中 核 を 為 す 看 護 実 践 能 力 と は 、看 護 実 践 を 構 成 す る 5 つ の 能 力 群 と 、そ れ ぞ れ の 群 を 構 成 す る 20 の 看 護 実 践 能 力 で あ る 。 す な わ ち 、Ⅰ 群 ヒ ュ ー マ ン ケ ア の 基 本 に 関 す る 実 践 能 力 、Ⅱ 群 根 拠 に 基 づ き 看 護 を 計 画 的 に 実 践 す る 能 力 、Ⅲ 群 特 定 の 健 康 課 題 に 対 す る 実 践 能 力 、Ⅳ 群 ケ ア 環 境 と チ ー ム 体 制 整 備 に 関 す る 実 践 能 力 、Ⅴ 群 専 門 職 者 と し て 研 鑽 し 続 け る 基 本 能 力 と い う 5 群 と 、 そ れ ぞ れ の 群 を 構 成 す る 20 の 看 護 実 践 能 力 と し て 説 明 さ れ て い る 。こ れ ら の 能 力 を 看 護 基 礎 教 育 で 求 め ら れ る 卒 業 時 の 到 達 目 標 と し 、到 達 目 標 に 至 る た め の 教 育 内 容 と し て 援 助 技 術 は 項 目 化 さ れ 、そ の 成 果 は 行 動 目 標 と し て 表 現 さ れ て い る 。 学 士 課 程 で 求 め ら れ る 看 護 学 生 に 必 要 な 能 力 の 可 視 化 は 、学 士 課 程 で 学 生 が 身 に つ け る べ き 内 容 を 明 ら か に す る と と も に 、看 護 基 礎 教 育 が 今 後 取 り 組 む 方 向 性 を 明 確 に す る も の で あ る 。ま た 、行 動 レ ベ ル 、す な わ ち 客 観 的 に 観 察 可 能 な 行 動 と し て 示 さ れ た 看 護 実 践 内 容 は 、社 会 に 対 し て 看 護 の 専 門 職 と し て 果 た す べ き 役 割 を わ か り や す く 開 示 す る こ と に つ な が り 、国 家 資 格 と し て の 証 明 、あ る い は そ の 位 置 づ け を 可 能 に し て い る 。こ れ ら の 命 題 化 さ れ た 看 護 実 践 能 力 は 、短 い 期 間 に 大 学 化 を 推 進 し て き た 看 護 学 教 育 の 質 の 保 障 や 維 持 、あ る い は 拠 り 所 と し て 機 能 す る だ け で な く 、 大 学 に お け る 教 育 的 課 題 を 見 え や す く し 、 大 学 の 責 務 ( accountability) に 輪 郭 を 与 え た と 言 え よ う 。 し か し そ の 一 方 で 、行 動 レ ベ ル で 示 さ れ た 項 目 の 外 に は ず れ た 、あ る い は そ れ に 当 て は ま ら な い 看 護 実 践 の 力 を 取 り こ ぼ し て し ま う 危 険 性 が あ る 。な ぜ な ら 看 護 実 践 と は 、ひ と つ ひ と つ の 看 護 技 術 を 順 序 だ て て 行 う こ と と 同 義 で は な く 、病 む 人 を 含 む 状 況 、文 脈 性 に 依 拠 す る 全 体 性 を 以 っ て 行 為 す る こ と を 意 味 す る か ら で あ る 。 つ ま り 、 患 者 の 健 康 回 復 や 増 進 を 目 指 し 、 特 定 の そ の 人 に 合 う よ う に 、 具 体 的 な 状 況 に 添 う よ う に 、看 護 技 術 を 駆 使 し な が ら 働 き か け て い く こ と で あ り 、 例 え 看 護 技 術 が 行 動 レ ベ ル で 出 来 る よ う に な っ た と し て も 、臨 床 で の 看 護 実 践 が で き る と は 言 え な い 。 臨 床 に お け る 看 護 実 践 は 、 患 者 を 含 む 状 況 的 文 脈 の 中 で 、 ひ と つ ひ と つ の 看 護 技 術 を 同 時 に 行 っ た り 、組 み 込 ん だ り 、場 合 に よ っ て は 様 子 を み る な ど の 総 合 的 判 断 の も と に 為 さ れ る た め 、そ の 総 和 以 上 の 力 が 求 め ら れ る の で あ る 。 で は 、患 者 を 含 む 状 況 や 文 脈 に 依 拠 し 、全 体 性 を 以 っ て 行 為 す る 看 護 実 践 と は 、 2 文 部 科 学 省 委 託 調 査 研 究 事 業 ,研 究 代 表 者 ,野 嶋 佐 由 美 (2011),看 護 系 大 学 におけるモデル・コア・カリキュラ ム導 入 に関 する調 査 研 究 (平 成 21 年 度 先 導 的 大 学 改 革 推 進 委 託 事 業 )の研 究 成 果 をもとに検 討 を行 ない、 学 士 課 程 教 育 におけるコアとなる看 護 実 践 能 力 と卒 業 時 到 達 目 標 が再 度 策 定 された。

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ど の よ う な 特 徴 が あ る の だ ろ う か 。 そ も そ も 看 護 と は 、「 患 者 が 体 験 し て い る 援 助 へ の ニ ー ド を 満 た す 」 ( Wiedenbach,1964/1969,pp.47-59)こ と 、あ る い は 、「 患 者 自 身 が 自 己 に つ い て の 新 し い 状 態 を つ く り だ し て ゆ く の を 助 け る 」( 野 島 、1977,p.304)こ と と さ れ る 。看 護 は 誰 か を 、ま た は 何 か を「 気 づ か う 」こ と に よ っ て 状 況 の 内( 側 )に 身 を 置 く こ と か ら 始 ま る の で あ り 、こ の こ と を 通 じ て 看 護 師 は 、患 者 の 健 康 上 の 問 題 を 発 見 し 、 可 能 な 限 り の 解 決 の 手 立 て の も と に 看 護 を 実 践 す る 。 こ の よ う に 、 看 護 師 は 他 者 へ の 気 づ か い の も と で 、ど の よ う な 働 き か け が 患 者 の た め に な る の か に 気 づ く こ と が で き る 。そ し て 、看 護 は 看 護 師 の そ う い っ た 関 心 に よ っ て 導 か れ る の で あ る 。 こ の よ う な 意 味 で 「 気 づ か い は 効 果 的 な 看 護 実 践 の よ り ど こ ろ 」 ( Benner,1989/1999, p.5)で あ り 、看 護 実 践 は 、「 単 な る テ ク ニ ッ ク と 科 学 知 識 だ け で は 不 十 分 」( Benner,1989/1999,p.5)と 言 え る 。言 い 換 え れ ば 、気 遣 い と い う 、家 族 や 友 人 の 間 で な さ れ る 日 常 的 、非 専 門 的 な 関 わ り 方 に 準 じ な が ら 、そ こ に 職 業 専 門 的 な 技 術 化 が お こ な わ れ る と い う こ と が 看 護 の 微 妙 で 重 要 な 特 徴 と い え よ う 。こ の こ と を 忘 れ る と 、と も す れ ば「 行 動 レ ベ ル で の 看 護 技 術 」を 中 心 と し た 実 践 を 、「 看 護 」 と 同 一 化 し て し ま う こ と に な る 。 こ の よ う に 看 護 と は 、看 護 師 の 気 づ か い の も と に 患 者 と の 相 互 関 係 を 培 い な が ら 看 護 の 必 要 性 を 見 出 し 、共 に 解 決 に 向 か っ て 歩 む プ ロ セ ス で あ り 、看 護 師 が 一 方 的 に 行 う も の で は な い 。看 護 と は 、具 体 的 で 個 別 的 な「 今 、こ こ 」に お け る 患 者 を 、い わ ば 受 動 的 に 感 受 す る こ と で 状 況 を 見 極 め 、そ れ を 主 体 的 に 判 断 し な が ら 、そ の 人 の「 そ の 時 、そ の 場 」に 応 じ る よ う な 専 門 的 技 術 に よ る 援 助 を 差 し 向 け る こ と な の で あ る 。し た が っ て 看 護 と は 、患 者 と 看 護 師 の 相 互 関 係 を 基 盤 に し た 実 践 を 意 味 す る も の で あ り 、そ の 過 程 に お い て 看 護 の 専 門 性 が 発 揮 さ れ る と い え る だ ろ う 。 外 口 ( 1997) は 、 看 護 実 践 を 引 き 起 こ し 、 看 護 師 の 関 心 を 集 中 さ せ る も の は 、 患 者 の そ の 時 々 の 状 況 へ の 知 覚 や そ れ に 基 づ い て い る 患 者 の 言 動 で あ る こ と を 指 摘 し た 。 さ ら に 患 者 は 、 直 面 す る 現 実 の 中 で よ り 安 全 、 よ り 安 楽 を 求 め つ つ 、 か つ ま た 自 立 に 向 か お う と す る 自 然 な 傾 向 と も 言 う べ き 力 を ひ そ め て い る こ と を 述 べ た( 外 口 ,1997)。患 者 は 、そ れ が 発 揮 で き る よ う な 、自 分 に あ っ た 条 件 と 状 況 を 待 ち 望 ん で い る の で あ る 。よ っ て 、看 護 実 践 と は 、患 者 が 求 め て い る 援 助 へ の ニ ー ド 、つ ま り 、患 者 自 身 が ひ そ め て い る 回 復 に 向 け た 自 然 な 傾 向 を 敏 感 に 捉 え て 理 解 す る こ と で あ り 、看 護 実 践 力 と は 、患 者 が 示 す よ り よ く 生 き た い と い う 回 復 に 向 け た 微 妙 な 兆 し を 察 知 で き る 力 、患 者 の 回 復 に 向 け た 自 然 な 傾 向 を 理 解 す る 力 に 関 連 し て い る と い う こ と に な る 。 ま た 、 看 護 実 践 を 看 護 に お け る 援 助 機 能 の 原 理 と し て 著 し た 池 川 (1991) は 、

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看 護 実 践 と は 、看 護 師 が あ ら か じ め 看 護 師 側 の 思 惟 に よ っ て 、あ る 枠 組 み を 患 者 に あ て は め る と い う 方 法 で は な く 、あ る が ま ま の 相 手 の な か に そ の 必 要 性 を 見 い 出 し て い く 了 解 に 即 し て 考 え る こ と 、 そ の 「 了 解3」 自 体 が 一 つ の 看 護 実 践 で あ る こ と を 述 べ て い る 。 そ の 了 解 と は 、 看 護 師 が 自 ら の 身 体 を 用 い て 相 手 ( 患 者 ) に 関 心 を 寄 せ 、そ し て「 患 者 に 働 き か け 、ま た は 働 き か け ら れ る 相 手 の あ り 方 を 了 解 す る と い う 関 係 状 況 か ら 生 ま れ る 」( 池 川 , 1991, p.100)。 す な わ ち 看 護 実 践 と は 、あ く ま で も お 互 い の 身 体 を 通 し て 知 覚 さ れ る 相 互 関 係 に お い て 為 さ れ る 極 め て 個 別 的 な「 相 手 の 状 況 に 応 じ て 無 意 識 に 動 か さ れ た わ た し の か ら だ が 、相 手 に 見 ら れ て 我 に 返 る と い う 反 省 を 通 し て 、 次 な る 動 き を 生 み 出 し て く る 」( 池 川 , 1991, p.103) 過 程 と い え る 。 こ の よ う に 看 護 実 践 を 、「 看 護 援 助 を 通 し て 為 さ れ る 患 者 の 理 解 」 と し て 捉 え る と 、そ の 力 量 と は 、看 護 技 術 項 目 の 原 則 を 踏 ま え て 手 順 通 り に 行 う と い う 定 型 的 な 習 熟 だ け で は な く 、 ま た そ の 原 則 を 患 者 に そ の ま ま 適 用 す る こ と で も な く 、 「 そ の 時 、そ の 場 」に お け る 患 者 の 理 解 と い う 、看 護 の 実 践 を 通 し た 患 者 理 解 へ と 志 向 す る 力 と も い え る だ ろ う 。し た が っ て 患 者 を 理 解 す る と は 、そ の 人 を 固 定 的 に 見 た り 客 体 化 し て 捉 え た り 、ま た 理 解 が で き た か 否 か と い う 結 果 を 示 す こ と で は な い 。患 者 ‐ 看 護 師 の 関 係 に お い て 看 護 が 実 践 さ れ る 如 く に 他 者( 相 互 )理 解 も 変 容 し て い く と い っ た 、 動 的 な 理 解 の プ ロ セ ス が あ る よ う で あ る 。 さ ら に 看 護 実 践 が 、「 相 手 に 見 ら れ て 我 に 返 る 」 と い う 反 省 を 通 し て 為 さ れ る こ と を 踏 ま え る と 、患 者 を 理 解 す る と い う 事 態 が 、同 時 に 自 己 回 帰 的 で あ る と い う こ と を 示 し て い る 。つ ま り 、看 護 実 践 を 省 み る 行 為 は 、既 に 看 護 実 践 の 中 に 内 包 さ れ て お り 、そ の 過 程 を 振 り 返 る こ と は 、患 者 理 解 の み な ら ず 、自 己 理 解 に 至 る こ と も 意 味 す る の で あ る 。 以 上 の 考 察 か ら 、学 士 課 程 に お い て 学 生 の 看 護 実 践 力 を 培 う に は 、学 内 に お け る 講 義 や 演 習 で 学 ぶ 専 門 的 な 知 識 や 技 術 が 基 盤 か つ 重 要 で あ る こ と に 変 わ り な い が 、そ れ だ け で は 十 分 で は な く 、ま た そ こ か ら 始 ま る べ き で は な い 、と い う こ と が 明 確 に な っ た と 思 わ れ る 。専 門 的 な 知 識 や 技 術 を 生 か す た め の 患 者 と の 相 互 関 係 を 基 盤 に し た 実 践 の プ ロ セ ス に お い て 、絶 え ず 変 化 す る「 今 、こ こ 」の 流 れ に 我 が 身 を お い て 、患 者 の 状 況 を 感 受 す る と い う 、い わ ば 受 け 身 の ア ン テ ナ を 磨 い て お く と い う や り 方 で そ の 人 を 理 解 し て い く こ と 、そ し て そ の 上 に 立 っ て 、自 3 和 辻 に よれば、そ もそも 了 解 (理 解 )とは、表 現 がまず あって、それ に 対 して 初 めて 理 解 が 行 われ るのではないこと を述 べて いる。 表 現 自 体 が すでに分 か るよ うに することで あり、 外 にあ らわすと いうこと と理 解 せし めるということとは 同 義 であ る。 言 語 文 字 に よ る表 現 を 捉 えて その 中 か ら理 解 せ し められ ること を取 り 出 す、それ が 理 解 であ る。 だか ら理 解 は、 思 想 表 現 の 意 味 の再 構 成 で あると いわれる。 このような表 現 に おける理 解 の自 覚 、それ が解 釈 にほ か ならない。和 辻 哲 郎 (2002).人 間 の学 としての倫 理 学 , p.239,岩 波 全 書 .

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分 の 看 護 技 術 を ど の よ う に 用 い て い く の か と い う こ と 、つ ま り 臨 床 の 現 場 で 看 護 を 実 践4す る こ と を 学 べ る よ う な 看 護 学 実 習 が 必 要 な の で あ る 。 看 護 を 実 践 す る こ と を 学 ぶ 看 護 学 実 習 の 要 は 、「 患 者 理 解 」 と い う 自 ら の 身 体 を も っ て 、相 手 の 身 体 の 状 態 を 把 握 す る 、あ る い は 分 か る 、そ し て そ の う え で 自 分 が な に か を す る と い う こ と に あ る 。そ れ を 象 徴 的 に 示 し て い る の は 、看 護 学 実 習 の 目 標 で あ り 、看 護 の 専 門 分 野 が 異 な っ て も 、そ の 根 本 的 な 目 標 に は「 患 者 理 解 」と い う 言 葉 が 表 現 さ れ て い る 。つ ま り 、こ れ ま で 見 て き た よ う に 、患 者 を 内 側 か ら 、親 身 に な っ て 、実 践 的 に 理 解 す る こ と な し に 、看 護 は 実 践 で き な い の で あ る 。 で は 、 学 生 は 、 看 護 実 践 の 現 場 で 、「 患 者 理 解 」 と い う 看 護 実 践 を ど の よ う に 経 験 し て い る の で あ ろ う か 。 2. 看 護 現 場 に お け る 「 患 者 理 解 」 こ れ ま で の 患 者 理 解 に 関 す る 研 究 を 見 て み る と 、「 理 解 」 を 客 観 的 な 行 動 レ ベ ル で 体 系 的 に 枚 挙 し よ う と し た り 、理 解 の 程 度 を 測 定 し う る よ う に 基 準 を 定 め た り 、あ る い は な ん ら か の 体 系 的 な 視 覚 化 を こ こ ろ み た り 、尺 度 に 置 き 換 え た り す る 取 り 組 み が 多 く 見 ら れ た 。ま た 、理 解 の 意 味 が 看 護 過 程 に お け る 問 題 解 決 の 方 法 や 思 考 過 程 、思 考 の 方 略 、あ る い は 情 報 処 理 と し て 読 み 替 え ら れ て い る こ と も あ っ た 。 こ れ ら の 研 究 は 、「 理 解 」 を 学 習 の 成 果 、 あ る い は 特 定 の 行 動 が も た ら す 結 果 と し て 見 な し た 捉 え 方 や 、問 題 解 決 に 至 る 最 適 な 手 続 き の 結 果 と し て み な し て い る こ と が 窺 え る 。ま た 、学 生 が 受 け 持 ち 患 者 に つ い て 記 述 し た 実 習 記 録 や レ ポ ー ト 内 容 を デ ー タ 化 し て い る も の も あ る が 、こ の よ う な 方 法 は 必 然 的 に 個 別 的 な 学 生 の 経 験 を 、他 の ケ ー ス に 応 用 で き る よ う に 一 般 化 す る 方 法 を と っ て い る た め 、そ の 全 体 的 な 傾 向 を 探 る と い う 点 で 有 意 味 で あ る こ と は わ か っ て も 、独 自 の 患 者 と の 関 係 の 中 に 生 起 す る 個 別 的 な 理 解 へ と 接 近 す る よ う な 研 究 を 見 出 す こ と は で き な か っ た 。 さ ら に 、学 生 の 患 者 に 対 す る 理 解 の 深 ま り や 、患 者 に 関 す る 多 面 的 な 捉 え 方 に 着 目 し た 研 究 も あ る が 、ど の よ う に 患 者 を 理 解 す る の か 、あ る い は 、ど の よ う な 4 看 護 を行 うことの表 現 として、われわれは「看 護 実 践 」あるいは「看 護 行 為 」と 表 現 すること が多 い。この実 践 (practice)とは、名 詞 として捉 えた場 合 、①何 度 も繰 り返 すこと、②考 えや計 画 を実 施 に移 すこと、③理 論 ではな く事 実 や経 験 に関 与 すること、などの意 味 があり、また実 践 的 ( Practical)という形 容 詞 的 に捉 えた場 合 、①理 論 ではなく事 実 や経 験 に関 与 している、②有 効 で役 に立 つ、などの意 味 がある。元 来 「実 践 」は、 ギリシャ語 の praktikos を語 源 とする。これは、“to do”(する)を意 味 する pratten からきており、「何 かをする」という意 である「行 為 」が、「実 践 」概 念 の核 心 にある。湯 浅 に拠 れば、「行 為 」とは、世 界 に対 して能 動 的 にはたらきかける人 間 の在 り方 であり、それは 世 界 の事 物 (存 在 者 )に対 して、人 間 が身 体 を介 して能 動 的 に関 係 を形 成 すること である( 湯 浅 泰 雄 (1990).身 体 論 , p.53,講 談 社 学 術 文 庫 )。したがって、 本 研 究 における「実 践 」は、臨 床 現 場 における看 護 の現 実 的 な場 面 、ある状 況 下 で他 者 とある関 係 を培 うと同 時 にかかわることを意 味 し、「行 為 」と同 意 として捉 えている。

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プ ロ セ ス で 患 者 の 理 解 を 深 め て い く の か 、な ど 理 解 の 仕 方 や そ の 内 部 構 造 に 迫 る 研 究 は 見 当 た ら な か っ た 。 こ れ ら の 成 果 を 測 る と い う 研 究 的 側 面 か ら 看 護 実 践 を 捉 え る と き 、看 護 師 が あ る 特 定 の 目 的 を 持 っ て 患 者 に 接 近 し 、自 分 の 行 為 が ど の よ う に 受 け 取 ら れ る の か を そ の 目 的 に 即 し て 予 想 し 、そ の 予 想 に 照 ら し て そ の 行 為 の 結 果 を 何 ら か の 形 で 知 る こ と が で き な け れ ば 、行 わ れ た 看 護 実 践 の 適 切 さ を 評 価 す る こ と は で き な い で あ ろ う 。そ の 時 の 患 者 理 解 と は 、明 確 な 看 護 の 目 的 の も と に 、患 者 の 反 応 を 予 描 し 判 断 が で き る こ と と し て 見 な さ れ な け れ ば 、評 価 す る こ と が で き な い 。患 者 - 看 護 師 の 関 係 は 両 極 に 置 か れ る こ と と な り 、看 護 師 は 常 に 患 者 を 理 解 す る 側 と し て 、ま た 患 者 は 常 に 理 解 さ れ る 側 と し て 在 り 続 け 、相 互 に 経 験 を 共 有 す る 事 で 成 り 立 つ よ う な 理 解 に は 至 ら な い よ う に 見 え る 。 こ の よ う に 、看 護 学 実 習 に お い て 患 者 を 理 解 す る こ と が 主 軸 の よ う に 謳 わ れ て は い る も の の 、学 生 と 患 者 の 相 互 的 な 関 わ り の 中 で 、学 生 が ど の よ う に 患 者 理 解 を 経 験 し て い る の か 、 そ の 内 実 に 迫 る 先 行 研 究 は 見 ら れ な い 。 で は 、患 者 を 理 解 す る こ と を 探 究 す る に あ た っ て 、ど の よ う な 方 法 で そ の こ と が ら に 出 会 い 、 そ れ を 読 み 解 く 緒 を 見 出 せ ば 良 い の だ ろ う か 。 そ も そ も 「 理 解 」 を ど う 理 解 す る か に つ い て は 、古 代 の 哲 学 か ら 近 代 の 知 識 論 に お い て 、ま た 理 解 の 対 象 者 に よ っ て 、ま た 学 的 領 域 、あ る い は 文 化 や 伝 統 に よ っ て 、さ ま ざ ま な 解 釈 が あ る 。こ こ で は 、看 護 実 践 の 要 で あ る 理 解 と し て の 気 遣 い( ケ ア )が 、日 常 生 活 に 馴 染 み 深 い も の で あ る こ と に 注 目 す べ き で あ ろ う 。既 に 述 べ た よ う に 、看 護 の「 気 遣 い 」は 、人 が 生 き て ゆ く 上 で も っ と も 親 密 な 、根 本 的 な 他 者 と の 関 係 を な す も の で あ り 、 そ れ を 抜 き に 看 護 は 考 え ら れ な い か ら で あ る 。 翻 り 、私 た ち は 、事 物 を 見 て 何 ら か の 意 味 を 見 出 し 、判 断 し な が ら 予 測 も で き る 。そ の た め 、そ れ が 何 で あ る の か に 気 づ く に は 、そ の 足 跡 を 辿 り 直 す こ と 、省 察 す る こ と が 求 め ら れ る 。「 理 解 」 と は 、 通 常 の 日 常 経 験 で は ほ と ん ど 無 意 識 下 で 行 わ れ る 人 的 営 為 で あ る が 、そ の や り 方 に つ い て 省 察 す る こ と で 法 則 性 を 意 識 の 上 へ と も た ら し 理 論 に ま で 高 め て い く こ と の で き る も の で あ る ( Danner,1979/1988,p.54)。こ の 省 察 の ひ と つ の 契 機 と な る の が 、「 理 解 の 阻 害 」 と い う 経 験 で あ る 。す な わ ち 、わ れ わ れ は 人 と 関 わ り 、互 い に 話 を す る こ と を 通 し て そ の 人 の 行 動 や 身 振 り 、話 し 方 な ど に よ っ て そ の 状 況 や 関 係 を 絶 え ず 理 解 し て い る 。し か し 突 如 と し て 妨 害 を う け て 、直 接 的 な 理 解 が で き な く な っ て し ま う こ と が あ る 。そ れ は 例 え ば 、相 手 の 行 動 の 意 図 が わ か ら な か っ た り 、言 葉 の 意 味 が 受 け 取 れ な か っ た り 、話 し て い て も 相 手 と 交 流 し て い る 実 感 が 湧 か な い 、と い っ た 感 覚 を 抱 い た 時 な ど で あ る 。相 手 の 言 動 が 読 み 取 れ な い 、意 味 が 見 出 せ な い 状 況 に 直 面 し た と き 、 わ れ わ れ は 「 い つ も と は 違 う 感 覚 」 を 抱 い た り 、「 な ぜ 」

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