ベトナムにおける臨床薬剤師を介して行う服薬支援ツールを用いた医薬品の適正使用推進に関する取り組み
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(2) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. と考える。また、継続的に実施していくことが必要であり、恒常的な情報提供体制の構築が望まれる。 キーワード:ベトナム、臨床薬剤師、患者アンケート、患者教育、医薬品. I. 緒言(Introduction). 提供の有無を尋ねた質問に対し、1 つの施設を除. 世界保健機関(WHO)では、医薬品の不適切. いて実施していると回答していることを報告して. な使用は世界的に大きな問題であり、全医薬品の. いる。一方、患者の医薬品の処方歴、検査値等の. 半数以上が不適切に処方、調剤、販売されてお. 患者情報を入手し、医師への処方提案等を行って. り、全患者の半数が正しく服用できていないと推. いる施設は 31%であり、その取り組み状況につ. 1). 測している 。WHO は医薬品の適正使用を促進. いては各施設においてバラつきが見られているこ. するための 12 の介入について提言しているが、. とが報告されている。このことから臨床薬剤師業. そのうちの一つとして、Public education about. 務を向上させていくためには、トレーニング、教. 1). medicines を挙げている 。また、中国とベトナ. 育およびマンパワーの拡大が必要であると述べて. ム に 焦 点 を 当 て た systematic review article で. いる 11)。. は、医薬品の不適切な使用の最も重要な影響因子. 国立国際医療研究センター病院薬剤部では、. は、医療従事者と患者両者の知識の欠如であると. 2016 年より、ベトナムの診療、教育、研究の中. 2). 述べている 。加えて、薬物治療に関する患者の. 心的な役割を担っている医療機関であるベトナム. 知識は患者の QOL(Quality of life)と関連して. 国ハノイ市 Bach Mai hospital(BMH)と共同プ. 3). いることも報告されている 。一方、薬剤師の介. ロジェクトを実施してきており、がん化学療法に. 入により、治療効果の改善、副作用の軽減、医薬. 関連した薬剤師業務や、医薬品の適正使用を目指. 品の不適切な使用の削減に伴う医療費削減効果、. した臨床薬剤師業務についての様々な技術支援、. 患者満足度の向上等、様々な観点から薬剤師の職. 実地研修を行っている。BMH では、一日平均の. 能が評価されている報告が各国よりなされてい. 外来患者数が約 4000 ~ 5000 人、入院患者数は. る. 4-9). 。. 3000 ~ 4000 人の診療を常時行っており、BMH. ベトナムの保健省は、2012 年に初めて病院に. 薬剤部の多くのマンパワーはその患者の医薬品の. 勤務する臨床薬剤師の役割を定義している. 払い出し業務に費やされている。医薬品の適正使. 10). (Regulation31) 。Regulation31 では、臨床薬剤. 用の観点からは、患者が自身の使用している医薬. 師の果たすべきタスクとして、患者の病室を訪問. 品の効能効果、用法用量についての理解のみなら. し、薬剤の情報提供、使用薬剤の相互作用、禁忌. ず、起こり得る副作用の種類と副作用の対処法、. の確認、副作用の発現についてのモニタリングお. 服薬アドヒアランスの重要性についての理解が非. よ び 報 告、TDM(Therapeutic Drug Monitor-. 常に重要であるが、BMH では薬剤師が直接患者. ing)、治療ガイドラインに基づいた医師への処方. に医薬品に関する情報提供を十分に行えておら. 提案、クリニカルカンファレンスの参加等、多く. ず、患者は医薬品に梱包されている添付文書から. の項目が記載されている。しかし、ベトナムの各. 情報を入手しているのが現状である。添付文書. 病 院 に 勤 務 す る 薬 剤 師 の 数 は 少 な く、Regula-. は、医療関係者が読むことを前提としている文書. tion31 に定義されている臨床薬剤師の業務の全て. であり、専門用語も多いことから、一般の全ての. を実践することは困難であるため、各病院の薬剤. 患者が理解するのは困難である。これらのことよ. 師は施設の状況(マンパワー、ニーズ)に応じて. り、我々は薬剤師による患者指導の実践と、適切. 業務を選択し、実践している. 11). 。. な医薬品情報の提供ツールを作成することが、. Regulation31 の 各 施 設 へ の 影 響 に つ い て、. BMH の患者の服薬アドヒアランスの向上や副作. Trinh らはハノイ市 39 の病院の薬剤部を対象と. 用の早期発見に繋がると考えた。そこで日本製薬. したアンケート調査を実施している。アンケート. 工業協会と協働し、2019 年度医療技術等国際展. 調査では患者および医療従事者への医薬品情報の. 開推進事業の一環で、BMH の臨床薬剤師を研修. ─ 12 ─.
(3) Journal of International Health Vol . 36 No . 1 2021. 図 1 研修事業の概要. するプログラムを企画、立案し実践した。また、. 人数を集計し、割合で示した。. ベトナム人糖尿病患者を対象とした服薬支援ツー ルを作成した。そこで今回、より患者満足度の高. 2. 調査項目. い患者集団指導の実践および服薬支援ツールの改. 質問は全て選択形式とし、以下の項目に関する. 良につなげることを目的として 2 つのアンケート. 設問とした。. 調査を実施した。. アンケート① 性別、年齢、学歴などの属性情報、現在使用し. II. 方法(Methods). ている薬剤に関する効能、用法、糖尿病に関する. 1. 調査の対象および方法. 病識、低血糖の症状、低血糖時の対処法について. 患者集団指導は、服薬支援ツールの内容を含む. の理解度および薬剤師による集団指導の満足度. プレゼンテーション用資料を用い、週に 1 度入院. アンケート②. 患者 10 ~ 20 人を対象に実施した。アンケート調. 性別、年齢、学歴などの属性情報、作成した服. 査 は、2019 年 12 月 25 日 ~ 2020 年 1 月 10 日 に. 薬支援ツールについてデザイン、字の大きさ、表. BMH の内分泌代謝内科病棟に入院している糖尿. 現方法、各項目の理解度. 病患者のうち次の条件に該当した患者を対象とし. アンケートは、日本語版、英語版を作成し、通. た。. 訳者によって日本語からベトナム語に翻訳され. ① BMH 入院中、臨床薬剤師による糖尿病患者に. た。その翻訳内容は、我々と BMH の薬剤師およ. 対する患者集団指導を受けた 20 歳以上の患者. び通訳者の 3 者間で各設問が適切に翻訳されてい. ② BMH 入院中、服薬支援ツールを配布された. るかを確認した。. 20 歳以上の糖尿病患者 ①の患者に対しては、集団指導受講直前に糖尿. 3. 分析方法. 病治療薬に関する患者理解度について紙媒体によ. アンケート①(集団指導受講前後の糖尿病治療薬. る無記名アンケート調査(アンケート①)を実施. に関する理解度について). し、集団指導受講直後に同じアンケート調査を実. 服薬指導受講前後の薬に関する理解度の関係に. 施した。②の患者に対しては、退院時に服薬支援. ついては、χ2 検定を行った。理解していない、. ツールの満足度について紙媒体による無記名アン. あまり理解していないと回答した群を理解してい. ケート調査(アンケート②)を実施した。. ない群として集計し、理解したと回答した群と、. アンケート結果は、各設問に対し回答があった. クロス集計し分析を行った。統計解析には IBM. ─ 13 ─.
(4) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. 図 2 事業で作成した服薬支援ツール(内容を一部抜粋). SPSS statistics ver25 を使用し、各設問において. て)は回収したアンケートの回答を単純集計し. 分析を行った。いずれも有意水準は P<0.05 を統. た。. 計学的に有意とした。 アンケート②(服薬支援ツールの理解度につい ─ 14 ─.
(5) Journal of International Health Vol . 36 No . 1 2021. 図 2 続き. 4. 倫理的配慮. 記し、文書での同意は取得せず、アンケートの回. 今回のアンケート調査は、個人を特定できない. 答をもって研究に参加する同意とみなすことを口. 侵襲性のないアンケート調査であることから. 頭にて説明することでよいと回答を得た。対象者. BMH より、研究・調査内容に関しては文書に明. にはアンケート調査への参加は自由意志であり、. ─ 15 ─.
(6) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. 図 2 続き. 参加しない場合でも治療やケアに不利益は生じな. 受け実施した(承認番号:NCGM-G-003382-00) 。. いこと、答えたくない質問については回答しなく てもよいことを説明した。また、本研究は国立国 際医療研究センター病院倫理審査委員会の承認を ─ 16 ─.
(7) Journal of International Health Vol . 36 No . 1 2021. III. 結果(Results). 23 名)であったが、指導後:92.5%(40 名中 37. 1. 薬剤師による集団指導後のアンケート調査. 名)へ上昇した。「糖尿病治療薬を服用すること. 薬剤師の集団指導後に記入を依頼したアンケー. で低血糖が起こる可能性があることを理解してい. ト①については 45 名の患者より回答を得た。こ. ますか?」という設問に対しては、理解している. のうち服薬指導後に回答すべき設問のすべてが未. と回答した患者の割合は、指導前:40.0%(40 名. 記入であった 5 名については除外し、40 名分の. 中 16 名)であったが、指導後:90.0%(40 名中. アンケート結果を集計した。回答者の平均年齢は. 36 名)へ上昇した。 「低血糖の症状について理解. 49.8 ± 17.5 歳 で あ り、 女 性 が、70.0 %(40 名 中. していますか?」という設問に対しては、理解し. 28 名)を占めていた。学歴は高卒以下が 57.5%. ていると回答した患者の割合は、指導前:25.0%. (40 名中 23 名)であった。. (40 名中 10 名)であったが、指導後 92.5%(40. 患者の理解度に関する設問に対しては、「服用. 名中 37 名)へ上昇した。「低血糖が起こった時に. している糖尿病治療薬がどのようにして体の中で. 何をすれば良いか理解していますか?」という設. 働くか理解しているか?」という設問に対して、. 問に対して理解していると回答した患者の割合. 理解していると回答した患者の割合は、指導前:. は、指導前:32.5%(40 名中 13 名)であったが. 12.5%(40 名中 5 名)であったが指導後:82.5%. 指導後:92.5%(40 名中 37 名)へ上昇した。 「イ. (40 名中 33 名)へ上昇した。「お薬には決められ. ンスリンの開封前後の正しい保存方法を理解して. た用法(タイミング、用量など)通りに飲まなけ. いますか?」という設問に対して理解していると. れば効果が期待できない、もしくは副作用がでて. 回答した患者の割合は、指導前:17.5%(40 名中. しまうことを理解していますか?」という設問に. 7 名)であったが、指導後:85.0%(40 名中 34. 対して、理解していると回答した患者の割合は、. 名)へ上昇した。糖尿病治療薬に関する全ての設. 指導前:37.5%(40 名中 15 名)であったが、指. 問に対し、指導後に患者理解度の改善が認められ. 導後:97.5%(40 名中 39 名)へ上昇した。「血糖. た(P < 0.05)。. 値を正常範囲に保つことが必要なことを理解して いますか?」という設問に対して理解していると. 薬剤師からの集団指導の内容については、ちょ. 回答した患者の割合は、指導前:57.5%(40 名中. うどよいと回答した患者の割合が 92.5%(40 名. 表 1 回答者背景 (アンケート①:薬剤師による患者集団指導前後の糖尿病治療薬 に関する理解度について). ─ 17 ─.
(8) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. 表 2 薬剤師による集団指導後のアンケート結果. 統計処理はχ2 検定を用い、5%以下を有意差ありとした。. 表 3 薬剤師による集団指導について. 中 37 名)であった。やや満足、大変満足と回答. 2. 服薬支援ツールのアンケート調査. した患者が 97.5%(40 名中 39 名)であった。. 服薬支援ツールのアンケート②については 70 名の患者より回答を得た。うち、アンケートの設 問の「服薬支援ツールをお読みいただけました ─ 18 ─.
(9) Journal of International Health Vol . 36 No . 1 2021. 表 4 回答者背景 (アンケート②:服薬支援ツールの理解度について). *. アンケートの集計は、設問の「服薬支援ツールをお読みいただけ ましたか?」という設問に対して“はい”と明確に答えた 50 名分 のアンケート結果を集計した。. 表 5 服薬支援ツールのデザインおよびレイアウトについて. *. アンケートの集計は、設問の「服薬支援ツールをお読みいただけました か?」という設問に対して“はい”と明確に答えた 50 名分のアンケート 結果を集計した。. か?」という設問に対して“はい”と明確に答え. 名)がちょうどよいとの回答であり、18.0%(50. た 50 名分のアンケート結果を集計した(無チェッ. 名中 9 名)は小さすぎるとの回答であった。「イ. クや“いいえ”にチェックした患者は除外した)。. ラスト」については、74.0%(50 名中 37 名)の. 回答者の平均年齢は 52.4 ± 15.2 歳であり、女性. 患者がわかりやすいと回答した。「言葉の表現」. の割合は 54.0%(50 名中 27 名)であった。学歴. に つ い て は、52.0 % が 普 通(50 名 中 26 名 )、. は高卒以下が 60.0%(50 名中 30 名)であった。. 38.0%(50 名中 19 名)がやさしいと回答した。. ツールの表現方法に関する設問に対しては、. 内容の理解度についての設問に対しては、「合. 「文字の大きさ」については、74.0%(50 名中 37. 併症を含め、糖尿病がどのような病気か理解でき. ─ 19 ─.
(10) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. ましたか?」という設問に対しては、ほぼ理解で. 38 名)であったのに対し、理解できないことが. きた、よく理解できたと回答した患者の割合が. 多かった、全く理解できなかったと回答した患者. 74.0%(50 名中 37 名)であったのに対し、理解. の割合が 20.0%(50 名中 10 名)であった。. できないことが多かった、全く理解できなかった と回答した患者の割合が 22.0%(50 名中 11 名). IV. 考察(Discussion). であった。②「糖尿病の治療には食事療法、運動. ベトナムでは、薬剤師の国家試験が存在せず、. 療法、薬物療法の 3 つが重要なことを理解できま. 薬剤師の知識や技術が標準化されているとは言い. したか?」という設問に対しては、ほぼ理解でき. 難い状況である。また、全国で統一された教育カ. た、 よ く 理 解 で き た と 回 答 し た 患 者 の 割 合 が. リキュラムは存在せず、各大学の教育カリキュラ. 76.0%(50 名中 38 名)であったのに対し、理解. ムにバラつきがあることもその要因の一つと考え. できないことが多かった、全く理解できなかった. られる。今後ますます需要が高まると予測される. と回答した患者の割合が 18.0%(50 名中 9 名). 生活習慣病治療薬や抗がん剤は、患者への指導の. であった。「食事療法について、どのような食事. 複雑さや、重篤な副作用への対応等、高度な医薬. が良いか理解できましたか?」という設問に対し. 品の知識が必要とされるため、そのような医薬品. ては、ほぼ理解できた、よく理解できたと回答し. の適正使用に精通した薬剤師の育成は急務であ. た患者の割合が 84.0%(50 名中 42 名)であった. る 12、13)。. のに対し、理解できないことが多かった、全く理. 今回我々は、ベトナム BMH の内分泌代謝科病. 解できなかったと回答した患者の割合が 14.0%. 棟に入院している患者を対象に日本での研修を受. (50 名中 7 名)であった。「運動療法について、. 講した薬剤師による患者集団指導後の医薬品の理. どのような運動が良いか理解できましたか?」と. 解度、指導に対する患者満足度についてのアン. いう設問に対しては、ほぼ理解できた、よく理解. ケート調査ならびに、作成した服薬支援ツールに. できたと回答した患者の割合が 76.0%(50 名中. 関する患者満足度、理解度についてのアンケート. 表 6 服薬支援ツールの内容について. *. アンケートの集計は、設問の「服薬支援ツールをお読みいただけましたか?」 という設問に対して“はい”と明確に答えた 50 名分のアンケート結果を集 計した。. ─ 20 ─.
(11) Journal of International Health Vol . 36 No . 1 2021. 調査を実施した。. トナムにおける大学・短大の就学率が約 30%で. 薬剤師による集団指導後のアンケートの結果で. あること 14) を考慮すると、医師の説明を理解し. は、各項目について理解度はほとんどの患者にお. きれない、もしくは添付文書の情報を理解できな. いて改善が図られており、薬剤師による指導の効. いことに起因し医薬品の理解度が十分ではない可. 果が認められていると考えられる。また、集団指. 能性が推察される。さらに、医薬品の説明につい. 導の内容については 92.5%の患者がちょうどよい. ては 64%の人が希望していることから、医薬品. と回答しており、日本で行った研修を受講した. の情報提供は十分満足できる状況ではないことが. BMH 薬剤師による患者集団指導において、BMH. 明らかとなった。誰から医薬品の説明を受けたい. に入院しているベトナム人糖尿病患者の薬に対す. かという設問についてはほとんどの患者が医師か. る理解度の改善が認められた。. らの説明を希望しており、薬剤師が医薬品の説明. 患者の糖尿病に関連する理解度についての設問. をするということが浸透していないという現状が. では、低血糖についての質問に対し、指導前の患. 明らかとなっている。. 者において約 60%が低血糖の症状や、対処法に. 一方、ベトナムの臨床薬剤師業務を向上させて. ついて理解されていないと回答しており、低血糖. いくためには、トレーニング、教育およびマンパ. に関する情報提供が不十分であることが明らかと. ワーの拡大が必要であると述べられている 11) こ. なった。一連の研修時に、内分泌代謝科の医師か. とから、医薬品の情報を提供する薬剤師の能力向. らは、BMH では低血糖症状の出現による体調悪. 上は医薬品の適正使用を推進していく上で必要で. 化に伴い救急搬送される患者が非常に多いという. あると考える。臨床薬剤師のトレーニング、教育. 情報を得ており、低血糖に対する正しい知識を啓. の観点から患者に使用する医薬品に関する説明用. 発していくことで、今後、救急搬送される患者数. の資材を作成し、それを用いた患者への服薬指導. の減少に貢献できる可能性があると考えている。. を実践していくことはベトナムの患者の医薬品に. また、今回研修事業を通して、作成した服薬支. 対する理解度の向上、アドヒアランスの改善、医. 援ツールについては暫定版として、患者に実際に. 薬品の適正使用につながると考える。またその説. 渡し、患者の実際の理解度や意見を収集、確認す. 明用の資材については、ベトナムの高齢者が理解. る目的でアンケート調査を実施した。服薬支援. できるように平易な表現で作られたものが望まし. ツールについてのアンケート結果から、各項目の. いと考えられる。そのような資材をベトナムの薬. 理解度は約 80%の患者に対しては理解しやすい. 剤師自身で作成することは、今後のベトナムにお. ツールになっているが、約 20%の患者には内容. ける臨床薬剤師の能力向上につながっていくもの. について理解ができないという回答が得られた。. と考える。また臨床薬剤師のマンパワーを考慮す. また、アンケートの結果から文字の大きさについ. ると、同じ疾患を有している入院患者への集団教. て小さすぎるという回答が一定数得られた点、実. 育が有用であると考えられ、それを継続的に実践. 際に指導にあたった BMH 薬剤師から一部の表現. していくことは彼らのコミュニケーションスキル. 方法について、患者が理解しやすい文言へ変更し. の改善につながると期待される。今後、服薬指導. たほうがよいという提言も得られたことから、服. 用の資材の作成、及び患者教育実践方法、コミュ. 薬支援ツールについては、一部の文字の色、サイ. ニケーションスキル向上に向けた支援を行うこと. ズを変更、表現の修正を行った。現在は、修正後. は、患者-薬剤師間のコミュニケーションを推進. のツールを使用している。. するシステムの構築に寄与できると考える。 今回の調査の限界として、まずベトナムの代表. 以前我々が実施した事業開始前のプレ調査で. 的なリーディングホスピタルである BMH 病院単. は、患者の医薬品の効能効果に対する理解度につ. 一の施設で行っていることから国全体の情報とし. いては 4 割の患者は理解していないという結果で. て一般化することはできないことが挙げられる。. あった。また、その調査において BMH の患者の. また、集団指導後のアンケートの聴取では白衣を. 多くは、医師、もしくは医薬品に梱包されている. 着て薬剤部スタッフがアンケートの回答の補助業. 添付文書から情報を入手したと回答している。ベ. 務を行っており、病院に不満を抱いているような. ─ 21 ─.
(12) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. 発言はできないと回答者が配慮した点が懸念され. edge of patient-centered medication label. ることから、医薬品に対する理解度については過. content on quality of life among older adults.. 大評価されている可能性は否めない。加えて、調. Research in Social and Administrative phar-. 査①と調査②の独立性を担保できない環境下で調. macy. 2013; 9: 37-48. 査が行われたため、結果に対し、相互に影響を及. 4)Philippe Martin, Robyn Tamblyn, Andrea. ぼしている可能性は否定できなことが挙げられ. Benedetti, Sara Ahmed, Cara Tannenbaum.. る。しかし、本研究はベトナム人患者の自身が服. Effect of a pharmacist-led educational inter-. 用している医薬品に対する理解度、アドヒアラン. vention on inappropriate medication prescrip-. スの遵守状況、医薬品情報収集の実態について示. tions in older adults the D-PRESCRIBE rand-. 唆する意義ある調査結果であると考える。本研究. omized clinical trial. JAMA, 2018; 320. の結果は、今後、ベトナムでの臨床薬剤師の活動. (18): 1889-1898.. の推進や、薬剤情報提供の資材作成や、患者教育. 5)大井一弥.薬局薬剤師によるポリファーマ. および医薬品情報提供の将来的な在り方を検討す. シー介入効果に関する研究.日本老年医学会. る上で重要な情報になると考える。医薬品の適正. 雑誌,2019; 56: 498-503.. 使用推進という観点から、患者への医薬品の適切. 6)M.Y.L. Siaw, Y.Ko, D.C. Malone et al. Impact. な情報提供は、患者の医薬品の適正使用のみなら. of pharmacist-involved collaborative care on. ず、臨床成績の向上につながるものと考える。ま. the clinical, humanistic and cost outcomes. た、継続的に実施していくことが必要であり、恒. of high-risk patients with type2 diabetes. 常的な情報提供体制の構築が望まれる。. (IMPACT): a randomized controlled trial. J Clin Pharm Ther. 2017; 42: 475-482. V. 結語(Conclusions)省略可. 7)M.T. Martin, D.M. Faber. Patient satisfaction with the clinical pharmacist and pre-. 謝 辞. scribers during hepatitis C virus manage-. 本研究は日本製薬工業協会との共同研究として. ment. J Clin Pharm Ther. 2016; 41: 645-649. 実施されたものである。研究実施にあたって終始. 8)Tu-Son Nguyen, Thi Lien Huong Nguyen,. ご助言ご支援いただいた日本製薬工業協会 俵木. Thi Thuy Van Pham, Susan Hua, Quy Chau. 保典氏、鴫原 毅氏、第一三共株式会社 恒成. Ngo, Shu Chuen Li. Pharmacists’ training to. 利彦氏、他、日本製薬工業協会の皆さまに心より. improve inhaler technique of patients with. 感謝申し上げます。また、本事業は国立国際医療. COPD in Vietnam. International Journal of. 研究センター平成 31 年度医療技術等国際医療展. COPD. 2018; 13: 1863-1872. 開推進事業によって支援された。. 9)Tzu-Chueh Wang, Damien Trezise, Pou-Jen Ku, Hai-Lin Lu, Kung-Chuan Hsu, Po Cheng. 『COI に関して開示すべきことがない』. Hsu. Effect of Pharmacist Intervention on a Population in Taiwan with High Healthcare. 文 献. Utilization and Excessive Polypharmacy.. 1)World Health Organization. The pursuit of. Int. J. Environ. Res. Public Health. 2019; 16:. responsible use of medicines: Sharing and learning from country experiences. (2012). 2208-2217 10)Vietnamese Ministry of Health. Legal regu-. 2)Wenhui Mao, Huyen Vu, Zening Xie, Wen. lation for clinical pharmacy activities in. Chen, Shenglan Tang. Systematic review on. Vietnamese hospitals (Document number. irrational use of medicines in China and Vi-. 31/2012/TT-BYT). 2012. etnam. PLoS One, 2015; 10(3): 1-16.. 11)Hieu T Trinh, Huong T.L. Nguyen, Van T.T.. 3)Song Hee Hong, Jing Liu, Sunghee Tak,. Pham. et al. Hospital clinical pharmacy. Varun Vaidya. The impact of patient knowl-. services in Vietnam. Int J Clin Pharm, 2018;. ─ 22 ─.
(13) Journal of International Health Vol . 36 No . 1 2021. 40: 1144-1153.. する調査.Journal Health Care and Society,. 12)Thi-Ha Vo, Pierrick Bedouch, Thi-Hoai. 2017; 27(3), 411-419. Nguyen et al. Pharmacy Education in Viet-. 14)稲川文夫,上東亘,川畑康治,斉藤善久,石. nam. Amierican journal of Pharmaceutical. 井和広.ベトナムの労働を取り巻く現状:独. Education. 2013; 77(6): 114. 立行政法人 労働政策研究・研修機構;2019. 13)中島理恵,白神 誠.ベトナムにおける医薬 品使用の現状と医薬系企業進出の可能性に関. ─ 23 ─. 年3月.
(14) 国際保健医療 第 36 巻 第 1 号 2021. [Field Report] Promotion of Proper Use of Medications with Medication Guiding Tools through Clinical Pharmacists Intervention in Vietnam Keisuke Seto, Yukiko Shibata, Ayaka Ikeda, Sayaka Oku, Haruhiko Sakamoto, Hiroyuki Terakado Center Hospital of the National Center for Global Health and Medicine. . Abstract Objectives The Department of Pharmacy at the National Center for Global Health and Medicine and the Japan Pharmaceutical Manufacturers Association planned and carried out a training project for the proper use of medications at Bach Mai Hospital (BMH), a hospital that plays a central role in Vietnam. The training was conducted for clinical pharmacists at BMH, and the goal of the training was to develop group guidance for the patients on their proper use of medications, and to create a medication support tool for patients. In order to clarify the current challenges and provide proper information of the medications by the BMH pharmacists, two questionnaire surveys were conducted to patients who received the patient group guidance by the BMH pharmacists and those who used the medication support tool. Methods Questionnaire surveys were conducted on patients with diabetic mellitus admitted to BMH and who met the following conditions. ① Patients who received group guidance for diabetic patients by clinical pharmacists. ② Patients who were provided with medication support tools and used the tools Results Results of questionnaire surveys revealed that the patients understood anti-diabetic medications well and the knowledge of hypoglycemia had improved after pharmacists’ intervention. The guidance by clinical pharmacists was very satisfactory for the patients. More than 80% of the patients who were provided with medication support tools answered that they understood well the messages on tools. Conclusions The patient group guidance provided by BMH pharmacists who received training in Japan, improved patients’ level of understanding in medications. In addition, the medication support tool was easy to understand for Vietnamese patients. From the perspective of promoting the proper use of medications, it is necessary to build sustainable information providing system. Keywords: Vietnam, Clinical pharmacist, Questionnaire survey, Patient education, medication. Author contribution: Seto made a basic idea, managed the data, analyzed the data, and made a draft of this article. Shibata, Ikeda, Oku, Sakamoto made questionnaire sheets and training materials, in addition practiced training. Terakado supervised and advised the total of this article. All the authors read the final manuscript and approved to submit the article. ─ 24 ─.
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