標 準 化 研 究 、ol.7No.12009.3
リチウムイオン2次電池に見られる技術開発と事業経営
Research and Development observed in Lithium Ion Secondary Batteryand its Business Management
正本順三
(福井工業大学)
Junzo MASAMOTO (Fukui University of Technology)
要 約 携 帯電話 、ノー トパ ソコンなどは現在社会 の必需品である。これ らの携 帯機 器 類 の電 源にリチ ウムイオン2次電 池が用いられている。リチウムイオン2次 電池 は 旭化成 の吉野彰 により発 明された 日本発 の技 術である。本 論文 では 、リチ ウムイ オ ン2次 電 池の発 明の経緯 、事業 開発 、事業展 開 につい て論 じることとす る。リ チウムイオン2次 電池 は、携帯機 器の電源 にとどまらず 、ハ イブ リッドカー 、電気 自動車 などの電源 としても、大きな期待が寄せ られている。日本で なされた技術 開発が 国際競争 の場でい かにして競争 優位 を確 保す るか がわが 国の最 大の課 題 と思われる。 キ ー ワー ド 研 究 開 発 、技 術 開 発 、リチ ウム イオ ン2次 電 池 、携 帯 電 話 、ノー トパ ソコン、ハ イ ブ リッドカ ー 、電 気 自動 車 1.は じめ に 著 者 は 、化 学 企 業 で あ る旭 化 成 で 長 年 技 術 開発 ・事 業 開 発 に 取 り組 ん で きた。 著 者 の 属 して いた 化 学 産 業 は 、素 材 産 業 として 、組 み 立 て 産 業 で ある 自動 車 、電 気 ・電 子 産 業 に材 料 を供 給 す る 中 問 的 な位 置 づ け にあ った 。企 業 の 発 展 に は 、 伸 び る領 域 へ の 進 出 とい うもの の 必 要 性を著 者 は長 年 身 に しみ て感 じてきた。 現 在 社 会 に お い て 世界 で 最 も伸 長 の 著 しいもの として 携 帯 電 話 が あ げ られ る。 携 帯 電 話 は 、小 型 で 軽 量 で 容 量 の 高 い リチ ウムイオ ン2次 電 池(LIB:LithiumIon SecondaryBattαry)が あって は じめて 普 及 した もの で ある。同 じく、ノー トパ ソコン も、小 型 で 軽 量 で容 量 の 高 いLIBが あっ て普 及 した もの で ある。最 近 は 、自動 車 産 業 を 環 境 面 か ら取 り上 げ 、ハ イブ リッドカ ー 、電 気 自動 車 な どの 進 展 が 期 待 さ れ て い る。これ らの 自動 車 産 業 の 発 展 の キ ー にな るもの として 、大 容 量 のLIBが 期 待 され て い る。
標 準 化 研 究V〔}1.7No.12009.3 LIBは 旭 化 成 の 吉 野 彰 に より世 界 で 最 初 に発 明され た 日本 発 の 技 術 に 基 づ く 製 品 で ある1)。 本 稿 で は 、LIBの 発 明 、技 術 開 発 、事 業 開 発 、事 業 展 開 に つ い て 述 べ 、今 後 のインパ クトにつ い て論 じることとす る。また 、LIBを め ぐる国 際 競 争 につ い ても 述 べ て い くこととす る。 日本 で なされ た技 術 開 発 が 国際 競 争 の 場 で い か にして競 争 優位 を確 保 す るか が 重 要 であ ることを論 じたい 。 2.ロBの 発 明 電 池 の 世界 で1回 限 りの 使 い 捨 て 電 池 の ことを1次 電 池 という。そ れ に対 して 、 充電 して 再 使 用 可 能 な 電 池 を2次 電 池 とい う。現 在 で は 、省 資源 、省 エ ネ ル ギ ー の 観 点 か ら2次 電 池 の 使 用 が 大 きい。2007年 で は 、わ が 国 の 電 池 の 生 産 高 は 約8,000億 円 で あるが そ の うち の80%で は2次 電 池 で あり、また 、2次 電 池 の う ち でLIBの 占め る割 合 は50%で ある。 図1は 、各 種2次 電 池 の 世 界 生 産 量 の推 示 す 図1各 種 二 次 電 池 の 世 界 生 産 量 の 推 移
Nicd:ニ ッケ ル カ ドミウム 電 池 、NiMH:ニ ッケ ル 水 素 電 池 、LIB:リチ ウム イオ ン ニ 次 電 池.
LIBは 、1991年 に 日本 で 商 品化 され て 以 来 、パ ソコン 、携 帯 電 話 、融]工 具 な どの 携 帯 機 器の 霜源 として 全 世 界 に 普 及 した。2008年 の 生 産 数 量 は 、世 界 で 30億 個 を超 え 、金 額 で は1兆 円 に達 して い ると見 られ て い る2)。また 、近 い 将 来 は3兆 円規 模 に なると予想 され て いる2)。
薬票tt#イヒ研 究 、ol7Nol200q3 (LICoO2)な ど の遷 移 金属 酸 化 物 を正 極 とし、有 機 電 解 孜 、ポ リエ チ レン微 多 孔 膜 な どか らな るセ パ レタなどを 主 要 な部 材 としてい る。 図2に 小 型 二次 電 池(円 筒 型 電 池)の エ ネル ギ ー 密 度 の 比 較 を示 す 。 図2ノ 」型 二 次 電 池 の エ ネ ル ギ ー 密 度 の 比 蟹) LlBリ チ ウムイオ ン電 池 、NiMHニ ッケル 水 素 電 池 、NICdニ ッケ ル カ ドミウム 電 池. LIBは 、他 の 二 次 電 池(ニ ッケル/カ ドミウム 、ニ ッケル/水 素)と比 べ て 、エ ネ ル キ ー 密 度 が 高 い ことが 分 か る。 図3に 各 種 二 次電 池 の エ ネル ギ ー 密 度 の 上 昇 値 を示 した 。 図3各 種 二 次 電 池 の エ ネル ギー 密 度 の 上 昇 値'1)
標 準 化 研 究VoL7N(1.12009.3 各 電 池 とも、エ ネ ル ギ ー 密 度 は 、上 昇 して い るが 、特 に 、リチ ウムイオ ンニ 次 電 池 の エ ネ ル ギ ー 密 度 に つ い て 見 ると、技 術 開 発 の 成 果 として 、年 々 エ ネル ギ ー 密 度 が 上 昇 してことが わ か る。これ は 、市 場 の ニ ー ズが 、より高 エ ネ ル ギ ー 密 度 の リチ ウムイオ ンニ 次 電 池 を 要 求す る結 果 で ある。 3.UBは どの ように して 発 明 され た か LIBの 原 型 は旭 化 成 の 吉 野 らによりな され た。 吉 野 らの 研 究 は 、2000年 に ノー ベ ル 化 学 賞 を受 賞 した 白川 英 樹 博 士 の 導 電 性 プ ラスチ ックの 研 究 に さか の ぼ る。白川 らが これ まで 黒 色 の 粉 末 しか 得 られ な か ったポ リア セチ レンに 銀 色 の フィル ム が得 られ ることを発 表 した の が1974年 で ある5)。さらにMacDi釦mid,Heergerら との 共 同研 究 により、ポ リアセ チ レン に ドー ピング の 操 作 を行 うとこれ まで 電 気 を通 さな い とされ て い た プ ラスチ ックに導 電 性 を持 たせ ることを 発 表 した の が 、1977で あ る6)。そ の あ と、白川 博 士 とノー ベ ル 賞 の 共 同受 賞者 で あるMacDiatmid,Heergerら に より、ポ リアセ チ レンが 二 次 電 池 の 正 極 団料 負 極 材 料 になる論 文発 表 が され た の が1981年 で ある7)。 吉 野 らは 、そ の 研 究 を 受 け継 い で 、導 電性 ポ リアセ チ レン の 基 礎 的 研 究 を始 め た 。特 に 、ポ リアセ チ レン を負 極 材 料 として 、使 用 す る研究 を 始 め 、ポ リアセ チ レンが 負 極 材料 として優 れ て い ることを 見 いだ した。しか しな が ら、適 当な正 極 材 料 は 、す ぐに は 見つ か らな か った。 吉 野 らは 、GoOdenoghら の 発 表 して い た コバ ル ト酸 リチ ウム(LiCoO2)を 正 極 と し、金 属 リチ ウムを負 極 とす る論 文8)を 目に した 。そ の 時 、吉 野 は ポ リアセ チ レン 負 極 一LiCoO,正 極 の 組 み 合 わ せ を 直感 として とらえ た。ここに 、現 在 の リチ ウム イオ ンニ 次 電 池 の 原 型 が で きあ が た。そ れ は 、1983年 の ことで あった9)。まさに 、 幸 運 の 女神 は 、準 備 したもの に のみ ほ ほ えん だ 。 しか しな が らポ リアセ チ レンは 、化 学 安 定 性に 欠 け ること、密 度 が 低 い 点な ど の理 由 で 負 極 に 用 い る研 究 は 成 功 しなか った 。しか し、π電 子化 学 とい う観 点 か ら種 々 の炭 素 材 料 が 検 討 され 、気 相 成 長 により得 られ た 炭 素 繊 維 が 負 極 材 料 と して優 れ て い ることが 見 い だ され た。ここに 炭 素 材 料魚 極 一LiCoO2正 極 なる現 在 の リチ ウムイオ ン2次 電 池 の 基 本 特 許 が誕 生 したこととな るlo)。 このLIB負 極 用 炭 素 材 の構 造 設 計 に 際 して 、198ユ 年 に 日本 人 で 最 初 の ノー一 ベ ル 化 学 賞 を受 賞 した福 井 謙 一博 士 のフ ロンテ ィア 電 子 論 が 役 立 って い る。フロ ンテ ィア電 子 論 の 理 論 的 支 持 力 が 重 要 な役 割 を果 た す とともに 、新 しい 炭 素 化 学 を生 む 引 き金 とな り、そ の 後 の負 極 炭 素 材 の 改 良 に大 い に貢 献 した。 そ の 後 、旭 化 成 はLIBの 工業 化 の 研 究を積 極 的 に進 め た。工 業 化 に つ いて は 、
標 準 化 研 究Yo1.7N〔 〕.12009.3 電 池 の 市場 に 詳 しい 東 芝 と組 み 、ATB(旭 一 東 芝 バ ッテ リー)を 発 足 させ た 。研 究 を 工 業 化 す る際 に 、自社 単 独 とす べ きか 市場 に詳 しい パ ー トナ ー と組 む べ き か は 経 営 の 判 断 とな るが 、工 業 化 に 際 して 、パ ー トナ ー と組 む とい うことは 工 業 化 を 容 易 にす る選 択 肢 で ある。死 の 谷(DeathValley)を 乗 り切 る有 効 な 方 法 の1 つ で ある。 また 、吉 野 は 、LIBの 世 界 で最 初 の 原 型 を作 ったことにより、1998年 に 日本 化 学 会 の 化 学 技 術 賞 を受 賞 した 。さらに 、1999年 に 米 国 電 気 化 学 会 か らBattety DivisionTechnologyAwardを 受 賞 し、2004年 に は 紫綬 褒 章 を受 章 して いる。ま た 、近 年 は ノー ベ ル 賞候 補 にもあ げ られ て いる。LIBが もた らした インパ クトの 大 きさを考 えるとノー ベ ル 賞 候 補 にあ げ られ て しか るべ きと思 わ れ る。 4.UBに 見 る旭 化 成 の 特 許 戦 略 吉 野 らの 研 究 に 基 づ く特 許 に は 、1986年 出願 され た 正 極 にコバ ル ト酸 リチ ウ ム(liCoO2)、 負 極 に炭 素 を用 い るLIBの 基 本発 明が あるtO)。基 本 特 許 以 外 に 関 所 特 許 と呼 ば れ11)、LIBの 商 品 化 に 当 た り、どうして も通 らな け れ ば な らな い 特 許 が ある。例 え ば 、「LIBの 正 極 集 電 体 に アル ミ箔 」を用 い る特 許2,128,922 号 、セ パ レー タの 特 許2,632206号 も関 所 特 許 に該 当す る。これ らは 、旭 化 成 の 知 財 戦 略 の 一 環 を担 ってお り、収 益 に 貢 献 して い る。 5.リ チ ウ ム イオ ン 電 池 の 用 途 ・マ ー ケ ット 図4は リチ ウムイオ ン2次 電 池 の 用 途 別 市場 規 模 を示 す 。 携 帯 電 話 とノー トパ ソコン の 市 場 が 非 常 に 大 きいことが わ か る。図5にLIBの 最
季票4tイヒ研 究Vo17N〔}12009。3 大の用途である携帯電 話の 市場の推移 を示 した。 携帯電話 の出荷台数 は什 々増加している。図6に 携帯電話の加入者 数の推移 を示 した。 図6世 界 の 携 帯 電 話 力11入者 数 の 推 移12-14) rl"UWorldTeleCommunLcaUon/ICTIndicators(WTI)databaSe. 2008年 末 で 、世 界 の携 帯 電話 加 入者 が40億 人 を超 え たもの と見 な され て い る。携 帯 電 話 は 現 在 社 会 で 地 球 上 で最 もインパ クトの 大 きい もの と見 られ る。この ことは 、ノ」・型 軽 量 のLIBが あ っては じめ て可 能 とな った ことで ある。 また 、パ ソコン 市場 の 推 移 を 図6に 示 した。2007年 に は 、パ ソコン の 出 荷 台 数 は 約2億7000万 台 で あった 。3億 台 を超 えるの も間 近 で あると予想 され て い る。 パ ソコン 出荷 台数 の うち 、ノー トパ ソコンの 占め る比 率 は 年 々 増 加 して いる。
標 準 化 研 究VoL7No.12009.3 図7世 界 の パ ソコンの 出荷 動 向の 推 移15) 図8は 、民 生 用LIBの 需 要(個 数)推 移 を 示 した 。携 帯 電 話 、ノー トパ ソコン の 比 率 が 高 い ことが わ か る。 図8民 生 用LIBの 需 要(個 数)推 移 (出所 所)IT総 研07Q4調 査. 6.自 動 車 産 業 分 野 へ の 適 用 現 在 、世 界 の 自動 車 の 生 産 台 数 は年 問 約7,000万 台 で ある。地 球 環 境 保 全 、 省 エ ネル ギ ー の 観 点 か らハ イブ リッド自動 車 お よび 電 気 自動 車 が 自動 車 産 業 に お い て 重 要 な位 置 づ け を 占め るもの と思 わ れ る。また 、電 池 もこれ まで の ニ ッケ ル 水 素 電 池 か ら小 型 で 軽 量 なLIBに シ フ トして 行 くことが 確 実視 され 、世 界 の 自 動 車 メー カ ー 、電 池 メー カー が 自動 車 用 のLIBの 開 発 に しの ぎを けず って い る。
標 準 化 研 究Vol.7No.12009.3 トヨタ 自動 車 が1997年 に 、世 界 で初 め てハ イブ リッド車 「プ リウスを発 売 してか ら10年 余 りが 経 過 した。プ リウス の 累 計 販 売 台 数 は2008年4.月 末 時 点 で100万 台 を突 破 した。ミニ バ ン 「エ ステ ィマ 」や 高級 車 「レクサ ス」な ど一 般 車 を含 め ると2 008年5,月 末 のll寺点 で 累 計150万 台 を超 えた。当初 、燃 料 電 池 車 や 電 気 自動 車 へ の 「つ な ぎ 」と見 られ た ハ イブ リッド車 だ が 、技術の進化 や 量産化 によるコスト ダ ウンで 普 及 が加 速 し、本 命 の 地 位 は 揺 るが ない もの となって い る16) 図9は 、ハ イブ リソド車 の 市場 規模 の 予 測 を示 した もの で ある。 図9ハ イブ リッド車の 市場 規 模 の 予 測7) (出所)JPモ ル ガ ン証 券. 2018年 に は 、世 界 で の ハ イブ リッド自動 車の 市 場 規 模 は1,000万 台 近 いも の にな ると予 想 され て い る。また 、LIBを 搭 載 した 電 気 自動 車も2010年 に は 登 場 す ることが 伝 え られ て い る。富 士 キメラ総 研 の 推 定 によれ ば 、そ の 市 場 規 模 は ハ イブ リッド車 よりは か な り小 さいもの の(約10分 の1)2010年 に5万 台 、2011年 に10万 台 、2012年 に20万 台 、2013年 に30万 台 の 予 想 が な され て い る18)。 7.UBの 今 後 の 市 場 、お よび1」Bを め ぐる動 き LIBの 市 場 の 伸 び に つ い て触 れ て お こう。現 在 、LIBは 世 界 の 人 々 に 携 帯 電 話 、ノー トパ ソコン 、デ ジタル カメラなど身 近 な ところで 恩 恵 を 与 えて い る。 今 後 の 市 場 で 大 きく期 待 され てい るの が 自動 車分 野 で あ る。 図10は 、LIBの 用 途 別 市 場 規 模 の 予 測 を示 した もの で ある。2008年 で は 、市 場 規模 は1兆 円 を超 えて い るもの とみ られ て いるる2)。2009年 は 、若 干2008年 よりも市 場 は 低 下 す るが 、20ユ0年 以 降 はjl頂調 に 成 長 す ることが 期 待 され て い
標 準 イヒ研 究Vol.7No.12009.3 る 。 図10LIBの 用 途 別 市 場規 模 の 予 測2) (出 所)イ ンフォメー ションテ クノロジー 総 合研 究 所. 現 在 最 大 の 市場 で ある携 帯 電 話 分 野 は 、今 後 は 金 額 的 に は 低 下 す ると予 想 さ れ て い る。そ の 代 わ りにパ ソコン 分 野 が 徐 々 に増 大 す る。今 後 最 大 の 大 きな 市 場 と見 込 まれ るの は 自動 車分 野 で あ る。2016年 に は 、自動 車 分 野 でLIBの 市場 は1兆 円 を超 え ることが 予 想 され てい る。2017年 に は 、LIBは3兆 円近 い 市 場 に な るもの と見 込 まれ て い る2)。 この ようにLIBが 自動 車 分 野 で伸 び ることを 見 込 ん で 業 界 の 動 きも活 発 で あ る。 例 え ば 、中 国 で のLIBの メー カ ー で あ り、か つ 自動 車メー カー で あるBYDは20 08年 末 に プ ラグインハ イブ リッド車 の 商 品 化 に 成 功 した と発表 して い る19}。同 社 のプ ラグインハ イブ リッド車 「F3DM」 は電 気 自動 車 だ けの 走行 とガ ソリンエ ン ジ ン を併 用 す る2種 類 の 走 行 が 可能 と発 表 して い る。車 両 専 用 の 電 源 を使 用 す れ ば 、約15分 で80%充 電 が で き、家 庭 用 で は9時 間 で 充 電 が 完 了。2,000回 充 電 しても、電 池 の 容 量 は 約80%確 保 し、実 質 的 に4,000回 の 充 電 に 耐 え られ る と発 表 した 】9)。 また 、自動 車 分 野 で は 、LIBを め ぐる提 携 関係 も盛 ん で あ る。ハ イブ リッドカ ー や 電 気 自動 車 の 要 、LIBの 量 産 が2009年 か ら一 斉 に 始 まる。ガ ソリン エ ンジ ン を動 力 源 として きた 自動 車100年 の 歴 史 に 新 た な 競 争1ペ ー ジ が 加 わ る。車 載 用LIBの 要 素 技 術 は 安 全1生や コスト競 争 力 な どに 一 長 一 短 が あ り、車 載 用LIBの 本 命 は ま だ 定 まっ て い な い 。しか し、今 後 の 低 炭 素 社 会 で 自動 車 メー カ ー が 生 き残 るた め に投 資 へ のた め らい は 許 され な い。 図11に 自動 車 用LIBを めぐる提 携 関係 を示す 。
標 準 化 研 究Vol.7No.12009.3 図11自 動 車 用LIBを め ぐる提 携 関係20) 例 え ば 、日産 はNECと 共 同 で2011年 以 降 、LIB量 産 に1,000億 円超 を投 資 す る方 針 で ある。世 界 の ハ イブ リッド車 市場 で約8割 の シ ェア を握 る トヨタ 自動 車 は パ ナ ソニ ックと共 同 出 資 会 社 「パ ナ ソニ ックEVエ ナ ジ ー 」を通 じて2010年 を め ど にLIBを 量 産 す る計 画 であ る。海 外メー カー との提 携 も相 次 い で い る。独 フ ォル クスワー ゲン(VW)は 三 洋 電 機 とLIBシ ステ ムの 共 同 開 発 に 着 手 した。三 菱 自動 車 は 仏 プ ジョー シ トロエ ン グル ー プ(PSA)と 電 気 自動 車 で 技 術 提 携 す るこ とで 合 意 して いる。電 気 自動 車 で 先 行 す る三 菱 自動 車 は 、電 池 を 手 が け るジー エ ス ・ユ ア サ コー ポ レー ション と三 菱 商事 の3社 共 同 出 資 で 「リチ ウムエ ナ ジ ー ジ ャパ ン 」を2007年 に 設 立 し、2009年 春 か ら大 容 量LIBを 量産 す る。現 在 の 自動 車 業 界 の 変 化 は 、蓄 電 池 の技 術 を持 つ 企 業 や 技 術 者 に とって は 「100年 に 一 度
標 準 化 研 究Vo1,7N〔 〕.12009.3 の 好 機 」で あ る20・21)。 8.UBの 世 界 市 場 で の 競 争 LIBの 世 界 市場 の様 子 に触 れ て お こう。LIBは 、吉 野 らに より発 明 され た 日本 発 の 技 術 で ある。2000年 に は 、日本 のLIBの 世 界 シェア は94%を 占め て い た。 しか しな が ら、2005年 を 見 て み ると、日本 で は 東 芝 が リチ ウムイオ ン電 池 事 業 か ら撤 退 を し、この 間 に 韓 国 サ ムス ンSDl、LG化 学 の躍 進 、中 国 のBYD、 天 津 力 神 な どが 伸 び た。2005に は 世 界 シェアの57%に 後 退 したD。 図12は リチ ウムイオ ン ニ 次電 池 の 国別 シ ェアの 推 移 を示 した 。 図12リ チ ウムイオ ンニ 次 電 池 の 国別 シェア の推 移22) (出所)IT総 研. 2000年 まで は 、日本 は 、世 界 の 中 で 圧倒 的 な シェア を確 保 して い た が 、200 1年 以 降 、韓 国 、中 国 、台 湾 な どの 進 出が 著 しい ことが わ か る。リチ ウム イオ ンニ 次電 池 に お い ても、半 導 体 、液 晶な どと同様 に 日本 の シ ェア の 低 下 が 見 られ る。 9.お わ りに 旭 化 成 で行 わ れ た 吉 野 らによるLIBの 開発 お よび イノベ ー シ ョンに つ な が る研・ 究 開 発 の 要 因 に つ い て 述 べ た。LIBの 発 明 は 、ノー ベ ル 賞 の 受 賞 につ な が ると 見 なされ て い る 日本 発 の 技 術 で ある。 旭 化 成 はLIBに つ い て 、世 界 で 最 初 の 発 明 を行 った。しか しな が ら、商 業 化 に 際 して は 、電 池 市場 に 詳 しい 東 芝 とのパ ー トナ ー シップ を組 み 、合 弁 会 社ATバ ッテ リー を設 立 した。合 弁 会 社 の 設 立 は 、研 究 と事 業 化 の 問 に 障 壁 として存 在 す る死 の 谷(Deathvalley)を クリアす るひ とつ の 方 法 で ある。しか しな が ら、現 在 、
標 準 化 研 究VoL7No.12009.3 旭 化 成 は 、ATバ ッテ リー か ら資本 を引 き上 げ た 。これ は 、電 池 ビジ ネ ス が 旭 化 成 の 得 意 分 野 で な い との経 営判 断 に 基 づ くもの で ある。また 、東 芝 もLIBの 市 場 か ら撤 退 した。これ は 、市 場 で の 競 争 の 激 化 の た め 、東 芝 で の 経 営 資 源 の 投 入 配 分 の 選 択 に よる。しか しな が ら、最 近 、東 芝 は 再度 、LIBの 市 場 へ の 再 参 入 を 表 明 して い る。これ は 、自動 車 市 場 が 大 きく発 展 す ることを見 越 し、そ の 自動 市 場 で 要 求 され るLIBの 高 速 充 電 の 技 術 を開 発 した ことによるとされ てい る23)。 旭 化 成 は電 池 事 業 か ら撤 退 した が 自ら技 術 の コア とす る得 意 分 野 で ある高 分 子 の 加 工 技 術 ・膜 技 術 を 生 か したLIBの セ パ レー タ事 業 に 力 を入 れ て い る。研 究 開 発 ・技 術 開 発 は 、シー ズ と市 場 ニ ー ズ とをマ ッチ ング させ な が ら、自らの 得 意 の 技 術 を 生 か して進 展 して い く。また 、そ の 中 に 新 たな ビジ ネス の 展 開 が 見 ら れ る。経 営 に は 、選 択 と集 中が 大 事 で あることを示 して い る。 LIBは 、今 後 の ハ イブ リド車 の 電 池 として 進 展 が 期 待 され て い る。特 に 、自動 車 産 業 の 今 後 の命 運 がLIBの 技 術 開 発 にか か って いるとい っても過 言 で は な い。 現在 、日本 企 業 は 有 利な位 置 づ け に ある。しか しな が ら、自動 車 市場 に お い て も、 中 国 の 電 池 メー カ ー で あ り、自動 車 メー カ ー で あるBYDな ど強 力 な ライバ ル が 台頭 しは じめ て い る。 また 、LIBを め ぐる国 際 競 争 につ い ても言 及 した。半 導 体 、液 晶 デ ィスプ レイと 同 様 の 現 象 がLIBで も見 られ た 。 臼本 発 の 技 術 が 企 業 経 営 の 場 で 揺 らい で い る。 まとめ て として 、つ ぎの 事 項 を述 べ た い 。イノベ ー シ ョンで す ば らしい 技 術 開 発 を行 い 、科 学 ・技 術 を通 して 、世 界 に 貢 献 で きることは 、研 究 に 身 をお く者 とし て最 高 の 幸 せ で ある。まさに 、本 報 告 のLIBが そ れ に 該 当 す る。旭 化 成 の 場 含 は 、得 意 な 事 業 領 域 で 、イノベ ー ションを企 業 経 営 に お ける競 争 優位 に つ な げ ることが で きた 。しか しな が ら、わ が 国 で発 明 ・開 発 され たLIBが わ が 国 として の 競 争 優 位 の 状 態 を維 持 す ることが 難 しい 状 況 に ある。イノベ ー ションを経 営 の 場 で い か に して 競 争 優i位に保 つ か は 、わ が 国 としての 今 後 の 最 大 の 課 題 で ある。
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[13]
http://www.itmedia.cojp/anchord
esk/ [14]総 務 省 編 平 成19年 版 清報 通 信 白書 【15]正 本 順 三 、コン ピュー タ産 業 とビ ジネ スの 変 遷 と今 後 、日本 生 産 管 理 学 会 第29回 全 国 大 会 講 演 論 文集 、印刷 中(2009). [161日 経 産 業 新 聞2008年8月6日 記 事 [17】 日経産 業 新 聞2009年1月13日 記 事 [豆8]日経 産…辮i斤樫籍2008拳F12月101ヨ 言己喜鑑 【19】日経 産 業 新聞2008年12月18日 記 事 [201日 経 産 業 新 聞2009年1月5日 記 事 [211日 経 産 業 新 聞2008年11月26日 記 事 [221読 売新 聞2007年8月16日 記 事 [23】 日経 産 業 新 聞2008年4月28日 記 事標 準 化 研 究VoL7Ne.12009.3 著者略 歴 正本順 三 兵庫 県・1937年生1963年 京都大学大学院工学 研究科修 士課程 (繊維 化学専攻)修 了。工学博士(京都大学)。旭化成(株)を経 て、1995年 京都 大学化学研 究所客員教授 、1996-2000年 京都工芸繊維 大学繊維学部 客員教 授。2000年 より、福井 工業大学経 営 清報学科教授(現職)。日本化学会 、高分子 学会 、}ヨ本 生産管 理学会 、標 準化研究 学会会員 、高分 子学会フェロー 。大 河内 記念技 術賞 、市村賞(産業賞功績 賞)、毎 日工業技術賞 、科 学技術長 官賞(科学 技術功 労者 表彰)、紫綬褒章などを受賞 、