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現代日本における創作系ネットツールの利用形態 ―コミュニケーションメディアを介した相互作用についての実証研究

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現代日本における

創作系ネットツールの利用形態

―コミュニケーションメディアを介した

  相互作用についての実証研究

鯉淵 拓也

Utilizing Style of Creative Internet Tools

in Contemporary Japan Empirical Study of

Mediation of Communication Media

Takuya Koibuchi

 本稿では,人々の読書行為が変質したコミュニケーションメディア上でど のように相互作用しているのかを明らかにする.そのためには,創作系ネット ツールというコミュニケーションメディアを介した読書行為とそれに関わる 人々の相互行為はどのようなものかを実証的に考察する必要がある.本稿では, 創作系ネットツールを用いたコミュニケーション行為を事例として,現代日本 における読書行為の実態を分析する.

In this paper I discuss about what our reading activity will communicate following with change of communication media. To make clear this discussion it is necessary to analyze the empirical data which contain the creative internet tools and reading activity and interaction among someone do same activity. I will analyze and discuss it as contemporary reading activity of Japanese people by using above mentioned data.

キーワード:読者,読書行為,読書論,コミュニケーションメディア,創作系ネットツール

[研究ノート]

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1. 読書行為におけるコミュニケーション

 現在,大学生の間で紙の本は自発的に読まれていない傾向がみられる1) 例えば,文化庁「平成 30 年度『国語に関する世論調査』の概要」のデータ によると,「読まない」が 47.3% を占めている.また,平成 25 年度調査は 47.5%,平成 20 年度は 46.1% と,「読まない」が 50% 弱を占めている2).大 学生の間で紙の本が読まれることが少なくなった理由は,書籍やマンガ,雑 誌のような紙媒体のメディア形態が,別のメディア形態に変質しているた めと考えられる.事実,インターネットの登場,普及により,読書形態は Kindle 等へと電子化が進み,複雑なものとなっている.  メディア形態の変質は,人と人との相互関係の変容から読み解くことが できるといえる.中川の主張を要約すれば,かつて作家や編集者は「読者 の声」を,手紙を通じて受け取っていたが,現代では,ネット,特に SNS の普及により大きく状況が変化しているという.具体的には,「Pixiv」や 「Twitter」,コミックマーケットといった,作家と読者が直接に繋がる場が あらわれたと述べている(中川,2019:pp.81-102).日本出版学会のワーク ショップで示されていたように,携帯小説にはじまり,「小説家になろう」, 「アルファポリス」など,一般人かプロフェッションの作家かを問わず, Web 上で小説やエッセイなどを投稿または閲覧できるウェブサイトの場が ある.そこでは,感想欄やコメント欄を通じて読者と作者が相互にコミュニ ケーションをとることができる.中川は,一般人かプロフェッションの作家 かを問わず,Web 上で小説やエッセイなどを投稿または閲覧できるウェブ サイトの場を,操作的に「創作系ネットツール」と呼んでいる.そのため, 本稿でもこのようなウェブサイトの場を「創作系ネットツール」と呼ぶこと とする3).また,議論をわかりやすくするため,本稿では,プロフェッショ ナルの作家や出版社が創作物を提供する Kindle などは「電子書籍」と呼ぶ こととし,「創作系ネットツール」と区別する.  読書行為にかかわる新しいメディア形態は,例えば,インターネット技術 の登場,普及から,「電子書籍」や「創作系ネットツール」,SNS などが登 場,普及した.コミュニケーションメディアの形態の変質とともに,読書行

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為における人と人とのコミュニケーション形態は変容していると考えられ る.なぜなら,コミュニケーションメディアの形態が変質することで,読書 は人−メディア間の相互作用だけではなく,人−人の間,例えば,読者− 読者の間でも,SNS や「創作系ネットツール」等を通じて読書にかかわる コミュニケーション行為を行うことができるようになったからである.SNS や「創作系ネットツール」等の具体的な利用率については,これから検証し なければならない.本稿では「読書行為」を,SNS やコミックマーケット などを介した周辺的なコミュニケーションを含んだ広義の読書概念として操 作的に定義する.  メディア利用における人と人との相互作用関係の変容は,コミュニケー ションメディアの変質(単純化して言えば,新しいメディアの登場)と説明 できる.Thompson によれば,例えば,印刷技術による出版物というコミュ ニケーションメディアの登場により,生産・流通・蓄積の手段が変質し,空 間と時間の再編(分断)が行われるようになったと述べている(Thompson, 1995)4)  時間と空間が再編されるということは,新しいメディア技術の登場・普及 により,時間的差異や空間的差異を短縮・超越することである.例えば,ス マートフォンというコミュニケーションメディアは,空間を異にしながら, 対面コミュニケーションとほとんど同じ時間的差異で,象徴的形態を介した 相互のコミュニケーション(媒介作用)を可能にしたと考えられる.  かつては主に一方向的であった紙媒体の本の読書行為は,インターネット の登場,普及によりコミュニケーションメディアが変質し,時間的・空間的 に再構築されたことで,作者と作者,読者と読者間での直接的な相互作用 が活発になったと考えられる.だが,過去・現在にわたる研究は,紙幅の都 合上,困難である.したがって,本稿では「創作系ネットツール」というコ ミュニケーションメディアが,過去のコミュニケーションメディア(例え ば,出版)から変質したものであることを前提条件とした上で,現在0 0の分析 に専念する.すなわち,現在のコミュニケーションメディアのひとつである 「創作系ネットツール」を事例に分析する.  ここで,次のようなリサーチクエスチョンが立てられる.(1)現在の「創

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作系ネットツール」の利用者属性はどのようなものだろうか.(2)現在, 「創作系ネットツール」上において,読者と作者,読者と読者,作者と作者 との相互作用は促進されているだろうか.(3)現在の「創作系ネットツー ル」というコミュニケーションメディアを介した相互作用はどのような作用 だろうか.(4)読者の読書行為には,コミュニケーションメディアの利用と の間にどのような関係があるのだろうか.

2. 読書行為に関するインターネットオンライン調査

 本研究は,インターネットオンライン調査法を用いて,メディア化の概念 とメディア史的な補助線を引いた上で,読書行為(本のメディア効果)を実 証的に分析するものである5)  本研究の理論仮説は,次の通りである.第 1 に,「創作系ネットツール」 は,従来の(投書欄のような特定の例外は別として)紙媒体の書物とは異な り,利用者が相互に交流するための場やツールとして用いられる傾向が高 い.  第 2 に,コミュニケーションメディアの変質により,象徴的形態の伝達に 対する反応の促進が強化される.それにより,「創作系ネットツール」にお ける読書行為の形態は,紙媒体の読書行為と比較して,対話的(dialogical) な媒介作用がある.現代は,本・電子書籍利用者よりも「創作系ネットツー ル」利用者のほうが相互作用のやりとりを行う程度が高い傾向にある. 2. 1 単純集計から見る読書行為の変容  本調査は,配票数 300 票,回収数 300 票,回収率 100%,有効回答数 300 票,有効回答率 100% であった6).詳細な単純集計は紙幅の都合で割愛す る.「創作系ネットツール」を少しでも利用している回答者は N=53,全体 (N=300)の 17.7% であった.その内,「男性」が 60.4%,「女性」が 39.6% である.「年代別」では,N=53 のうち,「20 代以下」が 43.2%,「30 代」が 12.2%,「40 代」が 20.3%,「50 代」が 4.1%,「60 代以上」が 20.3% である. 単純集計から,やや男性の利用者が多く,20 代以下を中心に,幅広い年代

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層に利用されている傾向にあると見られる.  1 つ目の理論仮説から,「従来の(投書欄のような特定の例外は別とし て)紙媒体の書物とは異なり,利用者が相互に交流するための場やツール として用いられる傾向が高い.」について検証する.創作系ネットツール利 用者(N=53)のうち,「創作系ネットツール」等のインターネットメディ アをコミュニケーションメディアとして利用している率は,全体では,「は い」(43.4%),「いいえ」(56.6%)である.「創作系ネットツール」利用者の うち約半数が「創作系ネットツール」等のインターネットメディアをコミュ ニケーションメディアとして利用している傾向にある.紙媒体の場合は,投 書欄や読書会などが挙げられるが,「読書会」(N=300)の利用は,全体で, 「とてもあてはまる」(1.0%),「ややあてはまる」(7.0%),「あまりあてはま る」(16.0%),「全くあてはまらない」(76.0%)と低い傾向にある.また,比 較的に高い傾向にある「趣味や娯楽について語り合う」(N=300)について は,全体で,「とてもあてはまる」(4.7%),「ややあてはまる」(17.3%),「あ まりあてはまる」(28.0%),「全くあてはまらない」(50.0%)と,「とてもあ  男性  女性 図 1 創作系ネットツール等利用者の性別の割合(%)(N=53) 60.4% 39.6%  20 代以下  30 代  40 代  50 代  60 代以上 図 2 創作系ネットツール等利用者の年代別の割合(%)(N=53) 43.2% 12.2% 20.3% 4.1% 20.3%

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てはまる」と「ややあてはまる」を足し合わせて(22.0%)になる.同様に, 「本で得た知識を他人に話す」(N=300)は,全体で,「とてもあてはまる」 (6.8%),「ややあてはまる」(24.0%),「あまりあてはまる」(26.7%),「全く あてはまらない」(43.3%)と,「とてもあてはまる」と「ややあてはまる」 を足し合わせて(30.0%)になる.創作系ネットツール等のコミュニケー ションメディアとしての利用は,少ないサンプル数(N=53)で(43.4%)と 高い率を示していることから,創作系ネットツールはコミュニケーションメ ディアとして利用される傾向が紙媒体よりも高い傾向にあると考えられる. しかし,本考察には,創作系ネットツールから SNS のバイアスを取り除か なくてはならない.  創作系ネットツールがコミュニケーションメディアとして少なからず 利用されている根拠として,SNS は,「本で得た知識を SNS で拡散する」 (N=300)は,全体で,「とてもあてはまる」(2.0%),「ややあてはまる」 (9.0%),「あまりあてはまらない」(14.0%),「全くあてはまらない」(75.0%) と,「とてもあてはまる」と「ややあてはまる」を足し合わせても(11.0%) と全体の 1 割程度しかない.「読書の感想を SNS で発信する」(N=300)に ついても,「とてもあてはまる」(2.0%),「ややあてはまる」(8.3%),「あま りあてはまらない」(15.7%),「全くあてはまらない」(74.0%)と,「とて もあてはまる」と「ややあてはまる」を足し合わせて(10.3%)と全体の 1 割程度しかない.似たような事例として,「読み聞かせを聴く(ラジオ, YouTube,ニコニコ動画,ドラマ CD,図書館など)」(N=300)は,全体 では,「とてもあてはまる」(3.3%),「ややあてはまる」(9.7%),「あまりあ  はい  いいえ 図 3 創作系ネットツール等をコミュニケーションメディアとして利用する割合(%)(N=53) 56.6% 43.4%

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てはまらない」(16.7%),「全くあてはまらない」(70.3%)と,「とてもあて はまる」と「ややあてはまる」を足し合わせて(13.0%)であった.また, SNS 利用者率と創作系ネットツール等をコミュニケーションメディアとし て利用している率が明らかに一致しないことからも,SNS は読書行為にお ける創作系ネットツールのコミュニケーションメディアとしての利用率の高 さにはあまり影響しないと考えられる.  比較対象となる紙媒体(ここでは,紙の書籍・マンガ・雑誌)の読書は, 読書会の利用が低い傾向にあったように,選書ツアーについても参加率が 低い傾向にある.「選書ツアーに参加する」(N=300)は,全体で,「とても あてはまる」(0.7%),「ややあてはまる」(4.0%),「あまりあてはまらない」 (15.7%),「全くあてはまらない」(79.7%)と,「とてもあてはまる」と「や やあてはまる」を足し合わせても,わずか(4.7%)しかない.データ上で は,最も典型的な読書方法は「自宅でじっくりと読む」(N=300)であり, 「とてもあてはまる」(27.0%),「ややあてはまる」(35.7%),「あまりあては まらない」(19.7%),「全くあてはまらない」(17.7%)であった.「自宅で じっくりと読む」の「とてもあてはまる」と「ややあてはまる」を足し合わ せると(62.7%)であり,紙媒体の読者は自宅で読む傾向が高い.  投書欄での意見交換(N=300)は,「とてもあてはまる」(1.7%)「ややあ てはまる」(3.0%),「あまりあてはまらない」(13.7%),「全くあてはまらな い」(81.7%)であり,「とてもあてはまる」と「ややあてはまる」を足し合 わせても(4.7%)しかない.現代社会では,投書欄はほとんど用いられてい ないことがわかる.「子ども(たち)に読み聞かせをする」(N=300)につい ては,全体では,「とてもあてはまる」(5.3%),「ややあてはまる」(9.7%), 「あまりあてはまらない」(17.7%),「全くあてはまらない」(67.3%)と,「と てもあてはまる」と「ややあてはまる」を足し合わせて(15.0%)しかない. これらのことから,「創作系ネットツール」が従来の紙媒体と比較して特異 なコミュニケーションメディアであることが読み取れる.  したがって,コミュニケーションメディアのひとつである「創作系ネット ツール」は利用者間の相互作用に利用される.言い換えれば,「創作系ネッ トツール」上の読書行為には読者や作者との相互交流が含まれると解釈でき

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る.また,「創作系ネットツール」上の作品の生産者は,特定の商業作家な どに限定されず,「創作系ネットツール」利用者の誰もが作家として参加可 能な生産・流通・蓄積の方法がとられている. 2. 2 読書行為における相互作用の流れ  では,読書行為における相互作用の流れは,どのような構造をしているの だろうか.まず,因子分析を行い,多変量解析を容易にする.注意点とし て,因子分析はそれ自体で理論仮説を検証するためのものではない.あくま で合成変数をつくるための手段として因子分析を行う.事前に,値の再割り 当てで,「創作系ネットツール」を利用していない人(=データ欠損値)を 「全くあてはまらない」に変換した.なぜなら,「創作系ネットツール」を利 用していない人は,作品を投稿していないからである.  読書行為を主因子法・Kaiser の正規化を伴うバリマック回転により因子 分析したところ,7 回の反復が必要とされ,5 回の反復で回転が収束し,3 つの因子に分かれた.第 1 因子は,読み聞かせを聞く・する,読書会・同 人誌即売会への参加,ファッション的な読書行為,SNS による投稿・発信, 本の創作行為などを,主体的・活動的に行う傾向から,「活動的読書行為」 と名付ける.第 2 因子は,家族や友人との語らい,旅行,知識の共有に関係 しているように見える.その親密さから,「家族的読書行為」と名付けるこ とにする.第 3 因子は作者情報や本の流行,作者について調べるなど,本に 関する情報探索行為から「本の情報探索行為」と名づけた.  次に,読書の場を主因子法・Kaiser の正規化を伴うバリマックス回転に より因子分析したところ,26 回の反復が必要とされ,3 回の反復で回転が収 束し,2 つの因子に分かれた.第 1 因子は,国会図書館,学校の図書館,通 勤通学時間(駅のホームなど),学校・会社内,レストランや喫茶店,書店, 自宅での作業しながらによる読書が含まれる.第 2 因子は,自宅でじっくり と読む,私立・公立図書館,床屋や美容院,歯医者などの待ち時間が含まれ る.場による区分というよりは,場でどのように読んでいるかの区分となっ ている.主成分分析でも同じような結果が得られた.第 1 因子は,勉学や実

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表 1 読書行為の回転後の因子行列7) 因子 1 2 3 同人誌即売会で販売・配布する .899 .150 .138 書店の情報を SNS に投稿する .896 .179 .175 同人誌即売会に参加する .884 .148 .160 投書欄で意見交換する .884 .194 .097 選書ツアーに参加する .840 .118 .131 二次創作や三次創作をする .804 .244 .134 読書会で特定の本について議論する .776 .171 .158 読書の感想を SNS で発信する .763 .233 .184 自分で本を書く .756 .153 .214 本の表紙を SNS に投稿する .742 .232 .200 本で得た知識を SNS で拡散する .713 .336 .168 ファッションとして本を読む .573 .333 .073 創作系ネットツールに投稿する (欠損値の再割り当て済) .570 .108 .087 読み聞かせを聴く .565 .271 .087 子ども(たち)に読み聞かせをする .440 .323 .097 本で得た知識を他人に話す .117 .787 .220 本の内容について家族や友達などと話し合う .155 .784 .197 家族や友人と回し読みする .269 .694 .124 実用的な情報を本から得る .101 .593 .297 趣味や娯楽について語り合う .314 .530 .235 本を読んで旅行に出かける .320 .524 .190 最新の流行を本で確認する .258 .465 .421 本の内容について検索する .165 .444 .746 作者について検索する .191 .423 .711 新刊情報を調べる .305 .341 .650

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務など,他の作業をしながら読書している「作業しながらの読書の場」と名 付けた8).第 2 因子は,第 1 因子と比較して,じっくりと本を読める環境に あることから,「集中した読書の場」と名付けた.  リサーチクエスチョンに答えるために,書籍,電子書籍,「創作系ネット ツール」のメディア間の比較を行う.まず,書籍の利用頻度を従属変数に, 独立変数を上記 5 つの合成変数とし,重回帰分析を行った.その結果,合成 表 2 読書の場の回転後の因子行列9) 因子 1 2 国会図書館で本を借りて読む .732 .108 学校の図書館で本を借りて読む .719 .113 通勤時間や通学時間などに読む .644 .167 学校内や会社内で勉強や仕事の合間に読む .602 .266 レストランや喫茶店で読む .545 .217 書店で読む .541 .296 自宅で他の作業をしながら読む .445 .370 自宅でじっくりと読む .004 .764 私立・公立図書館で本を借りて読む .260 .507 床屋や美容院,歯医者などの待ち時間に読む .299 .460 表 3 書籍利用頻度についての重回帰分析 モデル 非標準化係数 標準化係数 t 有意確率 従属変数:書籍利用頻度 B 標準誤差 ベータ 1 (定数) .917 .145 6.305 .000 活動的読書行為 -.028 .007 -.256 -3.777 .000 家族的読書行為 .034 .013 .189 2.617 .009 本の情報探索行為 .090 .023 .280 4.007 .000 作業しながらの読書の場 .027 .014 .133 1.997 .047 集中した読書の場 .093 .022 .259 4.176 .000

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変数「本の情報探索行為」が最も影響力の高い独立変数であった(標準化係 数β = .280,p < .001***)10).次いで,合成変数「集中した読書の場」が影響 力の高い独立変数であった(標準化係数β = .259,p < .001***).同様に,電 子書籍の利用頻度を従属変数として,独立変数を上記の合成変数として重回 帰分析を行った.その結果,合成変数「作業しながらの読書の場」が最も影 響力の高い独立変数であった(標準化係数β = .197,p < .05*).  では,「創作系ネットツール」はどうか.同じ手順で,「創作系ネットツー ル」の利用頻度を従属変数として,独立変数を上記 5 つの合成変数に設定 し,重回帰分析を行った.その結果,合成変数「活動的読書行為」が最も影 響力の高い独立変数であった(標準化係数β = .280,p < .001***).同様に, 電子書籍の利用頻度を従属変数として,独立変数を上記の合成変数として重 回帰分析を行った.その結果,合成変数「活動的読書行為」が最も影響力の 高い独立変数であった(標準化係数β = .414,p < .001***).  同様に,「創作系ネットツール」におけるコミュニケーション行為を従属 変数とし,独立変数を上記 5 つの合成変数に設定し,重回帰分析を行った. その結果,合成変数「活動的読書行為」が最も影響力の高い独立変数であっ た(標準化係数β =.478,p < .001***)11) 表 4 電子書籍利用頻度についての重回帰分析 モデル 非標準化係数 標準化係数 t 有意確率 従属変数:電子書籍利用頻度 B 標準誤差 ベータ 1 (定数) .731 .158 4.626 .000 活動的読書行為 .010 .008 .103 1.304 .193 家族的読書行為 .028 .014 .166 1.974 .049 本の情報探索行為 .012 .024 .040 0.498 .619 作業しながらの読書の場 .038 .015 .197 2.555 .011 集中した読書の場 -.039 .024 -.116 -1.614 .108

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 まとめると,書籍は作者や新刊情報などを調べる「本の情報探索行為」, および,自宅や図書館,待ち時間などの「集中した読書の場」から利用され ている傾向にある.また,「電子書籍」は,「作業しながらの読書の場」か ら,すなわち,何か作業をするとき,例えば勉強や研究をするときの用途 として用いられている.それに対して,「創作系ネットツール」におけるコ ミュニケーション行為は,読書行為の中でいえば,特に「活動的読書行為」 から生まれる傾向が高い.言い換えれば,「創作系ネットツール」の利用か ら「活動的読書行為」が生まれる傾向が高い.これらのことから,「創作系 ネットツール」の利用者は,従来の紙媒体・「電子書籍」の利用者と比較し 表 5 創作系ネットツール利用頻度についての重回帰分析 モデル 非標準化係数 標準化係数 t 有意確率 従属変数: 創作系ネットツール 利用頻度 B 標準誤差 ベータ 1 (定数) .504 .115 4.370 .000 活動的読書行為 .033 .006 .414 5.656 .000 家族的読書行為 .001 .010 .011 0.144 .886 本の情報探索行為 .028 .018 .118 1.555 .121 作業しながらの読書の場 .010 .011 .069 0.966 .335 集中した読書の場 -.029 .018 -.112 -1.669 .096 表 6 創作系ネットツール上のコミュニケーション行為についての重回帰分析 モデル 非標準化係数 標準化係数 t 有意確率 従属変数: 創作系ネットツールにお けるコミュニケーション 行為(再割り当て済) B 標準誤差 ベータ 1 (定数) .788 .051 15.550 .000 活動的読書行為 .016 .003 .478 6.323 .000 家族的読書行為 -.001 .004 -.022 -0.275 .783 本の情報探索行為 -.002 .008 -.018 -0.235 .814 作業しながらの読書の場 -.001 .005 -.018 -0.249 .804 集中した読書の場 .001 .008 .007 0.097 .923

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て,読書において主体的,活動的なため,読者間の相互行為が活発であると 推測される.

3. 結論にかえて

 以上のことから,理論仮説 1 と理論仮説 2 は支持された.しかし,(1)他 の変数で分析した際に,別の因果関係が示されるかどうか検証できているか が不明である.また,(2)本研究では,前提条件として,紙媒体の「書物」 が「電子書籍」に代替され,新たに,読書行為における相互作用の場である 「創作系ネットツール」が登場,普及しはじめ,コミュニケーションメディ アの性質が変化したと考えている.これについては,過去のコミュニケー ションメディアの事例を客観的に分析し,現在の性質と比較・検討しなけれ ばならない.これらの点で,本検証は不十分であるため,研究ノートに位置 づけた.  分析の結果から,「創作系ネットツール」利用者は,男性が少し多く,20 代以下を中心に幅広い年代層で利用されている傾向にある.探索的分析の 結果からは,次のようなことがいえる.既存の紙媒体(ここでは,書籍・ 雑誌・マンガ)の読者は,「本の情報探索行為」や「集中した読書の場」で じっくりと読書する傾向にある.それに対して,「電子書籍」の読者は,「作 業しながらの読書の場」で読書する傾向が見られた.紙媒体が集中して読 むものであるのに対して,「電子書籍」はスマートフォンや電子タブレット を用いて手軽に読めるメディア性質を持つと考えられる.そして,「創作系 ネットツール」利用者は,「活動的読書行為」をする傾向にあることが示さ れた.すなわち,「書籍」・「電子書籍」・「創作系ネットツール」の事例のう ち,「創作系ネットツール」において,コミュニケーションメディアのある 種の現代の性質0 0 0 0 0が示された.なぜなら,作者→読者のコミュニケーション は,どのような形であれ読書概念の前提条件であり,読者→作者のフィード バック,または,読者−読者間のコミュニケーションは,「活動的読書行為」 という行為の形式で,自発的な相互作用が示されているからである.まとめ ると,現代の「創作系ネットツール」は,相互に自発的なコミュニケーショ

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ンをとる場として利用されている傾向にあり,読者−作者間,または,読者 −読者の関係性は,対話的であると考えられる.  また,分析結果から,次のような読者論に関する推論を立てることができ る.(1)生産・流通・蓄積の方法が変化し,時間的空間的差異が縮小され, 誰でもどこでも相互に伝達可能な読書用の端末があらわれ,電子媒体を介し た読書が 20 代以下の若年層の間で広まった.(2)あらゆる読者は時にして 作家となり,コミュニケーション形態は,一方向的な情報伝達から双方向的 な情報伝達に代替された,あるいは,代替されつつある.(3)「創作系ネッ トツール」は,従来型の孤独な読書(読者 1 人で完結する対話のない読書) とは異なり,時間と空間の差異を短縮することで,従来の読書会のような複 数人での読書をインターネット上で促進した(例えば,読者=作者間での感 想欄における相互のやりとりなどが挙げられる).  したがって,従来の紙の本とは異なり,「創作系ネットツール」は,人と 人との相互作用を促進する新しい読書形態であり,また,「活動的読書行為」 を促進する点で,読書行為における新たな社会的意義がある,と考えられ る.  本研究は,先に示したとおり,コミュニケーションメディアを介した読書 行為を,過去の事例と現代の事例とを分析した上で比較し,より綿密な分析 を重ねることで,コミュニケーションメディアの変質の流れを確信的なもの にすると考えられる.これについては,今後の課題とする. 注 1) ここでいう「自発的」な読書というのは,学校教育における教科書や参考書等以外で, 自ら紙の本を選択して読む意識的な行為を指す. 2) 文化庁「平成 30 年度『国語に関する世論調査』の概要」 http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/ r1393038_02.pdf(2019 年 11 月 5 日アクセス).;補足すると,年代別で「1 か月に 1 冊も 本を読まない」の回答率を見ると,過去いずれの調査においても,40 代∼ 70 歳以上にか けて本を読まなくなる傾向にある. 3) 「創作系ネットツール」は,2019 年 5 月 11 日における日本出版学会のワークショップ で示された操作的な概念である.ほかには「Line」や「アルファポリス」などが含まれ

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る.「創作系ネットツール」の登場以前には,二次創作を中心とした個人のウェブサイト が数え切れないほどあることが推測されるが,大半はすでに削除されており,未だに研究 されていないという(日本出版学会ワークショップ,磯部敦・中村健・中川裕美・山中智 省(2019 年 5 月 11 日)「デジタル時代にどう向き合うか?―出版史研究の新たな方法と 課題」,日本出版学会調査研究委員会編『日本出版学会春季研究発表会予稿集』,日本出版 学会調査研究委員会:pp.32-33.所収;より参照). 4) 本書が書かれた頃,すなわち,1995-1996 年頃は,インターネットが普及し始めた頃で ある(Windows95 など).前提として,Thompson はグーテンベルクの「印刷革命」時代 から一般家庭にインターネットが普及しはじめた時代までを対象としている. 5) 調査対象者は,本を読む・読まないにかかわらず,日本人の有権者 18 歳以上の男女 300 人である.調査期間は,2019 年 7 月 22 日∼ 2019 年 7 月 26 日(選挙の調査と並行して行 うため)である.標本抽出法は,全国調査(北海道から沖縄まで),無作為抽出法(層化 抽出法・層化多段抽出法)を用いる.調査実施方法は,モニターを使用したネットオンラ イン調査を行う. 6) 男女比(N=300)は,「男性」(49.0%),「女性」(51.0%)である.年代(N=300)は, 「20 代 以 下 」(15.0%),「30 代 」(16.3%),「40 代 」(19.0%),「50 代 」(16.0%),「60 代 以 上」(33.7%)であった.最終学歴は,「中学校(旧制小学校)」(22.3%),「高等学校(旧 制中学校・旧制高女)」(12.3%),「専門学校」(4.3%),「高等専門学校」(12.0%),「短期 大学」(12/0%),「大学(旧制高専・旧制高校)」(41.7%),「大学院以上」(6.0%),「その 他」(0.3%)である.職業(N=300)は,「会社員」(35.0%),「会社役員」(3.0%),「教職 員・研究者」(2.7%),「公務員(教職員・研究者以外)」(2.7%),「自営業」(3.7%),「専 門職(医師・弁護士など)」(3.0%),「自由業」(1.3%),「学生」(2.3%),「派遣社員・パー ト・アルバイト」(15.7%),「専業主婦・主夫」(17.7%),「フリーター」(2.0%),「無職」 (10.0%),「その他」(1.0%)と,会社員が最も多く,次いで専業主婦・主夫,派遣社員・ パート・アルバイト,無職が多い.エリアは,「北海道東北ブロック」(11.7%),「関東圏 ブロック」(34.0%),「中部北信越ブロック」(17.0%),「関西圏ブロック」(17.3%),中四 国ブロック(8.7%),「九州沖縄ブロック」(11.3%)であった. 7) 因子抽出法:主因子法;回転法:Kaiser の正規化を伴うバリマックス法;5 回の反復で 回転が収束した. 8) 経験上,国会図書館や学校図書館は調べ物のために時間を掛けて向かうところだと考え られる.それに対して,私立・公立図書館は,地域差はあるが,児童書や小説などが豊富 にあり,趣味や娯楽のために集中して読書できる場と考えられる. 9) 因子抽出法:主因子法;回転法:Kaiser の正規化を伴うバリマックス法;3 回の反復で 回転が収束した. 10) 以下,* は 95% 水準有意確率(p < .05),** は 99% 水準有意確率(p < .01),*** は 99.9% 水準有意確率(p < .001)を示す. 11) ほか,合成変数の活動的読書行為を従属変数として,独立変数を各種メディア利用頻度

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として,重回帰分析を行った.その結果,合成変数「創作系ネットツール」の利用頻度が 最も影響力の高い独立変数であった(標準化係数β = .399,p < .001***).

参考文献

福間良明(2017)『働く青年と教養の戦後史―「人生雑誌」と読者のゆくえ』,筑摩書房 Innis, H. A. (1951) The Bias of Communication, University of Toronto Press.; 久保秀幹訳(1987)

『メディアの文明史―コミュニケーションの傾向性とその循環』,新曜社 磯部敦・中村健・中川裕美・山中智省(2019)「デジタル時代にどう向き合うか?―出版史 研究の新たな方法と課題」,日本出版学会調査研究委員会編『日本出版学会春季研究発表会 予稿集』,日本出版学会調査研究委員会:pp.32-33 香内三郎(2004)『読者の誕生:活字文化はどのようにして定着したか』,晶文社 柄谷行人(1988)『日本近代文学の起源』,講談社文芸文庫 松野修(1997)『近代日本の公民教育』,名古屋大学出版会

McLuhan, M. (1962) THE GUTENBERG GALAXY: The Making of Typographic Man, University of Toronto Press. 森常治訳(1986)『グーテンベルクの銀河系―活字人間の形成』,みす ず書房

永嶺重敏(2001)『モダン都市の読書空間』,日本エディタースクール出版部 仲川秀樹(2002)『サブカルチャー社会学』,学陽書房

Ross, C. S. (2006) The Company of Readers, Reading Matters: What the Research Reveals about

Reading, Libraries, and Community, Westport, Connecticut, Libraries Unlimited, originally published by Libraries Unlimited, an imprint of ABC-CLIO, LLC, Santa Barbara, CA, USA;川崎佳代子・川崎良孝訳(2009)「読者」『読書と読者』,日本図書館協会:pp.3-82 竹内洋(1999)『〈日本の近代 12〉学歴貴族の栄光と挫折』,中央公論新社〈vol.12〉

Thompson, J. B. (1995) The Media and Modernity: A social theory of the media, Polity Press, in association with Blackwell Publications Ltd., UK

インターネット 文化庁「平成 30 年度『国語に関する世論調査』の概要」 http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/ r1393038_02.pdf(2019 年 11 月 5 日アクセス) 家の光ネット「全国農村読書調査|文化活動|一般社団法人家の光協会」 http://www.ienohikari.net/bunka/research.html(2019 年 4 月 16 日アクセス)

表 1 読書行為の回転後の因子行列 7)   因子   1 2 3 同人誌即売会で販売・配布する .899 .150 .138 書店の情報を SNS に投稿する .896 .179 .175 同人誌即売会に参加する .884 .148 .160 投書欄で意見交換する .884 .194 .097 選書ツアーに参加する .840 .118 .131 二次創作や三次創作をする .804 .244 .134 読書会で特定の本について議論する .776 .171 .158 読書の感想を SNS で発信する .763

参照

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