神戸ファッション美術館との学館協働事業による復
元研究 : 織物
著者名(日)
伊豆原 月絵, 吉田 紘三
雑誌名
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻
3
ページ
248
発行年
2013-01-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1072/00003853/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja
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大阪樟蔭女子大学研究紀要第 3 巻(2013)
神戸ファッション美術館との学館協働事業による復元研究―織物―
学芸学部 被服学科 伊豆原月絵
学芸学部 被服学科 吉田 紘三
筆者は、大阪樟蔭女子大学と神戸ファッション美術
館の学館協働事業の一つとして、神戸ファッション美
術館の収蔵品についての研究を行っているが、平成 23
年度には、大阪樟蔭女子大学の特別研究助成費を得た
ことから、この収蔵品のうち、製作年 1745 年とされる
フランス宮廷衣裳(ロココ時代)のシネ(絣)作品を
選び、その織物の復元研究を行った。
1.研究の目的
貴重な第一次資料を基に、往時の美意識やその美意
識を支えた染織技術、染織方法などを明らかにするこ
とを目的とした。
2.方法
このシネ(絣)の織物について詳細な計測を行った。
紋様のサイズデータ、色彩データを作成した。それらの
データを基に絣の染めと織について、伊豆原 月絵の
指導のもと、伊豆原ゼミの学生が経て糸に、天然染料
にて摺り込みの手法を用いて染色を行い、絣糸を作成
した。織は、非常勤講師の吉田紘三先生の指導の下、
ゼミ生が研究室にて織物を行った。
2-1 織物製作過程―下染めと染色―
このロココ時代のオリジナル衣裳は、縦に花紋様と
縞 紋 様 が 交 互 に 並 び 、 幅 630mm 、 長 さ お よ そ
20,000mm。5 平方 mm(mm²)に経糸が 43 本、緯糸 20
本であり、糸は細く繊細でしなやかで、張りのある布
である。
復元に際し、糸は21デニール、片撚り糸を 2 本以
上引きそろえて、その撚りと反対の方向に撚り合わせ
た「2本諸撚り」を用いた。下染は、五倍子、ヤマモ
モ、ヤシャブシ(夜叉五倍子)を混ぜて行った。
染色は、往時に用いられていた染料に準じ、植物染
料のインド茜、藍、ウコン、ヤマモモと動物染料のコ
チニールとラック染料に媒染剤を用いて、8 色の染色
を行った。
本研究では、少しでもオリジナルの「シネ」に近づ
けるため「摺り込み技法」を用いて、染料を染み込ま
せた摺り込み棒2本で、紋様をつける部分の糸を挟み、
擦り合わせて染色を行った。ゲージは、10 本一束 340
本、それに 12,560 箇あまりの紋様の染色を行った。
2-2 織物の過程
1枚の綜絖枠に綜絖 980 本、経糸は、5,880 本を通
した綜絖枠を6枚用いた。
経糸の密度を定め、織り幅を保つ筬は、鯨寸間1寸
に 88 羽の筬羽で、長さは 640mmを用意し、整経には、
延べで約 60 時間、綜絖通しには、延べ約 95 時間要し、
筬通しには、延べで、約 60 時間かかった。
3.研究成果
3-1 復元した織物は、平成 23 年 7 月 14 日から9月
27 日まで神戸ファッション美術館にて開催された「学
館協働事業展」において展示され、その後現在まで常
設展で展示されている。
3-2 染織と生活社発行、平成 23 年 12 月発刊の『染
織情報α』には、この織物の復元について伊豆原が執
筆し、見開き 2 ページの写真入りで掲載された。染織
の雑誌としては、最も古く多くの専門家を読者にもつ
本著に掲載されたことは、社会に学問の専門性と学生
指導および学生の向学心の高さをアピールすることが
できた。
3-3 平成 24 年 3 月 3 日、国際服飾学会の研究例会(東
京の昭和女子大学で開催)にて、2 時間にわたり復元研
究についての報告を行った。織物の復元作品の展示を
行い、本研究の織物研究について詳細に報告した。
結語
これらの研究から、色彩や織物に対する美意識と染
織技術の高さが解明できた。また、樟蔭女子大学の学
生の研究意識の高さを社会に発信できたことは、有意
義であった。
図1 シネ(絣)部分