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広汎性発達障害児に対する感情理解の指導

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Academic year: 2021

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(1)広汎性発達障害児に対する感情理解の指導. 63. 広汎性発達障害児に対する感情理解の指導 髙橋 由莉*1・関戸 英紀*2 Ⅰ.はじめに 自閉症は Kanner が最初に報告した 1943 年以降、約 60 年間で原因論が何度も変遷してきた。当初の親 の養育態度に原因を求める論から、1960 年代後半から 70 年代にかけての Rutter による先天的な脳の機能 障害を一次障害とする認知言語障害説を経て、1980 年代半ば以降は脳の機能障害は認めつつも、その一 次障害を言語・認知ではなく社会性に求める説が優勢になっている(菊池 ,2009) 。社会性の障害を証明す るものとして、自閉症児者の心の理論(Theory of Mind)欠損仮説に関する研究が盛んに報告されるよう になった(Baron-Cohen, Leslie, & Frith,1985) 。これらの多くの研究は、彼らが他者の心の状態について推 論することに特別な困難を有しており、これらが対人的な障害やコミュニケーション能力の遅滞のもとと なっていると主張している(Hadwin, Baron-Cohen, Howlin, & Hill,1996) 。発達の自然な経過の中で、他者 の心的状態を理解する能力が獲得可能となる定型発達児とは異なり、個々の事象に対する注意の焦点化と 切り替えを機能的に行うことが難しい自閉症児は、そのような能力を自然と身につけることに困難性をも つ。したがって就学前の早い段階から、社会的スキルや認知学習と共に「心の理論」にかかわる課題の指 導も積極的に行うことが重要であり、それにより日常生活場面やその後の社会適応についても何らかの効 果が期待できると考えられる。 近年、わが国においても特別支援教育がはじまり、これまで以上に自閉症児者の社会性の問題とそれへ の対応が大きく取り上げられてきている。具体的にはソーシャルスキルトレーニングやソーシャルストー リーなどを活用して心の理解を教えることの重要性が指摘されており、多くの学校教育現場で指導がおこ なわれている(横浜市教育委員会 ,2009)。しかし、その一方で社会性=心の理解という誤った解釈の下で 指導を行っているケースも少なくない。長崎(2006)は社会性を「個人が、ある文化に参加し、その文化 を共有・継承し、さらに新たに発展・創造していくための、自己の個性化と他者との関係性」であると定義 している。このように、社会性を自己の個性化と他者との関係性の深化の過程であると考えた場合、心の 理論で取り上げている認知的な心(mind)の理解だけでなく、それに収束しきれない領域もあるといえる。 その一つが感情(feeling)にかかわる領域である(別府 ,2009)。興奮している集団の中にいると自分も興 奮してくるといった情動伝染(emotional contagion)が示すように、感情は我々が他者との間で心的状態 を伝え合う重要な手段である。日常的にも他者の心を理解する際に、 感情の表出である表情や姿勢(posture) は欠くことができない手掛かりであり、意識的であれ無意識的であれ、それを使って他者に自分の気持ち を伝えようとする。また、感情に関しては、ただ伝え合う機能だけでなく、興奮しすぎて相手を不快にさ せないために自らを抑えるといった感情調節機能も存在する。これらはすべて、他者と社会的な関係を取 り結ぶ上で必要な能力である。しかし実際に、感情理解に関連する指導が社会性にどのような影響を及ぼ すのか、二つの関係性を詳細に検討した研究はほとんどみあたらない。 自閉症児者の感情に関する研究は、個人間で作用するものとしてのコミュニケーション機能(感情理解 や感情表出)や感情調節機能に関するもの、とっさに危険に出会った際に心身のホメオスタシスを一時 的に解除しそれを回避する動機付けを行うといった個人内機能に関するものなど様々なものがあり(遠 藤 ,2006)、特に 2000 年以降多くの研究が報告されてきた(武澤・三橋・清水・平谷 ,2008; 菊池・古賀 ,2001; *1. 県央福祉会. *2. 横浜国立大学教育人間科学部.

(2) 64. 髙橋 由莉・関戸 英紀. 田中・廣澤 ,2007; 千住 ,2007; 宮本 ,2000; 神尾・齊藤・井口 ,2006) 。それに対し、感情理解支援に関する研究 も行われてきたが、様々な条件や要因を十分に考慮せず一括りにして検討されてきた傾向がある、と井上 (2004)は指摘している。研究で取り扱う感情理解の種類を定義し、それに及ぼす要因を的確に分析した 上で、 エビデンスベースに基づいた支援方法を展開している実践的研究は未だ数が少ないのが現状である。 その中のいくつかをあげると、越川(2004)は、表情識別訓練を取り上げ、その具体的な支援方法を提起 した。そこで行った支援は、①自閉症児に弁別がより可能な静止画を用い、②表情弁別の具体的なストラ テジーを提示し(例えば、 「眉毛と目と鼻と口としわの様子を見てみよう」と教示し、喜びは「口がよこ にひかれ、鼻のわきにしわがある」と提示する) 、③課題解決方法の手続きを自分で言いながら(自己教 示)表情識別の行動を自分で制御して解決させるものであった。その結果、表情識別が可能になることが 社会性の発達のみならず、思春期以降の精神障害の予防にもつながるという視点を提示した。行動分析学 的アプローチに基づいて指導を行った研究として、高階・犬飼・井上(2006)は、Howlin, Baron-Cohen, & Hadwin(1999)の他者感情理解課題を用いて、高機能自閉症幼児 2 名に対し他者感情理解の指導を行い、 さらに日常生活への般化の検討を行った。具体的には、Howlin et al.(1999)の他者感情理解課題のレベ ル 3「状況を基にした感情の理解」の場面の中から嬉しい、悲しい、怒っている、怖いの 4 つの感情を抽 出し、イラストで表した場面カードとそれぞれの感情をイラストで表した表情カードを作成した。手続き としては、机上に4枚の表情カードを置き、場面カードを対象幼児の前に提示し、カードの内容を教示し てから、「○○(花子さん / 太郎君)は今どんな顔をしているでしょう」と主人公の感情を尋ねる質問を した。正反応として、表情カードを1枚選択して指差す、指示者にカードを手渡す、もしくは言語で応答 することが求められた。その結果、両名とも正反応率は 100% まで上昇したが、未指導場面における般化 は認められなかった。課題間般化が生起しなかった要因として、①指導場面で使用した課題と未指導課題 の内容の類似性が低かったこと、②ネガティブな感情(悲しい、怒っている、怖い)を弁別する基準があ いまいであったために混乱が生じたことを考察している。 一方、感情理解と社会性に関して菊池(2009)は、自閉症児の表情認知の研究を通して、自己・他者理 解と感情理解は本質的に不可分であり、お互いに絡み合いながら発達していく、と述べている。つまり、 社会性の発達過程においては、その認知発達や感情的関係性の成立、さらに心的状態の理解といった様々 な心理的機能が関連し、その枠組みが漸次的に拡大していくと考えることができる。このことから考える と、他者感情理解課題を指導することにより、自己感情の理解にも何らかの影響を及ぼすのではないかと の仮説が立てられる。また先に述べたとおり、社会性を高めるためには、認知的な心の理解を促すだけで なく、感情にかかわる領域の支援も重要である(別府 ,2009) 。しかし実際に、感情理解に関連する指導が 社会性にどのような影響を及ぼすのか、2 つの関係性を詳細に検討した研究はほとんどない。 そこで本研究では、 広汎性発達障害児の社会性の発達の中でも感情理解に焦点を当てて指導を実施する。 具体的には、高階ら(2006)の行った研究を基に他者感情理解に関する指導を行う。そして、指導用課題 と未指導課題の内容の類似性を高めることによって、高階ら(2006)の研究ではみられなかった未指導場 面における般化が生じるかどうかの検討を行う。また、高階ら(2006)では検討を行わなかった、他者感 情理解と表出にかかわるスキルが、対象児の日常生活にどのような影響を及ぼすかについても併せて検討 を行うことを目的とした。 Ⅱ.方法 1.対象児 公立小学校の特別支援学級に在籍する広汎性発達障害児 2 名(以下、A 児、B 児とする)を対象とした。 性別は、A 児は男児で、B 児は女児である。指導開始時の年齢は A 児が 11 歳 11 か月、B児が 10 歳 10 か 月であった。.

(3) 広汎性発達障害児に対する感情理解の指導. 65. 感情理解に関する担任教師からの聴取によると、A 児は「人がわざと怒るようなことをやり、相手の反 応を楽しんでいる様子がみられる」、 B 児は「相手に対し不快な思いをさせる言動をすることがある」といっ た報告がなされていた。 2.指導期間及び指導場面 200X 年 11 月 20 日から 200X 年 12 月 25 日まで。週 2 度の割合で指導時間が設定された。なお、指導 場面は対象児の在籍学級の朝の会の一部を利用した。1 セッションの所要時間は約 10 分で、1 日に 2 セッ ションを連続して行った。 3.場面カード Howlin et al.(1999)の他者感情理解課題のレベル 3「状況を基にした感情の理解」の場面の中の「嬉しい」 「悲しい」 「怒っている」 の 3 つの感情表出語を選択した。この3感情を選択した理由としては、高階ら (2006) においてネガティブな 感情の中でもっとも正答率が低かった「怖い」を除外し、難易度を対象児に合わ 面を使 用 し た ( Ta b l e 13参 照 ) 。 例 え ば 、「 嬉 し い 」 感 情 に お け る 「 花 子 さ ん は お せて調整したためである。 「悲しい」 「怒っている」から連想されるエピソードを基に状況文を 父さん か ら お や つ と し て「嬉しい」 ケーキを もらい ました」という場面カードでは、一人 作成した。それぞれ 4 場面ずつ、 。例えば、 「嬉しい」 の女の 子が手にケーキ を 持 っ計 て12 い場面を使用した る イ ラ ス ト(Table が 使 1用参照) され た。場 面 カ ー感情における ド に 登 場 「花 子さんはお父さんからおやつとしてケーキをもらいました」という場面カードでは、一人の女の子が手に するす べ て の 人 物 は 、 目 ・鼻 ・口 と い っ た 顔 の 部 位 が 描 か れ て お ら ず 、 空 白 に な ケーキを持っているイラストが使用された。場面カードに登場するすべての人物は、目・鼻・口といった顔. っ て い た (Fig. 1 参 照 )。. の部位が描かれておらず、空白になっていた(Fig. 1 参照) 。. Fig. 1. Fig. 1 「嬉しい」の場面カード 「 嬉し い」の場面カード. Table 1 使用した他者感情理解課題項目 分 類 Ta b l e 1 教 示 内 容 使用した他者感情 理解課題項目 ①花子さんはお父さんからおやつとしてケーキをもらいました。 分類 教示内容 ②太郎君はお母さんからおやつとしてアイスクリームをもらいました。 物をもらった ③太郎君はお兄さんにおもちゃの車をもらいました。 ①花子さんはお父さんからおやつとしてケーキをもらいました。 物をもらった ④花子さんはよしこさんから本をもらいました。 ②太郎君はお母さんからおやつとしてアイスクリームをもらいました。 嬉しい ①花子さんはよしこさんと縄跳びをして遊んでいます。 ③太郎君はお兄さんにおもちゃの車をもらいました。 ②太郎君はお兄さんとサッカーをして遊んでいます。 嬉しい ④花子さんはよしこさんから本をもらいました。 楽しい出来事 ③花子さんは水泳で一番になりました。 ①花子さんはよしこさんと縄跳びをして遊んでいます。 ④太郎君はかけっこで一番になりました。 楽しい出来事 ②太郎君はお兄さんとサッカーをして遊んでいます。 ①花子さんはよしこさんに叩かれました。 ③花子さんは水泳で一番になりました。 他者からの ②太郎君はお兄さんにぶたれました。 ④太郎君はかけっこで一番になりました。 叱責 ・ 攻撃 ③太郎君は猫に引っ掛かれました。 ①花子さんはよしこさんに叩かれました。 ④花子さんは犬にかまれました。 悲しい 他者からの叱責・攻撃 ②太郎君はお兄さんにぶたれました。 ①花子さんの飼っていた犬が死んでしまいました。 ③太郎君は猫に引っ掛かれました。 ②太郎君は風邪なのでお買い物に行けません。 喪失体験 ③太郎君は熱が出て遠足に行けません。 悲しい ④花子さんは犬にかまれました。 ④花子さんのぬいぐるみがなくなってしまいました。 ①花子さんの飼っていた犬が死んでしまいました。. 喪失体験. ● ● ● ○ ○ ● ● ● ● ○ ○ ● ● ②太郎君は風邪なのでお買い物に行けません。 ● ③太郎君は熱が出て遠足に行けません。 ○ ④花子さんのぬいぐるみが無くなってしまいました。 ○ ①花子さんのおやつを弟が食べてしまいました。花子さんはおやつを食べられませんでした。○. ● ● ● ○ ○ ● ● ● ● ○ ○ ● ● ● ○ ○.

(4) 66. 髙橋 由莉・関戸 英紀. ①花子さんのおやつを弟が食べてしまいました。花子さんはおやつを食べられませんでした。○ ● 事物獲得の ②太郎君は教室に入りたいのに、よしこさんが教室に入れてくれません。 への障壁 ③花子さんは教室を出たいのに、ひろし君が邪魔をして教室をでれません。 ○ ④太郎君はお兄さんに飴を取られてしまいました。太郎君は飴が食べられませんでした。● 怒っている ①太郎君は水に濡れるのが嫌いです。ひろし君はわざと太郎君に水をかけました。 ○ ②花子さんは風船の割れる音が嫌いです。弟はわざと風船を割りました。 ○ 不当な扱い ③太郎君はよしこさんの消しゴムを拾いました。よしこさんは知らんぷりをしました。 ● ④花子さんはひろし君に足を踏まれました。ひろし君は知らんぷりをしました。 ●. 4. 表 情 カ ー ド. (注:指導で使用した場面を○ , 事前事後テストで使用した場面を●で示した). 「 4.表情カード 嬉 し い 」「 悲 し い 」「 怒 っ て い る 」 の 3 種 類 の 表 情 を 線 画 で 表 現 し た も の を 用 意 し た ( F i「悲しい」 g . 2 参「怒っている」 照 ) 。 な お 、の対3 象 児にとって、表情カードと各感情 語 と2 が マ 。なお、 「嬉しい」 種類の表情を線画で表現したものを用意した (Fig. 参照) ッ チ対象児にとって、表情カードと各感情語とがマッチングしていることが事前に確認された。 ングしていることが事前に確認された。. Fig. 2. Fig. 2 表情カード 表情カード. 5.手続き 5 1)事前テスト:机上に .手続き 3 枚の表情カードを提示してから、場面カードを対象児の目の前に掲げたホワ. 1 ) 事 前 テ ス ト : 机 上 に 3 枚 の 表 情 カ ー ド を 提 示 し て「○○(花子さん から、場面カー ドを対 イトボードに張った。その後、場面カードの内容を教示してから、 / 太郎君)は今どん 象 児な顔をしているでしょう」と主人公の感情を尋ねる質問をした。この時、対象児は正しい表情カードをホ の目の前に掲げたホワイトボードに張った。その後、場面カードの内容を. 教 示ワイトボードにはることが求められた。また、 し て か ら 、「 ○ ○ ( 花 子 さ ん / 太 郎 君 「どうしてこの顔を選んだの?」と選択理由について質問 )は 今 ど ん な 顔 を し て い る で し ょ う 」 と 主 人をし、 公の 感 情 を 尋 ね る 質 問 を し た 。 こ の 時 、 対 象 児 は 「花子さんはお父さんからおやつとして 正しい表情カードをホワ 『出来事と感情表出語』による言語表出を求めた(例えば、 イ トケーキをもらいました」という課題では、 ボードにはることが求められた た、 「 ど う し て こ の 顔 を 選 ん だ の。応答に対して、 ? 」と 「。ま ケーキをもらったから嬉しい」が正答となる) 選 択正誤のフィードバックは行わず、 理由について質問をし、 『 「はい」と言って次の試行に進んだ。指導者の質問後、5 出 来 事 と 感 情 表 出 語 』に よ る 言 語 表 出 を 求 め た秒間無反応の (例 え ば場合は誤答とみなし次の試行に進んだ。事前テストは 、 「 花 子 さ ん は お 父 さ ん か ら お や つ と し て 14 ケ 場面すべてについて ー キ を も ら い ま 2しセッション行った。以下、 た 」と い う 課 題 でTable は、 ケ ー キ を も ら っ た か ら 嬉 し い 」 が 正 答 と な る )。 応 答 に 対 し て 、 正 誤 2「に「嬉しい」感情を表す一場面を用いた手続きの例を示した。 のフィードバックは行わず、 「 は い 」と 言 っ て 次 の 試 行 に 進 ん だ 。指 導 者 の 質 問 後 、5 秒 間 無 反 応 の 場 合 は 誤 答 と Table みなし 次 の 試 行 に 進 ん だ 。事 前 テ ス ト は 1 2 場 2 「嬉しい」場面の例. 面 す べ て に つ い て 2 試 行 ず つ 行 っ た 。 以 下 、 Ta b l e 2 に 「 嬉 し い 」 感 情 を 表 す 一 場①状況場面の提示:机上に表情カードを置いてから、対象児の前に場面カードを提示する 面を用いた手続きの例を示した。. ②状況の説明:「花子さんはお父さんからおやつとしてケーキをもらいました。 」と教示する ③感情の質問:「花子さんは今どんな顔をしているでしょう。 」と質問する。 Ta b l e 2 「 嬉 し い 」 場 面 の 例 ④選択理由の質問:「どうして、この顔を選んだの?」と質問する。 ①状況場面の提示 : 机上に表情カードを置いてから、対象児の前に場面カードを提示する. ②状況の説明 : 「花子さんはお父さんからおやつとしてケーキをもらいました。」と教示する ③感情の質問 : 「花子さんは今どんな顔をしているでしょう。」と質問する。 2)指導期:表情カード 3 枚を机上に置き、場面カードを対象児の前に提示しながら、事前テストと同 ④選択理由の質問 : 「どうして、この顔を選んだの?」と質問する。 様の教示及び質問を行った。対象児が正しい表情カードをホワイトボードにはった場合を正反応とし、言 語賞讃による強化を行った。間違った表情カードを選択した場合は誤反応とし、その場合、指導者は「ち 2)指 導 期 : 表 情 カ ー ド 3 枚 を 机 上 に 置 き 、 場 面 カ ー ド を 対 象 児 の 前 に 提 示 がうよ。おしい」などと言ってから再度場面カードの内容を教示し、正しい表情カードを選択した時に賞 し な賛した。 がら、事前テストと同様の教示及び質問を行った。対象児が正しい表情カ ードをホワイトボードにはった場合を正反応とし、言語賞讃による強化を行っ た 。間 違 っ た 表 情 カ ー ド を 選 択 し た 場 合 は 誤 反 応 と し 、そ の 場 合 、指 導 者 は「 ち がうよ。おしい」などと言ってから再度場面カードの内容を教示し、正しい表.

(5) を正反応とし言語賞讃による強化を行った。その他の応答また無回答の場合を 誤反応とし、指導者は「ちが う よ 。 お し い 」 な ど と 言 っ て か ら 、 正 答 と 誤 答67 が 広汎性発達障害児に対する感情理解の指導 そ れ ぞ れ 書 か れ た 理 由 カ ー ド (Fig. 3 参 照 )を 提 示 し 、 対 象 児 に 選 択 さ せ た (例 え ば 選択理由については、 、ケ ー キ を も ら っ『出来事と感情表出語』による言語表出がなされた場合を正反応とし言語賞讃に て嬉しかった課題では、 「どうして花子さんは笑っているの でよる強化を行った。その他の応答また無回答の場合を誤反応とし、指導者は「ちがうよ。おしい」などと しょうか、2 枚のカードから選んでください。①花子さんはケーキをもらっ た言ってから、 か ら 嬉 し正答と誤答がそれぞれ書かれた理由カード(Fig. い 、 ② 花 子 さ ん は ケ ー キ を と ら れ た3 か ら 嬉 し い 」対象児に選択させた(例 と教示する。この 参照)を提示し、 場えば、ケーキをもらって嬉しかった課題では、 合 、正 答 は ① で あ る ) 。対 象 児 が 正 し い 理 由 カ ー ド を 選 択 し た 場 合 を 正枚のカー 反応と 「どうして花子さんは笑っているのでしょうか、2 しドから選んでください。①花子さんはケーキをもらったから嬉しい、②花子さんはケーキをとられたから 、言語賞讃による強化を行った。誤った理由カードを選択した場合は誤反応 。対象児が正しい理由カードを選択した場合を正反応 と嬉しい」と教示する。この場合、正答は①である) し、その場合、指導者は「ちがうよ。 おしい」などと言ってから再度場面カ. ーとし、言語賞讃による強化を行った。誤った理由カードを選択した場合は誤反応とし、その場合、指導者 ドの内容を教示し、正しい理由カードを選択した時に賞賛した。なお、B 児 には「ちがうよ。おしい」などと言ってから再度場面カードの内容を教示し、正しい理由カードを選択した ついては、強化方法が言語賞讃だけでは弱かったため、正反応の場合には言 時に賞賛した。なお、B 児については、強化方法が言語賞讃だけでは弱かったため、正反応の場合には言. 語賞讃し、B 児の好むキャラクターのシールを 1 枚与えた。 語賞讃し、B 児の好むキャラクターのシールを 1 枚与えた。. Fig. 3 理由カード F i g . 3 理 由 カ (注:左が正答のカード.右が誤答のカード) ード. 注:左が正答のカード.右が誤答のカード 3)事後テスト:事前テストを行った 14 場面について、2 セッション事後テストを行った。手続きは事 前テストと同様であった。 3 ) 事 後 テ ス ト : 事 前 テ ス ト を 行 っ た 1 2 場 面 に つ い て 、2 試 行 ず つ 事 後 テ ス 6.自己及び他者の感情理解についての質問紙. トを行った。手続きは事前テストと同様であった。. この質問紙は、 高階ら(2006)が使用したものを基に、 今回の指導で選択された「嬉しい」 「悲しい」 「怒っ. 6. 自 己 及 び 他 者 の 感 情 理 解 に つ い て の 質 問 紙. ている」の 3 つの感情を中心に、対象児が日常生活において自己の感情や他者の感情理解がどの程度可能. こ の 質 問 紙 は 、 高 階 ら (2006)が 使 用 し た も の を 基 に 、 今 回 の 指 導 で 選 択 さ れ. であるかを調査するために作成した(Table 3)。4 件法による 23 項目の質問から構成されている。対象児. た 「 嬉 し い 」「 悲 し い 」「 怒 っ て い る 」 の 3 つ の 感 情 を 中 心 に 、 対 象 児 が 日 常 生 の保護者及び担任教師 3 名の計 4 名に回答を依頼した。. 活において自己の感情や他者の感情理解がどの程度可能であるかを調査するた 実施時期は、他者の感情理解課題の事前テスト期間中と事後テストが終了した直後であった。. め に 作 成 し た ( Ta b l e 3 ) 。 4 件 法 に よ る 2 3 項 目 の 質 問 か ら 構 成 さ れ て い る 。 対 象 児 の 保 護 者 及 び 担 任Table 教 師3 自己及び他者の感情理解についての項目 3 名の計 4 名に回答を依頼した。 実施時期は、他者の感情理解課題の事前テスト期間中と事後テストが終了し 項 目. た直後であった。. 1,「嬉しい」 「悲しい」 「怒っている」といった感情語を使用する。 2, 感情語を使って自分や他の人の気持ちを話すことがある。 3, 人の表情変化に注目していない。 4, 日記や手紙に自分の気持ちを書くことがある。 5,『今日、学校で楽しいことあった ?』と質問をすると、その日の出来事を話す。 6, 他の人が嬉しそうな顔をしていると一緒に笑う。 7, 他の人に嫌なことをされても笑った表情をする。 6 8, 悲しい顔をしていると「どうしたの?」と聞くことができる。 9, 自分の好きなお菓子やおもちゃをもらうと、嬉しそうな表情をする。 10, 叱られると気まずそうな表情をする。 11, 遊んでいる途中で邪魔をされると怒った表情をする。 12, 怒った顔をしていても、それを喜んでいる。 13, 驚いた時に、びっくりした表情をする。 14, 絵本を読み聞かせる際に、悲しい話だと悲しい表情をする。.

(6) 68. 髙橋 由莉・関戸 英紀. 15, 他の人が嫌そうな顔をしている行為を繰り返し行う。 16, 後ろから怒った声で呼びかけると、びっくりして振り向く。 17, 絵本などを読んで主人公の気持ちについて話すことがある。 18, 他の人におもちゃを取られた時に、怒った表情をする。 19, 好きな人と離れる時に、悲しい表情をする。 20, 自分の好きなおもちゃを自分で壊してしまった時に、悲しい表情をする。 21, 他の人に嫌なことをされても無表情である。 22,「嬉しい」 「悲しい」 「怒っている」といった感情語の使い方が不適切である。 23,「今日、学校で悲しいことあった ?」と質問をすると、その日の出来事を話す。. 7.指導のためのソーシャルスキル尺度の実施 指導後、対象児の社会性スキルに何らかの変化がみられたかどうかを検討するため、担任教師 3 名と保 護者に評価を求めた。評価には上野・岡田 (2006) が作成した 「指導のためのソーシャルスキル尺度 (Table 4) 」 を使用した。これは学校生活における指導の際の実態把握及び効果測定を目的とした、教師評価用のソー シャルスキル尺度である。4 件法による 42 項目の質問から構成されている。下位スキルとして集団行動、 セルフコントロールスキル、仲間関係スキル、自己表現スキルなど日常生活で使用する社会的スキルが第 三者の視点から測定できることから、本尺度を採用した。 実施時期は「自己及び他者の感情理解」の調査と同時期であった。 Table 4 「指導のためのソーシャルスキル尺度」についての項目 1, 先生や友達の話を集中して聞ける。 2, 聞かれたことに対してきちんと答えることができる。 3, 先生や友達の発表の内容を理解できる。 4, 話合いにおいて全体の意見を参考にしながら結論を出すことができる。 話合い 5, 話合いの内容にそった発言ができる。 6, 言葉足らずでなく、話すことができる。 話す 7, 物事を順序たてて説明することができる。 8, 分からないことは質問できる。 アサーション 9, くやしさや怒りを言葉で伝えることができる。 10, 自分のした行動を振り返ることができる。 11, 場の雰囲気(緊張感や静寂、のんびりとした感じなど)を感じることができる。 状況・心の理論 12,相手の表情の違いに気づくことができる(にこやかな顔、こわい顔、緊張してい る顔など)。 13, 相手の気持ちを理解することができる(喜んでいる、悲しんでいる、怒っているなど)。 14, 日直や係の仕事をやり遂げることができる。 15, 仲間同士で決めたルール・決まりを守れる(暗黙のうちに決まっている友達同士 役割遂行 のルールも含む) 。 16, 仲間と協力しながら仕事(または課題)を行うことができる。 17, よいことをしてもらったら「ありがとう」と言って感謝できる。 対人 18, 人のものを借りるときはきちんと断ることができる。 19, ゲームなどの順番を守ることができる。 20, 集団で遊ぶ時など、ゲームのルールを理解できる。 集団参加 21,与えられたルールに従ってゲームに参加できる(ずるをしない、ルールを勝手に かえてしまわないなど) 。 22, 途中で抜けたり、やめたりせずに仲間と遊びを続けることができる。 23, 臆することなる仲間に話しかけることができる。 24, 視線を合わせて人と話すことができる。 25, 遊んでいる仲間に自分からすすんで加わることができる。 仲間の開始 26, 知っている人にあいさつすることができる。 27, 仲間を遊びに誘うことができる。 28, 仲間や親しい人にほほえみかけることができる。 29, 仲間と会話をすることができる。 30, 仲間と冗談を言い合うことができる。 仲間の維持 31, 仲のよい友達の興味や趣味などを知っている。 32, 仲間と仲良く親和的に遊ぶことができる。 33, 友だちが失敗したときなど励ましたりしたりなぐさめたりできる。 聞く. 自己表現スキル. 集団行動. 仲間関係スキル.

(7) 69. 広汎性発達障害児に対する感情理解の指導. セルフコントロー ルスキル. 34,嫌なことがあっても、乱暴なことをしない(人をたたいたり、物を投げつけたり など)。 感情のコント 35, ゲーム等の勝負事で自分の負けを受け入れることができる。 ロール 36, 感情的になっても、気持ちを上手く切り替えられる。 37, 嫌なことがあっても、人を非難したり騒いだりしない。 38, 友だちが嫌がることは言ったりやったりしない 39, 授業中、勝手に席を離れたり、そわそわ体を動かしたりしないで座っていられる。 行動のコント 40, 授業中、キョロキョロしたり、ぼんやりしたりしないで話を聞くことができる。 ロール 41, 授業中、注意を引きたくて騒いだり、ふざけたりしない。 42, 授業中、関係のない物音や他の人の行動に注意がそれてしまわない。. 8.記録及び信頼性 対象児の応答の様子は、記録者 1 名が対象児の逐語記録をとり、さらに VTR 録画によって記録された。 セッション終了後、VTR を再生しながら逐語記録の確認を行った。 信頼性の評定は以下の手続きで行った。まず研究にかかわりのない評定者に対して、応答反応の分類方 法として、①出来事と感情表出語での応答(介入なしの正答) 、 ②言語介入や理由カードを使用した正答(介 入ありの正答) 、③出来事のみでの応答や感情表出語のみでの応答、その他いずれにも該当しない応答(誤 答)の例示と説明を行った。次にセッション中に録画した VTR の中から、全試行数の約 30%の項目をラ ンダムに抽出した。そして抽出した試行の VTR を評定者に観察させ、その試行の応答反応を分類させた。 その後、評定者と第一筆者の一致項目数を、全評定項目数で除したものに 100 を掛けて一致率を算出した。 一致率は、A 児、B 児ともに 100%であった。 Ⅲ.結 果 1.表情カードの選択 Fig.4 に A 児の、Fig.5 に B 児の事前テスト、指導期、事後テストにおける正反応率の推移を示した。指 導の結果、指導期で使用した 10 場面については正反応率が 100% に達した。事前テストと事後テストに おける未指導課題の正誤を比較したところ、両対象児ともわずかではあるが正反応率に上昇がみられた。 Table 5 に、事前テスト・事後テストにおける未訓練課題の正誤数を比較した結果を示した。両対象児とも 2 試行とも正答である課題数が増加し、B 児は事後テストで 2 試行とも誤答であった課題数も減少した。 また Table 6 に両対象児の事前・事後テストにおけるエラーパターンを示した。ネガティブ感情( 「怒って いる」と「悲しい」)間の混同の減少がみられた。さらに両対象児ともに、事前テストでみられたエラー パターンが事後テストでは減少した。. 100. 事前テスト. 事後テスト. 条件性弁別指導. 90 80 正 70 反 60 応 率 50 % 40 30 20 10 0 1. 2. 3. F i4g 5. 8 正 反 応6 率 の 7推 移 ( B 児) 9. 5. セッション. Fig.4 A 児の「表情カードの選択」の正反応率の推移. 10. 11. 12.

(8) 100. 70. 90 100. 事前テスト 事前テスト. 条件性弁別指導. 事後テスト. 条件性弁別指導. 事後テスト. 髙橋 由莉・関戸 英紀. 80 90 70 正 80 反 60 70 正 応 100 反 率 50 60 90 応 40 80 率 50 %. 事前テスト. 事後テスト. 条件性弁別指導. 30 70 正 40 % 反 60 20 応 30 率 10 50 20 %. 40 0 10 30 0. 1. 2. 3. 20. 1. 2. 3. 10. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 7. 8. 9. 10. 11. 12. Fig 6. 正 反 応 率 の 推 移 (C 児 ). Fig 6. 正 反 応 率 の 推 移 (C 児 ). 4. セッション 5 6 セッション. 0 1. 2. 3. 4. Fig 6. 5. 6. 7. 8. 正 反 応 率 の 推 移 (C 児 ). 9. 10. 11. 12. セッション. Fig.5 B 児の「表情カードの選択」の正反応率の推移. A児 A児 B児 B児 A児 B児. Table 5 事前テストと事後テストにおける未指導課題の正誤 事前/事後 2試行とも正答 1試行のみ正答 2試行とも誤答 3 1 事前 10 1試行のみ正答 2試行とも誤答 事前/事後 2試行とも正答 1 事後 12 3 1 事前 10 4 6 事前 4 1 1 事後 12 1試行のみ正答 2試行とも誤答 事前/事後 2試行とも正答 2 4 事後 8 4 6 事前 4 3 1 事前 10 2 4 事後 8 1 1 事後 12 4 6 事前 4 2 エ ラ ー パ タ ー ン4 Table 6 事前テストと事後テストにおけるエラーパターン 事後 8 テストにおける テストと事後. テスト と 事 後 テ ス 悲→怒 ト に お け る エ嬉→怒 ラーパターン 事前/事後 怒→悲 嬉→悲 6 0 0 A児 事前 4 悲→怒 事前/事後 怒→悲 嬉→怒 嬉→悲 事後 6お け る エ ラ ー0パ タ ー ン 0 A児 事前 テ ス ト と 3 4 事 後 テ ス ト に0 7 7 4 B児 事前 4 0 0 0 事後 3 悲→怒 事前/事後 怒→悲 嬉→怒 嬉→悲 2 3 3 事後 2 B児 事前 4 67 07 04 A児 事前 4 2 3 事後 2 0 0 03 事後 3 7 7 4 B児 事前 4 2.表情カード選択理由の表出 2 3 3 事後 2 Fig.6 に A 児、Fig.7 に B 児の事前テスト、指導期、事後テストにおける正反応率の推移を示した。出来. 事の記述と文脈に適した感情表出語を含む応答(例えば、 「ケーキを貰って嬉しいから」という応答)を 対象児が自発的に行った場合を、『介入なしの正答』とし、▲で示した。指導期において、理由カードを 使用したか、あるいは指導者が言語介入を行って出来事の記述と文脈に適した感情表出語を含んだ応答を 行った場合を、 『介入ありの正答』とし、■で示した。また、状況のみでの応答(例えば、 「ケーキを貰っ たから」という応答)や感情語のみでの応答(例えば、 「嬉しかったから」という応答) 、その他いずれに も該当しない応答は『誤答』とし、◆で示した。 A 児に関しては、事前テストで 70% 以上だった誤答が、指導によって理由カード介入や言語介入を行 わなくても適切な言語表出が 100% となった。表出パターンをより詳細に検討するため、Table 7 に両対象 児の事前テストと事後テストにおける未指導課題のエラーパターンを比較した結果を示した。事前テスト では、状況のみでの回答(例えば、ケーキを貰ったから)が多くみられ、その他のパターンもみられた。 事後テストでは、状況のみでの回答が 5 回みられただけであった。 B 児に関しては、指導によって理由カード介入や言語介入を行わなくても適切な言語表出が 100% となっ.

(9) 71. 広汎性発達障害児に対する感情理解の指導. た。しかし事後テストにおいて、事前テストより正反応率が上昇したものの、依然として 60% 以上の誤 答がみられた。B 児の表出エラーパターンをみると、事前テストでは、A 児同様、状況のみでの回答がもっ とも多く、その他のパターンもみられた。しかし、事後テストでは誤答(課題内容に沿っていない回答) が多くみられた。 事前テスト. 100. 条件性弁別指導. 事後テスト. 90 80 正 反 応 率. 70. %. 40. 60 50. 30 20 10 0 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. F i g 7 正 セッション 反 応 率 の 推 移 (B 児 ) -▲-介入なし正答 -■-介入あり正答. 9. 10. 11. 12. -◆-誤答. Fig.6 A 児の「表情カード選択理由」の正反応率の推移 事前テスト 事前テスト. 事後テスト 事後テスト. 条件性弁別指導 条件性弁別指導. 100100 90 90 80 80 70 70 正正 反60 反60 応50 応50 率率 40 40 % 30 % 30 20 20 10 10 0. 0. 1 1. 2 2. 3 3. 4 4. 5 5. 6 6. 7 7. 8 8. 9 9. 1010. 1111. 1212. 正 反 応 FiF g i8g 8 正 セッション 反 セッション 応 -■-介入あり正答 率率 のの 推推 移移 ( C( C 児児 ) ) -▲-介入なし正答 -■-介入あり正答 -◆-誤答 -▲-介入なし正答 -◆-誤答. Fig.7 B 児の「表情カード選択理由」の正反応率の推移. Table 7 事前テストと事後テストにおけるエラーパターン. 状況のみ 感情語のみ 感情語のみ 事前/事後 状況のみ 事前/事後 事前 19 19 11 A児A児 事前 事後 5 5 00 事後 事前 12 12 33 B児B児 事前 事後 0 0 00 事後. 誤答 誤答 44 00 1414 1616. 無回答 無回答 11 00 11 00.

(10) B児 72. 事後 事前 事後. 5 0 12 3 0髙橋 由莉・関戸 英紀 0. 0 14 16. 0 1 0. 3.日常場面での測定 1)自己及び他者の感情理解について:質問紙の結果を Table 8 に示した。両対象児の指導前と指導後の 平均得点について t 検定を行ったところ、有意傾向がみられた。 Table 8 自己及び他者の感情理解についての質問紙の平均得点と標準偏差. 平均 標準偏差 指導前 指導後 指導前 指導後 65.5 67.5 5.32 6.047. 2 ) 指 導 の た め の ソ ー シ ャ ル ス キ ル 尺 度 : 両 対 象 児 の 平 均 得 点 を Ta b l e 9 に. 示した。指導前と指導後の総合得点について t 検定を行ったところ、有意差は 12. み ら れ な か っ た 。下 位 ス キ ル に つ い て は B 児 に つ い て の み 、セ ル フ コ ン ト ロ ー 2)指導のためのソーシャルスキル尺度:両対象児の平均得点を Table 9 に示した。指導前と指導後の総 ルスキルに関して有意傾向がみられた。セルフコントロールは、感情のコント 合得点について t 検定を行ったところ、有意差はみられなかった。下位スキルについては B 児についての ロール 5 項目と行動のコントロール 4 項目の計 9 項目から構成されており、B み、セルフコントロールスキルに関して有意傾向がみられた。セルフコントロールは、感情のコントロー 児 に 関 し て は 、特 に 感 情 の コ ン ト ロ ー ル(「 嫌 な こ と が あ っ て も 、乱 暴 な こ と を ル 5 項目と行動のコントロール 4 項目の計 9 項目から構成されており、B 児に関しては、特に感情のコン し な い 」「 ゲ ー ム 等 の 勝 負 事 で 自 分 の 負 け を 受 け 入 れ る こ と が で き る 」「 感 情 的 トロール(「嫌なことがあっても、乱暴なことをしない」「ゲーム等の勝負事で自分の負けを受け入れるこ に な っ て も 、気 持 ち を 上 手 く 切 り 替 え ら れ る 」 「 嫌 な こ と が あ っ て も 、人 を 非 難 とができる」 「感情的になっても、気持ちを上手く切り替えられる」 「嫌なことがあっても、人を非難した し た り 騒 い だ り し な い 」「 友 だ ち が 嫌 が る こ と は 言 っ た り や っ た り し な い 」) の り騒いだりしない」 「友だちが嫌がることは言ったりやったりしない」)のほうが得点が高く、指導前後の 方が点数が高く、指導前後の点数の上昇幅も大きかった。 得点の上昇幅も大きかった。 Ta b l e 9 ソ ー シ ャ ル ス キ ル 尺 度 の 平 均 得 点 と 標 準 偏 差 Table 9 ソーシャルスキル尺度の平均得点と標準偏差. 平均 標準偏差 指導前 指導後 指導前 指導後 総合得点 111.88 113.38 19.723 16.212 自己表現スキル 23 23.75 1.464 1.048 集団行動 34.62 37.28 4.596 1.58 仲間スキル 29.62 29.75 7.818 6.882 セルフコントロール 22.5 24.62 3.071 6.346 Ⅳ.考察 1.他者感情理解課題 Ⅳ.考 察 本研究では、指導場面と未指導場面の課題の類似性を高めた。その結果、高 1.他者感情理解課題 階 ら (2006)で は み ら れ な か っ た 事 前 ・ 事 後 テ ス ト の 間 で ネ ガ テ ィ ブ 感 情 の 混 同 本研究では、指導場面と未指導場面の課題の類似性を高めた。その結果、高階ら(2006)ではみられな に減少がみられ、全体的にエラーパターンの数が減った。これは、課題場面般 かった事前・事後テストの間でネガティブ感情の混同に減少がみられ、 全体的にエラーパターンの数が減っ 化を生起させるためには、指導場面と未指導場面の内容類似性が重要であると た。これは、課題場面般化を生起させるためには、指導場面と未指導場面の内容類似性が重要であるとい い う 高 階 ら (2006)の 知 見 を 支 持 す る 結 果 で あ る と い え る 。 う高階ら(2006)の知見を支持する結果であるといえる。 表 情 カ ー ド 選 択 理 由 に つ い て 、事 後 テ ス ト に お い て A 児 は 正 答 の 正 反 応 率 が 表情カード選択理由について、事後テストにおいて A 児は正答の正反応率が 70%を超えたが、B 児に 70% を 超 え た が 、 B 児 に 関 し て は 正 答 よ り も 誤 答 の 方 が 依 然 と し て 高 い ま ま で 関しては正答よりも誤答の方が依然として高いままであった。この結果ついては 2 つの要因が考えられる。 あった。この結果ついては 2 つの要因が考えられる。1 つ目の要因として、刺 1 つ目の要因として、刺激の過剰選択性が考えられる。本研究で使用した場面カードに登場するすべての 激の過剰選択性が考えられる。本研究で使用した場面カードに登場するすべて 人物の顔は、刺激の統制をはかるために目・鼻・口といった顔の部位を意図的に描かなかった。しかし、B の 人 物 の 顔 は 、 刺 激 の 統 制 を は か る た め に 目 ・鼻 ・口 と い っ た 顔 の 部 位 を 意 図 的 児にとっては、それが気になるようで課題中、 「のっぺらぼうは怖い」 「のっぺらぼうは嫌」と繰り返す様 に 描 か な か っ た 。 し か し 、 B 児 に と っ て は 、 そ れ が 気 に な る よ う で 課 題 中 、「 の 子が観察された。また本課題において選択理由を適切に表出するためには、 場面カード(視覚的手がかり) っぺらぼうは怖い」 「 の っ ぺ ら ぼ う は 嫌 」と 繰 り 返 す 様 子 が 観 察 さ れ た 。ま た 本 を見ながら教示された課題内容(聴覚的手がかり)について想起し、回答することが必要である。しかし 課 題 に お い て 選 択 理 由 を 適 切 に 表 出 す る た め に は 、 場 面 カ ー ド (視 覚 的 手 が か B 児の場合、目の前にある場面カードだけに頼り、絵から連想したエピソードを表出したため、教示内容 り )を 見 な が ら 教 示 さ れ た 課 題 内 容 (聴 覚 的 手 が か り )に つ い て 想 起 し 、回 答 す る ことが必要である。しかし B 児の場合、目の前にある場面カードだけに頼り、 絵から連想したエピソードを表出したため、教示内容に沿わない誤答が多かっ た、と考えられる。絵カードを用いずに、他者の感情状態の原因を推論する言.

(11) 広汎性発達障害児に対する感情理解の指導. 73. に沿わない誤答が多かった、と考えられる。絵カードを用いずに、他者の感情状態の原因を推論する言語 表出を指導した研究として、奥田・井上・山本(1999)の研究があげられる。奥田ら(1999)は自閉傾向を 伴う発達障害児に対し、課題内容を文字カードで示し、登場人物が表出している情動状態の原因を適切な 感情表出語を用いて言語表出する行動を形成した。奥田ら(1999)は、広汎性発達障害児の文章理解を考 えた場合、認知的方略と呼ばれるような行動の定義を明確にし、文章理解を可能にするための課題設定な どの環境条件の分析を徹底して行うことの重要性を指摘している。2 つ目の要因としては、強化子の問題 が考えられる。B 児は課題に対する意欲が低かったため、表情カード選択理由の指導において、介入なし で正答を表出した場合に B 児が好むキャラクターのシールを強化子として使用した。正答するごとに強 化子を与えたため、指導における結果は即時に強化された。指導中、B 児は集中して課題に取り組めるよ うになった結果、正反応率は 100% まで上昇した。しかし事後テストでは、強化を一切行わなかったため 課題への興味・関心が薄れ、正反応率があまり上昇しなかったと考えられる。 2.日常場面での測定 自己及び他者の感情理解について、事前テストと事後テストの得点の間に有意傾向がみられた。事前テ ストより事後テストの得点が高いことから、指導を行った結果、他者の感情を推測し報告するというスキ ルは、指導場面だけでなく日常場面にも影響を及ぼす可能性が示唆された。また、直接指導を行っていな い自己の感情理解に関する項目の評価も高くなったことから、他者理解にかかわる指導が自己理解にも何 らかの影響を及ぼしていると考えられる。郷式(1999)は、従来使用されてきた心の理論課題を応用し、 定型発達幼児における自己の心的状態の理解と他者の心的状態の理解を比較した。その結果、表象的な 心的状態の理解に関しては他者と自己の間に優位差はなく同時期に理解されるという理論の妥当性を示し た。本研究の結果からは、他者理解と自己理解の関係性を示唆することはできたが、互いにどのような影 響を及ぼしながら深化が進むのかについては言及できない。今後は自己理解に関する指導を実施し、他者 理解についても同様に得点の上昇がみられるかについても検討を行う必要がある。また、本研究で指導し た、状況から他者の感情を推測し、報告するというスキルの日常生活での般化については検討しなかった。 これについては今後、対象児の周囲の人物(他者)が「嬉しい」 「悲しい」 「怒っている」といった気持ち を感じていると考えられる場面を意図的に設定し、他者がどのような気持ちでいるかを推測できるかどう かを、対象児が日常生活を送っている家庭や学校で検討する必要がある。 社会性スキルについては、事前テストと事後テストの得点の間に有意差はみられなかったが、B 児に関 しては、セルフコントロール項目に関する得点に有意傾向がみられ、特に感情のコントロールの上昇率が 高かった。感情のコントロールは、「嫌なことがあっても、乱暴なことをしない」 「ゲーム等の勝負事で自 分の負けを受け入れることができる」 「感情的になっても、気持ちを上手く切り替えられる」 「嫌なことが あっても、人を非難したり騒いだりしない」「友だちが嫌がることは言ったりやったりしない」という 5 項目から構成されている。B 児に関しては、本研究で行った他者の感情とその原因を推測する課題が、こ れらの項目に何らかの影響を及ぼしたことが示唆される。また、本研究では対象児数が少なかったことか ら、両対象児の総合得点と下位項目得点との間に有意差はみられなかった。しかし、事前テストと事後テ ストの平均点を比較すると、すべての項目でわずかに得点の上昇がみられた。このことから、対象児数を 増やして指導を行い、感情の理解と社会性スキルとの関連性に関して更なる検討を行うことも今後の課題 であるといえよう。.

(12) 74. 髙橋 由莉・関戸 英紀. 謝 辞 本研究を進めるにあたり、快く研究に参加していただいた A 君、B さん、ならびにそのご家族に深く 感謝申し上げます。また、研究指導の場を提供していただいただけでなく、お忙しい中親身になって研究 に協力していただいた、特別支援学級の先生方にも、この場を借りてお礼を申し上げます。 文 献 Baron-Cohen,S., Leslie,A.M., & Frith,U.(1985) Does the autistic child have a theory of mind?. Cognition, 21, 37 - 46. 別府哲(2009) 特別支援教育に関する教育心理学的研究の動向と展望:自閉症児者の感情に関する研究 を中心に . 教育心理学年報 ,48,143 - 152. 遠藤利彦(2006) 感情.海保博之・楠見孝・佐藤達哉(編). 心理学総合辞典 , 304 - 343, 朝倉書店 . 郷式徹(1999)幼児における自分の心と他者の心の理解-「心の理論」課題を用いて-.教育心理学研究, 47,354, - 363. Hadwin,J.A., Baron-Cohen,S., Howlin,P., & Hill,K.(1996) 自閉症の子どもに感情や信念や見立ての理解を 教えることができるか . 高木隆朗・ M. ラター・ E. ショプラー (編) . 自閉症と発達障害研究の進歩 .Vol.2,366 - 393. Howlin, P., Baron-Cohen, S., & Hadwin, J. (1999) Teaching children with autism to mindread. : Wiley. 井上雅彦(2004)自閉症児者の感情理解とその指導可能性に関する行動分析学的検討 . 発達障害研究 ,26,23 - 31. 神尾陽子・齊藤崇子・井口栄子(2006) 自閉症スペクトラム青年のネガティブ表情に対する過敏性 . 児童青 年精神医学とその近接領域 ,47,16 - 28. 菊池哲平・古賀精治(2001) 自閉症児・者における表情の表出と他者と自己の表情の理解 . 特殊教育学研 究 ,39(2),21 - 29. 菊池哲平(2009) 自閉症児における自己と他者、そして情動:対人関係性の視点から探る . 越川房子(2000) 発達障害者の表情識別訓練 . 発達障害研究 ,26,15 - 22. 宮本淳(2000) 高機能広汎性発達障害の感情認知(Ⅰ)―他者感情推測における手掛かり情報を統合す ることの困難さ― . 発達障害研究 ,23,34 - 44. 長崎勤(2006)社会性の発達とその障害―文化の共有と継承― . スクリプトによる社会的スキル発達支援 : LD・ADHD・高機能自閉症児への支援の実際 . 長崎勤・宮崎眞・佐竹真次・関戸英紀・中村普(編).3 - 23. 川島書店 . 奥田健次・井上雅彦・山本淳一(1999) 発達障害児における文章理解の指導―情緒状態の「原因」を推論 する行動の獲得― . 行動療法研究 ,25(1),7 - 21. 千住淳(2007)自閉症における視線処理の非定型発達―発達認知神経科学からの検討― . 心理学評論 ,50,13 - 30. 高階美和・犬飼陽子・井上雅彦(2006) 高機能自閉症幼児における感情理解・表出の指導―日常生活への般 化の検討― . 発達心理臨床研究 ,12, 113 - 122. 武澤友広・三橋美典・清水聡・平谷美智夫(2008) 高機能広汎性発達障害児の表情ならびに音声からの感情 推測能力の評価 . LD研究 ,17,152 - 160. 田中真理・廣澤満之(2007) 高機能広汎性発達障害児における感情への注意の指向性 . 児童青年精神医学 とその近接領域 ,48,21 - 38. 上野一彦・岡田智(2006)特別支援教育〈実践〉ソーシャルスキルマニュアル.明治図書. 横浜市教育委員会(2009) 横浜版学習指導要領 ..

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参照

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