Title
水酸化カリウム賦活による焼酎粕由来活性炭の特性および電気
二重層キャパシタへの応用
Author(s)
江口 卓弥、田島 大輔
Citation
福岡工業大学総合研究機構研究所所報 第1巻 P23-P30
Issue Date
2018-12
URI
http://hdl.handle.net/11478/1217
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
Publisher
福岡工業大学 機関リポジトリ
FITREPO
水酸化カリウム賦活による焼酎粕由来活性炭の特性および
電気二重層キャパシタへの応用
江口 卓弥(大学院工学研究科 電気工学専攻)
田島 大輔(工学部 電気工学科)
Characteristics of activated carbon derived shochu waste by KOH activation and
application to electric double-layer capacitors
Takuya EGUCHI(Electrical Engineering, Graduate School of Engineering) Daisuke TASHIMA(Department of Electrical Engineering, Faculty of Engineering)
In this study, activated carbons were made from shochu waste for electrode materials of electric double-layer capacitor (EDLC). This paper was reported characteristics of shochu waste, activated carbon derived shochu waste and electrochemical analysis of the electrode of EDLC. The data indicated that the specific capacitance of the activated carbon used in the EDLC was increased by partial temperature-elevation activation.
Keywords:Shochu waste, activated carbon, electric double-layer capacitors
1. はじめに
近年,持続可能な社会への関心が高まっている。そのた め,省エネルギー化や再生可能エネルギー(太陽光発電, 風力発電)の施設の導入が進んでいる。そして,このよう なシステムや設備に蓄電デバイスを導入することにより, 省エネ,CO2の削減,電力系統の安定化に繋げるために(1), 蓄電デバイスの需要は今後高まると考えられる。蓄電デバ イスでもある電気二重層キャパシタは長寿命やメンテナン スフリー,高効率等の特性を有する点で期待されている。 また,持続可能な社会に向け,廃棄物の削減が求められて いる。本研究では,産業廃棄物である焼酎粕を電気二重層 キャパシタの電極材料へリサイクルし,産業廃棄物の有効 的な活用を行っている。 本研究では,焼酎粕から活性炭を作製し,電気二重層キ ャパシタの電極材料への応用を行った。活性炭は水酸化カ リウム(KOH)賦活により作製し,KOH 賦活による焼酎 粕活性炭の特性を調査した。また,その焼酎粕活性炭を電 極材料に用いた際の電気二重層キャパシタの特性を評価し た。これらの結果より,活性炭細孔構造を推測した。さら に,これらの結果から焼酎粕活性炭の最適な作製方法を提 案し,作製電極材料への応用した場合の評価を行った。 本論文では焼酎粕の基礎特性,KOH 賦活による焼酎粕活 性炭の特性並びに焼酎粕活性炭を電極材料に用いた際の電 気二重層キャパシタの特性,そして,最適な焼酎粕活性炭 の作製方法について述べる。2. 焼酎粕の基礎特性
〈2・1〉 糖・タンパク質の分析 焼酎粕は,焼酎を製 造する際に排出される焼酎の原料の残渣である(写真 1 (a))。焼酎廃液を遠心分離し,固形物を取り出し乾燥させ た焼酎粕を本研究では使用した(写真1(b))。分離した液 体に関しては,家畜の餌,肥料等などの利用が研究されて いる(2)。焼酎は,原料を糖化し,発酵させ糖をアルコールへ と変え蒸留し抽出される。故に,焼酎粕には,糖(グルコ ース)や発酵に使用する酵母がタンパク質であるため,焼 酎粕固形物成分を明確にするために,糖分析およびタンパ ク質分析を行った。本実験では,麦焼酎粕の分析を行った。 (a)焼酎廃液 (b)乾燥させた焼酎粕 写真1 焼酎粕Photo. 1. Shochu waste.
江口 卓弥, 田島 大輔 糖農度を測定し,焼酎粕の糖の含有率を算出した。まず, 50 ml チューブに焼酎粕を 0.5 g を量り,0.25 M 塩酸を 10 ml を加え糖の溶解を行った。その後,55 ℃の恒温水槽で 2 h 振盪させた。水冷した後,遠心分離機(Himac CR 21F) を用い,10000 rpm で 10 min 遠心分離し,上澄み液を採取 した。検量線試料として,グルコース(100 µg/ml,200 µg/ml,300 µg/ml,400 µg/ml,500 µg/ml)を用意し,試 料を純水で10 倍に希釈した。そして,試験管(Φ12 mm × 75 mm)に試料を 100 µl を入れた。次に 2.5 %フェノール 水溶液0.4 ml を加えボルテックスミキサーでよく撹拌させ た。続いて,濃硫酸 0.1 ml を一定速度で素早く液面に直接 滴下して,すぐに撹拌させた。室温に20 分以上放置し,紫 外可視光分光計JASCO 製(V-730iRM)を用い 490 nm で 吸光度を測定し,得られた検量線より糖濃度を算出した結 果を表1 に示す。そして,(1)式より含有率を算出した。
C %
100
(1) ここで,Gcは糖濃度(µg/ml),Pcはタンパク質濃度(µg/ml), Vは抽出した量(ml),Asは使用したサンプルの重さ(µg) である。焼酎粕の糖の含有率は0.4 × 10-4 %であり,採取し た焼酎粕固形物には糖はほとんど含まれていないことが明 らかになった。タンパク質の分析はLowry 法(4)を用いた。Lowry 法はウシ血清アルブミン(BSA: Bovine serum albumin)をスタンダードとして使用し,比色定量法よりタ ンパク質濃度算出し,(1)式を用いて含有率を算出した。 測 定 で は タ ン パ ク 質 分 析 キ ッ ト (Reducing agent and detergent compatible (RC DC) protein assay, Bio-Rad Inc.)を使用した。1.5-mL エッペンドルフチューブに,焼 酎粕を50 mg と BSA 1.26 mg/ml を 50 %と 25 %に純水で 希釈したものを用意した。それらの試料にRC 試薬Ⅰを 125 µl 加えボルテックスした(RC 試薬Ⅰ: RC DC タンパク質 分析のための還元剤)。その後,1 min 室温でインキュベー トし,それらの試料にRC 試薬Ⅱを 125 µl 加えボルテック スした(RC 試薬Ⅱ: RC DC タンパク質分析のための還元 剤)。そして,遠心分離機(Centrifuge 5424R 14000rcf) を用い13000 rpm で 5 min 遠心分離し,上澄みを捨て水分 がなくなるまで放置した。そして,A´試薬を 127 µl 加えボ ルテックスし,室温で5 min インキュベートした(A´試薬: 1 ml の A 試薬に対して S 試薬 20 µl 加えたもの,A 試薬: 酒 石酸アルカリ銅溶液,S 試薬: 比色分析のための界面活性剤 溶液)。その後,B 試薬を 1 ml 加えボルテックスした(B 試薬: 比色分析のためのフォリン試薬)。室温で 15 min イ ンキュベートした。そして,A´試薬と B 試薬の混合液をブ ランクとし,分光光度計島津製(Bio Spec-mini)を用いて 750 nm で吸光度を測定した。得られた検量線より焼酎粕の タンパク質濃度を算出した結果を表1 に示す。そして,(1) 式より焼酎粕のタンパク質含有率を算出した。その結果, 含有率は0.12 × 10-1 %であり,糖の含有率より高い値では あるが,採取した焼酎粕固形物にはタンパク質はほとんど 含まれていないと言える。このことから,焼酎粕固形物質 の主成分は粗繊維が占めていると考えられる。 表1 焼酎粕の糖濃度とタンパク質濃度
Table 1. The results of the glucose and the protein assay.
Samples name
Glucose
concentration
(µg/ml)
Protein
concentration
(µg/ml)
Wheat shochu
waste
2.1 240
〈2・2〉 焼酎粕の熱分析 焼酎粕固形物質の成分を明 確にするために,焼酎粕の熱分析を行った。2・1 の結果よ り,焼酎粕固形物質は,粗繊維と考えられた。粗繊維はセ ルロース,ヘミセルロース,リグニンから主に構成され, これらの熱分解温度が既知であるため,焼酎粕成分を推定 することができる。熱分析装置Rigaku 製(TG8120)を用 いTG(Thermogravimetry)曲線を測定し,DTG(Derivative thermogravimetry)曲線を算出した。焼酎粕を 10 mg を Pt 容器に入れ Ar ガス雰囲気中で 700 ℃まで 5 ℃/min で 昇温し測定を行った。図1 に TG 曲線の測定結果を示す。 200 ℃から 400 ℃の間で重量が大きく減少していること が分かる。そして,700℃において重量比率は約 15 %であ る。図2 に DTG 曲線の算出結果を示す。24℃から 110℃の 間の重量変化量は,焼酎粕に含まれる水分であると考えら れる。そして240 ℃から 400 ℃,180℃から 300 ℃,280 ℃ から550 ℃がそれぞれセルロース,ヘミセルロース,リグ ニンの熱分解温度である(5)。熱分解温度が重なっているため 成分を明確に分けることは困難であるが,ヘミセルロース はセルロースより熱分解が早いために,約280 ℃付近のピ ークがヘミセルロースであることが分かる。麦焼酎粕はヘ ミセルロースが他の成分より多く含まれていることが分か った。また,約600 ℃で焼酎粕の主な熱分解が終了するこ とが分かった。 図1 麦焼酎粕の TG 曲線Fig.1 TG curve of shochu waste.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 100 200 300 400 500 600 700 W eigh t r atio ( % ) Temperature (˚C)
図2 麦焼酎粕の DTG 曲線 Fig.2 DTG curve of shochu waste.
〈2 ・ 3 〉 焼 酎 粕 の 観 察 SEM ( Scanning electron microscope: JSM-5600LV)での焼酎粕の観察を行った(写
真2)。植物由来と考えられる残渣を確認することができた。
このことからも焼酎粕は粗繊維の集合体であると考えられ る。
写真2 焼酎粕の SEM 像
Photo.2. SEM images of shochu waste.
3. 焼酎粕活性炭の特性 〈3・1〉 炭化 焼酎粕を,アサヒ理化製作所製のセラミ ック電気管状炉(ARF-50KC)の中に入れ,700 mL/min の窒 素ガス気流中において,600 ℃まで昇温速度 5 ℃/min で 2 h で昇温させた後,600 ℃を維持した状態で 1 h 保持した。 その後,自然冷却により常温まで温度を下げ,炭化物を得 た。炭化物の収率は32.05±4.55 %であった。その後,ボー ルミル粉砕を行った。 〈3・2〉 KOH 賦活 次に炭化物に 8 mol/L の 水酸化カ リ ウ ム (KOH)水溶液を重量比で 1:0.5 ~ 1:8(炭化 物:KOH)で混ぜ合わせ,炭化物に十分に KOH が含浸する まで24 時間放置した。その後,電気管状炉で,700 mL/min の窒素ガス気流中において,目標温度まで昇温速度 5 ℃ /min にて昇温させた後,目標温度を 1 h 保持した。目標温 度は,800 ℃,900 ℃,1000 ℃でそれぞれ作製した。そ の後,自然冷却により常温まで温度を下げ,賦活物(活性炭) を得た。得られた活性炭にはカリウムイオンが残留してい るため, 1 mol/L の塩酸を混ぜ合わせ,カリウムイオンの 除去を行い,その後十分な量の蒸留水でpH が 7.0 近くにな るまで洗浄を行った。乾燥機(DX302)で十分に乾燥させ た。 〈3・3〉 比表面積・細孔径分布 自動比表面積,細孔 分布測定装置MicrotracBEL 製(BELSORP-mini)を用い て 吸 着 温 度 77 K で 窒 素 吸 着 等 温 線 を 測 定 し , BET (Brunaure-Emmett-Teller)法で活性炭の比表面積,BJH (Barrett-Joyner-Halenda)法でメソ孔分布,MP(Micro pore)法でマイクロ孔分布の測定を行った。表 2 に作製し た焼酎粕活性炭の細孔の全容量,メソ孔容量,マイクロ孔 0 100 200 300 400 500 600 700 -d w /d t ( m g/s ) Temperature (˚C)
Rice shochu waste
表2 活性炭の細孔の特性
Table. 2. Characteristics of activated carbon pores by KOH activation.
A 1:0.5 60 0.06 0.02 0.02 3.92 B 1:1 464 0.27 0.05 0.20 2.32 C 1:2 1170 0.61 0.10 0.49 2.09 D 1:3 1567 0.76 0.10 0.66 1.94 E 1:5 2023 0.97 0.10 0.92 1.92 F 1:6 1462 0.70 0.08 0.61 1.90 G 1:7 1848 0.81 0.05 0.79 1.76 H 1:8 1317 0.61 0.07 0.55 1.86 I 1:0.5 21 0.06 0.03 0.02 11.0 J 1:1 581 0.31 0.06 0.24 2.15 K 1:2 1172 0.63 0.10 0.50 2.15 L 1:3 1534 0.94 0.13 0.70 2.44 M 1:5 1920 0.99 0.14 0.89 2.06 N 1:6 2354 1.14 0.07 1.14 1.93 O 1:7 2619 1.48 0.11 1.47 2.25 P 1:8 2201 1.07 0.07 1.07 1.95 Q 1:5 81 0.06 0.03 0.04 3.20 R 1:6 143 0.18 0.12 0.07 5.14 RP-15 - - 1488 0.64 0.03 0.64 1.71 1000℃ M icropore volume (cm³/g) Average diameter (nm) 800℃ 900℃
Sample Carbon : KOH Temp.(ₒC) SSA
(m2/g) Total pore volume (cm3/g) M esopore volume (cm³/g)
江口 卓弥, 田島 大輔 容量,平均細孔径,比表面積の測定結果を示す。比較サン プルとして市販活性炭(RP-15)を用意した。電極材料とし ては,高比表面積な活性炭が求められている。焼酎粕活性 炭の最大の比表面積は2619 m2/g であり,市販活性炭の比 表面積を凌駕していることが分かる。KOH の含有量の増加 は比表面積の増加に有効であるが,あるところで比表面積 はそれ以上増加しないことを示す。これはKOH の含有量で 比表面積の制御の可能性を示す。図 3 に焼酎粕活性炭のマ イクロ孔容量と比表面積をプロットした図を示す。KOH 賦 活ではマイクロ孔の発達に伴い比表面積が増加することが 分かる。故に,KOH 賦活では,マイクロポーラスな活性炭 の作製が可能である。マイクロ孔は電極に応用した際の電 極の静電容量の増加に有効であり(6),結果的にセルのエネル ギー密度の増加に寄与する。図4 に MP 法より得られた賦 活温度別の活性炭のマイクロ孔の細孔分布を示す。賦活温 度でマイクロ孔の細孔分布が異なることが分かる。賦活温 度900 ℃の活性炭では,賦活温度 800 ℃の活性炭には見ら れない細孔が発達していることが分かる。さらに,賦活温 度 1000 ℃の活性炭のマイクロ孔は消滅している。また, この細孔分布の変化は,賦活温度と関係があることを示す。 図3 活性炭のマイクロ孔容量と比表面積
Fig.3. Micro pore volume vs. BET specific surface area.
〈3・4〉 活性炭の構造の評価 活性炭の構造の評価とし て,ラマン分光法より活性炭の黒鉛化度の評価を行った。 ラマンスペクトル測定装置(DRX Raman Microscope)を 用いて活性炭のラマンスペクトルを測定した。ラマンシフ ト1580 cm-1付近に現れるピークはG バンドと呼ばれグラ ファイト(Graphite)に起因するバンドであり,ラマンシ フト1360 cm-1付近に現れるピークはD バンドと呼ばれ, 構造の乱れ(Disorder)に起因するバンドである(7)。IV/IG より黒鉛化度(IV: D バンドと G バンドの間のラマンスペク トルの最小値), ID/IGより黒鉛化度及び結晶境界の比率を 算出し活性炭の構造評価を行った。レーザー(532 nm)を 光源とし出力1.0 mW で測定を行った。図 5 に活性炭作製 時の賦活温度の異なる活性炭のID/IGとIV/IGの値を示す。 賦活温度1000 ℃で作製した活性炭は,賦活温度 800 ℃, 900 ℃で作製した活性炭より IV/IGの値が低く,ID/IGの値 が高い。このことより,賦活温度 1000 ℃活性炭は,活性 炭の微結晶が成長し,マイクロ孔が閉孔になったと考えら れる。故に,麦焼酎粕活性炭作製の場合は,賦活温度1000 ℃ 以下が望ましいことが分かる。 (a) 賦活温度 800 ℃活性炭 (b) 賦活温度 900 ℃活性炭 (c) 賦活温度 1000 ℃活性炭 図4 活性炭のマイクロ孔分布
Fig.4. Micro pore distribution of activated carbons.
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 0 1000 2000 3000 M ic ro po re v olu me (c m³/ g)
BET specific surface area (m²/g) 800℃ 900℃ 1000℃ 0 1 2 3 4 5 0 0.5 1 1.5 2 dV p/d( dp ) Pore diameter (nm) 800 1-0.5 800 1-1 800 1-2 800 1-3 800 1-5 800 1:6 800 1-7 800 1-8 0 1 2 3 4 5 0 0.5 1 1.5 2 dV p/ d(dp ) Pore diameter (nm) 900 1-0.5 900 1-1 900 1-2 900 1-3 900 1-5 900 1:6 900 1-7 900 1-8 0 1 2 3 4 5 0 0.5 1 1.5 2 dV p/d(dp ) Pore diameter (nm) 1000 1-5 1000 1-6
図5 異なる賦活温度の活性炭のID/IGとIV/IGの値
Fig.5. ID/IG versus IV/IG.
〈3・5〉 活性炭の構造分析 FT-IR(Fourier transform infrared spectrometer, Cary670)を用いて得られる赤外スペク
トルより活性炭の構造を同定した。測定はKBr 錠剤法より 賦活温度が異なる活性炭を測定した。図 6 に測定した活性 炭の赤外吸収スペクトルを示す。1700 cm-1 ~ 1500 cm-1の 間にスペクトルの吸収が確認された。この波長領域は芳香 族のC=C に由来する吸収で Franklin が提案したカーボン のモデルの構造を示すと考えられている(8)。667 cm-1 の吸 収は芳香族C-H 面外変角振動に由来し,2360 cm-1 ~ 2330 cm-1はC≡C 伸縮振動,1716 cm-1 は C=O 伸縮振動に起因 する(9)(10)。活性炭の表面官能基であるカルボキシル基やフ ェノール基は,水系電解液は使用した場合,濡れ性の向上 や 静 電 容 量 の 増 加 に 寄 与 す る(11)。 賦 活 温 度 800 ℃ ~ 1000 ℃の間では活性炭の表面官能基の種に差異はほとん どないと考えられる。 図6 異なる賦活温度の活性炭の FTIR スペクトル
Fig.6. FTIR spectra of activated carbons activated at deference activation temperature.
〈3・6〉 KOH 賦活メカニズムの推定 焼酎粕炭化物を
KOH 賦 活 し た 際 の 賦 活 メ カ ニ ズ ム を TG , DTA (Differential thermal analysis)と提案されている KOH
賦活反応(12)より推定した。高比表面積が得られた賦活温度 900 ℃での賦活を熱分析装置で模擬した。焼酎粕 2 mg に対 して8 M KOH を 10 mg を混合し,Pt 容器に入れた。基準 サンプルとして Al2O3を用意した。温度プログラムは, 900 ℃まで 5 ℃/min で昇温し,30 min 保持とした。図 7 に得られたDTA 曲線を示す。60℃付近に吸熱反応が確認で きる。これはサンプルの脱水反応と考えられる。また,830℃ 付近に発熱反応を確認される。図8 に TG 曲線から算出さ れた DTG 曲線を示す。600 ℃から 800 ℃,800 ℃から 880 ℃,900 ℃の温度領域で DTG 曲線の減少が確認でき る。まず,600 ℃から 800 ℃における重量の減少は,焼酎 粕炭化物に含まれる炭素と KOH の反応に起因すると考え られる((1)反応) 6KOH + 2C → 2K +3H2 + 2K2CO3 (1) 次に,(2)反応における K2CO3の炭素による還元反応であ り,発熱反応を示す(13)。このため,800 ℃から 880 ℃にお ける重量の減少は(2)反応に起因すると考えられる。 K2CO3 + C → K2O + 2CO (2) そして,900 ℃の温度領域で(2)反応は(3)反応に進み, 活性炭細孔を発達させたと考えられる。 K2O + C → 2K + CO (3) 〈3・3〉で測定された賦活温度の異なる活性炭の細孔分布の 結果と合わせて,KOH 賦活反応の結果を検討すると,賦活 反応によって発達する細孔が異なることが示唆された。ま た,賦活反応は温度と密接な関係があることが分かる。 図7 擬似賦活実験の DTA 曲線
Fig.7. DTA curves.
0.9 1 1.1 1.2 1.3 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 ID /IG IV/IG WAC800 WAC900 WAC1000 degree of graphitization edge ratio low
low high high 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 Ab so rb an ce ( a.u .) Wave nunber (cm-1) WAC 1000 WAC 900 WAC 800 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 0 50 100 150 200 250 DT A ( µ V ) Times (min) SCKT1 60℃ 830℃
江口 卓弥, 田島 大輔 図8 擬似賦活実験の DTG 曲線 Fig.8. DTG curves. 〈3・7〉 焼酎粕活性炭の表面状態 FE-SEM(Field Emission SEM, JSM-7100F)を用いた焼酎粕炭化物および 焼酎粕活性炭の表面状態を観察した。焼酎粕活性炭試料は 賦活温度900 ℃,KOH 重量比 1 : 7 のサンプルを使用した。 写真3(a)に麦焼酎粕の炭化物の FE-SEM 画像を示す。炭 化物表面には,穴は確認することができない。写真3(b) に作製された焼酎粕活性炭のFE-SEM 画像を示す。活性炭 の表面に穴を確認することができる。賦活により細孔が発 達したと考えられる。写真3(c)に活性炭のマイクロ孔(細 孔径>50 nm)の FE-SEM 画像を示す。活性炭表面に幾つ かの細孔を確認することができる。細孔は円に似た形をし ていることが分かる。そして,写真3(d)に活性炭のメソ 孔(50 nm>細孔径>2 nm)の FE-SEM 画像を示す。活性 炭表面にもメソ孔が存在することが明らかとなった。活性 炭の一般的なモデルとして,枝分かれモデル(12)のように必 ずしも大きさ細孔から小さな細孔が発達するのではなく, 細孔入口からメソ孔が発達し得ることが分かる。また,写 真3(d)は写真 3(c)の細孔より非常に小さく KOH 賦活 により発達された細孔である可能性が示唆される。
4. 焼酎粕活性炭の電極としての特性
〈4・1〉 電極の作製と評価 作製した活性炭を用いて 電気二重層キャパシタ用の電極を作製した。電極は,活性 炭とKB(Ketjenblack),PTFE(Polytetrafiuoroethylene) を8:1:1 の割合で配合し電極を作製した。集電極には Ni メ ッシュを使用し,直径10 mm の鋳型に電極材料を入れプレ ス器を用いて5 MPa,130 ℃で集電極に圧着させた。電極 材料の重さは17.5 mg である。電気化学測定装置(HZ-5000) を用いてCV(Cyclic voltammetry)法より電極の比静電容 量を算出した((1)式)。F/g
∆ (2) 写真3 麦焼酎粕の炭化物と活性炭((a)は焼酎粕炭化物, (b)は焼酎粕活性炭,(c)は焼酎粕活性炭の細孔,(d)は 焼酎粕活性炭のメソ孔)Photo.3. Char and activated carbons of shochu waste ( (a) char of shochu waste, (b) activated carbons, (c) pore of shochu waste activated carbon, (d) meso pore of shochu waste activated carbon).
ここで,Cは比静電容量(F/g),mは電極材料の重量(g), Eは電位幅(V),t1とt2はCV 法での1サイクルの開始 時間と終止時間を示す。測定には,参照電極に Ag/AgCl, 対極にPt,電解液に 0.5 mol/L KOH 水溶液を使用し,電位 幅 -1~0 V,掃引速度 10 mV/s で測定を行った。そして, 活性炭の細孔容量との比較を行った。図 9 に賦活温度 800 ℃で作製した活性炭と賦活温度 900 ℃で作製した活 性炭から作製した電極の静電容量と作製された活性炭のマ イクロ孔容量を示す。マイクロ孔は比静電容量と密接に関 係しているため,賦活温度によって比静電容量の増加傾向 が異なった。賦活温度で増加傾向が異なる要因として,こ れまでの結果より,活性炭のマイクロ孔の構造に関係があ ると考えられる。賦活温度900 ℃活性炭は賦活温度 800 ℃ 活性炭と比較して,マイクロ孔容量に対して静電容量が低 い値を示した。このことから,賦活温度900 ℃で発達した 細孔が静電容量の増加に機能していないことが言える。 これらの結果より,KOH 賦活による活性炭マイクロ孔の 構造のモデルを推測した。得られた細孔分布のデータから 賦活温度800℃,賦活重量比 1:6 の細孔径 0.6nm の細孔の深 さを1 nm として,賦活重量比 1:6 の細孔径 0.6nm の細孔容 積を基準とし,細孔が下に拡大していると仮定して3D イメ ージソフト(Blender)を利用し,細孔モデルを推測した結果 を写真 7 に示す。賦活温度 800℃で発達する細孔分布のピ ークは細孔径0.6nm であるが,電解液のカリウムイオン径 が約0.3nm であること,得られた静電容量を考慮すると, 細孔は深さ方向に対して徐々に狭くなっていると考えられ る(写真4(a))。そして,賦活温度 900 ℃で発達した拡大 された細孔はイオンがアクセスするのが困難であることを 示唆した(写真4(b))。 -0.02 -0.015 -0.01 -0.005 0 0 50 100 150 200 250 DTG ( m g/ s) Times (min) SCKT1 600℃ 800℃ 880℃ 900℃
図9 静電容量と活性炭のマイクロ孔容量(○: 賦活温度 800 ℃活性炭,△: 賦活温度 900 ℃活性炭) Fig.9. Capacitances vs. micro pore volume (○: activation
temperature at 800 ℃ and △: activation temperature at 900 ℃).
(a) 800℃, 1:6 (b) 900℃, 1:6
写真4 賦活温度 800 ℃と 900 ℃での活性炭の推定された
マイクロ孔細孔構造
Photo.5. Estimated pore structure models of activated carbons activated at 800℃, 900℃ and at the KOH
weight ratio 1:6.
5. 活性炭の新規賦活法およびセルの作製
〈5・1〉 部分的昇温賦活法 活性炭の新規賦活法と
し て 部 分 的 昇 温 賦 活 (partial temperature-elevation activation : PTEA)法を提案した。PTEA 法は,KOH 賦活 により得られた活性炭の細孔をイオンの吸脱着のために有 効に活用する賦活方法である。提案するPTEA 法は,賦活 時の温度制御を 800℃まで昇温速度 5℃/min,800℃から 900℃を昇温速度 100℃/min,900℃ 1h 保持と設定し,賦 活重量比は1:6 とし活性炭を作製した。その後,全サンプル を塩酸で洗浄し,100℃で乾燥した。活性炭の比表面積と細 孔分布は,吸着温度77K で窒素吸着等温線を測定し,BET 法,BJH 法,MP 法で解析を行い,電極を作製し,CV 法よ り静電容量を算出した。表3 に PTEA 法より作製された活 性炭の特性を示す。活性炭の比表面積は2040 m2/g であり, メソ孔がやや発達した活性炭となった。メソ孔の発達の要 因としては急激な昇温による賦活工程で発生した炭酸ガス による活性化が考えられる。図10 に測定されたサイクリッ クボルタモグラムを示す。測定は掃引速度 10 mV/s,電解 液は0.5 mol/L KOH 水溶液で〈4・1〉と同様に行った。(1) 式を用いて算出された静電容量は270 F/g であり,最高賦活 温度が900 ℃で作製された活性炭としては,マイクロ孔容 量に対しての静電容量が高い値を示した。これは賦活時に 部分的に昇温速度を速めることにより,拡大された細孔に カリウムイオンがアクセス可能になったためであると考え られる。賦活温度900℃で,部分的に昇温速度を変化させる PTEA 法は,静電容量増加に有効な手段であることが分かっ た。また,PTEA 法を用いた高比表面活性炭を作製すれば, 更なる静電容量の増加に繋がると考えられる。 表3 PTEA 法より作製された活性炭の特性
Table 3. Characteristics of activated carbon prepared by PTEA method. SSA (m2/g) Micropore (cm3/g) Mesopore (cm3/g) 2040 0.99 0.30 図10 サイクリックボルタモグラム
Fig.10. Cyclic voltammogram.
〈5・2〉 フレキシブルキャパシタセルの作製と評価 PTEA 法を用いて作製した活性炭を用いてフレキシブルキ ャパシタセルを作製した。フレキブルな電極を作製するこ とによりキャパシタの利用用途が広がると考えられるた め,フレキブル電極を簡単な方法により作成した。電極の 大きさは5×5 cm,金属メッシュを使用し,電解液には 8 M KOH を使用した。比較サンプルとして,新活性炭(RP-15) を用意した。写真 5 に作製した電極を示す。柔軟性を有す る電極を作製した。そして,定電流法での充放電試験を行 った。エネルギー密度は,エネルギー換算法より算出し, 出力密度は,放電開始直後の端子電圧と電流値の積より算 出した。図11 に焼酎粕活性炭を使用した電極の充放曲線を 示す。電流密度を10 mA/g ~ 100 mA/g の間で変え測定を行 った。図12 に充放電試験よりえられた結果より,エネルギ ー密度および出力密度を算出し,ラゴンプロットした結果 を示す。焼酎粕活性炭を使用した電極のほうが市販活性炭 を使用した電極よりエネルギー密度,出力密度ともに上回 っていることが分かる。 0 50 100 150 200 250 300 0 0.5 1 1.5 2 Sp ec if ic capacita nc e ( F/g ) Micropore volume (cm³/g) 800℃ 900℃
-3
-2
-1
0
1
2
-1
-0.5
0
Cur
re
nt d
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y
(A
/g)
Potential voltage (V)
江口 卓弥, 田島 大輔
写真5 フレキシブルな電極
Photo.5. Flexible electrode.
図11 焼酎粕活性炭を使用した電極の放電曲線
Fig.11. Discharge curves of electrodes using shochu waste activated carbon.
図12 ラゴンプロット
Fig.12. Ragon Plot.
6. まとめ
本研究では,産業廃棄物である焼酎粕から活性炭を作製 し,蓄電デバイスである電気二重層キャパシタの電極への 応用を行った。PTEA 法を用いて作製された焼酎粕活性炭は, 市販活性炭より優れた蓄電デバイスの特性を示し,焼酎粕 活性炭の優位性を示した。 謝辞 本研究の糖・タンパク質分析の実験に協力頂いた国立研 究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構,食品総合研 究所,奥西智哉氏に深謝する。 (平成30年7月23日受付)文 献
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