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韓国半導体産業の発展と戦略的提携 : 三星電子の事例を中心として

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韓 国半 導体 産業 の発 展 と戦 略 的提携

三 星 電 子 の事 例 を 中心 と して

Fl J 、 一タ ハ 1.は じ め に 韓 国企 業,と りわ け三 星 電子 は 白紙 の状 態 か ら半導 体 事 業 をス ター トさせ, 先 進 国企 業 か らの 技 術 導 入 ・技 術 模 倣 い わ ゆ る 「従 属 的 」 な技 術 依 存 を通 じて,わ ず か10年 余 りの 短 い 期 間 に,著 しい 成 長 を成 し遂 げ て い る 。 そ し て,1992年 に は韓 国企 業 の み な らず,後 発 企 業 と して は初 め て マ ー ケ ッ ト ・ シ ェ ア トップの 座 に就 き,18年 間 にわ た っ てそ れ を保 持 して い る(2010年 基 準)。 さ ら に,次 世 代 製 品 開 発 の 側 面 に お い て も1992年 に 開 発 され た64 MDRAM(DRAM:記 憶 保 持 動 作 が 必 要 な随 時書 き込 み読 み 出 しメモ リ,以 下Mと 略 す る)か らは先 進 国企 業 を先 導 す る立 場 に なっ てい る。 この三 星電 子 の 高 い 地 位 は,多 岐 に わ た る半 導体 の なか で も,わ ず か10%前 後 を占 め てい る メモ リ領 域 に限 られ た こ とで はあ る。 だが,こ れ まで 先 進 国 企 業 の 独 占状 態 で あ っ た分 野 で あ る だ け に,そ の 意 味 は大 きい 。 この よ う に,後 か ら参 入 して きた三 星 電 子 が い か に して 先 進 国 企 業 を凌 駕 す る ほ どの 競 争 力 を持 つ よ う に な っ たの か とい う問 い に対 して,先 行 研 究 で は主 に先 進 国企 業 か らの 技 術 導 入 や 政 府 の 役 割,財 閥 企 業 の 経 営 戦 略(海 外 直 接 投 資DRAMへ の 集 中,オ ー ナ ー の カ リス マ 性 な ど)に その 答 え を求 め て い た。 と くに,技 術 に関 して は,包 括 的 な意 味 で 先 進 国 企 業 か らの 技 術 導 入 に前 面 的 に依 存 して 高 度 成 長 を成 し遂 げて きた こ とが 強 調 され て い る。 し キ ー ワ ー ド:半 導体,戦 略 的 提 携

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か し,こ う した既 存 研 究 の 分 析 枠 組 み で は,90年 代 以 降 に お け る三星 電 子 の 発 展 要 因 を十 分 に説 明 す る こ とが で きない とい うの が 本 稿 の 立 場 で あ る')。 とい うの も,1990年 代 以 降,世 界 半 導 体 市 場 で 有 力 な プ レイ ヤ ー と して, そ の 存 在 を示 す よ う に な っ た三 星 電 子 は注 目の ま と とな り,諸 先 進 国 企 業 か ら警 戒 の 目が 向 け られ 始 め て い た。 これ は技 術 蓄 積 をす べ て 自前 で 行 わ な け れ ば な らない とい う こ とを意 味 し,基 盤 技 術 が 脆 弱 な三 星 電 子 と して は極 め て 厳 しい局 面 をむ か え てい た とい え よ う。 さ らに,256M以 降(1992年)は 次 世 代 製 品 開 発 に際 して 新 しい 概 念 の 技 術 開 発 が 必 要 とされ る一 方,費 用 の 面 にお い て もこれ まで よ り,2倍 以 上 の研 究 開発 の投 資 費用 が 要 求 され る よ うに な っ た。 三 星 電 子 の 著 しい 発 展 は,ま さ に こ う した厳 しい 状 況 を乗 り越 えて 達 成 さ れ た もの で あ り,し たが って,90年 代 以 降 に お け る韓 国 半導 体 産 業 の発 展 要 因 を説 明 す る ため に は,新 た な視 点 を くわ え る必 要 性 が あ る と思 われ る。 と い うの も,技 術 的 に限 界 性 を有 して い た三 星 電 子 が 先 進 国 企 業 との 協 力 関 係 を持 たず に して,ま た,自 主 開 発 の み に依 存 して 最 先 端 と もい え るべ き技 術 を蓄 積 した とい う こ とに は,少 々疑 問 が 残 るか らで あ る。 言 い か えれ ば,戦 略 的 提 携 な しで は,三 星 電 子 の 今 日的 発 展 は なか っ た とい って もよい 。 そ れ ゆ え,そ の 発 展 を,戦 略 的 提 携 論 を抜 きに して 議 論 す る こ とはで きない と言 わ ざ る を え ない 。 以 上 の 問 題 意 識 か ら,本 稿 で は これ まで 軽 視 され て きた先 進 国 企 業 との 戦 略 的 提 携 の 観 点 か ら三 星 電 子 の 発 展 要 因 を さ ぐる こ とにす る。 2.先 行 研 究 の 批 判 的 検 討2) 前 述 の よ う に,本 稿 の 目的 は韓 国 半 導 体 産 業 の 発 展 要 因 を三 星 電 子 に焦 点 1)韓 国 半 導体 産 業 の 発 展 要 因 に 関 す る先 行 研 究 に つ い て は,拙 稿(2012)「 韓 国IT 産業 の 発 展 要 因 に 関 す る 諸 説 の 検 討 」 「環 太 平 洋 圏 経 営 研 究(桃 山 学 院 大 学)』 第 13号 を 参 照 され た い 。 2)こ の節 は,金 基 烈(2012)「 韓 国IT産 業 の 発 展 要 因 に関 す る 諸 説 の 検 討 」 「環 太 平 洋 圏 経 営研 究(桃 山 学 院 大 学)』 第13号 に負 う と ころ が 大 きい 。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携227 をあ て て,同 社 が い か に して 脆 弱 な保 有 資 源 の 問 題 を改 善 ・克 服 して 著 しい 成 長 を成 し遂 げ る こ とが で きたの か,そ の 真 意 を戦 略 的 提 携 の 観 点 か ら解 明 す る こ とで あ る。 で は,本 論 に入 る前 に,ま ず,世 界 市 場 にお け る三 星 電 子 の 地 位 を確 認 して お こ う。 表1は,2008∼09年 に お け る世 界 半 導 体 メ ー カ ーの 売 上 高 ラ ンキ ング を示 した もの で あ る。09年 現 在,イ ンテ ルが 前 年 比4.0%の シ ェ ア を落 と してい る もの の,約320億 ドル と第2位 の 三 星 電 子(約170億 ドル)と は約2倍 と い う大 差 をつ けて ,ト ップの座 に就いてい る。 ここで注 目すべ きは,後 発企 業 で あ っ た三 星 電 子 の 躍 進 ぶ りで あ る。2002年,同 社 は か つ て世 界 半導 体 産 業 を主 導 して きた 日米 企 業 を追 い 抜 き,第2位 の 半 導 体 企 業 に就 い て 以 来, そ の 地 位 を8年 連 続 保 持 して い る。 さ らに,2009年 の マ ー ケ ッ ト ・シェ ア に お い て 上 位10社 の な か で,8社 が マ イ ナ ス成 長 してい るな か で,韓 国企 業 で あ る三星 電 子 とHynixの み が シェ ア を伸 ば して い る。 また,半 導体 全 体 の市 場 シ ェ アで は,三 星 電 子 が7.6%の シ ェ ア を 占め て,第2位 に ラ ン ク され て い るが,DRAMな ど,メ モ リに限 って見 れ ば,三 星 電 子 が30%以 上 の シ ェア を 占め て お り,2位 のHynixと は10%以 上 の差 をつ けて トップの位 置 に あ る。 し か も,こ の高 い 市場 地 位 は18年 間(2009年 基 準)保 持 され て きて い る。金 額 に換 算 す る と,1993年 の売 上 が 約20億 ドル で あ った の に対 して,2008年 に は170億 ドル を超 えて お り,過 去,こ れ ほ ど急 激 に成 長 し,こ れ ほ ど長 い 期 間 に わ た って トップの 地 位 を維 持 して きた企 業 は他 に例 を見 ない とい われ て い る。 で は,こ う した三 星 電 子 の 競 争 力 は何 に規 定 され て い るの だ ろ うか 。 これ まで の 先 行 研 究 で は,主 に以 下 の3つ の 視 点 か ら検 討 され て きた。 第1に, よ り多 くの シ ェ ア と利 益 を獲 得 す べ く積 極 的 な設 備 投 資 を通 じて 先 進 国 か ら 製 造 装 置 を導 入 し生 産 能 力 を拡 大 した 。 しか も導 入 され た装 置 に は,「 半 導 体 製 造 技 術(プ ロセ ス 技 術)」 と 「熟 練 」 が 組 み込 まれ て い た た め に,韓 国企 業 は容 易 に高 性 能 の 製 品 を生 産 す る こ とが で きた,と 主 張 す る服 部 民 雄 の 「技 術 ・熟 練 節 約 的 発 展 論 」3)であ る。

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第2に,韓 国半 導 体 産 業 の 発 展 は先 進 国 企 業 か らの 技 術 移 転 に よ る もの で あ った 。 そ して,導 入 され た技 術 を足 掛 か りに,三 星 電子 はlM世 代 以 降,自 主 開発 段 階 へ 移 行 した と主 張 す る蓑 容 浩 の 「技 術 移 転 論 」4)であ る。 第3点 目 は韓 国半 導 体 産 業 の 発 展 要 因 を外 部 的 担 い 手 と して,「 日米 企 業 ⊥ 内 部 的 担 い 手 と して 「国家 ⊥ 「財 閥 企 業 」 の 三 者 の 相 互 関 係 か ら把 握 す る とい う宋 娘 沃 の 「三 者 同盟 論J5)で あ る。 こ れ らの先 行 研 究 自体,三 星電 子 の競 争力 を決 定 づ け る重 要 な要 因の ひ とつ と して 異 論 は ない が,そ れ ぞ れ が 限 界 を有 して い るの も,ま た,事 実であ る。 まず,技 術 ・熟 練 節 約 的 発 展 論 は,半 導 体 企 業 との 共 同開 発 の 過 程 で 技 術 が 培 養 され,そ れ が 製 造 装 置 の 技 術 的 発 展 につ なが る結 果 に な っ た とい う こ とを看 過 して い る。 これ まで,三 星 電 子 と装 置 メ ー カ ー は互 い に欠 落 して い る技 術 的 資 源 を相 互 補 完 す る とい っ た相 互 作 用 に基 づ い て 装 置 の 開 発 を進 め て きた。 これ は明 らか な戦 略 的 提 携 の1つ の 形 態 と して 見 るべ きで あ り,韓 国半 導 体 産 業 の 発 展 要 因 を製 造 装 置 と関 連 づ けて 議 論 す るの で あ れ ば 戦 略 的 提 携 論 の 領 域 まで 踏 み 込 んで 検 討 す べ きで あ る。 一 方,技 術 移転 論 に も検 討 すべ き問 題 が あ る。 それ は,lM世 代 以 降,三 星 電 子 は製 品 の 開 発 を 自前 で 行 う とい う 自主 技 術 段 階 に移 行 した と,主 張 して い る点 で あ る。 とこ ろが,吉 岡が 指 摘 して い る よ うに,DRAMは 集積 度 が 増 す につ れ て 開 発 の 難 易 度 は 高 くな る はず で あ る6)。つ ま り,あ る程 度 高集 積 化 した とこ ろで,三 星 電 子 の 自主 開 発 能 力 で は対 処 し きれ ない 後 発 企 業 の 技 術 的 限 界 が 生 じる はず なの で あ る。 そ れ は,本 稿 で 取 り扱 う三 星 電 子 にお け る 3)服 部 民 夫(1988)「 韓 国 の経 営 発 展』 文 眞堂,同(2001)「 技術 ・機 能節 約 的 発展 の 特 異 性 」松 本 厚 治 ・服 部 民 夫 編 『韓 国 経 済 の 解 剖 一先 進 国 移 行 論 は正 しか った の か 一』 文 眞 堂,同(2007)「 東 ア ジア 経 済 発 展 と 日本』 東 京 大 学 出 版 会 。 4)蓑 容 浩(1995)「 韓 国 半 導 体 産 業 の技 術 吸 収 と研 究 開発 一三星 電 子(株)の 事 例 研 究 一」 ソ ウル 大 学校 大 学 院 経 済 学博 士 学 位 論 文 。 5)宋 娘 沃(2005)「 技術 発 展 と半 導体 産 業 一韓 国半 導 体 産 業 の 発展 メ カニ ズ ム ー』 文 理 閣 。 6)吉 岡 英 美(2010)「 韓 国 の 工 業 化 と半 導 体 産 業 一世 界 市 場 に お け るサ ム ス ン電 子 の 発 展 一』 有 斐 閣,25頁 。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携229 256M開 発 事例 か ら も明 らか な よ う に,自 社 の 自主 開発 能 力 で は対 処 しきれ な い 技 術 的 限 界 に直 面 した三 星 電 子 が ,そ の代替策 として 自主技術開発 と並列 して 戦 略 的 提 携 を積 極 的 に活 用 して きた事 例 を,こ の 分 析 枠 組 み で は十 分 に 説 明 す る こ とが で きない,と い っ た限 界 が 生 じて い る。 三 星 電 子 は海 外 市 場 の 開 拓 と技 術 確 保 及 び研 究 開 発 を 円 滑 に進 め る た め に,1992年 か ら半 導 体 事 業 を 中心 に先 進 国企 業 との 戦 略 的提 携 を活発 に行 っ て きた7)。これ は先 発 企 業 に比 して経 営 資 源 が希 少 で あ っ た 三星 電子 に と り, そ れ ら巨 大 企 業 とグ ロ ーバ ル 市 場 で 競 争 を展 開 して い くため に は,提 携 が 重 要 な戦 略 的 手 段 で あ っ た こ とを意 味 す る に他 な らない 。 しか し,蓑 の 研 究 で は戦 略 的 提 携 を,韓 国企 業 の 技 術 レベ ル が 相 当 の 水 準 まで に到 達 して い る こ とを示 す もの と して 用 い られ る こ とはあ って も,そ れ が 半 導 体 産 業 の 発 展 に どの よ う な役 割 を果 た したの か につ い て 関 心 を向 け る こ とは なか った 。 三 者 同盟 論 は,分 析 のお よぶ 範 囲が1990年 まで とな っ てお り,90年 代 以降 の 発 展 要 因 につ い て は十 分 に説 明 され て い る とは言 い難 い。90年 代 は後 発 の 三 星 電 子 がDRAM分 野 に参 入 して 以 来,次 世 代 製 品 開 発 の側 面 にお い て 日本 企 業 を先 導 す る ほか,マ ーケ ッ ト ・シ ェ ア率 にお い て も世 界1位 を獲 得 した 時 期 で あ る。 こ う した成 果 は企 業 成 長 の 過 程 で 蓄 積 され た技 術 や ノ ウハ ウ に よ る もの,と して み る こ と もで きるが,自 社 独 自の 技 術 能 力 を超 え る技 術 分 野 に対 して は どの よ う に対 応 して い っ たか を説 明 す る こ とが で きない の で あ る。 この 点 が 明 らか に され ない 限 り,韓 国 半 導 体 産 業 の 発 展 要 因の 全 体 像 を 解 明 す る こ とはで きない と言 わ ざ る を え ない 。 これ と関 連 す るの が 日米 企 業 と財 閥 企 業 との 関 係 で あ るが,宋 は これ らを 韓 国半 導 体 産 業 発 展 の 重 要 な要 因 と して 位 置 づ け なが ら も,そ の 分 析 視 点 が 技 術 導 入 の み に絞 られ て い る。 三 星 電 子 はそ れ が 半 導 体 産 業 で 行 われ た が ど うか は別 に して,1986年 か ら現 在(2006年 基 準)に 至 る ま で,約129件 の戦 7)金 ス ク ・金 ム ン カ ン(1999)「 韓 国 半導 体 産 業 の 国際 戦 略 的提 携 に 関す る研 究 」 「産 経論 集(濟 州 大 學校pv光 産 業 研 究 所)』No.13,27頁 。

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略 的 提 携 を 日米 企 業 と行 っ て きた とい わ れ てお り8),ま して や 同社 が 半導 体 産 業 内 で,は じめ て 日米 企業 と対 等 な関係 で戦 略 的提 携 を結 ん だ の も90年 代 に 入 って か らの こ とで あ る。 以 上 の よ う な事 実 は,90年 代 以 降,技 術 的 資源 の 制 約 を受 け てい た三 星 電 子 が 最 先 端 技 術 の 獲 得 を求 め て 日米 企 業 との 戦 略 的 提 携 を積 極 的 に推 進 して きた流 れ と見 る こ とが で きる。 したが って,産 業 発 展 の 一 要 因 と して 日米 多 国籍 企 業 と財 閥 企 業 との 関 係 を論 じるの で あ れ ば そ の 手 段 と して 取 り上 げ られ て い る技 術 導 入 の 視 点 の み な らず,財 閥 企 業 との 相 互 関 係 か らな る戦 略 的 提 携 の 視 点 に まで 射 程 を もつ 必 要 性 が あ る だ ろ う。 しか しなが ら,宋 の 研 究 で は,「 日米 企 業 が韓 国半 導体 産業 の形 成 と発 展 に 貢 献 して きた」 と しなが ら も,日 米 企 業 と財 閥 企 業 との 戦 略 的 提 携 を半 導 体 産 業 発 展 の 重 要 な手 段 と して 位 置 づ け る とい う視 点 が 不 十 分 で あ る。 他 方,三 星 電 子 が 世 界 市 場 で トップの 地 位 にい る現 在 にお い て,日 米 企 業 に よ る技 術 移 転 は ほ とん ど無 くな っ た と して も,未 だ に様 々 な形 で の 政 府 か らの 支 援 が 存 在 す るの も確 か な事 実 で あ る。 しか し,こ れ は副 次 的 な要 因 と して 捉 え るべ きで あ り,90年 代 以 降 の韓 国半 導 体 産 業 の 発展 要 因 を的確 に捉 え る ため に は,企 業 戦 略 の 観 点 か らの 分 析 が 不 可 欠 で あ る と指 摘 せ ざ る を え ない 。 そ して,そ の 一 環 と して 注 目され るの が 日米 企 業(と くに 日本 企 業) との 戦 略 的 提 携 で あ り,重 要 な発 展 要 因 と して 認 識 す る こ とが で きる。 しか し,本 研 究 は先 行 研 究 を批 判 す る こ とを 目的 に して い る わ けで は ない 。 む し ろ,先 行 研 究 を踏 ま え なが ら,彼 らが 触 れ て い なか っ た部 分 を補 う こ とを志 向 す る もの で あ る。 なお,提 携 は経 営 資 源 や リス クの 共 有,新 製 品 の 開 発 や 市 場 参 入 の 期 間 短 8)李 偉 範 ・権 英 哲(2006)「 グ ローバ ル企 業 の 動態 的能 力 と提 携 一 三 星 電 子 を 中心 に 一」 「経営 教 育研 究(韓 国 経 営 学 会)』 第9巻 第2号 ,65頁 。宋 自身 も著書 のなか で,残 され た 課 題 の1つ と して,韓 国 半 導体 産 業 の グ ロー バ ル 展 開 に関 す る分析 とそ の 先 で 検 討 され る べ き戦 略 的 提 携 に関 して 取 り上 げ られ て い な い こ と を指 摘 して い る(宋 娘 沃(2005)前 掲 書,210頁)。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携 231 縮 デ フ ァ ク トス タ ン ダ ー ドの リ ー ド な ど を 目的 に 行 わ れ る もの で あ り,本 稿 で は,「 競 争 関係 に あ る企 業 同士 が 対 等性 を維 持 しなが ら,競 争 力 を高 め る とい う明 確 な戦 略 的 意 図 の も とで,共 通 の 目的 を もち,そ れ を達 成 す る ため に協 力 す る こ と」 と して捉 え る。 こ こで指 摘 す る 目的 とは,「 それ ぞ れ の 自社 の 中核 とな る資 源 を融 合 させ,新 た な価 値 創 造 を実現 す る こ と」 で あ る9)。そ して 協 力 企 業 同士 が 事 業 を展 開 して い くう えで 発 生 した リス ク と利 益 は常 に 共 有 され な けれ ば な らない 。 (表1)Fina1Globa1RevenueRakingfortheTop-10SemiconductorSuppliersin2009 (RevenueinMillionsofU.S.Dollars) 2008 Rank 2009 Rank CompanyName 2008 Revenue 2009 Revenue Percent Change Percent ofTotal 1 1 Intel 33,767 32,410 一4 .0 14ユ% 2 2 Samsung 16,902 17,496 3.5 7.6 3 3 Toshiba 11,081 10,319 一6 .9 4.5 4 4 TI 11,068 9,671 一12 .6 4.2 5 5 STMicroelectronics 10,325 8,510 一17 .6 3.7 8 6 Qualcomm 6,447 6,409 一1 .1 2.8 9 7 Hynix 6,023 6,246 3.7 2.7 12 8 AMD 5,455 5,207 一4 .6 2.3 6 9 RenesasTechnology 7,017 5,153 一26 .6 2.2 7 10 Sony 6,950 4,468 一35 .7 1.9 出 所:ア ジ ア 経 済 新 聞(韓 国 語),2010年3月18日 (http://www.asiae.co.kr/news/view.htm?idxno=2010031800012604755) 2010.8.20(現 資 料 はisuppliusA,一 部 修 正)。 9)戦 略 的 提 携 の 詳 しい 議 論 に つ い て はHame1,G,Y.L.Doz.,C.K,Prahalad.,(1989),Col-laboratewithyourCompetitorsandWin,HarvardBusinessReview,Jan-Feb,野 中 郁 次 郎(1991)「 戦 略 提 携 序 説 」 「ビ ジ ネ ス ・レ ビ ュ ー 』Vol.38,No.4,伊 藤 邦 雄 ・鈴 木 智 弘(1991)「 戦 略 的 提 携 に よ る グ ロ ー バ ル リ ン ケ ー ジ の 創 造 」 『ビ ジ ネ ス ・レ ビ ュ ー 』Vol.38,No.4,山 下 達 哉(1994)「 戦 略 的 提 携 に よ る 競 争 優 位 の 構 築 」 「富 士 論 叢 』 第40巻 第1号,Yoshino,M.Y.,Rangan,U.S.,(1995),Strategic Alliances,HarvardBusinessSchoolPress,松 行 彬 子(2000)「 国 際 戦 略 的 提 携 』 中 央 経 済 社,徳 田 昭 雄(2000)『 グ ロ ー バ ル 企 業 の 戦 略 的 提 携 』 ミ ネ ル ヴ ァ書 房 を 参 照 さ れ た い 。

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3.三 星 電 子 と戦 略 的 提 携 の必 要 性 一半導 体 産 業 に お け る戦 略 的提 携 の 意 義 DRAM市 場 は まだ まだ 拡 大 して い く市 場 で あ る。 日立 製作 所 の 牧本 次生 常 務(当 時)は 「今 後 パ ソ コ ンや マ ルチ メデ ィ ア機 器 は世 界 的 に普 及 し,半 導 体 メモ リ はい く らあ って も足 りな くな る。DRAMは か つ て高 度 成 長期 を迎 え る」1°)と述 べ て い る。 実 際,1969年 か ら99年 に至 る まで 世界DRAM市 場 の年 平 均 成 長率 は約15%の 右 肩上 が りを見 せ て お り'1),と くに93年 以 降 は年率 約 25%で 成 長 して い る'2)。こ う したDRAMの 成 長 ぶ りは誕 生 後30年 以上 を経 た 現 在 も,留 ま る こ とを し らず,こ れ ほ どまで に長 期 問 に わ た って,持 続 的 に 高 度 成 長 を し続 け る産 業 は他 に類 を見 ない 。 しか し,そ の 一 方 で は,メ ー カ ー 間の 技 術 革 新 競 争 も激 し く,現 状 で 満 足 して い て は,事 業 を行 う上 で 一 歩 も二 歩 も後 退 を余 儀 な くされ る。 他 方,前 節 で は韓 国 半導 体 産 業 の発 展 要 因 を,と くに90年 代 以 降 に焦 点 を 当 て て 分 析 す る場 合,戦 略 的 提 携 に関 す る議 論 を抜 きに して 明 らか にす る こ とはで きない とい う こ とを明 らか に して い る。 後 発 企 業 で あ る韓 国 企 業,と りわ け三 星 電 子 が,そ れ ら先 進 国企 業 とグ ロ ーバ ル 市 場 で 互 角 に競 争 を展 開 して い くため に は,提 携 が 重 要 な戦 略 的 手 段 で あ っ たの で あ る。 さ らに,戦 略 的 提 携 が 相 互 補 完 性 を含 意 して い る こ とを勘 案 す れ ば 三 星 電 子 の 技 術 水 準 が90年 代 以 降 一 定 の レベ ル 達 した こ と も同社 を戦 略 的提 携 に向 か わせ た重 要 な一 要 因 と して あ げ る こ とが で きよ う。 しか し,我 々 は こ こで,図1で 見 る よ う に,戦 略 的 提 携 が 三 星 電 子 の み な らず,日 本 電 気(以 下,NEC)や 東 芝 な ど,か つ て世 界 半 導 体 産 業 を支 配 し 10)日 経BP社 編(1995)「 日経 ビ ジ ネ ス』5月22日 号,46頁 。 11)禿 節 文(2003)「 日本 の 半 導体 産業 にお け る イノベ ー シ ョ ン経 営 を実 践 す る ため の 提 言 」 『経 済経 営研 究 一我 が 国 の 半導 体 産 業 とイ ノベ ー シ ョ ン(日 本 政 策投 資銀 行 設備 投 資研 究所)』Vol.23,7頁 。 12)日 経BP社 編(1995)前 掲 書,46頁 。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携233 て きた先 進 国企 業 に も重 要 な戦 略 的 手 段 で あ っ た こ とに留 意 しな けれ ば な ら ない 。 そ れ は,DRAM事 業 が 資 本 集 約 度 の 極 め て 高 い 産業 を基 盤 と して い る ため で あ る。 そ れ と同時 に,DRAM技 術 の 急 激 な進 歩 と熾 烈 な企 業 間 の 開発 競 争 と相 ま って,先 進 国企 業 とい え ど も,単 一 企 業 で はす べ て の 技 術 を保 有 した り,巨 額 投 資 を1社 の み で行 った りす る こ とは,も はや 不 可 能 で あ った, こ とが 背 景 にあ る。 これ はい か に先 進 国 企 業 で あ ろ う と も,も はや 自社 の 経 営 資 源 の み でDRAM事 業 を展 開 して い くの は困 難 で,自 社 の 内部 資 源 は と も か く,外 部 資 源 を積 極 的 に活 用 しなが ら,次 世 代 製 品 の 開 発 を進 め る とい う 戦 略 的 視 点 が 企 業 に とって 必要 に な って きた こ と を意味 す る にほ か な らない 。 た とえ ば,表2で 見 る よ うに,1Mの 半 導 体 を生 産 す るた め に は,研 究 開発 費 用 と生 産 ラ イ ン建 設 費 用 を合 わせ て 約3億8千 万 ドル の 投 資 費 が 必 要 で あ るの に対 して,次 世 代 製 品 で あ る4Mの 場 合 は約6億8千 万 ドルの 費用 が かか る。 さ らに256Mは16M対 比 約4倍 に相 当 す る38億 ドルの 費用 が かか る とさ れ て い る。 す な わ ち,新 工 程 へ 進 む度 に,投 資 費 用 は倍 々で 増 大 す るの で あ る。 と くに,256Mの38億 ドル とい う投 資 金 額 は 日本 の大 企 業 の 年 間営 業 利 益 を は るか に超 え る金 額 で あ る。 だ だ し,こ の よ う な膨 大 な資 金 を投 資 した か ら とい って,半 導 体 産 業 で競 争 力 を確 保 て きる とは 限 らない 。 とい うの も, DRAM産 業 は膨 大 な投 資 が 必 要 な う え に,技 術 革 新 の ス ピー ドも極 め て速 い とい う特 徴 を持 って い るか らで あ る。 一 般 的 に,企 業 レベ ルで,技 術 の 開 発 か ら新 しい 製 品 が 生 まれ る まで の 過 程 を考 え る場 合,具 体 的 な イ メ ー ジ と して 自社 の み が 保 有 す る内 部 の 技 術 的 資 源 に基 づ い て 独 自性 の 強 い 技 術 を開 発 し,最 終 的 に製 品 化 に繋 げて い く状 況 を描 くこ とが で きる'3)。しか し,DRAM産 業 の場 合,現 世代 のデ バ イス(た とえ ば,1M)か ら,次 世 代(4M),次 々世 代(16M)と い う よ う に斬 新 的 に技 術 が 進 化 して い く。 しか も,「3年4倍 則 」 とい う こ とばが 示 唆 す る よう 13)柳 町功(1995)「 韓 国 半 導体 産 業 に お け る技術 蓄積 と国 際競 争 力 」 陳柄 富 ・林 悼 史 編 「ア ジ ア の技 術 発 展 と技 術 移 転』 文 眞 堂,112頁 。

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に,3年 こ と に,確 実 に 集積 度 は4倍 に増 して い くので あ る。 た だ,3年 の周 期 とい って も,各 製 品 の ラ イ フ ・サ イ クル は集 積 化 が 増 す につ れ て 短 縮 化 の 一 途 を辿 って い るの が 現 状 で あ り ,こ う した ラ イ フ ・サ イ クル の 短 縮 化 現 象 は,技 術 市 場 環 境 を極 め て 不 確 実 な もの に し,そ れ が 企 業 の 収 益 悪 化 と製 品 開発 の ス ピ ー ドに拍 車 をか けて い た。 これ と関 連 して,DRAM価 格 は生 産 開 始 時 点 か ら下 落 し始 め,最 後 は1個 当 た り1∼2ド ル まで暴 落 す る。 とい うの は,集 積 率 の 高 い新 た な製 品が 開発 され る こ とで,古 い 世 代 の 半 導 体 が 売 れ な くな り,需 要 と供 給 の バ ラ ンス が 崩 れ るか らで あ る'4)。た と えば,64Mの 場 合,93年 の 生 産 開 始 の 時 点 で は1 個 当 た り300ド ル で あ っ たが,98年 に な る と1個 当 た り約13ド ル に まで暴 落 して い る。 そ して,同 年 次 世代 製 品(256M)が 登 場 す る と1個 当 た りの価 格 が496ド ル と,価 格 は再 び高 騰 して い る15)。 したが って,次 世 代 製 品 を開 発 した時 点 か ら量 産,そ して 販 売 とい っ た一 連 の 企 業 行 動 を最 長 で も3年 以 内 に完 了 させ ね ば な らな い 。 な ぜ な ら,表3 で 示 して い る よ う に,三 星 電 子 を含 めて 東 芝,NECの よ う なDRAM産 業 で常 に先 行 して きた大 手 企 業 さ え も量 産 技 術 の 確 保 まで に,約2年 の 年 月 を費 や して い る。 つ ま り,極 論 に な るか も知 れ な いが,企 業 と して は2∼3年 以 内 に 量 産体 制 を構 築 し,1年 以 内 に何 千 億 円 に もな る投 資額 を上 回 る売上 高 を達 成 させ ね ば な らない16)。世 代 ご とに若干 の 差異 は見 られ る もの の,上 述 の よ うに, 14)趙 南 成(2005)「 半 導 体 成 功 の 決 め手 は プ ロセ ス技 術 の 革 新」 日本 に寝付 くグ ロー バ ル 企 業研 究 会 ・日経 ビズ テ ッ ク編 『サ ム ス ンの 研 究一 卓 越 した 競 争 力 の 根 源 を 探 る一 』 日経BP社,105-106頁 。 15)こ れ が 約3∼4年 の周 期 を持 つ シ リコ ン ・サ イ ク ル とい う もの であ り,企 業 間競 争 の 激 化 に よる 急 激 な 需給 の ア ンバ ラ ンス に よっ て 生 じる と され て い る。 16)半 導 体 企 業 は 平 均 に して 売 上 高 の約10%を 研 究 開発 に費 や してい る とい うデー タ が あ る 。 個 別 企 業 か ら見 れ ば(1990年 基 準),Motorola9.5%,三 星 電子ll.8%, NEC14%,金 星 エ レク トロ ン(現LG電 子)33.8%と な ってい る。 なお,半 導体 産 業 の み な らず,す べ て の 産 業 を対 象 に した 場 合,研 究 開 発 の 投 資 比 率 が 世 界 で 最 も高 い とい わ れ て い る の が 米 国 で あ り,そ の 比 率 は平 均 に して4.8%と され て い る 。 これ らの デ ー タか ら,半 導 体 開 発 にお い て 研 究 開 発 費 用 の 比 率 は他 産 業 に比 して極 め て 高 い こ とが うか が え られ る(表 容 浩(1993)「 わ が 国 にお け る半 導 体 産

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携 235 DRAMは 約3年 で 製 品 周 期 の 成 熟 期 を迎 えて しま うか らで あ る'7)。 この よ う な厳 しい 競 争 条 件 の なか で 迅 速 な戦 略 行 動 が で きな けれ ば,グ ロ ーバ ル競 争 か らの 落 伍 は必 至 で あ る。 しか も,新 しい世代が登場す る度 に上 述 した一 連 の 企 業 行 動 を継 続 して 行 う必 要 性 が あ り,企 業 に とって 大 きな負 担 にな っ て い るの も,ま た,事 実 で あ る18)。そ して,こ れ は半 導体 事 業 を展 開 して い くう えで,企 業 単 独 の 能 力 で は対 応 で きな くな って い る こ とを意 味 す る に ほか な らない 。 そ こで,後 発 企 業 の み な らず,半 導 体 事 業 に参 入 して い るす べ て の 企 業 にお い て 戦 略 的 提 携 の 誘 因が 高 ま って くるの で あ る。 現 実 に 図1はDRAM産 業 での 戦 略 的提 携 の 現況 を示 した もので あ る。256Mと い う限 られ た分 野 で はあ るが,こ の 図 を見 る限 り,先 発 の 日米 企 業 で もDRAM産 業 にお い て 戦 略 的 提 携 を積 極 的 に行 って きた こ とが わか る。 以 上 の よ う に,DRAM企 業 は例 外 な く,時 間 の 制 約 と財 務 的 な限界 とい う 現 状 問 題 を乗 り越 え な けれ ば な らない 。 つ ま り,DRAM産 業 で高 い市 場 シ ェ ア を獲 得 し,相 応 の 収 益 を得 る ため には,絶 え間 な く,し か も競 合 他 社 よ り, 先 駆 けて 次 世 代 製 品 を市 場 に送 り込 む必 要 が あ る。 そ して,そ れ を実 現 す る ため に は,巨 額 な設 備 投 資 と研 究 開 発 投 資 に耐 え な けれ ば ば らない 。 総 じて い え ば,半 導 体 企 業 は,迅 速 な意 思 決 定 能 力 と共 に,資 金 調 達 能 力,開 発 能 力,生 産 能 力 を 同時 に,し か も継 続 的 に揃 えて お か な け れ ば,DRAM産 業 で 勝 ち抜 く とこ ろか,生 き残 る こ とさ えで きない とい う こ とで あ る。 実 際 こ 業 の 現 況 と課 題 」 第66号,国 会 図書 館 立 法 資料 分 析 室,5頁)。 しか も,こ れ に設 備投 資 費 まで くわ え る とそ の 金 額 は さ らに 巨 額 化 して い くの で あ る。 17)64Mを 例 に とる と,93年 の生 産 開始 の 時 点で は1個 当 た り300ド ル であ っ たが1998 年 に な る と1個 当 た り約13ド ル に ま で暴 落 して い る 。 そ して,同 年 次 世 代 製 品 (256M)が 登 場 す る と1個 当 た りの 価 格 が496ド ル で取 引 さ れ てお り,価 格 は再 び 高騰 して い る 。 ハ ンギ ョ レ新 聞,1998年4月30日 付 け(韓 国語)。 三星 電 子 は 256Mを 世 界で 初 め て試 作 品 に成 功 した こ とで多 大 な先 行 利 益 を上 げ て い る 。 18)一 般 的 に,DRAMを3年 に1度 集 積 度 を4倍 に高 め るた め に は,毎 年1000億 円 の 設 備 投 資 と要 素 技 術 の研 究 者 を含 め て,1000人 以 上 の研 究 者 が 必 要 と さ れ る (日経BP社 編(1995)「 日経 ビ ジ ネ ス』5月22号,49頁)。 そ して,三 星 電子 の場 合,DRAM関 連 の研究 者 は1700人 に達 してい る(1993年 基 準,日 経BP社 編(1993) 「日経 ビジ ネ ス』8月30日 号,41頁)。

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う した厳 しい 経 営 環 境 に耐 え きれ ず,撤 退 を余 儀 な くされ た企 業 例 は数 多 く 存 在 して い る。 た とえば,90年 代 半 ば まで は,DRAM産 業 に進 出 して い る企 業 は20社 で あ っ た の に対 して,2006年 か らは8社 と半分 以上 の 企業 が 撤退 し て い る(表4)。 (表2)DRAM世 代 別 投 資 費 (単位:億 ドル) 1M 4M 16M 64M 256M 1G 量 産 ラ イ ン投 資 3.5 6 10 15 30 60 主要設 備数(台) 138 203 261 310 400 500 研究 開発投 資 0.3 o.s 1.5 3 3 15 出所:産 業 研 究 院(1994)「2000年 代 尖 端 技 術 産 業 の ビジ ョンと発 展 課 題 一半 導 体 ・LCD 産 業 一』78頁 。 (表3)量 産 技 術 の 確 立 にか か った期 間 64K 256K 1M 4M 16M 三星 電子 82.2--85.1 85.1--86.3 87.3--89ユ 89.4--91.2 92.1∼94ユ NEC 803∼82.3 83,184.3 85.2∼88ユ 883∼90.4 91.1--94.1 東芝 80.1--83.4 83.1--85ユ 88,3∼9α4 88.3∼90.4 91.1--94ユ 出所:表 容 浩(1995)「 韓 国 半 導 体 産 業 の技 術 吸 収 と研 究 開 発 」ソウル 大 学 博 士 学 位 論 文,59頁(源 資 料 はDataquest)。 (図1)256MDRAMの 開 発 を巡 る主 な戦 略 的 提 携(1995年 基 準)

出所:毎 日経 済 新 聞,1995年12月8日 付 け(韓 国 語)。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携237 この よ う に,い か に先 進 国企 業 とい え と も,DRAM産 業 で競 争 力 の構 築 に 必 要 な能 力 す べ て を 自社 単 独 で 構 築 す る こ とはで きない 。 そ こで,戦 略 的 提 携 の 役 割 の 重 要 性 が 強 調 され る わ けで あ る。 す な わ ち,こ れ まで 半 導 体 産 業 は資 本 集 約 的 産 業 と して 認 識 され て きたが,1990年 代 以 降 か らは技術 高 度 化 が 進 み,以 前 に も増 して 設 備 投 資 と研 究 開 発 の 巨 額 化 が 要 求 され,事 業 遂 行 上 の リス ク は極 め て 高 くな って い る。 そ の 結 果,リ ス ク分 散 を 目的 と した 提 携 が 増 え る な ど,企 業 間競 争 構 造 に も様 々 な変 化 を もた ら したの で あ る。 (表4)DRAM業 界における参入企 業 数の推 移 1990-1995 1995-1997 2000-2001 200/-2003 2003-2005 2006∼ Micron IBM TI Micron Motorola IBM 三 星 電 子 三 星 電 子 TI Micron 三 星 電 子 三 星 電 子 現代 電子 Motorola 三 星 電 子

Hynix Micron Hynix

LG電 子 三 星 電 子 Hynix

In丘neon Hynix Micron

Fujitsu 現代電子 Qimonda

Elpida In丘neon Infineon

Siemens LG電 子 Micron

Mitsubishi Elpida Elpida

NEC Fujitsu Elpida

Winbond PSC PSC

Hitachi Siemens Nanya

PSC Nanya Nanya

Mitsubishi NEC PSC

Nanya ProMOS ProMOS

Toshiba Hitachi ProMOS

ProMOS Winbond Inotera

Oki Mitsubishi Vanguard UMC Toshiba NipponSteel Oki Cypress Winbond AllianceSem TI-Acer 計20社 計15社 計11社 計9社 計9社 計8社 出所 チ ャン・ソクイン(2006)『 韓 国 主 力 産 業 の グ ローバ ル 競 争 分 析 と政 策 課 題 」 産 業 研 究 院251頁(一 部 修 正,現 資 料 はGartner)。

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4.NECと の 戦 略 的 提 携 一256MDRAMの 共 同 研 究 開 発 こ こ まで の 考 察 か ら,DRAM産 業 に と り提 携 は,競 争力 を構築 して い くう えで,必 要 不 可 欠 な戦 略 的手 段 で あ る こ とが 明 らか に な った 。 以下 で は,256 Mの 共 同 開発 を 巡 る 三星 電子 とNECと の 戦 略 的提 携 の事 例 を取 り上 げ,そ れ が どの よ う な背 景 で 成 立 され,そ して どの よ う な成 果 を もた ら したの か を検 討 す る。 (1)競 争 環 境 の 変 化 と戦 略 的 提 携 の 背 景 DRAM事 業 にお い て 三 星 電 子 は これ まで ① 集 中 化 戦 略,② 跳 躍 戦 略,③ 並 列 開発 シス テ ム とい う3つ の 戦 略 を展 開 して きた と言 わ れ て い る19)。そ して, 自社 の 能 力 を超 え る技 術 分 野 に対 して は,先 進 国 企 業 か らの 技 術 導 入 に依 存 しなが ら,そ れ を足掛 か りに して次 世代 製 品の開発 を進 め て きた。 しか し,1990 年 代 以 降,三 星 電 子 がDRAM分 野 で 著 しい 成 長 を成 し遂 げ るや,先 進 国か ら 技 術 移 転 の 拒 否,特 許 提 訴 な ど,様 々な形 での 技術 牽 制 を受 け る よ うに な り, 結 果 と して 次 世 代 製 品 を開 発 す る う えで,十 分 とい え る よ う な技 術 的 資 源 を 獲 得 す る こ とが で きな くな っ た。 こ う した なか で,三 星 電 子 の 経 営 資 源(た とえ ば最 先 端 技 術)に 対 す る ア プ ロ ーチ の 仕 方 も変 わ って い たの で あ る。 一 方,企 業 が 高 い 利 益 を得 る ため に は,自 社 製 品 に対 して 市 場 の 要 求 に合 う性 能 を実 現 しなけ れ ば な らな い。DRAMで い え ば,高 集積 化 の実 現 で あ る。 しか し,集 積 度 が 増 す につ れ て 製 品 開 発 の 難 易 度 は高 くな る。 三星 電 子 は64 K・256K世 代 で は チ ップ の デ ザ イ ンや材 料,生 産 ノ ウハ ウ を 日米 企業 か ら導 入 し,1M・4M世 代 で も 日米 企 業 の 開発 情報 や技 術 ノ ウハ ウ を利 用 した。 ま た,16M世 代 開発 は,lM・4M世 代 の 開発 と量 産 を通 じて 蓄積 した技 術 と経 験 か ら得 られ た独 自技 術 に よ る もの で あ っ た2°)。しか し,1992年 か ら開 発 競 19)詳 し くは,宋 娘 沃(2005)「 技 術 発 展 と半 導体 産業 一韓 国 半導 体 産 業 の 発展 メ カニ ズ ム ー』 文 理 閣 を参 照 され た い 。 20)三 星 電 子 電 子株 式会 社 編(1999)「 三 星 電 子 電 子30年 史』,296-297頁 。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携 239 争 が 始 まっ た256Mの 開 発 は前 世 代 の 開 発 と量 産 を通 じて蓄積 した技 術 と経 験 で は対 応 で きない 新 しい 概 念 の 技 術 開 発 が 必 要 とされ る もの で あ っ た。 くわ え る と,256Mを 開発 す る際 に鍵 を握 るの は微 細 化 技術 で あ り,半 導 体 製 品 の 高 集 積 化 の 牽 引 役 と して 世 界 中の 半 導 体 メ ー カ ーが 先 を争 って 開 発 を 進 め て い る技 術 分 野 で あ る21)。簡 単 にい えば,「 セ ル(記 憶 素 子:以 下,素 子 と略 す る)を 小 さ く して,ア ル ミ線 の 幅 を細 くす る」22)とい うや り方 で あ り, と くに,256Mを 開発 す る場 合 は線 の 幅 を0.25mま で に細 くしな け れば な ら ない の で あ る。 しか し,こ の 線 幅 の具 現 は これ ま での64M(0.35m),16M (0.5m)の 量 産 製 品 に比 べ て,技 術 的 なハ ー ドルが 高 く23),しか も,こ れ ら の256M関 連 の微 細 加 工 技術 は,三 星 電 子 が最 も脆 弱 な技 術分 野 と して指摘 さ れ て きた もの で あ る。 これ につ い て,朱 大 永 は 「16M以 降,次 世 代 製 品 の 開発 の ため には絶 対 的 条 件 な とな る微 細 加 工 技 術 と関 連 基 盤 技 術 な どで は,ま だ技 術 確 保 が 遅 れ て い る」24)と指摘 して い る 。 また,1994年5月 に政 府 主 導 に よ っ て発 足 され た 「半導 体 ・LCD産 業 分 科 委 員 会(産 業 研 究 院主 催)」 に よ って作 成 され た研 究 報 告 書 で も,同 関 連 の 技 術 不 足 問 題 が 指 摘 され て い る。 具 体 的 に は,こ の 時 点 で 韓 国企 業 の 技 術 水 準 は0.3m線 幅 具 現 の研 究 段 階 に留 ま っ てお り,先 進 国企 業 とは約1年 の技 術 格 差 が あ っ た と され る25)。同研 究 院 を含 め て,こ の よ う な技 術 的 評 価 は,三 星 電 子 固有 の もの で は ない 。 しか し,韓 国 国 内 にお い て 同社 が 占め る比 率 が50∼70%と 極 めて 高 い こ とや 技術 開発 分 野 にお い て常 21)杉 本茂 樹 ・神垣 哲 也 ・上條 浩 幸(2004)「 東 芝 レ ビュ ー』Vol。59No.8,2頁 。 22)日 経BP社 編(1995年),前 掲 書,46頁 。 23)三 星 電 子株 式会 社 編(1999)「 三 星 電 子30年 史』,384頁 。 24)朱 大 永(1992)「 半 導体 産 業 の 急 激 な変 化 と我 が 国の対 応 』 産業 研 究 院,43-44頁 。 25)韓 国 企業 にお け る技 術 評 価 の 詳細 につ い て は,韓 国産 業研 究 院(1994)「2000年 代 先端 技 術 産 業 の ビジ ョ ン と発 展 課題 』,81頁,韓 国科 学技 術 処(1992.4)「21世 紀 先 導技 術 開 発事 業 一超 高 集積 半 導 体(256MDRAM)研 究 企 画(案)一 』,18-19 頁 を参 照 され た い 。 さ らに,三 星 電 子 側 も当 時 の 技 術 水 準 につ い て 「基 礎 基 盤 技 術 」 の 分 野 は脆 弱 で あ っ た と述 べ て い る。 三 星電 子 株 式 会社 編(1999)『 三 星 電 子 30年 史』,384頁 。

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に先 行 して い た こ とな どを考 慮 す れ ば,こ う した技 術 的 評 価 は三 星 電 子 に当 て は ま る もの だ と推 測 で きる。 こ う した なか で,か つ て の よう に,自 社 単 独 で 次世 代 製 品 を開発 す る には, まず,時 間的 な余 裕 が ない 一 方 で,投 入 で きる資 源 に も制 約 が あ り,財 務 的 な リス ク も大 きい とい う現 状 問 題 に直 面 す る。 そ れ ゆ え,三 星 電 子 は 自主 技 術 開発 と並 列 して,強 力 的 なパ ー トナ ー と組 んで 次 世 代 製 品 の 早 期 開 発 を推 進 す る とい う戦 略 的 意 図 が あ っ た。 と くに,「 ウチ が 下 請 け と して 使 わ れ る よ うな提 携 をや っ て も意 味 が な い」, 「256M以 降 は 対 等 な 関 係 で協 力 で き るパ ー トナ ー を探 した い」 と三星 電 子 の 李 潤 雨 副 社 長(現 副 会 長)が 述 べ てい る よ うに,同 社 は16M世 代 が競 争 の 中 心 で あ っ た1993年 ごろか ら,こ の世 代 で トップ の座 を確 保 し,そ の 力 をバ ッ ク に して,国 際 戦 略 的 提 携 の 交 渉 力 を有 利 に展 開 す る とい う狙 い が あ っ た26)。 言 い か えれ ば,NECと の戦 略 的提 携 は三 星 電 子 が 先 進 国企 業 と対 等 な 関係 で 結 ん だ協 力 関 係,い わ ば 「戦 略 的 」 な提 携 の 最 初 の ケ ー スで あ っ た。 そ れ を 勘 案 す れ ば,三 星 電子 は256M以 降,戦 略 的提携 を技術 開発 の重 要 な手段 と し て 認 識 して い た こ とが 読 み 取 れ る。 と ころ で,256Mの 共 同 開発 を 目的 と した戦 略 的提 携 の 動 きは,三 星 電子 の み な らず,先 進 国企 業 に も見 られ て い る。 た とえ ば,(図1)に も示 して い る よ う に,沖 電 気 は256Mの 共 同開発 と2000億 円 に も及 ぶ 開発 費 用 の分 担 を 目 的 に1995年12月 ソニ ー と戦 略 的 提 携 を結 んで い る 。 と くに共 同 開発 は0.25 m級 の 微 細 加 工 技 術 分 野 にそ の 重 点 が 置 かれ て い た。 当時 の 沖電 気 は256M 開発 で 三星 電 子 や 東 芝,NECと い った競 合 他 社 にか な りの後 れ を とっ てお り, そ の 解 決 策 と して ソニ ー との 提 携 を選 んだ の で あ る27)。一 方,東 芝,IBM,Si-emensも,1992年12月256M共 同 開発 を 目指 して戦 略 的提 携 を締 結 して い る が,そ の具 体 的 な 目的 は沖 電気 の事 例 と同 じ く,膨 大 な投 資費 用 の分担 と0.25 26)日 経BP社 編 『日 経 ビ ジ ネ ス 』1993年8月30日 号,42頁 。 27)毎 日 経 済 新 聞,1995年12月8日 付 け(韓 国 語)。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携 241 mと い う微 細 加 工 技 術 の 開発 で あ っ た。 そ して,こ の 提 携 に よ り,人 ・物 ・ 金 とい う経 営 資 源 を各 社 と もほ ぼ三 分 の 一 の 負 担 で 済 ませ る こ とが で きた28), と評 価 され て い る。 こ う した諸 事 例 が示 す よ うに0.25m級 の微 細加 工 技 術 は256Mを 開発 す る う えで 避 けて は通 れ ない 技 術 分 野 で あ り,た とえ先 進 国 企 業 とい え と も, 自社 内 の 経 営 資 源 の み に依 存 す る だ けで は不 十 分 で,他 企 業 の ユ ニ ー ク な経 営 資 源 を も積 極 的 に活 用 す る とい う戦 略 的 な視 座 と して 提 携 が 企 業 に と り必 要 に な って い るの で あ る。 す な わ ち,DRAM産 業 にお い て,提 携 は最 も効 率 的 か つ,有 効 な戦 略 的 手段 と して位 置 づ け る こ とが で きる とい う こ とであ る。 (2)超 微 細 加 工 技 術 に関 す る協 力 体 制 構 築 1994年3月,三 星 電 子 は256Mの 共 同研 究 開発 を 目的 に 日本 のNECと 戦 略 的 提 携 を した。 当 時 のNECは トップサ プ ラ イ ヤ ー企 業 と して,自 社 独 自の戦 略 を展 開 して きた企 業 で あ り,自 社 技 術 に対 す る絶 対 的 な信 頼 と強 み の 自負 か ら戦 略 的 提 携 に は消 極 的 で あ っ た。 しか し,90年 代 に入 る と外 部 的 問題 と して,急 激 に進 む 円高 現 象 や,バ ブル 崩 壊 に よ る不 況 問 題,半 導 体 摩 擦 が 浮 上 し,内 部 的 に は,巨 額 な研 究 開発投 資 設 備 投 資 と技 術 的 資 源 の不 足 な ど, 経 営 資 源 の 制 約 とい う緊 急 問 題 が 発 生 して い た。 よ って,よ り効 率 的 な経 営 を図 る た め に,率 先 して戦 略 的提 携 を進 め る よ うに なっ たの で あ る29)。つ ま り, NECは90年 代 以 降,環 境 変 化 が急 激 に進 むな か で,こ れ まで世 界 半導 体 市 場 を席 巻 して きたNECと い え ど も自社 内部 の経 営 資 源 だ け で は,も はや対 応 で きな くな っ た とい う背 景 が あ っ た。 そ こで,三 星 電 子 と戦 略 的 提 携 とい う協 力 関 係 を構築 す る こ とで,膨 大 な投 資 費 を含 め て 様 々 な 自社 資 源 を半 分 で 済 28)中 塚 晴 夫(1999)「256MDRAM開 発 に お け るIBM,シ ー メ ン ス 及 び 東 芝 の パ ー ト ナ リ ン グ 」 『オ ペ レ ー シ ョ ン ズ ・リ サ ー チ:経 営 の 科 学(日 本 オ ペ レ ー シ ョ ン ズ ・ リ サ ー チ 学 会)』Vol.44,No.10(10月 号),542-543頁,546頁 。 29)小 川 卓 也(1995)「 戦 略 的 提 携 一[競 争 し な が ら協 力 し て い く]関 係 と は 何 か:パ ー トナ ー シ ッ プ 戦 略 の 【理 論 と 実 践 】』 エ ル コ,279頁,日 本 電 気 社 史 編 纂 室 編 (1999)「 日 本 電 気 株 式 会 社 百 年 史 』,870頁 。

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ませ る とい う狙 い が あ っ たの で あ る。 さ らに,こ の 両 社 の 提 携 は,か つ ての 世界DRAM市 場 を支 配 して きたNEC と1993年 か ら市 場 シ ェ ア トップ の座 を獲 得 した もの の,後 発 企 業 で あ っ た三 星 電 子 が 対 等 な関 係 で提 携 を結 ん だ こ とや,業 界 の1,2位 の企 業 同士 が 協 力 す る とい う こ とで,当 時 の 日韓 両 国 の マ ス コ ミに大 き く取 り上 げ られ,報 じ られ て い た こ とは記 憶 に新 しい 。 そ して,こ の 提 携 は膨 大 な研 究 費 用 の 負 担 を軽 減 す る こ とを主 な 目的 と して い たが,そ の 他 に三 星 電 子 がNECに 対 して 0.25m線 幅 具 現 の加 工 技術 を利 用 した 論理 回路 につ い て の技術 協 力 を要請 し て い た。 そ れ に対 して,三 星 電 子 半 導 体 部 門企 画 部 長(当 時)崔 生 林 氏 は, 「従 来 のDRAMを 構成 す る基 本 セ ル(素 子)構 造 とは異 な る全 く新 しいセ ル を 共 同 開発 す る予 定 で あ る」 と述 べ て い る3°)。要 す る に両 社 の提 携 はDRAM製 造 に関 す る技 術 協 力 で あ り,と りわ け,(設 計/マ ス ク設 計分 野)と 前工 程(ウ ェハ ー加 工)分 野 で の微 細 加 工技 術 に関 す る技術 協 力 で あ った とい え よ う(図 2)a とこ ろで,半 導 体 を製 造 す る ため の 技 術 とい って も,そ の 領 域 は① 要 素 技 術,② イ ン テ グ レー シ ョン技 術,お よ び,③ 量 産 技 術 の3つ に分 け られ る。 と くに① は半 導 体 製 造 工 程 を構戒 す る最 小 基 本 単 位 の プ ロセ ス 技 術 の こ とを 指 し,そ の なか に含 まれ る リ ソ グ ラ フ ィ技 術 とエ ッチ ン グ技 術 を ま とめ て, 微 細 加 工 技 術 と呼 ぶ31)。 一 方,DRAMの 回路 は,素 子 とそ れ らを結 ぶ ア ル ミの 線 で構 成 され て い る。 具 体 的 に は,直 径 数 十cmの シ リコ ン ウ ェハ ーの う え に無 数 の 素 子 が 集 積 され るチ ップ を複 数 造 りこみ,こ れ らを分離 し,実 装 す る こ とに よっ て完 成 す る。 30)毎 日経 済新 聞1994年3月2日 付 け(韓 国語)。 ま た,産 業研 究 院の 朱 大永 は,三 星 電子 とNEC問 で行 わ れ て い た戦 略 的提 携 をつ い て,「 三 星 電 子 はNECの256M分 野 の 設 計 及 び 基礎 技 術 を獲 得 す る こ とが で き る と判 断 され る」 と指 摘 して い る。 詳 し くは オサ ンボ ング他(1999)『 産 業 別 戦 略提 携 一国 内12個 産 業 を 中心 に』 産業 研 究 院109頁 を参 照 され た い 。 31)湯 之 上 隆(2004)「 技術 力 か ら見 た 日本半 導 体 産 業 の 国際 競 争力 」 「ITECResearch PaperSeries』04-07,6-7頁 。

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韓 国 半 導 体 産 業 の 発 展 と戦 略 的 提 携243 と く に チ ッ プ 当 た りの 素 子 の 数 が 多 け れ ば,記 憶 容 量 も増 え る32)。そ の 反 面, チ ッ プ の 小 型 化 が 進 め ば 進 む ほ ど,コ ス ト削 減 効 果 は 大 き く な り,企 業 の 利 益 率 も大 幅 に ア ッ プ す る 。 た と え ば,チ ッ プ の 面 積 が80%に な れ ば,理 論 上, 生 産 性(1枚 の ウ ェ ハ ー に か ら と れ る 個 数)は25%上 が る 。 そ し て,60%に な れ ば,60∼70%の 生 産 性 が 向 上 す る と言 わ れ て い る33)。 総 じて い え ば,チ ッ プ の 面 積 を 極 限 ま で に 小 さ く し,そ の な か に,よ り多 くの 素 子 を 集 積 す る こ とで,製 品 の 機 能 と性 能 が 向 上 す る 。 そ の た め,い か に 素 子 の 寸 法 を 極 限 ま で に 小 さ く し,線 の 幅 を 細 く して ゆ くか が 次 世 代 製 品 開 発 の 鍵 と な る の で あ る 。 く わ え る と,64M用 の チ ッ プ に は6千700万 個 の 素 子 が 詰 め 込 ま れ,線 幅 を0.35mま で 細 め て い る 。 しか し,次 世 代 製 品 で あ る256Mを 開 発 す る た め に は,ひ と つ の チ ッ プ に お よ そ4倍 に 相 当 す る2億 7千 万 個 以 上 の 素 子 を 詰 め 込 む 必 要 が あ り,そ の た め に は,線 の 幅 も0.25m ま で に 細 く し な け れ ば な ら な い の で あ る34)。しか も,こ う した 加 工 は 極 め て 高 い 精 密 度 が 要 求 さ れ る の で,わ ず か な 塵 の 付 着 や 微 細 な 振 動 も許 さ れ な い 。 こ の よ う に,当 時 に お い て,256Mレ ベ ル の 技 術 分 野 は,開 発 難 易 度 が 極 め て 高 く,技 術 的 課 題 も多 く残 さ れ て い た 。 しか も,こ の 技 術 分 野 は,微 細 化 が 進 む ほ ど,投 資 額 の 巨 額 化 を 含 め て,開 発 リ ス ク も大 き く な る とい う 特 性 が あ っ た 。 よ っ て,既 述 の よ う に,先 進 国(主 に 日米 企 業)企 業 さ え も,戦 略 的 提 携 に よ る 共 同 開 発 を 積 極 的 に 進 め て い た の で あ る 。 一 方,こ う し た 微 細 加 工 技 術 の 重 要 性 と開 発 の 困 難 性 に つ い て は 韓 国 政 府 も十 分 認 識 して い た 。 そ して,政 府 機 関 で あ る 科 学 技 術 処(現 教 育 科 学 技 術 部),逓 信 部(現 情 報 通 信 部),商 工 資 源 部(知 識 経 済 部)の 主 導 の 下 で,1993 年ll月 か ら97年ll月 ま で,4年 に わ た り,256M関 連 の核 心 基 盤 技 術 の 共 同 開 発 プ ロ ジ ェ ク トを 進 め て い る 。 こ こ で 興 味 深 い の は,こ の プ ロ ジ ェ ク トで 32)吉 岡 英 美(2010)「 韓 国 の 工業 化 と半 導 体 産 業 一世 界 市 場 に お け るサ ム ス ン電 子 の 発展 一』 有 斐 閣,85頁 。 33)日 経BP社 編(1995)前 掲 書,49頁 。 34)毎 日経 済新 聞,1994年8月30日 付 け(韓 国語)。

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も0.25m級 の 核 心 工 程 開 発 に重 点 が 置 か れ35),三 星 電 子 は 同 プ ロ ジ ェ ク トに 参 加 し な が ら も,NECと 戦 略 的 提 携 を 推 進 し て い た と い う点 で あ る 。 後 述 の よ う に,こ の 提 携 は 三 星 電 子 が1994年8月29日 に256Mを 開 発 す る う え で,大 い に 影 響 して い る 。 しか し,同 プ ロ ジ ェ ク トの 統 括 機 関 で あ る 半 導 体 研 究 組 合 か ら は,94年11月 の 時 点 で256Mの 開 発 に 直 接 結 び 付 く よ う な 技 術 的 成 果 が あ っ た と い う報 告 は な さ れ て い な い36)。そ して,三 星 電 子 の256 M開 発 の 実 態 調 査 意 見 書 に よ れ ば,「 同 社 が 政 府 主 導 の 共 同 研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト(次 世 代 半 導 体 基 盤 技 術 開 発 事 業)よ り先 を も っ て256Mの 開 発 に 成 功 で き た 要 因 は,Patterning技 術 を 早 期 に 確 保 した こ と に 起 因 す る も の 」37)であ る と評 価 さ れ て い る 。 こ こ で い うPatterning技 術 と は,一 般 的 な 概 念 で 言 え ば 回 路 を シ リ コ ン基 板 に 数 十mの 幅 の 線 で 回 路 パ タ ー ン を 焼 き付 け る 前 に,基 板 上 に 感 光 性 の 高 分 子 材 料(フ ォ ト レ ジ ス ト)を 塗 布 し,回 路 部 分,あ る い は 回 路 で な い 部 分 に 極 端 紫 外 光 等 の 光 を 照 射 して,光 反 応 に よ っ て フ ォ ト レ ジ ス ト薄 膜 に 回 路 の 基 を 描 く,と い う もの で あ る 。 そ の 後,光 反 応 し た 部 分,あ る い は 逆 に 未 反 応 の 部 分 を 現 像 液 で 洗 い 流 して,数 十mの 線 幅 の 回路 パ ター ン を作 成 す る38)。 そ して,三 星 電 子 が 確 保 した と さ れ るPatterning技 術 を こ こ で 簡 略 に 説 明 す る と,以 下 の よ う で あ る 。 ま ず,表5を 見 る と,修 正 ・補 完 事 項 に お い て 「i線技 術 は 十 分 な 目標 達 成 が で き た た め に,2年 目 か ら はDUV研 究 の 目標 設 定 が 必 要 」 と記 さ れ て い る 35)具 体 的 に は,0.25m微 細 化 加 工 及 び 生 産 技 術 確 保,主 要 半 導 体 装 備 及 び 素 材 の 国 産 化 の 基 盤 造 成 と い う 目 的 が 掲 げ ら れ て い た 。 詳 し く は,韓 国 科 学 技 術 処(1992,4) 「21世 紀 先 導 技 術 開 発 事 業 一超 高 集 積 半 導 体(256MDRAM)研 究 企 画(案)一 』,23 頁 を 参 照 さ れ た い 。 36)256MDRAM半 導 体 共 同 研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト の 成 果 に つ い て は 科 学 技 術 処 (1994.12)「93年 度 次 世 代 半 導 体 基 盤 技 術 開 発 事 業 研 究 管 理 及 び 評 価 事 業 』,47-48頁 を 参 照 さ れ た い 。 37)詳 し く は,科 学 技 術 処(1994.12)「93年 度 次 世 代 半 導 体 基 盤 技 術 開 発 事 業 研 究 管 理 及 び 評 価 事 業 』,234頁 を 参 照 さ れ た い 。 38)産 業 技 術 総 合 研 究 所HP(http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20090529 _2/nr20090529_2.htm1)2011.8.10.

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携245 よ う に,政 府 が 主 導 す る共 同開 発 プ ロ ジ ェ ク トで は,開 発 の 重 点 が 光 源 の 短 波 長 化 に置 か れ て い た こ とが うか が われ る。 す な わ ち,何 度 も指 摘 して い る よ うに,256Mの 開発 す るた め に は,配 線 寸 法 を0.25mま で に微 細 化 す る必 要 が あ り,こ の 微 細 化 を牽 引 して きた技 術 が 光 リ ソ グ ラ フ ィ技 術 で あ る。 そ して,こ の 配 線 寸 法 を実 現 させ る ため に は,リ ソ グ ラ フ ィ技 術 の 解 像 度 向 上 が 不 可 欠 で あ る39)。この 解像 力 は,光 源 の短 波 長 化 の進 み具 合 に よっ て決 まる の で,表6で 示 して い る よ うに,線 幅0.25mを 具 現 す る ため に は,光 源 の短 波 長 化 を既 存 の365nm(i線,64Mに 適応)か ら248nm(エ キ シマ レーザ ー 光)ま で 進 め な けれ ば な らない の で あ る。 三 星 電 子 が 政 府 の 共 同開 発 プ ロ ジ ェ ク トよ り,先 を もって 開 発 した とい う 技 術 は,ま さ に この 分 野 で あ り,こ の 技 術 分 野 がNECと の共 同 開発項 目に含 まれ て い る こ とを勘 案 す れ ば これ らの 成 果 は戦 略 的 提 携 に負 う とこ ろが 大 きか っ た とい う こ とは想 像 に難 し くない 。 とい う の も,NECは,次 世 代 半 導 体 の 開発 に必 要 な 回 路 設 計 や025m 線 幅 具 現 に必 要 な超 微 細 化 技 術 に対 す る共 同開 発 を 目的 に1992年10月 米 国 の 半 導体 企 業AT&Tと 戦 略 的提 携 を締結 してい る4°)。そ して,こ の提 携 に よっ て 開 発 され た技術 は256Mの 開発 に活 用 され,事 実,か な りの程 度 の技術 蓄 積 が あ った と推 測 され る か らで あ る 。 さ らに,NEC側 は93年2月 に256Mの 開 発 に成 功 した と発 表 し,96年4月 か ら,業 界 トップ を切 っ てサ ン プル の 出荷 を 開始 した と主 張 して い る41)。 た だ,こ こで い う三星 電 子 とNECの 共 同 開発 は,上 述 の東 芝,IBMSiemens の 提 携 の よ う に,各 社 の 研 究 者 た ちが 集 ま り,そ れ ぞ れ 技 術 に関 す る提 案 と 意 見,情 報 を交 わ しなが ら開 発 を行 う とい う もの で は な く,い わ ば分 担 開 発 39)杉 本 茂 樹 ・神 垣 哲 也 ・上 條 浩 幸(2004)「 東 芝 レ ビ ュ ー 』Vol.59No.8,3頁,村 上 勝 彦 ・岡 崎 信 次(2003)「EUVリ ソ グ ラ フ ィ と露 光 装 置 」 「プ ラ ズ マ ・核 融 合 学 会 誌 』Vol.79,No.3,221頁 。 40)毎 日 経 済 新 聞,1992年7月15日 付 け(韓 国 語)。 41)日 本 電 気 社 史 編 纂 室 編(1999),前 掲 書,873頁 。

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を行 な っ た後,結 果 を共 有 す る とい う もの で あ っ た42)。そ して,1994年8月 29日,三 星 電 子 は世 界 で始 め て256Mの 試作 に成 功 した と発 表 して い る。 こ こで 注 意す べ き点 は,上 述 の よ うにNEC側 が 開発 に成功 した と発 表 した93年 2月 とは1年7か 月 の時 間 差 が存 在 して い る とい う こ とで あ る。 これ に対 して 三 星 電 子 側 の 主 張 は,「 同社 が 開 発 した256Mの 製 品 は,3億7000万 の セ ル (素子)が すべ て完 壁 に作 動 す る 製 品 であ り,日 本 企 業 を含 め て,先 進 国企 業 もこ う した レベ ルで の 成 功 に は至 って い ない 」 とい う もの で あ っ た43)。 要 す る に,次 世 代 製 品 を開 発 した初 期 段 階 で はす べ て の 素 子 が 正 常 に作 動 す る こ とは まず あ りえ ない 。 と くに,初 期 段 階 で 良 品 率 は極 め て 低 く,企 業 が 試 行 錯 誤 を重 ね た結 果,最 終 的 に欠 落 ゼ ロの 良 品 が 生 まれ る わ けで あ る。 三 星 電 子 は ま さ に この 段 階 に到 達 した とい え よ う。 いず れ にせ よ,三 星 電子 が世 界で初 め て256Mの 開発 に成 功 で きたの は,NEC との 戦 略 的 提 携 を通 じて 得 られ た技術 情 報 を もとに 開発 を進 め た結 果 であ り, 成 果 で あ る と指 摘 で きる。 これ につ い て,黄 昌圭 ・三 星 電 子 半 導 体 総 括 社 長 (当 時)は,「256MDRAMは 独 自の 技 術 で 開発 したの か 」 とい う記者 の質 問 に対 して,「 逆 説 的 に 日本 との技 術 交 流 が 大 きな力 に なっ た。 それ まで積 み 上 げ た技 術 力 が なか っ た とす れ ば 日本 との 技 術 交 流 も難 しか っ た はず だ。」44) と発 言 して い る。 要 す る に これ まで 積 み 上 げ られ た三 星 電 子 独 自の 強 み を生 か した こ とで戦 略 的提 携 を締 結 す る こ とが 可 能 とな り,そ こか らまた,256M 開発 とい う半 導 体 歴 史 に刻 まれ る よ う な成 果 を成 し遂 げ たの で あ る。 こ こで 指 摘 す る 日本 との 技 術 交 流 はNECと の戦 略 的提 携 の こ とを意 味 す る にほ か な らない45)。 で は,NECは 三 星 電 子 に対 して どの よ う な メ リ ッ トを持 っ てい た の で あ ろ 42)柳 町 功(1995)前 掲 書139頁 。 43)韓 国 科 学 技 術 処(1994.12)「93年 度 次 世 代 半 導 体 基 盤 技 術 開 発 事 業 研 究 管 理 及 び 評 価 事 業 』,222頁,毎 日 経 済 新 聞,1995年8月30日 付 け(韓 国 語)。 44)中 央 日 報(日 本 語 版),2011年1月5日(http://japanesejoins.com/article/393/ 136393.htm1),2011.4.50 45)256Mの 開 発 で 三 星 電 子 が 本 格 的 な 協 力 関 係 を 構築 し た の はNECl社 の み で あ る 。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携 247 うか 。 結 論 的 に言 え ば,当 時 にお い て も三 星 電 子 の 生 産 技 術 能 力 は世 界 トッ プの 水 準 で あ っ た。 これ まで 日本 企 業 の経 営 資 源 の 強 み は生 産技 術 で あ った 。 しか し,韓 国企 業 がDRAMの 一 貫 生 産 ラ イ ン を保 有 す る よ うに な る と,も は や 生 産 コス トに至 っ て 日本 企 業 は競 争 力 を失 っ て しま った の であ る46)。そ の韓 国企 業 の 体 表 的 な事 例 が 三 星 電 子 で あ る。 つ ま り,同 社 にお け る強 さの 源 泉 は生 産 コス トの 低 さで あ る 。野 村 総 合研 究 所 企 業 調査 部 の松橋 郁 夫 氏 は,「 三 星 電 子 のDRAMの 生 産 コス トは16M世 代 で11∼12ド ル。 こ れ は 日本 半 導 体 企 業 の なか で 最 も優 れ るNECの14∼15ド ル を上 回 る」47>と分 析 して い る。 ま た,1989年 の1Mの 量 産 能 力 は350万 個 に達 し,4Mは91年 に400万 個,93 年 には800万 個 を達成 す る な ど,世 界 最 大 の 生 産体 制 を整 え て い た48)。この よ う に,三 星 電 子 は 日本 を凌 ぐほ どの 生 産 技 術 を保 有 して い た し,DRAM産 業 にお い て 高 い 生 産 能 力 の 確 保 が 極 め て 重 要 で あ る こ とを勘 案 す れ ば これ は NECに とっ て大 きな メ リ ッ トで あ っ た。 こ こで 特 筆 す べ き点 は,三 星 電 子 とNECの 戦 略 的提 携 は,そ の後(1995年 2月),ヨ ー ロ ッパ で4Mの 共 同 生 産 をす る こ と に まで 拡大 してい る とい うこ とで あ る。 上 述 のNECとAT&Tも256Mの 共 同開 発 を 目的 に戦 略 的提 携 を行 った が,共 同生 産 まで は至 らな か っ た。 要 す る に,「研 究 開発 で は協 力 す るが, 生 産 で は独 立 独 歩 路 線 を貫 く」 とい う基 本 的 精 神 を遵 守 して い るNECは 伝 統 的 に 自主 性 を尊 重 す る社 風 を持 って お り,生 産 計 画 の 自主 性 は,提 携 企 業 間 で 譲 れ ない 事 項 で あ っ た。 とい うの は,DRAM事 業 の場 合,市 況 を見 極 め る の が 難 し く,一 歩 間違 え ば,自 社 に多 大 な損 害 を もた ら して しま う ほ どの 敏 感 な事 項 で あ る。 したが って,企 業 独 自の 市 場 分析 能力 はDRAM事 業 の成 敗 に大 き く影 響 す る とい って も過 言 で は ない 。 ま た,重 要 な事 項 で あ る だ け に 企 業 間で 意 見 が 対 立 す る場 合 もあ り,こ れ に よ って 意 思 決 定 が 遅 れ る場 合 も 46)小 川 卓 也(1995)前 掲 書,310頁 。 47)日 経BP社 編(1996)「 日 経 ビ ジ ネ ス 』ll月ll日 号,162頁 。 48)三 星 経 済 研 究 所(1995)「 世 界 半 導 体 産 業 の 奇 跡 一 三 星 大 逆 転 劇 の 背 景 一」 「CEO Information』 第9号,3-4頁 。

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十 分 あ りう るの で あ る49)。

しか し,こ う した厳 しい 条 件 の 下 で,三 星 電 子 とNECは4Mを 共 同生 産 す る とい う こ とで,協 力 関 係 を拡 大 して い る。 具 体 的 に は,NECの 子会 社 であ るNECセ ミコ ン ダク ター ズUK(ス コ ッ トラ ン ド)で 製 造 したDRAM製 品 を三 星 電 子 に提 供 し,三 星 電 子 は こ れ をポ ル トガ ル工場 で完 成 品 と して組 み 立 て, 欧 州域 内 に供 給 す る とい う もの で あ った5°)。上 述 の よ うにDRAM事 業 は製 品 の 供 給 タイ ミン グが極 めて 重 要 で あ り,な おか つ,共 同 で生 産す る こ とは様 々 な リス ク を抱 え る こ とに な る。 に もか か わ らず,両 社 が 提 携 に踏 み 切 っ たの は,256Mの 共 同 開発 で築 き上 げ た深 い信 頼 関係 に よ る もの だ とい え よ う。 以 上 の よ う に,NECと の戦 略 的提 携事 例 は,90年 代 以 降,三 星 電子 が 次 世 代 製 品 を開 発 す る う えで 必 要 な技 術 的 資 源 を,こ れ まで の よ う に,日 米 企 業 か らの 技 術 移 転 や 政 府 が 主 導 す る共 同研 究 開 発 に依 存 して 獲 得 す るの で は な く,自 社 の 強 み を生 か し,日 米 企 業 との 戦 略 的 提 携 を通 じて 獲 得 す る よ う に な った証 左 と して見 るべ きで あ ろ う51)。三星 電 子 が世 界市 場 で トップ の地位 に い る現 在 にお い て,日 米 企業 に よ る技 術 移 転 はほ とん ど無 くなっ た と して も, 未 だ に様 々 な形 で 政 府 が 積 極 的 に関 与 して い るの は確 か な事 実 で あ る。 しか し,こ れ は副 次 的 な要 因 と して 捉 え るべ きで あ り,90年 代 以 降の 韓 国半 導 体 産 業 の 発 展 要 因 を的 確 に捉 え る ため に は,企 業 戦 略 の 観 点 か らの 分 析 が 不 可 欠 で あ る と指 摘 せ ざ る を え ない 。 そ して,そ の 一 環 と して 注 目され るの が 日 米 企 業(と くに 日本 企 業)と の 戦 略 的 提 携 で あ り,こ れ は重 要 な発 展 要 因 と して 認 識 す る こ とが で きるの で あ る。 49)松 行 彬 子(2000)「 国 際 戦 略 的提 携 一組 織 間 関係 と企 業 変 革 を 中心 と して 一』 中央 経 済社,156-157頁 。 50)毎 日経 済新 聞,1995年2月7日 付 け(韓 国語)。 51)ま た,韓 国 政府 は 共 同研 究 開 発 プ ロジ ェ ク トの み な らず,「G7プ ロジ ェ ク ト」 と い う半 導体 育 成 計 画 を打 ち 出 す もの の,こ れ は 製 造 装 置 や 非 メ モ リ関 連 の 共 同 研 究 開 発 が主 流 と して い る。 詳 し くは宋 娘 沃,前 掲 書,163-164頁 を参 照 され たい 。

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韓 国半導 体 産業 の発展 と戦 略 的提携 249 (図2)DRAMの 製 造 工 程 図 設 計/マ ス ク 作 成 論 理 回 路 設 計 フ ォ トマ ス ク作 成

1

前 工 程(ウ ェ ハ ー 処 理) 微細 加工 成 膜 レ フ ォ トレ ジ ス ト塗 布 )露 光)現 象 )エ ッ チ ン グ ー リ ソ グ ラ フ ィ ヤ ・ ト・ジス ト除去 → 軒 問艦 層形 成 → ト・ ・ジス タ形齢 醐 形 成 一 → ウ ェ ハ ー検 査 ▼ 後 工 程 (組 み 立 て ・検 査) → 出 荷 注:・ こ の 形 態 が す べ て の 企 業 に 当 て は まるとは 限 らな い 。 ・後 工 程 の 詳 細 は 省 略 して い る 出 所RenesasHP(http://www2.renesas.com/fab/ja/line/line4.html)を 参 考 に 筆 者 作 成(2011.10.3.)。 (表5)93年 度 次世代 半導 体プロセス技術 開発 年 次評価 結果 (政府主 導256MDRAM共 同研 究 開発 プロジェクト) 総合 課 題 名 研 究 機 関 研 究 期 間 点 数 修 正 ・補 完 事 項 判 定 Patterning 93.11.16 i線 技 術 は十 分 な 目標 達 成 が で 三星 電子 91 継 続 技 術 開 発 ∼94 .11.15 き た た め に,2年 目 か ら はDUV Patterning 金星 電子 93.11.16 研 究 の 目標設 定 が必 要 88 継続 技 術 開 発 (現LG電 子) ∼94 .11.15 Patterning 93.11.16 現 代 電子 94 継続 技 術 開 発 ∼94 .11.15 注:DUV(deepultraviolet,遠 紫 外 線)とはフォトリソグ ラフィや レー ザ ー技 術 にお い て 波長 200∼350nm以 下 の 紫 外 線 を示 す 。 出所:韓 国 科 学 技 術 処(1994.12)『93年 度 次 世 代 半 導 体 基 盤 技 術 開発 事 業 研 究 管 理 及 び 評 価 事 業 」,250頁(一 部 修 正)。

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(表6)各 世代 での微 細化 技術 の変遷 とDRAM適 応 製品 世 代 436nm ∼400nm リ ソ グ ラ フ ィ技 術 9線 (436nm) 50nm180nm130n i線 (365nm) ll 、,、MI鵬1。1 デ イ ザ イ ン ル ー ル 0.5オm 0.35オm 適応 製品 256K∼1MDRAM 4M.64MDRAM 出所:杉 本 茂 樹 他(2004)「 半 導 体 プ ロセス技 術 の進 歩 と課 題 」「東 芝 レビ ュー』Vol.59, No.8,4頁,科 学 技 術 処(1992.4)『21世 紀 先 導 技 術 開 発 事 業 一超 高 集 積 半 導 体 (256MDRAM)研 究 企 画(案)一 』,16頁(原 資 料 は 野 村 総 合 研 究 所)を 参 考 に筆 者 作 成 。 5.半 導 体 製 造 装 置 メ ーカ ー との 戦 略 的 提 携 (1)半 導 体 産 業 にお け る製 造 装 置 の 重 要 性 半 導 体 製 造 装 置 は半 導 体 集 積 回路 の 製 造 工 程 に必 要 とされ る装 置 の 総 述 で あ る52)。半 導 体 産業 を実 質 的 に担 って い る半 導 体 企 業 の競 争 力 の 向上 に は,製 造 装 置 を半 導 体 企 業 に提 供 す る装 置 メ ー カ ーが 大 きな役 割 を演 じて きた。 図 2で も示 した よ うに,DRAMが で きる まで,様 々製 造 工程 が存 在 してお り,そ れ に対 応 す るた め,多 くの 製 造 装 置 が 使 われ る。 ま た,次 世 代 製 品 を開 発 で きるか否 か は,製 造装 置 の 性 能 に よって 決 まる の で53),半導 体 の競 争 力 を決定 づ け る重 要 な一 要 因で あ る とい って も過 言 で は ない 。 た とえ ば ス テ ッパ ー と呼 ばれ る半 導 体 露 光 製 造 装 置 は,「 史 上 最 も精 密 な 機 械 」54)であ りなが ら, 「ウェ ハ ー プ ロセ ス を代 表 す る製 造装 置 で あ り,そ の 導 入 台数 でそ の ライ ンの 能 力,製 造 原 価 な どが 明 らか に な って しま う」55)とも呼 ば れ て い る。 さ らに,半 導 体 露 光 製 造 装 置 は,日 本 の 半 導体 企 業 がDRAM市 場 で成 功 し 52)高 田 直 樹(1997)「 わ が 国 半 導 体 製 造 装 置 産 業 の 現 状 と 展 望 」 「富 士 総 研 論 集(富 士 総 合 研 究 所)』97年 工V号,33頁 。 53)同 上,34頁 。 54)株 式 会 社 ニ コ ン 精 機 カ ン パ ニ ーHP(http://www.ave.nikon.cojp/pec _j/products /pdf/NSR.pdf)2010.9.30. 55)前 田 和 夫(2002)「 は じ め て の 半 導 体 製 造 装 置 』 工 業 調 査 会,20頁 。

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