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活動銀河の
MAXI 観測データの解析
明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系
14S1-004 岩崎 ちあき
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要旨
全天X 線監視装置「MAXI」が観測を行った活動銀河 NGC4151 と MCG-6-30-15 のデ ータを使用し、差分変動率法を用いて、それぞれの降着流の時間変化について調べた。解 析データには「MAXI」の day データを使用し、差分変動率法を用いて、2-4keV(L バン ド)、4-10keV(M バンド)、10-20keV(H バンド)ごとに 1 日から 288 日にわたる時間ビン幅 に対し差分変動率の結果を得た。得られた結果からはNGC4151 には、背景に 1 日より短 いタイムスケールの変動と100 日程度の長いタイムスケールの変動があることが示唆され る。一方、MCG-6-30-15 には、それら 2 つの変動に加えて、1~10 日程の中間のタイムス ケールの変動があることが示唆される。
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目次
1 X 線天文学
1.1 X 線天文学 1.2 全天 X 線天文観測装置「MAXI」2 活動銀河
2.1 活動銀河中心核 2.2 セイファート銀河 2.3 活動銀河中心核の統一モデル3 データ解析
3.1 研究対象 3.2 全データの図示 3.3 差分変動率 3.4 解析結果4 考察
5 参考文献
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1 X 線天文学
1.1 X 線天文学
X 線は生活していくなかで必要不可欠な存在になっている。病院などで使われるレント ゲン写真はX 線の高い透過力を利用して写真を撮影する技術である。人間が肉眼で見るこ とのできる光は「可視光」と呼ばれる領域であり、普段生活している上で支障はない。し かし、光の波長は様々なため、肉眼で確認できるものはごく一部に限られてくる。我々が 夜空を見上げた際に見える星は可視光でしか確認できなかったが、現在では技術が発達し 天体の観測は様々な方法で行われている。我々の目で確認できる可視光領域以外の波長で の観測も可能となり、宇宙の解明に役立ってきた。 人間が見ることのできる可視光を含め、電磁波は波長によっていくつかの領域に分かれ ている。電磁波は波長が短くなるに従って、エネルギーが高くなり、観測できる天体、現 象が異なる。X 線天文学では宇宙の高エネルギー現象超高温現象を対象としている。 X 線の波長はおよそ 10nm から 0.01nm の範囲にあり、可視光よりも短い波長である。 エネルギーは0.1keV から 100keV 程度である。X 線はその振動数の速さから、物質の分 子構造によらず、原子レベルで電子と相互作用し、透過率は元素の種類と原子の数によっ て決まる。 X 線は大気を透過することができないため X 線での天体観測は観測装置を上空に打ち上 げる必要があった。そのため、X 線による天体観測は 1960 年以降のロケットや人工衛星 の発展に伴って始まった。 1962 年、リカルド・ジャッコーニらが打ち上げた観測ロケットによって X 線星を発見 したことをはじめとしてX 線天文学は本格的に始動した。X 線星の発見により、近接連星 系における質量降着とX 線の放出の関係性の議論が深まった。 X 線天文学は、X 線望遠鏡のための光学素子や放射線検出器の開発・実験などの実験物 理学としての面を持ち、さらには観測から得たデータを解析してX 線を放射する天体や現 象などの、宇宙の解明に努めている。 図1.1 光の波長ごとの領域(JAXA)5
1.2 全天観測 X 線観測装置「MAXI」
図1.2 MAXI 本体
MAXI(Monitor of All-sky X-ray Image)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が国際宇宙ステ ーション(ISS)に搭載した、全天の X 線の強度変化を観測することのできる装置である。 以下にその概要をまとめておく。 大きさ 1.85m×0.8m×1m 質量 520kg 高度 400km 観測範囲 160°×1.5°(FWHM) 公転周期 約96 分 搭載機器 GSC(ガススリットカメラ) SSC(ソリッドステートスリットカメラ) MAXI には比例計数管を用いたガススリットカメラ(GSC)と X 線 CCD を用いたソリッド ステートスリットカメラ(SSC)が搭載されている。2 種類のカメラを搭載することで低エネ ルギーから高エネルギーの広いエネルギー帯のX 線を観測できる。 図1.3 左:比例計数管 右:X 線冷却 CCD
6 カメラはそれぞれ天頂方向と進行方向を向くように設置されている。ガス比例計数管を 用いたガススリットカメラ(GSC)は 2~30keV の X 線を検出し、広い検出面積を持つた め、より暗いX 線天体や広い範囲のエネルギーを持つ X 線天体の観測に適している。一 方、X 線 CCD カメラを用いたソリッドステートスリットカメラ(SSC)は 0.5~12keV の X 線を検出し、観測できる範囲はGSC より狭いが高い精度で天体の X 線スペクトルを調べ ることができる。GSC と SSC は長い視野を持っているため、国際宇宙ステーション (MAXI)が地球を 1 周することで全天に近い空を常に監視することができる。 図1.4 GSC(青)と SSC(緑)の観測範囲 X 線は、光子のエネルギーが大きいため光子ひとつひとつの検出を行う。その性質を応 用したX 線検出の1つが比例計数管を用いたものである。1970 年に X 線天文衛星ウフル に比例計数管が搭載されX 線の検出に成功している。しかし難点は、比例計数管だけでは X 線がどの方向から来ているかということはわからないということだった。MAXI ではこ の点が工夫され、GSC と SSC の2つに、スリットカメラを用いて X 線の位置を検出して いる。X 線の検出器に金属の板を並べたコリメータを置いて観測領域の幅をスリット状に 狭め、さらにスリットの方向に直行した方向は、比例計数管に備えてある一次元位置検出 能力を用いて、X 線の来る方向を決定している。 図1.5 スリットカメラ原理
7 ガススリットカメラ(GSC) ソリッドステートスリットカメラ(SSC) X 線検出器 一次元位置感応型比例計数管(12 台) Xe(99%)+CO2(1%) X 線 CCD(32 枚) 各 CCD25mm 角、1024×1024 ピクセル X 線エネルギー帯域 2-30keV 0.5-12keV 全検出面積 5350cm2 200cm2 エネルギー分解能 18%(5.9keV) <150eV(5.9keV) 視野 160°(長さ)×1.5°(半値幅)×2 方向 90°(長さ)×1.5°(半値幅)×2 方向 空のカバー率 瞬時に監視する空の領域は全天の 2% 1 周期ごとに全天の 90-98%を走査 瞬時に監視する空の領域は全天の 1.3% 1 周期ごとに全天の最大 70%を走査 スリット部開口面積 7.1cm2(検出器 1 台あたり) 1.35cm2 位置分解能 1mm 0.025mm(ピクセル) 位置決定精度 0.1 度 0.1 度 時間分解能 0.1 ミリ秒 5.8 秒 速報能力 リアルタイムデータ 全観測時間の 50%以上の間、データを即 座に地上に転送。 X 線天体が視野を横切ってから地上での データ解析を経てインターネットで速報 するまでに要する時間は 30 秒以下。 機上蓄積データ リアルタイムに提供されなかった残りの データはいったん機上に残される。 X 線天体が視野を横切ってから速報まで に要する時間は 20 分~3 時間。 ユーザー利用 速報受け取り 突発的な光度変化を起こした天体の情 報を一般ユーザーにインターネットを通じ て速報。 データ利用 一般ユーザーは Web ブラウザを通しイン ターネット経由の X 線天体や空領域の 「画像・エネルギースペクトル・光度曲線」 を取得 表1.1 MAXI 基本仕様
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2 活動銀河
2.1 活動銀河中心核
銀河は基本構造として円盤成分とバルジと呼ばれる球状の成分をもつ(ただし、楕円銀河 は円盤成分を持たない)。しかし、銀河にはもう1つ重要な成分がある。それが銀河中心核 (galactic nucleus)である。実際、不規則銀河や矮小銀河の一部を除くと、ほとんどすべて の銀河は銀河中心核をもっている。 銀河中心核には比較的個数密度の高い星団があるのではないかと考えられてきたが、巨 大ブラックホール(超大質量ブラックホール、supermassive balack hole、SMBH)がその 正体であることがわかってきた。実際、銀河系の中心部にも410 万 Mʘ の SMBH が存在 すると考えられている。ほとんどすべての銀河の中心核にSMBH があることは驚きだ が、中にはSMBH の強力な重力場を利用して、膨大なエネルギー放射(電磁波)やジェット を出しているものがある。そのような銀河中心核は、活動銀河中心核(active galactic nucleus、AGN)と呼ばれている(活動銀河核という表現も使われている)。 図2.1 楕円銀河 M87 の銀河中心核(左上の明るく輝いて見える場所)とジェット構造 活動銀河の標準的な理論モデルは、銀河中心にある106-9Mʘ の超大質量ブラックホール に向かって物質が落ち込むことによってエネルギーが放出される、というものである。物9 質がブラックホールに落下するとき、物質はブラックホールの周囲を回転する角運動量を 持つために、ブラックホールの近傍で降着円盤と呼ばれる扁平な円盤を形作る。降着円盤 内のガスの摩擦によって、落下するガスの重力エネルギーが熱エネルギーに変換され明る く見える。降着円盤からはジェットの放出がしばしば観測されるが、宇宙ジェットの形成 メカニズムはあまりよく分かっていない。この降着円盤は、質量を非常に効率よくエネル ギーに変換する「エンジン」とも考えることができ、物質が持つ質量エネルギーの約10% を放射エネルギーに変換できる。これは核融合で出せるエネルギーが質量エネルギーの約 1%であるのに比べて非常に効率的が高い。 このような活動が起こせるのは、活動銀河核の周囲に十分な量の物質がある場合であ る。ブラックホールが周囲のガスや塵をすべて「食べ尽くす」と、活動銀河核は膨大なエ ネルギー放出をやめて通常の銀河になると考えられている。 図2.2 銀河の円盤部の明るさを 1 とした中心部の明るさの比較 左:活動銀河NGC4151 右:通常銀河 NGC3351 AGN の研究は 1943 年に発表されたカール・セイファート(C.K.Seyfert)の論文に端を発 する。彼は近傍銀河の中で、とりわけ明るく輝く銀河中心核を持つものを選び、分光観測 を行った。その結果、電離ガスの運動速度が銀河の回転では説明できないほど大きな値を 持つものが発見された。当時はその原因がわからず、彼の論文も注目を集めることはなか った。しかし、1963 年にクェーサー(quasar)が発見され、同種の天体であることがわかっ てから、多くの研究者の注目を集めるようになった。それはクェーサーのエネルギー源と してSMBH 説が 1964 年に提案されたからである。70 年代になると、SMBH の周辺に形 成される降着ガス円盤の重要性が認識され、AGN のエネルギー放射のメカニズムが徐々 に理解されるようになった。 一方、観測的には、さまざまな波長帯での観測が進められるにつれ、AGN の多様性が 認識されるようになった。そもそもクェーサーは電波源として発見されたものだが、その 後の観測で電波源として観測されるものは一部であることがわかってきた。可視光はもち ろん赤外線やX 線で次々と AGN が発見されたのである。
10 そのようなAGN の理解に貢献したのが、近傍宇宙にある AGN の詳細な研究である。 近傍宇宙にある代表的なAGN はセイファートの名前にちなんでセイファート銀河(Seyfert galaxy)と呼ばれるようになり、80 年代にかけて精力的に研究が行われた。その結果、 AGN の統一モデルの姿が見えてきた。
2.2 セイファート銀河
セイファート銀河は、特に近傍宇宙で典型的に見られるAGN の種族の1つであり、比 較的低光度のクラスに属する。より高光度のAGN であるクェーサーとは、可視絶対光度 では-23 等級、X 線光度では 1044erg s-1程度を境にして区別されることが多い。ただし、 この境界は厳密に決まっているものではない。 ルイス・ホー(L.Ho)らがパロマー天文台のヘール望遠鏡を用いて行った、明るい近傍銀 河486 天体に対するスペクトル観測の結果によると、近傍宇宙にある銀河の約 10%がセイ ファート銀河に分類されている。なお、遠方宇宙において暗い天体を観測することは困難 であるため、セイファート銀河は近傍宇宙で観測されやすく遠方宇宙では見つかりにく い。ただし、セイファート銀河とクェーサーの分類は光度だけで区別されており、距離の 情報は定義に用いられない。 セイファート銀河の可視スペクトルには複数の強い輝線が見られるが、これらの輝線は 速度幅によって2 種類に分類される。 (1) 狭輝線:速度幅は比較的狭く、典型的には数百 km s-1である。許容線と禁制線の両方 に観測される。これらの輝線が放射される領域を狭輝線領域(narrow-line region、 NLR)と呼ぶ。 (2) 広輝線:速度幅は比較的広く、典型的には数千 km s-1であるが、中には数万km s-1に およぶ場合がある。許容線にしか観測されない。これらの輝線が放射される領域を広 輝線領域(broad-line region、BLR)と呼ぶ。 狭輝線と広輝線の速度幅の違いは、中心核からの距離の差に起因する。AGN の電離ガ ス雲の速度幅は中心核の周りのケプラー回転で近似できるので、銀河回転を無視すると、 SMBH の重力による回転速度 vrotは以下のように表される。 ����~210(1��)� −12( ��� 107� ʘ) 1 2�� �⁻¹ たとえば、r=0.01pc に BLR があると、vrot~2100km s-1となる。したがって、速度幅はそ の2 倍の 4200km s-1になり、BLR の典型的な速度幅になる。また、kpc スケールの距離 にあるNLR の電離ガス雲は銀河回転による速度が卓越しており、数百 km s-1の速度幅に なる。 狭輝線はすべてのセイファート銀河で観測されるが、広輝線は一部のセイファート銀河 でしか観測されない。このため、セイファート銀河は次の2つのタイプに分類される。 (1) 1 型セイファート銀河:広輝線と狭輝線の両方が観測される (2) 2 型セイファート銀河:狭輝線しか観測されない NLR BLR 典型的な速度幅 数百km s-1 数千km s-1 電子密度 102~106cm-3 1010~1012cm-3 電子温度 1 万 K 1 万 K 中心核からの距離 10pc~数 kpc 0.01~1pc 代表的な輝線 [OⅢ]、[NⅡ]、[OⅠ] 水素原子のバルマー線、FeⅡ 表2.1 NLR と BLR の性質の比較11 この分類は1974 年にエドワード・キャチキアン(E.Y.Khachikian)とダニエル・ウィー ドマン(D.W.Weedman)によって提案されたものである。1 型と 2 型セイファート銀河は、 近傍宇宙では約1 対 4 の割合で観測されている。 1 型と 2 型セイファート銀河は、実は同じ種族の天体であるが、見る方向の違いで別種 の天体のように観測される。その理由については、活動銀河中心核の統一モデルで改めて 説明する。 図2.3 セイファート銀河の可視スペクトル。 一番上のAGN では、幅の広い輝線が見えているのに対し、 一番下のAGN では、幅の狭い輝線しか見えていない。 真中のAGN では、両方が混在している。
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2.3 活動銀河中心核の統一モデル
AGN の統一モデル(unified model)とは、1 型と 2 型の AGN を別種族に天体と考えるの ではなく、観測者が天体を見込む角度が違うことにより本来同じ種族の天体が見かけ上別 種族の天体に見えていると考えるアイデアである。具体的には、光学的に厚い(光子の散乱 や吸収により不透明になっている)ガスやダストがドーナツのような形をした遮蔽体(トー ラス)を形成していて、このトーラスが降着円盤および BLR の外側に存在すると考える。 この場合、トーラスの回転軸方向からトーラス内側を見込むような角度でAGN を観測す ると、BLR がトーラスに隠されずに観測され、1 型として認識される。一方、トーラスの 赤道面方向から観測すると、BLR はトーラスに隠され、2 型として認識される。 図2.3 AGN の統一モデル このAGN 統一モデルの観測的証拠の1つとして重要なものに、1985 年のロベルト・ アントヌッチ(R.R.J.Antonucci)らによる観測結果がある。彼らは 2 型セイファート銀河 NGC1068 の可視偏光スペクトルを測定した。直接光スペクトルには速度幅の広い輝線が 見られない一方、偏光スペクトルには速度幅の広いHβ 線、HeⅡ輝線、FeⅡ放射など、1 型 セイファート銀河の特徴が見られた。このことは、NGC1068 では BLR がトーラス状の遮 蔽体により隠されていて、トーラスの回転軸方向に放射された光が散乱されて観測者に届 いていると考えれば理解できる。このとき、何がBLR 放射を散乱しているかが問題にな るが、偏光に波長依存性が見られないので、ダストによる散乱ではなく自由電子による散 乱が支配的であると考えられている(ダスト散乱であれば、波長の短い光ほど散乱を受けや 1 型 AGN 2 型 AGN
13 すいため、直接光スペクトルに比べ偏光スペクトルで連続光の傾きがより青くなるはずで ある)。ただし、すべての 2 型 AGN について偏光スペクトル中に BLR 放射の兆候が見ら れるわけではない。 この偏光分光観測に加え、近赤外線での分光観測でもAGN 統一モデルを支持する結果 が得られている。いくつかの2 型セイファート銀河について、可視光スペクトルには見ら れない速度幅の広い成分が、近赤外線スペクトル中の水素輝線に見られるようすが報告さ れている。これは、可視光に比べ近赤外線の方がダストに吸収されにくいため、可視光で 見てもトーラスに隠されて見えなかったBLR が近赤外線では見えているものと理解でき る。 トーラスの存在の間接的な証明として、先に述べたように、多くのAGN に円錐型の形 状をしたNLR が観測されていることがあげられる。輝線放射だけをとらえる特殊な撮像 観測を行い、狭輝線を放射するガスの空間分布を調べると、中心核を頂点とする円錐型に 分布しているのである。この状況は、中心核から全方位に向けて放射される光子のうちト ーラスで遮られるものはトーラス以遠のガスを電離させることができず、トーラスの開口 方向に放射される光子だけがトーラス以遠のガスを電離させてNLR を形成していると考 えれば説明できる。 トーラスの存在を示す別の重要な結果として、日本のX 線天文衛星「ぎんが」による観 測がある。栗木久光らは、2 型 AGN の X 線スペクトルが、1 型 AGN の X 線スペクトル が視線上にある物質によって大きな吸収を受けた形をしており、トーラス越しに中心核を 見ていると解釈できることを示した。 ただし、AGN 統一モデルは有効なモデルであるものの、AGN 統一モデルが成り立たな いような観測例もあることを認識しておく必要がある。
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3 データ解析
3.1 研究対象
本論文では、MAXI による 1 型セイファート銀河 NGC4151 と MCG-6-30-15 の観測デー タを解析した。それら2 つの AGN の諸元を以下にまとめる。 (1) NGC4151 距離 約6200 万光年 星座 りょうけん座 赤方偏移 0.003262 中心BH の質量 約1330 万 Mʘ タイプ 1 型セイファート銀河 表2.3 MCG-6-30-15 の諸元 図2.4 NGC4151 by SDSS15 (2) MCG-6-30-15 距離 1.1 億光年 星座 ケンタウルス座 赤方偏移 0.00775 中心BH の質量 約290 万 Mʘ タイプ 1 型セイファート銀河 表2.3 MCG-6-30-15 の諸元 図2.5 MCG-6-30-15 by HST/WFPC-2
3.2 全データの図示
MAXI のデータは、理研が公開しているデータをダウンロードしたものを使用する。ダ ウンロードしたデータはExcel で開くことができ、解析には Excel を用いた。 今回はday データを解析した。MAXI は 1 日に 16 回地球を公転するので、1 日(16 周 分)ごとのデータとしたものが day データとなっている。 データではX 線のエネルギーを 4 つに分けて表示されており、2-20keV を All バンド、 2-4keV を Low バンド、4-10keV を Med バンド、10-20keV を High バンドとする。All バ ンドはLow、Med、High を合わせたものである。図3.1 と図 3.2 には MAXI が観測した NGC4151 と MCG-6-30-15 の 2-20keV(A バン ド)、2-4keV(L バンド)、4-10keV(M バンド)、10-20keV(H バンド)の領域ごとに光子数を 観測日の時間軸に並べ図示した。
16 使用データ 理化学研究所が公開しているMAXI のアーカイブデータ 解析期間 NGC4151 55092.5~57927.5MJD MCG--6-30-15 55058.5~57948.5MJD 解析データ day データ(1 日を 1 点) 解析手段 Excel 縦軸 X 線強度(Photons/s/cm2) 横軸 修正ユリウス日 図3.1 MAXI により観測された NGC4151 の各エネルギー領域の X 線強度の時間変化
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図3.1 MAXI により観測された NGC4151 の各エネルギー領域の X 線強度の時間変化
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図3.2 MAXI により観測された MCG-6-30-15 の各エネルギー領域の X 線強度の時間変化
19 図3.2 MAXI により観測された MCG-6-30-15 の各エネルギー領域の X 線強度の時間変化
3.3 差分変動率
差分変動率法は、ある時間ごとにX 線強度の変動がどれだけであるかを調べることがで きる。ある時間ビン幅の一連のデータにつき、隣り合う2 ビンのデータについて「差の絶 対値の平均」の「和の平均」に対する比をとる。 ある時間幅の時系列観測データ:{xi}(j=1,2,3… … … N)について ∑�/2�=0 |�2�− �2�+1|2 ∑�/2�=0 �2�+ �2�+1 2 を計算したものが差分変動率である。20
最少時間幅のデータから倍々となっていく時間ビン幅ごとに、2 ビンずつデータをまと めて差分変動率を計算。時間幅が最少から最大にわたって近似的にパワースペクトルを求 めたことになる。
All バンド値 2 ビン 4 ビン 8 ビン 16 ビン A1 +A2(1) +A4(1) +A8(1) +A16(1)
A2 : : : A3 +A2(2) A4 : A5 : 図3.3 Excel でのビンごとの解析例 例として、2 ビンでは +�2(1) =(�1 + �2)2 +�2(2) =(�3 + �4)2 隣り合うデータを足し合わせ、平均を取ったものが上記の式である。4 ビンでは 2 ビンを 足したもの、8 ビンでは 4 ビンを足したもの、16 ビンでは 8 ビンを足したものとして計算 する。 さらに、同じ要領で差の計算も行う。 −�2(1) =(�1 − �2)2 この差分の絶対値を取って、差分変動率を求めると � = � � �=0 | − �2(�)| �2(�) この式は All バンドの 2 ビンについての差分変動率を求めたものである。これと同じよう にLow バンド、Med バンド、High バンドについて計算を行う。
差分の平均値はこの波長のフーリエ成分の振幅を求めることに相当する。
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3.4 解析結果
差分変動率法を用いて、1 日ごとの day データを解析した。隣り合う 2 ビンを順次足し ていき、倍々になっていくビン幅ごとに1 ビン 16 日になるまで差分変動率を計算した。 さらに長い時間幅については、もはや連続したデータ列は得られない。そこで、 NGC4151 に対しては、全観測時間を 72 日ごとに区切り、72 日ごとの平均強度を計算し た。その強度を1 ビン 72 日ごとの X 線強度と近似し、72 日、144 日、288 日の差分変動 率を計算した。一方、MCG-6-30-15 については、全期間を 36 日ごとに区切り、その平均 強度を計算した。そして1 ビン 36 日、72 日、144 日、288 日の差分変動率を計算した。 そうして、求められた差分変動率を隣り合う2 ビンの時間幅の関数として図 3.5、図 3.6 に示した。 図3.5 NGC4151 の各エネルギーバンドの変動率22
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得られた差分変動率の結果が実際のX 線変化と矛盾のないものになっているかを確認す るため、約1600 日間の X 線強度変化を L、M、H のバンドごと、ビン幅ごとに以下に図 示する。
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4 考察
今回の解析はMAXI による活動銀河 NGC4151 と MCG-6-30-15 の観測データを用い て、2-4keV(L バンド)、4-10keV(M バンド)、10-20keV(H バンド)の各エネルギー領域の X 線強度から 1 日から 288 日のタイムスケール(ビン幅)に対する差分変動率を求めた。 NGC4151 については、1 日から 16 日のタイムスケールでは、M バンドの差分変動率が L と H に比べて小さく出ている。図 3.7 から図 3.10 を見てみると、データがバラつい て、強度が0 に近づく割合が M バンドは、L・H バンドに比べて少ないことが見てとれ る。強度の平均に対するデータのバラつきを見ているが差分変動率なので、X 線強度変化 の様子は、差分変動率の様子と矛盾していない。また、始め右肩下がりだった差分変動率 が100 日あたりから水平になっている。これは、短いタイムスケールと長いタイムスケー ルにそれぞれ何かしらの要因があることを示している。 短いタイムスケールについては、差分変動率が時間ビン幅Δt のほぼ-12乗に比例して減少 していっていることがわかる。この傾向は、変動のピークは1 日よりも短いタイムスケー ルにあり、その変動が長いタイムスケールの領域ににじみ出ていると考えると説明でき る。(Inoue 他(2011)による。) この変動は、中心ブラックホール付近の X 線を放射して いる領域の変動と考えられる。この中で、M バンドの差分変動率が L バンド、H バンドに 比べて小さくなっている。 長いタイムスケールについては、それまでΔt の-12乗に比例していたものが100 日あたり を境にほぼ水平になっており、各バンドの差分変動率も短いタイムスケールに比べそれほ ど差がないことがわかる。つまり、中心ブラックホールから放射されるX 線の変動以外に X 線強度に何かしらの影響を与えるものがあると予想できる。これは、中心ブラックホー ルの外側から中心ブラックホールに向かって落ちていく物質の流れ方やその量が変動して いると考えられる。 MCG-6-30-15 については差分変動率が全体的に L、M、H の順に大きくなるような値を 取っている。図3.14 から図 3.20 までに表したグラフを見てみると、確かに X 線強度のば らつきはL バンドが一番小さく、H バンドが一番大きくなっている。加えて、NGC4151 ではΔt の-12乗に比例していた差分変動率がMCG-6-30-15 ではΔt の-12乗に比例せず全体的 にもっとゆるやかに右肩下がりになっている。これは、背景にNGC4151 の差分変動率と 同じような描像があると考えると、NGC4151 で考えられた短いタイムスケールと長いタ イムスケールの2 つの変動の間(中間のタイムスケール)に何かしらの変動が加わるからだ と考えられる。
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5 参考文献
・明星大学 2016 年度 卒業論文 東城直美「差分変動率法を用いた Sco X-1 時間変動 の解析」 ・明星大学 2016 年度 卒業論文 吉田行秀「差分変動率法を用いたブラックホール天 体LMC X-3 の長時間変動の解析」 ・講談社 BLUE BACKS 新天文学事典 谷口義明監修・JAXA 「MAXI」(http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/maxi/) ・Pogge, R. W. 2000, NewA R, 44,381
・Urry, C. M. & Padovani, P. 1995, PASP, 107, 803
・Chandra X-ray Observatory(https://www.nasa.gov/mission_pages/chandra/main/) ・Inoue, H. , Miyakawa, T. & Ebisawa, K. 2011, PASJ, 63, S1