Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科における平成
21年度初診患者の臨床統計
Author(s)
栗山, 智宏; 西久保, 周一; 浮地, 賢一郎; 有坂, 岳大;
宇治川, 清登; 武安, 嘉大; 高田, 篤史; 渡邊, 裕; 外
木, 守雄; 山根, 源之
Journal
歯科学報, 111(2): 185-194
URL
http://hdl.handle.net/10130/2363
Right
抄録:今回,我々は現在の当科の診療内容を把握す ることを目的に,平成21年4月1日より平成22年3 月31日までの当科外来の初診患者を対象として,性 別,年齢,疾患,院外,院内からの紹介,医科診療 所および他科との病診連携の実態を調査した。 初診患者の 総 数 は6,090人,院 外 か ら の 紹 介 が 2,779人であり,院外歯科からの紹介が2,431人,院 外医科医療機関からの紹介が348人,院内他科から の紹介は729人であった。院内,院外の医科からの 紹介は合計1,077人で初診患者の総数の17.7%を占 め,当院歯科・口腔外科は医科との連携が特徴であ ることが分かった。 医科との緊密な連携を確立するためには,歯科疾 患はもとより医科疾患の口腔内症状についての知識 を必要とし,また医師側にも口腔外科,オーラルメ ディシン領域の疾患,治療に対しての知識が必要で ある。医科との緊密な連携が今後の病院歯科,口腔 外科の存在価値を左右すると考えられた。 緒 言 東京歯科大学市川総合病院は,千葉県北西部に位 置する市川市に昭和21年に東京歯科大学の付属医療 機関で診療科目歯科の病院として開設した。現在で は診療科20科と各部門の専門センター8つを有する 570床の総合病院であり,人口約47万人の市川市の 中核医療機関として地域医療の一端を担っている。 その中で,歯科・口腔外科は歯科医師会のみなら ず,医師会との病診連携も強く推進し,医科系合併 症を有した患者の多様なニーズにも対応してきた。 今回,我々は,初診患者の臨床統計的検討を行 い,現在の診療内容を把握し,地域医療における病 院歯科・口腔外科の役割を考察するとともに,今後 の在り方,方向性について検討することとした。 対象および方法 平成21年4月1日から平成22年3月31日までの1 年間に当院歯科・口腔外科を受診した患者のうち, 夜間,休祭日などの急患,救急外来での対応患者も 含め対象とした。再来初診等の保険制度上の初診患 者は除き当科を初めて受診した患者のみを抽出し対 象とした。一度治癒によりに終診した症例や再発あ るいは再燃し初診となった症例も含まないものとし た。 疾患の分類は,㈳日本口腔外科学会調査企画委員 会が作成した実績調査票を参考とし集計した(図 1)。う蝕,歯周病,根尖性歯周炎において早期に 抜歯など観血処置を必要とした症例を歯の疾患に分 類し,抜歯を行わず保存処置や根管治療を行った症 例に対しては一般歯科治療として分類した。臨床診 断は,初診時の診断だけでなく,外来カルテ,入院 カルテ,画像診断,病理組織検査などを詳細に検証 し,最終診断とされたものとした。 調査項目は,対象患者の性別,年齢,月別受診者
臨床報告
東京歯科大学市川総合病院
歯科・口腔外科における平成21年度初診患者の臨床統計
栗山智宏
西久保周一
浮地賢一郎
有坂岳大
宇治川清登
武安嘉大
高田篤史
渡邊 裕
外木守雄
山根源之
キーワード:口 腔 外 科,オ ー ラ ル メ デ ィ シ ン,臨 床 統 計,初診患者,外来患者 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科 (2011年1月11日受付) (2011年2月8日受理) 別刷請求先:〒272‐8513 千葉県市川市菅野5−11−13 東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科 栗山智宏 185 ― 57 ―数,居住地域,受診経路とした。患者が2つ以上の 疾患を有している場合には重複として集計した。集 計に関しては,厳密なデータ管理を行うために,パ スワード化を施した PC 一台のみにデータを保存 し,患者名等の個人を特定できるものはナンバー化 し個人が特定できない状態で集計を行った。 結 果 1.性別 期間中に受診した初診患者の総数は6,090人。内 訳は男性が2,827人(46.4%)で女性が3,263人(53.5 %)であった。 2.年齢分布 年齢分布は0歳から99歳まで幅広く分布してい た。受診患者の平均年齢は44.9歳で,年齢別患者数 は30歳代が978人(16.0%)と最も多く,以下,20歳 代932人(15.3%),60歳代890人(14.6%)の順であっ た。65歳 以 上 が 占 め る 割 合(高 齢 者 率)は1,603人 (26.3%)であった(表1)。 3.月別患者数 月別患者数は,年度初めの4月と年度末の3月が 最も多く共に539人(8.8%)であり,以下,8月526 人(8.6%),7月523人(8.5%)の順であった。また, 最も少ない月は12月の454人(7.4%)であった。 4.患者の居住地域 患者の居住地別内訳は,市川市が3,300人(54.1 %)と最も多く,以下,船橋市671人(11.0%),江戸 川 区477人(7.8%),松 戸 市288人(4.7%),浦 安 市 209人(3.4%), 飾区188人(3.0%),鎌ヶ谷市74人 (1.2%)の順であった。 県 別 で は 千 葉 県5,018人(82.4%),東 京 都874人 (14.4%),埼 玉 県56人(0.9%),茨 城 県34人(0.6 %),神 奈 川 県 が32人(0.5%),そ の 他 が76人(1.2 %)であった(表2)。 5.受診経路 院外の医療機関からの紹介受診が2,779人(45.6 図1 疾患別分類 栗山,他:当科における初診患者の臨床統計 186 ― 58 ―
%)と最も多く,紹介元の医療機関は歯科からが 2,431人(39.9%)であり,医科からの紹介受診が348 人(5.7%)であった。医科からの紹介を診療科別に 分類すると,内科が106人(30.4%)と最も多く,次 い で 耳 鼻 咽 喉 科69人(19.8%),整 形 外 科19人(5.4 %),皮膚科17人(4.8%)であった。 院内他科からの紹介は729人(12.0%)であった。 院 内 か ら の 紹 介 患 者 の 内 訳 は,内 科 が236人 (32.3%)と 最 も 多 く,以 下,脳 神 経 外 科128人 (17.5%),耳 鼻 咽 喉 科84人(11.5%),外 科45人 (6.1%),皮膚科44人(6.0%)の順であった(表3)。 紹介状などを持たずに直接来院した患者は2,582 人(42.4%)であった。 なお,紹介,非紹介に関わらず時間外,休祭日な ど に 急 患 と し て 対 応 し た 患 者 は876人(14.3%)で あった。 6.疾患別分類 重複症例を含めた総疾患数は6,756件であった。 臨床診断名の内訳は,歯の疾患が2,308件(34.2%) と最も多く,次いで外傷947件(14.0%),口腔粘膜 表2 居住地域別初診患者数 表3 診療科別紹介患者数 表1 年齢別初診患者数 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 187 ― 59 ―
疾患899件(13.3%),顎関 節 疾 患598件(8.9%),炎 症381件(5.6%),一般歯科治療377件(5.5%),口腔 ケア・摂食嚥下障害261件(3.9%),嚢胞256件(3.8 %),先 天 異 常221件(3.3%),良 性 腫 瘍170件(2.5 %),唾 液 腺 疾 患99件(1.5%),悪 性 腫 瘍67件(1.0 %),睡眠時無呼吸症候群59件(0.9%),神経性疾患 49件(0.7%),インプラント症例44件(0.7%),歯科 心身症20件(0.3%)であった(図2)。 次に臨床診断別の内訳を示す。 1)歯の疾患 歯の疾患2,308件の内訳は,智歯に関連した智歯 周囲炎,埋伏歯が1,248件(54.0%)と大多数を占め ていた。う蝕,歯周病,根尖性歯周炎などの炎症が 原因で早期に抜歯などの処置を必要とした症例が 984件(42.6%)であり,抜歯中断,抜歯後の感染が 76件(3.3%)で あ っ た。男 女 比 は 男 性 が1,079件 (46.7%),女性が1,229件(53.2%)であった。年齢 別では20歳代が最も多く613件(26.5%)次いで30歳 代が539件(23.3%)であった。 2)外傷 外 傷 症 例947件 の 内 訳 は,口 腔 内 創 傷 が336件 (35.4%)で 最 も 多 か っ た。以 下,歯 牙 脱 臼168件 (17.7%),口腔外創傷135件(14.2%),歯牙破折87 件(9.1%),下顎骨骨折57件(6.0%),上顎骨骨折43 件(4.9%),頬骨・頬骨弓骨折21件(2.2%),歯槽骨 骨折15件(1.5%),打撲などのその他の外傷が85件 (8.9%)であった。男女比は男性が608件(64.2%), 女性が339件(35.7%)であった。年齢別では10歳未 満が356件(37.5%)で最も多く,次いで10歳代の120 件(12.6%)で あ っ た。外 傷 症 例 の う ち638件(67.3 %)が救急外来からの受診であった。 3)口腔粘膜疾患 口腔粘膜疾患899件の内訳は,舌炎が232件(25.8 %)で最も多かった。以下,カンジダ症130件(14.5 %),口 内 炎114件(12.7%),口 腔 乾 燥 症87件(9.7 %),白板症49件(5.5%),金属アレルギー46件(5.1 %),扁平苔 癬40件(4.4%),舌 痛 症31件(3.4%), ウイルス性疾患31件(3.4%),血腫19件(2.1%),褥 瘡性潰瘍14件(1.6%),色素沈着9件(1.0%),地図 状舌2件(0.2%)その他の口腔 粘 膜 疾 患95件(10.6 %)であった。男女比は男性291件(32.2%),女性が 610件(67.7%)であった。年齢別では60歳代が250件 (27.7%)で 最 も 多 く,次 い で70歳 代 の198件(21.9 %)であった。 4)顎関節疾患 顎 関 節 疾 患598件 の 内 訳 は,顎 関 節 症 が540件 (90.3%)で最も多く,顎関節脱臼が58件(9.6%)で あった。男女比は男性213件(35.6%),女性が385件 (64.3%)であった。年齢別では30歳代が109件(18.2 %)で 最 も 多 く,次 い で20歳 代 の100件(16.7%)で あった。 5)炎症 炎症症例381件の内訳は,蜂窩織炎が147件(38.5 %),上顎洞炎が93件(24.4%)インプラント周囲炎 23件(6.0%),顎骨骨髄炎24件(6.3%),頬部膿瘍20 件(5.2%),顎骨骨膜炎5件(1.3%),顎下膿瘍4件 (1.0%),口底膿瘍4件(1.0%),その他の炎症61件 (16.0%)であった。男女比は男性190件(49.8%), 女性が191件(50.1%)であった。年齢別では30歳代 が72件(18.8%)で 最 も 多 く,次 い で60歳 代 の66件 (17.3%)であった。 6)一般歯科治療 一般歯科治療の377件の内訳は,歯周疾患対する 治療が123件(32.6%),う蝕治療・根管治療が117件 (31.0%),義歯に対する治療が77件(20.4%),その 他 が60件(15.9%)で あ っ た。男 女 比 は 男 性212件 (56.2%),女性が165件(43.8%)であった。年齢別 図2 疾患別患者数 栗山,他:当科における初診患者の臨床統計 188 ― 60 ―
では70歳代が88件(23.3%)で最も多く,次いで60歳 代の76件(20.2%)であった。 7)口腔ケア・摂食嚥下障害 口腔ケア・嚥下評価に関する 症 例261件 の 内 訳 は,嚥 下 評 価 が158件(60.5%),口 腔 ケ ア が103件 (39.4%)であった。男女比は男性が162件(62.0%), 女性が99件(37.9%)であった。年齢別では70歳代が 89件(34.0%)と最も多く,次いで80歳代の62件(23.7 %)であった。 8)嚢胞 嚢胞症例256件の内訳は,歯根嚢胞・残留嚢胞が 112件(43.7%)で最も多く,以下,粘液嚢胞・ガマ 腫が93件(36.3%),含歯性嚢胞19件(7.4%),術後 性 上 顎 嚢 胞10件(3.9%),鼻 口 蓋 管 嚢 胞5件(1.9 %),角化嚢胞1件(0.3%),その他の嚢胞16件(6.2 %)で あ っ た。男 女 比 は 男 性115件(44.9%),女 性 141件(55.0%)であった。年齢別では40歳代が46件 (18.0%)で最も多く,次いで30歳代の45件(17.6%) であった。 9)先天異常 先天異常症例221件の内訳は,顎変形症が118件 (53.4%)と最も多く,以下,骨隆起55件(24.9%), 小帯異常26件(11.8%),唇顎口蓋裂7件(3.2%), その他の先天異常15件(6.8%)であった。男女比は 男性89件(40.3%),女性132件(59.7%)で あ っ た。 年齢別では10歳未満57件(25.8%)で最も多く,次い で20歳代の40件(18.1%)であった。 10)良性腫瘍 良 性 腫 瘍 症 例170件 の 内 訳 は,血 管 腫 が45件 (26.5%)と最も多く,以下,腺維腫39件(22.9%), エ プ ー リ ス20件(11.8%),腫 瘍 類 似 疾 患10件(5.9 %),乳 頭 腫10件(5.9%),歯 牙 腫7件(4.1%),エ ナメル上皮腫2件(1.2%),その他の良性腫瘍37件 (21.8%)であった。男女比は男性65件(38.2%),女 性105件(61.8%)であった。年齢別では60歳代が41 件(24.1%)と最も多く,次いで70歳代の30件(17.6 %)であった。 11)唾液腺疾患 唾液腺疾患99件の内訳は,顎下腺炎26件(26.3%) と最も多く,以下,唾石症25件(25.3%),シェーグ レン症候群19件(19.2%),耳下腺炎15件(15.2%), 多形腺腫5件(5.1%),腺様嚢胞癌1件(1.0%),粘 表皮癌1件(1.0%),その他の唾液腺疾患7件(7.1 %)であった。男女比は男性35件(35.4%),女性64 件(64.6%)であった。年齢別では30歳代20件(20.2 %)と 最 も 多 く,次 い で60歳 代 の17件(17.2%)で あった。 12)悪性腫瘍 悪性唾液腺腫瘍を除く悪性腫瘍67件の内訳は,舌 癌 が21件(31.3%)と 最 も 多 く,以 下,歯 肉 癌20件 (29.9%),頬粘膜 癌5件(7.5%),口 底 癌5件(7.5 %),リ ン パ 節 転 移4件(6.0%),口 蓋 癌3件(4.5 %),悪性リンパ腫3件(4.5%),その他の悪性腫瘍 6件(9.0%)で あ っ た。男 女 比 は 男 性38件(56.7 %),女性29件(43.3%)であった。年齢別では60歳 代17件(25.4%),70歳代17件(25.4%)と最も多く, 次いで80歳代の15件(22.4%)であった。 13)睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群症例は59件であり,男女比 は,男 性41件(69.5%),女 性18件(30.5%)で あ っ た。年齢別では60歳代18件(30.5%)と最も多く,次 いで50歳代の12件(20.3%)であった。 14)神経性疾患 神経性疾患症例49件の内訳は,三叉神経症が21件 (42.9%)と最も多く,以下,非定型顔面神経痛3件 (6.1%),顔面神経麻痺2件(4.1%),その他の神経 性疾患23件(46.9%)であった。男女比は,男性18件 (36.7%),女性31件(63.3%)であった。年齢別では 50歳代13件(26.5%),70歳代13件(26.5%)と最も多 く,次いで60歳代の8件(16.3%)であった。 15)インプラント症例 インプラント症例は44件であり,男女比は,男性 16件(36.4%),女性28件(63.6%)であった。年齢別 では50歳代14件(31.8%),60歳代14件(31.8%)と最 も多く,次いで30歳代の6件(13.6%)であった。 16)歯科心身症 歯科心身症は20件の内訳は,歯科恐怖症が10件 (50.0%)と最も多く,以下,自臭症5件(25.0%), 体感障害症3件(15.0%),その他の心身症2件(10.0 %)であった。男女比は,男性7件(35.0%),女性 13件(65.0%)で あ っ た。年 齢 別 で は60歳 代6件 (30.0%)ともっとも多く,次いで30歳代の4件(20.0 %)であった。 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 189 ― 61 ―
考 察 今回,現在の当科の診療の状況を把握し,今後の 方向性を検討することを目的に東京歯科大学市川総 合病院歯科・口腔外科における平成21年度1年間の 総初診患者の臨床統計を行った。再来初診等の保険 制度上の初診患者は除き当科を初めて受診した患者 のみを抽出し対象とした。一度治癒によりに終診し た症例や再発あるいは再燃し初診となった症例も含 まないものとした。 結果,期間中に受診した初診患者の総数は6,090 人であった。 男女比は男性が46.4%,女性が53.5%で女性が多 く,年齢別でも,20歳代以降では各年齢層で女性の 方が多かったが,10歳未満では男児が多く,10歳代 ではほぼ同数であった。 他の医療機関の初診患者数と比較すると,東京歯 科大学千葉病院口腔外科が8,441人(再発症例や経過 観察中に別な新たな疾患が認められた症例など再初 診患者も含む)1) ,大阪医科大学付属病院歯科口腔外 科が3,502人2) ,春日井市民病院歯科口腔外科が5年 2ヶ月で11,772人(年平均2,278.5人)3),県立吉田病 院 歯 科 口 腔 外 科 が20年 間 で8,930人(年 平 均446.5 人)4) ,佐渡市立両津病院歯科口腔外科が5年間で 1,706人(年平均341.2人)5) であり,当科の初診患者 数は歯科単科の病院の口腔外科と比較すると少ない ものの,他の総合病院歯科・口腔外科と比較して多 いという結果であった。 1)初診患者の状況 初診患者の年齢別内訳は,30歳代が最も多く,こ の内,智歯周囲炎,水平埋伏智歯,埋伏歯を含む歯 牙疾患が539件(55.1%)と多数を占めていた。これ は他の医療機関の報告ともほぼ一致しており,高次 医療機関の歯科口腔外科の特徴の一つと考えられ る。 次いで,20歳代であったが,30歳代と同じく歯牙 疾 患 が613件(65.7%)と 多 数 を 占 め て い た。20歳 代,30歳代で歯牙疾患の49.9%とほぼ半数を占める 結果であった。 月別患者数は,4月,3月が最も多く共に539人 (8.8%)であり,以下,8月526人(8.6%),7月523 人(8.5%)の順であった。学校の長期休暇時期に一 致する形となったが,最も少ない月は12月の454人 (7.4%)であり,冬期の長期休暇時期が当院の休診 期間に一致するために受診者数が減少していると考 えられた。月平均は507.5人で各月に差は認なかっ た。 受診者の居住地域は,5,018人(82.4%)が千葉県 内であった。また,市川市が3,300人と全体の54.2 %を占めており,これは当院が市川市の基幹病院で あり,歯科・口腔外科を有する唯一の病院であるた めと考えられる。次いで船橋市が671人(11.0%), 江戸川区が477人(7.8%)であり,船橋市も江戸川区 も JR,私鉄など公共交通機関の利便性の高さが受 診者数に大きく影響していると考えられる。千葉県 外からの受診は,東京都からが874人(14.4%),埼 玉 県 か ら が56人(0.9%),茨 城 県 か ら が34人(0.5 %),神奈川県からが32人(0.5%),その他の都道府 県からが76人(1.2%)の合計595人であった。千葉県 外からの来院患者数は全体の17.5%を占めている。 他の医療機関の報告と比較すると,県外からの初 診患者は,東京歯科大学千葉病院口腔外科が3.9%1) 佐渡市立両津病院歯科口腔外科が3.9%5) であり,当 科は県外からの初診患者が多い結果であった。市川 市が千葉県の北西部に位置し,東京都と隣接してお り立地条件,交通網の利便性,また,オーラルメ ディシンを基盤とした特徴ある診療などが大きく影 響していると考えられる。 2)受診経路 受診経路は,院外からの紹介患者が2,779人(45.6 %)であり,その内訳は歯科医療機関からが2,431人 (87.5%)で紹介患者総数の大多数を占めていた。こ の結果は,地域の歯科医師会,開業歯科医と良好で 緊密な関係を保っているためと考えられる。また, 医科医療機関からの紹介が348人,紹介患者総数の 12.5%を占めていた。他の医療機関の報告と比較す ると,春日井市民病院歯科口腔外科が紹介患者総数 の7.9%3) ,東京歯科大学千葉病院口腔外科が5.9%1) 佐渡市立両津病院歯科口腔外科が0.7%5) であること から医科医療機関との密な連携も当科の特徴と考え られる。 さらに,院内他科からの紹介患者は729人(12.0 %)であり,他の医療機関の報告では,佐渡市立両 津病院歯科口腔外科の6.0%5) であるが,これと比較 栗山,他:当科における初診患者の臨床統計 190 ― 62 ―
してもかなり多い結果であった。院外医科医療機関 か ら の 紹 介 と 合 計 す る と1,077人 で 初 診 患 者 の 17.7%を占めることから,当院歯科・口腔外科は他 の病院と比較して医科との連携が突出している事が 明らかになった。 超高齢社会となり,内科的な全身的疾患,既往歴 を有している患者が増加し,歯科治療を行う際にも 全身的影響を考慮する必要がある。当院は総合病院 であることから関係各科との緊密な連携体制が構築 されており,互いの専門性を生かした高度なアプ ローチが様々な疾患に対して可能である。また全身 状態を把握した上での歯科的対応が充実した人材, 設備をもって十分に行われていることが周辺の医科 に周知されているために院外の医科医療機関から多 くの紹介を得ているものと考える。 院外の医科の紹介元医療機関を診療科別に分類す ると,内科が106人(30.4%)と最も多かった,これ は,内科を標榜している医療機関が最も多いこと, 超高齢社会となり,内科的な全身的疾患,既往歴を 有している患者が多いためと考えられる。次いで耳 鼻咽喉科69人(19.8%)であった,当科では耳鼻咽頭 科と協同で,睡眠時無呼吸症候群に対して検査から 治療までを行っていること,隣接領域であり上顎洞 炎や顎関節症など,口腔外科との関連性が高いため と考えられる。 院内他科からの紹介患者は729人であり,診療科 別では,内科が236人(32.3%)と最も多かった。そ の内,糖尿病に関連する初診は118件(50.0%)で半 数を占めた。糖尿病患者の口腔疾患罹患率が健常者 に比較すると高いという報告がなされてきており, 糖尿病性網膜症(網膜症)・糖尿病性腎症・糖尿病性 神経障害・高脂血症・動脈硬化に次ぐ,第6番目の 合併症として歯周病が知られてきていることから, 当院内科に平成19年に糖尿病センターが設立された のを機に,内科・眼科・歯科の3科共同で糖尿病患 者に対する集学的な対応を開始しているためと考え る。 次に院内紹介で多いのは,脳 神 経 外 科 の128人 (17.5%)であった。その内113件(88.3%)が脳卒中 患者を対象とした誤嚥性肺炎予防の口腔ケアや摂 食・嚥下機能療法を行った患者であった。入院後早 期より歯科介入を積極的に行うことにより口腔環 境,QOL の改善が認められ,脳卒中患者の入院期 間は大幅に短縮し,その効果を認められているため と考える。 次いで,多かったのは耳鼻咽喉科の84人(11.5%) であった。当院では,睡眠時無呼吸症候群に対し歯 科と協同で診断,治療を行っており,さまざまな検 査の結果を総合的に判断し,それぞれの病態にあわ せて手術療法,CPAP 療法,口腔内装置による治療 を耳鼻咽喉科,歯科口腔外科が連携をとりながら, 睡眠呼吸障害の治療を行っている。顎変形症患者な ど顔面頭蓋の形態異常を有している患者で睡眠時無 呼吸症候群を併発している場合には術前・術後の評 価,治療を協同で行っている。その他に耳鼻咽喉科 とは顔面外傷,上顎洞炎など協同で治療を行う症例 も多い。 3)疾患別 疾患別分類では,歯疾患が2,308件(34.2%)と最 も多く,智歯周囲炎,埋伏歯では20歳代,30歳代が 多く,智歯の萌出時期と関連性が高いと考えられ る。受診経路では院外の歯科からの紹介が圧倒的に 多く1,353件(58.6%)を占めた,院内他科からの紹 介が115件(5.0%),院外医科医療機関からの紹介が 46件(2.0%)であった。一方,65歳以上の高齢者の 歯科疾患も412件(17.9%)と多く,今後はさらに全 身的疾患を有している高齢患者や寝たきりの要介護 状態の患者の増加が考えられ,急性炎症などの緊急 処置が必要になった際に初めて紹介を受けるのでは なく,高次医療機関を受診するというしきいを低く し,かかりつけ医がかかりつけ患者の異常を予知し た時点で紹介でき,協同で将来を見据えた治療計画 をかかりつけ医,患者,家族とともに立案,実施し ていける病診連携の新しい形態を構築していくこと が望まれる。 外傷症例は947件(14.0%)であり,そのうち救急 外来からの受診が638件(67.3%)と多くを占めた。 当院歯科・口腔外科は,24時間対応の救急体制を 行っているためと考えられる。受診経路では,紹介 状なしの直接受診が圧倒的に多く773件(81.6%)を 占めた,一方で院外医科医療機関からの紹介が75件 (7.9%),院外歯科からの紹介が73件(7.7%)とほぼ 同数であった。外傷は口腔・顎顔面以外の部位の外 傷と合併している場合が多く,一度医科医療機関を 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 191 ― 63 ―
受診し精査後に口腔・顎顔面領域に外傷がある場合 に紹介となることから医科からの紹介率が高いもの と考えられる6) 。 口腔粘膜疾患は,院外医科医療機関からの紹介が 77件(8.5%),院 内 か ら の 紹 介 が83件(9.2%)で あ り,それぞれ皮膚科が占める割合は9件(11.7%)と 33件(39.8%)であった。院外歯科からの紹介は273 件(30.2%)であった。歯科用金属によるアレルギー や根尖病巣,歯周炎などが一因となる皮膚疾患に対 して,院内皮膚科と緊密な連携を背景に協同で治療 を行っており,特に掌蹠膿疱症においては口腔内の 慢性感染症や歯科金属アレルギーへの対応等の口腔 管理を行い皮膚科でのビオチン内服療法等と併用で 良好な治療成績を得ている。近隣皮膚科に対しこれ ら難治性粘膜疾患の協同治療の成績,取り組みが認 知されているために紹介率が高くなったと考えられ る。 口腔ケア・摂食嚥下障害は,242件(92.7%)が院 内からの紹介であり,その166件(68.6%)が内科, 脳神経外科からの依頼であった。「摂食・嚥下院内 クリティカルパス」の実施による専門的口腔ケアや 摂食機能療法は,脳卒中や肺炎患者の口腔環境, QOL の改善のため退院後も継続的に行われる必要 がある。そのため退院時の地域医療機関への情報提 供が必須である。今回の調査では院外歯科からの紹 介が3件(1.1%),院外医科医療機関からの紹介が 11件(4.2%)と低く,地域における口腔ケアや摂食 機能療法に対する認識は十分ではない可能性が示唆 された。現在,歯科診療情報シートの入った千葉県 共用脳卒中地域連携パスの積極的活用など地域の歯 科と協同し口腔ケア,摂食機能療法に対する啓発と 医療連携の整備を推進しているところである。 悪性腫瘍は,院外医科医療機関からの紹介が15件 (22.4%),院 外 歯 科 か ら の 紹 介 が42件(62.7%)で あった。他の医療機関からの報告例は無く比較がで きないが,当科においては他の疾患と比べて院外の 医科医療機関からの紹介が高く,その中でも内科か らがその60%を占めていた。当院は地域がん診療連 携拠点病院であり,全国で初となる口腔癌に特化し た医療センターとして平成18年に口腔がんセンター を設立した。当院は,歯科大学付属の総合病院であ り医科各科との連携がスムーズに取れる環境であ る。また,口腔癌全般,頭頸部領域の放射線性骨髄 炎,悪性腫瘍術後の口腔顎咬合再建,摂食・嚥下機 能訓練を含め,術前から術後の機能回復に至るまで の包括的な治療を行っている。頭頸部癌とそれによ り生じたが障害に対する治療施設として当院が認知 されてきていることが院外の医科医療機関からの高 い紹介率につながっている。 睡眠時無呼吸症候群は,口腔内装置の作製,治療 において医科医療機関との連携が必須である。院内 の耳鼻咽頭科からの紹介が39件(66.1%)であり,院 外医科医療機関からの紹介が14件(23.7%)でそのう ち耳鼻 咽 頭 科 や 睡 眠 セ ン タ ー か ら の 紹 介 が10件 (71.4%)を占めていた。一方で院外歯科からの紹介 も4件(6.8%)認められた。当院では,睡眠専門技 師による終夜睡眠ポリソムノグラフ検査などの結果 を総合的に判断し,それぞれの病態にあわせて耳鼻 咽頭科,歯科・口腔外科,循環器科,神経内科が連 携をとりながら治療を行っている。一貫した診断, 治療を同一医療機関で行っている事が地域の医療機 関から評価を受けていると考える。 インプラント症例は,院外歯科からの紹介が30件 (68.2%)で あ り,紹 介 な し が14件(31.8%)で あ っ た。歯科関連からの紹介率が高く,近隣歯科からイ ンプラントに関連した骨移植が必要な症例や全身疾 患を有しているためにインプラント治療が困難な症 例にも対応していることが,院外歯科の信頼を得て いるものと考える。 一般歯科治療は,205件(54.4%)が院内他科から の紹介であり,歯周疾患の検査,治療が118件(57.6 %),入院中の義歯のトラブルが45件(22.0%)と多 くみられた。そのほとんどは入院中の患者もしくは 重度全身的疾患,既往歴を有している患者で近医で の加療が困難な症例であった。 顎関節疾患,炎症,嚢胞,先天異常,良性腫瘍, 唾液腺疾患,神経疾患,歯科心身症においては院外 医療機関からの紹介が5∼10.6%,院内他科からが 0∼11.1%,院外歯科からが22.9∼68.3%であり紹 介率や紹介元に関して他の医療機関の報告と違いは 認められなかった(表4)。 4)今後の病院歯科の在り方について 地域医療機関との連携の状況を推測する一つの目 安に紹介率がある7) 。周辺の人口規模や地域医療に 栗山,他:当科における初診患者の臨床統計 192 ― 64 ―
おける病院の位置付け,立地環境や交通の利便性な どにより地域差があるとされるが,東京歯科大学市 川総合病院歯科・口腔外科は,院外からの紹介患者 が2,779人(45.6%)であり,他の医療機関と比較す ると東京歯科大学千葉病院口腔外科が66.3%1) ,春 日井市民病院歯科口腔外科が41.4%3) ,県立吉田病 院歯科口腔外科が3.8∼44.9%4) ,佐渡市立両津病院 歯科口腔外科が17.0%5)であり,24時間体制の救急 対応や口腔外科疾患以外の疾患にも対応しているこ とを考えれば,当科の紹介率は他の病院歯科・口腔 外科と比較してかなり高率であると考える。 今後,全身的に問題を有する高齢患者,関連各科 との集学的な対応が必要な疾病の増加,さらにそれ らが複雑に絡み合い疾病構造はさらに複雑になって いくことからは不可避である。つまりこれからの病 院歯科・口腔外科は,歯科単独での治療を行ってい くのではなく,医科と協同した治療を行っていかな ければ質の高い治療を安全に行うことが困難とな り,地域医療機関を支える高次医療機関としてその 存在価値がなくなるものと考える。我々歯科医師 は,歯科疾患はもとより医科疾患の口腔内症状につ いても,医師,看護師,その他のコメディカルに口 腔外科,オーラルメディシン領域の疾患,治療に対 して広く情報と知識の提供と共有を行っていく必要 があると考える。 これまでに当科では,地域の医療機関との連携を 密にするために,地域医療の向上のために,医師 会,歯科医師会との合同カンファレンスや,市民向 けの公開講座を積極的に開催して,医科領域と歯科 領域の相互理解を図ってきた。今後もさらに一層, 口腔外科およびオーラルメディシン領域の疾患,治 療に対する啓発活動,広報活動を積極的に行い,互 いの専門性を理解した上で治療体制の充実,連携医 療の向上に努めていく必要があると考える。 文 献 1)渡部幸央,木瀬章人,呂 宗彦,若林 学,山本信治, 野村武史,須賀賢一郎,米津博文,中野洋子,片倉 朗, 高木多加志,内山健志,高野伸夫,柴原孝彦:東京歯科大 学千葉病院口腔外科における平成18年度初診患者の臨床統 計.歯科学報,109⑴:50∼57,2009. 2)三 木 千 奈 津,有 吉 靖 則,権 太 典 子,玉 川 戸 志,向 井 竜也,木村吉宏,仙田順子,杉本勝一,橋本範弘,紺田 敏之,寺井陽彦,島原政司 他:大阪医科大学付属病院歯 科口腔外科における新患患者動態―特に特定機能病院認定 前後の比較―.日口診誌,10:322∼329,1997. 3)中山敦史,丹下和久,米崎弘崇,松浦宏昭,黒岩裕一 朗,前多雅仁:春日井市民病院歯科口腔外科における紹介 患者の臨床統計.愛知学院大学歯学会誌,43巻1号:133 ∼137,2005. 4)堀野一人,大西 眞,大山登喜男:県立吉田病院歯科口 腔外科における最近20年間の外来新患患者の臨床統計的検 討.新潟歯学会雑誌,39巻2号:129∼133,2009. 5)高山裕司,児玉泰光,山中正文,勝見祐二,猪本正人, 高木律男:佐渡市立両津病院歯科口腔外科における外来お よび入院患者の臨床統計的観察 最近5年間の動向につい て.新潟歯学会雑誌,38巻2号:77∼85,2008. 6)西 久 保 周 一,花 上 伸 明,高 田 篤 史,森 崎 重 規,渡 邊 裕,外木守雄,山根源之:救急外来における小児患者の臨 床的検討.小児口腔外科,17巻2号:85∼89,2007. 7)中島 丘,長坂 浩,岡田春夫,溪 裕司,中島俊明, 遠見 治,磯部博行,加藤喜夫:地域歯科医師会と高次医 療機関との連携現状について.日歯医療管理会誌.41: 264∼275,2007. 表4 疾患別受診経路 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 193 ― 65 ―
Clinical Statistics for fiscal year 2009 : new patients at Tokyo Dental College Ichikawa General Hospital,
Dept. of Oral and Maxillofacial Surgery
Tomohiro KURIYAMA,Shuichi NISHIKUBO,Kenichirou UKICHI Takehiro ARISAKA,Kiyoto UJIGAWA,Yoshihiro TAKEYASU
Atushi TAKADA,Yutaka WATANABE Morio TONOGI,Gen-yuki YAMANE
Department of Oral Medicine, Oral and Maxillofacial Surgery, Ichikawa General Hospi-tal, Tokyo Dental College
Key words : Oral and Maxillofacial Surgery, Oral Medicine, Clinical Statistics, new patients, outpatient
We conducted a survey at the Department of Dentistry and Oral Surgery at Tokyo Dental College Ichikawa General Hospital.
Patients attending our department between April 1,2009 and March 31,2010 were surveyed with re-gard to sex,age,and disease,and whether the patient had been referred to us internally or externally.
A total of 6090 new patients were included. Of these,2779 were referred to us externally,with 2431 coming from other dental clinics and 348 from medical institutions. A total of 729 patients were re-ferred to us from other departments in our hospital. The total number of referrals from medical depart-ments was 1077,occupying 17.7% of total new patients. A trend was revealed toward cooperation be-tween the department of dentistry and oral surgery and other medical departments. In order to estab-lish cooperation with medical departments,knowledge about the oral manifestation of medical diseases is required. Knowledge regarding oral diseases and their treatment is required for medical doctors. The results indicate that close cooperation with medical departments will play a major role in the future of hos-pital dentistry and oral surgery. (The Shikwa Gakuho,111:185∼194,2011)
栗山,他:当科における初診患者の臨床統計 194